———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSコーンラバーではDk値400~600が得られる.しかし,シリコーンラバーは水を透過しないために,角膜への吸着が問題となり,ソフトコンタクトレンズ素材としては普及しなかった1,2).つぎに注目されたのが,シロキサン樹脂を含水化することであった.当初は透明な素材を作製することがむずかしかったが,シロキサンをポリマー化せずにマクロモノマーの状態で含水性モノマーと二相性構造(図1)を形成させることにより透明化に成功した.これがシリコーンハイドロゲルである3~6).II含水率と酸素透過性従来のソフトコンタクトレンズの素材であるハイドロゲルでは,含水率を高めるほど,酸素透過性が高まった.そのため高酸素透過性のソフトコンタクトレンズは“乾燥しやすい”,“汚れやすい”,“破損しやすい”といIシリコーンハイドロゲルとはソフトコンタクトレンズ装用下の眼球への酸素供給は,95%以上ソフトコンタクトレンズ自体を透過する酸素に依存している.ソフトコンタクトレンズ装用下の眼球への酸素供給量を増やすには,素材の酸素透過性を上げることと,レンズ厚を薄くすることが必要である.しかし,従来のソフトコンタクトレンズの素材であるハイドロゲルでは,ガス透過性が素材に含まれる自由水の移動に依存しているため,水の酸素透過係数〔Dk値,単位=×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕である80を超えることは理論的に不可能であった.酸素透過性を上げるためにソフトコンタクトレンズを薄く加工する技術にも限界があった.そこで注目されたのがシリコーンであった.シリコーンの酸素透過性は高く,シリ(3)???*MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院〔別刷請求先〕糸井素純:〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-10-19道玄坂糸井眼科医院特集●新しいコンタクトレンズの展望あたらしい眼科23(7):845~850,2006シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ????????????????????????????????糸井素純*Trisフルオロシロキサン相ハイドロゲル相図1二相性構造200180160140120100806040200酸素透過係数シリコーンハイドロゲル水020406080100含水率(%)ハイドロゲル(従来SCL素材)図2含水率と酸素透過係数(文献7より改変)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006うことが宿命であった.しかし,シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズは図2が示すように含水率を低くすることにより,酸素透過性は高くなる.これまでのハイドロゲルと異なり,シリコーンハイドロゲルでは低含水率でありながら,非常に高い酸素透過性を実現することができる.平成18年5月30日現在,唯一日本で発売されているシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズであるO2オプティクス(チバビジョン)は,含水率24%を採用し,Dk値は140である8).III表面処理シロキサンとハイドロゲルの重合に成功し,透明で光学的に優れ,酸素透過性が高く,良好なイオン(水)透過機能を有するシリコーンハイドロゲル素材の開発に成功したが,シリコーン,フッ素がレンズの表面の性質を支配することから,含水レンズであるにもかかわらず,表面が疎水性,親油性の特性をもつレンズとなってしまい,“水濡れ性が悪い”,“汚れが付着しやすい”などの問題が生じ,臨床的な応用は困難であった.その問題を解決した技術が表面処理である.O2オプティクスはメタンプラズマコーティング9),PUREVISION(平成18年5月31日現在,日本未発売)は酸素を用いたプラズマ酸化処理10),ACUVUEADVACNCE(平成18年5月31日現在,日本未発売)は親水性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)の表面溶出による親水化11)となる表面処理が施されている.ここではO2オプティクスに施されている表面処理について解説する.O2オプティクスの表面処理(メタンプラズマコーティング)モールド製法で製造したレンズをメタンと空気をプラズマ化させた混合気中に置いて,レンズ表面に架橋結合した親水性皮膜を形成することにより,レンズ表面にむらなく恒久的厚さ20nmの親水性ポリマーが形成され,水濡れ性が向上する4).さらに,コーティング膜は酸素や二酸化炭素などのガスおよび水やメチレンブルーのような低分子の物質は透過するが,ローズベンガルやフルオレセインなどの分子量の大きな物質の侵入は阻止するバリア機能を有する.そのため蛋白質や脂質などの高分子物質のレンズ内への侵入を阻止することができる.メタンプラズマ処理により得られたコーティング膜は素材や分子結合によりポリマー化し,かつ,強固な構造をもつ炭素結合が主体であるために,耐久性は高く,?