特集●神経眼科MinimumRequirementsあたらしい眼科30(6):775.781,2013特集●神経眼科MinimumRequirementsあたらしい眼科30(6):775.781,2013Fisher症候群FisherSyndrome大野新一郎*はじめに:Fisher症候群は神経内科領域の難解なまれな疾患ではない!複視を主訴に眼科を受診する患者は非常に多い.複視の原因は多岐にわたるが,すぐに複視=頭蓋内病変を連想する先生方は多いのではないだろうか?もちろん,複視の裏に緊急を要する頭蓋内病変が潜んでいることがあるのは事実である.しかし他のさまざまな原因を考えていただきたい.詳細な複視をきたす疾患の鑑別診断は成書を参照していただくとし,複視をきたす疾患の鑑別診断の一つとしてあげなければならないのがFisher症候群(FS)である.眼科領域においては,外眼筋麻痺をきたし複視を主訴に来院する.さらにFSは複視+全身症状をきたすため,重篤な頭蓋内病変が潜んでいると誤診しがちである.その臨床症状は眼球運動障害,瞳孔障害,眼振,眼瞼下垂,顔面神経麻痺,運動失調,四肢の異常とバラエティ豊かであり,責任病巣がどこにあるか理解しにくいが,後述するFSの病因を理解すれば簡単にわかる.確かに,日常診療において頻繁に遭遇する疾患ではないが,FSは非常に特徴的であり,知っておけばすぐに診断に至ることができる.本稿では,FSの眼科の視点からの臨床的特徴,診察時注意すべき点,また最近の知見を概説する.以下のデータは自験例19例の解析である.I症例呈示症例1(図1):眼科にて経過観察可能な典型例.30歳,男性.20××年3月20日より腹痛,下痢が出現,その10日後より複視を自覚した.さらに手の違和感も出現したため近医神経内科,脳神経外科を受診し,頭蓋内精査するも異常なく原因不明であった.さらに精査目的に当院神経内科を受診し当科を紹介受診した.初診時眼科的所見は軽度眼瞼下垂,眼球運動痛を伴った両側外転神経麻痺が認められた.瞳孔は軽度散大し,直接対光反射は減弱していた.抗GQ1b抗体陽性であったためFSと診断した.約3カ月後眼球運動障害は無治療にて軽快した.症例2(図2):神経内科と連携しなければならない重症例.27歳,男性.20××年6月20日より前駆症状なく,複視が出現,近医内科にて頭蓋内精査するも原因不明のため精査加療目的に当科を紹介受診した.初診時所見は運動失調,左外転神経麻痺を認めた.その後,眼瞼下垂が出現し全外眼筋麻痺に進行した.抗GQ1b抗体,抗GT1a抗体,抗GM1/GQ1b抗体陽性であったためFSと診断した.神経内科にて免疫グロブリンの大量静注療法を行った.約6カ月後,眼球運動障害は改善,複視は消失し,全身状態も改善した.症例3(図3):比較的まれな症例.32歳,女性.*ShinichirouOono:佐賀大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕大野新一郎:〒849-8501佐賀市鍋島5-1-1佐賀大学大学院医学系研究科眼科学0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(53)775図1症例1上段:眼球運動写真.下段:Hess複像表.両側外転神経麻痺を認める.b図2症例2a:初診時.両側軽度眼瞼下垂,内斜視を認める.b:約6カ月後.眼瞼下垂,内斜視は軽快している.c:運動失調.20××年3月初旬にインフルエンザB型に罹患,その腱反射の低下を3徴とする疾患である.大部分は呼吸約1カ月後に複視を自覚し当科を初診した.両側の外転器,消化器系などの感染症状に引き続き発症し,急性期神経麻痺を認めた.抗GQ1b抗体陽性であったためFSをすぎると鎮静化して回復する単相性の予後良好な症候と診断した.約3カ月後眼球運動障害は無治療にて軽快群である.しかし,前述の3徴が揃うことはむしろ少なした.く,さまざまな不全型,軽症例が存在する.また,本疾患は急速に発症,進行し四肢筋力低下をきたすGuillainII定義,概念Barre症候群(GBS)の亜型,同一スペクトラム上の疾Fisher症候群(FS)またはMillerFisher症候群患と考えられている(図4,5).(MFS)は急性に発症する外眼筋麻痺,運動失調,深部ac776あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013(54)図3症例3上段:眼球運動写真.下段:Hess複像表.両側外転神経麻痺を認める.