■オフテクス提供■コンタクトレンズセミナー英国コンタクトレンズ協会のエビデンスに基づくレポートを紐解く13.医療用コンタクトレンズ(1)松澤亜紀子聖マリアンナ医科大学,川崎市立多摩病院眼科土至田宏順天堂大学医学部附属静岡病院眼科英国コンタクトレンズ協会の“ContactCLensCEvidence-BasedCAcademicReports(CLEAR)”の第C8章は医療用コンタクトレンズを取りあげている.今回はその第C1回として,フィッティングの評価方法や強膜レンズの課題,今後の展望に関する部分を解説する.はじめにコンタクトレンズ(CL)は,屈折異常の矯正だけでなく,円錐角膜や眼表面疾患に対する医療用として使用されることがある.今回は,医療用CCLの種類や対応疾患について1)紐解いていく.医療用コンタクトレンズの定義医療用CCLとは,基礎疾患または複雑な屈折状態の治療をおもな目的として装着するCCLである.眼鏡の必要性をなくすという美容目的以外の理由で処方されており,屈折異常を矯正する場合と矯正しない場合とがある.用途に応じて以下のように分類されている.・医療用またはCbandageソフトコンタクトレンズ(BSCL):眼不快感の治療,手術後または基礎疾患の治療中に角膜の創傷治癒を促すため,または眼瞼や睫毛などの機械的刺激から角膜を保護するために使用される.・リハビリテーション用CCL:強い屈折異常や角膜不正乱視などにより,眼鏡で十分な視力が得られない患者に処方される.外傷後や手術後などに視機能や外観を改善させるためのCCLもこのカテゴリーに含まれる.医療用コンタクトレンズの素材1880年代後半に屈折異常を矯正する最初のCCLが開発され,同じころ,円錐角膜患者の視力改善を目的としたCCLが医療用として用いられた.しかし,このCCLはガラス製の強膜レンズで,酸素を通さないため角膜浮腫と眼痛が問題となった.1950年代後半にはポリメチルメタクリレート(polymethyl-methacrylate:PMMA)製のレンズが治療用として使用されていたが,PMMAも酸素を通さない素材であったため,現在ではガス透過性素材に取って代わられた.(79)ソフトコンタクトレンズ(SCL)市場は,1970年代初頭にハイドロゲルCCLが導入されたが,連続装用に必要な酸素を角膜に供給することができなかったため,酸素透過性の高いシリコーンハイドロゲル(siliconehydro-gel:SiHy)製CSCLが開発され,現在,医療用CSCLまたはCBSCLとして使用が認められているCSCLはおもにSiHy素材である.医療用コンタクトレンズの種類ハードコンタクトレンズ(HCL):レンズの動きや小さなレンズ径,それに伴う涙液の不安定性により,眼表面疾患の治療用CCLとしては適さないが,角膜不正乱視を矯正できるため,視覚リハビリテーション用として使用されている.屈折異常や無水晶体眼の患者では,必要な度数を補うためにレンズが厚くなるので,レンズの酸素透過量が制限される.しかし,HCLはレンズが眼表面で動くことにより涙液交換が促進されるため,角膜全体を覆うCSCLよりも,大気中の酸素をより多く角膜に取り入れることができる.近年,強膜レンズのほうが装用感が良好であることから,角膜疾患に対するCHCL処方は,以前より減少傾向である.しかし,強膜レンズよりもCHCL装用の継続を希望する割合も一定数あり,疾患管理の選択肢の一つとしてCHCLが必要であることがうかがえる.強膜レンズはC2025年C1月現在,日本未認可である.ハイブリッドレンズ:中央にあるCHCLの部分で鮮明な視力を提供し,周辺部にレンズの安定性と快適性を高めるための柔らかいレンズスカートが融合している.初期のハイブリッドレンズは酸素透過率が低いため,角膜血管新生やレンズスカート接合部の破損が多かったが,近年では円錐角膜などの不正乱視や,角膜移植などの外科的治療後の患者に対する治療に有用であることが示唆あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025C790910-1810/25/\100/頁/JCOPYされている.