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緑内障眼の黄斑部血管・灌流密度および網膜神経節細胞複合体厚と中心視野:セクター別構造と機能の関係

2025年7月31日 木曜日

《第35回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科42(7):892.897,2025c緑内障眼の黄斑部血管・灌流密度および網膜神経節細胞複合体厚と中心視野:セクター別構造と機能の関係大内達央*1山下力*1,2荒木俊介*1,2後藤克聡*1三宅美鈴*1水上菜美*1春石和子*1,2家木良彰*1八百枝潔*3三木淳司*1,2*1川崎医科大学眼科学1*2川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科*3やおえだ眼科CSectoralStructure-FunctionRelationshipsBetweenMacularVesselandPerfusionDensity,RetinalGanglionCellComplexThickness,andCentralVisualFieldinGlaucomatousEyesTatsuhiroOuchi1),TsutomuYamashita1,2),SyunsukeAraki1,2),KatsutoshiGoto1),MisuzuMiyake1),NamiMizukami1),KazukoHaruishi1,2),YoshiakiIeki1),KiyoshiYaoeda3)andAtsushiMiki1,2)1)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,2)CUniversityofMedicalWelfare,3)YaoedaEyeClinicCDepartmentofOrthoptics,FacultyofRehabilitation,Kawasaki目的:緑内障眼における網膜表層の黄斑部血管密度(mVD:単位面積あたりの血管の長さ),灌流密度(mPD:単位面積あたりの血管面積の割合),網膜神経節細胞複合体(GCC)厚と中心視野障害(中心C10-2)との関連を検討した.対象・方法:対象は広義原発開放隅角緑内障C24例C37眼(MD値:.9.1±9.4CdB)とした.年齢,眼軸長を共変量,症例をランダム効果とした線形混合モデルにおいて,mVD,mPD,GCC厚とCMD値,セクター別CTD値の関連を検討した.結果:mVD,GCC厚はCMD値と有意な関連がみられた(mVD:StandardizedCb=0.38,GCC厚:Standard-izedCb=0.72).セクター別の解析ではCmVD,GCC厚はすべてのセクターで平均CTD値と有意な関連がみられた.結論:緑内障眼のCmVD,GCC厚は対応する中心視野との関連を示し,GCCの菲薄化がもっとも緑内障性視野障害の程度を反映する指標であることが示唆された.CPurpose:ToCinvestigateCtheCrelationshipCbetweenCmacularCvesseldensity(mVD;lengthCofCvesselsCperCunitarea),macularperfusionCdensity(mPD;areaCpercentageCofCvesselsCperCunitarea),CandCganglionCcellCcomplex(GCC)thicknessCinCglaucomatousCeyesCandCtheirCassociationCwithCcentralCvisual.eld(VF)defects(central10-2).CSubjectsandMethods:Weanalyzed37eyesfrom24patientswithwide-angleprimaryopen-angleglaucoma(MDvalue:.9.1±9.4dB).Linearmixed-e.ectsmodelswithsubject-levelrandomintercepts,adjustedforageandaxi-alClength,CwereCusedCtoCexamineCtheCassociationsCbetweenCmVD,CmPD,CGCCCthickness,CandCbothCmeanCdeviation(MD)andsector-speci.ctotaldeviation(TD)values.Results:MVDandGCCthicknessweresigni.cantlyassoci-atedwithMDvalues(mVD,Standardizedb=0.38;GCCthickness,Standardizedb=0.72).SectoralanalysisfoundthatCmVDCandCGCCCthicknessCwereCsigni.cantlyCassociatedCwithCaverageCTDCvaluesCinCallCsectors.CConclusion:CmVDandGCCthicknessinglaucomatouseyeswereassociatedwiththecorrespondingcentralVF,indicatingthatGCCthinningisareliableindicatoroftheseverityofglaucomatousVFdamage.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(7):892.897,C2025〕Keywords:黄斑部血管密度,黄斑部灌流密度,網膜神経節細胞複合体厚,中心視野,光干渉断層計.macularves-seldensity,macularperfusiondensity,retinalganglioncellcomplexthickness,centralvisual.eld,opticalcoherencetomographyCはじめに害をきたす1).