図4GBSとFSのおもな症状GBSでは四肢麻痺,FSでは外眼筋麻痺,腱反射低下,運動失調を呈する.III臨床症状1.疫学自験例の解析では発症年齢は19.60歳,平均は37.2歳で,20歳代と50歳代に二峰性のピークを認める.男女比は2.5:1である.自己免疫疾患であるが男性に多いのが特徴である.簡単に若い男性に多いと覚えておけ(55)BBEGBS抗GQ1b抗体四肢末梢性筋力低下意識障害錐体路症状外眼筋麻痺運動失調腱反射低下FS図5GBS,FS,BBEの相関関係これらの疾患はオーバーラップ病変である.BBE:Bickerstaff型の脳幹脳炎.(上田,楠:眼科50:1841-1845,2008より改変)ばよい.2.発症時期春から夏に圧倒的に多い.特に春に多い.3月から8月までが約70%である.これは先行感染のCampylobacterjejuniが関係していると考えられる.3.先行感染先行感染の既往は約9割に認められる.感染から眼球あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013777運動障害発症はほぼ同日発症から30日までの範囲である.そのなかでも14日以内が約9割を占める.症状としては,上気道症状38%,胃腸症状29%,熱発33%(重複を含む)である.約1カ月前の先行感染もありこのくらいはさかのぼって問診する必要がある.一方,文献的には先行感染の症状は上気道症状76%,胃腸症状4%,熱発2%である.また感染因子はCampylobacterjejuni(21%),Haemophilusinfluenzae(8%)であることがわかっている1).Fisherが報告した1例も喀痰からHaemophilusinfluenzaeが検出されていた.一口に感冒様症状といっても幅広いため上気道症状,胃腸症状,熱発の有無などをできれば詳細に問診したい.症例3のように先行感染1カ月前のインフルエンザB型感染後の発症は比較的少ないことがわかる.4.初発症状眼科を受診するほとんどの主訴が複視である.しかし,視覚障害を訴え初診することもあるので注意すべきである.自験例においても2例が経過中に視覚障害を訴えた.まれではあるが,視神経症(炎)の合併があることを知っておく必要がある2).5.眼球運動障害パターン完全型では全外眼筋麻痺を呈する.成書,文献上は垂直注視麻痺,側方注視麻痺,内側縦束症候群,核上性眼球運動障害もみられるとされているが比較的まれである.また動眼神経麻痺,滑車神経麻痺の単独麻痺も非常に少ない.特記すべきは,最も多い障害パターンは外転神経麻痺であることである.基本的には両側の外転神経麻痺をきたす.しかし外転神経麻痺の程度に差がある症例が約30%存在する.文献上は片側性の外転神経麻痺が記載されていることが多いが,両側性に発症し左右に程度の差があると理解したほうがよいであろう.しかし,純粋な片側性もあり,それは全身の片側のみに(眼球運動障害,失調,腱反射の低下も片側性)障害が出現する症例もあるといわれている.自験例ではほぼ全例外転神経麻痺を呈し,全外眼筋麻痺を呈したのは2例にすぎない.これらは後述するが,778あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013GQ1b抗原の局在が関与している.6.眼球運動痛約3割に眼球運動痛をきたす.原因はまだよくわかっていない.眼窩内に二次性の炎症性変化をきたすのかもしれないし,または三叉神経の障害が関与しているのかもしれない.7.眼振眼振は約3割にみられる.神経伝達障害をきたすためと考えられる.8.眼瞼下垂,顔面神経麻痺眼瞼下垂は約3割にみられる.顔面神経麻痺は約1割にみられる.9.瞳孔障害瞳孔障害は約3割にみられる.FSに瞳孔障害がみられることは昔からよく知られている.FSの瞳孔障害に対し種々の点眼試験を行い発症機序を考察した文献が散見され,FSの瞳孔障害の発症機序が末梢性か中枢性かの議論がなされているが,点眼試験はあくまで補助診断と考えたほうがよいであろう.10.全身症状a.運動失調3徴の一つである.症例3のように運動失調がみられる.それは協調運動障害,小脳失調様“cerebellar-like”と称される.患者は「バランスがとれず歩きづらい」と訴えることが多い.歩行障害は3例にみられた.b.四肢の異常四肢の異常は実に約60%にみられる.患者は「手足の力が入りにくい」「手がしびれる」などと訴える.FSを疑う重要なキーワードである.IV検査所見1.