監修=木下茂●連載250大橋裕一坪田一男250.年齢別角膜屈折矯正手術後の近視化小島美帆京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学近視は多くは学童期にもっとも進行し,学齢とともに進行速度が低下し,10代で進行がほぼ停止する.しかし,20代以降も近視が進行する例が少なからず存在する.本稿では筆者らが行った検討をもとに,年代別にみた角膜屈折矯正手術後の近視化について,眼軸長と屈折度数の観点から紹介する.●はじめに多治見スタディにおけるC40歳以上の近視の頻度は41.8%で,-5ジオプトリ(D)を超える強度近視がC8.2%を占める.世界的には近視の人口はC2050年までにC50億人に達すると予測されている.C●成人の近視進行近視の多くは学童期にもっとも進行するが,20代以降も近視の進行がみられる.単純近視(-1.0~-6.0D)の成人を対象にC10年間の変化を調べると,20代では-0.6D,30代では-0.39D,40代では-0.29D近視化していた1).また,近視(平均-3.0D)のコンタクトレンズ装用者を対象にC5年間の等価球面度数の変化を調べると,21.3%は-1.0以上の近視化がみられ,その割合を年齢別に見るとC20~25歳ではC34.9%,25~30歳では19.6%,30~35歳ではC13.6%,35~40歳ではC10.0%であった2).このようにC20代以降も近視の進行はみられ,20代とC30代を比較するとC20代のほうが近視の進行の程度が大きいことがわかる.C●屈折矯正手術後の眼軸長および等価球面度数の変化屈折矯正手術後の等価球面度数の変化については,Alioらによると術前-10.0D以下の症例(平均C33.2歳)においてCLaserinsitukeratomileusis(LASIK)術後の変化は平均-0.12±0.16D/年であった3).中村らはLASIKとCtrans-epithelialphotorefractivekeratectomy(tPRK)の術後C7年の等価球面度数変化について検討し,術後C6カ月からC7年の変化量は,LASIKでは-0.18±0.33D,tPRKでは-0.36±0.47Dであり,有意差は認めないがCtPRKでやや大きかったことを報告している4).一方,屈折矯正手術後の眼軸長変化については,屈折度数と比較すると既報は少なく,KamiyaらはCimplant-ablecollamerlens(ICL)を挿入した症例(平均C38.4歳,(87)C0910-1810/21/\100/頁/JCOPY術前屈折度数-10.64±2.61D,術前眼軸長C27.60C±1.18mm)の検討で,サブグループ解析として術前から術後6年の間の眼軸長変化を測定し,0.29C±0.43Cmm延長したとしている5).このほか,-6.0D未満,-6.0D以上でCLASIKを施行した群とCICLを施行したC3群に分けて術前後の眼軸長を測定した検討において,術後C5年の変化量はそれぞれC0.04C±0.07Cmm,0.04C±0.08Cmm,0.13C±0.12Cmmであったことが報告されている6).C●年齢別の角膜屈折矯正手術後の近視進行屈折矯正手術後の近視進行について,眼軸長の変化を調べた報告は少なく,また年齢別にみた報告はさらに少ない.筆者らは,LASIKまたはCepipolis-LASIK(epi-LASIK)を施行した症例C140例C280眼(平均年齢C30.6C±4.9歳)を対象に,20代とC30代の年齢別に術後眼軸長および等価球面度数の変化を検討した.術前の眼軸長および等価球面度数はC20代とC30代では有意差はなく,LASIKを施行した群(n=216)において,術後C1年から術後C5年のC4年間の眼軸長変化の平均値は,20代ではC0.059C±0.134mm,30代ではC0.027C±0.133Cmm(p=0.08),等価球面度数変化の平均値はC20代では+0.054C±0.256D,30代では+0.052±0.327D(p=0.93)であり,いずれもC20代とC30代の症例間に有意差を認めなかった(図1).一方,epi-LASIKを施行した群(n=64)においては,術後C1年から術後C5年のC4年間の眼軸長変化の平均値はC20代ではC0.124C±0.141Cmm,30代ではC0.094C±0.166Cmm(p=0.46),等価球面度数変化の平均値はC20代では-0.438±0.207D,30代では-0.259±0.454D(p=0.41)であり,LASIK群と同様にC20代と30代の症例間に有意差を認めなかった(図2).一般的にC20代とC30代を比較すると,20代のほうが近視の進行が大きいことを考えると,LASIKやCepi-LASIKに近視進行抑制効果がある可能性が示唆される結果であった.