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硝子体手術のワンポイントアドバイス57.Tenon嚢下麻酔による脈絡膜皺襞(初級編)

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20082010910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに網膜硝子体手術ではしばしば手術時間が長くなるため,疼痛緩和のために術中にTenon下麻酔を追加することがある.このとき,注入した麻酔液によって眼球壁が圧排されて,脈絡膜皺襞をきたすことがある.絡膜皺襞の原因筆者らは過去に術中のTenon下麻酔の追加により,著明な脈絡膜皺襞をきたした4例を報告した1).いずれの症例も,球後麻酔を施行した後,術中にTenon下麻酔を追加した症例である(図1).4例に共通した特徴としては,瞼裂が狭いこと,眼軸が短いことがあげられる.このような症例では,球後麻酔を施行した時点ですでに眼窩内圧が上昇していることが多く,その後のTenon下麻酔の追加により,より眼球への圧迫が強くなった可能性が考えられる(図2).手術中に生じる脈絡膜皺襞の原因として,術中低眼圧,駆逐性出血,球後出血などが考えられるが,術中低眼圧を除けば,いずれもまれな合併症である.図1の症例は球後麻酔を約4ml注射し,その後にTenon下麻酔を約2~3ml追加している.この注入量はやや多いものの,通常の硝子体手術時に使用する麻酔量を大きく超過しているとはいえず,通常のTenon下麻酔によっても脈絡膜皺襞を生じる可能性があると考えられる.図1の症例も眼軸長がやや短い傾向にあり,このような症例では眼窩容積が通常より小さい可能性がある.中操作にける注意点筆者らが報告した4例では脈絡膜皺襞による術後視力への悪影響はみられなかった.しかし,本合併症をきたすと術中の操作が通常よりも困難となるので注意が必要である.黄斑円孔症例では内境界膜離は施行可能であるが,増殖糖尿病網膜症で複雑な増殖膜処理が必要な症(67)例では,手術の続行が困難になる可能性も考えられる.合併症の予眼軸が短く眼窩容積が少ないと予測される症例では,眼窩内圧を上昇させないように,球後麻酔やTenon下麻酔の液量を極力少なくする必要がある.また,今回の球後麻酔による鎮痛効果が十分に得られなかったためにTenon下麻酔を追加したが,初回の球後麻酔の技量を向上させることに加えて,最初からTenon下麻酔で手術を開始するなど臨機応変な対応が必要である.文献1)中泉敦子,南政宏,佐藤孝樹ほか:硝子体手術中のTenon麻酔追加によって脈絡膜皺襞を生じた4症例.眼科手術20:541-544,2007硝子体手術の●連載Tenon下麻酔による脈絡膜皺襞(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1硝子体術中所見眼底は全象限に著明な脈絡膜皺襞を認め,皺襞は黄斑部にも及んでいた.2脈絡膜皺襞の発生機序Tenon下麻酔追加により眼窩内圧が上昇し,眼球が外側より圧迫され脈絡膜皺襞を生じたと考えられる.

眼科医のための先端医療86.硝子体は不要なのだろうか?

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081990910-1810/08/\100/頁/JCLSMachemerらによって開発された硝子体手術は,その後の諸先輩方のたゆまぬ努力で,多くの疾患の治療を可能にしました.ところが硝子体を取り除くことそのものが網膜の機能にどのような影響を与えるのかはまだよくわかっていないのではないかと思います.たとえば,後部硝子体離の生じている黄斑浮腫眼に硝子体切除をして,見事に浮腫が消えた症例を経験されている硝子体外科医は多いのではないかと思います.しかしその機序はといわれると単純ではないように思われます.これまで考えられているメカニズムとしては,さまざまなサイトカインの除去,機械的な牽引の除去などが考えられています.このように羅列するともしかすると硝子体を最初から切除しておけば黄斑浮腫は予防できるということになります.(もちろんこれは手術手技そのものに伴う危険は度外視した議論です.硝子体があるおかげで若年者の網膜離は進行しにくいわけであり,また不幸にして白内障手術で後破損しても,しっかりした硝子体が存在していれば核落下までの時間がかせげるわけです.)硝子体の重金属汚染マグロなどの巨大魚は水銀が多く含まれており,最近妊婦への摂取に制限がかかりました.このほか金属汚染は人体にさまざまな有害現象をひき起こしますが,ヒト眼球の重金属濃度を調べた興味深い研究が米国から出されています1).高齢者の眼球には重金属が沈着しています.硝子体も例外ではなく,金属汚染がみられます.硝子体の重金属汚染の意義は不明ですが,加齢に伴って蓄積した場合網膜にきわめて有害な作用を与える可能性があります.白内障手術は短波長光線の透過率を上昇させ,網膜毒性を与えうる影響が懸念されています.しかし,一方で水晶体内の金属を除去することでもしかすると眼球そのものの加齢は抑制されるのかもしれません.環境汚染による鉛中毒は腎障害をひき起こし,その場合は2価金属のキレート剤(EDTA;エチレンジアミン四酢酸)の静脈注射で金属を除去すると腎機能が改善します2).したがって,われわれが日常的に行う硝子体手術では,硝子体という閉鎖空間から金属を排出させているとも考えられます.(65)ーズ第86回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊(慶應義塾大学医学部眼科)硝子体は不要なのだろうか?ab図1初診時の後眼部所見(a:右眼,b:左眼)67歳,男性.視力は右眼20/80,左眼20/20.右眼の強い変視を自覚.図2術後の経過(右眼)a:術後3カ月,b:術後6カ月.術後13カ月で視力20/30.CTCT———————————————————————-Page2200あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008興味深い1症例まだ慶應義塾大学で1例のみの経験なのですが,興味深い症例を経験しましたので報告いたします.軟性drusenとそれに伴う色素上皮離を認める加齢黄斑変性の患者です.非常に変視が強く何か治療がないかと希望されました.視力が非常に悪いときがあり(もう少し見えていそうですが),硝子体手術を施行しました.術前,術後の経過をみるとわかりますが,著明にdrusenが消えていっています3)(図1,2).先日のレチナの会でもこの場合の手術の奏効機序は何か,と質問が相次ぎました.まったく不明ですが,あえて推測するなら,drusenの貪食を手術が助長した,といえますでしょうか.しかしこのように硝子体手術のもつ意味というのはいまだに明らかになっていないといえるでしょう.まとめ今回,本稿のご依頼をいただき,最近経験した興味深い症例の機序を考えるうちにこのような考えになりました.今後も『硝子体切除の意味』に示唆を与える症例の蓄積,臨床・基礎研究が発展することを祈念しています.硝子体の切除が眼に本当にどんな影響を与えるかはまだ未知なのだと痛感します.文献1)ErieJC,ButzJA,GoodJAetal:Heavymetalconcentra-tionsinhumaneyes.AmJOphthalmol139:888-893,20052)LinJL,Lin-TanDT,HsuKHetal:Environmentalleadexposureandchronicrenaldisease.NEnglJMed348:277-286,20033)FuseyaM,ImamuaY,IshidaSetal:Regressionofmacu-lardruseninapatientwithage-relatedmaculardegener-ation.RetinalCasesandBriefReports1:160-162,2007(66)■「硝子体は不要なのだろうか?」を読んで今は部眼の今村裕硝子体硝子体手術い興味深いで硝子体はまではのいとのののなをいまかをと硝子体ので子といいまか硝子体手術は硝子体症症なのい手術ので「いを」という見かめでかの硝子体手術のは今村のいでうののめのというめなでのいま眼ののいをだのでなといのいとなまだのははいのをという味いとま今村「重金属を」のを眼をままとうをめので硝子体手術いというをいまのは今後の硝子体手術のををんでいうま今とのというのをまか今村のうなの味のとはめででうなまでのをめ手と要だかでのをうなを今後うめでのををののをかのまのではないでうか?今の今村のの手術のををのかをま山部山下英俊

