0910-1810/11/\100/頁/JCOPYI視細胞外節はOCTでどう見えるのか?OCTは光波を用いた超音波断層装置である.測定光を眼底に導入すると,網膜のさまざまな層で反射波が発生する.反射波が強いところがOCT画像では高い輝度をもつ,層,またはラインとして描出される(図1).視細胞先端部には,①外境界膜(externallimitingmembrane:ELM),②視細胞内節外節接合部(junctionbetweenphotoreceptorinnerandoutersegment:IS/OS),③網膜色素上皮(RPE)の高反射ラインがある.黄斑部では,IS/OSとRPEの間にもう1本の高反射ラはじめに視細胞の外節は,視細胞の先端に位置する円筒形の構造物で,網膜色素上皮(RPE)に接している.外節の内部は円板を重ねた構造をしており,円板にはロドプシンなどの視物質がある.ここに光が当たると,その立体構造が変化し,一連の反応が起こって,細胞膜のドアが閉じる.これにより過分極が生じる.こうして,光が電気信号に転換されるわけである.したがって外節こそは視力の根源である.外節の障害は鋭敏に視力と網膜電図(ERG)の低下に反映される.最近,スペクトラルドメイン光干渉断層計(SD-OCT)の発展により,外節を主病巣とするさまざまな病態があることがわかってきた.(59)213*ShojiKishi:群馬大学大学院医学系研究科病態循環再生学講座眼科学分野〔別刷請求先〕岸章治:〒371-8511前橋市昭和町3-39-15群馬大学大学院医学系研究科病態循環再生学講座眼科学分野特集●黄斑疾患アップデートあたらしい眼科28(2):213.223,2011視細胞外節病PhotoreceptorOuterSegmentDisease岸章治*…………………………………………………………………………………………………………図1黄斑部視細胞先端部のOCT像214あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(60)錐体ではもう少し時間がかかるという.筆者はコンピュータゲームに集中した後,中心暗点をきたした興味深い症例を2例経験した2).その一人は16歳の女子高校生であった(図2).冬休みに入り1日10時間ゲームに熱中し,10日たってから右眼の中心暗点を自覚し来院した.眼底は一見正常であったが,よく見ると右眼の中心窩には黄色の顆粒が散在していた.OCTでは中心窩にIS/OSの破綻があった.多局所網膜電図(mfERG)ではIS/OS破綻部に一致して,すなわち中心窩で振幅の極度な低下があった.IS/OSの破綻は徐々に修復され,16週後には完全に戻り,mfERGにおける中心窩のピークも正常に戻った.この症例は錐体の過度の刺激によインがあり,④第3のライン(3rdline),またはそれが錐体外節の先端と考えられていることからCOST(coneoutersegmenttip)とよばれている1).錐体の外節の長さは杆体の約半分である.RPEは細長い微絨毛(conesheath)を伸ばし,錐体外節の先端部を包んでいる.II視細胞外節の病態1.消耗外節は酸化ストレスにさらされており,組織の消耗が激しい.外節の先端はRPEの微絨毛に包まれており,貪食を受ける.一方,内節側から新しい外節が作られて,杆体では外節は約10日で刷新(renewal)される.初診初診1週2週0.60.80.94週10週16週0.91.21.216週後1.21週後0.810週後1.28週後1.0図2コンピュータゲーム後の中心暗点を自覚した例(16歳,女子)カラー眼底:中心窩に黄色顆粒あり.OCT像とmfERGの経過.(61)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011215な疾患に続発する.図4は,中心暗点で視力が0.6に低下した55歳の男性である.特発性の外節欠損として経過観察していたが,26カ月後に漿液性網膜.離が出現し,フルオレセイン蛍光造影でCSCが判明した.漏出点への光凝固で網膜下液は吸収した.図5は68歳の女性である.黄斑円孔の術前と術後5カ月のOCTを示す.閉鎖した円孔には外節の微小欠損が残っている.3.炎症性破壊a.AZOOR(acutezonaloccultouterretinopathy)AZOORは,光視症を伴う耳側視野欠損または中心暗点を訴えるのが特徴である.