光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-緑内障は特徴的な視神経乳頭の構造的異常と進行性の網膜phy:OCT)を用いた黄斑部の網膜神経節細胞複合体(gan-神経節細胞の消失を引き起こし,障害部位に対応する視野障glioncellcomplex:GCC)厚解析は,緑内障の診断,進行評〔別刷請求先〕大内達央:〒701-0192岡山県倉敷市松島C577川崎医科大学眼科学C1Reprintrequests:TatsuhiroOuchi,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki,Okayama701-0192,JAPANC892(108)abc図1mVD,mPD,GCC解析,HFAのセクター分け(右眼)a:mVD,mPD解析:黄斑部6.0C×6.0mmのAngioスキャン(256C×256枚)を測定し,網膜表層(始端層ILM/0Cμm.IPL/INL+8Cμm)のCmVD,mPDを計測した.Cb:GCC解析:黄斑部C6.0C×6.0CmmのC3Dスキャン(256C×256枚)を測定し,GCC厚を計測した.Cc:HFA:mVD,mPD,GCC解析のCG-Chartmap解析領域に対応させて,四つのセクターに分割した平均Ctotaldeviation(TD)値を算出した.mVD,mPD,GCC解析の解析範囲と視野検査の測定範囲が一致している.価に有用であると報告されており2.4),緑内障診療に必要不可欠なパラメータである.近年,造影剤不要で非侵襲的に短時間で網脈絡膜血管を描出できる光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)が登場した.OCTAは緑内障性変化に伴う網膜表層の血管密度の減少をとらえることが可能で,血管密度の減少は乳頭周囲網膜神経線維層,黄斑部網膜内層の菲薄化と一致し5),緑内障性視野障害と関連が強い6)と報告されている.Leeら7)はCCirrusHD-OCTで計測した乳頭周囲血管密度,灌流密度が緑内障性視野障害と関連がみられたと報告している.しかし,筆者らが調べた限り,黄斑部血管密度(macularCvesseldensity:mVD),黄斑部灌流密度(macularCperfu-siondensity:mPD),GCC厚と緑内障性視野障害との関連性を黄斑部のセクター別に解析範囲を一致させて検討した報告はない.そこで本研究では,mVD,mPD,GCC厚の解析範囲と視野検査の測定範囲を一致させ,セクター別にmVD,mPD,GCC厚と視野障害の関連性を検討した.CI対象および方法対象はC2020年C4月.2024年C3月に川崎医科大学附属病院眼科においてCOCT撮影,Humphrey.eldanalyzer(HFA,CCarlZeissMeditecAG社)による静的視野検査,光学式眼軸長測定(OA-2000,トーメーコーポレーション)が施行された原発開放隅角緑内障(primaryCopen-angleglaucoma:POAG)および正常眼圧緑内障(normal-tensionglaucoma:NTG)とした.本研究の選択基準は,①最高矯正視力がC0.8以上,②mVD,mPD,GCC厚とCHFAを同日に測定している者,③緑内障・白内障以外の眼科疾患を有さない者とした.本研究は後方視的研究として実施され,川崎医科大学・同附属病院倫理委員会の承認のもと(承認番号C5798-00),ヘルシンキ宣言に準拠して行われた.mVD,mPD,GCC厚の測定はCRS-3000CAdvanceC2(spectralCdomainOCT:NIDEK,蒲郡)を用いた.本装置は,光源波長C880Cnm,スキャンレートC85,000A-scans/秒,深さ方向C7Cμmである.mVD,mPDの測定のスキャンプロトコルは黄斑部C6.0C×6.0CmmのCAngioスキャン(256C×256枚)とし,網膜表層(始端層CILM/0Cμm.IPL/INL+8Cμm)のCmVD,mPDを計測した.mVDは血管細線化画像から算出され,単位面積あたりの血管の長さ(mmC.1)を示すパラメータである.mPDは二値化画像から算出され,単位面積あたりの血管面積の割合(%)を示すパラメータである.GCC厚の測定のスキャンプロトコルは黄斑部C6.0C×6.0CmmのC3Dスキャン(256C×256枚)とした.signalCstrengthindexがC8未満のデータは除外した.各セクターのCmVD,mPD,GCC厚はCG-Chartmapの内円と外円の平均値から算出した(図1a,b).視野測定はCHFA(中心C10-2プログラム,SITA-StandardもしくはCSITA-Fast)を用いた.固視不良C20%以上,偽陽性C15%以上,偽陰性C33%以上のいずれかに該当するデータは除外した.視野障害とCmVD,mPD,GCC厚との関連性を評価するため,視野検査結果をCmVD,mPD,GCC厚のCG-Chartmap解析領域に対応させて,四つのセクターに分割した平均Ctotaldeviation(TD)値を算出した(図1c).統計学的解析は,線形混合モデルを用いてCmVD,mPD,GCC厚とCmeandeviation(MD)値の関連性を検討した.目的変数をCMD値,固定効果をCmVD,mPD,GCC厚とし,年齢,眼軸長を共変量として解析した.症例ごとにC1眼またはC2眼を解析対象に含めたため,症例をランダム効果としてモデルに組み込み,両眼間の相関を補正した.各セクター別のCmVD,mPD,GCC厚とCTD値の関連性も同様の方法で表1患者背景早期.後期早期緑内障中期緑内障後期緑内障眼数C37C9C15C13POAG/NTG(眼)C20/17C4/5C6/9C10/3性別(男性/女性)13/24人1/8人4/11人8/5人年齢(歳)C64.27±10.49C63.11±12.07C64.67±9.77C64.62±10.97視力(logMAR)C.0.11±0.06C.0.10±0.07C.0.14±0.05C.0.16±0.28屈折度数(D)C.3.69±2.69C.3.81±3.09C.3.48±2.91C.3.85±2.33眼軸長(mm)C25.57±1.44C25.45±1.79C25.55±1.61C25.68±1.01中心C30-2MD(dB)C.11.22±6.53C.3.15±1.80C.9.24±1.75C.17.44±4.14VFI(%)C66.18±21.27C91.42±5.81C72.35±7.63C46.76±15.27中心C10-2MD(dB)C.9.11±7.83C.3.03±4.05C.7.55±4.75C.15.12±8.78PSD(dB)C9.42±5.02C4.98±4.65C10.52±4.47C11.22±4.25MD(dB)平均値±標準偏差.POAG:primaryCopen-angleCglaucoma,NTG:normal-tensionglaucoma,MD:meandeviation,PSD:patternstandarddeviation,VFI:visual.eldindex.C555000MD(dB)MD(dB)-5-5-5-10-10-10-15-15-15-20-20-20-25-25-25-30-30-30-35-35-35-40-40-400246810010203040505060708090100110mVD(mm-1)mPD(%)GCC厚(μm)図2mVD,mPD,GCC厚とMD値の関係mVD,GCC厚はCMD値と有意な関連がみられた.