0910-1810/10/\100/頁/JCOPYた(図2).d.治療開始前に行うこと1)ベースライン眼圧の評価無治療でのベースライン眼圧を複数回測定する(できれば初診時を含め3回以上).重要なのは,ベースライン眼圧の「平均値」だけでなく「ばらつき」も知ること.〔注意点〕①正常眼圧緑内障の定義には「眼圧が常時21mmHgはじめに眼圧の高い開放隅角緑内障と同じく,正常眼圧緑内障においても眼圧下降治療により視野障害の進行を抑制しうることがこれまでの大規模研究などで示されている.しかし,正常眼圧緑内障ではベースライン眼圧が低いこともあり眼圧下降薬の効果が限定的であることが多く,点眼薬などの眼圧下降効果の判定自体がむずかしいことも少なくない.したがって,正常眼圧緑内障の治療はそれらのことに注意を払いつつ慎重に進める必要があり,以下に典型的な二つのケースを示しつつ正常眼圧緑内障の治療戦略について考えてみる.症例呈示1.症例1:視神経乳頭と視野に初期の緑内障性変化のある初診患者a.年齢・性別50歳,男性.b.初診までの経過会社検診で視神経乳頭の異常(「乳頭陥凹拡大の疑い」)を指摘され,当科(大学病院眼科)を受診した.自覚症状なし.c.初診時所見両眼とも眼圧16mmHg.角結膜に異常なし.前房深く,隅角は開放隅角で異常所見なし.視神経乳頭に緑内障性変化を認め(図1),Humphrey視野検査(中心30-2SITA-Standard)でもそれに一致する異常を認め(43)1055*AtsuoTomidokoro:東京大学大学院医学系研究科眼科学分野視覚矯正科〔別刷請求先〕富所敦男:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学医学部眼科学教室特集●原発開放隅角緑内障(広義)―私の管理法あたらしい眼科27(8):1055.1060,2010正常眼圧緑内障の治療戦略:ケーススタディCasseStudiesofTreatmentStrategiesforNormal-TensionGlaucoma富所敦男*図1症例1の視神経乳頭(右眼)耳下側に傾斜(tilt)したやや小乳頭気味の視神経乳頭である.立体観察でないこともあり乳頭内の緑内障性変化の評価はむずかしいが,上耳側と下耳側に明確な網膜神経線維欠損がみられる.1056あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(44)圧」として治療を開始するが,変動がかなり大きい場合はどうしたらよいだろうか.患者の理解が得られれば,治療開始を遅らせて,さらに2,3回程度の眼圧測定を同一時間帯に行うべきである.5,6回の眼圧測定の結果が得られれば,それに基づく眼圧の平均値や(他日変動に基づくと考えられる)変動幅はかなり信頼性の高いものであり,その後の治療効果の判定に十分役立つものとなる.眼圧変動が通常より大きい患者では,先天的な隅角異常やぶどう膜炎に基づく続発緑内障である可能性も考え隅角検査などを丁寧にやり直してみることも必要である.④以前は正常眼圧緑内障の診断確定のために,入院下での眼圧の24時間変動の測定をほぼ全例に行っていた.しかし,上述のように正常眼圧緑内障の診断のうえで「常時21mmHg以下」という要件の重要性が薄れてきたこともあり,現在は「24時間測定の重要性が高いと考えられる」患者のみを対象に行っている.すなわち,ベースライン眼圧評価期間での眼圧変動が大きい患者や初診時にすでに視野障害などが高度な患者,初診時でなくとも外来受診時の眼圧はいつも低いにもかかわらず視神経障害・視野障害が進行する患者などが対象となることが多い.2)緑内障病期の評価緑内障治療の開始にあたり病期を適切に評価することは,その後の治療の長期方針を考えるために必須となる.緑内障の病期は,今のところ,Humphrey視野計などによる静的量的視野検査の結果に基づいて決めることが最も一般的である.Humphrey視野計の結果で緑内障病期を決める際には,まずグローバルインデックスであるmeandeviation(MD値)により視野全体での障害度を評価し,その後,パターン偏差確率マップなどに現れる局所的な視野異常に注目する.