新しい治療と検査シリーズ179.DESK(Descemet’s Stripping and Endothelial Keratoplasty)

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081970910-1810/08/\100/頁/JCLSりの約150μmを移植片として用いる.なお,アメリカからの輸入角膜を用いる場合,すでにマイクロケラトームでフリーキャップを作製してあるプレカットドナーをしいとシリーズ(63)バックグラウンド角膜移植は100年以上の歴史をもつ手術である.長年全層角膜移植術が行われてきたが,移植適応疾患としては全層に及ぶ疾病より,角膜の上皮・実質・内皮いずれかに傷害を受けているものが圧倒的に多い.そこで傷害を受けている部位のみを移植する角膜パーツ移植の概念が生まれ,近年では術式や手術器具も洗練されてきた.輪部移植や培養上皮移植の上皮パーツ移植,層状角膜移植や深層層状角膜移植の実質パーツ移植と同様に,内皮のみを移植する方法がさまざまに開発されてきた.ELK(endotheliallamellarkeratoplasty),DLEK(deeplamellarendothelialkeratoplasty)などに続いて開発されたDSEK(Descemet’sstrippingandendothelialker-atoplasty)は,最近わが国でも数多く行われている術式である.新しい治療法DSEKはPriceらによって報告された内皮移植術である1,2).レシピエントのDescemet膜を離・除去し,マイクロケラトームなどを使って用意したドナー内皮移植片を前房内に挿入する.その後前房内を空気で満たして移植片をレシピエント角膜に接着させる.本術式の適応疾患は水疱性角膜症であるが,特に偽水晶体眼が良い適応である(表1).実際の手術法レシピエントの内皮は,Shinskyフックの先端を逆向きに曲げたものなど鈍的な先端でDescemet膜を穿孔させながら円形に離する.かつて白内障手術の前切開法として行われていたcanopener法に似た手技である.一方ドナーは,人工前房装置に固定してマイクロケラトームを使って350μmのフリーキャップを作製し,残179.DSEK(Descemet'sStrippingandEndothelialKeratoplasty)プレゼンテーション:冨田真智子東京歯科大学眼科学教室コメント:小林顕金沢大学大学院医学系研究科視覚科学1DSEK術前(上)・術後(下)レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症の症例.本症例では白内障との同時手術を施行した.表1DSEKの適応=水疱性角膜症良い適応偽水晶体眼比較適応白内障合併眼(同時手術を行う)適応がむずかしい例無水晶体眼緑内障合併例虹彩前癒着のある例角膜実質混濁の強い例———————————————————————-Page2198あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008用意してもらうことも可能である.マイクロケラトームがない施設などでは,人工前房装置にドナーを固定してスパーテルで層間切開を行うことで同様に移植片を作製できる.そのように作製したドナー移植片は,レシピエントのDescemet膜離範囲に合わせて通常の全層角膜移植術と同様にトレパンで打ち抜き,ドナー角膜内皮ディスクを作製する.ドナー組織は強角膜切開創より挿入するが,組織を半分に折ることで約5mmの小切開から挿入することができる.DSEKを成功させるうえで一番重要なのが,ドナーの接着である.手術終了時に空気でドナーをレシピエント実質に押しつける.前房内を完全に空気で置換した状態で約10分間待つとよいとされている.層間に房水が残っていると翌日までにドナーが偏位する確率が高くなる.そのため,レシピエント角膜ベッドの周辺部実質を「毛羽立たせる」ことでやや厚みをつける手技,ドナー角膜を挿入後にホスト角膜の表面をやや強めになでるようにして層間の水分を前房内へ圧出する手技,ドナー角膜を挿入後ホスト角膜にメスで穴を開けて層間の水分を眼外へ排出する手技などを加えることで生着を上げる工夫をしている3).術終了時には前房内の空気を少し抜いて,術後の眼圧上昇を予防する.本方法の良い点DSEKでは角膜前方のカーブが保たれるため角膜の屈折が手術によって変化する程度が少ない1).手術により惹起される不正乱視は少なく,さらに白内障との同時手術および2期的手術において眼内レンズの計算が合いやすいことが利点となる.他にも角膜を縫合しないため縫合糸に伴う感染などの合併症を回避できること,約5mmの強角膜小切開で手術が可能なため従来の角膜移植と比較して打撲など外力に強いことなども利点としてあげられる.また,全層角膜移植術と異なりopenskyにならないため,術中駆逐性出血や術後眼内炎のリスクを軽減できる.文献1)PriceFWJr,PriceMO:Descemet’sstrippingwithendo-thelialkeratoplastyin50eyes:arefractiveneutralcorne-altransplant.JRefractSurg21:339-345,20052)PriceFWJr,PriceMO:Descemet’sstrippingwithendo-thelialkeratoplastyin200eyes:Earlychallengesandtechniquestoenhancedonoradherence.JCataractRefractSurg32:411-418,20063)TerryMA,HoarKL,WallJetal:Histologyofdisloca-tionsinendothelialkeratoplasty(DSEKandDLEK):alaboratory-based,surgicalsolutiontodislocationin100consecutiveDSEKcases.Cornea25:926-932,2006(64)☆☆☆本方法にするメント近年,特に欧米において爆発的な普及を遂げているDSAEKへの礎を築いたのはオランダのMellesであり,「縫合糸を使用しなくても角膜内皮組織は空気タンポナーデによって角膜裏面に接着可能であること」と,「ホスト角膜の実質を手動で層状離しなくても,Descemet膜と内皮のみを除去すればよい」という2つの発見を行った.当院でも,惹起乱視は全層移植に比較してごくわずか(<0.5D)であり,ほぼ全例で0.5以上の矯正視力が短期間で得られ,1.0以上の症例も散見されるなど,良好な臨床成績が得られている.ただし,わが国では,レーザー虹彩切開術後水疱性角膜症に代表される狭隅角眼や末期水疱性角膜症などDSAEK困難症例が多い.また,術後のグラフト前房内落下,primaryfailure,空気瞳孔ブロック,ドナー挿入に伴う内皮の減少などDSAEK特有の合併症は克服すべき課題であり,さらなる手術手技の改良や手術補助器具の開発が望まれる.