表2mVD,mPD,GCC厚とMD値の関連性MD値b95%信頼区間CPvalueCAICCmVD(mmC.1)C0.38C0.18C2.75<C0.05C150.9mPD(%)C0.32C.0.02C0.52C0.06C152.4GCC厚(Cμm)C0.72C0.40C0.83<C0.01C130.8Cb:標準化偏回帰係数,AIC:Akaike’sInformationCriterion.検討した.また,赤池情報量基準を用いてモデル適合度を判定した.統計学的分析は,統計解析ソフトCSPSSCStatistics23.0(SPSSJapan)を使用した.危険率C5%未満を統計学的に有意とした.CII結果本研究の対象はC30名C37眼(早期:9眼,中期:15眼,後期:13眼),平均年齢±標準偏差はC64.3C±10.5歳であった(表1).mVD,GCC厚はMD値と有意な関連がみられた〔mVD:標準化偏回帰係数(Cb)=0.38,p<0.05,GCC厚:Cb=0.72,p<0.01〕(図2).赤池情報量基準によるCMD値とのモデル適合度はCGCC厚,mVD,mPDの順で良好であった(mVD:150.9,mPD:152.4,GCC厚:130.8)(表2).各セクター別の解析ではCmVD,GCC厚はすべてのセクターでCTD値と有意な関連がみられた(図3)〔(上耳側セクター)mVD:Cb=0.40,p<0.01,GCC厚:Cb=0.55,p<0.01,(上鼻側セクター)mVD:Cb=0.35,p<0.05,GCC厚:Cb=0.66,p<0.01,(下耳側セクター)mVD:Cb=0.49,p<0.01,GCC厚:Cb=0.67,p<0.01,(下鼻側セクター)mVD:Cb=0.42,p<0.05,GCC厚:Cb=0.77,p<0.01〕.赤池情報量基準によるモデル適合度はすべてのセクターでGCC厚,mVD,mPDの順で良好であった(表3)〔(上耳側セクター)mVD:176.5,mPD:175.4,GCC厚:164.5,(上鼻側セクター)mVD:131.5,mPD:133.7,GCC厚:116.0,ST5500-5-5-5Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)Totaldeviation(dB)-25-30-35-25-30-35-25-30-35-40-40-40102030405060708090100mPD(%)GCC厚(μm)024681012mVD(mm-1)SN50-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-35-40-40-400246810121401020304050605060708090100110120mVD(mm-1)mPD(%)GCC厚(μm)IT50-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-35-40-40-40246805060708090100mPD(%)GCC厚(μm)010mVD(mm-1)102030405060IN50-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-3550-5-10-15-20-25-30-35-40-40-400mPD(%)図3mVD,mPD,GCC厚とTD値のセクター別の関係上方セクター(ST,SN)では,mVD,GCC厚がCTD値と関連がみられ,下方セクター(IN,IT)では,mVD,mPD,GCC厚がCTD値と関連がみられた.すべてのセクターでCGCC厚がCTD値ともっとも関連が強かった.024681012mVD(mm-1)1020304050605060708090100110120GCC厚(μm)(下耳側セクター)mVD:177.5,mPD:178.9,GCC厚:CIII考按164.0,(下鼻側セクター)mVD:163.5,mPD:165.2,GCC厚:141.7〕.本研究ではCmVD,mPD,GCC厚の解析範囲と視野検査表3mVD,mPD,GCC厚とTD値のセクター別の関連性b95%信頼区間CPCvalueCAICCSTmVD(mmC.1)C0.40C0.48C3.02<C0.01C173.5mPD(%)C0.23C.0.02C0.59C0.10C175.4GCC厚(Cμm)C0.55C0.25C0.75<C0.01C164.5CSNmVD(mmC.1)C0.35C0.10C1.48<C0.05C131.5mPD(%)C0.25C.0.03C0.28C0.12C133.7GCC厚(Cμm)C0.66C0.17C0.41<C0.01C116.0CITmVD(mmC.1)C0.49C1.15C4.79<C0.01C177.5mPD(%)C0.45C0.17C0.85<C0.01C178.9GCC厚(Cμm)C0.67C0.36C0.78<C0.01C164.0CINmVD(mmC.1)C0.42C0.34C2.91<C0.05C163.5mPD(%)C0.34C0.01C0.55<C0.05C165.2GCC厚(Cμm)C0.77C0.35C0.66<C0.01C141.7Cb:標準化偏回帰係数,AIC:Akaike’sInformationCriterion.の測定範囲を一致させ,mVD,mPD,GCC厚と緑内障性視野障害の関連性を検討した.その結果,mVD,GCC厚はMD値と有意な関連がみられ,視野障害が強いほどCmVDの低下およびCGCCの菲薄化を示した.赤池情報量基準によるMD値とのモデル適合度はCGCC厚,mVD,mPDの順で良好であった.