———————————————————————- Page 11596あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(00)0910-1810/09/\100/頁/JCOPY2. スクリーニング閾上刺激法によるゾーン法が用いられ,明らかな視野異常の有無の判別を目的とする(図 2).視標輝度が固定されているため,結果に異常がなくても,「明らかな異常はない」程度の情報でしかない.3. スペシャルEsterman test は,重度の視覚障害の検出(どこが見えているかの評価)を目的とする(図 2).視標輝度を10 d Bに固定し検査を行う単一輝度法を採用している.このため,軽度から中等度の異常は検出できないが,重度の異常は検出できる.II測定戦略ごとの読み方1. 閾値測定測定原理については成書1)に譲るが,検出された閾値,すなわち実測網膜感度をもとにいろいろな表現形で視野を表示してくるものの,元のデータは 1 つであることを忘れてはならない.また,同じ閾値測定でも,測定戦略により得られる実測網膜感度と各正常網膜感度分布が異なるため,測定戦略が異なる結果を厳密には比較してはいけない.ただし,同一被検者の経過観察において,Fullは SITA-S の,Fastpac は SITA-F の評価のベースラインとしてのみ併用可能である.表現形として,単一視野解析(図 3)では実測網膜感度以外にグレイスケール(gray scale:GS),トータル偏差(total deviation:はじめにHumphrey 視野といっても,測定された結果は使用された測定戦略によって大きく変わり,意味するところも変わってくる.すなわち,対象とする疾患と視野検査によりどのような結果を期待するかで,選択する測定戦略や測定領域も変わってくる.そこで,Humphrey 視野計にまずどのような測定戦略があるかを知っておきたい.そのうえで,各結果に表示されるものの意味を理解し判定する必要がある.本稿では,閾値測定の結果としての単一視野解析で表示される各項目の意味とスクリーニング検査およびその一つである Esterman test について述べる.I測定戦略と目的1. 閾値測定全点閾値法(Full threshold:Full),Fastpac,Swed-ish interactive threshold algorithm-Standard(SITA-S),SITA-Fast(SITA-F)の 4 種があり,詳細な網膜感度の程度を調べ,軽微な異常の検出と量的評価を目的とする.SITA-S,SITA-F は緑内障専用に開発された測定戦略で,Full,Fastpac の約半分の時間で検査が可能である.このうち,Fastpac,SITA-F は視標が閾値を 1 回しか交差せず,結果の精度が Full や SITA-S に比べ劣るため,主としてスクリーニング用と考えられている(図 1).1596 (20) *Hirotaka Suzumura:中野総合病院眼科〔別刷請求先〕鈴村弘隆:〒164-8607 東京都中野区中央 4-59-16中野総合病院眼科Humphrey 視野の読み方Understanding Visual Field Changes with the Humphrey Field Analyzer鈴村弘隆*特集●視野が欠ける あたらしい眼科 26(12):1596 1604,2009———————————————————————- Page 2あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091597(21)視 野 テ ス ト(glaucoma hemi eld test:GHT),VFI(visual eld index)が印刷されるが,Full と SITA,機種の version で印刷表示の一部に違いがある.TD),トータル偏差確率プロット(TD probability plot:TD plot),パターン偏差(pattern deviation:PD), パ タ ー ン 偏 差 確 率 プ ロ ッ ト(PD probability plot:PD plot),視野指標(global indices),緑内障半図 1測定戦略―1. 閾値測定視標輝度を明るくしたり,暗くしたり上下させて,閾値を挟み込むようにして決定する方法が自動視野計ではとられている.決定された閾値は網膜感度として数値表示され,これをもとにグレイスケールやトータル偏差などの表示が作られる.ドットの視野;正常視野,斜線の視野:被検者の視野,点線:被検者の想定正常網膜感度. 実測感度403020100(dB)トータル/パターン偏差グレイスケール図 2測定戦略―2. スクリーニング,3. スペシャルスクリーニング検査では,年齢別正常網膜感度(=正常閾値)よりやや明るい輝度の視標を呈示し,これに応答するか否かをみる(2 ゾーン法).これに,最大輝度の視標を加えれば視野の感度を 3 段階に分けることができる(3 ゾーン法).このように,正常の閾値に相当する明るさの輝度よりも明るい輝度の視標を用いて検査する方法を閾上刺激法という.単一輝度法は視野の中心も周辺も同一の輝度の視標で検査する方法で,輝度を暗くすれば偽陽性が多くなり,明るくすれば偽陰性が多くなるので,スクリーニングとしても使用できないが,視野の中に一定の感度以下の部分があるか否かの検査(disability の検査)には使用できる.