———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS定できる.その細かな設定ゆえに,以前のパルスモードのようなONとOFFの差を明らかに感じることなく,あたかも連続発振のような感覚でパルスモードの長所を生かすことが可能になった.パルスモードでは,超音波ONのときには,核を破砕し,OFF時には,核を引きつけ,さらにチップを冷却する.SovereignTMのシステムでは,極短時間にONとOFFがくり返されるために,一度一度のON時間が短くまた,毎回OFF時にすぐに冷却されるために,チップは発熱しない.核を破砕するそばから,引きつけるので,核をはじくこともなく核を効率よく保持できるようになった(図2).さらに最近では,このシステムが進歩発展し,超音波を発振させる3段目のペダルの踏み込み具合により,このONとOFF時間の組み合わせを変化させることが可能になった.核が硬く,踏み込みを必要とする場合には,超音波の発振時間を長くするように設定し,踏み込みが浅い位置では,発振時間を短く設定することも可能になり,さらに効率のよい超音波発振が可能となっている.極小切開白内障手術,特にbimanualphacoでは,スリーブをはずした状態で超音波操作を行う.チップ周囲を灌流液は流れるわけであるが,操作中にチップの一部は創口に押し付けられる.したがって,スリーブに囲まれている場合よりもより直接的に創口熱傷を起こしやすい.このリスクは,上記のようなクールフェイコとよばれる進化したパルスモードの開発により回避できるようはじめにここ数年,1~2mmといった切開幅から白内障手術を行う極小切開白内障手術が注目を集めている.切開創を小さくすることは,単に乱視を軽減させるだけでなく,術後眼内炎の発症を抑えられる可能性などさまざまな可能性を秘めている.極小切開白内障手術は,現在大きく分けてbimanualphaco,coaxialphacoの2つの方法がある.ただ,もともと極小切開白内障手術は,bimanualphacoによって開始されたものであり,注目を集め始めたのは,最近になってである1)が,その起源は20年も前に?る.わが国でも,Haraらの先駆的な仕事がこの分野の開発に寄与したものが大きい2).ただ,この手術法は,その当時は普及されるに至らなかったが,最近リバイバルされ,広く注目を集めるようになった.これにはさまざまな技術革新や器具の開発があった.今回はこの点に注目してみたい.I超音波機器の進歩1.パルスモードの進化パルスモードは,従来より超音波効率を高めるものとして存在し,超音波がONになる時間とOFFになる時間が同じに設定されていた.この設定をもっと細かく自在にできるように超音波装置が進歩した.その先駆けであるSovereignTM(図1)のシステムでは,さまざまに超音波がONになる時間とOFFになる時間を細かく設(13)???*DaijiroKurosaka:岩手医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕黒坂大次郎:〒020-8505盛岡市内丸19-1岩手医科大学眼科学講座特集●白内障手術アップデート2006あたらしい眼科23(4):435~439,2006極小切開白内障手術を可能にした器具??????????????????????????????-?????????????????????????黒坂大次郎*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006になった.現在各社の最新の機器では,似たような類似のシステムが搭載されていることが多い.2.前房の安定性の向上Bimanualphacoにせよcoaxialphacoにせよ極小切開白内障手術と従来の超音波白内障手術との操作性・安全性の違いは,極小切開白内障手術での灌流量が少ないということである.少ない灌流量で従来と同じ設定で手術を行うと,前房の安定性が低下してしまう.したがって,安定性を維持するために,灌流量を確保するか,設定を下げる必要が出てくる.灌流量の確保のためには,灌流ボトルを上げていけば,単位時間当たりの灌流量は確保でき前房は安定するようになるが,眼内での灌流液の流れが強くなり,核片が舞いやすくなり角膜内皮障害が懸念されるなどのマイナス面も出てきてしまう.一方,吸引流量や吸引圧を落とすと,前房の安定性は向上するが,操作性に欠ける印象をもってしまう.