———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS者への投与は慎重に行う必要がある1,2).眼感染症に起因する炎症に対してステロイド薬を用い,過剰な治癒反応を抑えることは,病原体の駆逐の面ではマイナスである.病原体の駆逐を優先するべきなのか,過剰な治癒反応を抑えるべきか(つまりステロイド薬を使うのか)はいつも悩む問題である.感受性検査に基づく的確な抗菌薬の投与とともに,どの時期からどれだけの量のステロイド薬を使用するのか微妙なさじ加減が必要となる.またステロイド薬投与による眼合併症に対しても注意が必要である2).おもなものは白内障と緑内障である.これら眼合併症は喘息・膠原病などで長期にステロイド薬全身投与を受けている患者のみならず,ステロイド薬点眼でも誘発される.2.ぶどう膜炎局所ステロイド薬治療ぶどう膜炎治療の基本はステロイド薬の局所投与である.局所投与法としては点眼,結膜下注射などが一般的だが,ときにTenon下,球後注射,硝子体腔注射なども行われる(現時点では,硝子体腔注射は倫理委員会の承認を得て行うべきである).おもに前眼部病変に対しては点眼・結膜下注射,中間部ぶどう膜炎や後眼部病変に対しては後部Tenon下注射で対応する3).加えて適切な瞳孔管理がきわめて重要である.眼局所投与は全身的な副作用が少ないが,それでもステロイド緑内障,白内障などを起こすことがある.使われるステロイド薬はじめにぶどう膜は眼球内で唯一豊富な血流を有する部位である.単位体積当たりの血管が多く,さまざまな全身血管病に伴う眼炎症の起炎部位になりやすい.ぶどう膜炎といっても単にぶどう膜の炎症のみを指すのではなく,眼球内炎症の総称である.ゆえに,最近は広く眼全体の炎症状態を代表する呼び名として国際的には「内眼炎(intraocularinammation)」といわれるようになってきた.ぶどう膜炎は大きく自己免疫病などの内因性のものと,感染症などの外因性のものに分類できる.本稿では特に内因性のぶどう膜炎薬物治療について,副腎皮質ステロイド薬とそれ以外に分けて概説する.また近年治療に変化が起きつつあるBehcet病を取り上げ,現在の知見をまとめてみたい.I副腎皮質ステロイド薬1.全般的留意点眼科領域におけるステロイド薬投与法には大きく分けて全身投与と局所投与がある.いずれの投与法であれ,ステロイド薬は副作用の明らかな薬剤であり,投与する際に常にそのリスクとベネフィット比を考えなくてはならない.ぶどう膜炎治療では大量のステロイド薬を使う機会もあり,その場合全身管理の面から他科との連携は不可欠である.感染症(結核,ウイルス性肝炎など),糖尿病,骨粗鬆症,精神疾患など全身基礎疾患がある患(29)303*KoheiSonoda:九州大学大学院医学系研究院眼科学〔別刷請求先〕園田康平:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学系研究院眼科学特眼科薬物治療トレンド2008あたらしい眼科25(3):303308,2008ぶどう膜炎CurrentMedicalTreatmentforUveitis園田康平*———————————————————————-Page2304あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(30)はよく反応するが,漸減や中止のたびに再発するため,ステロイド薬を中止できない症例.⑤糖尿病などの合併性があり,長期間のステロイド薬投与が躊躇される症例.④ステロイド薬を処方してもコンプライアンスが良好でない症例.この治療法は眼内にステロイド薬徐放製剤を埋植するため,白内障や緑内障を起こす可能性がある.しかし,すでに白内障の手術が終わり,ステロイドレスポンダーでないことが確認されている症例には有効であろう.また,高齢者などに対するステロイド薬全身投与のリスクを考えると,全身的副作用を軽減できる点からも有用な治療法の一つになりうると考えられる.3.ぶどう膜炎全身ステロイド薬治療ステロイド薬を発症初期から大量に投与する必要のある代表的な疾患にVogt-小柳原田病がある5).初期量としてベタメタゾンなどの長期間持続性のあるステロイド薬をプレドニゾロン換算で200240mg/日から点滴静注として投与する.眼所見の改善を確認しながら徐々に減らし,プレドニゾロン換算で5060mg/日となったところで同量のプレドニゾロン内服に切り替える.その後,34カ月かけて内服量を漸減する.一方,メチルプレドニゾロン1,000mgを3日間点滴静注し,その後プレドニゾロン内服4060mg/日から漸減するパルス療法も行われることがある.いずれにせよ初回治療が非常に大切で,発症後早期に十分量のステロイド薬が投与されないと再発をくり返す,いわゆる遷延型に移行し,不可逆的な視機能障害に至る可能性が出てくる.Vogt-小柳原田病以外のぶどう膜炎に関しては,前述したとおり,治療の大原則はステロイド薬局所投与である.