ドットの視野:正常視野,斜線の視野:被検者の視野,点線:閾上感度レベル(左図),単一輝度の視標輝度レベル(右図).403020100(dB)403020100(dB)単一輝度法閾上刺激法———————————————————————- Page 31598あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(22)のため,この表示での診断は控えるべきである.検査点の間は数学的推測によりシンボルを割り当てて埋めてある.シンボルが 1 段違うだけで,実測値の差は1 d Bかa. グレイスケール(GS)(図 4)実測感度を5 d Bごとのシンボルに換え,検査点の間は一定の規則に従ってシンボルで穴埋めをしている.こ図 3単一視野解析(SITA-S)実測網膜感度から,①グレイスケール,②トータル偏差とその確率 plots,③パターン偏差とその確率 plots,④視野指標,⑤緑内障半視野テスト,⑥ visual eld index が計算され表示されている. 隙間を補完実測感度シンボル化図 4グレイスケール実測網膜感度を5 d Bごとに分けてシンボル化し,隙間を数学的に補完してグレイスケールを作っている.16 20 d Bのシンボルと 21 25 d Bのシンボルのように隣合うシンボルでも,実際の感度差は最小1 d B,最大9 d Bあることになるので,グレイスケールだけでは判断を誤ることにもなる.———————————————————————- Page 4あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091599(23)%の「■」のシンボルがつく.逆に,正の TD 値は正常値よりも感度が高いことを示しており,異常な高値を示しても TD plots は p ≧ 10%を示す「・」のシンボルしか付かない.実際にどの程度の感度低下であるか,また本当に正常であるのかは数値で確認しておく必要がある.ちなみに,p 値は被検者の値が正常者の何%にみられるかを示している.すなわち,p<5%は,正常者 100人のうち 5 人未満,p<0.5%なら 0.5 人未満にしかみられない値であることを示す.(2)パターン偏差(PD)の意味:TD から視野の全体的感度変動分を削除したもので,全体の変化に埋没している視野の凹凸を強調するためのもの.局所視野異常はこれで判定する.実際には,C24-2 の検査点に相当する点のなかで,Mariotte 盲点の 2 点とその下方の 1 点ら9 d Bまでの幅があることになり,GS だけで視野障害の有無を判断することは厳に慎まなければならない.b. トータル偏差(TD),トータル偏差確率プロット(TD plot),パターン偏差(PD),パターン偏差確率プロット(PD plot)(図 5)各検査点の正常感度分布は Full,Fastpac,SITA-S,SITA-F でそれぞれ異なるので,他の測定戦略の結果と比較する際は十分な注意を要する.(1)トータル偏差(TD)の意味:各検査点での年齢別正常網膜感度との差と,その確率 plots がそれぞれ表示される.正の値は正常よりも感度が高く,負の値は感度が低いことを示す.TD plots はその TD 値が正常者での出現確率(Full,SITA で分布が異なる)を示すが,p<0.5%の範囲は広く, 6 d Bでも 30 d Bでも p<0.5図 5トータル偏差とパターン偏差上段がトータル偏差(TD),パターン偏差(PD)の数値,下段がそれらの確率 plots の表示.TD,PD いずれも p<0.5%未満の値の幅は広く,図中の TD でも, 6 d Bも 30 d Bもいずれも p<0.5%である「■」がついている.これは,TD が 6 d Bから 30 d Bに悪化しても,確率 plots では「■」のまま変わらず,確率 plots だけ見ていては悪化がわからないことを示している.このことは,PDでも同様で,視野障害の進行判定の際,TD,PD の確率 plots だけみていては進行を見落とすことになりかねないので,必ず TD,PD の数値と合わせて判定する.———————————————————————- Page 51600あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(24)内障などの中間透光体の混濁によっても悪化する.(2)パターン標準偏差(pattern standard deviation:PSD):測定された視野の不規則性,すなわち凹凸の大きさ(感度のよいところと悪いところの差の大きさ,正常視野の形状からの逸脱度合)を示す.図 3 では,PSDは 16.54 d Bを示し,正常者の 0.5%未満にしかこの値がみられない,すなわち視野の凹凸が大きいことを示している.PSD は小さければ,視野の凹凸が少なく,部分的に深い沈下がないことを示す一方,値が大きくなれば局所性視野障害が強いことを示す.緑内障初期で障害が軽微な場合のほか,末期になり視野全体が悪くなると網膜感度の凹凸が減り,PSD は小さくなる.MD がおよそ 20 d Bを超えると PSD は逆に小さくなり,視野の重症度をうまく表現できなくなる(図 6,7).(3)短期変動(short term uctuation:SF):基本的には既定の 10 点で 2 回閾値が測定されて,同一検査点での網膜感度のばらつきをもとに計算が行われ SF としの計 3 点を引いた 51 点の TD 値の上から 7 番目の値(C24-2 の検査点の TD 値の上位 85%に相当)を 0 にするよう,すべての TD 値からこの 7 番目の TD 値を引いたものが PD 値である.