眼感染症:市中型MRSAによる眼感染症

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081950910-1810/08/\100/頁/JCLSブドウ球菌は常在細菌として,健康な状態では病原性を発揮せずに皮膚や眼表面に存在する.しかし,ホストの免疫力低下あるいは薬剤投与などによって常在細菌叢のバランスが崩れると,一定の常在細菌が増殖して眼感染症を発症する(本シリーズの前回で記載).このような常在細菌による感染症の代表はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症であり,高齢,長期入院,アトピー,ステロイド長期使用などでの日和見感染として知られている.しかし近年は,薬剤投与歴,入院歴のない健康な成人あるいは小児に,突然にMRSA感染症を発症することがあり,大きな問題となっている.これらは市中型MRSAによる感染であり,従来われわれが理解しているMRSA感染とは異なる病態である.MRSAの分類MRSAには,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が有するDNAに加えて,薬剤耐性に関与する遺伝子がカセットのように挿入されている.この遺伝子はSCCmec(staphylococcalcassettechromosomemec)とよばれ,塩基配列によって5型に分類される1).SCCmecのタイプⅠ,ⅡまたはⅢを有する菌は病院型MRSA(healthcare-associatedMRSA:H-MRSA)であり,従来型の多剤耐性を有するMRSAである.一方で,タイプⅣ,Ⅴを有する菌は市中型MRSA(community-acquiredまたはcommunity-associatedMRSA:C-MRSA)とよばれ,SCCmecのサイズが小さく,多剤耐性ではない代わりに容易に他の株に遺伝子が挿入される.市中型MRSAは弱毒菌がほとんどであるが,白血球を壊す毒素であるPVL(Panton-Valentineleucocidin)をつくる強毒菌は重篤な感染症をひき起こす.1990年代後半に,米国で劇症型の肺炎で4名の小児が死亡したことから市中型MRSAが注目されるようになり,全例PVL(+)であった.日本では2006年に1歳の男児が市中型MRSAによる肺炎を発症し,国内初の死亡例となった.中型MRSAと病院型MRSAの比較市中型MRSAは,病院型MRSAの変異により生じたものではなく,あらたに病院外で発生したと考えられている.このため病院型MRSAとは異なった種々の性質があるが,最も注意すべき点は,健康な小児や成人が市中型MRSAを有すること,強毒株があり劇症型の感染症を生じうることである.ただし,病院型MRSAとは違って,あらゆる抗菌薬が効かないということはなく,感受性のある薬剤が存在する(表1).MSSA,病院型MRSA,市中型MRSAを比較すると,MSSAは増殖力が大きく短時間で感染が増悪するが,感受性を有する抗菌薬が多いため比較的容易に軽快,治癒する.病院型MRSAは増殖力がMSSAより劣り,弱毒であることが多いが,ホストの免疫力が低いことと薬剤耐性を有するために難治である.市中型MRSAは(61)眼感染アレーセー感染症と生●連載②監修=木下茂大橋裕一2.市中型MRSAによる眼感染症外園千恵京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は,健康な成人または小児における眼感染症の起炎菌となる.多くは弱毒性であり中等度の薬剤耐性を示すが,毒素をつくる強毒株では劇症型の感染症を生じて失明の原因となる.あらゆるブドウ球菌感染が市中型MRSAで生じる可能性があり,今後の広まりに注意が必要である.表1市中型MRSAと病院型MRSAの比較病院型市中型病院に市中感染中にると———————————————————————-Page2196あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008MSSAと同等の増殖力を有し,強毒株では重篤な感染症が短時間で進行し,薬剤耐性を有するがゆえに致死的になりうる.中型MRSAによる眼感染症眼科領域では2000年代後半になり市中型MRSAによる眼感染症の報告が相ついだ2,3).眼瞼膿瘍,結膜炎,角膜炎など,いわゆるブドウ球菌感染症で生じるものはすべて,市中型MRSAによっても発症する.市中型MRSAによる眼窩蜂窩織炎で両眼を失明した症例があり2),健康な小児や成人の眼窩蜂窩織炎には注意が必要である.MSSA,病院型MRSA,市中型MRSAともにブドウ球菌感染としての眼所見は類似している(図1).患者背景と経過から起炎菌を類推し,病巣部の塗抹鏡検,細菌培養検査でMSSAかMRSAかを同定する.病院型,市中型の鑑別には遺伝子検査を要するが,臨床的には薬剤感受性がわかればよい.後のと対応市中型MRSAは,病院とは無縁の健康な人々に次第に広がっていると考えられる.MRSAは日和見感染であるという先入観をもつと,重篤な市中型MRSA感染症において診断を誤りかねない.ただし,強毒株はまだ少ないと考えられ,過剰に心配する必要はない.起炎菌を同定して薬剤感受性を確認するという感染治療の基本に従えば,市中型MRSAに遭遇しても対応を誤ることはないであろう.文献1)ItoT,KuwaharaK,HiramatsuK:Staphylococcalcassettechromosomemec(SCCmec)analysisofMRSA.MethodsMolBiol391:87-102,20072)RutarT,ZwickOM,CockerhamKPetal:Bilateralblind-nessfromorbitalcellulitiscausedbycommunity-acquiredmethicillin-resistantStaphylococcusaureus.AmJOph-thalmol140:740-742,20053)RutarT,ChambersHF,CrawfordJBetal:OphthalmicmanifestationsofinfectionscausedbytheUSA300cloneofcommunity-associatedmethicillin-resistantStaphylococ-cusaureus.Ophthalmology113:1455-1462,2006(62)☆☆☆図1市中型MRSAによる角膜炎Sjogren症候群患者のハードコンタクトレンズ使用者に生じた軽度の細胞浸潤と角膜上皮欠損.キノロン系抗菌薬の点眼と眼軟膏を投与し,数日で治癒した.