既報では,早期緑内障においてmPDよりGCC厚のほうが視野障害との関連が強いこと8)や,後期緑内障でもCGCC厚は進行の検出が可能であること9),緑内障診断力はCmPDよりCGCC厚のほうが優れていること10)が報告されている.また,Chenら11)は中心C10-2視野における構造と機能の関係が,乳頭周囲灌流密度,GCC厚,乳頭周囲網膜神経線維層厚,mPDの順で強く,黄斑部解析においてはCOCTAパラメータよりもCOCTパラメータのほうが視野障害との関連が強いことを示している.本研究ではmVD,mPDのC2種のCOCTAパラメータとCGCC厚を比較し,黄斑部における構造と機能の関係を詳細に検討したが,既報と同様にCGCC厚のほうが視野障害との関連が強かった.よって,OCTによるCGCC厚解析はCOCTAによるCmVD,mPD解析よりも緑内障性視野障害の程度をより鋭敏に示す指標であることが示唆された.この理由として,GCC厚解析は網膜神経節細胞が密に集中する黄斑部12)が測定領域であり,測定値のダイナミックレンジが広いため13),微小な構造的変化を検出する能力に優れていることが考えられる.対照的に,mVD,mPD解析では測定値のダイナミックレンジが狭く,黄斑部の血流は乳頭周囲に比べて乏しいため,GCC厚と比較して視野障害との関連が弱かった可能性がある.一方で,GCC厚の測定値には血管やグリア細胞などの非神経要素が含まれており,測定値が理論的に減少する限界(.oore.ect)がみられる14,15)が,mVDおよびCmPDはC.oore.ectの影響を受けにくく,進行した緑内障眼における構造と機能の関係の評価に有用である可能性がある6).今後,症例数を増やし,mVD,mPD,GCC厚と緑内障性視野障害の関連性を病期別に検討する必要がある.筆者らが調べた限り,mVD,mPD,GCC厚と緑内障性視野障害との関連性を黄斑部のセクター別に解析範囲を一致させて検討した報告は本研究が初めてである.その結果,すべてのセクターでCGCC厚がもっとも関連が強く,赤池情報量基準によるモデル適合度はCGCC厚がもっとも良好であった.CAkiyamaら8)はCmPD,GCC厚と緑内障性視野障害のCEarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)セクター別の関連性を検討し,上下セクターにおいてCmPDよりもGCC厚のほうが強い関連を示したと報告している.本研究は既報と同様の結果であった.しかし,Akiyamaらの検討8)で用いられたCETDRSセクターは,黄斑疾患に基づいて設計された分割法であり,水平経線で分割していないため,緑内障に特徴的な上下象限の非対称性を考慮できていないことが問題点としてあげられる.一方,本研究で用いたCG-Chartマップは緑内障解析に特化した分割法で,水平経線で分割し,視野との対応関係を一致させた解析が可能であった.そのため,緑内障による構造的変化を考慮した分割法を用いた本研究は,既報よりもCmVD,mPD,GCC厚と緑内障性視野障害との関連を詳細に検討できたと考えられる.よって,緑内障眼の黄斑部のセクター別解析において,GCCの菲薄化がもっとも緑内障性視野障害の程度を反映する指標である可能性が高いと考えられる.本研究の限界として,多数例の検討ではなく,長眼軸長のデータが含まれる点,HFAの測定プログラムが統一されていないため測定データの一貫性に課題がある点,病期別での検討ができていない点,POAG眼とCNTG眼の両者を区別せずに解析を行った点などがあげられる.POAG眼とCNTG眼のCOCTAパラメータの違いに関しては,さまざまな結果が報告されている16.18)が,Xuら18)は黄斑部の血管密度はPOAG眼とCNTG眼で同等であることを示しており,両者を区別せずに解析を行ったことが本研究の結果に与える影響は少ないと考えられる.本研究では,緑内障眼の黄斑部解析はCmVD,GCC厚が対応する中心視野との関連を示し,GCCの菲薄化がもっとも緑内障性視野障害の程度を反映する指標であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)GarasCA,CVarghaCP,CHolloG:DiagnosticCaccuracyCofCnerveC.breClayer,CmacularCthicknessCandCopticCdiscCmea-surementsCmadeCwithCtheCRTVue-100CopticalCcoherenceCtomographCtoCdetectCglaucoma.Eye(Lond)C25:57-65,C20113)MwanzaCJC,CDurbinCMK,CBudenzCDLCetal:GlaucomaCdiagnosticaccuracyofganglioncell-innerplexiformlayerthickness:comparisonCwithCnerveC.berClayerCandCopticCnervehead.OphthalmologyC119:1151-1158,C20124)KimCHJ,CLeeCSY,CParkCKHCetal:GlaucomaCDiagnosticCAbilityofLayer-by-LayerSegmentedGanglionCellCom-plexbySpectral-DomainOpticalCoherenceTomography.GlaucomaC57:4799-4805,C20165)AkagiT,IidaY,NakanishiHetal:MicrovascularDensi-tyCinCGlaucomatousCEyesCWithCHemi.eldCVisualCFieldDefects:AnCOpticalCCoherenceCTomographyCAngiogra-phyStudy.AmJOphthalmolC168:237-249,C20166)MoghimiCS,CBowdCC,CZangwillCLMCetal:MeasurementC.oorsCandCdynamicCrangesCofCopticalCcoherenceCtomogra-phyCandCangiographyCinCglaucoma.COphthalmologyC126:C980-988,C20207)LeeCMW,CYuCHY,CParkCKSCetal:ACcomparisonCofCperi-papillaryCvesselCdensityCbetweenCsubjectsCwithCnormal-tensionglaucomaandprimaryopen-angleglaucomawithsimilarCextentsCofCglaucomatousCdamage.CSciCRepC13:9258,C20238)AkiyamaCK,CSaitoCH,CShiratoCSCetal:DiagnosticCabilityCandsectoralstructure-functionrelationshipofcircumpap-illaryandmacularsuper.cialvesseldensityinearlyglau-comatouseyes.SciRepC12:5991,C20229)BelghithCA,CMedeirosCFA,CBowdCCCetal:StructuralCChangeCCanCBeCDetectedCinCAdvanced-GlaucomaCEyes.CInvestOphthalmolVisSciC57:OCT511-OCT518,C201610)RaoHL,PradhanZS,WeinrebRNetal:AcomparisonoftheCdiagnosticCabilityCofCvesselCdensityCandCstructuralCmeasurementsofopticalcoherencetomographyinprima-ryopenangleglaucoma.PLoSOneC12:e0173930,C201711)ChenCHSL,CLiuCCH,CWuCWCCetal:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCofCtheCsuper.cialCmicrovascula-tureCinCtheCmacularCandCperipapillaryCareasCinCglaucoma-tousCandChealthyCeyes.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:C3637-3645,C201712)CurcioCCA,CAllenKA:TopographyCofCganglionCcellsCinChumanretina.JCompNeurolC300:5-25,C199013)HouH,MoghimiS,ProudfootJAetal:Ganglioncellcom-plexCthicknessCandCmaculaCvesselCdensityClossCinCprimaryCopenCangleCglaucoma.COphthalmologyC127:1043-1052,C202014)SihotaCR,CSonyCP,CGuptaCVCetal:DiagnosticCcapabilityCofCopticalcoherencetomographyinevaluatingthedegreeofglaucomatousCretinalCnerveC.berCdamage.CInvestCOphthal-molVisSciC47:2006-2010,C200615)MwanzaCJC,CBudenzCDL,CWarrenCJLCetal:RetinalCnerveC.berClayerCthicknessC.oorCandCcorrespondingCfunctionalClossinglaucoma.BrJOphthalmolC99:732-737,C201516)BojikianKD,ChenCL,WenJCetal:Opticdiscperfusioninprimaryopenangleandnormaltensionglaucomaeyesusingopticalcoherencetomography-basedmicroangiogra-phy.PLoSONEC11:e0154691,C201617)ScripsemaCNK,CGarciaCPM,CBavierCRDCetal:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCanalysisCofCperfusedCperipapillaryCcapillariesCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCnormal-tensionCglaucoma.CInvestCOphthalmolCVisCSciC57:OCT611-OCT620,C201618)XuH,ZhaiR,ZongYetal:Comparisonofretinalmicro-vascularCchangesCinCeyesCwithChigh-tensionCglaucomaCornormal-tensionglaucoma:AquantitativeopticcoherencetomographyCangiographicCstudy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC256:1179-1186,C2018***

Visual Field Index とStandard Automated Perimetry およびShort-Wavelength Automated Perimetry の中心視野との関連

