0910-1810/11/\100/頁/JCOPYはじめに加齢黄斑変性は近年わが国でも急激に増加し,疫学研究や新しい治療が盛んに行われ,疾患分類と診断の重要性が増している.本稿では,従来のものを含めて加齢黄斑変性の分類を整理するとともに,2008年にわが国で公表された加齢黄斑変性の分類と診断基準,最近提唱されたFreundらによる分類について述べる.I加齢黄斑変性の分類加齢黄斑変性の分類は目的別にさまざまな分類が用いられてきた(表1).欧米では脈絡膜新生血管(CNV)の位置による分類,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)によるCNVの明瞭度による分類,加齢黄斑症と加齢黄斑変性の国際分類,光線力学的療法(PDT)のための病変タイプ分類,新生血管の病理学的分類(Gass)などが目的に応じて使用されている.一方,わが国では主な眼底所見を呼称に取り入れた厚生省研究班による暫定分類が1992年に報告され,2008年に新しい分類と診断基準が公表された.この新しい分類は,1995年に報告された国際分類1)をベースとして,厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班内の加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループによって作成されたもので,わが国独自のものである2).この分類では,加齢黄斑変性は前駆病変と加齢黄斑変性に大別され,さらに前駆病変はドルーゼンと網膜色素上皮異常に,本格病変としての加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型に分類されている.また,滲出(3)157*KanjiTakahashi:関西医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕髙橋寛二:〒573-1191枚方市新町2-3-1関西医科大学附属枚方病院眼科特集●黄斑疾患アップデートあたらしい眼科28(2):157.163,2011加齢黄斑変性の分類と診断ClassificationandDiagnosisofAge-RelatedMacularDegeneration髙橋寛二*表1加齢黄斑変性の今までの分類と用語欧米1.脈絡膜新生血管の位置による分類中心窩下subfoveal,傍中心窩juxtafoveal,中心窩外extrafoveal2.フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)による脈絡膜新生血管の明瞭度による分類ClassicCNV(well-definedCNV)OccultCNV(ill-definedCNV)3.加齢黄斑症と加齢黄斑変性の国際分類(1995)Earlyage-relatedmaculopathy早期加齢黄斑症Lateage-relatedmaculopathy後期加齢黄斑症(Age-relatedmaculardegeneration加齢黄斑変性)4.FAによる光線力学的療法のための病変タイプ分類PredominantlyclassicCNVMinimallyclassicCNVOccultwithnoclassicCNVLate-phaseleakageofundeterminedsourceFibrovascularPED5.新生血管の病理学的分類(Gass)Type1(subRPE)CNVType2(subretinal)CNV日本老人性円板状黄斑変性症の暫定診断基準案(厚生省特定疾患網膜脈絡膜萎縮症調査研究班,1992)1.初期病巣1)漿液性網膜.離2)大型の網膜色素上皮.離2.網膜下出血3.円板状病巣4.瘢痕病巣158あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(4)類似の像を呈する.この分類によって,わが国では,滲出型加齢黄斑変性は,典型例であるtypicalAMD,特殊型であるPCV,RAPの3病型に分類される.現在わが国では,この分類が最も広く用いられている.IIわが国の加齢黄斑変性の診断基準(表3)わが国における2008年の診断基準は,1.前駆病変,2.滲出型加齢黄斑変性,3.萎縮型加齢黄斑変性,4.除外規定の4項目からなる.以下にそのポイントを列記する.1)年齢,病変の存在範囲この診断基準では,久山町研究をはじめとする多くの疫学研究で50歳以上が基準として用いられていることから50歳以上と規定された.病変の存在範囲は傍乳頭病変も含まれるよう,国際分類のoutermacula(中心窩を中心とする6,000μm以内)と定められている.型加齢黄斑変性の特殊型として,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)が正式に加えられた(表2,図1).特殊型の2疾患は,Yannuzziが1990年3)と2001年4)に提唱した疾患概念で,加齢性変化を基盤として黄斑部に発生した新生血管によって出血・滲出をきたす疾患であり,臨床像も通常の滲出型加齢黄斑変性(わが国では「狭義AMD」とよばれることが多い.