検眼鏡で正常なので中心暗点を訴える場合は,球後視神経炎と誤診されることがある.耳側暗点はMariotte盲点の拡大によるものである.最近,OCTにより外節が選択的に破壊されていることがわかった3).外節は視力の根源であるので,視野欠損の範囲と,mfERGでの反応低下部位と,外節の欠損部は正確に対応する.図6は44歳の女性である.10年前から左眼中心が見えづらい,暗いという自覚症状があった.眼科を転々とするも原因がわからなかった.初診時,VD=(1.5),VS=(0.2),眼底は乳頭周囲に萎縮がり,その消耗が生理的な刷新に追いつかなかったと考えられる.ゲームをやめたことで,生理的な外節刷新が起こり,その構造と機能が回復したと考えられる.2.微小欠損a.特発性文字1個分が見えない,あるいは中心が歪むという訴えがあるにもかかわらず,眼底が一見正常である患者にときに遭遇する.このような場合はSD-OCTが威力を発揮する.症例は49歳の男性である(図3).2,3年前から右眼の歪みとかすみを自覚した.症状は不変である.視力は右眼(0.6),左眼(1.2)である.両眼とも眼底は一見正常で,フルオレセイン蛍光造影も正常であった.OCTでは中心窩にIS/OSの欠損があった.本例のように基礎疾患が同定できない場合,macularmicroholeと診断される.いわゆる黄斑円孔とは無関係である.外節の微小欠損はつぎに述べるように続発性のことが圧倒的に多い.b.続発性外節の微小欠損は,中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)後,黄斑円孔の自然寛解,網膜.離術後など,さまざまODVD=(0.6)OSVS=1.2図3原因不明の外節微小欠損(49歳,男性)カラー眼底と蛍光眼底造影は正常.OCT:中心窩に外節欠損がある.216あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(62)b.MEWDS(multipleevanescentwhitedotsyndrome)MEWDSは,Mariotte盲点の拡大と虫食い状の暗点が特徴である.眼底に白斑が多発する.OCTではIS/OSのびまん性の破壊がある4).しかし,本症はAZOORと異なりIS/OSは自然に再生され,自覚症状も寛解する.症例(図7)は14歳の男子である.4日前から感冒症状,3日前から左眼の奥の痛みと視力低下をきたし来院.初診時VS=(0.07),VD=(0.8),両眼約.3.0Dの近視がある.左眼に硝子体混濁があり,乳頭浮腫と淡い白斑が後極から周辺部に散在していた.OCTではIS/OSのびまん性の破壊があり,白斑とは必ずしも一致していなかった.視野はMariotte盲点の拡大があり,それが中心にかかっていたため視力低下を生じていた.右眼は自覚的にも検眼鏡でも異常はなかった.左眼は3週間後には視力が1.2に戻り,IS/OSが再生されて,検眼鏡でも白点が消失した.AZOORとMEWDSの原因は不明であるが,外節への自己免疫が疑われる.AZOORは不可逆的な疾患と認識されているが,ステロイドパルスや抗ウイルス薬が効いたという報告がある.あるが,黄斑は正常に見える.Humphrey10-2でMariotte盲点の拡大があった.mfERGで黄斑の振幅低下があり,それに一致してOCTでIS/OSの欠損があった.AZOORはOCTとmfERGによって確定診断ができる.AZOORはまれな疾患ではない.眼底が正常で光視症を伴う暗点を訴えるときは,AZOORを疑うべきである.初診0.620カ月後0.626カ月後漿液性.離0.4FAで漏出点あり光凝固施行38カ月後0.7図4経過中にCSCが判明した外節微小欠損(55歳,男性)FA:フルオレセイン蛍光造影.0.51.0図5黄斑円孔術前(上),術後(下)(68歳,女性)グリアによる円孔閉鎖(白矢印)と外節欠損(黄色矢印).(63)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011217である.OCTでは右眼は外節の全体的な伸長があり,左眼ではそれが氷柱状になっている.5.外節の脱落漿液性網膜.離がさらに遷延すると,外節は脱落する.外顆粒層も菲薄化するので,視細胞自体のアポトーシスが進行していると考えられる6)(図9).6.外節物質の貯留卵黄様黄斑ジストロフィ(Best病)は,黄斑に卵黄様4.