あたらしい眼科29(10):1391.1393,2012わたしの工夫とテクニックあたらしい眼科29(10):1391.1393,2012わたしの工夫とテクニックMyDesignandTechniqueTIBURONTMを使用した眼瞼手術用ドレープの試作ANewSurgicalDrapeforEyelidSurgeryUsingNewMaterialTIBURONTM要約覆布の素材に吸収性の高いティブロン(TIBURONTM)という不織布を使用し,穴あき部分も楕円形にした新しい糊つき両眼瞼手術用ドレープを開発した.実際に手術に使用したところ,フィッティング,使用感,覆う範囲などが良好なだけでなく,出血を吸収し,周囲の汚染も少ないことがわかった.両眼瞼の同時手術や左右眼瞼の形状を確認しながら手術を行う際に有用なドレープと考えた.キーワード:ティブロン,ドレープ,眼瞼手術,両眼開放.はじめに眼瞼手術は他の眼科手術とは異なり,両眼開放下で行われることが多い.これは両眼の形状を比較して,切開線の高さや皮膚切除幅の決定をし,左右を調節するためである.また,眼瞼下垂手術の際には座位にて調整する必要があるため,体位変換してもドレープがずれないものが好ましい.しかし,眼科片眼用のドレープには,眼瞼手術の要望を満たすものが少なかったため,汎用性があり,かつ使いやすいものを考案し試作するに至った.I開発の経緯現在まで当科では,眼科手術用の丸穴で(大12cm,中9cm,小6cm)裏にシール(糊)のついたものを使っていた.眼瞼手術では術野の適切な確保が手術の成功につながるといっても過言ではないが,いずれも適当な大きさといえるものではなかった.仕方なく,成人では丸穴12cm直径のものを使用し,皮膚貼布時に左右に広げて横幅を稼ぎ楕円形に付着させていた.しかし厳密には,このときにシールの貼り直しが必要になる.詳しく言うと,まず顔面の中央部に丸穴がくるように広げて,一旦皮膚面とくっついたシールを.が中内一揚*し,再度最適な形状に貼りなおすという手順を取っていた.ところが,最近になり,シール糊が海外製のものに変更されたために,粘着力が以前よりも強くなった..がそうとすると,皮膚表面が.がれてしまうのではないかという不安があり,実際に部分的に眉毛が抜けてしまったケースもみられた.また,患者に被せている紙製帽子に付着して脱げてしまい,せっかく消毒をした手術野が不潔になるという不具合も発生した.このため,当科では,新たに眼瞼手術用のドレープを試作することになった.さまざまな意見を参考に1),まず初めに考えたのは,糊なしのドレープである.しかし,これを使用した場合,デカダームRなどのシールが別に必要で価格も安価とはいえない.また,一手間多くなるのと,皮膚切開時には邪魔になるという意見もみられた.形成外科領域では,ターバンといって,覆布を三角巾のように折ってそれで髪を覆うように包む方法もあるが,覆布にある程度の大きさが必要なのと,手術台に手台が付属している場合,結び目が邪魔になる.結局,糊つきのドレープを使うのが最も便利であると思われた.II今回開発したドレープの特徴以下の4点を変更点として作製した.①穴開き形状を11cm×14cmの楕円形とした(図1).②糊を以前使用していた国産のものに戻した(株式会社TAC,PET#1644W).③覆布の素材を吸収性の高いティブロン(TIBURONTM)という不織布に変更して,出血が耳側に垂れるのを防止した(図2).④覆布の大きさを拡大して,1枚で頭部から胸元まで隠れるものにした(120×120cm).図1上にドレープの穴形状を示す.下は患者顔面にドレープを貼布したところである.眉毛上から鼻までが露出されている.穴の大きさがちょうど良いので,貼りなおさずに手術*KazuakiNakauchi:兵庫医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕中内一揚:〒663-8501西宮市武庫川町1-1兵庫医科大学眼科学教室0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(75)13912cm11cm14cm開窓部拡大図(裏面)11×14cm楕円形開窓部裏面テープ付(テープ幅2cm)2cm11cm14cm開窓部拡大図(裏面)11×14cm楕円形開窓部裏面テープ付(テープ幅2cm)図1ドレープの穴形状眉毛上から鼻までが露出されている.両眼開放にちょうど良い大きさである.を開始することができる.また,術中に患者を座位にした場合にも糊が.がれることはなく,かつ皮膚に対する粘着度合も良好である.図2に術中の使用例を示す(上眼瞼挙筋前転術).左上は切開前の状態,右上は切開直後にかなりの出血がドレープ上に流れているのがわかる.左下は切開から約20分後,閉創時にはすでにドレープは乾き始めている.右下は,手術終了時にドレープを.