マイクロパルス閾値下レーザーSubthresholdMicropulseLaserPhotocoagulation大越貴志子*はじめに抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬がさまざまな黄斑疾患に適応承認されて以来,レーザー光凝固術の役割が変化しつつある.DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork(DRCR-net)は糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)に対するレーザー単独治療とラニビズマブ硝子体注射を比較し,後者が視力をより改善させたことを報告している1).今日DMEに対するレーザー治療は,中心窩外の局所浮腫に対する単独治療が適応ではあるが,中心窩を含む進行したDMEについては抗VEGF療法が中心となっている.一方,マイクロパルスレーザーは1990年代に登場した非侵襲的に黄斑疾患を治療するレーザーシステムである.今日まで有効性を示す臨床研究が数多く報告されたが,専用の機器が必要なこともあり近年まで普及をみなかった.しかし今日,抗VEGF薬硝子体注射の効果の限界とその経済的負担が問題視されるようになると併用療法への期待が高まり,その結果,マイクロパルス閾値下レーザーへの関心が高まりつつある.本稿ではマイクロパルス閾値下レーザーの基本的な概念と臨床応用の仕方,そして具体的な治療方法について解説する.Iマイクロパルスレーザー1.マイクロパルスとは従来のレーザーはフットペダルを踏んでいる間レーザーが連続して発振されるのに対し,マイクロパルスレーザーでは,短い凝固時間のレーザーが断続的に発振される.マイクロパルスレーザーは500Hz,すなわち1秒間に500回のon,o?を繰り返す.レーザーが発振されていない時間(o?time)に対するレーザーが発振されている時間(ontime)の比率はdutycycleとよばれ,通常5~15%に設定される.すなわち5%dutycycleでレーザーを発振した場,ontimeは100μ秒となる(図1).レーザーのエネルギーは凝固時間×出力であるので,マイクロパルスレーザーを用いると,同じエネルギーの照射を行うためには,通常の条件より高い出力が必要となる.閾値下,すなわち凝固斑の出ない条件で照射するためには閾値,すなわち凝固斑が得られる最少のエネルギーをテスト照射(titration)を行って決定する必要がある.レーザーの機種によりtitrationの仕方が異なるが,可能であればマイクロパルスモードにてtitrationを行い,得られた閾値のパワーの40~50%程度の出力にて照射する.2.マイクロパルスレーザーの意義マイクロパルスレーザー開発の目的は,凝固時間を短くすることにより,網膜色素上皮層を選択的に照射することであったが,同時にレーザーのエネルギーを網膜に障害を及ぼさない安全な領域まで十分に低下させることが可能となった.適切なパラメータ設定を行うことで,色素上皮を中心とする網膜外層に細胞死のないレベルの◆KishikoOhkoshi:聖路加国際病院眼科〔別刷請求先〕大越貴志子:〒104-8560東京都中央区明石町9-1聖路加国際病院眼科(0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(59)173(連続波)100mW200msTime(ms)(マイクロパルスdutycycle5%)2,000mWdutycycle5%100μs2msdutycycle15%100mW200msTime(ms)図1連続波とマイクロパルスの違い連続波はフットペダルを踏んでいる間,連続してレーザーが発振される.マイクロパルスは,短い凝固時間のレーザーを断続的に発振し,1回の照射とするシステムである.凝固時間が短いため,高出力照射となる.通常500Hz=1s(1,000ms)の中に500回onとo?があり,onとo?1回分の時間は2ms.Dutycycleとはontimeとo?timeの比率である.小さいほどレーザーが発振されている時間が短いため,より大きい出力を要する.温度上昇をもたらすことができ,それにより治療効果が得られるものと考えられている.そしてこの条件が後述する「閾値下レーザー」のコンセプトにつながっている.II閾値下レーザー1.閾値下レーザーとは閾値下レーザーの概念は古くからあり,古典的な閾値下レーザーはマイクロパルスを用いないものであった.当初は,凝固斑が出ないレベルの照射を行うレーザーを広い意味の閾値下レーザーとして大まかに定義していた.