外節の伸長外節の先端は,RPEの微絨毛に包まれており,順次,貪食され,RPEの中で消化される.CSCのように外節がRPEから離れた状態が続くと,RPEによる外節の貪食ができなくなる.このため,外節が長くなり,しばしば氷柱(つらら)状になる5).外節はマクロファージによる貪食も受ける.貪食された外節,あるいは伸長した外節は自発蛍光を発する.症例は47歳の男性である(図8).2年前と1年前にCSC(両眼)になった既往あり,5カ月前から見づらさが出現している.視力は両眼(1.2)IS/OS欠損図6AZOOR(44歳,女性)Mariotte盲点の拡大.OCTで黄斑部におけるIS/OS欠損とそれに一致したmfERGの応答低下がある.218あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(64)IS/OSのびまん性破壊図7MEWDS(14歳,男子)初診時所見:左眼眼底.乳頭浮腫,淡い白斑が散在.Mariotte盲点の拡大があり中心視野にかかっていた.OCT:IS/OS(矢印)のびまん性の破壊がある.VD=(1.2)VS=1.2図8両眼性のCSC(47歳,男性)外節が長くなっている.左眼では氷柱状になっている.あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011219物質が貯留するのが特徴である.卵黄物質はRPEに貯留したリポフスチンであると考えられていた.OCTにより,卵黄物質は視細胞外節に由来するもので,それが網膜下に貯留して卵黄所見を呈することがわかってきた.症例は48歳の女性である(図10).5年前から中心が見づらい自覚があり,卵黄様黄斑と眼球電図(EOG)によるL/D比(明極大/暗極小比)の低下からRPE機能の低下を伴ったBest病と診断された.視力は両眼(1.2)であったが,1カ月前から右眼は(0.5)に低下した.右眼は卵黄物質が網膜下にドーム状に蓄積して,自発蛍光を出している.左眼では外節層が厚くなり,下方で卵黄物質が前房蓄膿(pseudohypopypon)のように貯留している.OCT所見と自発蛍光から卵黄物質は外節由来と考えられている.(65)外節脱落図9ChronicCSC〔56歳,男性,視力(0.3)〕外節の脱落と網膜菲薄化がある.図10卵黄様黄斑ジストロフィ(48歳,女性)右眼(上段):卵黄期,眼底自発蛍光(FAF)で高輝度を示す.左眼(下段):pseudohypopyon(矢印)を呈している.VS=1.2VD=(0.5)FAF220あたらしい眼科Vol.28,No.2,20117.外節の変性a.Occultmaculardystrophy(Miyakedisease)眼底は正常なのに,黄斑だけの錐体機能の低下を示す,黄斑ジストロフィである.全視野ERGは正常であるため,黄斑局所ERGまたはmfERGがないと診断が確定できなかった.OCTで黄斑のみの外節が欠損することが明らかになった.図11は本症の親子例である.母親(45歳)で視力は両眼0.1,娘(17歳)の視力は右(66)図12網膜色素変性(13歳,男子)眼底は後極は正常色調,周辺は灰色がかっている.OCTでは黄斑のみでIS/OSが保たれている.(.)IS/OS(+)(.)….図11Occultmaculardystrophy(Miyakedisease)上が娘で,下が母親.眼底は正常.黄斑部(白線の間)で娘はIS/OSが不鮮明で第3のラインが欠損,母はそれに加えて外顆粒層の菲薄化(矢印)がある.あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011221眼(0.15),左眼(0.3)である.眼底は両者とも異常を認めない.OCTでは,娘は黄斑のIS/OSが不鮮明で第3のライン(錐体外節先端)が欠損しており,錐体外節の欠損が疑われる.母はそれに加えて外顆粒層の菲薄化があり,視細胞本体も減少していることがわかる.b.網膜色素変性杆体が最初に障害され,進行すると錐体も障害され視力を失う.小児期では眼底が一見正常なことがある.診断にはERGや視野検査が必要であるが,小児では検査が困難である.この点,OCTは非接触で短時間に検査できるので,たいへん有用である.症例(図12)は13歳の男子である.視力は右眼(1.0),左眼(0.8)である.日常生活に不自由はなく,卓球部で活躍している.眼底の中間周辺部は灰色がかっているが,後極一帯は正常の色調である.OCTでみると,黄斑部のみでIS/OSが保たれていて,それより周辺はIS/OSが欠損している.c.