がしたところであるが,皮膚面にはほとんど出血がついていないのが確認できる.大きさを変更したことで,今までは,上半身と腹部に2枚ドレープを使用していたのを1枚で胸部まで覆うことができるようになった.コスト的にも,環境的にもやさしくなったと考える.今回使用した素材はティブロン(TIBURONTM)という不織布である.日本ではケアフュージョン(メドライン)からティブロンを使ったさまざまな外科用ドレープが販売されている.その特徴を数点述べる.通常の不織布では外層が濡れるとドレープを貫通して液体や細菌が運ばれて感染や汚染をひき起こす原因となる.そのため,従来のドレープは液体が溜まらないように撥水効果のある素材を使用していた.しかし,血液が床に流れたり,接着面からドレープの裏側に回っ1392あたらしい眼科Vol.29,No.10,2012図2術中の使用例左上:切開前.右上:切開直後.左下:切開から約20分後.右下:手術終了時.て患者の皮膚を汚染するということが頻繁にみられた.これに対してティブロンは液体を表面側の外層で素早く吸収し,内層には通さないために高いバリア性を示す.具体的には,スパンボンド-ポリオレフィン-スパンボンドの3層構造(吸水-防水-吸水)をとっており,手術中の体温低下を防いだという報告もある2).スパンボンドは以前より3MTMから発売されている素材で,すでに不織布としての評価は高い3).ティブロンはさらに高い穿孔抵抗性があり,鋭利な器具からの皮膚損傷を防ぐ効果がある.また,低リントであるために表面の毛羽立ちが少なく,術野に細かい線維が侵入することも少ない.微細な眼科手術を行ううえで適した素材であるといえる.従来のドレープと比べると,若干厚い感じがするものの手触りが柔らかく,またその出血吸収性を知ると,眼瞼用ドレープとしてきわめて優秀な素材であると思われた.素材とその効果もさることながら,ドレープ形状,シール粘着力を含め,良い使用感であったので,今回製品化(TK-OP028)することになった.「あたらしい眼科」読者のお役に立てば幸いである.文献1)前田直之,大橋裕一:EyeSurgeryバトルロイヤル白内障手術シリーズ消毒とドレープ勝利のための戦場作り.眼紀51:426-431,20002)MaglingerPE,SesslerDI,LenhardtR:Cutaneousheatlosswiththreesurgicaldrapes,oneimpervioustomoisture.AnesthAnalg100:738-742,20053)佐藤大輔,井戸均,瀬川澄子ほか:スパンボンド製不織布の効果的な使用方法SWOT分析による使用満足度の検討.日本手術医学会誌27:303-306,2006(76)SUMMARYANewSurgicalDrapeforEyelidSurgeryUsingNewMaterialTIBURONTMKazuakiNakauchiDepartmentofOphthalmology,HyogoCollegeofMedicineWehavedevelopedanewoval,perforateddrapeforeyelidsurgeryusingthenewmaterialTIBURONTM,whichiscomposedofthreelayers(absorbent-waterrepellent-absorbent).Thankstothesefeatures,amoderatehemorrhageduringeyelidsurgerycanbeabsorbedbythedrape,leavingcleartheareasurroundingtheoperativefield.Theinfectionandpollutionratedecreaseasaresult.Also,theshapeandadhesibilityofthedrapeareadvantageousduringbilateraleyelidexposureforblepharoplasty.Thisdrapeiscommonlyrecommendedforeyelidsurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)29(10):1391.1393,2012〕Keywords:TIBURONTM,drape,eyelidsurgery,bilateraleyelidexposure.Reprintrequests:KazuakiNakauchi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,HyogoCollegeofMedicine,1-1Mukogawa-cho,Nishinomiya-city,Hyogo663-8501,JAPAN☆☆☆(77)あたらしい眼科Vol.29,No.10,20121393