0910-1810/06/\100/頁/JCLS方が登場してきた4)が,この考え方は,SSの結膜の異常をうまく説明してくれる.近年,涙液減少型ドライアイの考え方や治療にも進歩がみられるが,ここではその病態の考え方と診断,治療の基本について述べる.I涙液減少型ドライアイの病態─3つの異常涙液減少型ドライアイにおける1つ目の異常は,眼表面の涙液と上皮のインターフェイスの異常である.この異常は,ドライアイに共通するものではあるが,涙液減はじめにドライアイは,涙液減少型と蒸発亢進型に分けられ1)(図1),涙液減少は,その大きな原因の1つである.涙液減少型ドライアイとは,さまざまな原因によって眼表面の涙液貯留量が減少し,その結果,角膜上皮障害がひき起こされて,異物感,羞明などの慢性の眼症状が生じ,QOL(qualityoflife)が低下するものである.最近,新しいドライアイの問題として,視機能の低下が注目されるようになってきた2,3)が,これは涙液減少型ドライアイにおいても例外ではない.涙液減少型ドライアイは,さらに,シェーグレン症候群(Sjogren’ssyndrome:SS)とSS以外の涙液減少型ドライアイ(Non-SS)に大きく分けられる(図1)が,両者に共通する病態として,涙液貯留量の減少に基づく涙液と上皮の間の悪循環があり,この病態に基づけば,角膜上皮障害や眼症状を理解しやすい.一方,ドライアイの病態の新しい考え方として,炎症を中心におく考え(3)283*NorihikoYokoi:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕横井則彦:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特集●基本的な角膜上皮疾患の考え方と治療方法あたらしい眼科23(3):283~290,2006涙液減少型ドライアイAqueousTear-deficientDryEye横井則彦*図1ドライアイの分類とその原因涙液減少型ドライアイシェーグレン症候群(SS)コンタクトレンズ装用VDT作業マイボーム腺機能不全蒸発亢進型重症眼表面疾患Non-SSReflexloopの障害など図2涙液減少型ドライアイの眼表面における涙液─上皮の悪循環とその修復システムとしてのreflexloop~涙腺システム涙液減少型ドライアイでは,涙液と上皮の界面に悪循環が生じており,それを眼表面の知覚神経から涙腺に至るreflexloopを通じて反射性に分泌された涙液(reflextear)が修復しようとするが,その機能不全のために,悪循環が慢性化している.悪循環上皮の濡れ性の低下涙液の安定性の低下涙液(水分)量減少Sensorynerve修復液層油層表層上皮障害ReflexloopReflextear284あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006少型ドライアイにおいては,涙液量の減少によって涙液と上皮の良好な関係(安定した涙液により上皮の機能が保たれ,逆にムチンを介した上皮の涙液保持作用により涙液の機能が保たれるという関係)が崩れ,慢性的な悪循環が生じている(図2).眼表面に悪循環が生じると,眼表面の知覚神経から神経系の反射経路(reflexloop)を介して涙腺から反射性の涙液が分泌され(図2),眼表面の涙液量が増加して,悪循環が軽減される.ところが,涙液減少型ドライアイにおいては,reflexloop~涙腺からなる眼表面のフィードバックシステムにすでに障害があるために,悪循環が解消されにくく,慢性化する.つまり,この救済システムの異常(reflexloop~涙腺システムの障害)は,涙液減少型ドライアイに特徴的な2つ目の異常である.さらに涙液減少型ドライアイの重症例には,もう1つの異常が関与している.涙液減少型ドライアイでは,上・下の涙点閉鎖を行えば,眼表面に最大の水分増加がもたらされ,reflexloop~涙腺システムの機能不全が代償されて悪循環が解消し,角膜上皮障害はほとんど消失する例が多い.しかし,上・下の涙点閉鎖を行っても,結膜上皮の障害の改善は,角膜上皮ほどには期待できない(図3)5).この事実は,涙液減少型ドライアイにおける結膜上皮の障害が単に水分量の減少だけに基づくものではないことを意味していると考えられる.特に,SSにおいて,結膜の免疫学的な炎症が病態に深く関与していることが指摘されており6,7),涙液減少型ドライアイにおける3つ目の異常として,この結膜の炎症の関与を考える必要がある.II涙液減少型ドライアイの原因涙液減少型ドライアイは,眼表面の涙液貯留量の減少を特徴とするが,涙液の基礎分泌に基づくと考えられる眼表面の涙液貯留量と反射性に分泌される涙液量には有意な相関がある8).