ここではtypicalAMDとよぶ)と表2加齢黄斑変性の分類(2008年)1.前駆病変1)軟性ドルーゼン2)網膜色素上皮異常2.加齢黄斑変性1)滲出型加齢黄斑変性*2)萎縮型加齢黄斑変性*滲出型加齢黄斑変性の特殊型①ポリープ状脈絡膜血管症②網膜血管腫状増殖網膜内新生血管ポリープ状病巣PCVRAP.出型加齢黄斑変性軟性ドルーゼン網膜色素上皮異常地図状萎縮typicalAMD前駆病変萎縮型加齢黄斑変性図1加齢黄斑変性のわが国での分類と典型的眼底および造影所見PCV:ポリープ状脈絡膜血管症,RAP:網膜血管腫状増殖.typicalAMDの造影はFA,PCV,RAPの造影はインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)所見.(5)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011159している.日本人では従来から漿液性PEDが滲出型加齢黄斑変性に移行しやすいとの報告があり,いわゆる小型のPEDが前駆病変に含められている.3)滲出型加齢黄斑変性新しい診断基準の最も重要なポイントは,滲出型加齢黄斑変性の確診例と診断するための主要所見である.すなわち,①CNV,②漿液性PED(直径1乳頭径以上),③出血性PED,④線維性瘢痕の4つを主要所見とし,そのうち少なくとも1つを満たせば滲出型加齢黄斑変性の確診例と診断できる(図2).これらの項目はすべて滲出型加齢黄斑変性に特異度が高い所見であり,この診断基準によって眼底所見のみで診断が可能である.ただし,CNVは,眼底所見(灰白色または橙赤色隆起病巣)でも診断できるが,蛍光眼底造影所見〔FAまたはインドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)〕によっても診断できる.ここでいう漿液性PEDは直径1乳頭径以上の大きいものであり,CNVを伴わない漿液性PEDも含める.この規定は「滲出型=CNVの存在」という従来の概念とは異なるので注意を要する.なお,この診断基準では,滲出性変化や出血は続発性変化とみなし,主要所見ではなく「随伴所見」と規定していることにも注意を要する.4)萎縮型加齢黄斑変性萎縮型加齢黄斑変性の規定は,脈絡膜血管が透見でき2)前駆病変前駆病変には軟性ドルーゼンと網膜色素上皮異常がある.軟性ドルーゼンは直径63μm以上のものが1個以上みられれば前駆所見と診断する(図1).これは視神経乳頭縁の網膜静脈径(125μm)の1/2を超える大きさである.網膜色素上皮異常は①網膜色素上皮の色素脱失,②同色素むら,③同色素沈着,④直径1乳頭径未満の漿液性網膜色素上皮.離(漿液性PED)の4種の病変を指表3加齢黄斑変性の診断基準(厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮調査研究班,加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループによる)年齢50歳以上の症例において,中心窩を中心とする直径6,000μm以内の領域に以下の病変がみられる.1.前駆病変軟性ドルーゼン*1,網膜色素上皮異常*2が前駆病変として重要である.2.滲出型加齢黄斑変性主要所見:以下の主要所見の少なくとも一つを満たすものを確診例とする.①脈絡膜新生血管*3②漿液性網膜色素上皮.離*4③出血性網膜色素上皮.離*5④線維性瘢痕随伴所見:以下の所見を伴うことが多い.①滲出性変化:網膜下灰白色斑(網膜下フィブリン),硬性白斑,網膜浮腫,漿液性網膜.離②網膜または網膜下出血3.萎縮型加齢黄斑変性脈絡膜血管が透見できる網膜色素上皮の境界鮮明な地図状萎縮*6を伴う.4.除外規定近視,炎症性疾患,変性疾患,外傷などによる病変を除外する.(付記)*1軟性ドルーゼンは直径63μm以上のものが1個以上みられれば有意とする.*2網膜色素上皮異常とは網膜色素上皮の色素脱失,色素沈着,色素むら,小型の漿液性網膜色素上皮.離(直径1乳頭未満)をさす.*3脈絡膜新生血管は,検眼鏡所見または蛍光眼底造影によって診断する.検眼鏡所見として,網膜下に灰白色または橙赤色隆起病巣を認める.蛍光眼底造影はフルオレセイン蛍光眼底造影またはインドシアニングリーン蛍光眼底造影所見に基づく.*4漿液性網膜色素上皮.離は,直径1乳頭径以上のもので,脈絡膜新生血管を伴わないものも含める.*5出血性網膜色素上皮.離は大きさを問わない.*6網膜色素上皮の地図状萎縮は大きさを問わない.1.脈絡膜新生血管3.出血性網膜色素上皮.離2.漿液性網膜色素上皮.離4.線維性瘢痕図2滲出型加齢黄斑変性の主要所見160あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(6)であり,genotypeについても考慮すべきとしている.これは,CNV抜去術が行われた時代にGassが提案したCNVの病理学的分類(type1:網膜色素上皮下新生血管,type2:網膜下新生血管)に加えて,RAPでみられるtype3(網膜内新生血管)をプラスしたもので,新生血管をこの呼称で統一することによって,病態生理を含めた分類ができるとしている.