———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS用して観察するため,反射鏡は観察部隅角の反対側に位置する.a.検査用レンズ間接法に用いる隅角鏡には多くの種類があるが,基本構造はGoldmann一面鏡,もしくはZeiss,あるいはGoldmann三面鏡のなかの隅角用ミラーに代表される(図2).ミラーの位置と角度:間接法では隅角からの光を,鏡面を利用して観察するため,反射鏡の位置,高さ,角度によって観察される像が変化する.反射鏡の位置が角膜中心に近く,高さが高く,角度が大きいほど隅角を上から覗き込むことになり,虹彩根部によって隅角底が透見しにくい狭隅角眼での隅角観察が容易であるが,隅角を線維柱帯の接線方向から覗き込むことになるため,隅角の丈が低く見える(図4).ミラーの数:隅角用のコンタクトレンズのミラーの数はじめに隅角検査の検査対象は,①緑内障,虹彩炎などの確定・鑑別疾患を要する症例,②虹彩,毛様体の腫瘤性病変,③隅角外傷,④緑内障の術後などである.特に,緑内障の診療においては緑内障の病型を正しく決め,その原因を確定もしくは推定したうえで治療方針を検討するために重要である.緑内障では,眼圧上昇の原因によって治療方針が異なるため,隅角検査は緑内障の診療上必須の検査である.また,異常を判断するためには正常を理解する必要がある.このため,日常診療において正常の隅角を観察することも重要である.I隅角鏡の種類隅角検査は,角膜上にコンタクトレンズを装着し,角膜から外眼に至る光路を変更することによって行われるが,用いるコンタクトレンズ表面の彎曲を強くすることによって,隅角からの光の入射角を臨界角以下として光線を眼外へと導き,隅角をそのままの方向から観察する直接型隅角検査法,コンタクトレンズ壁面を鏡面として隅角の鏡面像を観察する間接型隅角検査法に分類される(図1~3).その他,隅角底の観察が困難な狭隅角眼に対する特殊な検査法として圧迫隅角検査がある.1.間接検査法細隙灯顕微鏡を利用して検査できることから,日常臨床で最もよく用いられる.隅角からの反射光を鏡面を利(3)???*KazuhideKawase:大垣市民病院眼科〔別刷請求先〕川瀬和秀:〒503-8502大垣市南頬町4-86大垣市民病院眼科特集●隅角のすべてあたらしい眼科23(8):979~987,2006隅角検査の実際,いつ診るか,どう診るか?????????????????????????????????????????????????川瀬和秀*図1隅角検査法(文献3,p4,図1-7より)間接検査法直接検査法———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006は,1ミラー,2ミラー,4ミラーあり,ミラーの数が少ないほど一面で観察できる範囲は広くなるが,360?の観察には1周回す必要がある.4ミラーでは,上下左右が一度に観察できるが,その間を観察するために45?回転させるだけでよいが,一面で観察できる範囲は狭い(図5).隅角鏡の接着面:隅角鏡の接着面には,圧迫しやすい「つばがなく接着面の小さい」ものから,固定のしやすい「大きいつば」のタイプがある.つばがなく接着面の小さいタイプでは,メチルセルロースなどの粘弾性物質を使用せずに装着できるPosnerレンズ,Sussmannレンズ,Zeiss四面鏡など(図6)があるが,装着時の角膜圧迫により隅角が開大しやすく,隅角の広狭の判定を誤る可能性があるので,開大度を判定した後に隅角底の観察に用いるべきである.また,つばの大きいタイプでは,圧迫しても角膜輪部までつばがあり,角膜に皺が寄り,隅角底を観察することがむずかしい(図7).このような理由から初めは,一度に観察できる範囲が(4)bac図3直接検査用レンズa:Koeppeレンズ,b:Barkanレンズ,c:Swan-Jacobレンズ.1ミラー(マグナビュー)4ミラー2ミラー見える範囲広い・大きい見える範囲狭い・小さい全周観察簡便全周観察不便図5ミラーの数とその特徴cbad図2間接検査用レンズa:一面鏡(マグナビュー),b:二面鏡,c:四面鏡,d:Posnerレンズ.abcdアイウ図4狭隅角眼での観察狭隅角眼では,同じ高さからみる場合(a-b)には隅角から近い位置(ア)のほうが,同じ距離からみる場合(c-d)には高い位置あるいは観察角度が急なほう(ウ)が隅角底を観察しやすい.