2011年8月31日 水曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(115)1175《第21回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科28(8):1175?1178,2011c〔別刷請求先〕佐藤香:〒343-8555越谷市南越谷2-1-50獨協医科大学越谷病院眼科Reprintrequests:KaoriSato,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KoshigayaHospital,DokkyoMedicalUniversity,MedicalSchool,2-1-50Minami-Koshigaya,Koshigaya,Saitama343-8555,JAPANVisualFieldIndexとStandardAutomatedPerimetryおよびShort-WavelengthAutomatedPerimetryの中心視野との関連佐藤香宇田川さち子忍田栄紀松本行弘獨協医科大学越谷病院眼科RelationshipbetweenVisualFieldIndexandStandardAutomatedPerimetryandShort-WavelengthAutomatedPerimetryCentralVisualFieldsKaoriSato,SachikoUdagawa,EikiOshidaandYukihiroMatsumotoDepartmentofOphthalmology,KoshigayaHospital,DokkyoMedicalUniversity,MedicalSchool目的:原発開放隅角緑内障眼におけるstandardautomatedperimetry(SAP)とshort-wavelengthautomatedperimetry(SWAP)の中心視野およびvisualfieldindex(VFI)との関連の検討.方法:対象は信頼性のあるHumphreyfieldanalizer(HFA)の24-2Swedishinteractivethresholdingalgorithm(SITA)-standard,SITA-SWAPを測定していた50例50眼で,検討項目はVFIとSAPおよびSWAPの中心4点のpatterndeviation(PD)平均値,PD確率プロット1%以下の測定点(異常点)の総数である.結果:VFIとSAPおよびSWAPのPD平均値は各々有意な正の相関があり(r=0.65,r=0.70,ともにp<0.001),PD平均値はSWAPが有意に不良であった(p<0.01).VFIとSAPおよびSWAPの異常点の総数は各々有意な負の相関があり(r=?0.54,r=?0.67,ともにp<0.001),異常点の数に有意差はなかった(p=0.70).結論:SWAPおよびSAPの中心4点とVFIは中心視野の評価に有用であることが示唆された.Objective:Toevaluatetherelationshipbetweenvisualfieldindex(VFI)andcentralvisualfieldsasdeterminedbystandardautomatedperimetry(SAP)andshort-wavelengthautomatedperimetry(SWAP)ineyeswithprimaryopen-angleglaucoma.Method:Thesubjectsofthisstudycomprised50eyesof50casesthathadundergonereliableHumphreyfieldanalizer(HFA)24-2Swedishinteractivethresholdingalgorithm(SITA)-standardandSITA-SWAPtesting.ItemsofevaluationincludedVFI,averagepatterndeviation(PD)ofthecentral4testpointsonSAPandSWAP,andtotalnumberofpointswithalevelofp≦1%onthepatterndeviationprobabilityplot(abnormalpoints).Results:SignificantpositivecorrelationwasseenbetweenVFIandaveragePDonbothSAPandSWAP(r=0.65andr=0.70,respectively,p<0.001);theaveragePDwassignificantlypooreronSWAP(p<0.01).SignificantnegativecorrelationwasobservedbetweenVFIandthetotalnumberofabnormalpointsonbothSAPandSWAP(r=?0.54andr=?0.67,respectively,p<0.001).Nosignificantdifferencewasnotedinthenumberofabnormalpoints(p=0.70).Conclusion:Itissuggestedthatthecentral4testpointsonSAP,SWAPandVFIareusefulforcomprehensivelyevaluatingthecentralvisualfield.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(8):1175?1178,2011〕Keywords:緑内障,中心視野,visualfieldindex(VFI),短波長自動視野測定,標準的自動視野測定.glaucoma,centralvisualfield,visualfieldindex,short-wavelengthautomatedperimetry,standardautomatedperimetry.1176あたらしい眼科Vol.28,No.8,2011(116)はじめに近年,さまざまな眼疾患におけるqualityofvision(QOV)やqualityoflife(QOL)の評価方法が検討されている1)が,緑内障眼においても中心視野障害がQOVやQOLに影響を与えることが知られている2).緑内障では中心視野は後期まで残存することが多く,中心視野の詳細な評価は不可欠である.早期の緑内障性視野変化の検出方法として,shortwavelengthautomatedperimetry(SWAP),frequencydoublingtechnology,flicker視野などがあげられる3).なかでも,SWAPは網膜神経節細胞のうち余剰性の少ないKoniocellular系を選択的に測定することで,緑内障性視野異常を早期に検出可能なことが報告4)されている.また,standardautomatedperimetry(SAP)のうちHumphreyfieldanalyzer(HFA,Carl-ZeissMeditec,Dublin,米国)では,guidedprogressionanalysis(GPA2)の導入に伴い,visualfieldindex(VFI)の算出が可能となった.VFIは,パターン偏差確率プロットによる感度から残存視機能をパーセント表示で算出するもので,大脳皮質拡大率や網膜神経節細胞の分布を考慮して,中心の測定点の比率配分を重く設定し,中心視野の重要度を加味している5).