(69)あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011671網膜の構造㊦黄斑部に頼る視力網膜には,特別に視力の鋭利な場所がある.この場所は眼球後極部の光学的な中心に一致しているのが普通である.この場所では,視細胞以外の細胞は,周りに押しやられ深い凹(くぼ)みを作っていて,中心窩(か)と呼ばれている.また,この部位一帯が黄色く見えることから,黄斑(はん)部とも言う.読書とか,テレビを見る場合に必要な視力はこの黄斑部の機能に頼っている.高空を飛びながら地上の小動物をねらうワシの眼の網膜を見ると,たいへんに深い中心窩があって,その周りの視細胞は桿(かん)状細胞からなっている.このような構造は,するどい視覚を持っていることを示している.最近,日本がグラマン社から購入した飛行機の名前,「ホーカイ」はタカの鋭い眼からもじったアイオワ人のニックネームでもある.一方,中心窩のない犬の眼はあまり鋭くないと言われている.最近流行のフリスビーをうまくキャッチする犬もいるが,私の犬はあまり物がはっきりと見えるふうはない.視覚よりも臭覚とか,接触に頼っているらしい.犬,または他の中心窩のない網膜を持った動物は,鋭利な注視点がないかわり,物体の運動によって,はっきりと物を見る能力がある.私のなまけ犬も日なたぼっこをしながら,眼の前を走るアリをじっと眼で追いかけるのを楽しみにしている.同様にカエルは静止しているものは見えない.非常にゆっくりと近よるヘビをカエルはのみ込まれる前に見つけることができないのである.また,動かないえさを与えると,カエルは見つけることができないので餓死する.面白いことは,水面すれすれを泳いでいるある種の魚は空中を飛んでいる虫と,水中を泳いでいる小魚,プランクトンを同時に見つけるため中心窩が二つある.空中用,水中用の二つである.また,鳥類のように眼が両側を向いている動物では,黄斑部が後極部になく,横にはずれている.ちなみにこのような鳥は,近い前方の遠近感を作るために,頭を前後に動かせている.鶏やハトが盛んに首を前後に振りながら,えさをとっているのは見馴(な)れた景色である.この黄斑部がどうして黄色いのか,いまだにはっきりした答えが出ていない.下等動物では,黄色の色素を抽出した報告はあるが,人間ではこのような実験は行われていない.ちなみに,下等動物の眼に黄斑部は存在しない.役目としては,網膜に入って来る紫外線を吸収するフィルターのためだと言われている.ある細胞学者はこの部にある神経細胞が含んでいる一種の脂肪が黄色であろうと考えている.ところが,緑内障で神経細胞がなくなった患者の網膜でも,黄斑部の色が残っているのはおかしい.最近この不思議を解決してみたいと思って,たくさん0910-1810/11/\100/頁/JCOPY眼研究こぼれ話桑原登一郎元米国立眼研究所実験病理部長●連載⑰▲人間網膜の中心窩部の横断.約300倍に拡大.下方の黒い線は色素細胞層.672あたらしい眼科Vol.28,No.5,2011眼研究こぼれ話(70)の人間の眼を,ちょうど黄斑部側面の切り口が見えるようにし,拡大して調べてみた.面白いことに,神経細胞のはるか(といっても0.1ミリ位)下方にある視細胞から出ている線維の層が黄色であることがわかった.ところが,この層には黄色である細胞学的理由が一つもない.もしかすると,密集している細い線維の束が光の干渉で,黄色く見えるのではないかと思われるようになった.この部位が何故(なぜ)黄色いかと,眼を黄色くして調べている人も,そんなことには一つも関心のない人も,同様に健全な視力を楽しんでいるのである.このような一見役に立ちそうもない,まどろこしい研究も,やはりいつかは,なにかのお役に立つことがあると願っている.(原文のまま.「日刊新愛媛」より転載)☆☆☆むずかしい統計がよくわかる!眼科での新薬開発の臨床治験データを例に解説!統計学米虫節夫(近畿大学農学部教授)【編著】寺嶋達雄(参天製薬株式会社臨床開発本部)・榊秀之(千寿製薬株式会社前臨床グループ)【著】A4変型総172頁図表243点定価(本体6,000円+税)Ⅰ序説1.症例報告から法則性の発見へ/2.臨床試験実施時のポイント/3.統計解析ソフトについてⅡデータのまとめ方1データの4尺度/2誤差の4条件/3中心的傾向の示し方/4ばらつきの数量的示し方/5ヒストグラムと分布Ⅲ検定と推定の考え方1計量値の分布:正規分布/2検定と推定の考え方/3母平均に関する検定と推定Ⅳ2つの平均値の比較12つの平均値に関する検定と推定(パラメトリック法)/22つの平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅴ3つ以上の平均値の比較13つ以上の平均値に関する検定(パラメトリック法)/23つ以上の平均値に関する検定(ノンパラメトリック法)Ⅵ計数値1計数値の分布/2計数値に関する検定と推定Ⅶ多重比較13つ以上の平均値に関する多重比較-多重比較の考え方-/23つ以上の平均値に関する多重比較(パラメトリック法)-分散分析後の検討-/33つ以上の平均値に関する多重比較(ノンパラメトリック法)-KruskalーWallis検定後の検討-Ⅷ2つの変量間の関係1相関分析/2単回帰分析Ⅸ練習問題(問題1~11)【付録】統計的方法に関するJISとISOの動向■内容■医学におけるわかりやすい〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-0-69315電話(03)3811-0544株式メディカル葵出版会社