したがって反射鏡位置が瞳孔中心に近く,反射鏡の高さが高く,角度が大きいほうが観察しやすい.(文献3,p5,図1-9より)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006???広く,固定が比較的良く,圧迫隅角検査もしやすいGoldmann二面鏡の使用が望ましい.b.検査手技点眼麻酔の後,隅角鏡の角膜面にメチルセルロースを滴下して角膜に装着する.患者に上転させ,下から被せる方法が一般的であるが,上転がむずかしい場合には上眼瞼を挙上し眼球を下転させて,上方から装着する方法もある.細隙灯顕微鏡を使用し,一般的には隅角が最も広く隅角の構造が把握しやすく,色素・炎症物質などの沈着が起こりやすい下方隅角から開始する.間接法では,上下方向に比べて耳,鼻側方向の隅角の観察が困難であるが,光軸を傾斜,回転により観察可能となる.前房が浅い患者では,患者の眼をミラー方向に向けることで隅角底の観察が可能となる.2.直接検査法現在では日常診療においてはあまり用いられないが,隅角癒着解離術や隅角切開術などを行う際には必要で,習得すべき手技である.a.検査用レンズ直接法で用いる検査レンズは,Koeppeレンズに代表される.Koeppeレンズはレンズの拡大作用により隅角は約1.5倍に拡大される.その他,隅角切開術や隅角解離術などの手術時に隅角を観察するための直接型隅角鏡レンズとしてBarkanレンズ,Worstレンズ,Swan-JacobレンズおよびThropeレンズなどが考案されている(図3).b.検査手技患者を仰臥位にし,顎と前頭部を同じレベルに合わせ頭部を水平にする.点眼麻酔を行い,Koeppeレンズでは凹面側にエチルセルロースを滴下してレンズを装着する.Barkanレンズなどの手術用直接型隅角レンズは,角膜との接触面積を縮小化し,レンズ内面率を角膜曲率よりやや大きくすることで角膜表面とレンズの間に空気(5)図6隅角鏡の設置部分の違いによる特徴つばなし接着面小つばなし接着面大小さいつば大きいつば固定しやすい固定しにくい圧迫しにくい圧迫しやすい前迫圧後迫圧つばなしつばあり図7“つばなし”と“つばあり”の圧迫による違い———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006を入れない工夫がなされており,エチルセルロースなどを使用せず直接,眼球にレンズを装着することが可能となる.IIいつ診るか?(隅角検査が必要なとき)忙しい外来での隅角検査は,必要がないとなかなか施行できない.隅角検査が必要なタイミングにはつぎのような場合がある.浅前房:多治見スタディにおけるPACG(原発閉塞隅角緑内障),susp.PACG,PACを合わせると,約1.0%強が隅角閉塞をきたしやすい状況にあると考えられる1)(図8).60歳を過ぎると急に増加するため,初診時の隅角が広い場合でも60歳を過ぎたら,診察のたびに簡便なvanHerick法で周辺前房の深さをチェックし,角膜厚の1/4(gradeⅡ)より浅い場合は随時隅角検査を行う必要がある.片眼性眼圧上昇:前房に炎症がない場合でも,隅角結節が存在しサルコイドーシスによる眼圧上昇で,ステロイド点眼により眼圧下降が得られる場合もある.また,Posner-Schlossman症候群や片眼性落屑緑内障による隅角色素沈着の左右差を認める場合がある.外傷による前房内出血や前房内炎症:隅角損傷として隅角離開以外に毛様体解離,線維柱帯の裂傷,虹彩離断などを認める.発達緑内障:隅角の分化不全を認める.糖尿病,網膜静脈閉塞症:隅角の新生血管は眼圧上昇前から認める.眼圧に左右差を認める場合や,瞳孔領に新生血管を認めるときには隅角を観察する.緑内障手術の前後:緑内障の手術を行う場合,手術施行部位の状態を把握する必要がある.虹彩前癒着や血管新生がある場合には線維柱帯切開術はむずかしく,線維柱帯切除術を施行する場合も角膜寄りのブロックを切除する必要がある.