しかし,局所治療に反応せず,強い硝子体混濁や広範囲にわたる網膜血管炎,汎ぶどう膜炎に付随する黄斑浮腫などが存在する場合にはステロイド薬全身投与が適応となる.その投与量や投与期間については個々の症例に応じた匙加減が必要で,画一的な処方はない.たとえば,重症のサルコイドーシスなどではプレドニゾロン3060mg/日の内服から開始し,所見の改善にあわせて2030mg/日までは早めに減量し,その後は1カ月の種類は局所投与用としてはリン酸ベタメタゾン,デキサメタゾン,プレドニゾロン,フルオロメトロンなどで,点眼,眼軟膏製剤として使われる.現在日本で使用できるステロイド点眼薬の種類は大きく制限されている.単一の点眼薬をむやみに長く処方するのではなく,効果の強い製剤から徐々に弱い製剤に移行させながら治療するのが本来の姿である.皮膚科などで,さまざまな強さの数十種のステロイド製剤が存在し,さまざまな治療の選択肢が存在するのに比べると明らかに見劣りする.また,点眼薬のなかで最強のリン酸ベタメタゾン(リンデロンR)ですら全ステロイド製剤のなかでは中間の部類に属しており,真に重篤な炎症をコントロールできる点眼薬が日本には存在しない.当局が副作用を恐れるために,有望な新薬の開発ならびに上市をなかなか承認しないのが問題であるが,眼科医側からも草の根的な要望を出し続ける必要がある.最近,遷延性のぶどう膜炎症例に対して全身投与を行う前に,まずはトリアムシノロンなどの持続性デポ型ステロイド製剤(1020mg)の経Tenon下球後投与などが行われることが以前にも増して多くなった4)(その結果,全身投与が施行される頻度が減少しており,喜ばしいことである).トリアムシノロンは厳密には現行の保険でぶどう膜炎に使用できない.眼局所注射用の製剤の承認が待たれる.また,眼内にインプラントを設置し,数年にわたり有効濃度のステロイド薬を眼内に徐放させる製剤の開発・治験も行われている.これはフルオロシノロンアセトニドというステロイド薬を継続的に眼内で徐放するインプラントである(ボシュロム社).強膜側から毛様体に3.5mmの切開を加え,ステロイド薬を含んだインプラントを硝子体腔に挿入し,プロリン糸で強膜に固定する.一度埋植すると,眼内で有効に働く濃度のステロイドを3年間持続的に徐放する仕組みになっている.外科的な手技を必要とするので,すべての症例に勧められる治療法ではないが,以下のようなケースはよい適応であろう.①後眼部の炎症が主体で,ステロイド薬の点眼だけでは炎症をコントロールできない慢性のぶどう膜炎.②慢性のぶどう膜炎で,ステロイド薬の全身投与に———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008305(31)らしつつある.インフリキシマブ以外にも同じ腫瘍壊死因子a(TNF-a)拮抗薬として,エタネルセプトやアダリムマブといった製剤のぶどう膜炎治療への応用が今後進む可能性がある.また他のサイトカインや細胞表面分子をターゲットにした製剤がつぎつぎに開発されている.今後はどの生物学的製剤を取捨選択し,どの時期にどのような形で使用するか?という臨床プロトコール作りが課題になってくると思われる.IIIBehcet病に伴うぶどう膜炎治療の進歩1.Behcet病ぶどう膜炎の基本薬物治療Behcet病は1:口腔内難治性アフタ潰瘍,2:結節性紅斑などの皮膚症状,3:虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎(ぶどう膜炎),4:外陰部潰瘍を主症状とする原因不明疾患である.なかでも眼症状は重篤で失明に至るケースが多く,本症患者のQOL(qualityoflife)を著しく低下させている.Behcet病の眼病変の特徴は眼内各組織の閉塞性血管炎を主体とした眼組織全体の炎症である.症状は一過性であるが,炎症は再燃しやすい.再燃を重ねるに従って,種々の器質的障害が残るようになり,ついには失明またはそれに近い状態まで視機能が低下する.眼病変に対する治療は急性期と緩解期で異なる.急性期にはステロイド薬の点眼,結膜下・後部Tenon下注射といった局所投与を頻回に行う.こうして急性発作が落ち着いた緩解期に,発作頻度減少を目的とした治療を行う.まずコルヒチン0.51.5mgを経口投与する.コルヒチン単独で無効の場合,シクロスポリン(ネオーラルR)を併用内服する.5mg/kg/日を目安に投与を開始し,特に投与初期は血中トラフ値(シクロスポリンの血中最低濃度)が高くならないように気を配りながら投与量を加減する(通常100ng/ml以下).副作用として肝腎障害や神経Behcet病の誘発があり,特に後者は生命予後にも関わる問題であるため,本薬剤の使用開始に当たっては十分な注意が必要である.2.