このことから,VFIはGPA2による視野進行のトレンド解析に用いられるとともに,QOVの指標として注目されている.今回,SAPおよびSwedishinteractivethresholdingalgorithm(SITA)-SWAPの中心視野とVFIの関連についてretrospectiveに検討した.I対象および方法対象は,獨協医科大学越谷病院眼科の緑内障外来に通院中で,3カ月以内に信頼性のあるHFAのSITA-standard24-2,SITA-SWAP24-2を測定していた原発開放隅角緑内障50例50眼〔男性16例,女性34例,平均年齢58.0±9.4歳(35~74歳)〕である.原発開放隅角緑内障の診断は,緑内障診療ガイドライン6)に従った.視力に影響を及ぼすと思われる中間透光体の混濁および緑内障以外の眼底疾患や,視機能に影響を及ぼす視覚路疾患,内眼手術既往がない症例を対象とした.HFAの信頼性は,固視不良が20%未満,偽陽性が15%未満,偽陰性が33%未満のすべてを満たす場合を対象とした.対象例のSAPとSITA-SWAPの平均MDは各々?6.8±5.6(?19.4~1.31)dB,?8.0±5.7(?19.7~3.12)dBであった.小数視力測定後に換算したlogMAR値では,?0.06±0.1(?0.18~0.10)で,全例が小数視力は0.8以上であった.対象例の背景を表1に示す.検討項目はVFIとSAP中心4点のpatterndeviation(PD)平均値の関係,VFIとSITA-SWAP中心4点のPD平均値の関係,PD確率プロット1%以下の測定点を異常点とし,VFIと中心4点の異常点総数との関係についてSAPとSITA-SWAPで各々検討した.統計学的検討にはSpearmanの順位相関係数,Mann-WhitneyのU検定,c2検定を使用し,危険率5%未満を有意とした.II結果全対象のVFI平均値は79.2±15.1%(44~98%),SAPの中心4点PD平均値は?6.5±5.6dB(?18.5~2.25dB)で,VFIとSAPの中心4点PD平均値の間には有意な正の相関関係があった(r=0.65,p<0.001,Spearmanの順位相関係数).SITA-SWAPの中心4点平均値は?8.0±4.9dB(?21.0~?0.75dB)で,VFIとSITA-SWAPの中心4点平均値の間には,有意な正の相関関係があった(r=0.70,p<0.001,Spearmanの順位相関係数).SAPの中心4点PD平均値に比して,SITA-SWAPの中心4点PD平均値は有意に不良であった(p<0.01,Mann-WhitneyのU検定).中心4点のPDを部位別に検討すると,SAPでは上耳側が?13.9±13.8dB(?36~?1.0dB),上鼻側が?6.4±10.8dB(?35~?2.0dB),下耳側が?4.5±9.7dB(?37~2.0dB),下鼻側が?4.5±1.8dB(?5.0~3.0dB)で上耳側が他に比べて有意にPDが不良であった(各々p<0.001).上鼻側と下鼻側では上鼻側が有意にPDは不良であった(p<0.05)が,上鼻側と下耳側および下鼻側と下耳側ではPDに有意差はなかった.SWAPでは,上耳側が?15.1±11.8dB(?33.0~0dB),上鼻側が?7.0±7.4dB(?31~2.0dB),下耳側が?6.6±8.3dB(?34~1.0dB),下鼻側が?2.7±3.0dB(?12~3.0dB)であった.上耳側は他の部位に比して有意にPD値は不良であった(各々p<0.01).下耳側に比して上鼻側が有意にPD値は不良で(p<0.05)あったが,上鼻側と下耳側お表1対象例の背景対象例50例50眼年齢58.0±9.4(35~74)歳性別男性16例,女性34例視力(logMAR)?0.06±0.1(0.1~?0.18)屈折(等価球面度数:D)?2.3±3.2(?9.9~+3.0)眼圧(mmHg)15.8±2.7SAPMD(dB)?6.8±5.6(?19.4~1.3)SAPVFI(%)79.2±15.1(44~98)SAPPSD(dB)9.4±4.5(1.8~17.0)SITA-SWAPMD(dB)?8.0±5.7(?19.7~3.1)SITA-SWAPPSD(dB)8.5±3.4(2.2~14.2)平均値±標準偏差(最小値~最大値)で示す.logMAR:小数視力を測定後にlogMAR(logarithmicminimumangleofresolution)値に換算.SITA-SWAP:Swedishinteractivethresholdingalgorithm-shortwavelengthautomatedperimetry,SAP:standardautomatedperimetry,VFI:visualfieldindex,MD:meandeviation,PSD:patternstandarddeviation.眼圧はGoldmann圧平式眼圧計で測定.(117)あたらしい眼科Vol.28,No.8,20111177よび下鼻側と下耳側では有意差はなかった.SAPとSITA-SWAPの中心4点の異常点総数は,SAPでは異常点が,50眼中34眼にみられ,1点が21眼,2点が10眼,3点が3眼,4点は0眼であった.VFI値とSAP異常点総数には有意な負の相関関係があった(r=?0.54,p<0.001).SITA-SWAPでは異常点が,50眼中34眼にみられ,1点が16眼,2点が14眼,3点が1眼で,4点は3眼であった.SAPとSITA-SWAPの中心4点の異常点総数に有意差はなかった(p=0.70,Mann-WhitneyのU検定).VFI値とSWAP異常点総数の間には有意な負の相関関係があった(r=?0.67,p<0.001).さらに,SAPとSWAPで異常点の分布に有意差はなかった(p=0.25,c2検定).SWAPで異常点が3点以上みられた4眼はSAPでは異常点は各々1点,2点,3点であり,一定ではなく,視力はいずれも小数視力1.0以上であった.III考按HFAで算出されるパラメータのうち,VFIは算出過程で中心から6°ずつ順に,3.29,1.28,0.79,0.57,0.45倍とより中心の測定点の比率配分を重く設定5)されている.