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新しい治療と検査シリーズ164.加齢黄斑変性に対するサプリメント療法

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS?バックグラウンド最近,加齢黄斑変性(AMD)を取り巻く環境が,光線力学的療法,抗新生血管薬治療などの新しい治療の開発,導入によって大きく変化した.にもかかわらず,これらの治療をもってしても良好な視力の獲得は容易ではなく,疾患の予防,進行防止といった面からのアプローチが相変わらず重要であることに変わりはない.従来から,進行防止を狙ってドルーゼンの光凝固が試みられてきたが,脈絡膜新生血管(CNV)の発生をかえって促進させることが大規模臨床試験で明らかにされ1,2),現在の考えではこの方法は用いるべきではないというのが一般的である.そういった背景から最近注目されているのが,サプリメント摂取による本症の予防である.2001年にAge-RelatedEyeDiseasesStudy(AREDS)によって,抗酸化剤の摂取がAMDの進行防止に有効であることが明らかにされ3),このEBM(evidence-basedmedicine)によってAMD患者にサプリメントの摂取を勧めることができるようになった.そこで,本稿では,エビデンスのある,このAREDSフォーミュラ(表1)に沿ったサプリメント療法を述べる.?原理活性酸素による網膜色素上皮障害が,黄斑部網膜の加齢に関連する.亜鉛は,スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)の補酵素として機能し,またビタミンCやE,bカロテンは活性酸素を除去する作用を有する.実際,過去の疫学的研究によって,抗酸化作用を有するビタミンや亜鉛がAMD患者に不足していることが明らかにされている.したがって,こういった抗酸化物質の摂取が,AMDの予防,進行防止に有効である可能性が示唆されてきた.それに応えるべく行われたAREDSの結果3)では,表1のサプリメント投与が,1)中等度(125?m≧,>65?m)から大型(>125?m)のドルーゼンが多数存在する,もしくは中心窩外地図状萎縮の存在する中期AMD,2)片眼が,滲出型AMDあるいは中心窩地図状萎縮といった進行期AMDに進行しているあるいはドライAMDで0.6以下に視力が低下しているといった場合の僚眼,といった2つのカテゴリーにおいて,5年間に,進行期AMDへの進行率を28%から20%に有意に低下させ,3段階以上の視力低下を29%から23%に有意に低下させた.なお,まったくドルーゼンのない症例における発症の予防効果は認められなかった.?実際の方法まず,摂取方法であるが,AREDSフォーミュラに沿った1日量(亜鉛酵母30mg,銅1.5mg,ビタミンC408mg,ビタミンE241.6mg,bカロテン15,750?g)新しい治療と検査シリーズ(81)164.加齢黄斑変性に対するサプリメント療法プレゼンテーション:白神史雄香川大学医学部眼科学教室コメント:湯沢美都子日本大学医学部附属駿河台病院眼科表1AREDSフォーミュラ(1日量)?亜鉛80mg?銅2mg?ビタミンC500mg?ビタミンE400IU?bカロテン15mg図1軟性ドルーゼンの症例———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006を3回に分けての内服を指示する.つぎに誰に勧めるかであるが,筆者自身,軟性ドルーゼンが両眼に多数みられるような症例(図1),すでに片眼に滲出型AMDや地図状萎縮が発症している症例に勧めている.なお,喫煙者においては,bカロテンが肺癌の発生を若干促進するので,bカロテンを含まないフォーミュラを勧めている.?本法の良い点と注意点何よりも良いのは,内服で行える点である.また,喫煙者には前述のように注意が必要であるが,それ以外には副作用がほとんどないことも良い点である.問題点は,食品であって薬剤ではないので患者個人で購入しないといけない点で,若干の費用が必要である.なお,最近エビデンスのないサプリメント療法が巷に氾濫しているが,眼科医として,エビデンスのあるサプリメント療法をあくまで勧めるべきであろう.?その他のサプリメント療法従来から,ルテイン,ゼアキサンチンといったカロテノイドがこのAMDの発生防止に有効であることが報告されている4).また,w3多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)もAMDの予防に効果があるのではないかと考えられている5).AREDSの症例における高摂取群と低摂取群の比較検討でも,進行期AMDへの進行の防止にこれらの物質が有効であることが示されている.これらのサプリメント療法に関する大規模臨床研究による結果が待たれる.実際に,ARDESでは,AREDSIIとしてbカロテンの代わりにルテイン8mgを含むフォーミュラでの予防効果を現在研究中である.まとめ?亜鉛,ビタミンC,E,bカロテンという抗酸化剤を含むサプリメント療法(AREDSフォーミュラ)は,AMDの進行防止に有効である.?AREDSフォーミュラに沿っていないサプリメント療法には現時点ではエビデンスがない.?ルテインやw3不飽和脂肪酸といったサプリメントに関しては,今後の大規模臨床試験の結果が待たれる.文献1)ChoroidalNeovascularizationPreventionTrialResearchGroup:Lasertreatmentinfelloweyeswithlargedru-sen:updated?ndingsfromapilotrandomizedclinicaltrial.?????????????110:971-978,20032)FribergTR,MuschDC,LimJIetal;PTAMDStudyGroup:Prophylactictreatmentofage-relatedmaculardegenerationreportnumber1:810-nanometerlasertoeyeswithdrusen.Unilaterallyeligiblepatients.??????????????113:622.e1,20063)Age-RelatedEyeDiseasesStudyGroup:Arandomized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementa-tionwithvitaminsCandE,betacarotene,andzincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss:AREDSreportno.8.???????????????119:1417-1436,20014)SeddonJM,AjaniUA,SperdutoRDetal:Dietarycarot-enoids,vitaminsA,C,andE,andadvancedage-relatedmaculardegeneration.EyeDiseaseCase-ControlStudyGroup.????272:1413-1420,19945)SanGiovanniJP,ChewEY:Theroleofomega-3long-chainpolyunsaturatedfattyacidsinhealthanddiseaseoftheretina.??????????????????24:87-138,2005(82)?本方法に対するコメント?AREDSの結果は,EBM(evidence-basedmedi-cine)のうちで最も信頼性が高い多施設無作為前向き臨床試験の結果であり無視できない.私(湯沢)も滲出型加齢黄斑変性になる危険性の高い黄斑所見を有する人には勧めている.しかし問題がある.第一はこの結果は,1日3回5年間毎日服用した結果得られたものであり,忠実に服用するにはかなり無理があるように思う(私にはできない!).第二にサプリメントなので保険が利かず,高価である.第三に,プラセボに比較して脈絡膜新生血管の発生が抑えられるのは25%であり,しかも,萎縮型への進行防止には効果がない.AREDSの処方量は通常の食生活では摂取不可能な大量であり,サプリメントとして服用するしかないのだが,サプリメントはバランスの良い食事をしたうえで足りないものを補足するのが本来の形である.サプリメントに頼る前に,加齢黄斑変性になりやすい要因と報告されているある種の食物性脂肪を控え,一方,有用とされる抗酸化物質,抗酸化ミネラルw3脂肪酸などを多く含む食物を食べるなど,食生活を見直すことも必要なのではないだろうか.