したがって,reflexloop~涙腺までの反射性涙液分泌経路の異常(図4)を伴う例は,眼表面の涙液貯留量も減少しており,涙液減少型ドライアイ(4)図3上・下涙点プラグ挿入前・後の角膜上皮障害と結膜上皮障害の変化上段:上・下涙点プラグ挿入前,下段:プラグ挿入後.スルフォローダミンB染色(上皮障害のみを検出しうる色素)で評価.角膜上皮障害は糸状物も解消して完全に消失しているが,結膜上皮障害の改善は少ない.あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006285を生じうる.一方,重症の眼表面疾患であるスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnsonsyndrome)や(偽)眼類天疱瘡〔ocularcicatricial(pseudo-)pemphigoid〕にもしばしば,重症の涙液減少型ドライアイが合併する.しかし,これらの眼表面疾患の本質的な異常は,高度の結膜炎症であり,結膜上皮下に生じた強い炎症の結果,結膜の瘢痕性変化がひき起こされて涙腺の導管が閉塞され,その結果,涙液分泌が減少する.また,これらの重症の眼表面疾患には,高度のマイボーム腺機能不全や炎症に基づく眼表面の角化がしばしば合併し,涙液減少と蒸発亢進の合わさった最重症のドライアイが生じうる(図1).III涙液減少型ドライアイの診断1.眼症状角膜上の涙液の不安定性や角膜上皮障害による「乾燥感」や「異物感」がよくある症状であるが,結膜の炎症に基づく「充血」や「眼脂の増加」を訴えることもある.一方,reflexloop~涙腺システムが比較的保たれている涙液減少型ドライアイの軽症例では,逆に「流涙」(軽症例では,角膜表面に悪循環が生じはじめると,反射性に涙液が分泌される)を訴えることもある.ドライアイにおける視機能障害,すなわち,開瞼の維持により,視力が低下したり2),高次収差が増加する3)ことが示されているが,涙液減少型ドライアイにおいても,視機能の障害が主訴となる場合もある.しかし,一般に症状は,いわゆる不定愁訴の場合が多く,症状だけで涙液減少を看破することはできない.涙液減少があると,乾燥により脱落する細胞が増えるとともに,眼表面の涙液の流れが遅くなって,ムチンや細胞の残渣が滞留して,眼脂を生じやすく,炎症が遷延しやすくなる.中高年者の眼脂の訴えは,しばしば,慢性結膜炎に分類されやすいが,その背景に涙液減少が関与していることがあることにも注意したい.2.涙液減少の診断法涙液減少型ドライアイの診断において最も重要なことは,涙液減少の検出であることはいうまでもない.しかし,高度の涙液減少の検出は容易でも,軽度の異常を看破することはしばしば容易ではなく,いくつかの異常から総合的に考えるのが実際的である.a.涙液メニスカスの観察先に述べたように,涙液量には,現在,眼表面で利用されている涙液貯留量と,悪循環を軽減させる援軍としての反射性涙液分泌量の2つの視点があり,誤りの少ない涙液量の評価のためには,両者をともに評価するのが良い.下眼瞼中央の涙液メニスカスの高さは,眼表面全体の涙液貯留量を知るうえでの良い指標となる.メニスカスの高さは,細隙灯顕微鏡を用いて,なるべく染色を行わずに行いたいが,しばしば評価しづらい.そこで,フル(5)副交感神経障害抗コリン作用薬剤の服用など涙腺障害涙液減少型ドライアイ加齢顔面神経障害(中枢性)聴神経腫瘍手術など知覚神経障害角膜切開手術(ECCE,LASIK,PKP)糖尿病点眼の影響(NSAID,bblockers)Reflexloop図4Reflexloop~涙腺システムの障害部位とその背景下方涙液メニスカス図5正常の涙液メニスカスの高さ─Schirmer試験紙を用いた確認286あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006オレセイン染色を用いるが,染色は,眼表面の涙液量を変えないように行うことが重要であり,涙液量を変えてしまうとせっかくの重要な情報の1つ(涙液貯留量)を見失ってしまうことになる.したがって,フルオレセイン染色時には,水滴で試験紙を塗らした後,水滴を強く振りきり,試験紙の角をメニスカスに当てるだけの操作で,最小限の色素を投与することが大切である.メニスカスの高さを実感することはむずかしいので,最初は,Schirmer試験紙などをあてて,正常の高さ(0.2~0.3mm)をよくイメージしておくとよい(図5).また,涙液減少においては,メニスカスに貯留する涙液に汚れ(微塵,増加した眼脂など)が観察されやすく,この所見も参考になる.b.SchirmerテストⅠ法SchirmerテストⅠ法は,異常部位の高位診断はできないが,reflexloop~涙腺に至るフィードバックシステム(悪循環の自己修復システム)の異常を検出しうるすぐれた検査法である.