図 5 では,TD 値の上位 7 番目は 4 d Bであるが,小数点以下が四捨五入されているので,PD 値をみると TD 値から 4 または 3 引かれている点が混在している.確率 plots を見ると,TD plotsは全体に p 値がついているが,PD plots では上半鼻側に沈下点が集中し,上鼻側から Bjerrum 領域にかけての沈下が明瞭になっている.c. 視野指標(global indices)(図 3)各視野指標の正常分布は Full,Fastpac,SITA-S,SITA-F でそれぞれ異なるので,他の測定戦略の結果と比較する際は注意を要する.(1)平均偏差(mean deviation:MD):測定された視野が同年代の正常視野と比べて,平均してどの程度の感度差があるかを示し,視野の大まかな重症度を示す.白図 6パターン標準偏差(PSD)MD が 4.54 d Bと 29.69 d Bとおよそ 25 d B違うにもかかわらず,それぞれの PSD は 4.62 d B(p<0.5%)と同じ値を示している.これは PSD が単に視野内の感度の差(視野の凹凸)の大きさを示す指標であることを示す.左の初期例と右の末期例のパターン偏差の数値を比較すれば,両者が実によく似た値を示していることに気づく.これは,パターン偏差の作られ方によるもので,トータル偏差から決められた数値を加減したものがパターン偏差であるからである.———————————————————————- Page 6あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091601(25)て表示される.初期の異常で大きくなることもあるが,応答ごとの変化を示す信頼性指標の一つでもある(図8).SITA では理論的に閾値の変動が存在しないためSF は計算されない.(4)修正パターン標準偏差(corrected pattern stan-dard deviation:CPSD):同一検査点での感度のばらつきを加味し PSD を修正したもので,より正確な視野の不規則性を示す.PSD が異常でも CPSD が小さいほど,実際の視野の凹凸は少ないことになるが,SF が大きいと,PSD が異常(p<5%)でも,CPSD は小さくなり異常を示さないこともある.CPSD の数値や p 値だけでは異常を見逃すこともあり,視野異常の判定は他の指標も参考にして判断する必要がある(図 8).SITA では SFが計算されないため CPSD も算出されない.d. 緑内障半視野テスト(glaucoma hemi eld test:GHT)(図 3,9)緑内障は初期視野障害が上下いずれかに偏って出現するのを特徴とするため,30°内の上下各々の視野を網膜神経線維走行に沿った 5 つの対称な領域(クラスタ)に分け,上下障害の非対称性を検証する.すなわち,PDのなかで,各領域中の検査点のそれぞれの百分位での順PSD(dB)MD(dB)20151050-35-30-25-20-15-10-505図 7 パターン標準偏差(PSD)と平均偏差(MD)の関係(SITA-S)自験例 1,122 例 1,122 眼の SITA-S の結果から各眼の MD とPSD をプロットしたもの.このなかで最大の PSD は 18.85 d B(MD:13.07 d B)であったが,MD が 15 から 20 d B以下になると MD の悪化につれ PSD が徐々に下降していくのがわかる.ちなみに,このプロットを 2 次回帰すると PSD= 0.0305*MD2+1.1677*MD+1.7312(r2=0.7251)となり,PSD が最大となる MD は 19.14 d Bであった.この MD の値は SITAでの単一視野解析でパターン偏差が表示されなくなる MD 20 dBと近似している.図 8 短期変動(SF),修正パターン標準偏差(CPSD)全点閾値法(Full)での測定結果.PSD は 7.03 dB(p<1%)と異常を示すが,SFが大きいためCPSD は極端に改善し0 d Bになってしまっている.このように SF が大きい症例では,検査の信頼性が低いこと(reduced reliability)が多い.———————————————————————- Page 71602あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009位に基づくスコアが 5 つの各領域に割り当てられ,5 つの領域の少なくとも 1 つ以上で上下のスコア差が正常の1%未満にしかみられないか,対応する 5 つの領域の少なくとも 1 組でスコアがいずれも正常の 0.5%未満にしかみられない場合に「正常範囲外(outside normal lim-its:ONL)」と判定され,視野障害が緑内障性である可能性が示唆される1).また,少なくとも 1 つの領域でのスコア差が正常の 3%未満にしかみられないものの,ONL ほどの差がないものには「ボーダーライン(border line)」と表示される.その他,ONL の状態ではないが,全体に感度低下があり,最も感度低下の少ない領域でさえ正常の 0.5%未満にしかみられない場合に「全体的感度低下(general reduction of sensitivity)」,正常の 0.5%にしかみられない高感度を示す場合に「異常な高感度(abnormal high sensitivity)」と表示され,これら 4 つの基準に当てはまらないものが「正常範囲内(within normal limits)」と表示される.