0910-1810/11/\100/頁/JCOPYdomainOCTでは解像度が低かったため網膜内の層単位での解析は困難であったが,2002年に登場した後継機では解像度が上がり神経線維層厚(NFL)が実用的に測定・解析可能になり,最近のspectral-domainOCTではさらに細かく網膜内の層別の解析が可能になってきはじめに光干渉断層計(OCT)は眼底を点光源でスキャンして,網膜の断層像を高解像度で撮影する検査装置である.1996年に登場した当初のtime-domainOCTはこのスキャンスピードが低速であったため,眼底の解析は線状のスキャンを組み合わせた程度のものであった(図1左列a?c).しかし,近年登場してきたspectraldomainOCTでは,スキャンが高速で黄斑部全体をスキャンすることができるため,眼底を面で解析することが可能になった(図1右列d?f).また,当初のtime-(35)1255*YasukiIto:名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座〔別刷請求先〕伊藤逸毅:〒466-0065名古屋市昭和区鶴舞町65名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部・感覚器外科学講座特集●黄斑疾患の病態解明に迫る光干渉断層計あたらしい眼科28(9):1255?1261,2011OCT画像の定量化QuantificationofRetinalParametersUsingOpticalCoherenceTomography伊藤逸毅*図1OCTの黄斑部網膜厚マップの進歩a,b,c:Time-domainOCTであるStratusOCTでの黄斑部網膜厚マップ.a:放射状6本のスキャンで黄斑部をスキャンし,スキャン間は補完してマップが作成される.したがって,微細な病変は検出困難である.b:自動作成されたマップ.スキャン間が自動で補完され,きれいなグラデーションで描かれる.c:マップ上に対応する区画内の平均厚み.d,e,f:Spectral-domainOCTであるCirrusOCTでの黄斑部網膜厚マップ.d:Spectral-domainOCTでは,黄斑部は非常に多数のスキャンで全体が走査されるため,微細な病変も検出されやすい.e:自動作成されたマップ.黄斑部の凹凸がきれいに描出されている.特に網膜血管部が隆起しているのがわかるのが印象的である(矢印).f:マップ上に対応する各区画内の厚み.CirrusOCTではより網膜深層で境界線が描かれるため,StratusOCTでの網膜厚よりも厚くなっている.275315230297247307256303312245271162258225265238271264adecfb1256あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(36)ている(図2).本稿では,最近のOCTによる定量的解析について述べたい.Iセグメンテーションについてセグメンテーションとは,測定対象に輪郭線あるいは境界線を引くことである(図3).境界線が引かれてはじめてその測定,すなわち定量的解析が可能になる.この図3自動セグメンテーションの代表例上から,硝子体/内境界膜(赤色),神経線維層/神経節細胞層(オレンジ),内網状層/内顆粒層(黄色),外網状層/外顆粒層(緑色),視細胞内節外節境界(水色),網膜色素上皮(ピンク色),の順に自動でセグメンテーションがされている.図2OCTの解像度の進歩a:1996年発売の初代OCT(time-domainOCT)による黄斑部断層像.b:2002年発売のtime-domainOCTによる画像.aでは見えなかった視細胞内節外節境界(IS/OS)(矢印)が見えるようになった.c:2007年発売のspectral-domainOCTによる画像.IS/OSはより明瞭になり,bで見えなかった外境界膜(矢印)が見えるようになった.d:2008年発売の解像度3μmのspectral-domainOCTによる画像.視細胞外節先端(OS-tip)(矢印)がより見えるようになった.abcd図4OCTでのマニュアル測定各機種にはキャリパー機能がついているので,任意の2点間の距離を測定できる.内蔵ソフトで解析できないものも測定できるが,主観が入るのが欠点である.(37)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111257II機種による測定値の差網膜全層の厚みを測定するときには,当たり前のことであるが,内境界膜から網膜色素上皮(RPE)までを測定する.