———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSmm,近用加入度数は+4.0Dとなっている.その特筆すべき点は,AMO社製Z9000単焦点IOL同様,レンズ前面の光学表面を球面収差が最小となるような非球面構造‘Modi?edPROLATE?surface’をもつことであり,これにより散乱光で誘発されるコントラストの喪失を最低限まで抑えることが期待される(図2).II対象となる症例回折型多焦点IOLの対象となる症例は,術後遠方視力が0.7以上を期待でき,正視狙いを目標としている場はじめに遠方視,近方視とも眼鏡に依存せずにすむようになることを目的として多焦点眼内レンズ(IOL)が1986年に初めて使用されてから,いくつもの多焦点IOLと単焦点IOLの比較がなされ報告されてきた1,2).多焦点IOLには屈折型と回折型があるが,それぞれに特徴があり,屈折型は良好な遠方視力が得られるが,近方視がその構造上,瞳孔径に依存すること,夜間のハローやグレアがでやすいことが知られている3).回折型は瞳孔径に依存せず近方視が得られるが,階段状の段差を有する回折現象により,2カ所に焦点が形成され,入射光の41%ずつが遠用,近用に分配され,残り18%が回折により失われるためコントラスト感度の低下が大きな問題であった4).これまで臨床上はコントラスト感度の低下を懸念して,屈折型が市場では主流であった感がある.しかし,新世代の回折型多焦点IOLでは光学部のデザインの改良によりコントラスト感度の低下が低減されてきており,再び注目されるようになっている5).本稿では,新世代の回折型多焦点IOL,おもにAMO社製TEC-NISTMMultifocal(ZM900)の臨床結果について述べたい.I非球面回折型多焦点IOL(AMO社製TECNISTMMultifocal・ZM900)AMO社製TECNISTMMultifocal(ZM900)(図1)は回折型多焦点IOLで,材質はシリコーン製,光学部径6.0(29)???*KunihikoNakamura:たなし中村眼科クリニック〔別刷請求先〕中村邦彦:〒188-0011西東京市田無3-1-13ラ・ベルドゥーレ田無1Fたなし中村眼科クリニック特集●バイフォーカル眼内レンズあたらしい眼科24(2):163~167,2007回折型眼内レンズの術後成績??????????????????????????????????????????????????????????????中村邦彦*図1AMO社製TECNISTMMultifocal(ZM900)回折型多焦点IOLで,材質はシリコーン製,光学部径6.0mm,近用加入度数は+4.0Dとなっている.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007合である.角膜乱視1.5D以上の場合は,遠方視時,近方視時とも眼鏡に依存する可能性が高くこのIOLの特性を十分に発揮できないので避けたほうがよい.また,他眼に単焦点のIOLが挿入されている場合も避けたほうがよい.瞳孔径は,屈折型多焦点IOLでは良好な近方視を得るために非常に重要であったが,回折型多焦点IOLでは近方視は瞳孔径に依存しないのであまり考慮しなくてもよい.このような条件のもとにZM900を挿入した症例について,術後3カ月以降に遠方視力(裸眼,矯正),近方視力(裸眼,遠方矯正,矯正),両眼視力(遠方および近方),最良近方距離,焦点深度,コントラスト感度,グレア,ハロー,眼鏡装用状況,満足度について観察した.III視力遠方視力は,裸眼で72%が1.0以上で,全例が0.6以上,矯正は94%が1.0以上で,全例0.9以上であった(図3).近方視力は,裸眼で85%が0.6以上,全例が0.4以上で,矯正は92%が0.8以上,全例0.7以上,そして遠方矯正下近方視力は89%が0.7以上,全例0.4以上であった(図4).両眼の遠方視力は裸眼,矯正とも全例0.9以上,近方視力は裸眼,遠方矯正下とも全例0.6以上であった(図5,6).(30)図2Modi?edPROLATE?surfaceレンズ前面の光学表面を球面収差が最小となるような非球面構造.Di?ractivepattern+4.0DAddPosteriorAnteriorModi?edPROLATE?surface32annularringsofequaldistributionandheight図3遠方視力1.5以上1.2以上1.0以上0.9以上0.8以上0.7以上:遠方裸眼視力:遠方矯正視力(視力)(%)1009080706050403020100図5両眼の遠方視力2.0以上1.5以上1.2以上1.0以上0.9以上:遠方裸眼両眼視力:遠方矯正両眼視力(視力)(%)1009080706050403020100図4近方視力1.2以上1.0以上0.9以上0.8以上0.7以上0.6以上0.5以上0.4以上:近方裸眼視力:遠方矯正下近方視力:近方矯正視力(視力)(%)1009080706050403020100———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???