連載⑫現場発,病院と患者のためのシステム連載⑫現場発,病院と患者のためのシステムERP(EnterpriseResourcePlanning)と呼ばれ,社内に散在する有形無形のリソースを総合的に管理・活用する機能,情報を提供し,経営に貢献するとしてもてはやされた情報システムがありました.少数の成功事例がセンセーショナルに取り上げられ,これに乗せられ,成功要因を確経営に寄与する情報システム杉浦和史*情報システム導入の成功,失敗の定義はいろいろありますが,経営に寄与したかしないかが,最もシンプルでわかりやすい指標ではないかと思います.当院開発中の院内業務総合電子化システムHayabusaでは,図1の目標を掲げていますが,“経営に具体的に寄与する”が最かめずに安易に導入して失敗した企業は数知れずありました.電子自治体ブームでも同様な傾向がみられましたが,電子カルテシステムを代表とする医療情報システムでも同じことが言えます.終目標です.来院数,新患増加数,手術件数,ベッド稼働率の推移は直接的に経営に貢献する数字として知られています.このうち,大本は来院数でしょう.来院しなければ手術になることはないし,手術をしなければベッドの稼働率を気にする必要もないからです.では来院数を増やすにはどうしたら良いのでしょう.医師の腕であることは論を待ちませんが,これはクリアしているものとして,あとは?看護師をはじめとするコメディカルスタッフの適切で優しい言動と,待ち時間ではないでしょうか.これらは患者満足度という形で現れてきます.この患者満足度の向上が,その病院の評判を高め,再来院率を上げ,ひいては新患を呼び込む要因になると考えられます.優しい言動は,標語を掲げ,朝礼で唱和したりセミナーを受講させたりすることで実現できるものではありません.コメディカルスタッフも人間,疲れている時も気分の優れない時もあり,優しい言動にならない場合もあるはずです.できるだけそのような状況にならないようにするには,職員(スタッフ)満足度という指標を考慮する必要があります.以前,待ち時間を取り上げた号(本誌9月号連載⑧スタッフ満足度,待ち時間)でもこの指標を説明したことがありますが,スタッフが気分よく働けるような機能,情報を提供するシステムを整備すれば,スタッフ満足度を高めることができるのではないかと考えています.このスタッフ満足度,実は,患者満足度と密接な関係(77)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYIntegratedHayabusa患者待ち時間の最小化患者満足度の向上職員の負荷軽減限られたリソースの最適配分各種情報の可視化迅速的確な経営判断経営に具体的に寄与するCopyright2012宮田眼科病院Allrightsreserved図1Hayabusaの目的があります.待ち時間にしびれを切らした患者さんが,「あとどのくらい待てば良いのですか」,「あの人は私より後に来たのに先に診察してもらったのはどうしてですか」などとスタッフに問いかけるシーンは頻繁に見かけます.患者満足度を下げる大きな要因となっているこのような状況への説明,対応は,スタッフの大きなストレスとなっていることは,スタッフの皆さんと話をしたり,現場を観察すれば一目瞭然です.当院では,待ち時間の要因分析を行い,時間そのものの短縮を図るとともに,どんな状態で待っているかがわかり,他の患者さんの待ち状態もわかる情報を提供することで,問いかけやクレームを激減させ(患者満足度向*KazushiSugiura:宮田眼科病院CIO/技術士(情報工学部門)あたらしい眼科Vol.30,No.1,201377表1人間がコンピュータ(システム)より優れている点人間が優れている点概要1考えることができる1+1=2という選択の余地がない場合ではなく,どのようにでも判断できる曖昧な場面に遭遇した場合,過去の経験に基づき,また,その時々の状況に応じて,何が最適かを考える能力が人間にはあります.ハムラビ法典のように単純明快ならシステム化された裁判も可能ですが,情状酌量や大岡裁きが必要な現実の裁判には使えません.現実の世界では,1+1が2<(シナジー効果)になったり,2未満になることも頻繁に経験しますが,これはコンピュータの世界ではあり得ないことです.1+1が2以下になる場合でも“損して得取る”の発想で,戦略的にGOサインを出す場合もあります.これは人間にしかできないことでしょう.2直感いくつもの情報を見て判断するのではなく,少ない情報で瞬時に的確な判断する能力.伝説の相場師“是川銀三”の世界.その反面,“見落とし”,“勘違い”というコンピュータではあり得ないことも発生します!3知識・経験を蓄積し活用できる人間は,五官で得られた情報や経験したことを記憶し,必要に応じて利用し,情報量(エントロピー)をアップさせて再記憶し,また再利用し,知識の拡大再生産を行うことができます.記憶できる形式は,音,色,数値,文字,形だけではなく,物理的な環境,情緒的な環境,情景など複雑多岐にわたっており,コンピュータの及ぶところではありません.上),以ってスタッフ満足度も向上させた実績をもっています.一般的に言える人間がコンピュータ(システム)より優れている点を,表1に掲げます.病院には,点眼,処置など人間ならではの作業があります.これらの作業を除いた作業をシステムで代替えすることで,スタッフの肉体的,精神的負荷を軽減させることができます.これによってできたゆとりをもって患者さんに接することで,患者満足度を向上させ,病院の評判を高め,再来院率を上げることができるでしょう.IntegratedHayabusa図2Hayabusaメインメニュー直接的ではなく間接的ではありますが,患者満足度を上げることが病院経営に寄与することは間違いなく,その実現を支援する情報システムは回り回って経営に寄与するシステムと言えるでしょう.当院では,予約業務を主体とするリソースマネジメントシステムM-Magicに続き,人間ならではの作業を除く院内業務を電子的に処理するHayabusaを開発中ですが,経営に寄与するシステムを目指していることはいうまでもありません.昨年同月比の再診患者数の推移来院者数システム稼働後システム稼働前月図3M.Magicの効果78あたらしい眼科Vol.30,No.1,2013(78)