たとえば,MD値が.3dB程度ならば全体的にみれば初期に分類されるが,その視野障害が固視点近く,かつ下方に存在するならば,初期の段階から自覚症状がでることも珍しくなく,視野障害がより進行すれば比較的早い段階から患者のqualityoflife(QOL)に影響することも予想されるため,より積極的な治療が選択される.以下」という条件が含まれているが,現在は,正常眼圧緑内障は(眼圧の高い)原発開放隅角緑内障と本質的に違いはない連続する一つの疾患概念にまとめられており,診断時に「21mmHg以上か,以下か」にこだわる必要性は薄れている.しかし,ベースライン眼圧が高い開放隅角緑内障は低い例に比べれば,視神経障害の「眼圧依存性」が高いことが推測され(あくまで推測だが),ベースライン眼圧を正確に評価することは,その後の治療方針を考えたり長期での予後を予想するために非常に重要となる.また同時に,正確なベースライン眼圧は点眼薬などの治療効果を判定するうえでも必須の情報である.②複数回のベースライン眼圧を測定する際の時間について二つの考え方がある.一つは眼圧の日内変動の影響を少なくするためほぼ同時間帯に複数回の測定を行うという考え方であり,もう一つは日内変動の大きさも含めて評価するために意識的に時間帯を変えて(たとえば,朝,昼,夕方などに)測定するという考え方である.しかし後者の方法では,大きな変動がみられた場合,それが日内変動に基づくものか他日変動に基づくものかを決めることができないため,特に初診直後の眼圧の評価は同一の時間帯に行うほうがよい.③初診後,複数回(たとえば3回)の眼圧測定で変動の少ない測定値が得られればそれを「ベースライン眼図2症例1の視野の測定結果(右眼)Humphrey視野計中心30-2SITA-Standardの測定結果を示すが,グレースケール(左図)では上方に,パターン偏差確率マップ(右図)上では上下の両方に視野異常が存在することがわかる.グローバルパラメータであるMDは.2.13dB(p<5%)で,PSD(patternstandarddeviation)は7.86dB(p<0.5%)であった.(45)あたらしい眼科Vol.27,No.8,20101057期間中の治療を考えた場合,より眼圧を下げたほうが視野障害進行のリスクをより小さくできると仮定すると,多くの種類の点眼薬を無制限に処方し,場合によっては早期手術を選択することにより,できるだけ眼圧を下げるという選択肢も想定できる.しかし当然,薬剤には副作用の,手術には合併症のリスクが存在するので,無制限に眼圧下降を目指すというのは適切ではない.そこで,治療開始初期において目指す眼圧レベルという意味で「目標眼圧」という考え方が推奨されている.すなわち,まず点眼薬を1剤処方し,それで目標眼圧に到達すればその治療のままで経過観察に移り,もし目標眼圧に到達しなかった場合には他剤への変更あるいは既存の薬剤への追加をしていき,目標眼圧の達成を目指すのである.しかし,ここで目標眼圧に到達しないからといって無制限に点眼薬を追加したり,安易に手術を選択したりすることは避けなければならない.個々の患者の視野障害度,年齢などを考慮し,どの程度厳密に目標眼圧を目指すのかを考えていく必要がある.目標眼圧の具体的な決め方については,ある程度経験的なものとなってしまう.正常眼圧緑内障を対象とした大規模研究であるCollaborativeNormalTensionGlaucomaTreatmentStudy(CNTGS)などの大規模研究において,「30%眼圧下降(無治療時眼圧から30%低下した眼圧レベル)」が目標眼圧とされたこともあり,この「30%眼圧下降」が一応の目標とされることが多い.すなわち,無治療時眼圧が20mmHgなら目標眼圧は20.0.3×20=14mmHgということになる.しかしこのように決めた目標眼圧は一律なものではなく,個々の患者に応じて調整する必要がある.