この結果を遠方と近方視力について,同様のレンズ前面に光学表面を球面収差が最小となるような非球面構造をもつAMO社製Z9000単焦点IOLの結果と比較してみた.遠方裸眼,遠方矯正,近方矯正には差がなかったが,近方裸眼,遠方矯正下近方では有意にTECNISTMMultifocal(ZM900)回折型多焦点IOLの視力が良好であった(unpaired?-test,p<0.001)(図7,8).IV最良近方距離最良近方距離は,28cmから39cmの間に分布しており,平均33.3±3.9cmであった.日本人の近方視の距離が30cm程度といわれているので,これは理想的な距離であると思われる.V焦点深度曲線焦点深度曲線は図9のように,0Dと-3.0Dの2カ所にピークができる二峰性となった.この結果は前述の良好な遠方と近方視力の結果を支持するものである.図では単焦点IOLと屈折型多焦点IOLの結果も同時に示してあるが,単焦点IOLでは単峰性,屈折型多焦点IOLでは二峰性となるが,近方視での焦点深度のピークは回折型多焦点IOLより低くなっている.回折型多焦点IOLでは近方視がとても良好であることになるが,その一方で焦点深度曲線は際立った二峰性となるので,中間距離においての見にくさを訴える可能性があると思われた.VIコントラスト感度さて回折型多焦点IOLでは最も懸念されてきたコン(31)図6両眼の近方視力1.2以上1.0以上0.9以上0.8以上0.7以上0.6以上:近方裸眼両眼視力:遠方矯正下近方両眼視力(視力)(%)1009080706050403020100矯正裸眼0.1単焦点単焦点多焦点多焦点1.00.11.01.041.071.321.37図7多焦点IOLと単焦点IOLの比較(遠方視力)裸眼,矯正視力とも,両群間に有意差はなかった.図8多焦点IOLと単焦点IOLの比較(近方視力)裸眼,遠方矯正下では有意に多焦点IOLの視力が良好であった(unpaired?-test,p<0.001).矯正単焦点多焦点0.11.00.930.98遠方矯正下単焦点多焦点*p<0.0010.11.00.800.20**裸眼単焦点多焦点0.11.00.690.20図9焦点深度曲線0Dと-3.0Dの2カ所にピークができる二峰性となった.単焦点IOLでは単峰性,屈折型多焦点IOLでは二峰性となるが,近方視での焦点深度のピークは回折型多焦点IOLより低くなっている.21.510.50-1.5焦点深度(D)-2-0.5-1-2.5-3-3.5-4-4.5-50.10.51.0視力:単焦点:屈折型多焦点:回折型多焦点———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007トラスト感度については全周波数において正常範囲内であったが,単焦点IOLとの比較では,18cycleperdegree(cpd)でのみ有意に多焦点IOLのほうが低い結果となった(unpaired?-test,p<0.05)(図10).しかし,過去に報告された球面回折型多焦点IOL(3M社製)の結果との比較では全周波数において良好であった.またこの結果は,屈折型多焦点IOLと比較しても遜色がないものと思われた.VIIグレア・ハローグレアについては,自覚のなかったものが83%,軽度の自覚が17%,ハローについては,自覚のなかったものが78%,軽度の自覚が22%,中等度,重度の自覚があったものはなかった(図11).過去にも報告されているとおり,屈折型多焦点IOLではグレア,ハローの自覚が少なくなく,時にスターバーストとよばれる強いグレアにより不快感を覚える患者もいるが,これに比べ(32)て回折型多焦点IOLではあまり自覚されない.今回の結果も同様で,グレア,ハローは回折型多焦点IOLではあまり問題とならないようであった.VIII眼鏡装用率日常生活において眼鏡を装用しているものはまったくなかった.しかし,パソコン操作時,ピアノの楽譜を見るときに使用していると答えた患者が各1名あった.これはどちらも読書などと違い中間距離に相当すると思われ,前述の焦点深度の結果のとおり中間距離においてやや難点があるのかと思われた.しかし,前述の焦点深度の結果では,屈折型と比較して中間距離の焦点深度が劣るわけではないので,相対的に自覚するためであると思われた.IX患者満足度満足度については,大変良い,良い,悪い,非常に悪い,の4段階で評価してもらったが,全例が良いか,大変良いで不満を訴えたものはなかった(図12).