点眼麻酔は行わず,Schirmer試験紙を下眼瞼の外側1/3にかけ,5分間の涙液の分泌量を眼瞼縁からの濡れた濾紙の長さで計測する(mm/5分).試験紙が角膜に触れると値が変動しやすいため,挿入時に注意が必要である.異常値は,5mm/5分以下.c.角膜,結膜の上皮障害の評価ドライアイでは,角膜に点状表層角膜症(superficialpunctatekeratopathy:SPK)を生じるが,涙液減少では,角膜下方にSPKが集積しやすい.しかし,涙液減少がより重症になってくると,SPKは角膜下方に限局せず,角膜の中央を含んで,より上方にまで分布するようになる.そして,さらに重症になると,角膜に糸状物(6)図6涙液減少型ドライアイにおける角膜糸状物(上)とcornealmucusplaque(下)図7結膜上皮障害の観察上:リサミングリーン染色,下:ブルーフリーフィルター使用.あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006287やmucusplaqueを伴うようになる(図6).涙液減少型ドライアイでは,角膜よりも結膜に上皮障害を伴いやすい特徴があり,SSでは,角膜にSPKがみられなくても,結膜に高度の点状染色が認められ,この所見からSSを疑うことも多い.なお,結膜の点状の上皮障害は,ブルーフリーフィルターを用いれば,観察がより容易である(図7下)9).ローズベンガル染色は,ムチンに覆われていない角結膜上皮を染色するとされ10),SSの診断には好んで用いられてきた経緯があるが,染色時の刺激が強いため,最近では,同様の染色性を示し,刺激のないリサミングリーン染色11)が用いられる傾向にある(図7上).d.涙液の質の評価涙液の「質」としては,涙液の重要な「性質」である「安定性」を評価する.実際には,フルオレセインで涙液を染色した後,自然瞬目後に開瞼を持続させ,フルオレセインにbreakupが生じる(darkspotが出現する)までの時間を電子メトロノームなどを用いて計測し,3回の平均を取る(異常値は5秒以内).涙液減少型ドライアイでは,一般に,涙液の安定性も低下している.e.検査の手順と総合診断ドライアイの検査は,互いの検査が干渉し合いやすいため,侵襲の少ない検査法から順番に施行することが重要であり,このステップを確実に踏むことが,とりこぼしの少ない涙液減少型ドライアイの診断法となる(図8).1995年に示されたわが国のドライアイの診断基準12)は,近々改定される方向にあるが,ドライアイの診断基準は,本来,涙液減少型ドライアイではなく,原因によらずドライアイそのものを診断するものである.したがって,先に述べた涙液減少眼のチェック項目〔1)病歴やSchirmerテストⅠ法により,reflexloop~涙腺の経路の異常を推定,2)涙液メニスカスが低い,3)角膜上皮障害が角膜の下方にあり,結膜の上皮障害が角膜に比べて強いか同程度〕を参考に総合的に診断する.3.SSの診断SSの診断は,日本の基準(日本シェーグレン症候群改訂診断基準1999)もあるが,筆者らは,Foxの基準13)に準拠して,より厳しい基準で行っている.すなわち,涙液減少型ドライアイの所見に加えて,ドライマウスを聴取できる場合に,血液検査で自己抗体(リウマチ因子,抗核抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体)の有無を調べ,これが少なくとも1つ陽性である場合に限り,耳鼻科にて口唇小唾液腺の生検を行って,病理部に確定診断を依頼している.また,原発性SSか二次性SS(他の膠原病を合併)の鑑別は,内科に依頼している.なお,日本の基準では,抗SS-A抗体,または,抗SS-B抗体陽性,かつ,涙液減少型ドライアイがあれば,SSと診断でき,必ずしも病理組織診断を必要としない.IV涙液減少型ドライアイの治療1.涙液減少型ドライアイの重症度の評価涙液減少型ドライアイの的確な治療のためには,まず,その重症度を評価することが重要である.涙液減少型ドライアイの重症度は,一般にSPKの程度で評価でき,軽症例(SPKが角膜下方周辺に限局),中等症例(SPKが角膜中央より下方に分布するが,角膜中央を含まない),重症例(SPKが角膜中央を含んで全面に分布)の3つに分けると,簡便である(図9).ただし,上輪部角結膜炎(superiorlimbickeratoconjunctivitis:SLK),(7)結膜上皮障害の評価(bluefreefilterが有用)メニスカスの高さの観察(涙液貯留量の定性的評価)最小量のフルオレセインを投与角膜上皮障害の評価結膜弛緩症,上輪部角結膜炎の観察10分以上おいて,SchirmerテストⅠ法BUTの測定(3回平均)図8フルオレセインを用いた涙液減少型ドライアイの診断ステップBUT:涙液層破壊時間.288あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006難治性の角膜糸状物,cornealmucusplaqueの合併例は一般に刺激症状が強いため,点眼治療の無効例は重症に含めるのが良い(図9,10).2.