抗体測定FSが疑われれば,抗ガングリオシド抗体を測定しなければならない.(56)抗体測定は近畿大学神経内科,シノテストサイエンス・ラボで行っており,詳細はホームページを参照されたい.自験例の抗体陽性率は抗ガングリオシド抗体陽性が約80%,そのうち抗GQ1b抗体陽性が約70%である.文献上はFSにおいて抗GQ1b抗体は約90%以上で陽性であるとされている.抗GQ1b抗体は外眼筋を伴わないGBS,他の神経疾患,自己免疫疾患,健常人では陽性にならないため外眼筋麻痺を伴うFS,GBSには特異的であり,疾患の診断に非常に有用である.これらの抗体は急性期をすぎると減少,消失する.他の自己免疫疾患同様に各症例間において抗体価と臨床症状の重症度は相関しない.つまり,抗体価が高いから重症で,低いから軽症というわけではない.2.髄液検査GBSと同様,約半数に蛋白細胞解離を認める.自験例においても髄液検査を行った患者の半数に蛋白細胞解離がみられた.経過,治療自験例において複視は全例で軽快した.複視に関し積極的に斜視手術を進める報告もあるが,まずは経過観察でよい.回復の早い症例では約10日で複視は回復する.複視の回復は最長でも約180日であり,回復期間の平均は約70日である.患者には「無治療でも約3カ月で複視は消失することが多い」と説明すればよい.重篤な全身症状が伴わず,眼球運動障害のみであれば経過観察でよい.他の自己免疫疾患で有効な副腎皮質ステロイド薬はGBSにおいて無効であることが証明され,本疾患には使用すべきでない.GBSにおいては血漿浄化療法(PE),免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)の有効性が報告されている.一方,FSは自然治癒するためか治療法は確立していない.IVIgはPEや対照群に比べ眼球運動障害の改善を早めるが,有意差がないと報告されている3).IVIgやPEはFSに治療効果がある可能性があるが,眼科が治療できるものではなく内科医と連携するべきである.さらにIVIgやPEは感染,ショックなどの重篤な(57)副作用はゼロとは言い切れない.また高額な医療費も問題となる.自験例においてIVIgを行ったのは2例であり,複視症状の改善が短縮できたかは不明である.全身状態(失調など)を伴っていれば,必ず内科医に相談し連携して治療にあたる.V発症機序GQ1bはFSと密接にかかわっており,抗GQ1b抗体陽性はFS診断に重要である.これにはGQ1b抗原の局在が関与している.抗GQ1bモノクローナル抗体による免疫組織染色では,動眼,滑車,外転神経の髄外部のランヴィエ(Ranvier)絞輪部,ミエリン,シュワン(Schwann)細胞が強く染色され,GQ1b抗原がこれらの部位に多く局在することが示されている.また,生化学的分析でもGQ1bは上記眼運動神経に多く含まれていることがわかっている.機序としては,抗GQ1b抗体が髄外部のランヴィエ絞輪部,ミエリン,シュワン細胞のGQ1b抗原に結合し神経伝達障害をきたし眼球運動麻痺をきたすと考えられている.その他,下オリーブ核,小脳深部核,小脳皮質顆粒層などの小脳性運動失調と関連する部位にも抗GQ1b抗体は染色される.最近では,骨格筋の筋紡錘内線維に接する神経終末にもGQ1bの局在が示されている4).FSの発症機序が末梢性か,中枢性かの議論が昔からなされているが,今日では典型例が末梢性であり,末梢から中枢に障害が拡大する症例もあると理解されている.発症機序が末梢性,中枢性であるかの考え方より,後述の分子レベルの発症様式の考え方のほうがよいであろう.VI最近の知見近年,GBS,FSの病因解明がめざましく進歩している.その一部を簡単に紹介する.1.新たな抗体:ガングリオシド複合体(gangliosidecomplex:GSC)とは?これまで発症に関与しているのは単独(1つ)のガングリオシドと考えられてきたが,それだけはなく2つのあたらしい眼科Vol.30,No.6,2013779異なるガングリオシドからなるまったく新しい複合抗原の存在が明らかになってきた.それがGSCである.これは単独のガングリオシドには反応せず,GSCしか反応しない.以下のように分類される5).1)抗GQ1b抗体陽性で抗GSC抗体陰性群(GQ1b特異抗体群)2)GQ1b/GM1複合体に活性をもつ群3)GQ1b/GD1a複合体に活性をもつ群つまりGQ1b/GM1複合体,GQ1b/GD1a複合体に対する抗体がランヴィエ絞輪部抗原と結合し神経伝達障害をきたす.