———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS的配列(glucocorticoidresponsiveelement:GRE)に結合することにより,その下流の遺伝子発現を調節する.これらの機序を介して,細胞レベルでの抗炎症作用,免疫抑制作用を発揮する1).IIステロイド全身投与の前の注意点まずステロイド治療前に気をつけることは,炎症の原因が感染性か非感染性であるか診断をつけることが重要である.感染性ぶどう膜炎の場合にはその感染原因に対する治療が優先となる.もしステロイド薬内服を使った場合,免疫力が低下し感染が増悪して症状の悪化もありうる.非感染性のぶどう膜炎であったとしても,いきなり投与を開始せず可能な限り診断をつけることが重要である.原因疾患を診断する種々の検査が終わるまではステロイド局所投与で経過をみながら結果を待つ.炎症が強いときでも診断が明らかでない例に対しては,全身投与をするべきではない.たとえば,サルコイドーシスを疑う患者であったとしても前医ですでにステロイド内服を開始されているため,眼科的にはサルコイドーシスを疑っても全身所見が発症していないもしくは消失しているために診断がつかないケースもある.Beh?et病を否定せずにステロイド薬単独投与を行った場合,ステロイド薬離脱の際重篤な炎症発作をひき起こす可能性もある.はじめに副腎皮質ステロイド薬(以下,ステロイド)は抗炎症作用と免疫抑制作用を有し,広くさまざまな疾患に対して用いられている.ぶどう膜炎の治療にもステロイド薬が広く用いられているが,原因もさまざまであるため,投与量は疾患により異なり同一疾患でも症例により加減が必要となり,一律ではない.副作用の多い薬物であり,なかには重篤なものもあるため,ステロイド全身投与の際には事前の十分な問診や検査が必要であり,場合によっては他科との連携も不可欠となる.そこで本稿では,ステロイド薬全身投与前の注意点を述べ,代表的な疾患についてその使用法を解説する.Iステロイドの作用機序副腎皮質ホルモンは糖質代謝に関与する糖質コルチコイドと電解質代謝に関する電解質コルチコイドに分けられ,それぞれ別の受容体に作用する.抗炎症作用や免疫抑制作用を有するのは糖質コルチコイドである.ステロイドは細胞内でステロイド受容体(SR)と結合することで生物学的活性を示す.ステロイドは細胞内に侵入しSRと複合体を形成すると核内で転写調節因子であるnuclearfactorkappaB(NFkB)などの転写因子の活性化を阻害し,腫瘍壊死因子(TNF)-a,インターロイキン(IL)-1などの炎症性サイトカインやシクロオキシゲナーゼ(COX)-2などの炎症関連蛋白の産生を抑制する.またこの複合体は遺伝子のプロモータ領域の特異(7)????*MichitakaSugahara:東邦大学医療センター佐倉病院眼科〔別刷請求先〕菅原道孝:〒285-8741佐倉市下志津564-1東邦大学医療センター佐倉病院眼科特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1391~1396,2006ステロイド全身投与─内服および点滴療法─???????????????????????????????─????????????????????????????─菅原道孝*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006IIIステロイドの全身への副作用ステロイド薬全身投与の際は特にその副作用について気をつけなければならない.表1にステロイドの副作用についてまとめたが,患者の生命予後やqualityoflife(QOL)につながる糖尿病,重症感染症,骨粗鬆症,大腿骨頭壊死,胃潰瘍などには特に注意を払いたい2).1.骨粗鬆症ステロイドの副作用で最も頻度が高いものとされている.骨粗鬆症は,骨密度と骨質の変化により骨脆弱性が亢進し,骨折しやすくなった状態と定義される.骨粗鬆症は原発性と続発性に二分され,続発性の原因の最多はステロイド薬である.骨形成と骨吸収のバランスが崩れた病態が,ステロイドによる骨粗鬆化である.ステロイド薬は,骨芽細胞のアポトーシスの比率が大幅に増強して骨形成を阻害し,破骨細胞の分化・成熟を誘導する.また,腸管でのカルシウム吸収,腎でのカルシウム再吸収,下垂体でのホルモン産生の低下などの機序を介して補助的に骨粗鬆化を促進する(図1).ステロイド性骨粗鬆症はステロイド薬中止にても改善せず,ステロイド薬投与早期に(3~6カ月以内)進行するといわれている.