———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????私が思うこと●シリーズ②(77)はじめに私の偉大なる師の一人である故J.W.Streilein教授に心より感謝し,ご冥福を祈りたいと思います.今回,九州大学・園田康平先生からバトンを頂き,このシリーズの2回目を担当させていただくことになりました.私は園田先生と同じ研究施設であるBoston・HarvardMedicalSchool関連のSchepensEyeResearchInstituteへ2003年から3年間留学しておりました.前回,園田先生がBostonやSchepensについて詳しく書かれておりましたので,今回は留学で体験できたことを中心に書いて見ようと思います.私は3年間で3つのラボを移動するという日本人では数少ない経験をもっておりまして,それぞれまったく個性の違うラボを体験しましたので,そのこともおりまぜて書かせていただきたいと思います.私の留学体験は,一言で言えば波瀾万丈でした.留学前から世間ではいろいろなことが起きておりました.すでに遠い昔に感じられる方も少なくないと思いますが,イラク戦争の開戦,SARSの流行などがあり,周りからは留学に行くことに反対されておりました.しかし,私にとって留学は長年の夢でしたので,戦争やSARSよりも,早く留学したいという気持ちが強く,留学を延期しようと思う気持ちはまったくありませんでした.後で述べますが,延期せずに早く留学しておいてよかったと今も思うことがあり,やはり夢を追いかけることは大事だとこの留学期間でつくづく思いました.第一のラボと発見私の第一の留学先はJ.W.Streilein教授のラボでした.彼のラボは眼の免疫を中心に研究していて,特にぶどう膜炎や角膜移植後拒絶反応についての治療の基礎となる研究で世界的に有名なラボでした.そのため多くの国から彼の下へ勉強をしにやってくる研究者が跡を絶たたず,多くの日本人の先生方も研究をしに来られておりました.このラボで一番印象に残ったことは“日本人とドイツ人はよく働き,仕事が正確で結果を出し,実はアメリカのラボを支えているのは日本人とドイツ人”と言っても過言ではないということでした.ただ,英語圏の人と違い海外で日本人が損をしているのはcommunica-tionの部分であり(実はこれが最も研究では重要であり),このcommunicationの壁をなくすことができるのなら日本人の研究者が多くの分野において世界でトップになることができるということを日本人の先生方と終始話しておりました.私はいつもこのcommunicationの壁に悩まされずに世界に挑む方法を日々考えておりまして,その一つの方法がcollaboration(共同研究)であり,上手にcollaborationすれば良い研究成果を生み出すことができることがわかりました.Collaborationはposi-tiveでもnegativeでも結果をすぐに出すことが大切であり(もちろんpositiveならより良いのですが),この結果を早く出す行動こそがcollaboratorから信頼を得る方法だと思っています.今も私はBostonで培った人脈をもとに,日本だけでなく,アメリカ・ヨーロッパの人たちとcollaborationを進めています.このようにcol-laborationを作ることも留学の醍醐味ではないかと思っています.突然の別れ,そして第二のラボ皆さんもご存じかと思いますが,私のボスであったJ.W.Streilein先生は2004年3月15日に68歳という若0910-1810/06/\100/頁/JCLS丸山和一(?????????????????)京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学講座1973年大阪府生まれ.趣味はサッカー,スキー.明るく楽しい実験をモットーに現在も眼科領域ではあまり知られていないリンパ管の研究を続けている.体育会系の研究好き人間.(丸山)留学して感じたこと———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006さで他界されました.今でもあの時の様子は思い出すだけで辛く切なくなります.ボスが突然いなくなる状況など考えたこともなく,生まれて初めて路頭に迷うという体験をしました.あの時に人の優しさ,むごさなどを見る機会があり,本当に何回か辛い状況に追い込まれました.その時に支えてくれたのがStreilein先生の教え(諦めず最後まで仕事を仕上げる),木下茂教授が私に下さった言葉(継続は力なり),友人たちの励ましの言葉,そして陰になり日向になり私を精神的に支えてくれた妻の存在でした.私はボスが他界した後,彼の妻であったJoan-SteinStreilein先生の下で研究を再開しました.その後,彼女の援助もあり約9カ月はJ.W.Streilein先生と行った仕事をもとに研究を続けさせてもらい,その結果,実験は終了することができました.このラボで一番学んだことは自分の意見をしっかりもち,発言することで道は切り開けることがわかったことでした.これから留学する人にはぜひ,自分の考えを積極的に発言し,その考えを行動に移してもらいたいと思っています.第三のラボ・これぞアメリカンドリームボストンで最も嬉しかったことは2年目の11月下旬に突如起こりました.それは,Streilein教授が他界されてから,私の面倒を陰ながら見てくださっていたPatri-ciaA.D?Amore教授からの突然のメールでした.彼女は血管新生の分野では世界的に有名で,ボストンにおいてはその分野では知らない人はいないくらいでした.私の研究は血管・リンパ管新生と免疫を複合させた研究でしたので,Streiline教授が亡くなってからは,毎週彼女のラボミーティングに出て勉強をさせていただき,彼女は1カ月に一度個人面談もしてくださっていました.