ベーチェット病の眼病変:インフリキシマブ:難治性ベーチェット病の新しい治療

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081930910-1810/08/\100/頁/JCLS2007年1月に承認されたインフリキシマブ(レミケードR)について紹介する.ベーチェット病で難治性網膜ぶどう膜炎を有する患者は,どのぶどう膜炎専門外来にも数人はいると思う.ベーチェット病に対して,これまでわが国で利用できた薬剤はコルヒチンやシクロスポリンであり,それだけで炎症発作が十分に抑制されていないむずかしい症例が依然として目立った.そこで,新しいタイプの治療「生物学的製剤療法」が登場した.生物学的製剤療法は,人体に自然に存在する因子,たとえばサイトカインをターゲット(的)にして,各疾患にかかわる因子の活動性を促進あるいは抑制するという治療法である.C型肝炎に対するインターフェロンa(IFN-a)は,生物学的製剤療法として最も古い例である.C型肝炎の場合は,IFN-aの活動性を高めるため,組換え技術により製造されたIFN-aを投与している.また眼科領域では,加齢黄斑変性に合併する脈絡膜新生血管に対して,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)というサイトカインの活動性を抑制するモノクローナル抗体(bevacizumab)あるいは抗体のFab部分(ranibizum-ab)が生物学的製剤として硝子体内に注射されている.(59)インフリキシマブは,最初に関節リウマチやクローン病で有効性が確立された.ぶどう膜炎領域では,数年前からわが国ではベーチェット病における治験が施行され,海外ではさまざまなぶどう膜炎あるいは強膜炎に対して使用されており,その有用性が報告されている13).従来より非感染性ぶどう膜炎を含めたいわゆる「免疫疾患」には腫瘍壊死因子a(TNF-a)という炎症系サイトカインの関与が知られている.インフリキシマブはTNF-aに対するモノクローナル抗体であり,おもに2つの作用をもっている(図1).一つは,インフリキシマブが可溶型TNF-aと結合することにより,可溶型TNF-aと細胞膜上TNF-aレセプターの結合をブロックすることである.もう一つは,インフリキシマブは細胞膜上に存在するTNF-aと結合することにより,TNF-aを発現する細胞に傷害が生じ,結果としてTNF-aの活動性が抑制されるのである.インフリキシマブは,ヒト化されたマウス抗ヒトTNF-aモノクローナル抗体(キメラ型モノクローナル抗体)であり(図2),マウス由来蛋白質に対するアレルギーのある患者には使用できない.さらに,インフリキ岡田アナベルあやめ杏林大学医学部眼科ベーチェット病の眼病変セミナー監修/岡田アナベルあやめ園田康平1.インフリキシマブ:難治性ベーチェット病の新しい治療インフリキシマブレミー病の治療用難治性ベーチェット病ししのし作用し用ベーチェット病難治性の治療しインフリキシマブの構造作用用の代表例TNF-aとの結合部H鎖L鎖可変領域(マウス由来)25%定常領域(ヒト由来)75%FabFc抗体アイソタイプ:IgG1分子量:約149,000交差反応性:チンパンジーTNF-a図2インフリキシマブの構造(提供:田辺三菱製薬株式会社)TNF-a産生細胞(活性化マクロファージなど)可溶型TNF-a②受容体に結合したTNF-aの解離①可溶型TNF-aへの結合・中和③TNF-a産生細胞の傷害(ADCC,CDC)膜結合型TNF-aTNF-a受容体TNF-aターゲット細胞傷害インフリキシマブ(血管内皮細胞,免疫細胞など)図1インフリキシマブの作用機序(提供:田辺三菱製薬株式会社)———————————————————————-Page2194あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(60)シマブ投与により感染症に対する抵抗力が低下するため,結核や他の活動性感染症を有する患者への投与は禁忌である.また,生物学的製剤療法では蛋白質を利用するため,これに対する免疫反応を誘発し,併発的に抗核抗体などの自己抗体あるいはインフリキシマブ薬剤そのものに対する抗体が発現することがある.これらの抗体の発現頻度は,インフリキシマブの投与期間あるいは用量に依存する4).しかし,自己抗体陽性となる患者には,全身性エリテマトーデスのような膠原病が実際に発症する可能性が低いといわれている.インフリキシマブに対する抗体が生じる場合は,頭痛,発熱などのような投与時反応が生じやすい可能性もある5).インフリキシマブを投与されている患者に,多発性硬化症や他の脱髄疾患が報告されており6),この副作用も本剤による免疫調整の関与が疑われている.そして,インフリキシマブ投与によりうっ血性心不全が悪化する可能性があるため,心不全の既往歴のある患者には使用できない.インフリキシマブ投与による副作用の詳細については,次回に述べることにする.初回投与前に,内科によく相談し,活動性感染症,特に未治療の結核の有無について検討する必要がある.また,投与の際,投与時反応を起こす頻度は低くないので,眼科での対応が不十分と考えるときには膠原病科や他の内科外来で投与を行うことを勧める.筆者らはこのような投与前準備のもと,従来治療に難渋した症例にレミケード療法を開始したところ,短期経過観察期間にて大多数の症例に著効が得られた.そのうちの一例を以下に提示する.1999年6月11日初診時から,シクロスポリンにステロイド,メトトレキサートなどを併用したにもかかわらず,右眼の眼底発作をくり返した難治症例で,右眼に続発緑内障も発症し,2006年にほぼ失明となった.その頃,左眼にも眼底発作がみられるようになり,2007年3月26日よりインフリキシマブの治療を開始した.その後,シクロスポリン,ステロイド,メトトレキサートの用量を漸減し,2008年1月15日現在,経過は良好で眼炎症発作はみられていない.インフリキシマブ治療開始前と3カ月後(両方とも非発作時に撮影)のフルオレセイン蛍光眼底造影検査では,乳頭蛍光漏出および毛細血管からのびまん性蛍光漏出が軽減したことがみられ(図3),炎症発作の抑制効果以外にも,背景的な炎症も抑制されることが示唆された.ベーチェット病による難治網膜ぶどう膜炎は,比較的若い男性に多く,視力が低下した場合,就業能力に大きな影響を及ぼすことがある.このような症例に,コルヒチンやシクロスポリンの投与にもかかわらず3カ月から半年程度以内に視力に影響を及ぼす眼発作が生じる場合,より強力な治療が望まれるためインフリキシマブ治療を検討することは妥当である.しかし,現状ではインフリキシマブにおける十分なエビデンスが集積されておらず,引き続き研究されるべき課題の一つである.文献1)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Ecacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationofiniximabinBehcet’sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.JRheu-matol31:1362-1368,20042)SuhlerEB,SmithJR,WertheimMSetal:Aprospectivetrialofiniximabtherapyforrefractoryuveitis:prelimi-narysafetyandecacyoutcomes.ArchOphthalmol123:903-912,20053)SobrinL,KimEC,ChristenWetal:Iniximabtherapyforthetreatmentofrefractoryocularinammatorydis-ease.ArchOphthalmol125:895-900,20074)MieleE,MarkowitzJE,MamulaPetal:Humanantichi-mericantibodyinchildrenandyoungadultswithinam-matoryboweldiseasereceivinginiximab.JPedGastro-enterolNutr38:502-508,20045)HanauerSB,WagnerCL,BalaMetal:Incidenceandimportanceofantibodyresponsestoiniximabaftermain-tenanceorepisodictreatmentinCrohn’sdisease.ClinGastroenterolHepatol2:542-553,20046)TannoM,NakamuraI,KobayashiSetal:New-onsetdemyelinationinducedbyiniximabtherapyintworheu-matoidarthritispatients.ClinRheumatol25:929-933,2006図3代表例のフルオレセイン蛍光眼底造影所見(34歳,男性)インフリキシマブ治療開始前と比較し,3カ月後では乳頭蛍光漏出および毛細血管からのびまん性蛍光漏出が軽減した.インフリキシマブ開始前インフリキシマブ開始3カ月後