術後,創口の虹彩嵌頓や虹彩前癒着の存在により濾過が悪化している場合はYAGレーザーにて濾過を回復することも可能である.III所見の記載方法隅角検査の所見は,①隅角の広狭,②先天異常,発育異常所見,③続発性変化,④手術に関した情報などを記載する2)(表1).A隅角鏡所見の分類および正常所見と異常所見3)1.開大度Sha?er分類:隅角の広さを測定し客観的に判断する方法としてSha?er分類が広く用いられている.これは,隅角線維柱帯と周辺部虹彩のなす角度を観察することにより,広隅角の4?から完全閉塞の0?までの5段階に分類したものである4)(図9,表2).Scheie分類:隅角の深さを示す分類にはScheie分類が用いられる.隅角構造が観察可能なWIDEからSchwalbe線が観察できないⅣ度の5段階に分類したものである5)(図10).vanHerick法:隅角鏡を使用せず,細隙灯顕微鏡を用いて周辺部の前房の深さを観察することにより,隅角の開大度を推定する方法である.簡便であり,角膜混濁(6)図8多治見スタディによる年齢,性別によるPACG+PACG疑い+PACの割合の変化(文献1より作成):男性:女性:全体PACG+PACG疑い+PAC(%)21.81.61.41.210.80.60.40.2040~4950~5960~69年齢(歳)70~7980表1隅角検査で必要な情報①隅角の広狭:開放隅角か閉塞隅角か②先天異常,発育異常所見③続発性変化1)色素沈着2)周辺虹彩前癒着3)血管新生4)炎症所見5)外傷その他④手術に関した情報1)手術部位の選択2)手術効果の判定———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006???や角膜浮腫のため隅角の観察ができない症例にも有用である6)(表3).2.周辺虹彩の形と付着部位の相違Spaeth分類:これは,隅角の広狭の他に,周辺虹彩の形・虹彩付着部位の相違による隅角の形態変化を加えて分類したものである7)(図11).3.色素沈着Scheie分類(色素沈着):隅角の色素沈着は正常若年者にはほとんどみられない所見であるが,加齢とともに増加する.色素沈着は通常,下方隅角で著明であるため,部分別に判定を行う.色素沈着の程度分類には(7)図9Sha?er分類(文献8,p282,図1より)開放隅角grade3~4狭隅角grade2狭隅角grade1閉塞隅角grade0angle20~45°angle10°angle20°図10Scheie分類による隅角の広さの分類0:線維柱帯,強膜岬,毛様体帯のすべてが見える.Ⅰ:強膜岬はみえるが毛様体帯が見にくい,Ⅱ:強膜岬はみえず線維柱帯の下半分が見にくい,Ⅳ:線維柱帯がみえずSchwalbe線まで虹彩が隠されている.(文献5,p511,Fig.2より)図11Spaeth分類による隅角形状の模式図(文献8,p283,図3より)abc隅角の角度分類周辺部虹彩の形態分類虹彩根部の隅角付着部の見かけ上の位置の分類s(steep)ABCDEr(regular)q(queer)10°20°30°40°表2Sha?er分類角度(?)度数臨床的意義広隅角30~403~4隅角閉塞は生じない狭隅角軽度202隅角閉塞が生じうる狭隅角極度101将来隅角閉塞の可能性大完全あるいは部分閉塞隅角<100隅角閉塞がある表3vanHerick法隅角の広さ周辺部における前房深度Ⅳ角膜厚に等しいⅢ角膜厚の1/2~1/4Ⅱ角膜厚の1/4Ⅰ角膜厚の1/4以下0前房なし———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006Scheie分類(色素沈着)が広く用いられ,色素沈着を認めないNONE(0?)から,高度に色素沈着を認めるⅣ度まで分類されている5)(図12).4.正常所見と正常のバリエーション(図13,表4)Schwalbe線:Schwalbe線は隅角の前縁を形成しており,その幅が狭いときは白色のわずかに突出した線として観察される.線維柱帯:Schwalbe線と強膜岬の間に存在する.若年者では半透明にみえるが,加齢とともに色素を帯び,その透明性が低下する.Schlemm管:Schlemm管は強膜岬の直前方,線維柱帯の中央で幅1/3を占めているが,通常は前房側にぶどう膜網,角強膜網,傍Schlemm管組織が存在するため,隅角鏡検査では観察することはできない.