少し偏った示唆も含んでいるようであるが,病態生理に関しては,筆者らの考えと重なる事項が多く,以下にその考え方を紹介する.1)Type1neovascularization(図3)Type1neovascularization(1型新生血管)は,従来のFA分類ではoccultまたはpoorlydefinedCNVとよばれ,加齢黄斑変性の新生血管のなかで最も頻度が高いもので,lateleakageofundeterminedsourceとvascularizedPEDに分類される.IAでは後期に軽度の過蛍光を示すplaqueとして捉えられ,造影に同期したSD(spectoraldomain)-OCTでは,新生血管はBruch膜とRPEの間に検出されると述べている.多くの眼で1型新生血管は発見されにくく,滲出がない限り視力低下は少なく,年余にわたって緩慢に発育する.GrossniklausやGreenらは,この型の新生血管は網膜外層の虚血に対して代償的に発生したものとの仮説を立てている5).る網膜色素上皮の境界鮮明な地図状萎縮を伴うものとし,地図状萎縮の大きさは問わないとしている.「脈絡膜血管が透見できる」には,網膜色素上皮の強い萎縮に脈絡毛細血管板,視細胞の萎縮を伴う意味を含んでいる.地図状萎縮は通常大きいドルーゼンが自然消失したあとに生ずることが多く,長期間のドルーゼン存在が関与した病変といえる.5)除外規定除外規定は,加齢以外の要因で起こる近視性血管新生黄斑症,特発性脈絡膜新生血管,網膜色素線条症に伴う血管新生黄斑症,外傷性脈絡膜破裂などの続発性血管新生黄斑症を確実に除外する必要があるため設けられており,このような類縁疾患の除外は重要である.IIIFreundらによる分類の提唱最近,Yannuzziの流れを汲むFreundらは,雑誌Retinaに掲載された総説において,従来から欧米で主流であったFAによる分類はもはや十分ではなく,加齢黄斑変性の新生血管に関して新しい分類の必要性を提起している5).すなわち,少なくともFA,光干渉断層計(OCT),必要ならIAも用いた総合的画像診断によって,新生血管の解剖学的局在を明らかにした分類を行うべき橙黄色のRPE隆起CNV新生血管の反射RPEのドーム状隆起Bruch膜漿液性網膜.離FAIA図3滲出型加齢黄斑変性―TypicalAMD,occultwithnoclassicCNV(fibrovascularPED)(Freundらの提唱するType1neovascularization,IA写真の緑ラインはOCTのスキャン部位)(7)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011161に,PCVの病変はRPE直下に存在するとしている.PCVはより成熟した新生血管組織であるため,抗VEGF療法に対してより反応しにくく,多数回の薬物投与を要することに触れている.PCVで抗VEGF療法に反応する症例では,異常血管からの透過性が抑制されているのみで新生血管の退縮はきたしにくいと述べている.3)Type2neovascularization(図5)Type2neovascularization(2型新生血管)はBruch膜,RPEを貫いて網膜下で発育する新生血管で,従来のFA分類ではwell-definedまたはclassicCNVに合致する.通常軽度の低蛍光の背景のなかに新生血管が検出でき,IAでは脈絡膜背景蛍光のため検出しにくいとしている.2型新生血管は通常1型新生血管に伴って発生し,13%のみが純粋な2型新生血管であるという.SD-OCTではRPEの高反射層の上で視細胞外節の下にみられ,IS/OS(内節外節境界接合部)の欠損や網膜内浮腫,.胞様変化がみられやすい.抗VEGF療法に対する反応は良好で,新生血管が消失しやすいが,大きい病巣や成熟した病巣では線維化が残りやすいとしている.1型新生血管では,CMEよりも漿液性網膜.離が発現しやすく,新生血管は十分成熟しているので,抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法による治療効果が不完全であるとしている.最近のEDI(enhanceddepthimaging)-OCTによる観察から,新生血管は常にRPEの基底側に接してみられると述べている.2)Polypoidalchoroidalvasculopathy(PCV)(図4)この総説ではPCVは1型新生血管から生ずる亜型であるとし,従来唱えられていた脈絡膜血管原発の疾患ではないことから,choroidopathy(脈絡膜症)ではなく,neovasculopathy(新生血管症)とよぶべきであると明記している.この考えは筆者らが当初から主張してきた説と完全に合致している6).