緑内障:瞳孔ブロックと原発閉塞隅角

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081910910-1810/08/\100/頁/JCLS瞳孔ブロックは原発閉塞隅角の中心的機序としてよく知られてきた.しかしアジア民族に多い慢性タイプの閉塞隅角においては,レーザー虹彩切開術後の眼圧コントロールや暗室うつむき負荷試験,そして超音波生体顕微鏡による形態的な検討などから,機序は決して瞳孔ブロックだけではなく非瞳孔ブロック機序とのマルチメカニズムが多いことも最近認識されるようになってきた.その一方で,急性原発閉塞隅角症(APAC)の発症において瞳孔ブロックはきわめて中心的な役割を果たし,瞳孔ブロックを解除することは発作を解除し予防する.このように,閉塞隅角に対する治療を考えるとき目的とする機序によってとるべき方針が異なると考えられ,より詳細な病態理解は臨床での治療成果に結びつくであろう.瞳孔ブロックとは虹彩と水晶体前面との接触抵抗であり,これにより生じる前後房間の圧格差によって虹彩は前方に弓状に膨隆し隅角を狭細化する(図1).選択的に瞳孔ブロックを解除する治療(レーザー虹彩切開術,周辺虹彩切開術)を行えば,術後虹彩は前方膨隆が消失して平坦化するので,その平坦化した分だけ隅角は開大することになる(図2).したがって,瞳孔ブロックを解除する治療の効果,必要性は虹彩の前方膨隆が大きい症例ほど大きくなるし,逆に前方膨隆が少ない症例ほど小さくなるであろう.孔ブロックによる虹彩前方膨隆の測定筆者らは虹彩の前方膨隆を超音波生体顕微鏡による隅角画像を用いて定量的に測定した1).この前方膨隆は原発閉塞隅角症または同緑内障の症例において決して均一にしかも全症例で認められるものではなく,0mmから0.4mmまで非常に大きな個体差を認める(図3).特に(57)載緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄92.瞳孔ブロックと原発閉塞隅角野中淳之神戸市医療センター中央市民病院眼科原発閉塞隅角,特に急性原発閉塞隅角症において瞳孔ブロックは中心的な役割を果たし,瞳孔ブロックの解除は発作を解除し予防する.現在まで瞳孔ブロックの存在はこのような治療効果によってのみ確認され,定量的な評価はほとんど不可能であった.そこで筆者らは超音波生体顕微鏡を用いて簡便に瞳孔ブロックの定量評価を試みている.図1超音波生体顕微鏡による隅角画像瞳孔ブロックにより,虹彩は前方に弓状に膨隆し隅角を狭細化する.2図1と同一症例のレーザー虹彩切開術後選択的な瞳孔ブロック解除により,虹彩は前方膨隆が消失して平坦化し,その平坦化した分だけ隅角は開大する.———————————————————————-Page2192あたらしい眼科Vol.25,No.2,20080.3mm以上の強い膨隆を認めたのは約46%であり,逆に膨隆が非常に弱い,もしくは膨隆を認めない症例では程度の差こそあれ,水晶体要因やプラトー虹彩機序などの非瞳孔ブロック機序も閉塞隅角に大きくかかわっている可能性を示唆する.ただし,虹彩前方膨隆の測定とは対照的に,非瞳孔ブロック機序としてよく説明されるプラトー虹彩機序の程度は,画像から定量評価するのは今のところ困難である.理論上,瞳孔ブロック力は中心前房深度に相関するものであり,浅前房ほど強まる.筆者らの検討でも同様に,瞳孔ブロックによる虹彩前方膨隆は中心前房深度に有意な負の相関を示していた1)(図3).さらに,APAC(当科で精査後に,やむをえない理由で発症した)症例の発症前所見をのちに調べてみると,発症前に虹彩前方膨隆はすべての症例で0.3mm以上と非常に強かった.現在まで中心前房深度が浅いほどAPACの発症リスクが高まることはよく知られてきたが,筆者らのデータを考え合わせると,中心前房深度が浅いほど瞳孔ブロック力が強まり,虹彩も前方膨隆が強まって隅角が閉塞しやすくなるために,APACが発症しやすくなっていると考えられる.この結果から,虹彩前方膨隆の測定はAPACの発症リスク評価に有用と考え,さらに他のパラメータ(中心前房深度や暗室うつむき試験)と組み合わせることでこのリスク評価に役立てている(野中淳之ほか,2005年日本緑内障学会).虹彩の前方膨隆の程度には瞳孔ブロック力だけでなく,虹彩の剛性も関係すると考えられる.同等の瞳孔ブロック力が存在しても虹彩の剛性が強いほど虹彩は前方膨隆しにくくなる.虹彩の厚さによっても剛性は異なってくるであろう.したがって,虹彩の前方膨隆の測定がそのまま瞳孔ブロック力の測定になっているというわけではない.しかし,理論上瞳孔ブロック力が中心前房深度に相関するものであることが筆者らの虹彩の前方膨隆のデータと一致することを考えると,虹彩の前方膨隆は瞳孔ブロック力に大きく依存していると考えられる.このように,瞳孔ブロック力,そしてその結果としての虹彩の前方膨隆を検討することは,病態,治療効果や適応などを考えるうえで大いに有用である.今後直接的な瞳孔ブロック力の測定や,虹彩の剛性についての理解が進むことにも期待したい.文献1)NonakaA,IwawakiT,KikuchiMetal:Quantitativeevaluationofirisconvexityinprimaryangleclosure.AmJOphthalmol143:695-697,2007(58)☆☆☆図3虹彩前方膨隆と中心前房深度の関係虹彩前方膨隆値(mm)は原発閉塞隅角症(緑内障)において0mmから0.4mmまで非常に大きな個体差を認めた.虹彩前方膨隆値と中心前房深度の間には有意な相関を認め(p<0.01,r=0.57),浅前房ほど瞳孔ブロックによる虹彩の前方膨隆は強まっていた.(文献1より許可を得て転載)01020304050(眼):0:0.1:0.2:0.3:0.41.4以下1.51.61.71.81.922.12.22.32.42.52.62.7中心前房深度(mm)