しかし,隅角鏡の縁で輪部を圧迫するなどの上強膜静脈圧の上昇により血液がSchlemm管内へ逆流し,Schlemm管が赤い帯として観察できる.強膜岬:毛様体帯の前方に位置する一定の幅をもつ白色の線としてみえる.毛様体帯:隅角底を形成し,強膜岬と虹彩根部の間にみられる.毛様体前面をその覆うぶどう膜網を通して観察され,日本人では青みがかかった灰色,灰褐色,濃い灰白色などの表現でその色調が表現される.虹彩突起:虹彩根部より線維柱帯面上に達する糸状,束状,樹枝状の突起である.隅角血管:隅角血管は毛様体上,虹彩根部にみられるほか,虹彩根部から毛様体帯上を横切り,線維柱帯中央部まで直線的に走行するものがある.5.病的隅角異常開大度:隅角の広狭の判定は,隅角検査の最も基本的な目的である.正常隅角でも上方はやや狭い.しかし,隅角の部位により広さが極端に異なる場合には,虹彩?腫,水晶体脱臼,虹彩後癒着などの局所病変を考えなければならない.周辺虹彩前癒着が広範に生じている場合,特にSchwalbe線に色素が沈着していると,その色素を線維柱帯の色素沈着と見誤り,開放隅角と判断してしまうことがありうる.こうした見誤りやすい隅角はpseudoangleとよばれる(表5).虹彩根部の形状:色素緑内障の場合は,reverse(8)図12Scheieによる隅角の色素沈着の分類(文献5,p511,Fig.2より)Schwalbe線Schlemm管強膜岬毛様体帯虹彩根部図13隅角組織所見と隅角鏡所見の対比(文献8,p277,図2より)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006???pupillaryblockとして凹状の周辺虹彩(Spaeth分類q型)を示し,プラトー虹彩形態の場合は急峻で凸状の周辺虹彩(Spaeth分類s型)となる.異常色素沈着:隅角,特に線維柱帯に黒色あるいは黒褐色の色素沈着を認めることがある.色素沈着は加齢とともに増加する.また,下方隅角に著明に生じることが多い(表6).周辺虹彩前癒着:隅角と周辺部虹彩の癒着であり,すべて病的な所見と考えてよい(表7).血管新生:隅角に血管を認める場合,生理的なものか新生血管であるかを鑑別する必要がある.隅角に認められる新生血管は眼内の虚血に続発したものであり,すべて病的な所見と考えられる.血管の形態的な特徴として,毛様体前面を立ち上がり,線維柱帯色素帯付近まで達すること,分枝すること,周辺虹彩前癒着を伴うことが多いことがあげられる.Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎で微細な新生血管を生じることがあり,診断的な価値が高い.Schlemm管の充血:Sturge-Weber症候群では,上強膜静脈圧の上昇によりSchlemm管の異常な充血の所見を認める.(9)表4正常所見と正常のバリエーション部位,所見正常所見バリエーション,その他Schwalbe線・白色のわずかに突出した線・線上に色素の沈着はない・幅が広いときは比較的平滑な表面と,やや粗な表面をもつ線維柱帯の間に存在する不鮮明な線・高齢者では,特に下方において線状の色素沈着がみられる線維柱帯・Schwalbe線と強膜岬の間・若年者では半透明・加齢とともに色素を帯び,透明性が低下Schlemm管・強膜岬の直前方,線維柱帯の中央で幅1/3に存在・前房内に出現した色素顆粒は,この部分に沈着しやすい・線維柱帯における帯状の色素沈着部位を色素帯とよび,その外方にSchlemm管が存在する強膜岬・毛様体帯の前方に位置する一定の幅をもつ白色の線・隅角底の形成が不良な場合や,狭い隅角では観察がむずかしい毛様体帯・隅角底を形成・強膜岬と虹彩根部の間・色調は灰色,灰褐色,濃い灰白色など・隅角底の形成は生後1年で完成するため,新生児ではみられない虹彩突起・虹彩根部より線維柱帯面上に達する糸状,束状,樹枝状の突起・鼻側隅角に多い・強膜岬の高さまでのものが大部分隅角血管・虹彩周辺部にあり,線維柱帯と平行に走る血管(毛様体の動脈輪の一部)・毛様体前面を横切り,線維柱帯に達する短い血管(前毛様体動脈の分枝)・病的血管に比較して太く,分枝を出すことはまれ・造影剤を使った検査でも漏出はみられない表5隅角の開大度の変化の所見と原因所見原因広い隅角正常眼,近視眼,偽水晶体眼,無水晶体眼軽度の狭隅角遠視眼高度の狭隅角原発閉塞隅角緑内障,プラトー虹彩形態閉塞隅角続発閉塞隅角緑内障開大度が部位により異なる水晶体脱臼,虹彩?