しかし,閾値下レーザーでも従来のレーザーを用いると黄斑感度が低下することや,長期的にはフレックが出る可能性が指摘されており,閾値下であっても必ずしも安全ではないことがわかってきた.閾値下レーザーの定義は未だ確定的なものはないが,閾値下レーザーの最大の利点である安全性と非侵襲性を条件とするのであれば,その定義を「レーザーを用いた細胞死のないレベルの温度刺激」とすべきであろう.しかし,海外では細胞死があり温度上昇をきたさない閾値下レーザーも存在するので,温度上昇のある閾値下レーザーとない閾値下レーザーに今後区別してゆく必要があろう.図2レーザーの侵襲のレベルと組織変化レーザーのエネルギーが大きい場合,網膜に凝固斑が確認できる.凝固斑が確認でないレベルのエネルギーの照射を行った場合,条件次第では,OCTで凝固斑が確認でき,自発蛍光検査で過蛍光となる.眼底写真で凝固斑がかろうじて観察できる条件のエネルギーを100%とした場合(黄色点線),75%のエネルギーの照射では,カラー眼底写真では凝固斑が確認できないがOCTで凝固斑が観察される(青点線).30%のエネルギーではOCTでもカラー眼底でも凝固斑が確認できない(緑点線).この条件での照射は,細胞死が起こっていない可能性がある.しかし,エネルギーが低すぎると,治療効果のないレベルの照射となる(赤枠).閾値下レーザーを安全かつ効果的に行うには,細胞死がない条件でかつ治療効果が発現できる程度の熱刺激を網膜色素上皮細胞に加えることであるが,閾値下レーザーでの治療効果が得られる範囲はかなり狭くなっている.(OCTとカラー眼底は文献2より改変引用)図2にレーザーによる網膜への侵襲のレベルを示す.閾値,すなわち凝固斑が確認できる最少のエネルギーを100%とした場合(黄色点線),このレベルの照射では光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で明瞭に凝固斑が確認できる.エネルギーを75%まで低下させると眼底写真上は凝固斑は確認できず,閾値下と判断されるが,OCTでは依然として凝固斑が確認できる(青点線).OCTでの形態変化は細胞死と考えられるため,閾値下の条件でもエネルギー次第では非侵襲的レーザーとはいえない.また,エネルギーが低すぎると細胞に熱刺激が加わらないため,治療効果のないレーザーとなる.閾値下レーザーの条件を非侵襲的でかつ治療効果をもたらすレベルに設定するための条件は,狭い範囲であることを認識しなければならない.閾値下レーザーの治療効果発現のマーカーとして,熱ショック蛋白(heatshockprotein:HSP)の発現上昇が報告されている.HSPは49℃以上で発現上昇し,かつ57℃以上で細胞死がもたらされる.すなわち,49℃以上56℃以下の狭い範囲の温度上昇が,閾値下レーザーを成功させるために要求される.動物実験ではおよそ細胞死の閾値の50%のエネルギーでHSPが発現上昇するとされており,安全な閾値下の条件は,40~50%ぐらいのエネルギーであると考えられている.しかし,実臨床においては網膜の厚さや色素の量などが不均衡であり,理想的な条件設定は困難であることが現状であり,残念ながらパラメーa3bc21001361224Timecourse(h)マイクロパルス連続波図3マイクロパルスレーザーによる熱ショック蛋白(HSP)の発現上昇a:マイクロパルス閾値下レーザー後の細胞内分子の評価の指標としてHSPA1Aという熱ストレスに対して発現する蛋白に注目した.12mmシャーレにヒト網膜色素上皮細胞を培養し,閾値下凝固に相当するエネルギーで81発レーザーを施行し,術後totalRNAを抽出しPCR定量を行った.HSPA1Aは,照射1時間後に照射前の2倍以上,3時間後に3倍以上に発現上昇し6時間後まで持続した.b,c:照射部の抗Hsp70抗体を用いた免疫染色(免疫染色24時間後).緑はHsp70が発現している部位.b:マイクロパルス閾値下レーザー照射部位(細胞死はなく細胞の形態が変化するレベルの照射)では照射部位の色素上皮細胞の形態変化を認めた部位にHsp70が強く発現している.c:連続波のレーザーでは照射部位の中心に細胞死をきたしたエリアが観察される.細胞死をきたした範囲は染色されず,非照射部位である周囲にHsp70が発現している.(文献3より引用)タ設定については経験による判断が大きい.閾値下レーザーを行うにはマイクロパルスレーザーを必ずしも必要としないが,閾値下のパラメータ設定のシステムが必要である.トプコン社のPASCALレーザーに搭載された「EndpointManagement」はマイクロパルスを用いない閾値下レーザーシステムである.2.閾値下レーザーの奏効機序これまで閾値下レーザーの奏効機序は謎であった.従来のレーザーは網膜外層の細胞死をもたらすことで浮腫を引かせるものと考えられていたので,細胞死のない条件で浮腫が引くメカニズムは解明されていなかった.