インフリキシマブの適応と注意点インフリキシマブ(レミケードR)が,わが国での3つの治験を経て6),2007年1月よりBehcet病による難治性網膜ぶどう膜炎に適応認可された.インフリキシマブから2カ月ごとに5mgずつ減量する.原因不明の急性劇症型ぶどう膜炎で,毛様体機能が著しく低下して低眼圧をきたしている症例などでは短期間のステロイドパルス療法が有効なことがある.前述のメチルプレドニゾロン500mg/日の点滴静注を3日間施行する.こうしたステロイド薬の全身投与を行った際は,副作用の発現に注意が必要である2).消化管潰瘍,骨粗鬆症,感染症,精神症状など多くの点に注意を払わなくてはならない.特に中高年の症例にステロイド薬の長期投与を余儀なくされた場合に問題となるのが骨粗鬆症である.最近はこのステロイド骨粗鬆症に対し,ビスホスホネートという薬剤が有効であることがわかってきた.整形外科に依頼して骨密度を定期的に測定しながら,必要に応じて内科や整形外科での加療を早めに依頼することも肝要である.II非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:non-steroidalanti-inammatorydrugs)と免疫抑制薬,代謝拮抗薬,生物学的製剤ぶどう膜炎に伴う眼内炎症抑制にエビデンスのあるNSAIDs内服薬はない.唯一,有効な局面があるとすれば,充血や毛様痛の激しい急性発症の前部ぶどう膜炎の鎮静化や,随伴する眼外症状の緩和目的に使用される程度である.現在日本で使用できるぶどう膜炎に対して免疫抑制薬は,Behcet病に対するシクロスポリンのみである(使用法については次項で述べる).しかし諸外国では,メトトレキサート,アザチオプリン,シクロフォスファミドなどの代謝拮抗薬が使用され,ある程度の効果をあげている.日本で免疫抑制薬・代謝拮抗薬の処方が制限されていることが診療に及ぼす影響は計り知れない.特にステロイド薬の全身副作用のある症例に(すべてとは言わないが)有効である可能性が高い.徐々にでもよいので免疫抑制薬・代謝拮抗薬の保険適用を広げていく必要がある.生物学的製剤が次世代治療薬として関心が高まっていることは周知の事実である.Behcet病に伴う難治性ぶどう膜炎に対し,2007年1月にインフリキシマブ(レミケードR)が保険適用となり治療に劇的な変化をもた———————————————————————-Page4306あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(32)向きがちだが,インフリキシマブはいわゆる生物学的製剤とよばれる新しい治療薬であり,また全身投与をする以上,投与前には投与可能かどうかの全身検査が必須であり,投与後も全身的な副作用に常に注意を払うことが必要である.まず本製剤ならびにマウス由来蛋白質に対する過敏症の既往歴,脱随疾患およびその既往歴,うっ血性心不全,重篤な感染症,活動性結核,がある場合は投与禁忌となっている.これらを確認した後,以下に進む.a.結核問診で結核既往歴を聴取し,ツベルクリン反応の検査を行う.また胸部X線,必要に応じて胸部CT(コンピュータ断層撮影)も追加する.これらの検査の結果,既感染が疑われる場合には必要に応じて抗結核薬の同時投与も検討しなければならない.b.肝炎B型肝炎ウイルスキャリアの患者においてB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている.HBs(B型肝炎表面)抗原を調べ,陽性であった場合には定期的な肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニターを行う.C型肝炎も同様である.c.その他の感染症採血を行い,白血球やリンパ球の上昇があったり,またb-d-グルカン陽性がみられたら感染症のリスクが高くなる.感染症の早期発見に努め,必要に応じて早期治療を行う.4.インフリキシマブの副作用副作用の種類としては,抗体製剤であることによる副作用と,TNF-aを抑制することによる副作用,の2つに大別される.a.抗体製剤であることによる副作用(1)Infusionreaction(投与時反応)即時型過敏症のことで,投与開始から投与後2時間以内に認められた副作用をいう.頭痛,発熱,めまい,血圧上昇,痒,嘔吐などがある.5.4%で起こると報告されている8).軽度のものでは点滴速度を下げるなどで対応するが,中等度以上のものでは点滴中止や抗ヒスタミン薬やステロイド薬追加投与などで対応するが,場合はあらゆる炎症の起点となるサイトカインTNF-aに対する抗体製剤で,マウス由来抗ヒトTNF-aモノクローナル抗体のうち,TNF-aへの結合部(可変部)のみを残し,定常領域をヒトIgG(免疫グロブリンG)に変換したキメラ抗体である.TNF-aを無力化するだけでなく,TNF-a産生細胞をも傷害することにより,炎症を抑制する7).