錐体杆体ジストロフィ小児例では眼底が一見正常なので,弱視と診断されることがある.症例(図13)は5歳の男児である.視力は両眼(0.09)で眼振があり,弱視として4年間経過観察されていた.ERGは錐体反応がなく,杆体も減弱している.OCTではIS/OSが不鮮明で錐体外節に相当する第3のラインが欠損している.これはoccultmaculardystrophyに類似している.8.硝子体牽引による外節欠損意外に思われるが,硝子体牽引も外節の欠損を起こしうる.中心窩では硝子体と生理的な強い接着があり,そ(67)左眼左眼右眼左眼正常眼図13錐体杆体ジストロフィ(5歳,男児)眼底は一見正常だが,ERGでは錐体が無反応である.OCTではIS/OSが不鮮明で第3のラインが欠損している.正常眼(下段)と比較すると,病的所見がわかりやすい.222あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(68)IS/OS(.)図15網膜.離復位後〔24歳,女性,視力(0.2)〕OCTでは黄斑部でIS/OSが欠損している.図14Stage1黄斑円孔(53歳,女性)初診時(上)にperifovealPVDがあり,外境界膜がわずかに隆起していた.4カ月後,外節,IS/OS,外顆粒層にわたる亀裂が生じた.あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011223の周囲で後部硝子体.離(PVD)が起こると(perifovealPVD),硝子体牽引は中心窩に集中し,中心窩が挙上される.Muller細胞は外境界膜から内境界膜(Muller細胞の基底膜)に至る柱状の支持組織である.中心窩では錐体形をしているので,Mullercellconeとよばれている.硝子体牽引はこれを介して外境界膜まで至る.このため,外節も挙上されて,欠損が生じることがある.症例は53歳の女性.1円玉より小さい範囲で中心がぼけると訴えている.初診時,perifovealPVDがあり,外境界膜がわずかに隆起していた.視力は(1.2)であった.4カ月後,中心窩に外節から外顆粒層に至る亀裂が生じていた(図14).9.続発性外節欠損外節の欠損は網膜.離,黄斑円孔,黄斑浮腫など,さまざまな疾患で生じ,それが視力予後を決定することで知られてきた.症例は24歳の女性.アトピー性皮膚炎に合併した網膜.離.硝子体手術2カ月後.網膜は復位したが,視力は(0.2)である.OCTでは黄斑部でIS/OSが欠損している(図15).文献1)SrinivasanVJ,MonsonBK,WojtkowskiMetal:Characterizationofouterretinalmorphologywithhigh-speed,ultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci49:1571-1579,20082)KishiS,LiD,TakahashiMetal:Photoreceptordamageafterprolongedgazingatacomputergamedisplay.JpnJOphthalmol54:514-516,20103)LiD,KishiS:Lossofphotoreceptoroutersegmentinacutezonaloccultouterretinopathy.ArchOphthalmol125:1194-1200,20074)LiD,KishiS:Restoredphotoreceptoroutersegmentdamageinmultipleevanescentwhitedotsyndrome.Ophthalmology116:762-770,20095)MatsumotoH,KishiS,OtaniTetal:Elongationofphotoreceptoroutersegmentincentralserouschorioretinopathy.AmJOphthalmol145:162-168,20086)MatsumotoH,SatoT,KishiS:Outernuclearlayerthicknessatthefoveadeterminesvisualoutcomesinresolvedcentralserouschorioretinopathy.AmJOphthalmol148:105-110,2009(69)