腫,虹彩後癒着部位により著しく広い水晶体脱臼,隅角離開,毛様体解離表6色素沈着の原因と所見原因所見落屑緑内障線維柱帯上に中等度の色素沈着Sampaolesi線(Schwalbe線から角膜よりに存在する波状の色素沈着)色素緑内障高度な色素沈着ICE症候群Schwalbe線および色素帯に高度の色素沈着レーザー虹彩切開術後虹彩の色素が線維柱帯に沈着———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006炎症性滲出物:種々の炎症性疾患により隅角に滲出性病変が確認されることがある(表8).隅角離開:鈍的眼外傷により,特徴ある隅角変化が生じることがある.代表的な所見として隅角離開があげられる.隅角離開の特徴は毛様体前面が通常より幅広く,その表面がスムーズでないことである.色はやや青みがかっている.部位により毛様体前面の幅が異なることも特徴である.軽度の隅角離開の場合は左右眼の比較により確認されることもある.隅角損傷には隅角離開以外に毛様体解離,線維柱帯の裂傷,虹彩離断があり,これらは単独で存在することもあれば,併在することもある.分化不全:隅角の分化不全の所見を表9に示す.発達緑内障(早発型)に認められる虹彩の高位付着と,Axen-feld-Rieger症候群に認められる索状あるいは,膜状の虹彩組織の残存が重要である.6.圧迫隅角検査圧迫隅角検査に用いる隅角鏡は,角膜との接触面積が小さい.圧迫隅角検査は,この隅角鏡で角膜の一部を圧迫し,前房を変形させ,房水を隅角に集めることで,一時的な隅角の開大を生じさせ,隅角底に観察される周辺虹彩前癒着の有無,高さ,幅を調べる方法である.適度な角膜・虹彩根部の変形を人工的に作製する必要がある.B隅角鏡所見記載の基本ルール1.観察方法,使用レンズの記載a.間接検査法Goldmann一面鏡,Goldmann三面鏡,Posner四面鏡,Sussmann四面鏡,Zeiss四面鏡など.b.直接検査法Koeppeレンズ,Barkanレンズ,Worstレンズ,Swan-Jacobレンズ,Thorpeレンズなど.c.圧迫隅角検査岩田式圧迫隅角鏡,Posner四面鏡,Sussmann四面鏡,Zeiss四面鏡,Goldmann一面鏡(間接検査法).Kitazawaレンズ(直接検査法).2.チャートによる記載圧迫隅角検査による虹彩前癒着の範囲や高さを示す場合は有効である.隅角所見記録用紙:隅角検査所見は隅角を外側に展開した図を用意し,そこに病変を記入すると,異常の存在とその位置が理解しやすい(図14).(10)表7周辺虹彩前癒着をきたす原因とその特徴原因周辺虹彩前癒着の特徴原発閉塞隅角緑内障テント状,台形,幅の広いものなど(Schwalbe線を越えない)血管新生緑内障血管新生を伴う,幅の広い癒着Irisbombe角膜に及ぶこともあるぶどう膜炎テント状,台形鈍的外傷隅角離開を伴うICE症候群幅が広い癒着(高さは角膜に及ぶ)前房消失幅が広い癒着(高さは角膜に及ぶ)内眼手術手術部位の癒着ALT*後レーザー照射部位のテント状の癒着*:アルゴンレーザートラベクロプラスティ.表8炎症性疾患とその所見原因所見サルコイドーシス虹彩根部,線維柱帯に白色塊状の小結節周辺虹彩前癒着Posner-Schlossman症候群線維柱帯表面ないし毛様体前面の沈着物(角膜後面沈着物と同様の沈着物)患眼の線維柱帯の脱色素(色素沈着が健眼よりも薄い)原田病狭隅角(初期に一過性浅前房となることがある)瞳孔遮断や周辺虹彩前癒着表9発達異常を示す所見1.虹彩根部が強膜岬や線維柱帯,Schwalbe線の位置に存在する(虹彩高位付着)2.隅角底や線維柱帯を覆う中胚葉組織の遺残(虹彩組織の残存)3.線維柱帯の幅が広い4.隅角底の欠如5.Schwalbe線の肥厚(後部胎生環)6.大動脈輪からの血管係蹄の存在7.多数の虹彩突起の存在8.