そのうち,硝子体側は網膜前面が非常に明瞭に描出されているのでその決定には支障がないが,RPE側については,RPE自体が描出されることはないため,実はどこまでとするかがむずかしい.Time-domainOCT初代機ではRPE,視細胞内節(IS)外節(OS)境界(IS/OS)などが一塊に写っていて1本の線として描出されているが,自動解析での境界線はIS/OS付近に引かれていた.また,time-domainOCT第二世代機(StratusOCT)ではIS/OSがある程度写るようになったもののやはりIS/OS付近に境界線が引かれる傾向がある.しかし,spectral-domainOCTになると,IS/OSが完全に分離して描出されるようになったためか,CirrusOCTでは,RPEとOStipの真ん中近辺に線が引かれる(図6).一方,スペクトラリスOCTでは,RPE側の線はBruch膜としてRPEの外側に線が引かれる.このように機種によりその傾向が異なるため,読影の際,その機種がどこにセグメンテーションをする傾向があるとき,マニュアルで測定する際(図4)は,測定者が各自の判断でその境界を決めて測定を行うが,測定者によりその判断が違ったり(inter-observervariability),測定者が同じでも計測の度に判断が違ったりする(intraobservervariability)ため注意が必要である1).一方,各OCT装置では,自動でセグメンテーションする機能がついているため,一般的にはこちらが利用される.しかし,ノイズが多い画像や硝子体・出血・硬性白斑などによりシグナルがブロックされている画像では,自動セグメンテーションはうまくいかないことが多い(図5).マップを解析する際,セグメンテーションがうまくいっていないものをそのまま解釈すると判断を誤る可能性があるため,不自然なマップをみたらセグメンテーション不良を考える必要がある.そのような場合にもどうしてもマップを作成したい場合は,マニュアルでの修正を行う(図5).また,自動測定がうまくいっていたとしても,機種によりセグメンテーションのアルゴリズム,つまり線の引き方が異なるため,違う機種間では網膜厚の比較はできない2).図5セグメンテーションエラーa:黄斑マップ上に不整な肥厚部分が見られる(矢印).b:断層像を見ると,赤線の自動セグメンテーションが硝子体を捉えてしまっている(矢印).c:こちらのマップも不整な肥厚部分が見られる(矢印).セグメンテーションエラーのあるマップはスキャンの向きに沿った不整な肥厚あるいは菲薄化が特徴である.このマップではスキャンが横向きなので,不整な肥厚部位も横向きである.d:当該の断層像を見てみると,脈絡膜/強膜境界のほうにセグメンテーションが流れてしまっている(矢印).e:マニュアルで修正したところ不整な肥厚部分はなくなった.f:マニュアルで修正した断層像.bdefca1258あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(38)かを把握しておくとより理解が深まると思われる2).III正常値OCTの読影で最も大切なことは,正常像を理解しておくことである.正常像が頭のなかに入っていれば,眼底写真の読影と同様にOCTでも自然と異常所見は眼につくようになる.網膜の定量的解析についても同様であるが,この際に重要なパラメータは年齢と眼軸長である.網膜厚は加齢とともに菲薄化し,また眼軸が伸びるほど菲薄化する3).よって,同じ網膜厚でも,若年者であれば菲薄化と判定されるが,高齢者であれば正常と判図6いろいろな機種でのOCTのセグメンテーション網膜色素上皮(RPE)側(紫色破線)が各機種で異なることがわかる.a:OCT初代機,b:StratusOCT:IS/OS近辺にセグメンテーションされている.c:CirrusOCT:OStipとRPEの線の中間付近にセグメンテーションされている.d:Spectralis:Bruch膜として,RPE下方にセグメンテーションされている.abcd図7CirrusOCT解析画面a:黄斑部網膜厚マップ.b:中心1mmの平均網膜厚,測定エリアの体積および平均厚み.cの基準に則り色がついている.c:配色の基準.平均母集団の5?95%までは緑色,それをはずれると程度に応じて色が変わる.d:ETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)各セクターの平均網膜厚.ここにもcの基準に則り配色がされる.e:本症例は若年正常者であるが,意図的に80歳として再解析すると配色が変わる.