具体的には,若年者,視野障害が高度な者,その他のリスクファクター(近視,乳頭出血など)をもつ者ではより低い(=厳密な)目標眼圧が推奨されるし,逆に高齢者や初期緑内障患者などではそれほど低い眼圧を目指さなくてもよいとされる.3)点眼習慣の確立緑内障の点眼治療は長期(ほぼ一生!)にわたり,かつ自覚症状もほとんどないことも多いので,処方された点眼薬をスケジュールどおりに継続できないことが少なくないようである.「点眼をまじめに使っていませんでした」と患者にあっさり言われると担当医としてはムッe.点眼治療の開始ベースライン眼圧(とそのばらつき)と視野障害の程度がほぼわかったら,それをもとに治療計画を立案する.具体的には,この症例のように視野障害が初期であれば,まずfirst-line治療薬であるプロスタグランジン系点眼薬かb遮断点眼薬のどちらか一方を処方する.両者のどちらを選択するかは,それぞれの薬剤の眼圧下降作用の強さや副作用の可能性を考慮し個々の患者において決めていくが,プロスタグランジン系点眼薬のほうが眼圧下降作用が強いことが多く,かつ全身的副作用が少ないので,現状では最初にプロスタグランジン系点眼薬を使うことが多い.1)眼圧下降効果の評価眼圧の測定値には生理的変動があることが知られ,またその変動は緑内障眼でより大きいことが多いので,ベースライン眼圧の測定と同じく1回の眼圧測定のみで点眼薬の眼圧下降効果を評価することはできない.すなわち,ある点眼治療を開始したら,つぎの受診時に眼圧が下がっていてもいなくても,何回かは処方を変えずに眼圧を測定していくべきである.点眼薬の眼圧下降効果を評価する際に「片眼テスト」が役に立つことが多い.片眼テストとは,両眼性の緑内障に対し片眼のみに点眼薬を処方し,点眼後の眼圧の左右差の有無により眼圧下降効果を判定するものである.有効な片眼テストを行うためにはいくつかの点に注意する必要がある.まず,プロスタグランジン系点眼薬や炭酸脱水酵素阻害点眼薬は片眼に点眼した場合の他眼に対する血行性の移行がほとんどないので片眼テストに適しているのに対し,b遮断点眼薬は血中移行を介し他眼の眼圧にも影響を及ぼしうることが知られているので片眼テストには向いていない.片眼テストの前提として左右眼がほぼ同程度のベースライン眼圧と変動を示すことが必要なので,ベースライン眼圧の測定時にそれらを確認しておくとよい.2)目標眼圧の考え方ほとんどの例で緑内障視野障害の進行は非常に緩徐なため,ある患者に実施した眼圧下降治療が実際に視野障害進行の抑制に働いているか否かを評価するのは,治療開始後数年経てからというのが通常である.それまでの1058あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(46)いう原則の下,1剤目がプロスタグランジン系点眼薬ならばb遮断薬を,1剤目がb遮断薬ならばプロスタグランジン系点眼薬が選ばれることが多い.プロスタグランジン系点眼薬にb遮断薬を追加する場合,プロスタグランジン系点眼薬は1日1回点眼で夜間点眼を指示されていることが多いので,b遮断薬も1日1回(朝)点眼のものを処方することが多い.b遮断薬の眼圧下降作用は夜間に若干弱いという点でも朝点眼が推奨されている.プロスタグランジン系点眼薬への追加として,炭酸脱水酵素阻害点眼薬も用いられる.炭酸脱水酵素阻害薬は,点眼回数が2回あるいは3回と多めだが,眼局所や全身的な副作用が少ないという利点を有している.また最近,「b遮断薬+プロスタグランジン系薬剤」や「b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬」の配合剤が日本国内でも発売されたので,2剤目の点眼としてこれらの配合剤を組み込んだ処方も有力な選択肢の一つとなっている.プロスタグランジン系点眼薬やb遮断薬を1剤目として用いても,眼圧下降がほとんど得られないことも珍しくない.