これらの抗体,複合体がFSとどのように臨床的意義があるか今後の検討が待たれる.また未知なる同定されていない抗体,複合体があるのかもしれない.2.分子相同性仮説とは?なぜ抗体GQ1b抗体は上昇するのか?分子相同性仮説とは,病原微生物が宿主の組織の構成成分と共通する抗原を有し,交差抗原に対する自己抗体や自己反応性T細胞が誘導,活性化され,宿主の組織を障害するとする仮説である.つまり,病原体とヒトの神経構成成分が一致するという仮説である.FSでこの仮説は証明されている.FS患者から分離されたCampylobacterjejuniの細胞壁の構成成分であるリポオリゴ糖(lipo-oligosaccharide:LOS)とヒト末梢神経構成成分は一致していることが明らかになっている.さらにこのLOSはGQ1bそのものではなく,GT1a様,GD1c様構造であることがわかってきている.つまりはCampylobacterjejuniの菌表面にはGQ1bと同様の糖構造もつGT1aが存在し,それが感染因子に対する免疫反応としてヒト血清中に抗GQ1b抗体が上昇する.さらにCampylobacterjejuniの遺伝子多型が感染後の臨床像を規定することもわかってきた.つまりGM1様LOSの生合成には,Campylobacterjejuniのシアル酸転移酵素Cst-IIが必須であり,Cst-IIの遺伝子多型がFSの臨床像を規定している.Campylobacterjejuniのシアル酸転移酵素Cst-IIは291個のアミノ酸からなり,51番目のアミノ酸がアスパラギン(Asn51)のCst-IIをもつとFSが発症すると考えらえている.780あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013このように「分子相同性により自己免疫病が発症しうる」,「病原微生物の遺伝子多型が,その後に続発する自己免疫病の臨床像を規定する」という新しい概念が提唱されている6).3.抗補体薬は新たな治療薬となるのか?近年,GBSの発症において補体系が関与していると報告されている.つまり,補体の古典経路が活性化し膜侵襲複合体を形成し軸索における神経伝達が阻害されるとされている.つまりは補体経路を阻害する抗補体薬が有効であると考えられている.メチル酸ナファモスタット(フサンR)は急性膵炎の治療などで用いる抗補体薬である.ウサギを用いた動物モデルにおいてその有効性が報告されている7).メチル酸ナファモスタットは古くから使用されている歴史ある薬剤であり,安全性が確立されている.また,なにより安価である.またエクリズマブ(eculitumab)は発作性夜間血色素尿症(PNH)の治療にてFDA(米国食品・医薬品局)に認可されている抗補体薬である.Invitroにおいて,マウスの横隔膜,横隔膜神経を用いたFSのモデル動物において,エクリズマブ(eculitumab)神経保護効果も報告されている8).これらは眼科医にはまったく馴染みない薬剤であるが,今後の可能性も考え記載した.おわりにFisher症候群(FS)は神経内科領域の難解なまれな疾患と思われがちであるが,そうではなく,眼科医としては,単純に“先行感染後に起こる外眼筋麻痺”と理解しておけばよい.この疾患は外転神経麻痺が多く自然軽快が多い.つまり,眼球運動障害だけであれば眼科医で十分治療可能である.しかし,一方で全身管理を必要とする症例もあり注意深い観察をしなければならないことが重要である.FSの臨床症状は非常に特徴的である(表1).眼球運動障害,特に外転神経麻痺に遭遇したときは,FSも鑑別にあげ,抗体検査を行わなければならない.FSは全身症状を呈するため,神経内科,脳神経外科,耳鼻科とさまざまな科を受診することが多く,患者は不安に陥りやすい.そのため眼科医がいち早く診断をつけることが(58)表1FSの臨床的特徴・若い男性に多い・先行感染の既往・外転神経麻痺・抗GQ1b抗体陽性・瞳孔障害,眼瞼下垂,顔面神経麻痺・四肢の異常・無治療でも軽快重要である.さらに問診の段階でかなり診断をつけることが可能である.複視を主訴に来院する患者には先行感染の有無,全身状態の有無を問診することを忘れてはならない.なによりもFSをきちんと理解している医師は実は非常に少ないと思われる.だからこそなによりも眼科医がこの疾患に対する正しい知識をもつことが必要である.文献1)KogaM,GilbertM,LiJetal:AntecedentinfectionsinFishersyndrome:acommonpathogenesisofmolecularmimicry.Neurology64:1605-1611,20052)古賀紀子,石川弘,伊藤雄ほか:視神経症を合併したFisher症候群.