涙液減少型ドライアイに対する点眼治療の基本点眼治療の基本は,人工涙液の頻回点眼であり,防腐剤無添加のものを用いるのが良い.薬剤性の上皮障害は,涙液減少に基づくSPKに上乗せの形で生じるため,防腐剤無添加の点眼液を治療の基本におけば,薬剤性の上皮障害の関与を考えなくて済み,ドライアイの重症度が判定しやすくなる.ドライアイ患者では,長い点眼歴を有する例も多いため,初診時に重症例と判断されても,少なくとも1カ月程度は,防腐剤無添加の人工涙液のみでwashoutをかけ,再び重症度を評価して,それに基づいて治療を考えるのが良い(図9).低力価のステロイド点眼(0.1%フルオロメトロンなど)は,特に,SSで充血を伴う例や眼脂の多い例には,ある程度有効であり,人工涙液点眼だけで管理が難しい場合に,オプションとして用いる.米国では,抗炎症治療としてのシクロスポリン点眼の効果が認められ14),実際の臨床にも用いられている.3.中等症までの涙液減少型ドライアイの治療中等症までの涙液減少型ドライアイでは,点眼治療によりSPKの下方シフト(比較的知覚の鈍麻な角膜下方周辺部にSPKがシフトする)が得られやすく,それが得られれば症状の改善が得られる.しかし,点眼を止めれば,SPKは再び上方にシフトして症状が悪化するため,常にSPKが下方に絞り込まれるように,症状のないときも点眼治療を続けることが大切である.このSPKの下方シフトのチェックは,ドライアイの重症度の変化や点眼治療のコンプライアンスを確認するのに有用である.4.涙液減少型ドライアイの重症例の治療点眼治療で,症状の改善が得られない重症例では,上・下の涙点に涙点プラグを挿入する.上・下一方のプラグ挿入は,重症例には効果がなく,逆に,中等症例以下への上・下の涙点プラグ挿入(図10)は,眼脂の蓄積,薬剤毒性,バイオフィルム形成15)などの涙点プラグに伴う合併症がありうるため,頻回点眼のほうが優れている.なお,重症例に対する眼軟膏の点入は,角膜表面の疎水性を高めるため不適当である.(8)重症中等症軽症ドライアイの重症度SPKの分布併発症治療の選択ステロイド点眼はあくまでもオプションとしてなし(SPKのみ)なし(SPKのみ)filamentcornealmucusplaqueSLK人工涙液(7/日)(防腐剤フリー)orヒアルロン酸(6/日)人工涙液(7~10/日)(防腐剤フリー)and/orヒアルロン酸(6/日)(防腐剤フリー)上・下涙点プラグor外科的涙点閉鎖術and人工涙液(6/日)(防腐剤フリー)低力価ステロイド(必要に応じて2~4/日),プラグ後は2/日まで)図9涙液減少型ドライアイの重症度評価と治療の選択SPK:点状表層角膜症,SLK:上輪部角結膜炎.あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006289(9)涙点プラグの挿入16)は,原則として上・下の涙点に行う.まず,涙点ゲージで涙点サイズを計測した後,フレックスプラグR(FP:EagleVision社),あるいは,パンクタルプラグR(PP:FCI社)を選択し,挿入する〔FPは,挿入しうる最大のゲージ径(MG)+0.1mm,PPは,MG<=0.6⇒SS,MG=0.7⇒S,MG=0.8⇒M,Mが脱落して疎通性のある肉芽のある場合はLを原則として選択するが,PPのSS,Sよりも,むしろMG=0.7まではFPを選択することが多い〕(図10).FPは脱落しやすいが肉芽形成がなく,脱落後に平均0.1mm涙点が拡大する17).一方,PPは脱落しにくいが肉芽形成を起こしやすく,脱落後も同じプラグを挿入しうるが,プラグの周囲が汚れ,白色塊(細菌バイオフィルムと関係)が付着しやすい.最近では,FPの長所を維持したまま,脱落の低さをもくろんだスーパーフレックスプラグR(SFP:EagleVision社)が登場したが,今後の動向が期待される.涙点プラグは,挿入直後に刺激症状が生じて抜去を余儀なくされるケースもまれではないが,挿入されても恒久的なものではなく,脱落をくり返すうちに数年以内に挿入できるプラグのサイズを失うか,挿入できなくなることを患者に伝えておくことが大切である.プラグの挿入後は,原則として,防腐剤を含まない人工涙液のみで,眼脂などをwashoutし,ヒアルロン酸は不要となる.涙点プラグの挿入が不可能な場合は,筆者らは,独自に開発した外科的涙点閉鎖術18)を行って図10涙点プラグの種類(上段)と上・下涙点プラグの挿入例(下段)上段:左:フレックスプラグR(FP);中:パンクタルプラグR(PP);右:スーパーフレックスプラグR(SFP).