前房内圧をセンサーで検出しコンピュータ制御によりサージを起こりにくくしたり,あるいは,吸引流量を落としても設定の圧まではポンプを高速に回して吸引の立ち上がりをよくする機能などを最新のマシンは装備しており,これにより設定を変えても従来とほとんど遜色なく手術操作が可能になり,しかも多少の低灌流であっても前房(14)図1SovereignTM(AMO社)パルスモードの劇的な向上(whitestar)をもたらし,bimanualphaco時の創口熱傷のリスクが回避できるようになった.現在は,variablewhitestarになり,この秋にもさらにバージョンアップが予定されている.図3In?nityTM(Alcon社)センサー系やPC系,チューブ系が劇的に向上し,PEAの安定性が大幅に向上している.吸引の立ち上がりをコントロールでき,ベンチュリーポンプ式よりも早く立ち上げることも可能である.図2SovereignTM─パルスモード(whitestar)の実際通常の超音波では,ON,OFFが50%ずつであったが,whitestarでは,ON,OFFの1回当たりの時間を大幅に短くし,ON,OFFの割合も変化させられるようになった.WHITESTAR10modeWHITESTAROFFTime50%OFFTime50%ONTime50%ONTime50%ONTime50%ONTime100%従来型SHORTPULSE連続発振———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006???の安定性を維持できるようになった(図3).IIBimanualphacoに必要な器具1.灌流付きフックBimanualphacoでは,灌流と超音波チップを分離するため,フック側に灌流の機能が付帯することが必須となる.灌流量が不十分だと操作中の前房が不安定になりさまざまな問題につながる.現在の灌流付きフックは,改良が加えられほぼ安定した操作が可能となっている.灌流付きフックは,フックの形状と灌流孔の位置により分類することが可能である.フックの形状は,分割君?タイプの先端が平べったいもの(図4)と,チョッパータイプのものに分けられる.灌流孔については,種々のものが発売されている.基本は,フロントオープンタイプであるが,これにも,灌流孔が1つのもの,左右2つのものなどが存在する.Bimanualphacoでは,フックの向きや位置を変えることにより眼内での灌流の流れを変化させることが可能である.たとえば,核片を水流に乗せて引き寄せたりすることも可能になる.また,灌流孔を後?側に向け,超音波チップより後?側へおくと,灌流孔からの灌流により後?を硝子体側へ押しやることが可能になる.後?破損を予防する機能をもたせることになるが,わざわざフックを後?側へ向けなくとも,灌流が後?へ向かうように,灌流孔を下向きにつけているフックもある(図5).2.創口拡大用ナイフBimanualphacoでは,1.2~1.4mm程度の切開創からの手術となるが,現状ではこの切開創から挿入できる眼内レンズはごく一部のものに限られている.したがって創口を2mm程度まで拡張することが必要となるが,1.2mmの創口に沿って確実にナイフを挿入するのは意外とむずかしく,創口拡大用ナイフが考案された(図6).このナイフを使うと容易に創口を広げることが可能になる.3.レキシス鑷子などの鑷子類Bimanualphacoの創口は,1.2~1.4mmと小さいため,従来のレキシス鑷子などを使用することがむずかしくなる.通常の鑷子タイプのものでは,先端を広げることができないし,たとえクロスアクションのものでも,創口に引っかかり挿入できない.サイドポートからの使用が可能な,硝子体鑷子タイプのものが必要となる(図7).(15)図4MST社Duet─常岡式灌流フックの先端フロントオープニングで灌流量を確保している.図5DK社鍋島氏分割フックタイプイリゲーションチョッパー下方に灌流孔があり,後?を押し下げる(下方から見たところ).図7池田氏式レキシス鑷子サイドポートから挿入が可能で,前?片のコントロールがしやすい.図6フェザー社創口拡大用ナイフ先端にガイド部分がついており,このガイド部分を創に滑らせることにより,創が二重に切開されてしまうことを防ぐ.