具体的にはインフリキシマブ(5mg/kg)を0,2,6,14週(以後8週おき)で点滴投与する(図1).インフリキシマブがBehcet病による網膜ぶどう膜炎に適応承認されて以来,各施設で発作を頻回にくり返す難治性の眼Behcet病患者に順次導入され,結果報告が出てきつつある.それによるとおおむね眼発作の頻度は激減し,眼科的には著効しているといえるようである.忘れてはならないのは,「インフリキシマブはBehcet病治療の第一選択ではない」ということである.インフリキシマブ投与には後述するさまざまなリスクがある.(現時点では)Behcet病と診断したらまずはコルヒチン・シクロスポリンといった従来通りの治療を行うべきである.従来の治療に抵抗する,または副作用でコルヒチン・シクロスポリンの投与ができない症例に限りインフリキシマブの適応になる.今後症例数が増え安全性がより確立されるようなら,インフリキシマブのトップダウン療法などが検討される可能性がある.3.インフリキシマブ投与前の必須検査眼科ではぶどう膜炎の病勢がどうなるかにばかり目が図1インフリキシマブ(レミケードR)治療の実際インフリキシマブ(5mg/kg)を0,2,6,14週(以後8週おき)で点滴投与する.効能・効果Beh?et病による難治性網膜ぶどう膜炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)用法・用量通常,体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する.初回投与後,2週,6週に投与し,以後8週間の間隔で投与を行う.01020304050週02614223038468週間隔———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008307(33)でも一定の効果をあげている.ゆえにBehcet病患者に対し顆粒球除去治療が有効だと考えられた.アフェレーシスとは,人工デバイスを用いて,血液から何らかの成分を除去する治療の総称である.血液透析や血漿交換など老廃物や毒素を除く治療や,自己免疫病で自己抗体を特異的に除去する治療などを指す.しかし液性成分のみでなく,特定血球細胞を除去する治療も重要なアフェレーシスの分野である.顆粒球除去療法は酢酸セルロースビーズで充満されたカラム内に血液を体外循環させ,顆粒球をビーズに吸着させることで生体内から除去する(図2).顆粒球は文字通り細胞内顆粒をもった細胞の総称であるが,生体内の多くの顆粒球は好中球であるため,臨床的には「好中球除去療法」という意味合いをもつことが多い.眼症状を伴う活動期Behcet病患者に対し,顆粒球除去治療を行った.対象は従来の治療に抵抗して眼発作をくり返すBehcet病患者とした.顆粒球除去には酢酸セルロースビーズカラム(アダカラム)を使用し,治療効果判定は,治療前後6カ月間の眼発作回数で行った.エントリーした14例中,9例は治療後発作回数が減少し「効果あり」と判定した.全体の平均発作回数は,治療前4.2±1.6回,治療後2.9±1.4回(p=0.028)であった.発症からの5年以上経過した症例が,有効例が多かった11).本治療で最も注目すべきは重篤な副作用がないとによっては気道確保なども必要なこともある.(2)遅発性過敏症前回投与から一定期間置いて再投与する場合に,投与後3日以上経過して発現する過敏症をいう.筋肉痛,発疹,発熱,関節痛などがある.b.TNFaを抑制することによる副作用TNF-aは多くの炎症性疾患の元凶となってはいるが,本来正常な作用では,腫瘍の増殖を抑制したり,また感染防御機構の一翼を担っている.したがって,TNF-aを極端に抑制すると,腫瘍増大や感染症をひき起こす危険性が高まる.(1)感染症の発症関節リウマチにおける日本での調査では,細菌性肺炎の発症率は2.2%,結核の発症率は0.3%となっている.結核は投与前のスクリーニングや抗結核薬の予防投与により発症を抑えることができる.(2)悪性腫瘍の発症,悪化悪性リンパ腫や皮膚癌などが報告されてはいるが,自然発症頻度と差はなく,関連性は明らかではない.(3)ループス様症候群海外で結節性紅斑の悪化例9)や,抗ds(二本鎖)DNA抗体の上昇例が報告されている10).投与後のループス様症候群を思わせる徴候が認められ,さらに抗dsDNA抗体陽性化が認められた場合には投与を中止しなければならない.(4)脱随疾患既往がある場合は投与禁忌であり,疑いの場合は必要に応じて画像診断などを行う.5.顆粒球除去療法による治療Behcet病に伴うぶどう膜炎発作に活性化型顆粒球が深く関わることが知られている.虹彩や毛様体から前房や硝子体中に好中球が遊走し,前房蓄膿や硝子体混濁になる.