涙点プラグ:肉芽に対する処置

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS涙点プラグの装着によって,涙小管壁に慢性的な刺激が加わると,涙小管内に肉芽が形成されることがある1).この肉芽形成の多くは,涙点プラグ挿入術の合併症として位置づけられるが,必ずしも欠点ばかりではない.すなわち,肉芽によって涙小管の完全閉塞が得られると,肉芽は涙点プラグのごとく振る舞い,涙点プラグの装着時と同等の効果が得られる.しかし,合併症としての肉芽形成には,さまざまな問題点がある.まず,肉芽形成により涙点プラグが押し出されて涙点から突出し,眼表面が刺激されるようになると異物感や上皮障害の原因となりうるし,脱出したプラグの鍔の周りに眼脂などが付着してバイオフィルム形成の原因にもなりうる.また,肉芽形成により涙点プラグが脱出してしまうと,再挿入が困難になる場合がある.●検査高度に肉芽が形成されない限り,涙小管内の肉芽は,一般に確認できない.そのため,涙点プラグの脱落後は,涙点ゲージを用いて肉芽の存在を確認する必要があり,スムーズにゲージを挿入できる場合は,肉芽の形成はないか乏しく,涙点プラグの再挿入が可能である.しかし,ゲージが挿入できない場合は,高度の肉芽形成が考えられ,この場合は,①角膜上皮障害が再発,②涙液メニスカスが低い,③涙液ターンオーバが速い2)などの涙点の疎通性を疑わせる所見を確認しながら,総合的に涙小管の閉塞程度を評価する.●処置筆者らが外来で行っている対処法について紹介する.1.涙点プラグが突出してきた場合(図1a)涙点から突出している涙点プラグをみた場合は,以下のケースが考えられる.まず,涙点プラグの挿入時あるいは挿入後に涙点が拡大し,涙点プラグと涙小管壁との密着程度が低下して,涙点プラグが可動性をもち,涙点から突出してきた場合がある.この場合は,涙点プラグの鍔を把持してプラグを涙点に押し込むと,容易に再挿入できる.この場合,涙小管内の肉芽は存在しないか軽度と推定されるが,涙点が拡大している場合が多い3)ため,再度プラグが突出してきたり脱落する可能性が高い.この場合には1サイズ大きい涙点プラグの再挿入も考慮する必要がある.つぎに,涙小管内に肉芽が形成され,それによって涙点プラグが突出してくる場合がある.この場合は,プラグを押し込もうと試みても,肉芽によって涙小管が占拠されているため,不可能な場合が多い.突出した涙点プラグによって結膜が擦過され,強い異物感や充血などの合併症がみられない場合にはそのままにして経過観察するが,そうした合併症がみられる場合には,涙点プラグを抜去する必要がある.(79)涙点プラグセミナー監修/坪田一男西井正和横井則彦京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学6.肉芽に対する処置涙点プラグの装着後,涙小管内に形成された肉芽により涙点プラグが脱落し,涙点プラグの再挿入が不可能となる場合がある.この際,肉芽による涙小管の完全閉塞が得られておれば,点眼治療のみでよいが,涙小管に疎通性がある場合は,外科的涙点閉鎖術や肉芽に切開を加えて涙点プラグを再挿入するといった処置が必要となる.ホワイトメディカル提供ab図1肉芽が形成された場合の代表例a:形成された肉芽によって涙点プラグが押し出されている例.b:涙小管内に高度の肉芽が形成され涙点プラグが脱落した例.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(00)2.涙点プラグがすでに脱落している場合(図1b)と涙点プラグを抜去せざるを得なかった場合涙小管内に形成された肉芽によって,涙点プラグがすでに脱落している場合の対処法は2通りに分かれる.まず,涙点プラグの脱落後も,眼表面に涙液および人工涙液が貯留され,角膜上皮障害の再発を認めない場合は,涙小管が完全に肉芽によって閉塞されている状態と考えられる.この場合は肉芽が涙点プラグのごとく振る舞うため,特別な処置を要さず経過観察としてよいが,低力価のステロイド点眼を行っている場合には,肉芽の消失を防ぐために,ステロイドの点眼を当面,中止する.つぎに,これが最も問題となる場合であるが,肉芽形成によって涙点プラグの再挿入が不可能となっており,かつ不完全な肉芽形成のために涙点から涙液または人工涙液の疎通がある場合がある.この場合,外科的涙点閉鎖術を行い,涙点の完全閉塞を図るのが望ましい.しかしながら,それが適当ではない場合,すなわち,手術ができないような状況においては,外来処置での対応が必要となり,肉芽を切除あるいは切開して涙点プラグを挿入しうるスペースを確保してその後再挿入を行うとうまくいく場合がある.また,このとき,プラグの頭部が肉芽を越えるようにプラグを選択して挿入すれば,頭部が肉芽にひっかかって脱落しにくくなり効果的である.なお,涙点プラグの特異な脱出様式として,いわば“太鼓締め”状にプラグのシャフト部分を結膜組織が帯状に覆い,涙点付近に横たわる形でプラグが固定されている様子が観察されることがある(図2)4).この場合,涙小管はすでに肉芽組織によって完全閉塞されている場合が多く,プラグの装着時と同等の効果が得られているため,異物感などの症状がなければ,ただちにプラグを抜去する必要はない.おわりにわが国では2社の涙点プラグが保険適用となっているが,肉芽形成はFCI社のパンクタルプラグで多くみられる.これはプラグ頭部の角が鋭角的で,涙小管壁に機械的刺激を及ぼしやすくなっていることが関与していると考えられる.しかし,最近,使用されるようになったEagleVision社のスーパーフレックスプラグもパンクタルプラグに似た頭部の形状をもつため,肉芽を形成しうることも予想され,今後の報告が待たれる.文献1)小嶋健太郎,横井則彦,中村葉ほか:重症ドライアイに対する涙点プラグの治療成績.日眼会誌106:360-364,20022)丸山邦夫,横井則彦,西井正和ほか:ドライアイ治療におけるデジタル画像を用いた涙小管の疎通性の評価.日眼会誌107:526-529,20033)稲垣香代子,横井則彦,西井正和ほか:涙点プラグ脱落前後における涙点サイズの変化と選択したプラグの検討.日眼会誌109:274-278,20054)FayetB,AssoulineM,HanushSetal:Siliconepunctalplugextrusionresultingfromspontaneousdissectionofcanalicularmucosa:Aclinicalandhistopathologicreport.?????????????108:405-409,2001図2いわば“太鼓締め”様に下涙点からプラグが脱出している例

眼感染症:寄生虫検出検査

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS寄生虫検出検査には,寄生虫自体を直接的に検出する方法(培養検査,塗抹標本直接鏡検検査,免疫学的手法による抗原検出,遺伝子検査)と間接的に検出する方法(免疫学的手法による抗体検出)に分けられるが,疾患ごとで検査法は大きく異なる.本セミナーでは,寄生虫による眼感染症の代表疾患であるアカントアメーバ角膜炎,眼トキソカラ症,眼トキソプラズマ症における検査法についてそれぞれ解説する.●アカントアメーバ角膜炎アカントアメーバ角膜炎を確定診断するには,角膜病巣部からアカントアメーバを検出することが必須である.検出法としては,塗抹標本と培養検査がある.特に塗抹標本の直接鏡検検査は特別な技術も必要でなく比較的容易であるため,アカントアメーバが疑われたらまず行う検査である.塗抹標本に用いる染色法にはKOH・パーカーインク染色,ギムザ染色,グラム染色,ファンギフローラ染色があり,それらによって栄養体や二重壁をもったシストを検出する(図1).なかでもKOH・パーカーインク染色・ファンギフローラ染色は,組織中のアカントアメーバシストを検出するのに優れている.また,グラム染色やギムザ染色においては,炎症細胞がアーチファクトとしてシストに間違えられやすいため注意が必要である.一方,培養検査は,検出されれば診断の確実性が向上するため,可能ならば行いたい検査である.作製法・培養法を表1に示す.コンタクトレンズ装用者においては,その原因にレンズケースや保存液の汚染が関与している場合もあるため,角膜擦過物のほかにケースや保存液も同時に培養することが望ましい.●眼トキソカラ症眼トキソカラ症は,イヌ回虫幼虫の網脈絡膜への転移によって生じる疾患であるが,病巣から直接幼虫を検出することは不可能なため,免疫学的手法により抗体を検出することで,病原体の存在を間接的に確認すること(77)40.寄生虫検出検査眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=大橋裕一井上幸次鈴木崇市立宇和島病院眼科寄生虫検出検査は,疾患で異なり,アカントアメーバ角膜炎では塗抹標本,培養検査が,また,眼トキソカラ症ではイヌ回虫幼虫排泄物抗原などを用いた抗体検出検査が診断に有用である.また,眼トキソプラズマ症においては,血清中のトキソプラズマ抗体の陽転化,ペア血清による4倍以上の抗体価増加を認められれば診断意義が高い.表1アカントアメーバ用培地の作製方法と培養方法①アメーバ分離用NN培地もしくは栄養素を含まない透明な培地を用意する.②熱処理した大腸菌(60℃で1時間)を乳白色ほどの濃さにして,寒天培地に塗布し,表面を乾燥させる.③培地の中央に角膜擦過物を接種する.④培地表面を上にして室温で培養する.⑤培養数日後,顕微鏡(200倍)で培地上の下図のような栄養体を確認する.10?m10?m図1アカントアメーバ角膜炎における塗抹標本輪状浸潤を呈した角膜炎(左図)の病巣部擦過物をギムザ染色による塗抹標本を作製し,鏡検したところ,二重壁を有するアカントアメーバシストが検出(右図)された.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006が,診断への重要な情報となりうる.抗体検出に用いる検体としては,血清と眼内液があり,血清における抗体の検出は補助診断に用いられ,一方,眼内液における抗体の検出では,確定診断につながる.現在眼トキソカラ症の抗体検査に使用されている抗原としては,イヌ回虫幼虫抗原,イヌ回虫幼虫排泄物抗原があり,それらを用いた酵素抗体法(ELISA:酵素により抗体を標識し,酵素反応の結果生ずる色調の変化を分光光度計にて測定し,抗原に結合した抗体量を測定する)によって抗体量を定量するが,特定の専門機関に依頼する必要がある.トキソカラチェックは,イヌ回虫幼虫排泄物抗原の抗原抗体反応を利用したイヌ回虫幼虫排泄物抗体の簡易型検出法で,検体を10倍と50倍に希釈し,それぞれキットに滴下し,50倍希釈で反応がある場合(キットの真ん中に赤いスポットが現れる)は陽性,50倍希釈で反応がなく10倍希釈で反応がある場合は疑陽性,両方とも反応がない場合は陰性と判定する(図2).反応時間が短く,簡便であるが一般に市販されていないため,今後の汎用化が望まれる.一方,外注にて使用できるmultiple-dotELISA(寄生虫抗体スクリーニング検査)に含まれる抗原はイヌ回虫成虫抗原であり,眼トキソカラ症症例に対しては,陰性の結果が得られることもあり,本疾患の診断に使用できるかについては疑問が残るため,今後の検討が必要である1).●眼トキソプラズマ症眼トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫感染による網脈絡膜炎で,検査としては免疫学的手法(赤血球凝集反応,ラテックス凝集反応,ELISA)によりトキソプラズマ抗体を検出することで,間接的に病原体を証明する方法が通常用いられる.しかしながら,本法では成人の10~30%がトキソプラズマ原虫の不顕性感染をしており,抗体検出のみでは診断につながらないが,経過観察中に抗体陰性からの陽転化や,ペア血清における4倍以上の抗体値の増加が認められれば診断意義は高い.また,後天感染においてはIgM抗体の検出により初感染を確認できれば診断につながる.PCR(polymerasechainreaction)法にて,眼内液からのトキソプラズマ原虫DNAを検出する方法も報告されている2).文献1)鈴木崇,上甲武志,陳光明ほか:眼トキソカラ症の診断におけるトキソカラチェックの有用性.あたらしい眼科22:263-266,20052)AouizerateF,CazenaveJ,PoirierLetal:DetectionofToxoplasmagondiiinaqueoushumourbythepolymerasechainreaction.???????????????77:107-109,1993(78)■コメント■眼科領域での寄生虫感染は決して症例数が多いとはいえないために,鑑別にあたって,その可能性を考えることをつい忘れてしまいがちであるが,炎症性の疾患を診断していくうえでやはり重要である.しかし,その検査についてもなじみがないことが多いために,方法や結果の解釈に間違いが起こりやすい.寄生虫を疑う症例に遭遇し,検査が必要な場合は,専門家にコンサルトするなどして正しい検査結果を得るよう心がける必要があるだろう.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次図2トキソカラチェックによる眼トキソカラ診断硝子体索条物を有するぶどう膜炎(上図)症例より前房水を採取し,トキソカラチェック(下図)を施行したところ,50倍希釈にてキットの真ん中に赤いスポットが出現し(下図左)陽性を示したため,眼トキソカラ症と診断した.

