———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS現代は情報が氾濫した時代だといえるでしょう.数多くの情報のなかから必要な情報を集積し,それを分析することによって,たとえば病院経営や医院経営などに役立つ隠れた法則を見つけることができるかもしれません.もともとデータマイニングが受け入れられたとき,多くの人はマーケッティングツールとしてこれを認識しました.つまり,販売促進に有用な法則や規則を見つけるといった一点にデータマイニングの意義が集約されていたのです.しかし,溢れかえる情報によって,従来は分析の対象にできなかった情報も対象にできる,すなわち分析対象の幅が広がり深度を増し,データマイニングの応用範囲はマーケッティング分野だけに留まらず,社会のさまざまな局面で活用されるようになったとのことです.本書では数式は完全に排除してあり,私のような数学アレルギーのものにも,データマイニングというものがどういうものなのかがわかりやすく解説されています.データマイニングと従来の統計処理とはどう違うのでしょうか.データマイニングといって,「データマイニング」という分析手法があるわけではなく,データマイニングは行為の総称であって,回帰分析,決定木分析,クラスタ分析,ニューラルネットワークなどの手法を組み合わせて情報の分析を行うことであり,その本質は手法の目新しさにあるのではなく,用意する情報の質と量にあるとのことです.また,従来型の統計分析が事後検証を指向しているのに対し,データマイニングは多分に未来予測を指向しているという点も異なります.データマイニングでは,取り扱う情報量が桁違いの大きさであるという事実は,情報のなかに混ざっているノイズもきわめて大きいことになります.よって,見つかった法則のなかから使えるものを探し出すことが大切です.データマイニングは使いようによってはとても有益な結果をもたらすことができますが,万能のツールでは決してないこと,使いこなすためにはデータマイニングに対する理解が必要なこと,得られた法則の背後にあるメカニズムをみつけだすにはやはり人間の力が要求されることを,しっかり認識して利用する必要があると著者の岡崎先生は説いています.データマイニングを行うためには,まず何を明らかにしたいのか,目的を設定しなければなりません.本書では「禁欲の誓いを立てた仲間の中で,異性交遊をしている裏切り者を探す」といったユニークな目的を設定し,データマイニングの手順について,データの集め方や不必要な情報の削除,データのなかで何を手がかりに使うか,失敗をどう活かすか,異常値をどう取り扱うか,仮説の立て方,複数の属性(情報の種類)にまたがる隠れた法則の見つけ方など,順を追って面白おかしく解説していますが,使えるデータマイニングを作り上げるには,気の遠くなるほどの仮説と検証をくり返す必要があるようです.つぎに,データマイニングで使用されるいくつかの解析方法について解説があります.回帰分析,重回帰分析,決定木分析,クラスタ分析,自己組織化マップ,連関規則,ニューラルネットなど,言葉を聞いただけでは頭が痛くなるような分析法が数式を用いず,わかりやすいテーマを例に取り上げ,図を駆使してその活用方法とともに解説されています.脳とコンピュータを比較した場合,脳がもつアドバンテージは,強力な学習能力と並列性であると考えられます.並列性とは,複数の処理を並行して同時に行う性質・能力のことであり,コンピュータが本質的には一つ一つの処理を順番に行うのと対置される性質です.脳のもつ学習能力と並列性をできる限り(77)■4月の推薦図書■数式を使わないデータマイニング入門隠れた法則を発見する岡崎裕史著(光文社新書)シリーズ─72◆小玉裕司小玉眼科医院———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007まねをしようというのがニューラルネットということになります.ニューラルネットの解説には花粉症がテーマとして取り上げられているので,眼科医には余計に馴染みやすいと思います.本書を読み進むにつれ,患者の主訴,症状,検査結果などから病因を探り診断をつけるというわれわれの行為はデータマイニングそのものといった感じを受けます.診断技術が進み遺伝子情報など膨大な患者の情報を基に診断するには,コンピュータの力を借りなければならないという事態が生じるかもしれませんし,そうなればますます医療というものはデータマイニングを必要としてくるでしょう.最後に,データマイニングの手法が洗練されたこと自体が,データマイニングの運用に質的な変化をもたらすことになり,情報管理ということがとても重要になってくると岡崎先生は指摘しています.つまり情報に精通していない人は,そうとは気づかないまま監視のもとにおかれ,情報を搾取され,管理される,それに対して,情報に精通している人は,集積する情報を利用し,他者を管理する側にまわり,自らを監視の外におく方法すら知り得るということになるとのことです.個人情報保護法が制定されても,情報漏洩事件が跡を絶ちません.ウィニーなどによって個人情報が流出した事件も記憶に新しいところです.このような現代の抱える情報に関する危険性を自覚するうえでも,本書を一読する価値があると思います.(78)☆☆☆年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2007Vol.20■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