———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006(16)IIICoaxialphacoに必要な器具スリーブとチップ極小切開で行うcoaxialphacoでは,現在1.9mmないしは2.2mm程度の切開創から手術操作が可能なものが発売されている.Alcon社のシステムは,ウルトラスリーブとナノスリーブの2種類が用意されている.このシステムは,スリーブを細く薄くし,外径を小さくしても内径をある程度確保できるようにしたこと(図8,9),チップの長年の改良により,フレアータイプのチップが開発されたこと(図10)が大きい.チップ径を細くすれば,灌流量を確保できるわけであるが,それでは超音波操作の効率が悪くなってしまう.そこで灌流が通過する創口の部分のチップ径を細くし,先端は太くしたフレアータイプのチップが用いられる.一方,AMO社のシステムは,従来から存在したラミナーフローチップ用スリーブ(図11)を用いる.このチップの外径が,Alcon社のナノスリーブとほぼ同じだったことより2.2mm程度の創口からの操作が可能になる.チップも従来のものと同じものを使用する.ただ,灌流液が通る断面積は,Alcon社のものより小さくなり,ナノスリーブでの1.9mmよりも少し広めの2.2mm程度の創口から手術を行っている術者が多い.IV眼内レンズ1.極小切開白内障手術用眼内レンズThinOptix社の眼内レンズ(図12)が,極小切開白内障用眼内レンズとして海外では市販されている(日本では認可されていない).この眼内レンズは専用のインジェクターを用いて,眼内レンズを紙巻タバコのようにロールさせて筒状にして眼内へ挿入する.2.通常の眼内レンズ現在一般に市販されている眼内レンズは,いずれも2.7mm程度以上の切開創からの挿入を前提としている.しかしながら,ちょっとした工夫を加えることにより,2mm前後の切開創からの挿入が可能になるレンズも存在する(図13a).ぎりぎりの切開幅から眼内レンズを挿入するため,鑷子で保持する入れ方では,鑷子を挿入す図90.9mmチップ用ナノスリーブ(Alcon社)1.9mmの切開から操作が可能である.図101.1mmマイクロフレアーABSチップKelmanタイプ(Alcon社)先端に比べ中ほどの部分が細くなっている.創口には,この細くなった部分が通過し,スリーブとの間のスペースを灌流液が流れる.図81.1mmチップ用ウルトラスリーブ(Alcon社)2.2mmの切開から操作が可能である.図11AMO社ラミナーフローフェイコチップと20ゲージ用スリーブ2.2mmの切開に対応できる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006???(17)る分の切開創が必要となり極小切開創からの挿入はむずかしい.したがって,インジェクターを利用しての挿入が原則となる(図13b).さらに,カートリッジ全体を切開創に挿入すると,カートリッジ分の厚み分切開幅を取られてしまうので,カートリッジは先端を創口にかませる感じで押し付けて眼内レンズを挿入することが多い3).おわりに以上極小切開白内障手術を可能にしたおもな器具・機械を紹介した.この分野は,さまざまな器具が現在も開発されており,特に眼内レンズの挿入がさらに小さな切開に対応すれば,それを追い越すようにもっと小さな切開からの手術が追及されていくことと思う.今後は眼内レンズにもさまざまな付加価値が求められるので,それらの価値を高めるためにも,この手術は発展し,新たな器具が開発されていくものと思われる.文献1)常岡寛:極小切開白内障手術.??????18:372-378,20042)HaraT,HaraT:Clinicalresultsofendocapsularphaco-emulsi?cationandcompletein-the-bagintraocularlens?xation.???????????????????????13:279-286,19873)常岡寛:2mm切開時代のIOL挿入.眼科手術18:481-487,2005図13aAlcon社SA60AT(光学部径6.0mm)アクリル素材で支持部も作られているため,変形に強く強角膜切開では1.9mm程度の切開から挿入が可能である.図12ThinOptix社の眼内レンズ(ThinOptix社ホームページより)図13bインジェクター挿入に際しては,MonarchIICカートリッジ〔SA30AT(光学部5.5mm)用に開発されたもの〕を用いる.