緑内障:新しい眼圧計PASCALR

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS眼圧測定のgoldstandardと考えられているゴールドマン圧平眼圧計(Goldmann)applanationtono-metry:GAT)は,角膜厚が520?mのときのみ,角膜自身のチップ反跳力と涙液の表面張力によるチップ吸引力を相殺して,Imbert-Fickの法則(外力=眼内圧×圧平面積)が成立し,眼圧を推測できる.実際には,角膜厚やそれ以外の角膜の物理特性は個人によりかなりばらつくのに加えて,レーザーによる角膜屈折矯正手術の急増に伴い,上記の前提を大幅に逸脱した角膜性状をもつ個人の眼圧測定を行う機会が増えている現状から,こうした角膜性状に左右されない測定原理をもつ眼圧計測方法の確立が望まれるようになった.最近開発されたdynamiccontourtonometry(PAS-CAL?;ZeimerOphthalmicSystems社製)1)は,GATと異なり,チップの先端が平坦でなく,半径10.5mmの凹面をしている.これは平均的な角膜の曲率半径より若干大きい.そして,その中央部に直径1.2mmの電子圧センサーが埋め込まれている.ディスポーザブルのプラスチック・キャップを装着後,角膜と直径7.5mmの面積で接触させると,その面積内でチップと角膜表面の形状が一致するとき,角膜内外の圧は理論上等しくなる1).このときの圧シグナルを収集し,100Hzの収集率で信号をデジタル化する(図1).平均拡張期眼圧と心拍に一致した脈拍眼圧(ocularpulseamplitude:OPA)を測定する1).死体摘出眼球を用いたmanometry(前房内に圧transducerを刺入して測定する眼内圧)との比較では,GATは真の眼圧より平均約4mmHg低く計測したうえ,角膜実質浮腫のある場合,過小評価の程度がより大きくなるのに対して,PASCAL?は真の眼圧とは平均約0.6mmHgの差しかなく,しかも実質浮腫の影響も小さかった2,3).(75)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄75.新しい眼圧計PASCAL?中村誠神戸大学大学院医学系研究科器官治療医学(眼科学)PASCAL?は,凹面形状チップに角膜表面をフィットさせ,チップ中央部の圧センサーで眼圧を計測するdynamiccontourtomometerである.平均拡張期眼圧に加えて脈拍眼圧(ocularpulseamplitude)も測定できる.角膜厚や性状の影響を受けにくく,manometryに近い値を得られるといわれている.図1PASCAL?の本体とチップ図3プラスチック・カバーをチップに装着し,眼圧を測定しているところ図2細隙灯顕微鏡に装着したところ———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006GATや非接触式空気眼圧計は,中心角膜厚と計測眼圧値に有意な相関関係があるとする報告が多いが,PASCAL?では相関関係がないかあっても小さいとされる1).また,laser???????keratomileusis(LASIK)後,中心角膜厚が3~171?m薄くなった眼において,GATでは術1週後で平均4.9mmHg,術4週後で平均5.4mmHg低い値を示すのに対して,PASCAL?では術前・術後の眼圧値に有意差はみられなかった4).一方,GATでみられるこうしたLASIK後の眼圧低下は,中心角膜厚の変化率とは相関しなかった4).すなわち,PASCAL?で計測される眼圧値は角膜性状の影響を受けないと報告されている4).一方,OPA(正常,1~10mmHg)の臨床的意義はまだ不明だが,おそらく眼内,とりわけ毛様体の血流のおおまかな指標と考えられ,眼圧と有意な相関を示す(眼圧が高いほど大きい)ことが報告されている.線維柱帯切除後にはOPAは下降するが,翌日の下降幅が2mmHg以上のもののほうが,それ未満のものに比べ,3カ月後の時点での成功率(新たな眼圧下降治療を行わずに20%以上の眼圧下降を達成する率)が有意に高くなるという報告もある.術後の強膜の壁剛性の低下を反映していると考えられている.PASCAL?は,このように角膜性状の影響を受けず,真の眼内圧を反映する眼圧値に加えて,OPAという興味深い指標まで計測するとされる.しかし一方で,測定に10数秒かかることと大きなチップを角膜に接触させる必要があるため,固視不良例や瞼裂狭小例では測定できないことも多い.また,GATとはかなり値が異なるので,PASCAL?を標準眼圧測定とするには越えるべき障壁が多く残されているのが現状と思われる.文献1)KanngiesserHE,KniestedtC,RobertCA:Dynamiccon-tourtonometry.Presentationofanewtonometer.???????????14:344-350,20052)KniestedtC,NeeM,StamperRL:Dynamiccontourtonometry.Acomparativestudyonhumancadavereyes.???????????????122:1287-1293,20043)KniestedtC,NeeM,StamperRL:Accuracyofdynamiccontourtonometrycomparedwithapplanationtonometryinhumancadavereyesofdi?erenthydrationstates.?????????????????????????????????243:359-366,20054)SiganosDS,PapastergiouGI,MoedasC:AssessmentofthePascaldynamiccontourtonometerinmonitoringintraocularpressureinunoperatedeyesandeysafterLASIK.???????????????????????30:746-751,20045)VonSchulthessSR,KaufmannC,BachmannLMetal:Ocularpulseamplitudeaftertrabeculectomy.????????????????????????????????244:46-51,2006(76)☆☆☆