そのような場合には,プロスタグランジン系点眼薬なら他のプロスタグランジン系点眼薬またはb遮断薬に,b遮断薬ならプロスタグランジン系点眼薬または炭酸脱水酵素阻害薬に処方を変更する.しかし,どの薬剤にもほとんど反応しない患者も頻度はそれほど多くないにしても存在する.そのような患者に対しては3剤目以降の点眼薬への切り替えを考えることも可能であるが,有効な眼圧下降が得られる可能性はかなり低いと一般的には予想される.2剤目までの点眼薬を試しても目標眼圧まで到達しない場合,同様な考え方で3剤目以降の追加あるいは切り替えを検討していく.しかし,より大きな眼圧下降作用が期待できる薬剤から使用していることもあり,段階が後になればなるほど有効な眼圧下降が得られる確率は減っていくと考えられる.逆に,薬剤数の増加により,点眼回数の増加による患者の不便や副作用のリスクは確実に上昇するので,安易な点眼薬の追加は避けるべきである.筆者は,点眼薬数は原則として3剤以内にとどめるようにしている.3剤使用でも眼圧下降が明らかに不十分な場合には,レーザー線維柱帯切除術や観血的手術の適応を検討することが多い.とした気持ちを顔に出さないようにして,患者に点眼継続の重要性をくり返し説明することになる.しかし患者の側に立つと,点眼をたまに忘れるのもしかたがないかなと思えることも少なくない.たとえば,朝の点眼を出勤前のドタバタで忘れてしまうとか,夜はお酒を飲んで帰宅し点眼せずに寝てしまうなどの理由は我が身を考えてもあたまから非難はできない.したがって,特に点眼開始時において,患者の日常の生活スケジュールなどを聞き取ったうえで,患者が点眼を続けやすい(≒忘れにくい)処方を検討することが重要である.プロスタグランジン系点眼薬の1回の点眼は,一般には夜点眼が推奨されるが,朝に点眼しても効果はほとんど変わらないので,朝のほうが点眼を忘れにくいという患者には朝点眼を指示することも多い.これに対し,b遮断点眼薬の1回点眼薬は,夜には眼圧下降作用が弱いので,できるだけ朝に点眼すべきであり,朝の点眼を忘れやすいという患者には処方しにくい.患者にとって,最初に緑内障と診断され治療を開始する時期には,緊張感も高いので点眼を忘れずに使ってくれることが多い.個々の患者にとって最も点眼を継続しやすい環境を整えることや患者との良好なコミュニケーションを築くことにより,この時期にきちんとした点眼習慣を確立することが非常に重要である.それが,その後長期にわたり,点眼治療のアドヒアランスの低下または通院からのドロップアウトを防ぐことにつながっていく.4)2剤目以降の選択治療開始初期において,1剤目の点眼薬により目標眼圧までの眼圧下降が得られれば,そのまま眼圧と視野測定を中心とした経過観察に移ることになる.もし目標眼圧まで眼圧が下降しない場合には,点眼薬の追加あるいは切り替えを検討することになる.しかし,前頁でも述べたとおり目標眼圧は絶対的な指標というわけではなく,治療開始初期において点眼の追加や変更を考える際の参考の一つとすべきものである.1剤目の点眼薬により無治療時に比べある程度の眼圧下降が得られたが,まだ目標眼圧には達していない場合には,新たな点眼薬の追加を検討する.2剤目の薬剤の選択でも,より大きな眼圧下降作用が期待できるものと(47)あたらしい眼科Vol.27,No.8,20101059野は初診時に比べ若干の進行を示した(図4)が,この間のMDスロープは.0.6dB/年であった(図5).経過観察期間中,患者の自覚症状に特に変わりがないとのことであった.e.今後の治療方針経過観察中の一連の視野測定の結果をみると進行傾向が存在することが疑われる.しかし,視野測定結果のばらつきが大きめであることもあり,現在のところ「確実な」進行傾向というのはむずかしい.それに加え,MDスロープも.0.6dB/年とそれほど急速な変化ではないので,現在すぐに患者に手術(線維柱帯切除術)を勧めるという状況ではないと考えられる.そこで今後の治療方針としては,まず炭酸脱水酵素阻f.