日眼会誌112:801-805,20083)MoriM,KuwabaraS,FukutakeSetal:IntraveousimmunoglobulintherapyforMillerFishersyndrome.Neurology68:1144-1146,20074)LiuJX,WillisonHJ,Pedrosa-DomellofF:ImmunolocalizationofGQ1bandrelatedgangliosidesinhumanextraocularneuromuscularjunctionsandmusclespindles.InvestOphthalmolVisSci50:3226-3232,20095)KaidaK,MoritaD,KanzakiMetal:GangliosidecomplexesasnewtargetantigensinGuillain-Barresyndrome.AnnNeurol56:567-571,20046)西本幸弘,結城伸泰:ギラン・バレー症候群とCampylobacterjejuni感染.臨床と微生物38:15-20,20117)PhongsisayV,SusukiK,MatsumotoKetal:Complementinhibitorpreventsdisruptionofsodiumchannelclustersin■用語解説■Fisher症候群(FS),MillerFisher症候群(MFS):1956年MillerFisherは自験例3例の詳細な経過とそれまでの報告例のレビューから外眼筋麻痺,運動失調,深部腱反射低下の3徴からなる急性特発神経炎の亜型として報告した9).Guillain.Barre症候群(GBS):急速に発症,進行する,四肢の弛緩性麻痺,深部反射消失を主徴とする多発性ニューロパチーである.Guillain,Barre,Strohlにより1916年「細胞増加がなく髄液蛋白増加をきたす根神経炎」と報告された10).ガングリオシド(ganglioside):シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質の総称であり,糖鎖構造の違いにより多くの分子種が存在し,体内の特に神経,脳に分布しており,神経組織の細胞膜表面に存在し細胞間の接着,細胞の分化・増殖,細胞のシグナル伝達に関与している.GM1,GM2,GD1a,GD1b,GT1a,GT1b,GQ1a,GQ1bなどがあり,それぞれGはガングリオシド,つぎの略語はシアル酸の数を表している(M=monoの1つ,D=di2つ,T=tri3つ,Q=quadra4つ).最後の数字はガングリオシドの糖鎖骨格の還元末端の側のガラクトース残基に結合しているシアル酸残基の数を表している.リポオリゴ糖(lipo.oligosaccharide:LOS):Campylobacterjejuniの菌表面に多く発現する糖脂質.arabbitmodelofGuillain-Barresyndrome.JNeuroimmunol205:101-104,20088)HalsteadSK,ZitmanFM,HumphreysPDetal:Eculizumabpreventsanti-gangliosideantibody-mediatedneuropathyinamurinemodel.Brain131:1197-1208,20089)FisherM:Anunusualvariantofacuteidiopathicpolyneuritis(syndromeofophthalmoplegia,ataxiaandareflexia).NEnglJMed255:57-65,195610)GuillainG,BarreJ-A,StrohlA:Surunsyndromederadiculo-nevriteavechyperalbuminosedeliquidcephlorachidiensansreactioncellulaire.Remarquessurlescaracerescliniquesdesreflexestendineux.BullMemSocMedHopParis40:1462-1470,1916(59)あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013781