その彼女から突然以下のようなメールを頂きました.HiKazu-IhavebeenwonderingifyouwouldconsiderstayingonanotheryearortwoatSchepensasapostdocinmylab.Sinceyourworkisnowsomuchinmyareaandsinceyouknowmeandmylab,Ithoughtyoumightconsiderthisagoodopportunity.IfyouarenotinterestedbecauseofyourunpleasantinteractionswithotherSERIpeopleIwouldde?nitelyunderstandandIwouldnotbeo?endedinanyway.Let?stalkaboutittomorrow.Patこのメールを頂いたときは,仕事を続けていて良かったと本当に思いました.自分で努力し,売り込んでおけば必ず何かチャンスが来る,これぞアメリカンドリームと肌で感じました.研究を続けることはもちろん留学では大事です.しかし自分を売り込む力を身につけることも忘れてはいけないと思います.日本人はシャイなので,言いたいことを言えないことが多いのですが,思ったことは思い切って言ってみるべきです.そしていろいろな人と話すべきだと思います.実験を進めることで,一番大事なことはラボメンバーを大切にすることが重要です.ラボメンバーを大切にすることで仕事が何倍もやりやすくなります.たとえば,実験に使用するものが緊急で欲しいときにすぐに彼らが手伝ってくれ,手に入れてくれます.また実験をするとき(78)▲J.W.Streilein教授との思い出─Streilein教授と日本人研究員(とその奥様方)▲Pat?sLabの送別会─左から2人目がD?Amore教授,左端はリンパ管研究で有名なChildren?sHospital,BostonのKaipainen先生———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????にそれぞれに得意分野がありますので,その道のプロに任せることが一番正確で確実ですので(もちろん自分で行うことは大切ですが,私は正確性,スピードをそれよりも大切にしていますので実験の分業化を推奨しています),その時にも彼らは楽しみながら実験してくれます.実験は一人の人がデータを出し,論文をまとめるよりも,何人かで集まり,それぞれの人が実験を理解しているほうが論文作成の時に議論もできますし,何よりも正確なデータを出すことができると思います.私のボストン最後のラボはこれぞ究極のラボのあり方だと感じました.このラボスタイルはボスの推奨する形であり,何度も助けられました.日本に帰国した今でも毎日メールをして,彼女たちからサンプルなどを頂き助けてもらっています.留学での大事なこと最後に留学での大事なことについて述べたいと思います.一つは先にも挙げました沢山の仕事をこなすことももちろん大事なのですが,私は人間関係も大事にしようと思っていました.留学では外国人はもちろんですが,多くの日本人とも知り合う機会があります.留学は眼科に限らず多くの分野の人と知り合いになることができる機会だと思います.私はパーティー(飲み会)に呼んでいただければいつも喜んで参加していました.飲み会はストレス発散の場所にもなりますし,何よりも情報交換ができる場所でした.それぞれのラボのスタイルやどのような実験をしているのかなどをも知る機会でしたので,これから留学される人はぜひ参加していただきたいと思います.そこで必ず何かしら新しい発見があります.妻もそのような場所で友人作りや情報交換ができ,参加するのをとても楽しみにしていましたので,一緒に留学される奥様や子供さんにもとても有意義なものだと(79)思います.もう一つはストレス発散方法を見つけることです.私はその一つとして園田先生も第一回で述べられておりましたが,旅行というストレス発散方法をみつけました.大きな声では言えませんが,私は旅行へ行きまくりました.いくら良い環境で働いていても,働くということでストレスを感じています.旅行先では必ず心に余裕ができますので,そういう時に,ストレスが発散され,思い詰めていたことに対しても良い考えが浮かぶことが多々あります.旅行は「いろいろなことを考える時間」だと思いますので,ぜひお出かけください.もう一つは留学したら留学先のその国にある何かに深くはまってください(ちなみに私はアメリカのプロスポーツにはまりました).これもストレス発散になります.仕事とは違う何かに没頭する時間も一日のうちで大事だと思っています.たくさんのことを書きすぎましたが,留学は本当に素晴らしいものだと思います.これから機会のある人は決して逃がさないでください.これを読んでくださった皆さんのなかから将来留学し,このコラムが少しでもお役に立てることを心から願っております.☆☆☆丸山和一(まるやま・かずいち)1998年金沢医科大学卒業,京都第二赤十字病院,宇治徳洲会病院を経て,2001年に京都府立医科大学視覚機能再生外科学大学院入学.2003年から3年間HarvardMedicalSchool,SchepensEyeResearchInstituteに留学,2006年3月に京都府立医科大学視覚機能再生外科学大学院卒業,同年4月より京都府立医科大学視覚機能再生外科学講座後期専攻医,AdjunctAssistantScientist,DepartmentofOpthalmology,HarvardMedicalSchool,SchepensEyeResearchInstituteとなる.kmaruyam@ophth.kpu-m.ac.jp