毛様体が狭い,あるいは認められない———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006???3.文字による記載a.開大度Sha?er分類にて記載(例:Sha?ergrade3open).b.色素沈着Scheie分類にて記載(例:pigmentationScheiegradeⅡ).c.方向の記載(1)時計の方向による位置の記載:虹彩前癒着,新生血管など(例:新生血管が5時から8時に散在).(2)上方,鼻側,下方,耳側(sup,nasal.,inf.,temp.)による位置の記載:色素沈着など(例:Sampaolesilineなど).d.周辺虹彩前癒着の記載(1)高さ:CB:毛様体,SS:強膜岬,Schl:線維柱帯色素帯,Schw:Schwalbe線.(2)形状:テント状,台形,マウント状,幅が広いなど.(3)範囲:方向(○時),範囲(○時~○時△分).(4)PASindex:周辺虹彩前癒着の割合を示す.全周で5時間のPASであれば5/12と記す.(5)圧迫の有無:圧迫により確認される所見の場合.e.部位と所見の記載(1)瞳孔縁:後房,水晶体前面の所見の記載.散瞳下では,水晶体,Zinn小帯,毛様体突起の所見も記載.(2)虹彩根部:Spaeth分類での記載(q型,r型,s型).(3)毛様体帯:毛様体帯の幅や色の異常を記載.(4)強膜岬.(5)線維柱帯:異常色素の沈着や脱色素,虹彩前癒着(PAS),小結節(nodule)などの記載.(6)Schlemm管:上強膜静脈圧の上昇による充血などの記載.(7)Schwalbe線:Axenfeld-Rieger症候群では索状,膜状の虹彩組織の付着などの記載.また,落屑緑内障ではSampaolesi線の記載.(8)手術創:緑内障手術術後の創の位置と状態,虹彩の癒着の有無の所見を記す.文献1)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreport2:prevalenceofprimaryangleclosureandsecond-aryglaucomainaJapanesepopulation.?????????????112:1661-1669,20052)布田龍佑:隅角の読み方①隅角の基本構造と隅角検査の意義.?????????????????????2:103-108,20013)北澤克明(編):隅角アトラス.医学書院,19954)Sha?erRN:Primaryglaucomas.Gonioscopy,ophthalmos-copyandperimetry.?????????????????????????????????????64:112-127,19605)ScheieHG:Widthandpigmentationoftheangleoftheanteriorchamber.???????????????58:510,19576)vanHerickW,Sha?erRN,SchwartzA:Estimationofwidthofangleofanteriorchamber.???????????????68:626-630,19697)SpaethGL,AruajoS,AzuaraA:Comparisonofthecon-?gurationofthehumananteriorchamberangle,asdeter-minedbytheSpaethgonioscopicgradingsystemandultrasoundbiomicroscopy.???????????????????????93:337-347,19958)田野保雄(編):眼科プラクティス4,眼科所見の捉え方と描き方,文光堂,2005(11)SchwSchlSSCBODOS図14隅角所見記録用紙と記入例CB:毛様体,SS:強膜岬,Schl:線維柱帯色素帯,Schw:Schwalbe線.右は周辺虹彩前癒着の位置と高さを記入したもの.この場合,10時半から1時に幅の広いSchwに付くPAS,5時にSchlに付く台形のPAS,6時半にSchwに付く台形のPAS,7時から8時にSSに付くマウント状のPASを認める.PASindexは6/12程度である.(文献8,p280,図3より)