若年者のほうが網膜が厚いために同じ網膜厚でもその評価がかわることをソフトウェアが自動で判断してくれる.abcde(39)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111259ソフトウェアではそのOCTで測定された各年代別の正常値が組み込まれており,測定された厚みが正常群の分布のなかでどの位置にあるのかが自動表示されるようになっている(図7).その結果,撮影結果の出力画面に定されることもある(図7).この判定に有用なのが,下記に述べる内蔵ソフトウェアによる解析である.しかし残念ながら現在までのところ眼軸長までは考慮されていないため,強度近視眼においてはその都度その厚みを判断する必要がある.IV解析ソフトウェアSpectral-domainOCTの時代になり多数の会社がOCTを販売するようになった.そのおもな競争点は,画像の解像度,スキャンスピードであるが,それ以外に各社力をいれているのがソフトウェアである.Spectral-domainOCTでは,非常に多数の画像を短時間で撮影するが,実際の臨床でそれらをすべて1枚1枚時間をかけて見る余裕はない.また,わずかな菲薄化あるいは肥厚である場合はそれが異常であるかどうか判断することもまたむずかしい.ここで登場するのが解析ソフトウェアである.最近の図8後部ぶどう腫高の測定測定時の眼に対する機械の位置で変動がみられ注意が必要であるが,後部ぶどう腫高の進展評価に有用である.ここでは,中心窩から3mm離れた部位での網膜色素上皮の高さの差を測定する.図9アイトラッキング機能を用いた網膜静脈分枝閉塞に対するbevacizumab療法後の経時変化の評価a:Bevacizumab投与前のOCT撮影時の赤外線による眼底像.黄斑部上方に浮腫があるのがわかる.b:投与前の縦スキャン画像.画像右半分に浮腫がみられる.c:投与前の黄斑部網膜厚マップ.黄斑部上方に浮腫がみられる.d:Bevacizumab投与後約2週間のOCT撮影時の赤外線による眼底像.トラッキングするために眼底像がやや反時計回りに回旋している.e:投与後の縦スキャン画像.網膜浮腫がかなり軽減しているのがわかる.f:投与後の黄斑部網膜厚マップ.マップでも網膜浮腫がかなり軽減しているのがわかる.g:網膜断層像の投与前後のプロファイル.投与により任意の部位で何μm浮腫が改善したかがわかる.h:投与前後の差分マップ.上方中心に浮腫が軽減しているのがわかる.adbehcfg1260あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(40)と負の相関がある4).しかし,脈絡膜についてはわかっていないことが多く,今後のさらなる研究の進展が望まれる.詳細は本特集の他項を参考にされたい.また,後部ぶどう腫の程度もOCTで定量することができる5,6).具体的には,眼球後面の弯曲の程度を測定するものである(図8).しかし,弯曲が強いと測定がむずかしいときもあるなどまだ測定法に課題はあるが,後部ぶどう腫の進展評価に有用である7).VI定量的解析の精度の向上最近のOCTには,定量的解析の質を向上させるためのいろいろな機能が付加されている.そのうちの一つが平均加算である.平均加算によりノイズが減少するために網膜の層構造はよりはっきりと描出される.これによは,スキャンエリアのなかのどこに異常があるのか,また,おおむねどの程度異常であるかが自動で検出され表示されるようになっている.Vその他の解析最近,spectral-domainOCTの性能向上によりOCTで脈絡膜全体を描出することができるようになってきた.これにより中心性漿液性脈絡網膜症の脈絡膜の肥厚などが捉えることができるようになり,診断の参考にすることができる.残念ながら現時点ではOCT搭載のソフトウェアでは脈絡膜/強膜の境界をセグメンテーションできないため,厚みの評価については,各スキャン上でマニュアルで測定する必要がある.なお,脈絡膜厚についても網膜同様に,年齢・眼軸長図1054歳,女性,右眼緑内障の黄斑部網膜厚マッピング内蔵ソフトウェアによる自動解析により黄斑部マッピングから緑内障が容易に検出・評価できる1例.a:黄斑部網膜厚マップ.このマップからは明らかな異常は読み取りがたい.b:各セクターの網膜厚,およびその解析結果.対照群と比べて大きくはずれると赤やピンクの色がつく.ここでは上方を中心に菲薄化していることがわかる.c,d:黄斑部網膜厚マップの解析結果.視神経乳頭から黄斑上方に神経線維走行に沿って放射状に菲薄化領域が広がっているのがわかる.なお,cは正常対照群と比べてどの程度はずれているか,dは正常平均値からどの程度はずれているかが表示されている.e:網膜内層厚マップ.このマップでは,全層厚マップと異なり,上方に神経線維の走行に合致する菲薄化がより明らかである.f:各セクターの網膜内層厚,およびその解析結果.