ステロイド薬は骨量と骨質の双方を減衰させるため,骨量が低下しなくても骨折する場合もあるため,服用量に関する安全域はないといわれている.2004年にわが国初のステロイド性骨粗鬆症に対する管理と治療のガイドラインが策定されたが,そのなかでステロイドを3カ月以上投与され,骨折があるかもしくは骨折がなくても骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満,もしくは投与量がプレドニゾロン換算で5mg/日以上ならステロイド骨粗鬆症とし,一般的指導と治療が必要としている.6カ月から1年ごとに骨密度測定を定期的に行い,治療はビスフォスフォネート製剤を第一選択薬としている3).2.大腿骨頭壊死大腿骨頭壊死症は骨粗鬆化とは関連が薄いが,ステロイドパルス療法に伴う重大な骨障害である.大部分はステロイドパルス療法の施行を既往に有する.大腿骨頭のような終末動脈支配部位では,血管障害による組織虚血が重要な問題となる.自覚症状は股関節の可動制限,運動時痛や跛行,ときに腰痛を訴える.現在明確な予防手段はない3).3.動脈硬化肥満,高脂血症,高血圧,耐糖能低下などの因子が複合すると,動脈硬化病変が加速され,心筋梗塞,脳梗塞などのリスクが高まるため,予防と治療が重要である.カロリー制限,塩分制限などの栄養指導を行い,抗高脂血症薬や降圧剤を併用する.ステロイドに食欲増進効果もあるため,投与前に十分副作用についてインフォーム(8)表1ステロイド薬全身投与における副作用?重度の副作用??易感染症?骨粗鬆症,圧迫骨折,大腿骨頭壊死?動脈硬化病変?副腎不全?胃潰瘍・十二指腸潰瘍(NSAIDと併用時)?糖尿病の誘発・増悪?精神障害,不眠?小児の成長障害?軽度の副作用??体重増加,満月様顔貌,尋常性座瘡?皮下出血,皮膚萎縮,皮膚線状,脱毛・多毛?発汗異常?白内障,緑内障,中心性漿液性網脈絡膜症?浮腫,高血圧?電解質異常(低カリウム血症)?ステロイド筋症?月経異常?白血球増多?食欲亢進NSAID:非ステロイド系抗炎症薬.破骨細胞分化・成熟誘導糖質コルチコイド骨芽細胞アポトーシス骨吸収過剰骨形成阻害骨量低下体内Ca低下副甲状腺ホルモン分泌低下図1ステロイド骨粗鬆症の機序———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????ド・コンセントを行うことにより,合併症や悪化のリスクを軽減できると考えられる1).4.糖尿病ステロイドは肝における糖新生の亢進と,末?での糖利用の阻害作用があり,いわゆるステロイド糖尿病の発症や,既存する糖尿病の悪化をみることがある.糖尿病の既往がある患者には内科医に相談しインスリンなどを必要に応じて使用のうえステロイド治療を行う.適切なインスリン療法を行えば血糖は良好にコントロールできるのでステロイド投与の禁忌とはならないが,注意深い血糖監視を行わないと糖尿病性ケトアシドーシス,低血糖などにより死亡する危険もあるため注意が必要である1).5.易感染症ステロイド内服により炎症反応と免疫能が抑制され患者は易感染性となり,重篤化しやすい.重症感染症の頻度はおおよそ3%前後である.ステロイドパルス療法を行った場合や中等量異常のステロイドを長期投与している場合,真菌症やニューモシスチス・カリニ肺炎やサイトメガロウイルス感染症,結核などに注意する.ステロイド長期投与時に,結核感染が起こると容易に重症化するので,発熱や感冒症状でも頻回に胸部X線を施行したほうが無難である.以前ステロイド大量療法中に,水痘感染を起こし,ヘルペス脳炎に至った事例も報告されている4).ステロイド長期投与前には問診をできるかぎり行い,少しでも感染の可能性が疑われたら,速やかにしかるべき検査を行うことが重要である.6.胃潰瘍・十二指腸潰瘍ステロイド性潰瘍の原因は,胃酸分泌亢進,胃粘液産生低下,肉芽形成抑制,プロスタグランジン産生低下などが考えられている.胃潰瘍・十二指腸潰瘍のリスクは,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)をステロイドと併用すると上がるが,ステロイド単独では消化性潰瘍の頻度に有意差がないとする報告もある5).潰瘍があっても疼痛がないかごく軽度の場合もあるので,微妙な症状の変化や検査データの変動に注意し,定期的な検査を勧める.IVステロイド投与前と投与後のチェック事項について表2にまとめたが,治療開始前に糖尿病,高脂血症,貧血や他の全身疾患の有無やツベルクリン反応や胸部X線で結核などの感染を調べる.投与後も定期的な問診,血液検査が必要であり異常が生じた場合迷わず他科を受診させる1,2).Vステロイド薬全身投与の実際1.サルコイドーシス眼サルコイドーシスにおいて主たる治療はステロイドによる消炎であるが,適応や投与法,長期予後などについて対照例を含んだ多数例のコントロールスタディはなく,治療法の決定はこれまで経験に基づいて行われてきた.2002年に眼サルコイドーシスのステロイド治療のガイドラインについて検討を行い,「サルコイドーシス治療に関する見解?2003」がまとめられた.