しかし,これまで複数の基礎研究においてヒトや動物の網膜色素上皮細胞に細胞死のない条件でレーザーによる熱刺激を加えることで,HSPをはじめとするさまざまな蛋白が発現上昇することが報告されている3()図3).HSPは細胞が熱ストレスにさらされた際に発現し,細胞を保護する作用をもつ蛋白質で,抗炎症作用など,さまざまな働きを有している.HSPの発現上昇は閾値下レーザーの奏効機転のトリガーとなり,浮腫減少をもたらすさまざまな分子を動かしているものと推定されている.また,マイクロパルス閾値下レーザー後の前房水の分析でMuller細胞に関連する分子が動いていることも確認されており4),細胞死のない熱刺激がさまざまな経路で分子を動かし,網膜色素上皮細胞のポンプ作用を改善させたり,あるいは,Muller細胞の機能を回復させることにより浮腫を引かせているものと推定されている.IIIマイクロパルス閾値下レーザーの臨床応用1.適応と効果DMEをはじめとする黄斑疾患が適応となる.表1に適応疾患を示した.a.糖尿病黄斑浮腫DMEに対するマイクロパルス閾値下レーザー単独治療の適応は,中心窩外の局所浮腫,中心窩を含む領域の黄斑浮腫のうち,軽症な症例(中心窩網膜厚600μm以下)である(図4).今日までDMEに対する閾値下レーザー単独治療の有効性を証明した報告は多数ある6~9).ランダム化比較試験の結果も報告されており,従来のレーザー(modi?edETDRSレーザー)より有効であることが示されている7).このことから,閾値下レーザーが可能であれば原則毛細血管瘤の直接凝固は行わず,黄斑部の病巣部に広範囲にレーザーを蜜に照射する.一般に浮腫が比較的軽症である症例が単独治療の適応であり,重症な黄斑浮腫については,抗VEGF治療との併用療法10)が適応となる(図5).b.網膜静脈閉塞症網膜静脈閉塞症(retinalveinocclusion:RVO)の黄斑浮腫は抗VEGF治療が奏効するため,単独療法としての閾値下レーザーの適応は狭く,視力が良好な軽症例に限られる11).重症例では出血が多くレーザーが網膜色素上皮層まで通過しないので効果に限界がある.しかし,出血が引き慢性化した?胞様黄斑浮腫や,注射を繰り返し行っても再発を繰り返している症例に対し閾値下レーザーが奏効することをしばしば経験する.閾値下レーザーと注射の併用療法が注射の本数を減らせたという後ろ向き研究結果が報告されている12,13).筆者らは網膜静脈分枝閉塞症(branchretinalveinocclusion:BRVO)の黄斑浮腫に対し,抗VEGF薬と閾値下レーザーの併用療法を行い,1年間に3.1本の注射で13文字の視力改善が得られたことを報告した13).c.中心性漿液性脈絡網膜症中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioreti-nopathy:CSC)は閾値下レーザーのよい適応である.CSCは遷延すると視細胞が障害され,恒久的な視力低下に陥る疾患である.これまで,漏出点が中心窩に近い場合や,漏出点が不明な症例ではレーザー治療が不能とされ放置されることが多く,視力低下を余儀なくされていた.このような症例に対し光線力学的療法(photody-namictherapy:PDT)の有効性を示す複数の報告がある.しかし,PDTはわが国では保険適用がなく,また表1マイクロパルス閾値下レーザーの適応疾患治療後に遮光が必要であることなど患者負担が大きい.マイクロパルス閾値下レーザーはこのような症例に対して有効かつ安全な治療法である(図6).約60%の症例で漿液性?離が消失する.PDTや従来のレーザーと比較した論文14~16)はいくつかあるが,効果はほぼ同等14,15),またはやや効果が低い16)との報告もある.いずれにしても,マイクロパルス閾値下レーザーは治療のハードルが低く副作用も懸念する必要がないので,まず試してみる価値がある治療である.CSCは放置されることにより視細胞の障害は不可逆的になるため,長期間自然回復を待つより閾値下レーザーで早期に治療を行い,視機能の温存を図ることが重要である.2.方法マイクロパルス閾値下レーザーは凝固斑がみえないレーザーであるため,パラメータの設定が重要な鍵となる.そのため入念に時間をかけてtitrationを行う.また,照射範囲も重要であり,広い範囲を照射しないと効果がない場合がある.本稿では,ピュアイエロー・レーザー光凝固装置IQ577(トーメーコーポレーション)という,もっとも使用されている機種での方法を解説する.a.