ハイブリッドレンズはC2025年C1月現在,日本未認可である.ピギーバックレンズ:手術や外傷などにより不正乱視や高度の屈折異常となった場合やCHCL不耐症などの場合に,医療目的でCSCLの上にCHCLを装着するシステムである.2枚のレンズ装用するため,レンズの選択時に十分に酸素供給の問題を考慮することが重要である.レンズや素材の技術革新に伴い,快適性,視力,生理機能の向上を目的とした多くのパラメータを操作することが可能となっている.強膜レンズ:強膜レンズは初めて開発されたCCLであり,治療目的で使用された初めてのCCLでもある.強膜レンズは,眼表面とCCLの間に防腐剤無添加の滅菌生理食塩水が満たされているため,角膜前面の収差が中和され,眼表面が潤い,眼瞼や睫毛などの機械的刺激から眼を保護することができる.そのため,角膜上皮疾患や円錐角膜などの不正乱視の視覚リハビリテーションや快適性のため,眼表面疾患に対する治療用など医療上重要な役割を担うことができる.急性期におけるBSCL角膜屈折矯正術後に使用されるCBSCLは,角膜表面切除術後の痛みを軽減し,瞬きによって生じる剪断応力から再生上皮を保護することで再上皮化を促進する.SiHyレンズは,ハイドロゲルレンズと比較して角膜の再上皮化が速く,患者の不快感が軽減するが,急性期におけるCBSCLの使用の欠点として,他のCCLの使用と同様に感染の可能性があり,管理には注意が必要である.また,LASIK術後はフラップの浮腫が生じるために,BSCL装用の継続が困難なこともある.角膜クロスリンキングで角膜上皮.離(epi-o.)を行った際に,BSCLを角膜上皮治癒の促進と術後疼痛の軽減のために使用する.角膜クロスリンキング後のCBSCLによる感染リスクはC0.0017~0.71%と非常に低いが,photorefractiveCkeratectomy(PRK)と比較し感染リスクが高い.このことは,円錐角膜にアトピー性皮膚炎の合併例が多いことが一因であると考えられている.遷延性角膜上皮欠損(persistentCepithelialdefect:PED)は,角膜上皮欠損がC2週間経過後も治療に反応しない場合をさす.PEDは医原性,手術合併症,神経麻痺性角膜症,眼表面疾患,感染症,外傷などさまざまな原因で生じる.BSCLは眼瞼からの機械的な刺激を減らし,角膜上皮の創傷治癒を促進するが,欠点としてレンズの位置ずれや微生物性角膜炎のリスクがあげられる.PEDに対するCBSCLとしてCSCLが使用されているが,長期の管理が必要な場合には強膜レンズを選択することが支持されている.角膜上皮.離および再発性角膜上皮びらん症候群(cornealepithelialerosionsyndrome:RCES)の患者に対して,損傷した角膜上皮を保護し再上皮化を促進するために酸素透過性の高いCBSCLがよく使用される.RCSE患者にとってCBSCL使用のおもなリスクは感染であり,炎症を抑えるためにステロイドを使用すると感染リスクが高くなるため,注意が必要である.角膜穿孔および角膜裂傷の患者にはフィブリンやシアノアクリレート組織接着剤が使用されることがある.接着剤の表面は粗く,圧迫や瞬きなどにより脱落する可能性があるため,BSCLを併用することで外科的な介入を回避できる場合がある.おわりに今回はCCLEARレポートの第C8章の前半を要約し解説した.医療用CCLはさまざまな疾患の治療や視力矯正だけでなく,手術後の疼痛軽減やの創傷治癒に必要なアイテムであり,医療用CCLの進歩を再確認する必要がある.文献1)YacobsCDS,CCarrasquilloCKG,CCottrellCPDCetal:CLEAR-MedicalCuseCofCcontactClenses.CContactCLensCandCAnteriorCEye44:289-329,C2021