屈折型図10コントラスト感度全周波数において正常範囲内であったが,18cycleperdegree(cpd)でのみ有意に単焦点IOLより低かった(unpaired?-test,p<0.05).点焦単点焦多3(点焦多)M図11グレア・ハローグレア,ハローとも,中等度,重度の自覚があったものはなかった.軽度17%なし83%中等度,重度0%グレアの自覚軽度22%なし78%中等度,重度0%ハローの自覚図12患者満足度(良い,非常に良い,悪い,非常に悪いの4段階)全例が良いか,大変良いで不満を訴えたものはなかった.良い10例非常に良い8例悪い,非常に悪い0%———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???(33)多焦点IOLでは,近見の見え方に物足りなさを訴える例が少なくない.術後長期の結果で評価してもらったわけではないが,これは良好な近見視力を反映したものと思われる.X非球面回折型多焦点IOL(Alcon社製ReSTOR?)海外ではすでに市場に出回っているAlcon社製ReSTOR?(SD60)は,アクリル製の回折型多焦点IOLで,TECNISTMMultifocal(ZM900)同様,光学部径6.0mm,近用加入度数は+4.0Dとなっている(図13).光学特性を改善するため光学部中央3.6mmにappodiza-tionと称されるシステムを加えた回折型,その周囲が単焦点デザインのアクリル製シングルピースである.焦点深度曲線は0Dと-3.0Dの2カ所にピークができる二峰性となり,最良近方距離の平均は27.48~27.58cmでTECNISTMMultifocal(ZM900)とほぼ同様の特性をもつ.両眼視時の裸眼遠方視力が0.7以上,かつ裸眼近方視力が0.4以上であった症例が88.1%,術後1年で眼鏡を必要とした症例は7.5%で良好な遠方視力と近方視力が得られ眼鏡依存度が低下している.また遠方視時のコントラスト視力も単焦点IOLと有意差を認められていない.おわりに多焦点IOLは,収差を増しているだけで,遠くも近くも見えるレンズではなく,遠くも近くもあまりよく見えないレンズなどといわれることもあった.コントラスト感度の低下から一度は葬られかけていた回折型多焦点IOLが光学特性の改良によって,本当に遠くも近くもよく見えるレンズであるとして,再び脚光を浴びてきているのはある意味感慨深いものがある.しかし今回の症例は-1.5D以下の症例に限られており,良好な結果を得るには角膜乱視への対処,またより精密なIOLパワーの決定が必要不可欠と思われる.患者の期待度が高くなる分,術者の負担も大きくなることが予想されるIOLであるが,今後の展開が注目される.文献1)AllenED,BurtonRL,WebberSKetal:Comparisonofadi?ractivebifocalandamonofocalintraocularlens.????????????????????????22:446-551,19962)PercivalSPB,SettySS:ProspectiverandomizedtrialcomparingthepseudoaccommodationoftheAMOARRAYmultifocallensandamonofocallens.???????????????????????19:26-31,19933)WalkowT,LiekfeldA,AndersNetal:Aprospectiveevaluationofadi?ractiveversusarefractivedesignedmultifocalintraocularlens.?????????????104:1380-1386,19974)PiehS,WeghauptH,SkorpikC:Contrastsensitivityandglaredisabilitywithdi?ractiveandrefractivemultifocalintraocularlenses.???????????????????????24:659-662,19985)ChiamPJT,ChanJH,AggarwalRKetal:ReSTORintra-ocularlensimplantationincataractsurgery:Qualityofvision.???????????????????????32:1459-1463,2006図13Alcon社製ReSTOR?(SD60)回折型多焦点IOLで,光学部径6.0mm,近用加入度数は+4.0Dである.光学部中央3.6mmが回折型,その周囲が単焦点デザインのアクリル製シングルピースである.