屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載138大橋裕一坪田一男138.超音波生体顕微鏡(UBM)によるICLTMの小島隆司名古屋アイクリニックサイズ決定Implantablecollamerlens(ICLTM)は毛様溝に固定される後房型の有水晶体眼内レンズである.毛様溝間距離と水平角膜径は相関が弱いために直接測定が望まれる.筆者らは超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて毛様溝間距離を直接測定し,重回帰分析によりICLTMサイズ回帰式を決定した.それをもとにICLTM挿入を行うと,従来の方法よりも適切な術後vaultが形成されることがわかった.Implantablecollamerlens(ICLTM)は毛様溝に固定される後房型有水晶体眼内レンズである.有効性,安全性,予測性にすぐれ,現在は高度近視のLASIK(laserinsitukeratomileusis)非適応患者がおもに対象となっているが,今後適応範囲が広がる可能性も考えられる.後房に挿入する特性上,合併症として水晶体混濁(前.下混濁)や瞳孔ブロックによる急性緑内障発作がある.これらの合併症を避けるために,ICLTM手術においてはレンズサイズの決定が非常に重要である.レンズサイズが相対的に大きいと,虹彩が裏側から持ち上げられ狭隅角になる.またレンズサイズが相対的に小さいと,ICLTMが水晶体に近くなり,白内障の発症リスクが高くなる.従来はICLTMのサイズは,メーカー(STAARSurgical社)が用意したノモグラムから算出していた.これは水平角膜径(whitetowhite:WTW)と前房深度から適切サイズを算出する方法である.筆者らも初期はこのノモグラムを使用して,ほとんどの症例では問題がなかったが,なかに非常に高いvault(ICLTMと水晶体前面.距離)や非常に低いvaultを経験したこともあり,この方法に限界を感じていた.実際にこれまでに,WTWは毛様溝間距離(sulcustosulcus:STS)との相関がない,もしくは低いことが報告されている1).そこに広角測定が可能な超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)が発売された.これによって前眼部が一画面で解析可能になり,STSが明瞭に測定できるようになった.まず筆者らは,視能訓練士をトレーニングし十分にUBMの操作に熟練させた.その状態で,2検者による再現性や同一検者による再現性を評価し報告した2).同一検者で健常眼10眼をそれぞれ10回測定した際の,平均変動係数は0.62±0.20%であ(67)った.これにより同一検者の再現性は高いことが示された.一方,2検者間の再現性は3.4±2.4%であり,Bland-Altmanplotにおいても2検者に差を認めたことから,何が原因かをさらに調査したところsulcusの最終端を決定するところでわずかに個人差が生じており,複数の検者で測定を行う際は,同じ画像を提示して同じ値を測定できるようになるまで検者をトレーニングする必要があると思われた.つぎの段階として,筆者らはすでにICLTM手術を受けた患者に着目して,挿入したレンズ径と術後vaultから,最適なvaultを形成させるには,どのサイズが適切であったか逆算した.この算出には,レンズを水中で押し縮めた際の距離の1.14倍vaultが高くなる(STAARSurgical社内データ)ことを利用した.最適なvaultは一般的に術後所見として適切とされている1角膜厚みとして500μmとした.たとえば,12mmのレンズを挿入して,術後vaultが800μmであったならば,もう少し短いレンズを挿入するべきで,計算としては12+(0.5.0.8)/1.14=11.74と計算され,11.7mmのレンズを入れれば丁度vaultが0.5mmに収まったはずであると計算した.ただし,これには固定位置がまったく同じであるという仮定が含まれている(実際にはICLTMサイズは0.5mmステップで作製されているのでこのようなレンズを注文することはできない).このようにして今までに手術が終わった患者で,最適サイズを計算した.その後,さまざまな眼パラメータを説明変数の候補としてステップワイズ重回帰分析を施行した.UBMで測定されるパラメータとしては,STSだけでなく新しいパラメータとしてSTSL(STSのラインと水晶体前面までの距離)を含めた(図1).STSLを考慮したのは,vaultは単純にSTSとレンズサイズの相対的な関係だけでなく,水あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115790910-1810/11/\100/頁/JCOPYTMサイズを計算する回帰式は,以下のように示された3).最適ICLTMサイズ(mm)=3.611+0.468STS+0.784ACD+1.09STSL(K式)つぎにK式を用いて,サイズを決定し新規の53名101眼の患者にICLTMを挿入した.その結果,平均のvaultは0.71±0.20mm(0.29.1.33mm),0.15mm以上1.0mm以下のmoderatevaultに収まった割合が89眼(88.1%)で,lowvaultは1例もなく,1.0mm以上のhighvaultは12眼(11.9%)であった.またSTAARSurgical社の提供するノモグラムやDoughertyらが報告しているノモグラム4)で予測vaultを計算すると,moderatevaultに入る割合がK式において有意に高いことがわかった.現在でも筆者らはICLTMのサイズ決定ではUBMを用いているが,この方法を行う際にはいくつかの注意点がある.まず,UBMで毛様溝を決定する場合,虹彩裏面の高反射のラインの最終端をsulcusとする.第2に複数の検者が測定を行う場合は,前述したように検者間の差が起こらないように事前にトレーニングするべきである.筆者らの回帰式はVumaxII(Sonomed社)を用1580あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011図1超音波生体顕微鏡(UBM)で測定した毛様溝間距離(STS)とSTSlineと水晶体前面の距離(STSL)いた回帰式であるために,他のUBMでこの回帰式のまま使用できるか,修正が必要かどうかは検証が必要である.もう一つの限界として,ICLTMは0.5mmステップでサイズが作製されている.このためどうしてもlowvaultを避けるため,大きめのサイズを選択してしまう傾向がある.11.9%の症例でhighvaultになったのはこの影響と思われる.今後は新たな症例を回帰式に組み入れて,常にICLTMのサイズ決定を最適化してICLTM手術が隅角や水晶体への影響の少ない手術となるようにしていきたい.文献1)KawamoritaT,UozatoH,KamiyaKetal:Relationshipbetweenciliarysulcusdiameterandanteriorchamberdiameterandcornealdiameter.JCataractRefractSurg36:617-624,20102)YokoyamaS,KojimaT,HoraiRetal:Repeatabilityoftheciliarysulcus-to-sulcusdiametermeasurementusingwide-scanning-fieldultrasoundbiomicroscopy.JCataractRefractSurg37:1251-1256,20113)KojimaT,YokoyamaS,ItoMetal:Optimizationofanimplantablecollamerlenssizingmethodusinghigh-frequencyultrasoundbiomicroscopy.AmJOphthalmol,inpress4)DoughertyPJ,RiveraRP,SchneiderDetal:Improvingaccuracyofphakicintraocularlenssizingusinghigh-frequencyultrasoundbiomicroscopy.JCataractRefractSurg37:13-18,2011(68)