テスト照射海外では固定されたパラメータで施行する医師もあるが,網膜は厚さや色調,そして水晶体の混濁の程度が個人個人で異なり,また,レーザーの出力もミラーの汚れなどで低下してくる可能性もあるので,毎回titrationを行うことが重要である.titrationはアーケードより外側の網膜でなるべく健常な部分を選び,5%dutycycle,100μm200msec,出力を500mWから徐々に上げてゆき,凝固斑の得られる最低の出力を閾値の出力に決定する.閾値は照射直後に網膜が白濁するレベルの出力では図4糖尿病黄斑浮腫に対するマイクロパルス閾値下レーザーの単独治療例54歳,女性.?胞様黄斑浮腫を伴うびまん性糖尿病黄斑浮腫に対し,マイクロパルス閾値下レーザーを施行したところ,術前視力0.3から術後3カ月で0.7に改善した.a:レーザー直後の眼底写真.凝固斑はみられない.b:レーザー前の蛍光眼底写真.びまん性蛍光漏出を認める.c:レーザー前の光干渉断層計.中心窩網膜厚668μm.?胞様浮腫を認める.d:レーザー後3カ月.浮腫は減少している(中心窩網膜厚407μm).(文献5より改変引用)閾値下レーザー図5糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF硝子体注射とレーザー治療の計画的併用療法重症なびまん性黄斑浮腫では,抗VEGF薬硝子体注射を3回連続行い,その後浮腫の減少を見計らって閾値下レーザー治療を行う.その後は浮腫が再発するたびに必要に応じて追加注射と追加のレーザーを行う.図6中心性漿液性脈絡網膜症に対する閾値下レーザー治療56歳,女性.蛍光眼底撮影が不能だったため,漏出点を確認できず,遷延した中心性漿液性脈絡網膜症症例.中心窩を除く黄斑部全体にテクセル(TxCell)パターンモードにてマイクロパルス閾値下レーザーを施行した.治療前視力1.0.a:レーザー直後のカラー眼底写真.凝固斑はみられない.b~e:治療前後のOCT写真(b:治療前,c:治療後20日,d:56日,e:88日後).治療後速やかに下液は減少し,3カ月で完全に消失した.その後も3カ月にわたって再発はみられない.f,g:自発蛍光検査(f:レーザー前,g:4カ月後).照射部位に一致して蛍光の変化はみられない.なく,照後3秒くらいで凝固斑が得られる出力とする.b.パターン照射閾値の出力が決定したら,出力を40~50%程度に低下させ,TxCell(テクセル)モード(IQ577に搭載されたパターンモード)で照射する.通常7×7のテクセルパターンを「spacing」0に設定し,中心窩を除く範囲に蜜に照射する.中心窩の周囲には7×7のテクセルを8個並べることができる(図7).したがって49×8で最低392発の照射となる.病変部位が広い場合は,さらに周囲も追加照射する.この際,閾値をとっているのが健常部位で,実際治療するのが浮腫がある部分なので,症例によって閾値下のエネルギーを40~60%まで変化させて行う.筆者は,通常50%のエネルギーを用いるが,CSCや視力が良好で浮腫の軽症のDMEを治療する場合は40%を選択している.RVOではアーケード内の閉塞範囲に広く照射を行う.この場合は浮腫のない部分も含むことがある.表2に閾値下レーザーの凝固条件を示す.c.漏出点に対する局所照射CSCやパキコロイド関連疾患では,漏出点が明瞭な図7TxCellを用いたグリッドパターン照射のイメージ(IQ577)7×7のグリッドをspacing0に設定し作成.中心窩の周囲に8個のグリッドを並べて照射する.病巣部が広い場合はさらに周囲に追加する.表2閾値下レーザーの条件サイズ(μm)凝固時間エネルギー(mW,mJ)spacingdutycycleマイクロパルス閾値下凝固100200msec閾値の40~60%なし5%EndpointManagement20015msec閾値の30~50%0.5─スポットサイズはスリーミラーレンズ使用時.症例はまずそこを照射し,効果に乏しい場合は,中心窩を除いた黄斑部に広範囲にグリッド状に照射する.d.再治療治療後3カ月経過して効果がない場合再治療を検討する.その際には自発蛍光検査を行い,レーザー痕が描出されないのを確認してからのほうがよい.自発蛍光が過蛍光になっていたら,過蛍光が消えるまで待ってから治療したほうがよい.3.抗VEGF治療との併用(図5)重症なびまん性糖尿病黄斑浮腫の場合,抗VEGF治療との併用療法が推奨される.併用する際の注意点であるが,注射で浮腫を限界まで引かせ,その後浮腫が軽症になったところで,マイクロパルス閾値下レーザーを当てる.浮腫が重症な時点で注射とレーザーを同時に併用してもレーザーの透過効率が悪く効果に乏しい.筆者ら10)は注射を3本程度打ってから計画的に低侵襲レーザー(閾値下レーザーと閾値毛細血管瘤凝固)を照射する方法を行い,年間3.6本と少ない注射の本数で視力改善が5.9文字と海外の前向き臨床試験の結果に匹敵する視力の改善を得たことを報告した.