耳上側,鼻上側が赤,黄色で表示され,菲薄化していることを示している.g:網膜外層マップ.このマップが正常であることから,網膜の菲薄化が網膜外層由来ではないことがわかる.h,i:網膜内層厚の解析結果.全層厚マップよりも明瞭に神経線維の走行に合致する網膜内層の菲薄化が検出されている.acdhigbfeあたらしい眼科Vol.28,No.9,20111261り,より高精度な自動測定が可能になる.もう一つの重要な機能がアイトラッキング機能あるいはフォローアップ機能とよばれるものである.前者はSpectralisに装備されているものであり,撮影中動く眼底を自動追尾して同じ部位をスキャンし続けることができる.この機能により後日まったく同じ部位をスキャンすることができるため,より正確に厚みの増減を検出することが可能となる.後者は,後日撮影するときに,前回の眼底像を参考にスキャン位置を手動で調整できるようにする機能である.いずれの機能も前回と同じ位置でスキャンをしようとするものであり,改善,悪化の評価をより正確に判断することができる(図9).おわりに網膜が菲薄化している症例を見ることは多い.この際,断層像を見ればおおよそ網膜のどの層に菲薄化が起きているかがわかる.また,マップを見れば黄斑部のどの部位にどの程度の障害が起きているかがわかる.内層,外層マップが利用可能な機種であればより発見・評価は容易である.しかし,黄斑部網膜厚が菲薄化している症例を調べてみて発見されるのは,実は網膜疾患でなく緑内障,ということも多い(図10).黄斑スキャンであっても断層画像内の神経線維の占める割合は大きくその情報量は大きいので,緑内障・視神経疾患のチェックも怠らないようにしなければならない.もし疑わしければ視神経乳頭周囲のスキャンを追加するとより神経線維層の評価がしっかりできる.現在,OCTを用いれば網膜内のかなり細かい構造まで見えるようになってきたが,OCTは進化が続いており,今後はさらにもっと細かい所見まで見えるようなっていくと思われる.それとともに解析ソフトウェアも機能の向上が続いており,撮影画像の評価もより簡便になっていくものと期待される.文献1)RahmanW,ChenFK,YeohJetal:Repeatabilityofmanualsubfovealchoroidalthicknessmeasurementsinhealthysubjectsusingthetechniqueofenhanceddepthimagingopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci52:2267-2271,20112)KakinokiM,SawadaO,SawadaTetal:ComparisonofmacularthicknessbetweenCirrusHD-OCTandStratusOCT.OphthalmicSurgLasersImaging40:135-140,20093)SongWK,LeeSC,LeeESetal:Macularthicknessvariationswithsex,age,andaxiallengthinhealthysubjects:aspectraldomain-opticalcoherencetomographystudy.InvestOphthalmolVisSci51:3913-3918,20104)IkunoY,KawaguchiK,NouchiTetal:CoroidalthicknessinhealthyJapanesesubjects.InvestOphthalmolVisSci51:2173-2176,20105)IkunoY,TanoY:Retinalandchoroidalbiometryinhighlymyopiceyeswithspectral-domainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci50:3876-3880,20096)IkunoY,JoY,HamasakiTetal:Ocularriskfactorsforchoroidalneovascularizationinpathologicalmyopia.InvestOphthalmolVisSci51:3721-3725,20107)TakahashiA,ItoY,IguchiYetal:Axiallengthincreasesandrelatedchangesinhighlymyopicnormaleyeswithmyopiccomplicationsinfelloweyes.Retina,2011,inpress(41)