近視進行メカニズムは未だ明らかではなく議論のあるあたらしい眼科Vol.38,No.3,2021C325GroupAGroupBGroupAGroupBan=84n=132a28n=28n=362827.527.5眼軸長(mm)27眼軸長(mm)26.52625.52524.5242423.523.51234512345(n=216)(n=206)(n=204)(n=208)(n=216)(n=64)(n=62)(n=64)(n=62)(n=64)術後経過観察期間(年)術後経過観察期間(年)bGroupAGroupBbGroupAGroupB0.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8等価球面度数(D)-0.2-0.4-0.6-0.8-112345(n=80)(n=80)(n=72)(n=78)(n=78)術後経過観察期間(年)図1LASIK術後4年間の眼軸長と屈折値(等価球面度数)の変化a:GroupA(20代)とCGroupB(30代)で眼軸長の変化に有意差は認めなかった.b:GroupAとCGroupBで等価球面度数の変化に有意差は認めなかった.ところであるが,調節ラグ,軸外収差による遠視性デフォーカスが一因とされている.今回の検討においては,屈折矯正手術後に周辺網膜の遠視性軸外屈折が改善したことで近視進行が抑制された可能性がある.ただ,本検討では同年代で屈折矯正手術を行っていないコントロール群を設けておらず,さらなる前向き研究が必要である.この点に関しては,Sellaらが片眼のみ屈折矯正手術(PRKまたはCLASIK)を施行し,僚眼との等価球面度数の変化を比較したC3例について報告している7).このC3例においては術眼のほうが近視進行の程度が小さいという結果であった.現在,筆者らの関連施設でも屈折矯正手術が近視の進行に及ぼす影響を調べるため,まず片眼のみCLASIKを施行し,2年間各眼の近視進行を経過観察し,その後僚眼にもCLASIKを施行する臨床研究が進行している.今後,屈折矯正手術と近視進行の関連について新たな知見が得られることが期待される.326あたらしい眼科Vol.38,No.3,2021-112345(n=64)(n=34)(n=30)(n=34)(n=18)術後経過観察期間(年)図2epi.LASIK術後4年間の眼軸長と屈折値(等価球面度数)の変化a:GroupA(20代)とCGroupB(30代)で眼軸長の変化に有意差は認めなかった.b:GroupAとCGroupBで等価球面度数の変化に有意差は認めなかった.文献1)EllingsenCKI,CNizamCA,CEllingsenCBACetal:Age-relatedCrefractiveshiftsinsimplemyopia.JRefractSurgC13:223-228,C19972)BullimoreMA,JonesLA,MoeschbergerMLetal:Aret-rospectiveCstudyCofCmyopiaCprogressionCinCadultCcontactClensCwearers.CInvestCOphthalmolCVisCSci43:2110-2113,C20023)AlioJL,MuftuogluO,OrtizDetal:Ten-YearFollow-upofCLaserCInCSituCKeratomileusisCforCMyopiaCofCupCtoC-10CDiopters.AmJOphthalmolC143:46-54,C20084)中村葉,稗田牧,山村陽ほか:LaserCinCsituCKer-atomileusisとCtrans-epithelialphotorefractivekeratectomyの術後C7年の経過比較.日眼会誌120:487-493,C20165)KamiyaCK,CShimizuCK,CIgarashiCACetal:FactorsCin.uencingClong-termCregressionCafterCposteriorCchamberCphakicCintraocularClensCimplantationCforCmoderateCtoChighCmyopia.CAmJOphthalmolC158:179-184,C20146)山村陽,稗田牧,脇舛耕一ほか:屈折矯正手術後C5年の眼軸長変化.眼科手術28:417-421,C20157)SellaCS,CDurdevan-StrierCN,CKaisermanI:UnilateralCrefractivesurgeryandmyopiaprogression.JPediatrOph-thalmolStrabismusC56:78-82,C2019(88)