下段:左:プラグ挿入前.難治性の角膜糸状物;中:上,下涙点にフレックスプラグRを挿入;右:糸状物は消失しているが,中等度の涙液減少であるため,メニスカスは比較的高い.FPPPSFP290あたらしい眼科Vol.23,No.3,2006(10)いるが,まだ十分とはいえず,完璧な涙点閉鎖法の登場を期待している.おわりにドライアイが注目されるようになって,涙液減少型ドライアイの領域も着実に進歩してきている.診断においては,まだ一般的な方法とはなっていないが,メニスコメトリー法8,19)などの非侵襲的な涙液貯留量の評価法も誕生した.しかし,涙液減少型ドライアイの最も重要な病態の舞台は角膜表面にあり,角膜上の涙液量を評価しうる新しい非侵襲的な方法の開発が待たれる.また,治療においては,ヒアルロン酸20)の登場は,点眼治療の範囲を拡大させたが,涙液減少型ドライアイの中等症までの例では,いまなお頻回点眼を余儀なくされており,さらに長時間涙液を安定化させうる点眼液の登場が待たれる.さらに,涙点プラグの非適応例に対して,恒久的に安定した涙点閉鎖の得られる手術方法の開発が待たれる.文献1)LempMA:ReportoftheNationalEyeInstitute/IndustryworkshoponClinicalTrialsinDryEyes.CLAOJ21:221-232,19952)GotoE,YagiY,MatsumotoYetal:Impairedfunctionalvisualacuityofdryeyepatients.AmJOphthalmol133:181-186,20023)KohS,MaedaN,KurodaTetal:Effectoftearfilmbreak-uponhigher-orderaberrationsmeasuredwithwave-frontsensor.AmJOphthalmol134:115-117,20024)PflugfelderSC:Antiinflammatorytherapyfordryeye.AmJOphthalmol137:337-342,20045)広谷有美,横井則彦,都築祐勝ほか:涙点閉鎖術後の角膜および結膜におけるローズベンガル染色についての検討.日眼会誌107:719-723,20036)SternME,GaoJ,SchwalbTAetal:ConjunctivalT-cellsubpopulationsinSjogren’sandnon-Sjogren’spatientswithdryeye.InvestOphthalmolVisSci43:2609-2614,20027)KawasakiS,KawamotoS,YokoiNetal:Up-regulatedgeneexpressionintheconjunctivalepitheliumofpatientswithSjogrensyndrome.ExpEyeRes77:17-26,20038)YokoiN,KomuroA:Non-invasivemethodsofassessingthetearfilm.ExpEyeRes78:399-407,20049)KohS,WatanabeH,HosohataJetal:Diagnosingdryeyeusingablue-freebarrierfilter.AmJOphthalmol136:513-519,200310)FeenstraRP,TsengSC:Whatisactuallystainedbyrosebengal?ArchOphthalmol110:984-993,199211)KimJ,FoulksGN:Evaluationoftheeffectoflissaminegreenandrosebengalonhumancornealepithelialcells.Cornea18:328-332,199912)島﨑潤:ドライアイの定義と診断基準.眼科37:765-770,199513)FoxRI,RobinsonCA,CurdJGetal:Sjogren’ssyndrome.Proposedcriteriaforclassification.ArthritisRheum29:577-585,198614)StevensonD,TauberJ,ReisBL:EfficacyandsafetyofcyclosporinAophthalmicemulsioninthetreatmentofmoderate-to-severedryeyedisease:adose-ranging,randomizedtr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