屈折矯正手術:Epi-LASIKの術後成績と評価

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081890910-1810/08/\100/頁/JCLSエキシマレーザーを使用した屈折矯正手術は現在,術後の疼痛の少なさや効果の速さ,矯正精度の高さなどから手術の主流はなんといってもLASIK(laserinsitukeratomileusis)である.強度近視などLASIKの適応とならない症例に対する屈折矯正手術の一つとして,わが国でEpi(epithelial)-LASIKが施行されはじめて約3年が経過しようとしている1,2).Epi-LASIKとは,エピケラトーム(図1)を使って角膜上皮フラップを作製し,Bowman膜より直接レーザー照射を行い,再度フラップを戻す手術方法である.正確にBowman膜を露出させてレーザー照射を行うため,LASIKと比べてもより精密で繊細な術式であり,術後高次収差の誘発などについて有利な手術である3).反面,surfaceablationの一手技である以上,上皮フラップの生着を一部分では認めるものの,術後の疼痛についてはLASIKのようにはいかずやはり痛みを訴えることがあり,術直後の裸眼視力回復についてもある程度の日数を必要とすることが多い.上皮フラップにできる余剰部分を切除,染色して実際に観察したところ,基底細胞が死細胞として認められる症例があることが証明されている4,5).これら術後早期の諸問題は依然Epi-LASIKに残された課題ではあるものの,上皮フラップの生着率向上に関しては現在も果敢に挑戦を続けており,成果の結実を信じている.では,術後中期以降の経過はどうであろうか.実際にEpi-LASIKを施行して経過観察できた症例のデータをみてみる.対象は2004年11月から2005年10月の1年間にバプテスト眼科クリニック(当院)においてEpi-LASIKを施行し,18カ月間経過観察できた58例103眼(平均年齢36.4歳)である.術前の等価球面度数6.6(1.5~11.75)D,術前ケラト値43.8(40.75~46.5)D,術前角膜厚536.3(449~629)μmであった.術後の屈折値,裸眼,矯正視力を,術後1週間,1,3,6,12,18カ月の順で示す.屈折値は+0.28(±1.1)D,+0.32(±0.82)D,+0.16(±0.80)D,+0.04(±0.74)D,+(55)屈折矯正手術ースキアップ●連載監修=木下茂大橋裕一坪田一男93.EpiLASIKの術後成績と評価中井義典稗田牧バプテスト眼科クリニック現在ではsurfaceablationの一手技として施行されるEpi-LASIKについて,実際の症例における中長期的な経過を検討する.これまでのtransepithelialphotorefractivekeratectomy(t-PRK)に比べると術後球面収差の増加,ヘイズの抑制において有利な結果が出ている.今後さらに上皮フラップの生着率を向上させ,術直後の視力回復,疼痛への対応を要す.acdb1各種エピケラトームa:EpiLift(Gebauer/VisiJet),b:Epi-K(MORIA),c:AmadeusⅡ(AMO),d:CenturionSES(NorwoodEyecare).図2EpiLASIK術後裸眼視力の経過術前1W1Y6M1Y6M3M1MlogMAR視力-0.4-0.200.20.40.60.811.21.41.61.8———————————————————————-Page2190あたらしい眼科Vol.25,No.2,20080.03(±0.86)D,0.07(±0.61)Dであり,裸眼視力は少数視力0.76,1.01,1.14,1.21,1.09,1.23(図2),矯正視力が同様に0.91,1.25,1.39,1.43,1.38,1.44であった.他の屈折矯正手術と比べてもちろん遜色なく,少なくとも中期的には経過が安定していると考えられる.また,surfaceablationにおいて常に大きな問題として取り上げられる上皮下混濁(ヘイズ)については,術後早期に非常に淡い混濁が認められる症例があるものの(図3),これまでに行ってきたtransepithelialphotore-fractivekeratectomy(t-PRK)と比較して長期にヘイズが残存することはまれで,特徴的な発生の仕方がみられる(図4).当院では点眼を術後数カ月以上かけて漸減しながら使用しているが,点眼のコンプライアンスさえ良ければ,視機能に大きく影響を与えるようなヘイズは生じないのではないかと考えている.Epi-LASIKをはじめとした角膜屈折矯正手術のみならず,有水晶体眼内レンズの普及など,今までLASIKの適応にならなかった症例に対する屈折矯正手術は確実に増加し,進化している.どの術式が最も優れた術式かを論ずることは肝要であるが,現時点で明確な評価は困難であろう.一番のポイントは,現在施行可能な術式のアップデートに努め,毎回症例ごとに最も適した術式を患者本人に示し,術式を決定することにあると考える.そうして新しい手術手技の適応が拡大してゆけばひいては,通常のLASIKの適応さえも,今までよりさらに安全でリスクの少ないものに変化していくのではないであろうか.文献1)PallikarisIG,NaoumidiII,KalyvianakiMIetal:Epi-LASIK:comparativehistologicalevaluationofmechanicalandalcohol-assistedepithelialseparation.JCataractRefractSurg29:1496-1501,20032)PallikarisIG,KalyvianakiMI,KatsanevakiVJetal:Epi-LASIK:preliminaryclinicalresultsofanalternativesur-faceablationprocedure.JCataractRefractSurg31:879-885,20053)中井義典,稗田牧:Epi-LASIKの成績.IOL&RS20:364-366,20064)中司美奈,谷岡秀敏:EpithelialLaserInSituKeratomileu-sis(Epi-LASIK)の病理.IOL&RS20:244-247,20065)TaniokaH,HiedaO:Assessmentofepithelialintegrityandcellviabilityinepithelialapspreparedwithepi-LASIKprocedure.JCataractRefractSurg33:1195-1200,2007(56)☆☆☆図3ヘイズ(術後3カ月)Fantes分類のスコア1にも相当しないごく淡いヘイズを認めることがある.(スコア0.5または0.25と表現)図4ヘイズ出現の比較(Epi-LASIKとt-PRK)Epi-LASIKではt-PRKに比べて術直後の淡い混濁が目立つが,6カ月までに消失している.Epi-LASIKn=103t-PRKn=88:0~0.25:0.5:1:2:0~0.25:0.5:1:2120100806040201001W1M3M6M1Y1Y6M120100806040201001W1M3M6M1Y1Y6M