ただし,耳側にクラスタが配置されていないため,Mariotte 盲点より耳側の領域の上下対称性は検証されない.e. VFI(visual eld index)Glaucoma progression analysis(GPA)2 搭載機のSITA での結果に表示される.PD をもとに,年齢と中心視野に重み付けをした視野の残存率を表す指標である.PD にまったく異常がない場合を 100%とし,PD plots で 5%未満のシンボルが出た点の TD から%を決定する.各点の%が決定後,中心部に加重をかけて全体の%を算出する.被検者の年齢に応じた視機能率を示す.図 3 の症例では VFI は 53%を示し,すでに約半分の視野が喪失していることを示している.2. スクリーニング(図 10)a. 3ゾーン法各検査点の年齢別正常網膜感度よりもわずかに(通常6 d B)明るい視標と視野計の最も明るい視標(0 d B;10,000 asb)で検査を行い,視野を正常,比較暗点,絶対暗点の 3 群,すなわち 3 つのゾーンに分ける.正常と判断された点でも,閾値検査で検出されるような軽度の異常が含まれる可能性があり,あくまで深い異常がないことを示すのみであるが,絶対暗点の有無も確認できる.b. 2ゾーン法各検査点の年齢別正常網膜感度よりもわずかに(通常6 d B)明るい視標で検査を行い,視野を正常,異常の 2つのゾーンに分ける.正常と判断された点でも,閾値検査により検出されるような軽度の異常が含まれる可能性があり,逆に,異常と判定された点の沈下の程度もさまざまである.正常と判定されてもあくまで明らかな異常がないことを示すのみである.c. スペシャル:Esterman test(図 11)スクリーニングテストの一種.視標が比較的大きく(サイズ III),明るい(輝度 10 d B)単一輝度法のため矯正レンズなしで中心部と周辺部を一度に測定する.通常の視野検査と同様非測定眼を遮閉して行う片眼用と両眼開放で測定する両眼用がある.検査点は,片眼用全検査点 100 点のうち下方視野に 67 点が,両眼用全検査点120 点のうち下方視野に 82 点が重点配置されている.結果は,測定点が正常と判定されても,そこに深い暗点がないという程度の情報でしかないことを忘れてはならない.障害程度の判定は,Esterman test が中心 10°内に 4 点しか検査点がないため,10°内の状況を視力で代用するか別のプログラムを併用して総合判定する必要が(26) 図 9緑内障半視野テスト(GHT)のクラスタ各クラスタはおおよそ網膜神経線維の走行パターンに沿って構成されている.———————————————————————- Page 8あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091603(27)中心スクリーニング76点(右眼)3ゾーン法2ゾーン法ゼンシヤスクリーニング120点(左眼)図 10スクリーニング検査左は 3 ゾーン法(中心 76 点),右は 2 ゾーン法(全視野 120 点)での結果.同じシンボル「■」でも,左は絶対暗点を示すが,右は呈示された視標が見えなかったことを示すのみで,絶対暗点か否かはこの結果だけではわからない.図 11スペシャル(Esterman test)視覚障害や自動車運転適正の判定などのために,tangent screen や Goldmann での視野を定量化するために Ben Esterman が考案した grid2,3)をもとに作られたプログラムである.片眼用と両眼用があり,いずれも下半視野を重視した検査点配置になっており,およそ 2/3 の検査点が下半視野に配置されている.左はSSOH の症例で,C30-2 の結果と並べると耳側周辺の様子がよくわかる.右は POAG の症例で,自動車運転を日常的に行っているが,「自覚的にはまったく不自由がない」ということが,両眼用の結果からも推察される.———————————————————————- Page 91604あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009ある.おわりに結果に表示される各項目の意味について解説したが,いくら精密な解析をしても,元の結果に信頼性がなければ意味がない.結果を判定する前には,必ず信頼性指標やゲイズトラックをチェックし,検査中の被検者の様子なども加味してそれぞれの検査結果に信頼性があるかどうかを確認しておく必要がある.信頼性の乏しい結果であれば,判定は参考にとどめ,正確に視野を読むためには再検査を行うことも必要である.文献 1) Anderson DR, Patella VM:Automated Static Perimetry. 2nd ed, Mosby, St Louis, 1999 2) Esterman B:Grids for functional scoring of the visual elds. Doc Ophthalmol Proc Series 26:373-380, 1981 3) Esterman B:Functional scoring of the binocular visual eld. Doc Ophthalmol Proc Series 35:187-192, 1983(28)