屈折矯正手術:屈折矯正手術におけるインフォームド・コンセントのポイント

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS●自由診療であるということ近年,インフォームド・コンセントという言葉が一人歩きをしている感があるが,この言葉が出現してくる以前から,外科手術や処置・検査の際には必ず行われてきたことでもある.自由診療であるから特別にインフォームド・コンセントが重要とは考えていないが,手術を希望してくる患者のなかには,重要視している方も多い.医師が診療する際に,保険診療か自由診療かで,診療態度が変わることはあってはならないが,医師も患者も双方が「自由診療」に慣れていないため,不自然に構えてしまうこともある.屈折矯正手術のインフォームド・コンセントが特徴的なのは,最終的な目標が「治癒」ではなく「満足」にあることだと考えている.このことを踏まえて,筆者の経験から述べてみたい.●医師とスタッフの意思疎通はきわめて重要従来より患者心理として,医師の前では何も発言せずに,検査や受付のスタッフに対しては本音を話すものである.通常,術前説明の細部に関しては,スタッフが説明することが多く,医師はその確認をする方式がとられている.ここで,説明を担当したスタッフから入ってくる患者の情報は非常に大切である.問診票(図1)に基づいて,職業や趣味,手術を受けたい動機,目標となる見え方のイメージを,細かく確認してゆく.続いて,筆者の施設では,ガイダンスに沿って,メリット・デメリット・合併症などを順次説明する.こうしたやりとりのなかで,スタッフが感じた患者の人となりは,その後の診察のなかで,医師が説明をするポイントを絞り込むのに非常に有用なのである.過度に期待の大きい場合や,非常に神経質な場合などは,手術適応そのものから考える診察をすることができる1,2).医師の得たい情報の要点が的確に把握されるためには,常にスタッフとの意思疎通を図らなければならない.どういったケースにリスクがあるのか,適応と不適応をどのように判断しているのか,という部分で医師とスタッフに共通認識があれば,インフォームド・コンセントを得るのは容易であろう.熟練したスタッフであれば,患者の人となりと医師の診療傾向を把握し,医師が再確認するであろう部分を重点的に説明しているものである.この場合,診察を始める時点ですでにインフォームド・コンセントはほぼ確立している.日頃から,手術適応に関してのみならず,手術に対する考え方や意義,なぜ自分がこの手術をやりたいのか,などを常にスタッフに伝え,同じチームとして最良の結果が出せるようなmotivationを保つ努力をするべきであろう.●医師としてのアドバイス言うまでもなく,インフォームド・コンセントとは医師・患者間での契約である.最終的な判断は,医師が行い,その責任も医師にある.最終的に確認しておかなければならないのは,「日常生活は十分に可能な視力になるが,イメージしている見え方とは異なる可能性がある」ということを,受け入れられるかどうかであると筆者は考えている.その点が理解されていれば,手術を勧め,不安や迷いが見られたら,それに対する具体的な対処法を話し合う.コンタクトレンズの経験がなければ,まずコンタクトレンズでの生活を勧める場合もあり,年齢によっては白内障の手術を勧めてもよいであろう.また,PhakicIOLやCK(conductivekeratoplasty)といった他の手術方法が良いと判断した場合,その理由を説明する.常に,目の前の患者が自分の家族であればどうするか,という気持ちで選択肢を考えればよいであろう.(73)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男76.屈折矯正手術におけるインフォームド・コンセントのポイント荒井宏幸南青山アイクリニック横浜屈折矯正手術の性格上,術後の不安や不満をいかに軽減するかは,術前のインフォームド・コンセントにかかっている.適応や合併症の列挙のみならず,担当医自身の意見を踏まえて説明すれば,本当の意味での納得や信頼は得られやすく,満足度も高くなると思われる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006エキシマレーザーによる手術のみが,屈折矯正手術ではないことを十分に理解することは重要である.いろいろなオプションがあり,そのなかで最良と思われる方法を提示することにより,余裕と誠意のあるアドバイスをすることができると思う.まとめ冒頭にて述べたように,術後の患者がどのように感じているかを,直接聞いているのはスタッフの場合が多い.円滑なインフォームド・コンセントをとるには,自らの経験から得たものに加え,スタッフから吸収した意見を取り入れて,説明のポイントを構築することが最も効率的である.インフォームド・コンセントの基本は,医師・患者間の意思疎通であろう.患者に「満足」してもらうのみならず「感動」してもらおうと思う気持ちも重要なポイントではないだろうか.文献1)根岸一乃:患者選択はどのように行うのですか?.あたらしい眼科18(臨増):15-18,20012)林仁:LASIKの術前検査と適応について教えてください.あたらしい眼科18(臨増):113-116,2001(74)☆☆☆図1南青山アイクリニックで用いている問診票─術前問診票には,何を主たる目的として手術を希望しているかが,読み取れるような構成が望ましい.南青山アイクリニック問診票-術前記入日:平成年月日フリガナ生年月日:西暦19年月日(才)お名前性別:男・女血液型:型ご住所:〒ご自宅・会社※当院からご案内などをお送りする際にクリニック名を記載してもよろしいですか?はい・いいえ・郵送不可TEL:携帯番号:※当院からご連絡する際にクリニック名を出してもよろしいですか?はい・いいえ緊急連絡先TEL:E-mailアドレス@.ne.jp.co.jp.comご職業(なるべく具体的に)パソコン使用有・無/夜間の車の運転有・無1.当院をどちらでお知りになりましたか?該当する項目を○で囲んでください。(複数回答可)1.雑誌を見た()2.新聞を見た()3.ラジオ・テレビ()4.南青山アイクリニックのホームページを見た5.VoiceStoreからの情報6.知人の紹介(ご紹介者のお名前:)7.眼科紹介(病院名:)※ご紹介者のお名前は、差し支えなければご記入ください。8.その他(メルマガ・検索エンジン・その他)2.現在のコンタクトレンズの使用状況を以下からお選びいただき、○で囲んでください。1.使用していない2.使用している(ソフト・乱視用ソフト・ハード年間使用)3.はずしている(ソフト・ハード日前から)使用ソフトコンタクトレンズの種類に該当するものを○で囲んでください。①ふつうタイプ・②使い捨てタイプ(1DAY・1WEEK・2WEEK・1MONTH)3.どの程度の裸眼視力(メガネ、コンタクトレンズなしの視力)改善を期待していますか?1.1.0以上(遠くの細かいものが良く見える)2.1.0程度(遠くが見える)3.0.7程度(運転免許の更新ができる程度)4.0.5程度(日常生活がメガネやコンタクトレンズなしで、なんとか過ごせる程度)5.0.1程度(分厚いメガネから解放されれば良い)4.手術を受けたいと思う動機を以下からお選びいただき、○で囲んでください。(複数の回答可)1.職業的な理由()2.メガネは外見上不利3.スポーツ(種類:)や趣味のため、メガネ・コンタクトは不便4.不同視(左右の近視の度数が違いすぎるので疲れる)がある5.メガネはとても疲れる6.コンタクトレンズは異物感、充血が出現するので長時間できない7.コンタクトレンズの手入れが面倒8.新しい手術だから受けてみたい9.メガネ、コンタクトレンズはお金がかかる10.裸眼で生活したい11.その他()裏面へ続きます。5.現在の自覚症状と最も近いと思われるものをお選びいただき、○で囲んでください。右目全く感じない0123かなり感じる4目が疲れる左目01234右目01234まぶしく感じる左目01234右目01234乾燥感(乾き)がある左目01234右目01234異物感(ゴロゴロ)がある左目01234右目01234かゆみがある左目01234右目全くしない0123かなりある4充血する左目01234右目全くない0123かなりでる4目やにがでる左目01234※薄目を開けて寝ているといわれたことがありますか?はい・いいえその他の症状があれば、なるべく具体的にお書きください。6.現在、または過去に目(流行性角結膜炎(はやり目)・角膜ヘルペスなど)や全身の病気、手術、ケガがあればお書きください。7.輸血歴、肝炎、高血圧、糖尿病の既往歴過去に輸血を受けたり、肝炎になったことのある方はお答えください。輸血ある・ない肝炎ある・ない現在高血圧の方はお答えください。治療中はい・いいえ現在糖尿病の方はお答えください。治療中はい・いいえ8.現在妊娠中、授乳中、避妊薬(ピルなど)を内服中でしたらお書きください。妊娠中:(現在ヵ月)授乳中:(月まで予定)避妊薬内服中:(薬品:、いつ頃から)9.現在、使用中の薬がありましたらお書きください(市販薬も含む)。点眼薬:()内服薬:()注射:()10.アレルギーの有無についてお答えください。花粉症・食物()・薬物()その他()11.生活習慣と老眼について調べております。もしよろしければアンケートにお答えください。たばこ:①吸う②毎日本?年③年前に止めた④吸わないお酒:①毎日を本/合②週に何回か③飲まない運動:毎日/毎週/毎月回位を分ご記入が終わりましたらお手数ですが、受付までお持ちください※収集目的については、院内掲示または案内文をご覧ください。また当クリニック主任執刀医の荒井医師が当ビル4Fで「クイーンズアイクリニック」を開院しており、検査や診察等を一部4Fでおこなうことがあります。そのため皆様方の診療記録等をクイーンズアイクリニックに開示しておりますことをご了承ください。※当クリニックでは、患者様の誤認を防止するため、患者様のお名前をお呼びさせていただいております。