眼内レンズ:眼内Cow Hitch法による偏位眼内レンズ矯正術

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081870910-1810/08/\100/頁/JCLS白内障手術の適応年齢が広がり,眼内レンズ(IOL)の挿入期間が長期化するにつれ,IOL偏位を起こす症例は増加してきている.近年,IOL脱臼に対しクローズドアイのまま毛様溝縫着を行う眼内cowhitch法が報告されている1,2).この方法は操作が簡便であり,IOLを眼外に取り出さずに操作することができるので,眼に対する侵襲が少ない.今回,下方へIOL偏位した症例に対し,眼内cowhitch法によって片方の支持部(haptics)を毛様溝縫着することにより,偏位を矯正した.(53)症例は59歳の男性,右眼の突然の視力低下を主訴に来院.既往歴として他院にて15年前に白内障手術を施行されたが,後破損を起こしIOLは外固定されていた.その後,視力は安定していたが,今回IOLの偏位(図1)による視力低下を生じた.周辺部の前後はほとんど温存されており,明らかなZinn小帯断裂もみられなかったため,上方の支持部のみを縫着固定する予定で手術を行った.手術ではまず,7時の角膜輪部サイドポートよりループ糸付針(10-0プロリン,ポリプロピレン,PC-9,ア福田慎一大鹿哲郎筑波大学臨床医学系眼科眼内レンズー監修/大鹿哲郎258.眼内CowHitch法による偏位眼内レンズ矯正術偏位した眼内レンズ(IOL)に対して,サイドポートからの操作のみでIOLの支持部(haptics)にcowhitchを形成することにより,クローズドアイのまま毛様溝に縫着して偏位を矯正することが可能である.本法によって,IOL摘出による術中・術後合併症,術後乱視の増大や角膜内皮損傷を避けることができる.図1眼内レンズが下方へ偏位4支持部に引っかけた糸を眼外に取り出す2ループ糸付針(PC-9,10-0プロリン)の糸側をプッシュプルフックにて眼内に挿入5眼外にてループ糸に縫着針を通しcowhitchを作製図3糸を支持部の下から上へとくぐらせる図6サイドポートより毛様溝縫着針を挿入———————————————————————-Page2188あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(00)ルコン)の糸側を挿入し(図2),プッシュプルフックにてIOL支持部の下から上へと糸をくぐらせ(図3),挿入部のサイドポートから眼外へ出した(図4).眼外にて糸のループ部分に毛様溝縫着針を通し,cowhitchを作製(図5).再びサイドポートより毛様溝縫着針を挿入し(図6),12時の毛様溝に通糸して強膜に固定した(図7,8).偏位IOLは整復され,良好な経過が得られている(図9).従来行われていたIOLを一度摘出し,改めて毛様溝に縫着固定する方法では,術中に眼内圧を保つことがむずかしく,脈絡膜離や網膜離といった重篤な合併症を起こす場合があった.クローズドアイのまま毛様溝縫着を行う方法はこれまでにも報告されているが,支持部の眼外取り出しが必要であったり3),操作が複雑で支持部の固定が確実でない4)などの欠点があった.これらに比して,眼内cowhitch法は操作が簡便であり,レンズ固定もより確実である.偏位IOLに対し,眼内cowhitch法によるIOL毛様溝縫着術を施行することにより,眼内圧が安定した状態で操作を行うことができ,サイドポートより操作するため術後乱視の増大,角膜内皮損傷を避けることができる.今回のように水晶体が相当残存しているような症例の場合,上方のループのみを毛様溝固定することにより,良好な中心固定を得ることができるので,必ずしも両支持部に対して操作を行う必要はない.文献1)HanemotoT,IdetaH,KawasakiT:Dislocatedintraocularlensxationusingintraocularcowhitchknot.AmJOph-thalmol131:265-267,20012)HanemotoT,IdetaH,KawasakiT:Luxatedintraocularlensxationusingintravitrealcowhitch(girth)knot.Ophthalmology109:1118-1122,20023)KokameGT,AtebaraNH,BennettMD:Modiedtech-niqueofhapticexternalizationforscleralxationofdislo-catedposteriorchamberlensimplants.AmJOphthalmol131:129-131,20014)AzarDT,WileyWF:Double-knottransscleralsuturexationtechniquefordisplacedintraocularlenses.AmJOphthalmol128:644-646,1999712時の毛様溝に通糸図8糸を引き出して強膜に固定図9整復されたIOL

コンタクトレンズ:円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方(2)  -HCL単独処方のフィッティングフィロソフィー

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081850910-1810/08/\100/頁/JCLS眼鏡視力が低下してきた円錐角膜の症例に,的確なコンタクトレンズ(CL)処方が行われたときの患者の喜びは格別で,一度低下したビジョンを取り戻すという意味で,その効果は白内障手術にも匹敵する.東京医科歯科大学ではディスポーザブルソフトコンタクトレンズの登場直後から,これを用いたピギーバックレンズシステムの導入を行ってきたが,基本はもちろんハードコンタクトレンズ(HCL)の単独処方である.HCLの単独処方のフィッティングフィロソフィーには大きく分けて2点接触法と3点接触法があり,それぞれ一長一短があるが,筆者らの外来ではおもに大きめのサイズ(9.29.6mm)の球面か,離心率が小さめの非球面レンズによる3点接触法を基本として処方を行っている.2点接触法の詳細は教科書に譲るとして,おそらくクリニックによって微妙に異なるであろう3点接触法のうち,筆者らの方法について解説する.円錐角膜の角膜厚,剛性,眼圧,眼瞼圧を五感で感じ取り,イマジンする円錐角膜の病態は非常に多彩で,HCLフィッティングにかかわるファクターとして個々のさまざまな角膜形状,角膜厚(角膜後面形状),剛性に加えて,眼圧や眼瞼圧,瞼裂幅を考える.当然,円錐角膜の正確な眼圧や剛性は測れないので,細隙灯顕微鏡で角膜形状をスキャンしながら,瞼を押したり,引っ張ったりしてみて,この円錐角膜はどんなキャラクターをもつのか五感で感じ取ることが大事である.そしてフィッティング時にはトライアルレンズが瞬目によって上下する一瞬のフルオレセインの動きを見逃さず,閉瞼時のフィッティングパターンを想像することが大切である.たとえば,眼瞼圧が高く,角膜厚の薄いケースでは閉瞼時にレンズはかなり圧迫されているだろうといったイマジネーションが大切である.筆者らが理想としている3点接触法はレンズが下方に落ちたときにようやく角膜輪部にエッジ部分が接触し(図1),眼瞼によってレンズが引き上げられたと(51)きにレンズ下方のエッジは十分浮き上がり,涙液の流入を見るようなフィッティングである(図2).佐野研二黒石川誠東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学コンタクトレンズセー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純1フラット気味の3点接触法筆者らの理想とする3点接触法は,角膜輪部でレンズ下方がようやくタッチし,それでいて,レンズが角膜輪部を超えてずり落ちることもないギリギリのフィッティングである.23点接触法で処方されたレンズが瞼で引き上げられた,その一瞬瞼によってレンズが引き上げられたその一瞬を見逃さないことが重要である.この瞬間も,レンズ下方は十分な涙液で満たされている.レンズと角膜が全体的によく接触し,角膜上皮障害をひき起こさないように圧力が分散されているのが筆者らの理想の3点接触法である.———————————————————————-Page2186あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(00)角膜中間周辺部の最も面積の大きな曲率をベースカーブ(BC)のファーストチョイスに球面レンズでサイズが9.29.6mmの場合,トポグラフィーがあれば,角膜中心(照準線)から24mm付近の中間周辺部の最も面積の大きな角膜曲率をBCのファーストチョイスにするとよい.軽度から中等度の円錐角膜においては,ケラトメータで,ほぼ弱主経線値あたりに相当する.さまざまな円錐角膜フィッティングプログラムが,筆者らのものも含め発売されており,これを利用するのもよい.しかしながら,これらは角膜表面形状のみからの情報であり,前述したように最終的には角膜厚(角膜後面形状),剛性,眼圧や眼瞼圧,瞼裂幅を頭に入れながら,フルオレセインパターンでトライアンドエラーをくり返すしかない.角膜厚の薄い円錐角膜は通常の角膜に比べ,オルソケラトロジー効果が出やすいため,角膜が球面化したときのことを想定しながら,ややフラットぎみにフィットさせるように心がけたほうがよい.また,それまで入れていたHCLがあれば,それが角膜にどのように圧力を与えていたのかも想像してフィッティングさせると,処方後のレンズ修正交換回数も少なく済む.すなわち,以前使っていたレンズが,ルーズでフラットに処方されていたら角膜はすでに十分に扁平化しており,新たに処方したHCLによるオルソケラトロジー効果は少なく,逆に,スティープであったり,新鮮例であれば,処方したレンズのオルソケラトロジー効果は大きいと考えるのである.筆者らは自然科学の基礎が数値化にあることは重々承知しているものであるが,円錐角膜のフィッティングフィロソフィーを伝えるために,現在のところこうした非常に感性的な表現しか思いつかない.円錐角膜形状はHCL装用によって刻々と変化し,はじめは良いフィッティングで動きも良かった症例であっても,経過観察中にレンズが固着をしたり,動きが悪くなって角膜上皮障害を起こしたりすることが珍しくない.次回は,こうしたケースのトラブルシューティングであるHCLのベベル修正について述べる.