さらに,本検討ではSAPの中心4点PD平均値のみではなく,VFIと測定条件の異なるSITA-SWAPの中心4点PD平均値とも有意な正の相関を示した.中心視野は,日本人には多いとされている近視眼の緑内障や正常眼圧緑内障では特に障害される可能性が高く8),QOLと視野障害の関係2)からも視野の評価において重要度は高いが,VFI値は視野全体の評価と同時に中心視野も評価できる可能性が示唆された.高眼圧症において5年以内に緑内障と診断されるうえでのSWAPの感度は100%,特異度は94%と報告12)され,SWAPはSAPよりも緑内障性視野障害を早期に検出可能な測定方法の一つとしての有用性はよく知られている.本検討でも,SAPの中心4点PD平均値に対してSITA-SWAPの中心4点PD平均値は有意に不良であった.SAP,SITASWAPともに4点の部位別の検討では,上耳側PD値が有意に不良であった.これは,緑内障では下半部黄斑と乳頭部の視野が保たれると考えられていることとも一致する13).本検討の対象例は全例矯正視力が0.8以上であり,中心4点のうち上耳側にp<0.1の異常点が検出された段階では,視力への影響は少ない可能性が示唆された.さらに,SWAPで異常点が3点以上みられた4眼はSAPでは異常点は各々1点,2点,3点であり,一定ではなく,視力はいずれも1.0以上であった.すなわち,SAPで異常点が1点のみであってもSWAPではすでに3点異常点が検出される例が存在した.このことから,視力に影響が及ぶ前から,SWAPでもHFAの結果の中心4点に注目し,視野検査を評価することが必要と考えられた.SWAPは,白内障などの中間透光体の混濁が検査結果に影響を及ぼすこと,加齢による青錐体系反応の低下10),閾値算出方法として以前から用いられてきた全点閾値測定法やFASTPACプログラムが,測定時間が長いため患者の負担や測定結果の変動が大きいことなどが問題点として認識されてきた9).そして現在,測定時間を短縮したSITAプログラムが導入され,その実用性が評価されつつあるとともに9),青錐体が網膜中心3°の部位に集中して存在することを考慮したSWAPの黄斑プログラムの有用性の報告もみられる11).本検討では,SAPとSITA-SWAPの中心4点の異常点総数に有意差はなかったが,これは対象例の中心視野の障害程度が多様であることや視力良好例が多いことによるのかもしれない.そして,早期視野異常検出の目的のみではなく,長期経過観察中における視野進行予測の観点14)からのさらなる検討も望ましいと考える.結論として,VFIは中心視野の評価に有用である可能性が示唆されるとともに,SWAPの適応判断や結果評価には今後もさらなる取り組みを要するが,SAPとSITA-SWAPの中心4点に着目し,視野進行のイベント解析の効果・観点から評価することが必要であると考えた.文献1)SuzukamoY,OshikaT,YuzawaMetal:Psychometricpropertiesofthe25-itemNationalEyeInstituteVisualFunctionQuestionnaire(NEIVFQ-25),Japaneseversion.HealthQualLifeOutcomes3:65,20052)SumiI,ShiratoS,MatsumotoSetal:Therelationshipbetweenvisualdisabilityandvisualfieldinpatientswithglaucoma.Ophthalmology110:332-339,20033)松本長太:緑内障の視野検査研究の最新情報は?あたらしい眼科25:194-196,20084)SamplePA,BosworthCF,WeinrebRN:Short-wavelengthautomatedperimetryandmotionautomatedperimetryinpatientswithglaucoma.ArchOphthalmol115:1129-1133,19975)BengtssonB,HeijlA:Avisualfieldindexforcalculationofglaucomarateofprogression.AmJOphthalmol145:343-353,20086)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日本緑内障学会,20067)AndersonDR,PattellaVM:AutomatedStaticPerimetry.2nded,p121-190,Mosby,StLouis,19998)新井麻里子,新家眞,鈴木康之ほか:正常眼圧緑内障における近視度と中心視野障害の関係.日眼会誌98:1121-1125,19949)BengtssonB,HeijlA,OlssonJ:Evaluationofanewthresholdvisualfieldstrategy,SITA,innormalsubjects.SwedishInteractiveThresholdingAlgorithm.ActaOphthalmolScand76:165-169,199810)前田秀高,田中佳秋,杉浦寅男ほか:高眼圧症におけるBlueonYellow視野計での網膜感度分布.日眼会誌102:1178あたらしい眼科Vol.28,No.8,2011(118)111-116,199811)辻典明,山崎芳夫:緑内障眼における短波長感度錐体視野と視神経乳頭陥凹との相関.臨眼53:667-670,199912)JohnsonCA,AdamsAJ,CassonEJetal:Blue-on-yellowperimetrycanpredictthedevelopmentofglaucomatousvisualfieldloss.ArchOphthalmol111:645-650,199313)SuzukiY,AraieM,OhashiY:Sectorizationofcentral30degreesvisualfieldinglaucoma.Ophthalmology100:69-75,199314)GirkinCA,EmdadiA,SamplePAetal:Short-wavelengthautomatedperimetryandstandardperimetryinthedetectionofprogressiveopticdisccupping.ArchOphthalmol118:1231-1236,2000***