眼内レンズ:小切開からの毛様溝縫着レンズ

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS近年,合併症症例にも積極的に眼内レンズ(IOL)挿入術(?内固定・?外固定,毛様溝縫着)が施行されている.従来の光学部がポリメチルメタクリレート(PMMA)の縫着専用IOLにおいては,固定は確実であったが,創口を大きく作製せねばならず,縫着手術による惹起乱視や強い術後炎症といった問題があった.このようなIOLは多くの病院ではIOLの二次挿入を計画的に行う際に取り寄せて使用するため,緊急時に使用することは困難である.今までにも,小切開からのシリコーン製IOLの毛様溝縫着などが報告されている1)が,小切開からの毛様溝縫着術に対応するフォルダブルIOLの開発が課題であった.今回筆者らは毛様溝縫着術に適したフォルダブルIOLを開発し,臨床例に用い良好な結果を得ている2)ので報告する.毛様溝縫着術では縫合糸の適切な位置への確実な固定がIOLの偏心,傾斜を防ぐうえで重要である3)が,従来のフォルダブルIOLはハプティックが直線状であることから,操作時に縫合糸のずれや緩みを生じる場合がある.硝子体手術の既往,加齢による硝子体の変化,アトピーの既往がある場合などでは,縫着術専用でない従来のフォルダブルIOLを使用すると,長期経過中にIOLに無理な張力がかかり,ハプティックから縫合糸が抜けてしまったりすることによる硝子体へのIOL脱臼など(71)小泉好子西原仁昭和大学藤が丘病院眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎241.小切開からの毛様溝縫着レンズ眼内レンズ(IOL)の毛様溝縫着は従来のフォルダブルIOLではIOL挿入時には縫合糸が外れたり,緩んだりすることにより,縫合糸をハプティックへ正確に対称固定することは困難であり,術後の偏心や傾斜の原因となる.今回,毛様溝縫着に際し小切開からの挿入,確実な固定が可能なフォルダブルIOLを開発したので報告する.図3CowHitchi法により固定された縫合糸縫合糸は術中操作中においても緩むことはない.13.0mm6.5mm図1レンズの全体像ハプティックの形状は肉眼的に区別がつかない.通常の?内固定としても使用可能である.1.30mm0.20mm0.13mm図2ハプティック先端の拡大像ハプティックの膨大部で確実な固定ができる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(00)の合併症を生じる4).縫合糸のずれは術後の偏心,傾斜の原因となるが,術後の傾斜は屈折誤差の原因となる5).そのため筆者らは,?内・?外固定,毛様溝縫着術にも使用可能なフォルダブルIOLを開発し,現在臨床例で使用している.小切開からIOLを挿入することで,乱視や炎症,硝子体出血などの合併症が軽減され,さらにカウヒッチ操作を行うことで縫合糸をハプティックに固定することが容易となる.小切開創から容易に毛様溝にIOLを縫着することは,術時間の短縮につながり,患者負担も軽減できる.このフォルダブルIOLはPMMAのハプティックが重合されたアクリル製シングルピースであり,全長13mm,光学系6.5mmである(図1).ハプティックの直径は0.13mmだが,先端から1.3mmの部分は0.20mmと太くなっており(図2),CowHitchi操作により縫合糸の結び目が締め上げられ確実に固定される(図3).ハプティックの形状は肉眼的に区別がつかないため,通常の?内固定としても使用可能であり,毛様溝挿入および毛様溝縫着にも対応できる.そのため,緊急の毛様溝縫着手術の際にも対応が可能である.臨床例においても,縫合糸のハプティックへの固定,小切開創からの挿入,毛様溝への縫着など一連の手術操作を通じて,縫合糸の弛緩やずれは生じておらず2),本IOLは毛様溝縫着に適したフォルダブルレンズであると思われる.文献1)松村謙一郎,秋谷忍:合成接着剤とCowHitchi法を併用したシリコーン製フォーダブル眼内レンズ(AQ110N)による毛様溝縫着術.眼科手術10:385-388,19972)小泉好子,千田実穂,西村栄一ほか:新しく開発したユニバーサルフォーダブル眼内レンズの有用性.????????19:455-458,20053)千田実穂,西原仁,島田一男ほか:毛様溝縫着に適したフォーダブル眼内レンズのハプティック.????????18:428-432,20044)日下野勉,北岡隆,雨宮次生:硝子体腔内眼内レンズ落下症例の検討.二次縫着には専用レンズを用いるべし.臨眼57:747-750,20035)具志堅直樹,小浜信司,福島茂ほか:眼内レンズ毛様溝縫着術後屈折値の検討.あたらしい眼科12:505-508,1995

コンタクトレンズ:連続装用の問題点

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS連続装用は理想的なコンタクトレンズ(CL)の目標の一つである.しかし現状では,より重要な目標である安全性を損なう装用方法であり,好ましくない.CLの連続装用=就寝時装用が安全性を損なうのは,つぎの3つの問題のためである.1.就寝時,角膜上にCLが存在しているという機械的な問題.2.角膜上の酸素分圧低下がもたらす問題.3.連続装用を行う使用者に関する問題.●就寝時,角膜上にCLが存在している透気性ハードCLの就寝時装用によるオルソケラトロジーでは,起床時に高率でCLの固着が発生することが知られている.固着の程度とフィッティングによってはCL中央部,エッジ部に一致して角膜上皮障害や角膜変形が生ずる.ハード,ソフトにかかわらず角膜とCL間の涙液交換が妨げられ,角膜上皮?脱物,眼脂などがCL下に捉えられたままとなって,角膜上皮障害をひき起こす例も多い.CL前面の汚れによる上眼瞼結膜の乳頭結膜炎,後面の汚れによる角膜上皮障害も生じやすくなる.透気性の高いシリコーンハイドロゲルCLにおいてもCL下にムチン・ボールが生じやすくなり,その部の角膜上皮の菲薄化によって感染を起こしやすくなる可能性が指摘されている1).●角膜上の酸素分圧低下CLを装用して閉瞼すると30分以内にendothelialbleb(図1)が観察されるようになり2),1~2時間のうちに角膜浮腫が生ずることが知られている3).角膜浮腫は低酸素負荷による角膜上皮の代謝異常の結果と考えられるから,浮腫が生じた時点から臨床的な問題とするのが妥当だろう.逆に言えば,就寝時装用といっても1時間程度の仮眠であれば低酸素負荷に関する限り,大きな問題ではないと推測される.酸素透過性が低いCLの連続装用を続けると角膜上皮細胞の健常性が損なわれ4),浮腫,分裂能低下5),病原菌が付着しやすくなるなどの異常が発生する.就寝時装用によって機械的に障害を受けた角膜上皮に,低酸素負荷による上皮の健常性低下が加われば細菌性角膜炎の危険性が増し,分裂能低下によって上皮の?脱が阻害されれば病原菌が深部に侵入する機会が増すことになる.連続装用を行うと,永続的視力低下につながるおそれのある細菌性角膜炎の発症率が,終日装用の5~10倍程度に増加6,7)するのは,この結果と考えられる(図2).低酸素負荷による角膜内皮細胞の減少は看過してよい問題ではないが,大問題でもない.CLの装用のみが原(69)稲葉昌丸大阪市・稲葉眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS267.連続装用の問題点図1透気性ハードCLの連続装用によって生じたendothelialbleb図2連続装用時の細菌感染発生機序①:連続装用による角膜上皮の機械的な障害.②:低酸素負荷で健常性を失った上皮細胞に病原菌が付着.③:分裂能低下によって?脱遅延が生ずるため,病原菌が上皮に感染,繁殖.④:細菌性角膜炎発症.⑤:角膜潰瘍に発展する場合もある.①②③④⑤角膜実質角膜上皮———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(00)因となった角膜水疱症は報告されていない.低酸素負荷などによって大小不同が生じた角膜内皮を自動解析すると小さな細胞が認識されず,細胞密度を過小評価することが多い.部位による差もあり,数十個の細胞を対象とした解析結果はばらつきが大きい.内皮細胞の変化はゆるやかであるから,年1回程度の測定を行い,多少の数字の変化には振り回されないよう評価を行う必要がある.●連続装用を行う使用者連続装用に伴うリスクを十分説明すれば,消防士,夜勤の医療従事者など職業的に連続装用せざるを得ない使用者を除いて,ほとんどの者は終日装用を選択する.にもかかわらず連続装用を行っているのは,十分なリスク説明がなく処方されているか,説明されても危険性が十分理解できない場合である.前者であれば処方施設のレベル自体が低く,CLのケアや装用を中止すべき自覚症状についての説明も不十分と考えられる.後者であればCLケア,定期検査,CLの交換などを励行しない可能性が大きい.いずれにしても,特別な必要性がないのに連続装用を行っている使用者は,CL装用自体についての危険性が高い.まとめ連続装用は角膜上皮に対して機械的な障害,低酸素負荷による異常をひき起こし,結果として細菌性角膜炎などの重篤な合併症をひき起こす危険性が高い.安易に連続装用CLを処方する施設,装用する使用者にも問題がある.連続装用を行う際には十分なリスク説明と適切な指導,慎重な経過観察が必要である.文献1)LadagePM,PetrollWM,JesterJVetal:Sphericalinden-tationsofhumanandrabbitcornealepitheliumfollowingextendedcontactlenswear.??????28:177-180,20022)ZantosSG,HoldenBA:Transientendothelialchangessoonafterwearingsoftcontactlenses.??????????????????????????54:856-858,19773)HoldenBA,SweeneyDF,SandersonG:Theminimumprecornealoxygentensiontoavoidcornealedema.?????????????????????????25:476-480,19844)NilssonSEG:Bacterialkeratitisandin?ammatorycornealreactions:possiblerelationstocontactlensoxygentrans-missibility.??????28:62-65,20025)HamanoH,HoriM,HamanoTetal:E?ectsofcontactlenswearonmitosisofcornealepitheliumandlactatecon-tentinaqueoushumorofrabbit.????????????????27:451-458,19836)水谷由紀夫:コンタクトレンズに関する選択基準─安全性からの選択─.日コレ誌47:88-92,20057)StapletonF,DartJKG,MinassianD:Riskfactorswithcontactlensrelatedsuppurativekeratitis.??????19:204-210,1993