写真:後部多形性角膜変性症

2008年2月29日 金曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.2,20081830910-1810/08/\100/頁/JCLS(49)菊地正晃*1山口昌彦*2*1愛媛県立中央病院眼科*2愛媛大学医学部眼科ー監修/島﨑潤横井則彦285.後部多形性角膜変性症2図1のシェーマ①:角膜中央部の浮腫.②:帯状角膜変性症.③:カルシウム沈着.④:上方への瞳孔偏位.①②②③④図1後部多形性角膜変性症(PPCD)の進行例(21歳,男性,左眼)ほぼ角膜全面に浮腫を認めるが,特に中央から下方にかけて強く,小水疱も認められる.長期にわたる角膜上皮浮腫のため,帯状角膜変性を生じ,中央部では上皮にカルシウム沈着が散在する.瞳孔は周辺虹彩前癒着の影響で上方へ偏位していた.図4PPCD角膜浮腫(-)例(14歳,男性)角膜中央部内皮面にほぼ水平帯状に走行する半透明の隆起性病変を認める.本症例は,5歳から経過観察しているが,角膜浮腫は認めていない.ただ,周辺虹彩前癒着がみられ,軽度の瞳孔偏位も認める.眼圧上昇は認めていない.図3図1の右眼の内皮スペキュラー所見角膜浮腫の進行した左眼では測定不能であったが,右眼では角膜中央から上方にかけて黒くみえる細胞質(darkarea)と高輝度の核をもった大型の細胞が水平方向に帯状に観察され,これらは上皮様の性質をもっている内皮細胞と考えられる.最上方や下方には正常の形態を示す内皮細胞が,異常内皮細胞と明瞭な境界をもって存在する.上方中央下方———————————————————————-Page2184あたらしい眼科Vol.25,No.2,2008(00)後部多形性角膜変性症(posteriorpolymorphouscornealdystrophy;PPCD)は1916年にKoeppeによって報告された遺伝性疾患1)で,通常は常染色体優性遺伝であるが,まれに常染色体劣性遺伝の形式をとる.その発生機序は明らかではないが,角膜の発生段階において内皮細胞に分化するはずである神経堤細胞由来のメサンギウム細胞に何らかの分化異常が生じ,内皮細胞が上皮細胞様の形態を示して,ポンプ作用など角膜内皮細胞の正常な機能を失い,角膜上皮や実質に浮腫をきたすようになる2).発症は出生時,あるいはその直後と考えられ,非進行性あるいは緩徐に進行すると考えられており,自覚症状に乏しいため,コンタクトレンズ診療の際などに偶然発見されることが多い.基本的に両眼性であるが,ほとんどの場合,左右非対称の病像を呈する.PPCDの細隙灯顕微鏡所見では,角膜内皮面に水平方向に帯状に走行する半透明の隆起性病変(図4)が特徴的で,分化異常を起こした内皮細胞が上皮細胞様に変化している部分と考えられる.いわゆる非進行例では,長年にわたりこの内皮所見にほとんど変化がなく,角膜浮腫も出現しないため経過観察のみでよい.一方,図1に示したのはPPCDの進行例で,内皮が広範囲にわたって上皮様変化を起こす結果,角膜上皮および実質に浮腫が生じ,浮腫が長期化することによってDescemet膜の肥厚や帯状角膜変性が生じて,角膜全体が灰色に混濁した外観を呈するようになる.さらに進行すると,小水疱を伴う水疱性角膜症に至り,視力低下や痛みを訴える.浮腫の程度が軽いうちは,保存的に治療用ソフトコンタクトレンズ装用や高張食塩水点眼を行うが,重症例では全層角膜移植術が選択される3).内皮スペキュラーマイクロスコープでは,病変部に一致して境界不明瞭な黒い細胞群(darkarea)や大型の内皮細胞を認め,病変部以外では正常の内皮細胞を呈するといわれており4),本症例でも同様の所見がみられた(図3).また,本疾患の約15%に緑内障を合併するといわれている.その理由として,異常な上皮様細胞が線維柱帯をのりこえ,隅角に周辺虹彩前癒着をつくり房水流出を阻害するためと考えられている.PPCDと類似した所見を認める疾患としてposteriorcornealvesiclesがあげられる.水疱性病変,帯状病変など同様の角膜所見を呈するものの,非遺伝性で片眼性の疾患であるという点で鑑別可能と考える.しかし,常染色体劣性遺伝や散発性のPPCDの存在も考えられており,その点では今後,遺伝子解析も含めた両疾患の異同について検討の余地がある.図1の症例は,21歳の男性で,母親と兄もPPCDと診断されている.内皮細胞数の減少とともに角膜浮腫が進行し,水疱性角膜症を呈した.隅角には周辺虹彩前癒着を認め,上方への瞳孔偏位がみられた.左眼視力0.08(矯正不能)と低下してきたため,全層角膜移植術を施行し,術後4カ月の時点で矯正視力1.2と良好な経過をたどっている.文献1)KoeppeL:KlinischeBeobachtungenmitderNernstspalt-lampeunddemHornhautmikroskop.AlbrechtvonGraefesArchklinexpOphthal91:363-379,19162)眞鍋禮三(監):角膜内皮のジストロフィ.眼科学─疾患とその基礎,p126-128,メディカル葵出版,20013)佐野洋一郎,横井則彦:後部多形性角膜ジストロフィ.角膜内皮異常,角膜クリニック,第2版(井上幸次ほか編),p116-117,医学書院,20034)高橋秀児:後部多形性角膜ジストロフィとPosteriorCorne-alVesicles細隙灯顕微鏡及びスペキュラーマイクロスコープによる観察.眼紀48:66-70,1997