離や短期間の変質などの問題は生じにくい.IV海外のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの現状海外では平成18年5月31日現在,4社から,合計6種類のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズが販売されている(表1).1998年にNIGHT&DAY(日本で発売されているO2オプティクスと同一製品),1999年にPUREVISIONの発売が開始され,当初は1(4)表1海外で販売されているシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズレンズ名NIGHT&DAYPUREVISIONACUVUEADVANCEO2OPTIXACUVUEOASYSBIOFINITY販売会社CIBAVisionBausch&LombVistakonCIBAVisionVistakonCooperVisionポリマーLotra?lconABala?lconAGaly?lconALotra?lconBSeno?lconACom?lconADk値14010160110103128Dk/L値17511086138147160含水率(%)243647333848BC(mm)8.4,8.68.68.3,8.78.68.48.6装用方法1カ月間連続装用1カ月間終日装用1カ月間連続装用1カ月間終日装用2週間終日装用2週間終日装用1週間連続装用2週間終日装用2週間終日装用FDA分類ⅠⅢⅠⅠⅠⅠ**Dk:酸素透過係数〔×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕.**Dk/L:酸素透過率〔×10-9(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???カ月間の連続装用としてシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズは普及した.しかし,100%のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ装用者が1カ月間の連続装用を継続することは困難であり,徐々に,終日装用して使用される割合が高くなっていった.このような状況のなかで,2004年1月にはシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズとして,はじめてACUVUEADVANCEが2週間終日装用というカテゴリーで発売された.その後,O2OPTIX(日本で発売されているO2オプティクスとは異なる製品)が2週間終日装用と1週間連続装用,ACUVUEOASYS,BIO-FINITYが2週間終日装用というカテゴリーで発売されている.シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの第一世代の製品であるNIGHT&DAY,PUREVISIONは高酸素透過性ではあるが,レンズ硬がやや硬く,そのために従来の使い捨てソフトコンタクトレンズに比べて装用感がやや劣り,特有の合併症〔SEALs(superiorepi-thelialarcuatelesions),巨大乳頭結膜炎〕の発生の問題があった.第二世代のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズであるACUVUEADVANCEは,含水率を上げたために,酸素透過係数はDk値60と低下したが,レンズ硬をこれまでよりも柔らかくし,従来の使い捨てソフトコンタクトレンズに装用感を近づけた.第三世代のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズとしてはO2OPTIX,ACUVUEOASYS,BIO-FINITYがあげられる.これらのレンズは,いずれもDk値100以上で,高酸素透過性でありながら,第一世代のレンズに比べて,レンズ硬が柔らかく,装用感も向上している.特有の合併症(SEAL,巨大乳頭結膜炎)の問題も改善されつつある.Vシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの長所1.高酸素透過性ハードコンタクトレンズ装用下の眼への酸素供給はおもにレンズの動きに伴う涙液交換に依存しているが,ソフトコンタクトレンズ装用下の眼への酸素供給は,素材を通過する酸素に依存している.そのためソフトコンタクトレンズの酸素透過性はハードコンタクトレンズよりも重要である.これまでのハイドロゲルコンタクトレンズではDk値は含水率に依存し,水のDk値である80を超えることは理論的に不可能であった.そのため,ソフトコンタクトレンズでは,たとえ使い捨てソフトコンタクトレンズであっても,長時間の装用により酸素不足を生じ,感染症,角膜血管新生,角膜内皮細胞障害などの合併症を生じていた.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズはハイドロゲルにシリコーンを配合させることにより,従来のハイドロゲルコンタクトレンズの数倍の酸素透過率(Dk/L値)が実現できている(図3).ソフトコンタクトレンズの弱点である酸素不足を改善することができ,酸素不足に伴う感染症,角膜血管新生,角膜内皮細胞障害などの合併症の発生を大幅に抑制できると期待される.2.