写真:クインケ(Quincke)浮腫

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS(67)加治優一筑波大学臨床医学系眼科写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦268.クインケ(Quincke)浮腫上眼瞼の浮腫図2図1のシェーマ図1両眼瞼のクインケ浮腫突然に両眼瞼の浮腫を生じた例.顔貌が大きく変わり,開瞼が困難となった症例.図4口唇粘膜のクインケ浮腫口唇粘膜の著しい浮腫を認める.図3口唇のクインケ浮腫下の口唇の浮腫を認める.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(00)●歴史眼瞼や口唇などの皮膚~皮下において突然に浮腫が生じ,数時間~数日で消失する疾患.血管神経性浮腫(angioneuroticedema)ともいわれる.MarcelloDonati(1538~1602)によって最初の報告がなされ1),ドイツの内科医であるHeinrichIrenaeusQuincke(1842~1922)により詳細な記載がなされた2).Quinckeは髄液検査の創始者としても有名で,Bern大学およびKiel大学の内科主任教授を勤めた.●分類遺伝性と非遺伝性のタイプに分けられる.遺伝性のクインケ浮腫は,補体C1のエステラーゼ阻害物質が欠損することによって,補体反応が過剰になるために生じる3).遺伝性のタイプは重症になりやすく,皮膚症状にとどまらず,消化管粘膜の浮腫による下痢・腹痛や,喉頭粘膜の浮腫による気道閉塞のために窒息死を起こすこともありうる.非遺伝性のタイプは,アレルギーやストレスが発症の引き金となりやすい.●臨床所見眼瞼や口の周りなどに,突然に直径数cm大の無痛性の浮腫を生じる.病変を押しても凹むことはなく,痛みや痒みを伴うことは少ない.再発しやすい傾向にある.発症時には顔貌が大きく変わるために,悩んでいる患者は多い.●診断特徴的な肉眼所見より診断は比較的容易である.腹痛や下痢などの消化管症状や呼吸困難感を呈したとしても,患者は皮膚の病変と同じ病気とは考えていない.重症例を見逃さないためにも,家族歴や消化管・呼吸器疾患の病歴を含めた問診が大切である.●治療法・予後じんま疹と同様の機序で発症していると考えられているものの,正確な発症機序は不明である.患者が自らの判断で軟膏などを使用している場合には直ちに中止し,抗ヒスタミン作用をもつ内服薬を処方する.皮膚科や耳鼻科(特に呼吸困難感を伴う場合)専門医へのコンサルトも必要となる.文献1)DonatiM:Demedicahistoriamirabili.Mantuae,perFr.Osanam,15862)QuinckeHI:?berakutesumschriebenesHaut?dem.Monatsheftef?rpraktischeDermatologie,Hamburg.I:129-131,18823)DonaldsonVH,EvansRR:Abiochemicalabnormalityinhereditaryangioneuroticedema.????????????35:37-44,1963

時の人

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS札幌医科大学医学部眼科学講座の歴代教授は,初代の末吉利三先生を初めとして,田川貞嗣先生,中川喬先生,大塚賢二先生と続き,平成18年(2006)4月に大黒浩先生が第5代の教授に就任された.本教室は,歴代教授の指導のもと,斜視,神経眼科,網膜硝子体,緑内障などの分野が発展を遂げ,各専門外来がそれぞれ優れたスタッフをもち充実している.これは,これまで専門的な分野をもつ眼科医が養成されてきた賜物である.歴代教授による教室の方針として,個々人の興味を重視した研究テーマを認め,自由に研究することをモットーとしてこられたとのことである.*大黒先生は,昭和59年(1984)3月に札幌医科大学医学部医学科を卒業,昭和63年(1988)3月に札幌医科大学大学院医学研究科を修了されたあと,同年4月から札幌医科大学医学部生化学第一講座に助手として勤務され,平成元年(1989)9月に眼科学講座に入局,同年10月から留萌市立病院眼科医長として勤務された.その後,大黒先生は平成4年(1992)7月に米国ワシントン大学眼科にseniorfellowとして留学され,ここで,ロドプシンキナーゼを世界で初めて分離・精製されたKrisPalczewski博士のもと,網膜光情報伝達機構に関する生化学研究を学ばれた.これが現在,大黒先生が行われている「網膜変性の分子病態と視細胞における光情報伝達機構の異常との関連性」の発見の基礎となった.この研究成果は,新しい治療法開発のきっかけになると期待されており,平成17年(2005)度第109回日本眼科学会宿題報告「網膜色素性に対するあたらしい薬物治療の可能性」として発表された.大黒先生は平成7年(1995)7月に札幌医科大学医学部眼科学講座に戻られ,平成9年(1997)3月同講座の講師に就任された.さらに,平成13年(2001)1月には弘前大学医学部眼科学講座に講師として勤務され,平成14年4月に同講座の助教授に就任された.先生はこの弘前時代に,研究はもとより,眼科臨床および教育を中沢満教授より“みっちり”ご指導を受けられたとのことである.そして,平成18年(2006)4月に札幌医科大学医学部眼科教室の教授に就任された.*大黒先生の研究テーマは「網膜変性および緑内障の分子病態および治療の研究」であり,平成8年に「日本神経眼科学会若手奨励賞」を,平成9年には「ロート賞」,平成16年には「第9回弘前大学医学部学術特別賞(金賞)」を受賞されるなど,多くの業績をあげられている.*大黒先生の信念は臨床面では,(1)これまでの札幌医科大学眼科の伝統である「専門性を意識した医師育成」を継承しつつ,(2)弘前大学で学んだ「眼科領域すべてを診られるという総合性」を兼ね備えた眼科医を育てることであり,これが北海道で求められる眼科医師像であると考えられておられるとのことである.研究面では,「人のまね」や「いわゆる流行りの研究」をするのではなく,自分が疑問に思っていることを解決するために,どうするかを考える,そして実現する.これを地道に行っていけばいつかは認められる,ということをモットーにしていきたいと先生は語られた.また,教育面では,学生や医員がお互いに奉仕し,継続してつきあっていくことが大切であると強調しておられた.*最後にご趣味についてお聞きすると,旅行,特に温泉巡り,そして映画鑑賞ですとお答えになられた.(65)人の時札幌医科大学医学部眼科学講座・教授大??黒??浩???先生

