眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人田邉美香56.乳児血管腫の病態と治療九州大学大学院医学研究院眼科学分野乳児血管腫は乳幼児期に頻度の高い脈管性腫瘍であり,臨床的には赤色斑や青色の皮下腫瘤として触知し,眼部では弱視の原因になることがある.病理組織像は増殖活性のある内皮細胞の像であり,免疫染色であるGLUT-1が陽性となる.治療は非選択的Cb遮断薬であるプロプラノロールが第一選択薬である.●乳児血管腫とは乳児血管腫とは乳幼児期にもっとも頻度の高い良性の脈管性腫瘍であり,日本における乳児血管腫の有症率は出生児のうちC1.7%1)とされている.男女比は男:女=1:3~92)と女児に多く,発症部位は頭頸部がC60%,体幹C25%,四肢C15%とされるが,全身どこにでもできる可能性があり,内臓に発症する場合もある.血管内皮細胞が腫瘍性に増殖し,アポトーシスにより自然退縮するため2),一般的には生後C5.5~7.5週で急速増大し3),生後C5カ月までにピーク時のC80%の大きさに達する4).1歳を過ぎるころには増大傾向を失い,大部分はC5歳頃までに自然消退する(図1)が,未治療の場合,24.8~68.6%に瘢痕などの後遺症が残る5,6)ことが報告されており,またこの時期がちょうど視覚発達時期と合致するため,治療のタイミングを逃してはならない.C●血管性病変の分類乳児血管腫は,これまで一般に「いちご状血管腫」とよばれてきた疾患である.近年,「血管腫」「リンパ管腫」「血管性母斑」などと呼称されてきた脈管病変に関する根本的で体系的な分類として,InternationalCSocietyCforCtheCStudyCofVascular(ISSVA)分類が国際的に標準化されつつある2).ISSVA分類は国際血管腫・血管奇形学会のホームページ(http://www.issva.org/User-Files/.le/ISSVA-Classi.cation-2018.pdf)から閲覧可能である.それによると,血管内皮細胞の腫瘍性増殖があるものを「vasculartumor:管腫または血管性腫瘍」とし,血管内皮細胞の腫瘍性増殖がないものを「vascularCmal-formation:血管奇形あるいは血管形成異常」と分類する.乳児血管腫はCISSVA分類では「vasculartumors」>「Benign」に分類される.(85)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1乳児血管腫の経過図2乳児血管腫の臨床分類境界明瞭な赤色斑が認められる表在型(Ca)と,皮下に弾性でやや硬い境界が比較的明瞭な腫瘤として触知される深在型(Cb)に分類される.(a:マルホ株式会社提供)C●乳児血管腫の臨床像乳児血管腫は,欧米では表在型(super.cialtype)・深在型(deeptype)および混合型(mixedtype)といった臨床分類が一般的だが,わが国ではおもに局面型,腫瘤型,皮下型に分類される.表在型(図2a)は血管拡張や発赤といった初期症状ののち早期に隆起し,境界明瞭な赤色斑が認められる.弾性でやや硬く境界が比較的明瞭な一塊の腫瘤として触知され,擦過により容易に皮膚潰瘍化し,感染や出血がみられることがある.深在型(図2b)は,表面に皮膚病変がないため赤色斑や熱感はなく,弾性でやや硬い境界が比較的明瞭な腫瘤として触知される.あたらしい眼科Vol.36,No.11,2019C1427図3乳児血管腫のマクロ像ピンク色の柔らかい腫瘤であり,生検時も出血は少量であった.乳児血管腫は増殖性があることが特徴であり,過去C1~2週間と比較して腫瘤が増大しているか,また,1~2週間の経過観察を経て増殖性があるかどうかを確認する.また,局面型の場合は毛細血管奇形など,皮下型の場合はリンパ管奇形など,類似した病変を呈する血管奇形と鑑別することが重要である.C●乳児血管腫の病理乳児血管腫のマクロ像はピンク色の柔らかい腫瘤である(図3).組織像は毛細血管腫に類似しており,卵円形ないし曲玉状の血管内皮様細胞が密に増殖しており,増殖活性のある内皮細胞の像である(図4).血管の受動的拡張からなる海綿状血管腫とはまったく異なる組織であることがわかる.免疫染色でCGLUT-1陽性であることが乳児血管腫の特徴である.C●乳児血管腫の治療プロプラノロールは非選択的Cb遮断薬で,古くから高血圧,狭心症,不整脈などの治療薬として使用されていた.プロプラノロールの乳児血管腫に対する有用性は,ボルドー大学のCLeaute-Labrezeらが,乳児血管腫を合併する肥大型閉塞性心筋症患者にプロプラノロールを使用したことをきっかけに偶然発見され,2008年に論文報告されたことから広く認知されるようになった7).わが国でもC2016年に乳児血管腫治療薬プロプラノロール塩酸塩のシロップ製剤(商品名:ヘマンジオルシロップ小児用C0.375%)が承認された.「血管腫・血管奇C1428あたらしい眼科Vol.36,No.11,2019図4乳児血管腫の組織像(HE染色)毛細血管腫に類似しており,卵円形ないし曲玉状の血管内皮様細胞が密に増殖しており,増殖活性のある内皮細胞の像である.形・リンパ管奇形診療ガイドラインC2017」においても,「推奨度:1(行うことを強く推奨する),エビデンス:A(強い)」とされており,乳児血管腫に対して第一選択の薬剤である.しかし,プロプラノロールは低血圧,徐脈,房室ブロック,低血糖,気管支痙攣などの重篤な副作用を生じる可能性があるため,小児科医と連携のうえ,全身状態をモニタリングしながら慎重に投与する必要がある.文献1)HidanoCA,CPurwokoCR,CJitsukawaCKCetal:StatisticalCsur-veyofskinchangesinJapaneseneonates.PediatrDerma-tolC3:140-144,C19862)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドラインC20173)TollefsonMM,FriedenIJ:Earlygrowthofinfantilehem-angiomas:whatCparents’CphotographsCtellCus.CPediatricsC130:e314-320,C20124)ChangLC,HaggstromAN,DroletBAetal:Growthchar-acteristicsofinfantilehemangiomas:implicationsforman-agement.PediatricsC122:360-367,C20085)BaselgaCE,CRoeCE,CCoulieCJCetal:RiskCfactorsCforCdegreeCandtypeofsequelaeafterinvolutionofuntreatedheman-giomasCofCinfancy.CJAMACDermatologyC152:1239-1243,C20166)BaulandCCG,CLuningCTH,CSmitCJMCetal:UntreatedChem-angiomas:growthCpatternCandCresidualClesions.CPlastCReconstrSurg127:1643-1648,C20117)Leaute-LabrezeCC,CDumasCdeClaCRoqueCE,CHubicheCTCetal:PropranololCforCsevereChemangiomasCofCinfancy.CNEnglJMed358:2649-2651,C2008(86)