乾燥感を軽減ソフトコンタクトレンズ装用下の乾燥感は,含水率とレンズ厚に左右される.含水率が高く,薄いソフトコンタクトレンズは乾燥感が強く,含水率が低く,厚いソフトコンタクトレンズは乾燥感が少ない.しかし従来のハイドロゲルソフトコンタクトレンズで高性能(高酸素透過性)のレンズは,高い含水率と薄型のデザインが採用され,乾燥感が強いという宿命があった.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズでは,低含水率でありながら,高酸素透過性を実現できるために,薄型のデザイン(5)200180160140120100806040200Dk値/L値1751602626.7274021.97.6メニコンMAメニコン72アキュビューシークエンスフォーカス1ウィークフォーカスデイリーズフォーカス2ウィークO2オプティクス図3ソフトコンタクトレンズの酸素透過率〔Dk/L値,単位=×10-9(cm/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006であっても,乾燥感の軽減が実現できた(図4).3.球結膜充血の軽減ソフトコンタクトレンズ装用下の球結膜充血は,重症な眼合併症とはいえないが,ソフトコンタクトレンズ装用者にとっては気になる問題である.ソフトコンタクトレンズ装用下の球結膜充血は素材の酸素透過性,レンズフィッティング,眼球表面の乾燥などの要因が複雑に絡み合って発症する.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズであるO2オプティクスは表面処理,非球面デザインの採用により非常に高い酸素透過性とスムーズなレンズフィッティングを実現し,低含水性(含水率24%)であることから眼球表面の保湿効果も期待できる.これらの結果,O2オプティクスでは,従来のハイドロゲルコンタクトレンズよりも,慢性の球結膜充血を軽減することができた(図5,6).VIシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズに比較的多い眼合併症従来のハイドロゲルコンタクトレンズに比べて,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに多い眼合併症として,ムチンボール,SEALs(epithelialsplitting),巨大乳頭結膜炎が報告されている12).ムチンボールはレンズ下に貯留する球状物で,本体はムチンと考えられている.眼への実害はない.SEALsは,従来からepithelialsplittingとして報告されていたもので,角膜上方輪部から1mm前後下方に発生する弧状の角膜上皮障害(図7)で,ときに浸潤を伴う.ベースカーブの変更,こすり洗いの徹底により改善することが多いが,再発がみられた(6)1234567良好普通不良ハイドロゲルレンズO2オプティクス装用1週間後O2オプティクス装用4週間後O2オプティクス装用12週間後ハイドロゲルレンズとの有意差**p<0.01******図4乾燥感の強さ.ハイドロゲルコンタクトレンズvsO2オプティクス図6O2オプティクス装用図7Superiorepitheliarlarcuatelesions(SEALs)図5ハイドロゲルコンタクトレンズ装用———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???ときはレンズの種類を変えたほうがよい.巨大乳頭結膜炎は,従来のハイドロゲルコンタクトレンズにみられるものとは異なり,乳頭が眼瞼結膜の眼瞼縁側に局在していることが多い.ハードコンタクトレンズ装用者にみられる巨大乳頭結膜炎に類似し,機械的な刺激がおもな発症原因と推測される.なお,これまでにシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに多い眼合併症として報告されていたSEALs(epithelialsplitting),巨大乳頭結膜炎は,おもに第一世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(NIGHT&DAY,PUREVISION)によるもので,第二世代,第三世代とこれらの合併症が減少していくことが期待されている.VIIシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズと消毒剤の相性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズはPHMB(polyhexamethylenebiguanide)を含むMPS(multi-purposesolution)製品との相性が悪いことが国内外で報告されている13~15).筆者らが行った臨床実験でも,PHMBを含むMPSに浸漬したO2オプティクスを装用すると,装用直後(2~4時間後)にびまん性の点状表層角膜症が発症した(図8).ただし,同じPHMB製品であっても,配合される他の成分により,角膜上皮障害の程度は異なった.