網脈絡膜変性疾患の治療へ向けて:人工網膜

2006年9月30日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSらのグループによって,おもに網膜疾患の検査を目的としてコンタクトレンズ型電極を用いて経角膜で眼球を電気刺激した際のelectricalphospheneに関する数々の研究報告が行われた3~7).これら一連の研究から網膜色素変性症で失明に至った患者でも眼球への電気刺激によってelectricalphospheneが生じることが明らかになった.コンタクトレンズ型電極を用いた電気刺激では網膜全体に電流が拡散するため,electricalphospheneは視野全体に広がる.それに対し,直径数百マイクロメートル程度の単極電極を網膜に接触させ電気刺激を与えた場合,網膜が局所的に刺激されるため,被験者は1個の点状のelectricalphospheneを知覚することが知られている8).この刺激電極を多極化しそれぞれの電極で局所刺激を行うと,刺激部位に対応してelectricalphospheneが光の点の集まりとして知覚されるのではないかと考えられている.人工視覚ではテレビカメラなどを用いて体外の画像データを取得し,その情報をもとに刺激部位を多極電極で制御することで,パターン状のelectricalphospheneを生み出し簡単な文字や絵を表現することを目指している(図1).II人工視覚(arti?cialvision)の種類さまざまな方式の人工視覚が提案されており,それらは多極電極を埋植する部位によって分類することができる.現在のところ,網膜を刺激するタイプ(人工網膜,retinalprosthesis),視神経を刺激するタイプ(視神経はじめに網膜色素変性や加齢黄斑変性などの網脈絡膜変性疾患で,視細胞が変性し失明に至った場合,現在視力回復の手段は存在しない.遺伝子治療や,再生医療などの研究が精力的に行われているが,まだ臨床応用に至っていない.一方,網膜,視神経または大脳皮質への電気刺激によって生じる光覚を利用して,失われた視覚の再建を目指す人工視覚は,これらの疾患に対する有効なアプローチの一つとして期待されており,1日でも早い実用化を目指して,世界各国で精力的に研究開発が進められている.わが国においても2001年度より経済産業省(NEDO)と厚生労働省の連携国家プロジェクトとして人工網膜の研究が始まった.本プロジェクトでは大阪大学,名古屋大学,杏林大学,滋賀医科大学,奈良先端科学技術大学院大学,九州大学,(株)NIDEKが参加し,2011年の実用化を目指して研究開発を進めている.I人工視覚の原理被験者の視覚系伝導路の一部に電気刺激を与えると光感覚を生じる.これを電気閃光(electricalphosphene)とよぶ.Electricalphospheneの現象は古くから知られており,1755年にはLeRoyが眼球への電気刺激によるelectricalphospheneの報告を行っている1).その後,1960年代後半よりBrindleyによって大脳皮質を電気刺激した際に生じるelectricalphospheneの研究が行われた2).また同時期にPotts&Inoueらのグループや三宅(59)????*TakashiFujikado:大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学教室〔別刷請求先〕不二門尚:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学教室特集●網脈絡膜変性疾患のアップデートあたらしい眼科23(9):1169~1174,2006網脈絡膜変性疾患の治療に向けて:人工網膜??????????????????:?????????????????????????????????????????????????????????不二門尚*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006刺激型人工視覚),そして視覚皮質を刺激するタイプ(皮質刺激型人工視覚)の3種類が提案されている9).原理的には視覚伝導路のどこを刺激してもelectricalphos-pheneが生じると考えられるため,上記のほか外側膝状体も刺激場所の候補としてあげられる9).人工視覚はその方式によって適応疾患や手術の安全性が異なる.たとえば,皮質刺激型人工視覚の場合,さまざまな疾患に対して適応が望めるものの,多極電極の埋植時に開頭術を要するため,手術の危険性やその後の感染症のリスクが高い.一方,人工網膜は装置の埋植手術の安全性は高いものの,網膜神経節細胞が変性している場合や視神経の機能が正常に保たれていない場合には,electricalphospheneを生み出すことができず,適応可能な疾患の範囲が限られる.III人工網膜(retinalprosthesis)の種類と開発状況人工網膜では,多極電極を網膜の近傍に設置して電気刺激を行う.前述のとおり刺激する電極の組み合わせを選ぶことによって,患者は文字などのパターンをちょうど電光掲示板のように複数の光点のパターンで知覚することができるのではないかと考えられている.人工網膜のシステム開発はまだ研究段階にあり,どのグループもいまだ臨床応用には至っていない.それは,実用化に向けて,クリアしなければならない安全面や機能面の課題が残っているためである.たとえば,手術時に電極で網膜を損傷させるリスクを極力抑えなければならない.そして大電流で生じる熱やpHの変動で生じる網膜損傷のリスクを抑えなければならない.また機能面の課題としては,刺激電極の改良や刺激方法の最適化を行うことで,解像度を上げる工夫が必要である.現在までに考案されてきた人工網膜は多極電極の埋植部位によってさらに網膜上刺激方式,網膜下刺激方式,脈絡膜上?経網膜刺激方式の3つの方式に分類できる(図2).次節ではそれぞれの方式について詳しく説明する.1.人工網膜の種類a.網膜上刺激方式これは,多極電極を網膜上(多極電極を網膜と硝子体の境界)に設置し網膜を刺激する方式である.多極電極は,網膜タックとよばれる小型の押しピンで網膜上に固定される.この網膜タックの先端は網膜を貫き強膜層まで到達する(図2A).1980年代後半にMichelsonやJuan&Humayunによって考案された網膜上刺激方式10,11)は,当初,撮像素子を多極電極と同一基盤内に組み込んだシステムを提案していた.しかし,この場合撮像面(硝子体側)と電極面(網膜側)が反対側を向くため,回路作製に非常に高度な技術を要する.その後多極電極,刺激回路,撮像素子などがそれぞれ分離されたシステムが提案された.2000年代に入りHumayunが率いる南カリフォルニア大のグループは人工内耳を改造して16極型の多極電(60)テレビカメラ強膜多極電極脈絡膜網膜図1人工視覚の想像図多極電極網膜タック網膜脈絡膜強膜ABC図2人工網膜の3つの方式A:網膜上刺激方式,B:網膜下刺激方式,C:脈絡膜上?経網膜刺激方式.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????極を装備した網膜上刺激方式の人工網膜を試作した.このシステムを実際に網膜色素変性症患者に埋植し1年以上機能したとの報告を行った12).この人工網膜は内部装置と外部装置の2つの装置から構成されている.外部装置は,体外に設置され,外界の画像データを取得するテレビカメラと画像処理を施す回路などから構成される.内部装置は体内に埋植される装置で,刺激装置と多極電極を搭載し,外部装置から受け取った画像データを基に多極電極で網膜の神経細胞を電気刺激し興奮させ画像情報を脳へ伝える.外部装置と内部装置との間はコイルを用いた電磁誘導により画像データと電力の無線伝送が行われる.この内部装置では,多極電極のみ眼内へ埋植しそのほか刺激回路やコイルは眼外(側頭部の皮下)に埋め込む方式が採用されている.側頭部にコイルを設置することによってコイルサイズを大きく設計することができるため大電力供給が可能となる.いかにして電極本数を増やし自然な視覚に近づけるか,また手術手技が複雑なためそれをどのように改良していくかが今後の課題となっている.一方,Walterらのグループは,内部装置を完全に眼内へ埋植する方式を採用したシステムを開発した13).この内部装置ではコイルと刺激装置が前眼部に設置され体外装置から電力と画像情報を取得する.多極電極は黄斑付近の網膜上に網膜タックで固定される.この試作機を実験動物の眼球に埋植したところ,人工網膜による電気刺激で神経興奮を惹起することができたと報告している13).移植手術時に眼球への侵襲が大きいため,慢性埋め込みに向けてこれをどのように改良するかが今後の課題である.b.網膜下刺激方式これは,多極電極を網膜下(神経網膜と網膜色素上皮の境界)に埋植し網膜を刺激する方式である(図2B).網膜上刺激方式に比べて,多極電極の固定は比較的安定し網膜タックを必要としない.また,電極面で眼内入射光を受けることができるため,撮像素子と多極電極を同一基盤上に組み込むことが可能である.したがって,このシステムでは人工網膜で生み出した視覚が眼球運動に対して自然に対応できる.ただ,脈絡膜からの網膜への栄養輸送が電極で遮断されることによる網膜損傷が生じることが危惧される.Tassickerは1956年に発表した特許のなかで,光感受性をもつ物質を表面に塗布した金属片を網膜下に移植することによって眼内入射光に応じて網膜の神経細胞を刺激する手法を発表した14).この特許が網膜下刺激方式の原型となった.その後1991年には半導体シリコン基盤表面に複数のフォトダイオードを作製した人工網膜がChowによって考案された15).実現性の高いアイデアであったため,この特許をきっかけに1990年代に半導体シリコンを用いた網膜下刺激方式の人工網膜の研究がChowのグループやZrennerのグループによって精力的に行われた.この装置はASR(arti?cialsiliconretina)またはMPDA(micro-photodiodearray)とよばれ,これらは近年急速に発達した集積回路技術を応用することで直径2~3mmの円形の薄い基板上に撮像素子とそれに対応する刺激電極を数千組搭載することが可能である.しかし,動物実験による機能評価が進むにつれ,眼内入射光だけでは神経細胞を興奮させるのに必要な電力をまかなうのが困難であることが徐々に明らかになってきた.そこでZrennerのグループは体外装置から赤外線で電力供給を行うことによって不足分の電力を補う新しいMPDAの開発を進めている.このMPDAの場合,赤外線受光部と信号処理回路を増設しなければならないため必然的に内部装置のサイズが大きくなり,装置すべてを眼内に埋植することが困難となる.そこで,経硝子体経由にて人工的に網膜?離させた部位に装置を移植する従来の術式(ab-interno方式)の代わりに,強膜を貫通して経脈絡膜的に網膜下へアプローチする術式(ab-externo方式)が開発された.この手術を用いて多極電極と赤外線受光部のみ眼内へ,刺激回路の一部が眼外へ飛び出した形での埋植が可能となった.