造影と同期したSD-OCTでは,ポリープ状病巣を含めてPCVの血管病変は,1型新生血管と同様にRPEとBruch膜の間に存在し,Bruch膜下,すなわち脈絡膜内に存在するものではないとしている.PCVパターンは長期間存在した1型新生血管にみられやすく,より成熟した血管からなると述べている.PCVがアジア人やアフリカ系アメリカ人に多いのはRPEが弾力性に富んでおり,新生血管はRPEを破って発育するよりも水平方向に向かって発育するためとしている.SD-OCT所見から,1型新生血管と同様橙赤色隆起病巣ポリープ状病巣異常血管網FAIAポリープ状病巣異常血管網漿液性網膜.離(doublelayersign)図4ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)異常血管網の部の所見(doublelayersign)はType1neovascularizationとまったく同じ所見を呈す.Freundらは1型新生血管の亜型であるとしている.162あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(8)管と吻合を形成して増殖反応を起こすとしている.そのため,網膜血管のない中心窩無血管野には生じない.SD-OCTが普及した現在,Yannuzziが提唱したステージ分類は価値のあるものではなくなっており,3型新生血管でみられるPEDはすでに存在する1型CNVから生じたものであると断言している.治療として,3型新生血管は抗VEGF療法にきわめて鋭敏に反応し,1回の薬物投与で病巣が消失するものもあるが,視細胞欠損のために視力が上昇しにくいことがあり,光凝固やPDT4)Type3neovascularization(図6)Type3neovascularization(3型新生血管)は網膜内新生血管であり,従来RAPとよんでいたものに合致する.欧米では滲出型AMDの10~15%を占めるもので,網膜循環由来または脈絡膜循環由来のどちらから生じてもよく,網膜-脈絡膜血管吻合(RCA)の形をとるものとしている.網膜内出血と.胞様黄斑浮腫(CME)が高頻度にみられ,高率に両眼性になる.3型新生血管は視細胞欠損部の網膜深層血管から生じやすく,1型新生血classicCNVFAIAoccultCNVplaque図5滲出型加齢黄斑変性―TypicalCNV,minimallyclassicCNV(Freundらの提唱するType2neovascularization)この例では網膜色素上皮下新生血管と併存している.網膜内新生血管CME(RAP病巣)PEDBruch膜serousPEDRAP病巣FAIA色素上皮下新生血管集合性軟性ドルーゼン網膜表層出血図6網膜血管腫状増殖(RAP)(Freundらの提唱するType3neovascularization)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011163単独療法は注意を要し,トリアムシノロン併用PDTも中心窩萎縮のため視力が改善しなかったと述べている.3型新生血管は成熟すると抗VEGF療法に抵抗を示し,より多数回の薬物投与を要するとしている.以上,加齢黄斑変性の分類のまとめとわが国での診断基準,欧米での最近の分類の提唱について述べた.病態の理解を含めた診断の重要性について,読者の先生方に気づいていただければ幸いである.文献1)TheinternationalARMepidemiologicalstudygroup:Aninternationalclassificationandgradingsystemforagerelatedmaculopathyandage-relatedmaculardegeneration.SurvOphthalmology39:367-374,19952)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか:加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,20083)YannuzziLA,SorensonJ,SpaideRFetal:Idiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina10:1-8,19904)YannuzziLA,NegraoS,IidaTetal:Retinalangiomatousproliferationinage-relatedmaculardegeneration.Retina21:416-434,20015)FreundKB,ZweifelSA,EngelbeltM:Doweneedanewclassificationforchoroidalneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration.Retina30:1333-1349,20106)UyamaM,MatsubaraT,FukushimaIetal:IdiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathyinJapanesepatients.ArchOphthalmol117:1035-1042,1999(9)