治療開始後のフォローアップ点眼治療により一応の眼圧下降(≒目標眼圧に比べ許容範囲と考え得る眼圧レベルまでの下降)が得られた場合,眼圧,視野,視神経乳頭(+神経線維層)を中心とした長期にわたる定期観察に移行する.それらに加え,点眼に伴う副作用は,点眼開始時だけでなく長期連用中にも出現することもあるので常時注意が必要である.定期観察中の検査は,筆者の場合,眼圧は1.3カ月間隔,視野は6カ月間隔,眼底写真は1.2年間隔で行うようにしている.末期緑内障や眼圧コントロールが不安定の例では受診間隔を短めにし,視野障害が高度な例や視野進行が疑われる例では視野の測定間隔を短めにしている.2.症例2:点眼で経過をみていたところ視野進行がありそうa.年齢・性別65歳,男性.b.初診までの経過近医で正常眼圧緑内障を指摘され,当科を紹介受診した.c.初診時所見複数回の測定に基づくベースライン眼圧は変動が少なく,毎回18mmHg程度であり,他に視神経障害の原因となりうる疾患もないことから正常眼圧緑内障との診断を確認した.治療開始前にHumphrey視野検査(30-2SITA-Standard)を2回行ったが,信頼性が高く変動が少ない結果が得られた(図3).d.治療開始から現在まで年齢と視野などを考慮し,ベースライン眼圧(18mmHg)から20.30%程度の下降である13mmHg程度以下を目標眼圧とした.まずプロスタグランジン系点眼薬の夜1回点眼により眼圧は15mmHg程度に低下したが,患者と話したところもう1剤の点眼も可能ということなので,1日1回点眼のb遮断薬の朝点眼を追加した.その結果,眼圧は13.15mmHg程度となったので,それで経過観察をしていくことになった.その後,2カ月間隔の受診時に眼圧を測定し,視野検査を6カ月に一度行い,5年間が経過した.5年後の視図3症例2の視神経乳頭と視野(Humphrey視野計中心SITA-Standard)(左眼)乳頭は傾斜乳頭であるが,耳下側にノッチングと乳頭出血を認め,その部位から網膜神経線維層欠損が伸びている.視野の測定結果(左はグレースケール,右はパターン偏差確率マップ)では,固視点のすぐ上方に異常点があることが疑われる.1060あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(48)点眼薬を追加して眼圧下降効果が確認できれば両眼の点眼にすることになる(片眼テスト).炭酸脱水酵素阻害点眼薬により有効な眼圧下降が認められない場合には,他の種類の点眼薬(a1遮断薬,a刺激薬など)の効果を試すこともある.3剤目の点眼薬の追加により下降幅は少なくとも確実な眼圧下降が得られれば,引き続き視野の変化を慎重にみていくことになる.数年後に,点眼変更後の視野の進行傾向が確認されるようなら,さらなる眼圧下降を測る必要があるが,点眼を3剤使っている場合,点眼薬の追加によりそれ以上の眼圧下降が得られる可能性は低い.その場合には,線維柱帯切除術の適応を検討することになるが,線維柱帯切除術後の濾過胞関連感染症などの重篤な合併症や眼刺激感の持続などの比較的軽微な合併症を考えれば,点眼下での視野進行傾向が確認されたとしても機械的に手術療法を選ぶことは避けるべきであろう.線維柱帯切除術を施行するか否かは,それぞれの患者と十分なコミュニケーションを取りつつ決定すべきである.害点眼薬を追加してみてさらなる眼圧下降が得られるかを検討する予定である.3剤目の点眼薬の追加では有効な眼圧下降が得られないことも多いので,眼圧が実際にどのくらい低下するかを慎重に判定する必要がある.片眼に点眼した炭酸脱水酵素阻害薬は他眼の眼圧に影響を及ぼすことが少ないので,片眼のみに炭酸脱水酵素阻害-2.4-2.2-2.0-1.8-1.6-1.4-1.22006200720082009(年)MD値(dB)図5症例2の経過観察期間中のMDスロープこの期間のMDスロープは.0.6dB/年であった.図4症例2の経過観察期間中の視野障害の変化一番右の列のパターン偏差確率マップでみると異常点が徐々に増加しており,視野進行が疑われる.2005年2007年2008年2010年