一方,これまで網膜上刺激方式の研究を進めてきたRizzo&Wyattのグループは最近方針を変更し,網膜下刺激方式による人工網膜の研究に着手した.彼らの提唱する人工網膜は,ChowやZrennerの網膜下刺激方式の人工網膜と異なり,撮像部分が体外に設置される11).体外装置で取得した画像データと駆動用電力はコイルを介して内部装置へ伝送される.内部装置中のコイルと刺激(61)———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(62)ABCDBEFGHN1P1N1P1図3健常ラットとRCSラットにおける網膜組織,ERG,光刺激に対する上丘の誘発電位,STSによる上丘の誘発電位の比較ヘマトキシリン?エオジン染色による網膜切片の光顕像からRCSラットでは外顆粒層,視細胞内節,視細胞外節が消失していることがわかる(A:健常,B:RCS).健常ラットではフラッシュ光に対するERG(C)と上丘誘発電位(E)の反応が得られているが,RCSラットではERG(D)と上丘誘発電位(F)とも反応が得られなかった.STSに対する上丘の誘発電位は健常ラット(G)からもRCSラット(H)からも反応が得られた.OS:視細胞外節,ONL:外顆粒層,INL:内顆粒層,IPL:内網状層,GCL:網膜神経節細胞層,スケールバー:100?m(A,B).刺激強度10,30,60,80,100?A(G,H).矢印は刺激を与えた瞬間を表す.縦軸:20?V,横軸:100ms(C,D),縦軸:100?V,横軸:100ms(E,F),縦軸:100?V,横軸:20ms(G,H).———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????回路は眼外の強膜上に設置し多極電極部のみab-exter-no手術で網膜下へ挿入される.これにより,2次コイルの面積を大きく設計することができるため最大1mAの出力が可能である.すでに彼らは試作機を作製し動物実験で安全評価試験を進めている.2.脈絡膜上?経網膜刺激方式網膜上刺激方式と網膜下刺激方式は「多極電極が眼内に埋植され網膜に直接接触している」という特徴を有する.多極電極が接触した状態で網膜に電気刺激を行うことでより高解像度の画像を再現させることを目指している一方で,多極電極の埋植時に網膜へ損傷を与える危険性がある.この問題を解決できる可能性をもった網膜刺激方式として脈絡膜上?経網膜刺激方式(suprachoroidal-trans-retinalstimulation:STS方式)が田野らによって考案され17),わが国のプロジェクトにて研究開発が進められている.STS方式では,多極電極を眼球「強膜半層切除した部位」または「脈絡膜と強膜の間」に設置し,参照電極を硝子体内に設置する(図2C).そして,硝子体内に設置した参照電極との間で網膜を貫通するように刺激電流を通電する.多極電極が網膜と接触していない点および多極電極が眼外に設置される点がこの刺激法の大きな特徴である.多極電極が網膜と接触しないため,手術時の網膜への侵襲を低減できると期待できる.さらに,網膜貫通型の電流を用いるため,たとえ多極電極が網膜と離れていても効率的に局所刺激が可能になるのではないかと考えられる.また大きな多極電極を移植することができ広い視野を確保できる.全体のシステムとしてはHumayunのグループやRizzo&Wyattのグループのシステム同様,外部装置と内部装置の2つの装置から構成される.外部装置にはテレビカメラや信号処理回路が搭載され,内部装置には刺激回路や多極電極が搭載される.STS方式は,まだ基礎研究の段階であるが,これまでのいくつかの研究から徐々に有効性が示されてきている.たとえば,STS方式の機能評価を網膜色素変性症モデル動物(RCSラット)視覚中枢から行った結果,低い刺激強度で限局した誘発電位を惹起できることが確認された18)(図3).また,昨年学内倫理委員会の承認を経て2例の網膜色素変性のボランティアに対して急性臨床試験を行い,STS方式により限局したelectricalphos-pheneが得られ,2点弁別が可能であることを見出した19).今後,空間分解能などの機能評価や安全性に関して研究を進めていく予定である.おわりに現在開発が進められている人工網膜の電極数は多くても数十極である.そのため,これらが仮にうまく機能したとしても高い解像度は望むことがむずかしい.ただ,すでに実用化されている人工内耳においては,電極数は22極しかなく,埋め込み直後も患者は音声の認識率が低いものの,手術後長期間のリハビリテーションによって音声の認識率が飛躍的に伸びると報告されている.そのため,人工網膜埋め込み直後は再現できる視力は低くても,訓練やリハビリテーションによって視機能が高まっていくことも考えられる.また,今後人工網膜は,研究が進むことでより解像度を増した人工網膜が開発されていくことと思われる.近い将来人工網膜によって読書可能な程度の視機能を回復させることが可能となるかもしれない.文献1)LeRoyC:O?l?onrendcomptedequelquestentativesquel?onafaitespourgu?rirplusieursmaladiesparl??lec-tricit?.?????????????????????????????????????????60:87-95,17552)BrindleyGS,LewinWS:Thevisualsensationsproducedbyelectricalstimulationofthemedialoccipitalcortex.?????????194:54-55,19683)PottsAM,InoueJ,Bu?umD:Theelectricallyevokedresponseofthevisualsystem(EER).?????????????????7:269-278,19684)PottsAM,InoueJ,Bu?umD:Theelectricallyevokedresponse(EER)ofthevisualsystem.II.E?ectofadapta-tionandretinitispigmentosa.?????????????????8:605-612,19695)PottsAM,InoueJ:Theelectricallyevokedresponseofthevisualsystem(EER).3.FurthercontributiontotheoriginoftheEER.?????????????????9:814-819,19706)三宅養三,柳田和夫,矢ケ?克哉:EER(ElectricallyEvokedResponse)の臨床応用(I)正常者のEER分析.日眼会誌84:354-360,1980(63)———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.9,20067)三宅養三,柳田和夫,矢ケ?克哉:EER(ElectricallyEvokedResponse)の臨床応用II.杆体,錐体系視路障害疾患のEER.日眼会誌84:502-509,19808)HumayunMS,deJuanEJr:Arti?cialvision.???12(Pt3b):605-607,19989)WarrenDJ,NormanRA:HandbookofNeuroprostheticMethods.p261-302,CRCPressLLC,BocaRaton,Florida,200310)MichelsonRP:USPatent:4628933,198611)DeJuanEJr,HumayunMS:USPatent:5109844,199212)HumayunMS,WeilandJD,FujiiGYetal:Visualpercep-tioninablindsubjectwithachronicmicroelectronicreti-nalprosthesis.??????????43:2573-2581,200313)WalterP,KisvardayZF,GortzMetal:Corticalactiva-tionviaanimplantedwirelessretinalprosthesis.?????????????????????????46:1780-1785,200514)TassickerGE:USPatent:2760483,195615)ChowAY:USPatent:5024223,199116)KarcichKJ,BuckA,WyattJetal:Asystemforleakagetestingof?exibleelectroniccomponents.??????????????????????????45:E-Abstract4183,200417)田野保雄,不二門尚,福田淳:公開特許公報JP2004-57628A,200418)KandaH,SawaiH,MorimotoTetal:Electrophysiologicalstudiesofthefeasibilityofsuprachoroidaltransretinalstimulationforarti?cialvisioninnormalandRCSrats.?????????????????????????45:560-566,200419)KameiM,FujikadoT,KandaHetal:Suprachoroidal-transretionalstimulation(STS)arti?cialvisionsystemforpatientswithretinitispigmentosa.?????????????????????????47:E-Abstract1537,2006眼科学【監修】眞鍋禮三(大阪大学名誉教授)I.総論VIII.ぶどう膜XV.屈折・調節異常II.眼科診療室にてIX.水晶体XVI.光覚・色覚の異常III.眼瞼X.網膜硝子体XVII.全身疾患と眼IV.涙器(涙腺,涙道)XI.視路,瞳孔,眼球運動XVIII.眼のプライマリーケアV.結膜XII.眼窩XIX.眼治療学総論VI.角膜XIII.緑内障XX.付録VII.強膜XIV.斜視,弱視A.眼科略語集/B.眼科関連法律(法令)/C.リハビリテーション/D.主な眼科雑誌の紹介基礎と臨床との関連性を強く前面に打ち出し、単に眼科学の知識の羅列でなく、何故そうなるのかがわかる記載を心がけた。また、基礎編の記載でも必ず臨床を念頭においた書き方に努めることとした。教科書の内容になじまないトピックス的なものにも触れようと囲み記事として随所に配したが、勉強中の息抜きの読み物として楽しんでもらえれば幸いである。楽しみながら、そして考えながら「眼科学」を身につけることができる教科書として、広く親しまれることを願ってやまない次第である。(あとがきより)B5判2色刷り総674頁カラー写真・図・表多数収録定価23,100円(本体22,000円+税5%)メディカル葵出版〒113─0033東京都文京区本郷2─39─5片岡ビル5F振替00100─5─69315電話(03)3811─0544■内容内容■考える診療のために!あの名著が更にUp-To-Dateな情報を盛り込んで!待望の改訂版、登場!■疾患とその基礎■<改訂版>株式会社(64)