———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.26,No.5,20096630910-1810/09/\100/頁/JCLSアメリカの住宅バブルがはじけて世界の経済が大変な状況になっている.投資のことなど考えたくない人も多いと思う.僕も本当に損をして(個人的なセンスによるところも多いが),ほとほと嫌になっているのだが,そうした状況のなかでちょっと新しい考えのヒントになった本に出会ったので紹介したい.1999年にアンチエイジングを始めて125歳まで生きると決め,以来“125歳への経済学”をと考えて時間の5%を経済投資に使うことにした.実際には,月の初めに1日だけ投資のことを考える.最近の研究でお金のことをあまり考えすぎると,独立心は旺盛になるものの社会との一体感が損なわれるなどごきげんから遠ざかってしまう可能性が指摘されているので,考える時間はある程度制限したほうがいいようだ.しかしまったく考えないのもよくないので5%にしている.ちょっと前には勝間和代さんの“お金は銀行に預けるな”(光文社新書)を読んで納得した.そうか,銀行じゃだめなんだと思って,投資信託に投資してみたら世界不況になってしまって大損.勝間さんは今では投資の話をせずに“会社に人生を預けるな”(同じく光文社新書)という人生を語る人になってしまった.もちろん投資をしたのは自分であり,すべての責任は自分にあるので勝間さんの責任ではない.何年か前に知り合って講演会などに呼ばれたこともある高橋誠一さんが,昨年“金持ち大家さんになろう”(PHP研究所)を出版され,そのときに本を頂いて読んだ.高橋さんはアパマンショップを立ち上げた日本でも有数の土地建物の投資専門家である.そのときに,なるほど,大家さん経営とはそんなものかと思っていたが,続けて本書“お金持ち大家さんへの道”が出版されて,とても納得してしまった.最初の本を読んで実行した人たちのストーリーがたくさん載っているのだ.本誌第18巻5号の本欄で,ロバートキヨサキの“金持ち父さん,貧乏父さん”をとりあげたが,高橋さんの資産に対する考えもかなり似ている.とにかくキャッシュフローを生み出すものが“資産”であり,お金を生まないものは資産とは言えないというはっきりとした立場で書かれている.マイカー,マイホーム,金,ダイアモンドはお金を生まないので資産ではない.投資信託,株,預金は財産だが,年利で考えたときに0.3%から4%くらいの間なのであまり得策ではない.彼のお奨めはアパート,マンション経営.だいたい710%くらいの年利で回すことができるので資産としては有利だと言う.だいたいアパート経営なんて考えたこともないし,経営するという手間を考えると通常は無理だと思う.ところがこの本のなかに基本的にこうすればよいという方法が紹介されている.1)サブリースを組む2)利回りを710%としっかり考える(そのため中古がお奨め)3)駅から徒歩で15分以内5)自己資本を2,000万円以上それぞれの4項目について本を読んでなるほどと思った.サブリースを組むということはそのアパートを丸ごと20年間にわたって借り上げてもらって自分は何もしなくていいということ.もちろん手数料はとられるが,眼科医を本業とするわれわれには必要だ.こんなシステムがあるとは知らなかったので,とっても便利な世の中になったと思った.2番目の項目,3番目の項目は特に重要.自分が住みたいと思うものではなくて,利回りと駅からの近さで選ぶというのが大切だ.どんなにきれいで素敵なアパートでも駅から遠かったり,バスを使わないとだめなものは絶対にお奨めしないという.さらには(83)■5月の推薦図書■お金持ち大家さんへの道─これで安心!究極の個人年金づくり高橋誠一著(PHP研究所)シリーズ─88◆坪田一男慶應義塾大学医学部眼科———————————————————————-Page2664あたらしい眼科Vol.26,No.5,2009経済が悪くなったり,金利が上がっても損をしないようにしっかりと自己資本を用意することを奨めている.自己資本が2,000万円あると,2,000万円の借金をして4,000万円くらいのアパートが買える計算になるそうだ.利回りが8%として年間の収入は320万円.サブリースで12%の手数料を払うので実際は270万円.年間130万円を返済にあてたとしても(おおざっぱな計算ですみません.2,000万円を20年ローンで借りると月の返済はこのくらいでしょうか)140万円の収入となる.自己資本2,000万円に対して実際の収入が140万円ならちょうど7%の利回りで回せる計算だ.これなら確かに預金や投資信託より利率がいい.20年たって建物は古くなるが,土地は自分のものになるのでその分もプラスとなる.新しいアパートを建ててもいいし,売却してもいい.本のサブタイトルにあるようにこれは個人年金づくりとも言える.年間140万円ではちょっと生活できないが,高橋さんによれば数棟やればそれなりの金額になってよいという.高橋さんに直接“それじゃ,投資はすべて不動産がいいのですか?”と聞いたら,“坪田先生,もちろんそうですよ.これ以外にありますか?株で皆さん損しているでしょ”とずばっと答えられてしまった.うーん,僕でも知っているポートフォリオという言葉.投資はリスクを分散するためにいろいろなものにしたほうがいいという考え方からすると,すべて不動産というのは少々考えてしまう.しかしまったくやってみないのもつまらないと思い,実は15年間毎月貯めてきた純金積み立てと満期保険金を使って,初の“アパート経営”をやってみようかなと考えているところだ.どうなるかわからないが,125歳まで生きると,65歳の定年から先が60年間もあるのでこれらの経済を今から考えておくことは絶対必要だ.初めての挑戦をプッシュしてくれたという意味で,ちょっと異色ですがここにお奨めの本として紹介します.もし,これを読んで自分も個人年金のためにアパート経営をしてみようと思ったら,あくまで自分のリスクでお願いします.よーく高橋さんの話を聞いて,納得がいったらあくまで自分のリスクで(しつこくてすみせん)やってみてください.(84)☆☆☆