それには原則として前眼部炎症に対してはステロイド薬の点眼と必要があればステロイドの結膜下注射や後部Tenon?下注射と散瞳薬で治療し,視機能障害のおそれがある活動性病変がある場合には全身投与を適応としている6).以前筆者らも眼サルコイドーシスに対して積極的に局所治療を行い,その治療成績について報告した.87.5%の症例で局所投与のみで消炎が十分可能であった7).しかし(9)表2ステロイド薬全身投与時のチェック事項?ステロイド投与開始前??問診?採血(血算,生化,血糖,血沈,CRPなど)?胸部X線検査(結核の有無)?心電図?ツベルクリン反応(結核の有無)?骨量検査(骨密度など)?ステロイド投与開始後??問診?採血(血算,生化,血糖,血沈,CRPなど)?骨量検査*(骨密度投与開始後6カ月・1年後)CRP:C反応性蛋白.*ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドラインに該当する症例の場合.———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006持続的に漿液性網膜?離があり,ステロイド後部Tenon?下注射をしても軽快しないなど,局所治療のみでは対応がむずかしい場合に対しては全身投与を行う必要がある(図2).投与法に関する基準は表3に記す.ステロイド薬の全身投与については初期投与量としてプレドニゾロン30~40mg/日から,重症例では60mg/日の内服から開始し,初期投与期間として2週間から1カ月継続し,その後は1~2カ月ごとに5~10mgずつ減量していくことが勧められている.最終的には2.5~5mg/日相当を投与し,これを1~数カ月続けて投与を終了とする.プレドニゾロンの全投与期間は3カ月から1年以上とし,減量は病勢を見きわめながら慎重に行い,副作用の発現を含め全身の検査データも考慮しながら投与することを推奨している.最も大切なことはゆっくりと減量することであり,最終的に6カ月以上内服させたほうがよい.早い減量を行うと再発する.ただ内科領域でも肺サルコイドーシスに対しステロイド内服適応となる症例は少なく,長期予後の観点からその有用性は疑問視されてきているので,眼科領域でもできるだけ局所投与にて治療することが大事であると考える.2.Beh?et病原則としてステロイド薬単独,特に短期間の内服は慎むべきである.その理由として,ステロイド薬の漸減・離脱後はかえって重篤な炎症発作をひき起こしてしまうからである.Beh?et病の眼炎症の発作の頻度の抑制や炎症の程度の軽減を目的とした治療としてはコルヒチンの内服が第一選択,免疫抑制薬のシクロスポリン(ネオーラル?)や他の免疫抑制薬が第二選択薬となる.炎症が最初から強い場合シクロスポリンから治療開始することもある.発作時にはベタメタゾン(リンデロン?)などのステロイド薬点眼,散瞳薬の点眼に加えて,強い前眼部炎症発作にはステロイド薬の結膜下注射,後眼部炎症に関してはトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A?)などのステロイド薬の後部Tenon?下注射を行う.しかし,最近ではステロイド薬の全身投与を見直す報告もある.コルヒチン,シクロスポリン,あるいは両者(10)表3眼サルコイドーシスにおけるステロイド薬全身投与の一般的投与法1)第一選択はプレドニゾロンの経口投与2)初期投与量は30~40mg/日・連日投与,重症の場合は60mg/日・連日投与を2週間から1カ月投与3)1~2カ月ごとに5~10mgずつ減量4)最終投与量を2.5~5mg/日相当とし,1~数カ月続けて終了する5)全投与期間は3カ月から1年以上とする図2サルコイドーシスの代表症例63歳,女性.左眼漿液性網膜?離でプレドニゾロン40mgから開始したが,反応が悪いため3カ月後に硝子体手術を施行した.左:治療前,右:治療後.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????の併用投与を行っても頻回に眼炎症発作をきたす症例に対して,長期間にわたってプレドニゾロンの内服投与を行うことによって眼炎症発作の頻度を減少させたとする報告が散見される8~10).これらの報告に共通しているのは,一定量以上のプレドニゾロン,すなわちグルココルチコイドとしての薬理作用が期待できる10~15mg/日以上を内服している間は炎症抑制効果が期待できるという点である.そして減量についてはきわめてゆっくりと減らしていくことも重要である.3.Vogt-小柳?原田病(図3)Vogt-小柳?