———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007????0910-1810/07/\100/頁/JCLS医学の世界にいても,昨今,マーケティングという言葉をよく耳にする.実は,本書を読むまでは,私はマーケティングを商品の販売を促進するための調査,販売,広告の方法論と思っていた.しかし,本書によれば真のマーケティングとはそういうものではないらしい.すなわち,マーケティングとは企業活動(ビジネス)をトータルにマネージメントすることであり,商品に潜在能力を見出してそこに新しい価値を創造し,顧客の購買意欲までも創造して“売り込みの行為”(セリング)そのものを不要にするものであるという.著者によると,商品を自分に置きかえればマーケティングの考え方を人生にも当てはめることができ,そこから,人生で一番大切なこと─人としての生き方や自己実現の方法─が学べるという.また著者は,実際の自己実現においては,まず,自分が他人とどう違うべきなのかを明確にすることが大切で,そこに見えてくるPersonalIdentity(PI)を人生をかけて追求するライフ・マネージメントに,マーケティングの方法論が適用できると述べている.さらに,人間は社会的存在であるため,人間の存在意義というのは生きることを通していかに社会に貢献するかにあり,その社会貢献が自己実現という欲求に基づいてなされるのが理想的であるという.そして,商品のマーケティングを考えるがごとくに,自分に潜在能力を見出してそこに新しい価値を創造し,社会貢献してゆくことが人としてのあるべき姿ではないかという.本書によれば,マーケティングの理論を応用した自己実現の方法はつぎのようである.まず,最初のステップは,4P(productとしての自分自身,自分の属する組織としてのplace,自分の市場価値としてのprice,今後どのように自分をプロモートしてゆくかというpromo-tion)を意識して,自分の存在意義を問うこと.そして,自分の存在意義を考えつくしたならつぎに環境分析を行って目標を設定する.環境分析においては,先の5年間を予測し,自己評価(自分の強み,弱み)を行い,他者に勝つ(差別化する)ための効果的な方法,逆に他者の強みと他者が自分に勝つための方法,最終的な自分たちの強み,勝ちパターンのサマリーを作る.著者のこれまでの経験によると,自己実現のための計画は5年単位で行うのがよく,5年でステップアップした力をつぎ込んで,つぎのチャンスをものにする(catchthewave)ことが大切であるという.この5カ年計画においては,5年後にあるべき自分の姿を想定しながら,OGSMの手法を用いると良いという.OGSMとはO(Objective:自分の存在意義そのもの),G(Goal:5年後に向けての具体的な数値目標),S(Strategies:Objectiveとその数値目標の達成のためにとるべき手法・手段),M(Measurements:具体的評価項目)からなるが,実際には,さらにT(Tactics:具体的計画,毎年のactionplan)を加えて,計画をより具体的にする.そして,評価はあくまでも自分で決めた数値化した目標(Keyper-formanceindicator:KPI)に基づいて行い,年ごとにレビューして目標を見失わないようにする(Manage-mentbyobjectivethroughselfcontrol:MBO)ことが大切であるという.また,戦略(S),戦術(T)を変えても,一旦たてた目標(OとS)を変更してはならず,実行と成果の獲得をめざす.そして,成果が得られてモチベーションを好循環につなげることができれば,自信と回りからの信頼が得られる.筆者は,OGSMの自分バージョンの作成とその実行,および成果の獲得こそが,自己実現の早道であると述べている.また,5年という時間軸はあくまでも,一つの通過点としてのマイル・ストーンであり,その前の3年目にど(85)■8月の推薦図書■人生でいちばん大切なことはマーケティングで学べる5年ずつ自己実現する生き方佐藤公明著(新風舎)シリーズ─76◆横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.8,2007うあるべきか,そのために,来年,来月,明日,何をすべきかが大切であるということも,ボーリングのピンとスパットの位置関係に例えて追記している.プロとよばれる人間は,物事を正確かつ客観的に評価できる一流の眼(座標軸)を持ち合わせているものだが,本書を読めば,外資系企業をステップアップするなかで,いかに著者がしっかりとしたマーケティングの理論を体得し,その活用性に自信を深めてきたかが理解できる.さらに,著者が好機の波をとらえてステップアップしてこられた理由は,それ以外に,著者の持つ人に共感する心と,人を大切にするおもてなしの精神,日本と日本人に対する強い愛情にあることが伝わってくる.本書は,企業にいる若者向けに書かれてはいるが,著者が述べているように,人生はネバーエンディングストーリーであり,自己実現という意味においては,いずれの年代にも参考になるのではないだろうか?将来に夢と希望を抱いて仕事に全力を注ぐ若い眼科医に対しても,自己実現のための指南書としてぜひお薦めしたい好書である.眼科関連メーカーに勤務した経験をもち,現在,伝統ある外資系製薬企業の社長として活躍する著者は,われわれと決して無縁な存在ではないはずである.(86)☆☆☆コンタクトレンズフィッティングテクニック【著】小玉裕司(小玉眼科医院院長)CLの処方に必要な角膜・涙液・屈折矯正・その他の知識/CLの選択/ハードCLの処方/フルオレセインパターンの判定方法と注意点/レンズデザインと角膜形状/ベベル・エッジのチェック/SCLの処方・種類・選択/CLと定期検査・眼障害/HCLの修正/修正によるHCLの苦情処理-くもり・充血・異物感・視力/SCLの苦情処理-くもり・かすみ・視力低下・異物感・眼痛・流涙・充血/乱視に対するCLの処方/ドライアイ/ラウンドコルネア/カラーCL/治療用SCL/無水晶体眼・乳幼児と小児に対するCLの処方/光彩付きCL・義眼CLの処方/ハード・ソフトタイプバイフォーカルCLの処方/HCLのカスタムメイドの処方/CLと点眼薬/CLとケア用品/●ワンポイントB5判総152頁カラー写真多数収載定価8,400円(本体8,000円+税400円)メディカル葵出版〒113─0033東京都文京区本郷2─39─5片岡ビル5F振替00100─5─69315電話(03)3811─0544■内容目次■この本があれば,明日からのコンタクトレンズ診療は安心して出来る!株式会社