このような問題から,チバビジョン社は平成17年7月にO2オプティクスに対しては,過酸(7)図8O2オプティクスとPHMBを含む多目的溶剤使用者にみられた角膜上皮障害化水素水の消毒システムを第一選択とし,MPSを使用する場合はPHMBを含まないMPSを使用するように注意を喚起している.VIIIシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズの将来PMMA(polymethylmethacrylate)のハードコンタクトレンズがガス透過性ハードコンタクトレンズへ移行していったと同じように,ハイドロゲルコンタクトレンズが消滅し,すべてのソフトコンタクトレンズがシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズへ移行していく日もそう遠くないであろう.海外ではシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの2週間交換レンズが,主流となりつつある.トーリックレンズを発売している国もある.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの1日使い捨てレンズも,必ず近い将来,市場に登場するであろう.その一方で,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは硬くて,これまでのハイドロゲルコンタクトレンズよりも装用感が劣り,SEALs(epithelialsplitting),巨大乳頭結膜炎の問題を生ずると否定的な意見も少なからず存在する.しかし,これらの問題は第一世代,特に初期の製品(日本未発売)の問題であり,今後登場してくる第二世代,第三世代と素材とデザインの改良を重ねた製品が登場してくる.合併症,装用感の問題も解決されつつある.現時点のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは眼科医,コンタクトレンズ装用者を100%満足させる製品とはいえないが,急速に,それに近づいていくことであろう.文献1)岩崎和歌子,高山三之,稲田智津子ほか:ドイツにおけるシリコーンラバーレンズによる角膜障害の研究.日眼会誌30:759-768,19792)吉川義三,濱野光,光永サチ子:ソフトコンタクトレンズの表面に関する研究.日コレ誌21:221-228,19793)宮本裕子:次世代のコンタクトレンズ─シリコーンハイドロゲルレンズを中心として─.あたらしい眼科21:757-760,20044)松沢康夫:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの基礎知識─表面の性質について─.あたらしい眼科22:1315-1324,20055)保坂幸一:O2オプティクスの紹介.日コレ誌47:77-80,———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006(8)20056)村岡卓:海外で発売されている1カ月連続装用SCLについて教えてください.あたらしい眼科20(臨増):179-182,20037)TigheB:Siliconehydrogels:Structure,propertiesandbehaviour.SiliconeHydrogels:Continuous-wearContactLenses,2nded(edbySweeneyDF),p3,Butterworth-Heinemann,Edinburgh,andothers,20048)伏見典子,小田江里子,澤充ほか:ソフトコンタクトレンズ(SEE-14)の臨床試験報告.日コレ誌45:198-205,20039)WeikartCM,MatsuzawaY,WintertonLetal:Evaluationofplasmapolymer-coatedcontactlensesbyelectrochemi-calimpedancespectroscopy.??????????????????54:597-606,200110)GrobeGL:Surfaceengineeringaspectsofsiliconehydro-gellenses.ContactLensSpectrum,Suppl,August,14s-17s,199911)McCabeKP,MolockFF,HillGAetal:BiomedicalDevic-esContainingInternalWettingAgents,WO03/022321A212)植田喜一:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの臨床試験.あたらしい眼科22:1325-1334,200513)JonesL,MacDougallN,SorbaraGL:Asymptomaticcor-nealstainingassociatedwiththeuseofbara?lconsilicone-hydrogelcontactlensesdisinfectedwithpolyaminopropylbiguanide-preservedcareregimen.?????????????79:753-761,200214)AmosC:Performanceofanewmultipurposesolutionusedwithsiliconehygrogels.????????227:18-22,200415)工藤昌之,糸井素純:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと消毒剤との相性.あたらしい眼科22:1349-1355,2005