原田病は,自然治癒する症例もあり,必ずしもすべての症例にステロイド全身療法は必要ないとの意見もあるが,遷延化すると不可逆的な視機能の障害を残すため,全身的に投与がむずかしい症例を除き,急性期には全例にステロイド全身投与を行う.現在わが国でVogt-小柳?原田病に対して施行されているステロイドの全身投与方法は2つある.1つは1969年に増田らにより提唱されたステロイド大量点滴漸減療法であり,もう1つはステロイドパルス療法である.図4はステロイド大量点滴漸減療法の一例であるが,プレドニゾロン200mg×2日間点滴静注から開始し,150mg×2日間,100mg×2日間,80mg×2日間点滴静注し,1日投与量60mgあるいは40mgより内服に切り替え,その後は2~4週ごとに5~10mg減量する.ステロイド初回投与期間は6カ月以上続けたほうがよいとされている.一方,ステロイドパルス療法は図(日数)10050プレドニゾロン換算量(mg/日)20020308011015001060200150100806040302015105図4Vogt-小柳?原田病に対するステロイド大量点滴漸減療法(11)図3Vogt-小柳?原田病の代表症例57歳,女性.両眼とも多発した漿液性網膜?離を認め,蛍光眼底造影検査では典型的な初期に点状過蛍光,後期に蛍光色素の網膜下腔への貯留を認めた.ステロイドパルス療法2クールを行い漿液性網膜?離は消失した.———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006(12)5に例を示したが,メチルプレドニゾロン(ソルメドロール?)1,000mg×3日間点滴静注施行し,その後プレドニゾロン1mg/kg/日内服として1週間経過をみる.ステロイドパルス療法開始から1週間くらいでフルオレセイン蛍光眼底造影検査を行い,治療の効果を確認する.1週間で効果がみられ,特に副作用もなければ5mgくらい減量する.その後は患者の重症度にもよるが,1週間から10日くらいで5mgずつ減量し40mgから2週間ずつ減量し,20mgあたりから4週間ずつ減量し,トータルで4~6カ月の投与になるようにする.いずれのステロイド療法においても,発症から治療開始までの期間が遷延化を規定する1つの因子といわれているため,発症からできるだけ早期に治療を開始すべきであることと,ステロイドの減量が早すぎると炎症の再燃・遷延化するため20mgからの減量は慎重に指示する.ステロイド離脱前は5mgを1カ月投与し,続いて5mg隔日投与を1カ月施行し,徐々に副腎皮質機能を回復させていくのがよいと思われる11).おわりにステロイドはぶどう膜炎治療において必要不可欠な薬剤である.使用前に十分な原因検索を行い,副作用について理解し適切な対策を講じることが大切である.安易なステロイドの使用は患者のQOLを脅かすこともあるため注意が必要である.文献1)杉原誠人,堤明人,住田孝之:《治療薬の使い方とピットフォール》副腎皮質ステロイド薬.内科97:636-640,20062)丸山耕一:ぶどう膜炎患者における副腎皮質ステロイド薬全身治療の副作用とその対策.眼紀56:801-808,20053)田中良哉:ステロイド骨粗鬆症のマネジメント,p9-23,医薬ジャーナル社,20054)岩瀬光:眼科医のための「医療過誤訴訟」入門原田病ステロイド治療中の成人水痘の死亡事例.臨眼55:1323-1325,20015)PiperJM,RayWA,DaughertyJRetal:Corticosteroiduseandpepticulcerdisease:roleofnonsteroidalanti-in?ammatorydrugs.??????????????114:735-740,19916)大原國俊:サルコイドーシス治療に関する見解-2003.日眼会誌107:113-121,20037)菅原道孝,岡田アナベルあやめ,若林俊子ほか:眼サルコイドーシスに対する積極的局所治療の有用性.臨眼60:621-626,20068)渋井洋文,川島秀俊,釜田恵子ほか:自治医科大学におけるBeh?et病眼症治療の経験.あたらしい眼科14:1723-1727,19979)藤野雄次郎:ぶどう膜炎治療の問題点─ベーチェット病.眼科41:1401-1408,199910)川野庸一,西岡木綿子,鬼木隆夫ほか:ベーチェット病眼病変に対するステロイド薬長期間継続併用投与.眼科42:421-428,200011)岩永洋一,望月學:Vogt-小柳?原田病の薬物療法.眼科47:943-948,2005(日数)30プレドニゾロン換算量(mg/日)1,2503014011060010601,250605040302015105図5Vogt-小柳?原田病に対するステロイドパルス療法(体重60kgの場合)