併用療法は,抗VEGF薬による治療効果を低下させることなく注射の本数を減らすことが可能な方法と思われる.IVマイクロパルス閾値下レーザーの未来これまで多くの臨床研究によりマイクロパルス閾値下レーザーが従来のレーザーとほぼ同等,あるいは治療効果が高いことが証明されてきた.今後は黄斑疾患に対するレーザー治療の多くは閾値下レーザーに置き変わる可能性が示唆される.しかし,前述したように閾値下レーザーは凝固斑がみえないレーザーで,かつ治療効果が発揮できる条件設定はかなり幅が狭くなることから,閾値下レーザーをより確実性の高い治療にするためには,将来リアルタイムで網膜の形態変化を観察したり,温度測定をするなど,フィードバックシステムの開発が望まれる.文献1)DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:Expand-ed2-yearfollow-upofranibizumabpluspromptordeferredlaserortriamcinolonepluspromptlaserfordia-beticmacularedema.Ophthalmology118:609-614,20112)LavinskyD,SramecC,WangJetal:Subvisibleretinallasertherapy:titrationalgorithmandtissueresponse.Retina34:87-97,20143)InagakiK,ShuoT,KatakuraKetal:Sublethalphotother-malstimulationwithamicropulselaserinducesheatshockproteinexpressioninARPE-19cells.JOphthalmol2015:729792,20154)MidenaE,BiniS,MartiniFetal:ChangesofaqueoushumorMullercells’biomarkersinhumanpatientsa?ectedbydiabeticmacularedemaaftersubthresholdmicropulselasertreatment.Retina40:126-134,20205)大越貴志子:マイクロパルス閾値下凝固.あたらしい眼科31:29-35,20146)OhkoshiK,YamaguchiT:SubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularedemaforJap-anese.AmJOphthalmol149:133-139,20107)LavinskyD,CardilloJA,MeloLASetal:RandomizedclinicaltrialevaluatingmETDRSversusnormalorhigh-densitymicropulsephotocoagulationfordiabeticmacularedema.IOVS52:4614-4323,20118)QiaoG,GuoHK,DaiYetal:Sub-thresholdmicro-pulsediodelasertreatmentindiabeticmacularedema:AMeta-analysisofrandomizedcontrolledtrials.IntJOph-thalmol9:1020-1027,20169)HamadaM,OhkoshiK,InagakiKetal:SubthresholdphotocoagulationusingendpointmanagementinthePAS-CALRsystemfordi?usediabeticmacularedema.JOph-thalmol2018:7465794,201810)InagakiK,HamadaM,OhkoshiK:Minimallyinvasivelasertreatmentcombinedwithintravitrealinjectionofanti-vascularendothelialgrowthfactorfordiabeticmacu-laroedema.SciRep9:7585,201911)InagakiK,OhkoshiK,OhdeSetal:Subthresholdmicro-pulsephotocoagulationforpersistentmacularedemasec-ondarytobranchretinalveinocclusionincl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