前房水スメアをギムザ染色すると,前房蓄膿の構成細胞はほとんどが分葉核をもつ好中球であり(非肉芽腫性虹彩ぶどう膜炎),好中球の何らかの異常がBehcet病を誘発すると考えられる.Behcet病と同様に顆粒球が発作に関わる潰瘍性大腸炎患者に対し顆粒球除去治療が行われ,副腎皮質ステロイド薬が効きにくい重症患者図2顆粒球除去療法の実際患者の一方の肘静脈を脱血側,反対側の肘静脈を返血側として血管を確保する.静脈から静脈に専用ポンプを用いて循環させ,途中でカラムを通すことでビーズに顆粒球を吸着させる.循環条件は血液流量:30ml/分,循環時間:1時間,処理血液量:1,800ml,体外流出血液量:約200mlである.返血脱血アダカラム(酢酸セルロースビーズカラム)肘静脈(脱血側)抗凝固剤注入口肘静脈(返血側)———————————————————————-Page6308あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(34)1009-1019,19852)若倉雅登:ステロイド薬剤および免疫抑制剤の使用と眼科における注意点.あたらしい眼科17:11-15,20003)YoshikawaK,KotakeS,IchiishiAetal:Posteriorsub-Tenoninjectionsofrepositorycorticosteroidsinuveitispatientswithcystoidmacularedema.JpnJOphthalmol39:71-76,19954)OkadaAA,WakabayashiT,MorimuraYetal:Trans-Tenon’sretrobulbartriamcinoloneinfusionforthetreat-mentofuveitis.BrJOphthalmol87:968-971,20035)沼賀二郎:ぶどう膜炎治療薬の副作用.あたらしい眼科17:1353-1357,20006)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Ecacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofiniximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheu-matol31:1362-1368,20047)稲森由美子,水木信久:ベーチェット病の抗TNFa抗体療法.眼科48:489-503,20068)ChefetzA,SmedleyM,MartinSetal:Theincidenceandmanagementofinfusionreactionstoiniximab:alargecenterexperience.AmJGastroentenol98:1315-1324,20039)YuselAE,Kart-KoseogluH,AkovaYAetal:Failureofiniximabtreatmentandoccurrenceoferythemanodo-sumduringtherapyintwopatientswithBehcet’sdisease.Rheumatology43:394-396,200410)KatsiariCG,TheodossiadisPG,KaklamanisPGetal:Suc-cesfullong-termtreatmentofrefractoryAdamantiades-Behcet’sdisease(ABD)withiniximab.AdvExpMedBiol528:551-555,200311)NambaK,SonodaK-H,KitameiHetal:Granulocyta-pheresisinpatientswithrefractoryocularBehcet’sdis-ease.JClinApher21:121-128,2006いうことである.Behcet病に関与する病的活性化型好中球を選択的に除去するため,感染防御に必要な好中球は温存される.ゆえに治療後易感染性となることもない.筆者らが行ったパイロットスタディの結果は,顆粒球除去療法が再発性の眼発作に苦しむBehcet病患者にとってある一定の効果があることを示している.しかし,(今回は潰瘍性大腸炎で行われているプロトコールを踏襲したが)眼発作をすべて抑制できるわけではなく,またまったく効果がなかったと思われる症例も存在した.作用機序の解明や,プロトコールの改善も含め引き続き検討していく必要がある.おわりに内因性のぶどう膜炎薬物治療について,現時点でトピックになるものをまとめてみた.今後症例を積み重ねて,個々の治療の最適な適応と投与法を見出していくことが大切である.またステロイド治療一辺倒ではなく,それ以外の治療をうまく組み合わせることで,薬物効果を高めながら,同時に副作用も減らせるような工夫が必要になると思われる.文献1)臼井正彦,坂井潤一:眼科薬物治療法─卒後研修医のために,ステロイド薬剤の眼科における使用法.眼科27: