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屈折矯正手術:中高年者におけるモノビジョン法を用いたLASIK

2011年10月31日 月曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.10,201114350910-1810/11/\100/頁/JCOPY現在,国内において屈折矯正手術としてlaserinsitukeratomileusis(LASIK)は最もポピュラーな手術となっている.LASIKを希望する患者はコンタクトレンズや眼鏡がわずらわしい20?30歳代の若年者がメインであるが,40歳以上のいわゆる中高年者の希望も一定にみられ,これらの年代には老視の注意が必要となる.そもそもLASIKは角膜の形状を変化させることで近視や乱視といった屈折異常を矯正する手術であり,加齢に伴う老視を改善させるものではない.そのため老視が自覚されはじめる中高年者に対しては十分な老視についての説明はもとより,いかに老視を補い日常生活を快適にさせるかが満足度向上のポイントとなる.老視の矯正法の一つとして,代表的な方法にモノビジョン法があげられる.モノビジョン法とは一眼を遠見,他眼を近見に矯正し,両眼視にて遠見から近見まで良好な視力を得ることを目的とする方法である.これまで当教室では白内障手術においてこのモノビジョン法の有用性や注意点を報告してきた1,2).また過去にLASIKにおけるモノビジョン法の応用も報告している3,4)が,今回は症例数を増やしより詳細なアンケートをもとにLASIKにおけるモノビジョン法の有用性について論じる.●北里大学および関連施設におけるモノビジョン法適応の流れ40歳以上の手術希望者に対しては全例,老視について説明したのち患者一人ひとりの生活習慣や仕事内容について問診する.その後,当院における一般的な術前検査を行ったのち,後日,実際にコンタクトレンズを用いて,正視ねらいおよびモノビジョン法をシミュレーションしてもらい総合的判断により適応および屈折差を決定する.もしもシミュレーションが不十分と判断した場合,使い捨てのソフトコンタクトレンズを数枚お渡しし日常生活での感想を聞くようにしている.(67)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載137監修=木下茂大橋裕一坪田一男137.中高年者におけるモノビジョン法を用いたLASIK五十嵐章史清水公也北里大学医学部眼科中高年者に対するlaserinsitukeratomileusis(LASIK)において,モノビジョン法は高い満足度を得ることができ有用な方法である.しかし,長時間,車を運転する患者のなかには夜間視において不満を訴える例も存在するため,術前において十分なインフォームド・コンセントが必要である.表1術後アンケート質問事項回答1.手術を受けた後の気持ちを教えてください1)とても満足2)満足3)どちらともいえない4)やや不満5)不満1)7例(54%)2)3例(23%)3)2例(15%)4)1例(8%)5)0例(0%)2.今の見え方に対する満足度を100点満点で示してください84.2±13.0点(60~100点)3.見え方の日内変動はありますか1)なし2)昼間から見づらい3)夕方から見づらい4)夜間のみ見づらい1)5例(39%)2)0例(0%)3)2例(15%)4)6例(46%)4.手術前と比べ変化がありますかA.読書1)楽になった2)かわりなし3)困難になった1)4例(31%)2)6例(46%)3)3例(23%)B.パソコン1)楽になった2)かわりなし3)困難になった1)2例(15%)2)10例(77%)3)1例(8%)5.運転時の見え方はいかがですかA.昼間1)楽になった2)かわりなし3)困難になった1)8例(61%)2)5例(39%)3)0例(0%)B.夜間1)楽になった2)かわりなし3)困難になった1)6例(46%)2)4例(31%)3)3例(23%)6.もしも生まれかわり同じ状態であったなら,同じ手術をうけますか1)うける2)どちらともいえない3)うけない1)12例(92%)2)1例(8%)3)0例(0%)1436あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011●モノビジョン法を施行したLASIK患者の結果モノビジョン法を適用し,術後両眼とも矯正精度が±0.5D以内であった13例(男性8例,女性4例)を対象とした.今回の対象では全例,優位眼(DE)を遠方,非優位眼(NDE)を近方合わせとし,術前の平均年齢は47±4歳(40?54歳),等価球面度数は?5.24±1.74D(?2.25??8.00D),屈折差は白内障手術時とは異なり残余調節力が存在するため平均?0.85±0.19D(?0.50??1.00D)差と軽度の屈折差となった.術後6カ月における両眼開放下での裸眼視力はlogMAR(小数視力)で遠方が?0.13±0.09(1.35),近方が?0.09±0.08(0.81)と良好であった.●術後アンケート術後のアンケート結果を表1に示す.手術後の満足度は平均84.2点,全体の77%の患者から満足がいく結果を得ることができ,92%の患者は生まれ変わったとしてももう一度同じ手術を望むという結果を得た.しかし,46%の患者からは夜間の見づらさが自覚され,23%の患者は夜間の車の運転が困難になったという結果を得た.また手術前より読書が困難になったという例が23%でみられた.●術後合併症術後に重篤な合併症を認めた例はなかった.しかし,1例のみ夜間の運転が困難であることから,NDEを遠方合わせへ追加矯正を行い満足を得た.●LASIKにおけるモノビジョン法について老視の問題が生じてくる中高年層の屈折矯正手術患者において,モノビジョン法を用いたLASIKは遠見,近見とも視力は良好で満足度も高く有効な方法と考えられる.また残余屈折力により左右の屈折差も小さく,不快に感じられることもほとんどない.しかし今回の検討において約半数近くになんらかの夜間の見えづらさを訴えることがわかった.これらの訴えは夜間の車の運転の不自由さにもつながっており,全体の約2割の患者が運転の困難を訴えるという結果になった.従来の眼内レンズによるモノビジョン法では,夜間の見づらさや運転困難を訴える例はあまりない.これは対象が白内障患者より若年であることから車の使用頻度が多いことや見え方に関する捉え方が鋭敏であることが予想されるが,LASIK後の術後視機能にも関係があると考える.通常,LASIKでは矯正量が増加すると,角膜はoblate化をきたし高次収差は増加し,コントラスト感度が低下する傾向にある5).しかし眼内レンズによるモノビジョン法では白内障手術を行うことでコントラスト感度は上昇する.コントラスト感度という点においてLASIKでは散瞳時には高次収差はさらに増大するため,より夜間での訴えが強くなるのかもしれない.このようにLASIKによるモノビジョン法は夜間視の不満を訴える例もあるが,術前に車に乗る頻度や職業を聞き,十分なインフォームド・コンセントを行うことで不満を減らすことができると予想される.また術後にどうしても不自由を訴える場合は,近見合わせとした眼を遠見へ再矯正することで不満は改善される.中高年者における屈折矯正手術では,老視に対してなにも考慮せずに手術を行った場合,強い不満を訴える例も存在する.近視や乱視と老視を同じに考えている患者も少なくないため,手術の際には老視について十分な説明を行う必要があり,もし希望する場合にはモノビジョン法は安全で有効であると考える.文献1)清水公也:白内障術後における老視の克服.IOL&RS18:30-35,20042)ItoM,ShimizuK,AmanoRetal:Assessmentofvisualperformanceinpseudophakicmonovision.JCataractRefractSurg35:710-714,20093)中島純子,新田任里江,神垣久美子ほか:LASIKによるモノビジョン法を施行した4症例.あたらしい眼科20:385-389,20034)清水公也:モノビジョンLASIK.あたらしい眼科22:51-52,20055)IgarashiA,KamiyaK,ShimizuKetal:Visualperformanceafterimplantablecollamerlensandwavefrontguidedlaserinsitukeratomileusisforhighmyopia.AmJOphthalmol148:164-170,2009(68)

多焦点眼内レンズ:単焦点眼内レンズ挿入眼へのピギーバック法

2011年10月31日 月曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.10,201114330910-1810/11/\100/頁/JCOPY眼内レンズ(IOL)のピギーバック法は,通常,水晶体摘出後に1枚のIOLを挿入するところ,もう1枚追加,すなわちIOLを2枚挿入する.IOLの厚さは水晶体よりかなり薄いため,2枚挿入するスペースは十分である.従来,強度遠視において市販されているIOL度数で足りない場合やIOL挿入後の屈折が大幅にずれた場合に利用されてきた方法である.多焦点IOLの普及に伴い,これらの方法に加え,単焦点IOL挿入眼で多焦点IOLへの交換を希望する症例にもピギーバック法が用いられるようになった.水晶体?内固定用の多焦点IOLをピギーバック挿入する報告がある1,2)が,近年,球面度数がゼロないしは低い度数で,水晶体?内固定ではなく毛様溝固定用にデザインされたピギーバック用多焦点IOLが登場し,その良好な臨床成績が報告されている3).ピギーバック用多焦点IOLピギーバック法を用いる場合,IOLを2枚とも水晶体?内固定した際にIOL間に水晶体上皮細胞が増殖し視力低下を起こすinterlenticularopacification(ILO)が報告され4),ピギーバックIOLは毛様溝固定をすることが推奨されている.このため,ピギーバック用多焦点IOLは水晶体?内固定用デザインに比べIOLの全長が長く,13.5?14.0mmのものが多い.また,瞳孔ブロックが危惧され,光学径も通常より大きな6.5?7.0mmとなっている(図1).ピギーバック用多焦点IOLは,Diffractiva社,Rayner社,HumanOptic社といったヨーロッパの会社から販売されている(図2)が,残念ながらわが国で承認を得ていないので,実際に使用する場合は自費手術となる.このような未承認IOLを臨床に用いる場合,基本的には各施設の倫理委員会で承認を得,患者に十分な説明をした後に同意を取得して挿入すべきである.ピギーバック法の利点と問題点利点は,すでに挿入されているIOLを摘出する必要がないことである.IOL摘出は粘弾性物質を用い,光学(65)●連載多焦点眼内レンズセミナー監修=ビッセン宮島弘子22.単焦点眼内レンズ挿入眼へのピギーバック法ビッセン宮島弘子東京歯科大学水道橋病院眼科多焦点眼内レンズ(IOL)の普及に伴い,すでに単焦点IOLが挿入されている症例で多焦点IOLへの交換を希望する例がある.この場合,挿入されたIOLを摘出する操作が予想以上に困難な場合がある.このような症例に,単焦点IOLを温存したままピギーバック用多焦点IOLを挿入する方法を紹介する.図1ピギーバック用眼内レンズ上側のピギーバック用眼内レンズは,毛様溝固定用に光学径,全長が大きいデザインである.図2ヨーロッパで開発されたピギーバック用多焦点眼内レンズ左:Sulcoflex(Rayner社),右:AddOn(HumanOptic社).1434あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011部は水晶体?との癒着を容易に?離できるが,支持部の周りをトンネル状に包んでいる水晶体前後?の癒着をうまく?離することが困難である.このような場合,支持部を光学部から切断することで,支持部の摘出が容易になるが,眼内でこのような操作を行うには,ある程度の手術経験が必要である.一方,IOLを温存したまま,もう1枚追加挿入するピギーバック法は,粘弾性物質で前房および虹彩と水晶体?の間に空間を作り,白内障手術時のIOL挿入に準じてIOLを眼内に挿入するため,技術的にはむずかしくない.問題点は,挿入後である.現在,IOLの理想的な固定場所が水晶体?内で,毛様溝は特殊な場合のみである.2枚目のIOLを毛様溝固定するピギーバック法で起こりうる合併症は,従来のIOLを毛様溝固定する場合の合併症と同じで,支持部の刺激による虹彩色素脱落,慢性炎症,眼圧上昇,IOLが虹彩面に近いための瞳孔ブロック,ILOである4,5).臨床成績単焦点IOL挿入眼への多焦点IOLピギーバック挿入後の視機能は,多焦点IOL挿入眼と類似している.すなわち,眼鏡に依存せず遠方と近方は見えるが,コントラスト感度が単焦点IOL挿入後よりも低下している例がある5).筆者自身もすでに10眼以上挿入しているが,1年以上の経過観察で慢性炎症,眼圧上昇などの合併症は経験していない.今後の展開本セミナーでは単焦点IOLが挿入された症例への多(66)焦点IOLピギーバック挿入を中心に述べたが,すでに多焦点機能にトーリック機能が加わったものが開発されている.本セミナーで紹介した方法以外に,多焦点IOLが挿入された症例における球面および円柱度数の追加矯正をエキシマレーザーで行う方法がタッチアップとよばれ,近年,症例数が増えている.多焦点IOL挿入後に単焦点あるいはトーリックIOLを用いたピギーバック法による矯正は,高価なレーザーを持っていない施設でも導入可能なため,今後,IOLの毛様溝固定における長期予後を再検討したうえで,適応の拡大が期待される.文献1)AkashiL,TzelikisPF:PrimarypiggybackimplantationusingtheReSTORintraocularlens:caseseries.JCataractRefractSurg33:791-795,20072)AkashiL,TselikisPF,CondimJetal:PrimarypiggybackimplantationusingtheTecnisZM900multifocalintraocularlens:caseseries.JCataractRefractSurg33:2067-2071,20073)ビッセン宮島弘子,大木伸一,野中亮子:回折型多焦点眼内レンズのピギーバック挿入.あたらしい眼科28:577-581,20114)GuytonJL,AppleDJ,PengQetal:Interlenticularopacification:Clinicopathologicalcorrelationofacomplicationofposteriorchamberpiggybackintraocularlenses.JCataractRefractSurg26:330-336,20005)ChangWH,WernerL,FryLLetal:Pigmentarydispersionsyndromewithasecondarypiggyback3-piecehydrophobicacryliclens.Casereportwithclinicopathologicalcorrelation.JCataractRefractSurg33:1106-1109,2007☆☆☆

眼内レンズ:安宅氏リファレンスマーカーToric用

2011年10月31日 月曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.10,201114310910-1810/11/\100/頁/JCOPYToricIOL(眼内レンズ)の登場により,IOLによって角膜乱視を軽減することが可能になってきた.術者の惹起乱視を考慮した術後予測角膜強主経線にtoricIOLの弱主経線(toric軸)を合わせることにより,乱視を軽減させる.従来のnon-toricIOL挿入術と異なる点は,toricIOLを挿入後にIOLを水晶体?内で回転させて軸合わせを行うことである.このため,術後予測角膜強主経線が角膜上のどの位置に当たるのか測定する必要がある.仰臥位から座位に体位変動すると,約8%に10°以上の眼球回旋がみられた1)との報告があるため,術中の仰臥位における眼球の位置を基準にして軸角度を測定すると軸ずれを起こす危険性がある.このため,座位での基準点を術前に計測しておかなければならない.基準点を作成する方法としては,0?90°法がオリジナルの方法であるが,その他に6時マーク法,前眼部写真法,IOLマスター法,AxisRegistration法,前眼部OCT(光干渉断層計)法,トーリック軸画像識別システ(63)ムを用いる方法などがある.0?90°法で使用する3点式リファレンスマーカーを用いて角膜にマーキングする際,下方の角膜輪部と半円状のマーカー先端部の曲線を同心円状に合わせるようにして位置決めするため,270°の基準点は比較的正確にマーキングできる.しかし,0°,180°の位置決めでは,目安となるものがないため,検者の主観で決めることになり,位置ずれを起こす可能性がある.安宅氏リファレンスマーカーtoric用は,3点式リファレンスマーカーの先端部を円状に改良したものである2).マーカー先端部および角膜ともに円形であるため,これら2つの円を同心円状に重ねるようにして,基準点を作成する(図1).安宅氏リファレンスマーカーtoric用のマーカー先端部は,内径が9mm,外径が10.8mmであり,症例によっては,角膜径より大きい場合や逆に小さい場合もあるが,わずかに大きさの異なる2つの円を同心円状に重ねることは容易であり,また再現性も高い.角膜外周全周を目安にしながらマーキングできるた安宅伸介大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎302.安宅氏リファレンスマーカーToric用乱視矯正用眼内レンズ(toricIOL)を挿入する際,術前検査で決められた角膜乱視軸にIOLのtoric軸を合わせるように固定する.座位から仰臥位に体位変動すると眼球が回旋するため,術中の仰臥位での眼位を基準にして軸を決定することはできない.このため,術前に座位での基準点を作成しなければならない.図1安宅氏リファレンスマーカーtoric用によるマーキング(左)とマーキング後の前眼部写真(右)め,270°のみならず,0°,180°の基準点も比較的正確にマーキングできる.また,マーカー先端部が円状であるため,90°の位置も同時にマーキングできるため,上方切開の術者にとっては角膜切開の位置決めも容易になる.安宅氏リファレンスマーカーtoric用と3点式リファレンスマーカーを用いて位置決めをした症例を比較検討したので報告する.各マーカーで角膜にマーキングした後に,顕微鏡下にて角膜外縁に角度ゲージを合わせて,角度ゲージの中心とマーキングされた水平方向2点のなす角度を求め,軸ずれを測定した(図2).安宅氏リファレンスマーカーtoric用では,すべてが5°以内に収まっていたが,3点式リファレンスマーカーでは,平均7.9°のずれがあり,また,ばらつきもみられた(表1).先端部を半円状から円状に改良することにより,マーキングの精度は良くなったが,先端部が大きくなった分,瞼裂幅の狭い患者に対してはマーキングしにくくなることがこのマーカーの欠点である.ただし,ソフトコンタクトレンズの直径が13?14.5mmであることを考慮しても,大きすぎてマーキングできない大きさではないと考えている.文献1)SwamiAU,SteinertRF,OsborneWFetal:Rotationalmalpositionduringlaserinsitukeratomileusis.AmJOphthalmol133:561-562,20022)安宅伸介,矢寺めぐみ,山口真ほか:トーリック眼内レンズ用リファレンスマーカーの試作.あたらしい眼科28:273-276,2011表1各リファレンスマーカーを用いて作成した水平方向2点の軸ずれの検討3点式リファレンスマーカー安宅氏リファレンスマーカー症例角度(°)軸ずれ(°)症例角度(°)軸ずれ(°)12002011800218002180031755318554195154185551800518006185561855717557175581855818009185591800101901010185511190101118551219515121755平均7.9°の軸ずれがあり,軸ずれのばらつきがある平均2.9°の軸ずれであり,すべてが5°以内であるp<0.05Mann-Whitney’sUtest.水平軸基準点マーク基準点マーク12時6時図2角度ゲージの中心とリファレンスマーカーで作成した水平方向2点のなす角度の測定方法赤矢印の角度を測定し,軸ずれを求めた.本来の水平軸にマーキングできた場合は180°になり,軸ずれは0°になる.

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】 フルオレセインパターン判定法(2)

2011年10月31日 月曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.10,201114290910-1810/11/\100/頁/JCOPYフルオレセインパターンを,単にフラット,パラレル,スティープと判断していたのでは,円錐角膜や角膜移植術後などの難症例に対してハードコンタクトレンズ(HCL)を処方することはむずかしい.今回はフルオレセインパターンをより有効に利用するための具体的な評価方法について述べる.●評価は角膜中央部で行う通常,HCLの静止位置が角膜中央部になるように処方するが,HCLの静止位置が必ずしも角膜中央部に一致するとは限らない.評価は静止位置ではなく,HCLを角膜中央部へ誘導して行う.●中央部,中間周辺部,最周辺部(ベベル部分)に分けて評価するフルオレセインパターンを正確に評価するためには,レンズの中央部,中間周辺部,最周辺部(ベベル部分)と3つの区域に分けて,それぞれを別々に評価する(図1).1.中央部中央部ではCL後面と角膜中央部との関係をアピカルタッチ(頂点接触),アライメント,アピカルクリアランスという表現を用いて評価する.アピカルタッチ(頂点接触)はレンズ後面中央部が角膜中央部に接触した状態(図2),アライメントはレンズ後面中央部のカーブが角膜中央部の形状にほぼ沿った(パラレルの)状態,アピカルクリアランスはレンズ後面中央部が角膜中央部に接触していない状態である(図3).2.中間周辺部中間周辺部の評価は処方レンズのベースカーブを決定するうえで最も重要となる.レンズ後面のカーブが角膜の形状よりも緩やかなことをフラット(図4),ほぼ並行に沿った状態をパラレル,きついことをスティープ(図5)と表現する.この部分がスティープであるときレンズの動きがタイトになることが多く,フラットであるときルーズとなることが多い.(61)3.最周辺部(ベベル部分)最周辺部の評価も,中間周辺部と同様,重要である.中間周辺部のフィッティングが良好でも,最周辺部のフィッティングが不良であれば,さまざまなトラブルの糸井素純道玄坂糸井眼科医院コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】328.フルオレセインパターン判定法(2)図1フルオレセインパターンの部位別判定A:中央部,B:中間周辺部,C:最周辺部(ベベル部分).図2中央部アピカルタッチ(頂点接触).図3中央部アピカルクリアランス.1430あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(00)原因となる.最周辺部ではレンズエッジ(ベベル)のデザインが評価に大きく影響する(図6,7).この部分ではレンズエッジと角膜との距離(エッジリフト),ベベル部分の幅,ベベル部分とベースカーブの移行部のブレンド状態を正確に判定する.ベベル部分の涙液クリアランスが不十分だと,コンタクトレンズの動きが少なくなり,良好な涙液交換が得られない.逆に多すぎるとレンズの動きが大きすぎたり,ずれたり,はずれやすくなったりする.涙液クリアランスが多すぎても,少なすぎても装用感の不良の原因となる.ベベルのデザインはメーカーによって大きく異なり,処方するHCLのベベルのデザインを把握する必要がある.●その他の確認事項1.レンズの動きに伴うフルオレセインパターンの変化瞬目時のHCLの移動により,HCL下の涙液が交換され,涙液を介して角膜に酸素が供給される.フィッティング状態にもよるが,フルオレセインで涙液を染色すれば,HCLの移動に伴うフルオレセインパターンの変化により,この涙液交換を確認することができる.同時にレンズの動きに伴うベベル部分の涙液クリアランスの変化についても確認する.2.静止位置でのフルオレセインパターン理想的なレンズフィッティングでは,角膜中央部付近がレンズの静止位置となる.しかし,必ずしも角膜中央部がレンズの静止位置とは限らない.下方固着,上方偏位を生じているときは,何が原因であるかを確認するために,レンズの静止位置でのフルオレインパターンについても確認する.3.HCLが移動する際のレンズエッジと周辺部角膜,結膜との関係HCLが移動する際のレンズエッジと周辺部角膜,結膜との関係の評価も重要である.瞬目や眼球運動とともに,HCLが上下左右に移動したときに,レンズエッジが周辺部角膜や結膜に圧迫やこすれなどの機械的障害が生じていないかを確認する.図4中間周辺部フラット.図6最周辺部ベベル幅が狭く,エッジリフトも低い.図7最周辺部ベベル幅,エッジリフトともに適正.図5中間周辺部スティープ.

写真:巨大な隆起性角膜真菌症

2011年10月31日 月曜日

あたらしい眼科Vol.28,No.10,201114270910-1810/11/\100/頁/JCOPY(59)写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦329.巨大な隆起性角膜真菌症中村由美子細谷友雅兵庫医科大学眼科図1初診時前眼部写真(79歳,男性)角膜耳下側に境界明瞭な巨大白色隆起性病変を認める.結膜充血は軽度でendothelialplaqueは認めない.①図2図1のシェーマ①:巨大な白色隆起性病変.図3術中写真白色塊は角膜との癒着がほとんどなく,一塊として容易に?離除去できた.図4白色塊のファンギ・フローラYR染色黄緑色の蛍光に染まった分節を伴う多数の糸状菌を認め,白色塊は糸状菌の集合体と考えられた.1428あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(00)糸状菌による角膜真菌症は植物の枝や葉による外傷が誘因となることが多く,起炎菌としてはFusariumsp.が多い.Fusariumsp.による角膜真菌症は角膜実質深層から内皮面へ病巣が拡大しやすく,治療に抵抗する例も多いため視力予後不良な例が多い1).外傷後に約2カ月間副腎ステロイドを(以下,ステロイド)投与されていたにもかかわらず,病巣が表層に留まっていたため,予後が良好であったと考えられる症例を紹介する.〔症例〕79歳,男性.主訴:視力低下・右眼白濁.現病歴:右眼に栗のイガが落下し受傷した.受傷2日後に近医を受診し,右眼の角膜耳下側にイガの刺入を認めたため抜去された.角膜穿孔は認めなかった.経過中,刺入部角膜に細胞浸潤を認めたため,抗菌薬とステロイドの点眼加療が行われたが改善しなかった.受傷40日後より眼痛が出現し,病変部は白色の隆起性病変となった.その後も抗菌薬とステロイドの点眼加療が継続されたが,病変が増大したため受傷68日後に兵庫医科大学病院眼科を受診した.職業:農業.全身疾患:糖尿病など特記すべき異常なし.初診時所見:VD=0.1(矯正不能)で,右眼耳下側に境界明瞭な巨大白色隆起性病変を認め,白色塊周辺部角膜には軽度の細胞浸潤を伴っていた.白色塊上に上皮はなかった.前房内炎症細胞は認めなかった.生体レーザー共焦点顕微鏡にて白色塊の全層にわたり無数の分節した菌糸を強く疑わせる所見を認めたため,角膜真菌症と診断し治療を開始した.経過:前医処方の0.1%フルオロメトロン点眼を直ちに中止し,ピマリシンR眼軟膏1日6回,自家調整0.1%ミカファンギン(ファンガードR)点眼液1日6回およびミカファンギン点滴,その後ボリコナゾール(ブイフェンドR)内服による治療を開始したが改善に乏しかったため,治療開始28日目にミカファンギン点眼を自家調整0.2%ミコナゾール(フロリードR)点眼液2時間ごとに変更したところ,改善を得た.白色塊を?離除去しファンギ・フローラYR染色を行い,分節を伴う多数の糸状菌を認めた.病巣擦過物の分離培養試験は陰性で,起炎菌を同定することはできなかった.7カ月後,VD=(0.5×sph+1.25D(cyl+0.75DAx135°)となり,白内障の進行は認めたが瘢痕治癒した.考按:今回の症例は,外傷後に約2カ月間ステロイドを投与されていたにもかかわらず,病巣が表層に留まっていたため,予後が良好であったと考えられる.糸状菌のなかには長期間角膜実質の表層に病巣が限局し,緩慢な経過をたどる例がある.宇野は,Alternariasp.に代表される“表層型”の糸状菌は,体温より低い32℃好気性条件でのみ培養可能であったと報告している2).今回起炎菌の同定は不能であったが,低温好気条件で成長する“表層型”の糸状菌であった可能性が高いと考えられる.角膜上に真菌塊を形成する角膜真菌症の報告はまれであり,長期のステロイド点眼投与が真菌塊の形成を助長したと考えられる.最後に,ご校閲いただきました三村治教授に深謝いたします.文献1)鈴木崇,宇野敏彦,宇田高広ほか:糸状菌による角膜真菌症13例の臨床的検討.眼科45:1183-1188,20032)宇野敏彦:眼科真菌症.真菌誌49:175-179,2008

時の人 稲谷 大 先生

2011年10月31日 月曜日

1426あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(58)本年(2011年)7月,福井大学医学部眼科学教室の新しい教授に稲谷大先生が就任された.福井大学医学部は,1978年に福井医科大学として創設されたのち,2003年に福井大学との統合により,福井大学医学部となった.統合前の医科大学時代から数えて,初代教授は深見嘉一郎先生,2代目教授が赤木好男先生で,この度の稲谷先生は3代目となる.*福井大学眼科学教室ではこれまで,糖尿病網膜症とその合併症としての白内障の進行を研究テーマとして取り組んでこられた.そのため,教室の年間手術件数約1,500件のうち,硝子体手術と白内障手術が大部分を占めている.そのような教室の環境の中で講師の高村佳弘先生は,日本糖尿病眼学会の理事も務められており,学術的にも優れた研究業績を残しておられる.*稲谷先生の経歴を振り返ると,先生は,1995年に京都大学医学部を卒業し,1997年から同大学大学院に入学された.そのときの指導教員が,のちのちまで大きな影響を受けることになる現在の熊本大学教授の谷原秀信先生である.大学院在学中は,緑内障の臨床研究と緑内障視神経症の研究に従事された.その後2000年には京都大学医学部に助手として勤務,2001年からは米国カリフォルニア州のバーナム研究所に留学された.その留学中には,視神経の軸索投射の研究がScience誌に掲載された.2003年に帰国後は,現在の愛知淑徳大学教授の柏井聡先生が部長をされていた大阪赤十字病院眼科に勤務し,さまざまな眼科疾患の診療経験を積まれた.2005年には,熊本大学の助手となり,2006年からは講師として勤務された.また,2009年には,日本眼科学会総会の評議員指名講演(宿題報告)において,これまでの緑内障の動物疾患モデルの研究について発表された.そして本年7月,最初に紹介したように,福井大学眼科学教室の教授に就任された.*稲谷先生は,研究テーマとして,京都大学の大学院生のときの指導教員であった谷原秀信先生の影響もあり,緑内障の基礎研究と臨床研究を一貫して行ってこられた.基礎研究では,緑内障の神経保護研究や視神経の軸索誘導の研究に従事され,今年,軸索輸送が停止すると網膜神経節細胞の細胞死がひき起こされることを報告され,緑内障視神経症の病態解明に貢献された.一方,臨床研究では,続発緑内障の手術治療の研究を行い,日本の眼科医には常識であったステロイド緑内障に対するトラベクロトミーの有効性を多施設共同研究で発表し,日本の臨床エビデンスを世界へ情報発信された.今後は,福井大学の以前からの研究テーマであった糖尿病網膜症に合併する血管新生緑内障などの難治性緑内障の研究に取り組んでいきたい,とその抱負を語られた.*先生の信条は,挑戦し続けること.誰もやっていないことは行き着くところまで試しにやってみる.目標に向かって挑戦する習慣を養うことが自己研鑽につながり,同僚や患者からも信頼される高潔な人格をもった医師が育成される,との考えを強調された.*現在,新しい体制の教室で本腰を入れて取り組むために,すでにご家族(奥様と二人のお子様)とともに福井県に引っ越してこられた.趣味は,愛犬のフレンチブルドッグの廉次郎の散歩とのこと.尚,只今,新入医局員を募集中であり,ホームページの作成に力を注いでおられる.興味のある方はぜひご覧になってください.0910-1810/11/\100/頁/JCOPY時の人福井大学医学部感覚運動医学講座眼科学・教授稲いな谷たに大まさる先生

総説:第16回 日本糖尿病眼学会 特別講演 糖尿病網膜症に対する治療適応の諸問題

2011年10月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPYofvision)を目指す」治療,また「増殖糖尿病網膜症」から「糖尿病性黄斑症」の治療へと変わってきて久しい.これらの治療法の進歩にもかかわらず,わが国におけるDRによる失明患者は約2割を占め(表1),視覚障害に占めるDRの頻度は世界的にも減少傾向がみられない.このことは糖尿病患者の激増に加え,内科的および眼科的治療が対症療法に止まること,さらに内科的治療の中断や適切な時期での眼科治療の遅れが関係していると思われる.ここでは現在までのDR治療の現況とDMEを中心とする治療選択の問題を中心に述べる.I糖尿病網膜症の現況わが国における久山町での疫学的研究(40歳以上)集計9)では1998年度の網膜症有病率は16.9%で,2007年では15.0%と変化がなく,病型としては前増殖型および増殖型は減少したが,単純型に増加がみられた.DRの早期発見,早期治療については,大学,総合病院,診療所を含め北海道の眼科についての筆者らのアンはじめに糖尿病網膜症(DR)は糖尿病,血圧,脂質など長期にわたる内科的厳格なコントロールによる失明予防が可能な疾患である1?8).眼科的にはDRに対して,1971年以降にレーザー光凝固および硝子体手術が導入され,増殖糖尿病網膜症(PDR)だけでなく,糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)にも使われている.最近では抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)薬(bevacizumab,ranibizumab)およびtriamcinoloneacetonide(TA)など薬物眼局所注射が使用され,パターンスキャンレーザー光凝固装置も実用化された(図1).眼科的な治療目標が「失明に対する緊急避難的な治療」から,「社会生活が可能な視力,いわゆるQOV(quality(45)1413*MuneyasuTakeda:桑園むねやす眼科〔別刷請求先〕竹田宗泰:〒060-0010札幌市中央区北10条西15丁目1-4ブランズ桑園駅前イースト1階桑園むねやす眼科あたらしい眼科28(10):1413?1424,2011c第16回日本糖尿病眼学会特別講演糖尿病網膜症に対する治療適応の諸問題ProblemsinIndicationforTreatmentofDiabeticRetinopathy竹田宗泰*総説1971アルゴンレーザー光凝固1971硝子体手術1980色素レーザー(Coherent社)2006Semiautomatedpatternedscanninglaser200725ゲージ硝子体手術2007薬物治療(triamcinoloneacetonide,bevacizumab)眼科治療法の進化薬物治療レーザー光凝固硝子体手術図1眼科治療法の進化表1失明原因(厚生労働省)1991年(2,161名)2005年(2,034名)1糖尿病網膜症18.3%緑内障20.7%2白内障15.6%糖尿病網膜症19.0%3緑内障14.5%網膜色素変性13.7%4網膜色素変性12.2%黄斑変性9.1%5強度近視10.7%強度近視7.8%6視神経・網脈絡膜萎縮9.8%1414あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(46)ケートによるDRの実態調査(1999年,2,320名)10)によると,内科医の紹介56%で,自覚症状による受診が22%にのぼり,初診時,すでに約40%にDRを認めた(図2).初診後,眼科へは継続通院48.7%,中断20.4%,1回のみ受診30.8%で,半数以上は経過観察がされず,中断例での54%,1回のみの受診患者の22%にDRがみられた(図3).したがってDRの早期発見,継続的治療のため,患者に対する経過観察の必要性,糖尿病眼手帳による内科との連携強化,さらに持続可能な家族や仕事,経済環境を含めた個々の患者の課題を解決する必要がある.II内科的治療との関係1.糖尿病腎症と糖尿病網膜症の関係DRの発生には血糖,糖尿病罹病期間,血圧,脂質,喫煙などが危険因子とされ,体内でVEGF,エリスロポエチンなどが関与し,microangiopathyからmacroangiopathyをひき起こすことが知られている.臨床的には強力な血糖コントロールが1型糖尿病(DCCT:DiabetesControlandComplicationsTrial/EDIC:EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplicationsResearchGroup)2?5)だけでなく,2型糖尿病6)のDRの進行抑制に有効で,高血圧コントロール(UKPDS:UnitedKingdomProspectiveDiabetesStudy)7,8)の効果も実証された.その後10年以降でも強化インスリン療法で進行抑制(EDICstudy)5)が可能とされている.糖尿病(DM)の三大合併症として,網膜症(DR),腎症および神経症があげられる.なかでも腎症と網膜症は強い関係が示唆され,Caldwellら11)は病因が同じではないが,腎症が網膜症に影響すると述べている.実際,DRは蛋白尿12),DR頻度と腎症の程度13)にも相関し,単純型で腎症がある例ではDMEの合併が高率との報告もある14).しかし,増殖型でも14%に微量アルブミン尿(?)例14)もあり,黄斑部蛍光漏出は短期(透析後4週)では影響がないとの意見15)があり,透析からの期間や臓器間特異性を考慮する必要がある.全身浮腫とDMEとの関係について,宮部ら16)は短期的には3カ月間程度全身浮腫の増減とともにDMEが増減し,totalmacularvolumeは約9カ月にわたり,全身浮腫との相関を認め(図4),体重の増減はDMEに対する治療の指標となりうると述べた.2.透析導入による糖尿病網膜症への影響最近,DMは生命予後が改善され,その結果,透析導入に占める最大の疾患になっている.一般に透析導入に至る患者には網膜症合併率が高いこと,導入前後に血糖,血圧コントロールが不良なことが多く,末期の腎症により網膜症が悪化することが多い.しかし,透析導入直後に網膜症が急速に進行することが多い17)ものの,0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%継続n=1,091中断n=4571回のみn=69255467826261399153154424:停止:増殖:増殖前:単純:(-)図3初診後の眼科の通院状況(文献10より)内科治療中断例の50%に網膜症がみられた.010203040506056221421受診動機2,320名(不明5名)%内科の紹介自覚症状眼科の紹介他科の紹介偶然初診時網膜症2,317名(不明8名)01020304050607061718113%なし増殖前単純増殖停止図2北海道における糖尿病網膜症の実態調査(12施設,1999年)自覚症状で受診したものも22%.初診時,約40%に網膜症がみられた.(文献10より)(47)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111415竹田ら18)は6カ月以降安定化するとし,徳山ら19)は導入時,増殖前と増殖網膜症が50%,数カ月で安定化を示し,2年でburnedoutretinopathyになるとしている.石井ら20)も増殖網膜症の悪化は導入後1年以内に約10%で,最近は導入前の光凝固,硝子体手術よりDRは安定化し,高度視力障害の頻度は減少しているとしている.III増殖糖尿病網膜症(PDR)に対するレーザー光凝固DRに対するレーザー光凝固についてはDiabeticRetinopathyStudy(DRSNo.1,1976?No.14,1987)21?23)がおもにPDRに対する汎網膜光凝固の効果,副作用(prospective,randomizedstudy)を検討し,その後,EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRSNo.1,1985?No.24,1999)が汎網膜光凝固の時期およびDMEに対する局所光凝固の有効性について,各々10年以上の長期研究により,EBM(evidence-basedmedicine)を確立した.DRS21)では1眼がPDRあるいは両眼重症非増殖網膜症で視力両眼20/100以上の症例について,汎網膜光凝固群では5年で重症視力障害(0.025以下)はそれぞれ,未治療群に比べ,50%から20%に減少したと報告した(図5).特にハイリスク増殖網膜症(HRC)である,硝子体出血や網膜前出血を伴う中等度あるいは重症乳頭外新生血管(NVE)および乳頭部新生血管(NVD),中等度以上のNVD23)には汎網膜光凝固(PRP)を推奨している.PRPの合併症であるDMEでは,術前,黄斑肥厚に対し局所凝固を行うべきとしている.しかし,現在なおPRPの適切な時期を逃したり,凝固不足のため,硝子体出血や網膜?離により失明する症図4体重に対する中心窩厚,totalmacularvolume(TMV)の関係(文献16より一部改変)両眼とも初診から9カ月まで体重とTMVは相関がみられた右眼:初診から3カ月まで体重と中心窩厚は相関がみられた左眼:初診から硝子体手術まで〃〃中心窩厚体重4.94.215.55.196.26.166.302004年2005年2006年R858075706560体重(kg)700600500400300200100(μm)※6/23ケナコルト・Tenon?下注射汎光凝固術右眼中心窩厚L中心窩厚体重4.94.215.55.196.26.166.302004年2005年2006年V5.18858075706560体重(kg)1,4001,2001,000800600400200(μm)汎光凝固術※5/26ケナコルト・Tenon?下注射左眼中心窩厚体重TMVR4.206.208.2010.2012.2090858075706560体重(kg)13.012.512.011.511.010.59.59.08.58.0(mm3)MacularvolumeTMV体重L4.206.208.2010.2012.2090858075706560体重(kg)13.012.512.011.511.010.59.59.08.58.0(mm3)※硝子体手術5/18Macularvolumeキセノン治療群キセノン群コントロールアルゴン群コントロールアルゴン治療群0481216202428323640444852566064687240302010経過観察期間(月)重症視力障害/100図5増殖糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固群における高度視力低下の頻度(文献21より一部改変)1416あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(48)例が跡を絶たない.日本糖尿病眼学会で虚血の著明な症例に対し,新生血管出現に先行し,無血管領域の散発光凝固の効果について試験を実施し,調査開始3年で施行群(13例)が非施行群(23例)に対して,PDRの発生が有意に低率との新しい知見を報告した(第114回日本眼科学会総会講演).PRPについては,vasculararcade外から周辺部まで1スポットあけて,隈なく凝固を行う.しかし,NVD,多発するNVE,虹彩ルベオーシス,網膜?離,硝子体出血などの重症例,通常の凝固で改善しない例はときにvasculararcade内,最周辺部の無血管領域を含め,癒合した凝固も必要である.IV増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の変遷PDRに対する硝子体手術は広範な(特に黄斑部を含む)網膜?離,裂孔併発型網膜?離,広範な網膜前出血,吸収しない再発性硝子体出血,虹彩ルベオーシスなどに対して実施される.手術時期については,VitrectomyStudyGroup25)によると,0.05以上の活動性新生血管を伴う症例370眼で,ただちに硝子体手術を行う早期手術群,6カ月後手術する経過観察群を比較し,4年後,0.5以上の視力は早期手術群44%,経過観察群28%であった.しかし,高度視力低下は両群に差がなかった.しかし,現在まで十分な硝子体ゲルの切除,シリコーンオイル,眼内レーザー,高速カッター,25,23ゲージ(G)による小切開硝子体手術,triamcinoloneacetonide(TA)による硝子体可視化,照明系(キセノン,水銀灯光源)や新しい広角観察系(ワイドフィールド)の改良,およびbevacizumab術前投与などPDRに対する早期手術が確立したといえる.この点について約20年間(1980年代から2008年度)における硝子体手術の手術適応および治療成績の変化を検討してみた.1980年代26),1990年代27),2000年代初め28),25G手術システムに移行した2008年度の4群に分けて(表2,3)調査した.術前の主要病変は網膜?離(硝子体出血を含む)がそれぞれ60%,59%,48%,33%で,網膜?離は2000年以降に減少し,2008年には硝子体出血が65%と両者の比率が逆転した(図6).1980年代は合併症が多く,緊急避難的に行う例が多いため,術前視力0.01以下の症例は67%であったが,1992年以降早期手術に移行し,38?46%となった(図7).術前後の視力変化も1980年代は視力改善43%,不変34%,悪化23%であった.それ以降は改善が1990年代52%,2000年代初期60%,2008年では77%と格段に向上した(図8).最終視力も,1980年代は高度の視力障害(0.1以下)が8割に対し,1990年代では48%,2000年代初めは38%,2008年では35%と減少している.しかし,視力0.5以上は1980年代10%に対して,その後,33%,26%,34%と25G手術システム後もそれほど変化がない(図9).術後合併症については,2008年の25Gシステム導入後,高眼圧,血管新生緑内表2増殖糖尿病網膜症(対象症例n=784眼)1986~891992~972000~012008例数(例)14528711996眼数(眼)171342149122男/女比1.21.31.272平均年齢(歳)53.153.154.859.1観察期間(月)19.115.717.618.1表3治療術式,実施病院,術者年度1986~891992~972000~012008使用システム20ゲージ20ゲージ20ゲージ25ゲージPEA+IOL32%*34%63%60%SO47%17%15%10%輪状締結31%16%2%2%実施病院札幌医大市立札幌市立札幌市立札幌術者筆者筆者4名6名PEA+IOL:水晶体超音波浮化吸引術+眼内レンズ挿入,SO:シリコーンオイル注入.*主としてカッターによる水晶体切除または全摘(IOL挿入なし).01020304050607080901001986~89n=1711992~97n=3422000~01n=1492008n=12236405065605948334122*硝子体出血は網膜?離を伴わないもの%:その他:網膜?離:硝子体出血*図6増殖糖尿病網膜症における術前の主たる手術対象病変網膜?離の比率は1980年代に比べ,66%から33%へ低下した.(49)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111417障,網膜?離などの合併症も減少傾向がみられた(図10).このようにPDRに対する硝子体手術は比較的早期に行われ,安全かつ容易で,適切な治療が行われるようになったことを示している.V糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する治療1.DMEによる視力障害DMEは非増殖型(NPDR),増殖型(PDR)に関係なく発生し,現在も治療困難な病変である.DMEの発生には全身的因子(血糖,血圧,脂質コントロール)を基盤にして,網膜血管内皮が障害され,網膜虚血,VEGF産生,白血球の血管壁吸着,炎症,網膜色素上皮ポンプ機能の低下,血管内外の静水圧差,浸透圧勾配の影響,硝子体や網膜上膜による牽引などが複雑に絡んで発生すると推定されている(表4).具体的にDRの病態としては,実験的にはアルドース還元酵素により,ソルビトールが細胞内に蓄積して網膜毛細血管の周皮細胞壊死と基底膜肥厚が起こるとされ,硝子体内では炎症による01020304050607080901001986~89n=1711992~97n=3422000~01n=1492008n=122%:0.2以上:0.02~0.167:0.01以下423846274539446132310図7術前視力術前視力は1980年代に比べ,0.01以下が67%から2008年に46%へ低下した.01020304050607080901001986~89n=1711992~97n=3422000~01n=1492008n=122%:悪化:不変:改善(小数視力2段階)43526077342828232019124図8治療前後の視力変化改善の割合は1980年代に比べ,43%から77%と向上し,25ゲージシステムになって悪化が4%に減少した.表4DMEの発生に関与する因子1)全身コントロール状態─血糖,血圧,脂質コントロール─罹病期間2)病因─炎症,VEGF,白血球の接着など─網膜色素上皮のポンプ機能の低下─血管内外の静水圧・浸透圧勾配─硝子体あるいは網膜上膜の牽引01020304050607080901001986~89n=1711992~97n=3422000~01n=1492008n=122%:0.5~:0.2~0.4:0.02~0.1:0.01以下3621161247272223821363110332634図9術後最終視力術後0.01以下は1980年代に比べ,36%から1/3へ減少し,術後視力0.5以上は10%から1990年代以降が約3割となった.0102030405060701986~89n=1711992~97n=3422000~01n=1492008n=122%:高眼圧:NVG:網膜?離:硝子体出血261814815510612109588114図10術後合併症の変遷1990年代および2000年前半に比べ,25ゲージシステム後,合併症が減少.特に各年代群で硝子体出血の頻度の減少が認められる.1418あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(50)VEGF,pigmentepithelium-derivedfactor(PEDF)29),ICAM-1(inter-cellularadhesionmolecule1),IL(インターロイキン)-6,MCP-1(monocytechemoattractantprotein-1)などのサイトカインがDMEをひき起こすとされている30,31).最近,高速,高解像度(水平解像度約5μm)のスペクトラルドメインOCT(光干渉断層計)が導入され,中心窩網膜厚(centralretinalthickness:CRT)および肥厚の範囲と程度の数値的表示が可能となり,三次元的解析もできるようになった.OCT所見によるDMEの性状について,Ootaniら32)は網膜膨化,?胞状変化,漿液性網膜?離(図11a,b)に分類した.しかし,網膜膨化のみの例はきわめて稀で,硬性白斑(図12),硝子体による黄斑牽引(図13),網膜上膜など重複した病変の合併(図11c)が少なくない.治療後の視力予後はIS/OS(視細胞内節外節接合部)や外境界膜の欠損が視力予後に関係していること,外境界膜と?胞の接触および網膜外層厚との相関など33)が指摘されている.DMEに対する硝子体の関与について,荻野ら34)は3D-OCTによりBスキャンで後部硝子体膜が検出不能でも,硝子体手術前に全例で後部硝子体?離の有無が確認でき,乳頭黄斑接着群と広範接着群に分けて,その癒着部分に牽引,肥厚が起きている(図14)とし,DMEへの硝子体牽引の関与を示唆した.網膜血管透過性亢進とDMEの解剖学的変化との関係について,DMEはOCTで網膜外層に著明で,その程度はFA(フルオレセイン蛍光眼底造影)による蛍光漏出と関係があり,網膜内層の消失は毛細血管閉塞と相関がみられた35).このように治療選択に対して,重複病変,視力改善不能な虚血性黄斑症(図15)および血管透過性亢進の検出にFAは必須の検査である.2.DMEに対する各種治療法の位置づけDMEについてはレーザー光凝固,薬物眼局所注射,硝子体手術が行われる.一般的には限局性およびびまん性でも軽度のDMEは光凝固,高度のものは眼局所薬物治療(bevacizumab,triamcinolone),あるいは硝子体手術が行われる.bca図11DMEの形態学的変化a:?胞状浮腫(CME),b:漿液性網膜?離(SRD),c:黄斑牽引症候群(MTS).図12中心窩下硬性白斑による高度の視力低下67歳,女性.視力0.04.OCT(右上)では色素上皮と一体化した隆起,蛍光造影(右下)では黄斑部にびまん性蛍光漏出.(51)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111419a.薬物治療網膜症の全身的な薬物療法にはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)であるカンデサルタン36)あるいはロサルタン内服,アンジオテンシン変換酵素阻害薬エナラプリル37)などが効果的との報告がある.眼局所治療としては,抗VEGF薬のranibizumab(IVR)38),bevacizumab硝子体注射(IVB)39),ステロイド剤triamcinoloneacetonide(triamcinolone)の硝子体内注射(IVT)40?44),あるいはテノン(Tenon)?下注射(SBT)などの有効性(図16)が報告されている.Gilliesらは光凝固に反応しない例に対するIVTにより5年以上の長期にわたり,偽薬群34眼中11眼(32%)に比べ,図13黄斑牽引のみの症例52歳,女性.視力0.7.FA(右上)では蛍光漏出はみられず,B-スキャン(左下)に比べ,3D画像(右下)では牽引の全体像が明瞭に検出できる.T:耳側を示す.ERM毛細血管閉塞網膜上膜?胞様黄斑浮腫IS/OS外境界膜図15虚血性黄斑症を伴うDME(ischemicDME)63歳,男性.視力0.08.OCT(右上)ではCME,網膜上膜(ERM),IS/OS(視細胞内節外節接合部)の断裂を認める.FA(右下)では黄斑部に著明な毛細血管閉塞があり,蛍光漏出はほとんどない.図143D?OCTによる硝子体と網膜境界面の関係硝子体による網膜付着部に網膜の牽引・肥厚がみられる.N:鼻側を示す.1420あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(52)33眼中14眼42%に5文字以上の改善を認めた44).一般にIVTは眼圧上昇と白内障の副作用があるものの,bevacizumabに比べ,DMEに対してより効果的とされ45,46),投与法としては,SBTよりIVTが有効との意見がある47).しかし,薬物治療は浮腫の再発に対し追加投与が必要なため,長期に作用するfluocinoloneacetonideの硝子体内徐放剤が試みられている.Campochiaroら48)は光凝固に反応しないDMEに対し,低用量群(0.2μg/day,375眼),高用量群(0.5μg/day,393眼)の徐放剤を偽薬群(185眼)と2年間で比較した.その結果,視力改善(15文字以上)は偽薬群16.2%に対し,治療群はそれぞれ,28.7%,28.6%,平均改善文字数は偽薬群1.7%に対してそれぞれ4.4%および5.4%と良好であった.白内障手術例は治療群に多いが,中心窩厚(FTH)も有意に改善したと述べた.以上の結果から,光凝固が困難な高度のDMEでは薬物局所注射が現段階で第一選択と考えられる.b.硝子体手術びまん性DMEに対する硝子体手術49?54)についてYamamotoら51)によるとDMEの73眼を術後1年間経過観察し,視力,中心窩網膜厚は有意に改善,2年後も視力が維持した.Kumagaiら53)は網膜牽引がない356眼を5年以上観察し,改善52.7%,不変31.3%,悪化16%,平均視力が術前0.19から最終時0.3へと良好な結果を報告している.しかし,硝子体手術は長期の効果が期待されるが,欧米ではほとんど実施されておらず,EBMも確立していない.そのうえ,効果のない例もあり,患者への負担,副作用〔網膜?離,眼内炎,NVG(血管新生緑内障)など〕も考慮し,薬物治療および光凝固に反応しない症例で行うことが望ましい.c.レーザー光凝固EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)の大規模無作為比較試験によって,DMEに対する黄斑(局所およびgridpattern)凝固の有効性が確立された55,56).このため限局性のCSME(clinicallysignificantmacularedema)ではレーザー光凝固が現在でも第一選択と考えられる.CSME55)とは①黄斑中心から500μm以内の網膜肥厚,②この付近の網膜肥厚を伴う硬性白斑,③黄斑中心から1乳頭径以内で1乳頭径以上の肥厚と定義されている.これに対して,後に述べるようにDRCR.netでは光凝固により視力改善効果を認め,現在なおgoldstandardとしている.ETDRSでは①凝固対象は毛細血管瘤,IRMA(intraretinalmicrovascularabnormality),漏出部の凝固(直像レンズで凝固条件50?100μm,0.05?0.1秒で中等度(網膜白濁)とし,硬性白斑内は約200μm,蛍光漏出部は中心から2乳頭径以上も凝固する.②Gridpattern凝固はびまん性漏出と毛細血管閉塞を伴う場合,中心から500μm以上離れて50?200μmで2乳頭径まで1スポット空けて凝固する.DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork(DRCR.net)57,58)では①視力障害の原因となる中心窩肥厚(OCTで250μm以上)のある症例で,②凝固条件は1回で毛細血管瘤,中心窩から500?3,000μmの網膜肥厚,毛細血管閉塞部を照射径50μm,弱凝固(淡い白濁)に修正した(後述).しかし,黄斑光凝固は有効性,手技的困難性,atrophiccreepや黄斑誤凝固の副作用があり,異論も少なくない.最近,黄斑付近の網膜障害を最小限にするためsubthresholdmicropulsediodelaserの有効性59?61)が報告され,さらに疼痛の少ない,超短時間(0.01秒前後),小スポット(100μm)での正確な格子状凝固およびPRPが可能なパターンスキャンレーザー光凝固装置62,63)が市販され,DMEへの応用が試みられている.3.DMEに対する各種治療の比較試験少数例での短期前向き試験64)では,ranibizumabはDMEの局所/格子状凝固に比べ,有意に視力が良好とba図16Triamcinoloneacetonideテノン?下注射によるCMEの消失59歳,女性.a:左眼術前視力0.3,b:術後2カ月0.5.(53)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111421された.しかし,前述したDRCR.net57,58)による長期の大規模試験では,びまん性を含むDMEに対するmodifiedgridpattern凝固はIVT(intravitrealtriamcinoloneacetonide硝子体注射)に比べ,長期の視力改善効果が高く,副作用も少ないとの報告を2007?2009年にかけて発表した.試験は術前視力20/40?20/320,中心窩を含むDME693例840眼に対し,focal/grid光凝固群に対し,IVT1-mg群,4-mg群を比較した.平均視力は4カ月までIVT4-mg群が良好だが,2年間ではレーザー治療群がIVT各群より良好な改善がみられ,有意な視力低下,眼圧上昇,白内障の副作用も少なかった.その後,3年間追跡した306眼でもIVT各群は視力がベースラインに止まったが,レーザー群で5文字改善した58).Bevacizumab硝子体注射(IVB)について,Soheilianら65)によるDMEに対するIVB(1.25mg)群,IVB/IVT(2mg)群,MPC(macularlaserphotocoagulation:focalormodifiedgridlaser)群(各群50眼)の比較で36週間での視力変化,中心窩網膜厚(centralmacularthickness:CMT)は各群間に差がなかった.しかし,少数例ではあるが,1年の経過観察でレーザー群に比べ,IVBのほうが視力,網膜肥厚に対して効果的との報告66)もある.硝子体手術とgridpattern光凝固との比較ではYanyaliら67)は1回のgridpattern光凝固に対して,ILM(内境界膜)?離を伴う硝子体手術がより効果的であるとした.4.現時点でのDMEに対する治療選択以上のようにDMEに対する治療選択にはEBMが確立したとはいえないが,現段階で通常,図17にあげた治療選択が行われている.個々の症例に即して,今までの報告,各自の経験から,患者への負担,risk/benefit,経費などを考慮して治療を行うことになる.私見としては,1)限局性CSMEでは毛細血管瘤と網膜肥厚部の局所光凝固,軽度のびまん性DMEでは強い漏出部,毛細血管閉塞部のgridpattern光凝固を実施する.2)高度のびまん性DMEでは,triamcinolone(硝子体注射:IVT,あるいはテノン?下:SBT)またはbevacizumab硝子体注射(IVB)を行う.無効あるいは再燃をくり返す場合は硝子体手術を実施する.3)単独治療の無効例には,併用・追加治療として,①PRP後のCME予防のため,IVB68),SBT69),②黄斑凝固(MPC)前のSBT使用70),③IVT後の残存DMEに対するMPC71),逆にMPC後72)あるいは硝子体手術後71)残存DMEへのIVT,④初回から薬物治療,局所凝固あるいは硝子体手術との併用73)が有効との報告がある.併用療法は今後の検証を必要とするが,難治例では試みる価値がある.4)DRは十分な内科的コントロールにより,多くは予防可能で,眼科的にも,一部の症例を除き,治療可能となった.内科における継続的治療とともに,DRを早期に発見し,眼科的に適切な時期に治療のため,内科など他科との連携はもちろん,糖尿病予備軍を含め,一般への啓蒙が必要である.三大合併症の一つである腎症は網膜症悪化との相関があることが多く,一例として,体重と網膜症の悪化・改善と密接な相関を示す症例についての報告を取り上げた.5)眼科的治療についてはPDRに対し,十分なPRPが行われており,25G,23G極小切開硝子体手術システムが普及し,比較的副作用が少なく,良好な視力維持,停止性とすることが可能になった.6)DME(CSME)は限局性DMEでは局所光凝固で改善,停止性にすることができる.眼局所薬物治療はすでにoff-labelではあるが,bevacizumabが増殖網膜症や血管新生緑内障(NVG)に対する硝子体手術,光凝固に対する術前投与として使用されている.びまん性高度のDMEに対してもtriamcinoloneあるいは抗VEGF薬(off-label使用)が有効であるが,長期的には追加投与および徐放剤の開発が期待される.びまん性DMEに対する硝子体手術およびレーザー光凝固についても治療選択には明確な適応基準は確立していない.これらの適切?????????????????????????????????????????????????????????????????????????ProliferativeNon-Proliferative??????????????????????????????????????????PRP(または区画状)TriamcinoloneacetonideBevacizumab図17現段階での糖尿病網膜症に対する治療適応1422あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011な単独治療の方法,併用あるいは追加治療の適応を含め,個々の症例に応じた治療選択についての現状と課題を述べた.執筆にあたり,荻野哲男,今泉寛子,奥芝詩子,木下貴正,佐藤唯,宮本寛知,渡邊真弓(以上,市立札幌病院眼科),宮部靖子,静川紀子(萬田記念病院眼科)の各先生にご協力いただきました.心から感謝いたします.文献1)畑快右:糖尿病硝子体網膜症の予防的治療戦略.日眼会誌113:379-402,20092)TheDiabetesControlandComplicationsTrialGroup:Theeffectofintensivetreatmentofdiabetesonthedevelopmentandprogressionoflongtermcomplicationsininsulin-dependentdiabetesmellitus.NEnglJMed329:977-986,19933)TheDiabetesControlandComplicationsTrialResearchGroup:Theeffectofintensivediabetestreatmentontheprogressionofdiabeticretinopathyininsulin-dependentdiabetesmellitus.ArchOphthalmol113:36-51,19954)TheDiabetesControlandComplicationsTrial/EpidemiologyofDiabetesInterventionsandComplicationsResearchGroup:Retinopathyandnephropathyinpatientswithtype1diabetesfouryearsafteratrialofintensivetherapy.NEnglJMed342:381-389,20005)WhiteNH,SunW,ClearyPAetal;DCCT-EDICResearchGroup:Effectofpriorintensivetherapyintype1diabeteson10-yearprogressionofretinopathyintheDCCT/EDIC:comparisonofadultsandadolescents.Diabetes59:1244-1253,20106)OhkuboY,KishikawaH,ArakiEetal:IntensiveinsulintherapypreventstheprogressionofdiabeticmicrovascularcomplicationsinJapanesepatientswithnon-insulindependentdiabetesmellitus.Arandomizedprospective6-yearstudy.DiabetesResClinPract28:103-117,19957)UKProspectiveDiabetesStudyGroup:Intensivebloodglucosecontrolwithsulphonylureaorinsulincomparedwithconventionaltreatmentandriskofcomplicationsinpatientswithtype2diabetes(UKPDS33).Lancet352:837-853,19988)UKProspectiveDiabetesStudyGroup:Effectofintensiveblood-glucoseco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ぶどう膜悪性黒色腫に対する重粒子線治療の適応と限界

2011年10月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY素イオン線7)である.このような荷電粒子線には体内に入ってある程度深い位置まで到達するが,その粒子の停止する直前でエネルギーがピークとなり(Braggピーク),その後急速にエネルギーが衰退するという特性がある.このような特性より,体内の深部にある腫瘍に対する治療において,腫瘍にエネルギーを集中させ,かつ周辺組織への障害を少なくするという照射が可能である.荷電粒子線のこのような物理学的な特徴は眼内腫瘍の治療には適するものと思われる.また生物学的効果に関しては,陽子線はg線と比較して1.1倍程度の効果しかないのに対して炭素イオン線ではg線の2?3倍程度の効果があり,細胞周期の影響を受けにくい,腫瘍細胞の虚血による放射線感受性の変化が少ない,などの特徴があり,悪性黒色腫のように,従来放射線治療に対して抵抗性の腫瘍といわれているものに対しても効果が期待できるものと思われる8).このような前提のもとに,脈絡膜悪性黒色腫に対する炭素イオン線治療が行われている.現在のところ脈絡膜悪性黒色腫に対する荷電粒子線の治療としては,世界的にみて,陽子線の治療に関しては数千例を対象とした報告などもみられるまでに普及しており3?5),ヘリウムイオン線に関しての報告もみられる6).炭素イオン線に関しては今のところ日本の独立行政法人放射線医学総合研究所で行われているのみである7).脈絡膜悪性黒色腫に対する炭素イオン線治療に関しては,その照射の方法の確立のために,似たような線量分はじめに成人における,眼球原発の代表的な悪性腫瘍は,脈絡膜悪性黒色腫で,眼科においては数少ない生死とかかわるような疾患である.その発生頻度はかなり人種差はあるとされている.以前の報告では日本人では本腫瘍の発生率が1年間に人口100万人当たり0.3人程度,と報告されていた.白人における同様の統計では発生頻度はその20?30倍である1).その治療に関しては,以前は診断がついたら,眼球摘出というようなことが多かったが,症例の多い欧米では,眼球温存を目的にさまざまな治療が試みられた.現在欧米で行われている眼球摘出以外のおもな治療は,125Iや106Ruなどを用いた小線源治療2),陽子3?5),ヘリウムイオン6),炭素イオン7)などの荷電粒子による治療,gナイフやサイバーナイフによる放射線治療,経瞳孔温熱療法(TTT),強膜側あるいは硝子体側からの腫瘍切除などである.これらの治療の選択に関してはその腫瘍のサイズなども関係している.小線源療法やTTTは腫瘍の厚いものに関しては腫瘍の内部まで効果が及ばないことから適応とはならない.まず重粒子線とは電子よりも大きな荷電粒子を加速して照射する治療法であり,広義には水素の原子核である陽子も含めるが,陽子線治療としてすでに確立した治療であるので,通常重粒子線というときは陽子よりも大きい粒子,すなわちヘリウムイオン以上の粒子線を意味することが多い.実際に脈絡膜悪性黒色腫の治療として報告のあるのは陽子線3?5),ヘリウムイオン線6)そして炭(37)1405*AtsushiMizota,YujiNemoto&HiroyukiKaneko:帝京大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕溝田淳:〒173-0003東京都板橋区加賀2-11-1帝京大学医学部眼科学講座特集●眼の腫瘍¦最近の考え方¦あたらしい眼科28(10):1405?1412,2011ぶどう膜悪性黒色腫に対する重粒子線治療の適応と限界IndicationsandLimitationsofAcceleratedHeavyParticleIrradiationforUvealMalignantMelanoma溝田淳*根本裕次*金子博行*1406あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(38)て照射が決定してからの手順としては,まず直径2mm程度の薄いチタン製のマーカーを強膜に2カ所縫着する.その位置は基本的には,腫瘍に近くかつ照射の妨げにならないような位置である.その後に頭部固定用のマスクを個々の顔に合わせて作る.X線CT(コンピュータ断層撮影)の画像をもとにチタン製マーカーと腫瘍の位置を確認し,照射範囲を決定する.実際の照射室ではマーカーを目印に照射を行う.眼球の固定に関しては実際照射している時間は10秒程度なので,固視点を見ていてもらい,その間に眼球をビデオカメラでモニターしている.眼球運動などが起こった際は照射が瞬時に停止するようになっている.照射は5回分割照射で行われている.照射線量は当初は治験として,70GyE(g線における線量相当)から始め,その後線量を77,85GyEと増加し,その後には60GyEに減少させた.それらのデータをもとに,最終的に先進医療となった時点で,小さな腫瘍(腫瘍の厚さが5mm以内,かつ直径が10mm以内)に対しては60GyEで中くらい以上の大きさの腫布をもちかつ欧米で多数例の治療の報告のある陽子線による治療方法を確立し,そのうえで炭素イオン線照射が行われた.脈絡膜悪性黒色腫の炭素イオン線照射は2001年4月より行われて,2004年4月より先進医療として認可されている.今回このような治療の結果に関して述べる.I照射方法炭素イオン線の照射は前述した独立行政法人放射線医学総合研究所にあるHeavyIonMedicalAcceleratorinChiba(HIMAC)で行われており,全体としては1994年4月から照射が始まり2011年2月までに計5,874例の悪性腫瘍の症例が照射を受けている.脈絡膜悪性黒色腫はその2%程度を占めている.全部のなかで最も多いのは前立腺がんである.II対象および方法2011年2月の時点で炭素イオン線照射治療を受けた脈絡膜悪性黒色腫の症例は109例(109眼)で,毎年10名前後と,あまり大きな変動はない.109例の内訳は男性54例,女性55例で年齢は22?83歳,平均55.0歳である.基本的な照射方法は,それ以前に放射線医学総合研究所で行っていた陽子線治療の方法を基にしている.診断に関してはここでは誌面の関係で省略する.診断がつい表1照射線量の分布60GyE70GyE77GyE85GyE:14(3)例:70(59)例:13例:7例合計104例()内の数字は先進医療として行った症例数.AB図1垂直ビームのみの1門照射法(A)と水平ビームを加えた2門照射法(B)(39)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111407積がみられるが,6カ月後には集積がほぼ消失している.他の症例も同様の経過を示すものが多く,照射直後には網膜?離などが一過性に増悪し時間の経過とともに徐々に吸収していくことが多い(図3).PETでは短期では変化があまりなく,半年から1年で集積が消失する.腫瘍の大きさに関してはあまり変化のないことが多い(図4).何年も経過してから徐々に縮小していく.ただ,まれに腫瘍が急速に小さくなっていく症例(図5)もあり,何らかの遺伝子的な違いがあるのかもしれない.IV照射後の経過ここで炭素イオン線照射後6カ月以上経過した104例(104眼)に関して検討を行った.Eggerらの分類4)で行うとSサイズが3例,Mサイズが6例,Lサイズが67例,XLサイズが28例となる.約70%の症例が70GyEの照射を受けている(表1).瘍に関しては70GyE照射することとなった.治験として行われたのはこのうちの42例である.当然のことながら70GyEの症例が最も多くみられている(表1).少数だが60GyEの症例も少しずつ増えてきてはいる.照射に関しては当初は垂直ビームのみの1門で照射していた(図1A)が,その後緑内障などの合併症を減らす目的で,症例によっては水平ビームも加えた2門照射を行っている(図1B).III具体的症例典型的な症例のMRI(磁気共鳴画像)とメチオニンPET(陽電子放射断層撮影)の経過を図2に示す.照射1カ月後には腫瘍自体は小さくなっていないが,網膜?離が後極部に広範囲にみられる.6カ月後には網膜?離は消失している.腫瘍自体の大きさの変化はほとんどみられない.PETでは照射前,照射1カ月後では強い集ABC図2典型例のMRIとメチオニンPETA:照射前,B:照射1カ月後,C:照射半年後.1408あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(40)とそれより小さい腫瘍で比較してみると5年で転移のない率はXLでは62.8%,それ未満のサイズでは75.4%であった.腫瘍の位置による違いでは,腫瘍が視神経と接しているほうが転移する率が高く,生存率は有意に低い値となっていた.照射による合併症に関しては,皮膚反応や,睫毛消失などがあるが,最も重篤なものは照射による緑内障である.ほとんどが血管新生緑内障であるが,新生血管のはっきりしない症例も存在する.図8に照射後の緑内障の発生頻度を示す.5年の率では全体で36%,特にXLサイズの腫瘍は70%近くの症例で緑内障が発生する.腫瘍の位置と緑内障の発生率の関係は,腫瘍が視神経乳頭に接しているような症例では有意に緑内障の発生率が高くなっている.当初垂直ビームの1門のみで照射を行っている際に緑内障の発生の危険因子を検討したところ,これまでのところ眼球内に局所再発がみられた例が6例あった.そのうち2例は照射野内再発で4例は眼内の照射野外の部位である.再発の判明した時期は12?49カ月,平均29カ月となっていた.眼球摘出に至った症例は再発した6例に加えて血管新生緑内障で眼痛が強くやむなく摘出した3例を加えて計9例である.これらのことをKaplan-Meier生存曲線で検討すると,照射後5年における局所制御率は92.1%となる(図6).脈絡膜悪性黒色種で死亡する症例は他臓器への転移の症例で,転移例の80?90%は肝転移である.過去の報告では,眼球摘出をしても,陽子線などの治療を行っても,生存率に関しては,ほとんど差はないとされている.今回照射した症例の生存率に関しては図7のようになり,5年での生存率は他因死を含めても約80%で,転移もない症例の率は約70%となる.XLサイズの腫瘍ACBD図3典型例の眼底所見A:照射前,B:照射半年後,C:照射1年後,D:照射1年半後.(41)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111409ACBD図4典型例の眼底所見A:照射前.B:照射1年後.C:照射3年後.D:照射7年後.AB図5急速に腫瘍が縮小した例のMRIとメチオニンPETA:照射前.B:照射3カ月後.1410あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(42)実で単純にこの数値を鵜呑みにはできない.XLサイズのものでは緑内障の発生率に関しては1門でも2門でも差はみられず,いずれも高い値を示している.照射野に視神経乳頭が含まれることと,前眼部への照射線量が高い,腫瘍が大きいなどの要素が緑内障発生に関係あるというデータが出た9).視神経乳頭への照射に関しては腫瘍の位置により避けえないものであるし,腫瘍の大きさに関しても調整しがたいものであるが,前眼部への照射線量を減らすことに関しては,症例によっては水平ビームを組み合わせた2門で照射することにより可能である(図9).たとえば,Lサイズ以下の腫瘍に関しては1門のみで照射をした場合と,2門で照射した場合とで比較を行ってみると,2門のほうの観察期間がまだ短いため3年の率しか出てはいないが有意に2門のほうが緑内障の発生率は低くなっている(図10).ただし,2門での照射の適応となるものはその部位が,視神経の耳側のものあるいは上下に離れているもの,などのもともとの条件があるので,バイアスがかかっているのは事01224364860728496108120100806040200照射後期間(月)制御率(%)n=104照射野内制御率局所制御率眼球温存率97.0%92.1%92.0%図6照射による局所制御率数字は5年での率を表している.01224364860728496108120100806040200照射後期間(月)生存率(%)n=104Cause-specificOverallMetastasis-freerate81.5%79.3%70.8%図7照射後の生存率数字は5年での率を表している.01224364860728496108120100806040200照射後期間(月)緑内障発生率(%)p=0.000166.8%36.0%26.2%XL(n=29)全体(n=104)S~L(n=75)図8照射後の緑内障の腫瘍サイズ別発生率AB図9腫瘍が耳側にある際の1門照射(A)と2門照射(B)による前眼部への照射される線量の比較あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111411視力に関しては前述の緑内障や,網膜症,網膜?離などさまざまな要素が関係しているが,現時点で0.1以上の視力を維持できているのが37例であった.経過観察期間が短いこともあるが,1.0以上の症例も10例あって,それなりに視機能は保持できている.V考按炭素イオン線のデータを他の治療と比較すると,まず全身的な問題,つまり転移に関しては,眼球摘出と眼球温存療法でほとんど差はみられないとされており10),今回の炭素イオン線に関しても同様であると思われる.転移している腫瘍はすべてではないが,染色体異常が関与しているとされている11).また発見された段階ですでに転移している可能性が高いなどともされている.今回は手技の関係からも生検は行っていないので,腫瘍内の染色体異常との関連は不明である.腫瘍局所に対する効果に関しては,小線源治療と比較すると局所再発は少ない12).陽子線治療との比較では,腫瘍の大きさの違いなども関係するが,もともと90%以上と良好な制御率なのでほとんど差はみられない.今回筆者らの症例では腫瘍の大きな症例が他の報告と比較して多くみられたが,同様の大きな症例に対して陽子線治療を行っている結果と比較しても勝るとも劣らない結果である.おわりに以前は眼球摘出しか考えられなかったような,黒色腫に対しての新たな治療の開発により選択肢が広がった.ただし,予後の良い症例も悪い症例もあるが,全身的には摘出と比較して差はなく,眼球温存という整容的な面のみならず,ある程度機能の温存の可能性もある.今回の結果などから,Lサイズ以下の症例で視神経からある程度の距離があり,かつ前眼部への線量が少なくでき,毛様体とも距離があるような中間周辺部で,2門照射のやりやすい,耳側あるいは上方,下方にあるものに関しては非常に良い適応になると思われる.今のところは転移の予防などに対しての有効な方法は報告がない.現在は先進医療とのことで自己負担額が300万円以上となる.今後,近い将来に,転移に対しての有効な予防法や治療法の開発と,本治療が健康保険の対象となることを期待したい.文献1)SinghAD,TophamA:IncidenceofuvealmelanomaintheUnitedStates:1973-1997.Ophthalmology110:956-961,20032)WilkinsonDA,KolarM,FlemingPAetal:Dosimetriccomparisonof106Ruand125Iplaquesfortreatmentofshallow(<or=5mm)choroidalmelanomalesions.BrJRadiol81:784-789,20083)GragodasES,SeddonJM,EganKetal:Long-termresultsofprotonbeamirradiateduvealmelanomas.Ophthalmology94:349-353,19874)EggerE,SchalenbourgA,ZografosLetal:Maximizinglocaltumorcontrolandsurvivalafterprotonbeamradiotherapyofuvealmelanoma.IntJRadiatOncolBiolPhys51:138-147,20015)EggerE,ZografosL,SchalenbourgAetal:Eyeretentionafterprotonbeamradiotherapyforuvealmelanoma.IntJRadiatOncolBiolPhys55:867-880,20036)CharDH,CastroJR,QuiveyJMetal:Heliumionchargedparticletherapyforchoroidalmelanoma.Ophthalmology87:565-570,19807)TsujiH,IshikawaH,YanagiTetal:Carbon-ionradiotherapyforlocallyadvancedorunfavorablylocatedchoroidalmelanoma:aPhaseI/IIdose-escalationstudy.IntJRadiatOncolBiolPhys67:857-862,20078)山本信冶,溝江純悦,長谷川安都佐ほか:頭頸部悪性腫瘍に対する重粒子線治療の途中解析.放射線医学46:345-349,20039)HirasawaN,TsujiH,IshikawaHetal:Riskfactorsfor(43)100806040200緑内障発生率(%)01224364860728496108120照射後期間(月)p=0.00041門照射(n=41)40.6%0%(at3y)2門照射(n=34)図10Lサイズ以下の腫瘍の1門照射と2門照射の緑内障の発生率の違い数字は1門照射では5年で,2門照射では3年での発生率.1412あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011neovascularglaucomaaftercarbonionradiotherapyofchoroidalmelanomausingdose-volumehistogramanalysis.IntJRadiatOncolBiolPhys67:538-543,200710)DamatoB:Doesoculartreatmentofuvealmelanomainfluencesurvival?BrJCancer103:285-290,201011)SinghAD,TubbsR,BiscottuCetal:Chromosomal3and8statuswithinhepaticmetastasisofuvealmelanoma.ArchPatholLabMed133:1223-1227,200912)CharDH,PhillipsT,DaftariI:Protonteletherapyofuvealmelanoma.IntOphthalmolClin46:41-49,2006(44)

眼付属器リンパ増殖性疾患の病態

2011年10月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPYIMALTリンパ腫すべての悪性リンパ腫に占めるMALTリンパ腫の割合は7?8%とされるが,眼付属器リンパ増殖性疾患のなかでは最も頻度が高い.MALTリンパ腫は節外性のB細胞リンパ腫であり,比較的小型な胚中心細胞様細胞(centrocyte-likecell)と中型で明るい胞体を示す単球様細胞(monocytoidcell)によって構成されるリンパ濾胞辺縁帯に存在する細胞に由来する.Dutcherbodyとよばれる免疫グロブリン貯留のために起こる核内偽封入体がしばしばみられる.結膜MALTリンパ腫では,腫瘍細胞が結膜上皮に浸潤し,上皮の変性と構造の破壊を伴うリンパ上皮病変(lymphoepitheliallesion)とよばれる所見を呈する.眼付属器のMALTリンパ腫は,病理組織学的にリンパ腫細胞がびまん性に増殖している場合(図1a)と,胚中心を有する二次濾胞が散在し,その濾胞間に異型リンパ球が増殖している場合の2つのパターンに分けることができる.リンパ腫細胞のほとんどが抗CD20抗体陽性細胞,すなわちB細胞由来である(図1b)が,抗CD3抗体陽性細胞であるT細胞の浸潤もみられる(図1c).MALTリンパ腫に限らず眼付属器悪性リンパ腫の大半がB細胞由来であることから,増殖するB細胞が腫瘍性病変に特有の単クローン性を示すか判断するうえで,免疫グロブリン遺伝子再構成を検索することが重要である.サザンブロッティング(Southernblotting)法はじめに眼付属器は結膜,眼瞼,涙器および眼窩組織から構成され,リンパ増殖性疾患の発生母地となりうる.眼付属器に発生するおもなリンパ増殖性疾患としては,粘膜関連リンパ組織(mucosa-associatedlymphoidtissue:MALT)リンパ腫や反応性リンパ組織過形成,また近年注目を浴びている免疫グロブリン(Ig)G4関連リンパ増殖性疾患があげられ,まれにみられるものとしてはびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫,NK(naturalkiller)/T細胞リンパ腫,木村氏病などがあげられる.近年の分子生物学的技法の進歩により,これら疾患の分子基盤が明らかにされつつある.リンパ増殖性疾患の生物学的性状を形態学的観察のみで判断することは困難なことも多いため,フローサイトメトリーによる細胞表面抗原の検索や,遺伝子検査,染色体分析などを行い,多くの検査所見を踏まえた総合的判断が重要となってくる.これらを理解することは,同じ病型でも予後が著しく異なる症例の機序解明に役立つ.眼付属器リンパ増殖性疾患の病態を理解することは,必要な検査のみを最小限組み合わせて診断を行い,効果的な治療を実施するうえで重要である.本稿では,日常診療において役に立つような視点から,各々の眼付属器リンパ増殖性疾患の病態と診断の実際について概説したい.(29)1397*YoshihikoUsui:東京医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕臼井嘉彦:〒160-0023東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学眼科学教室特集●眼の腫瘍¦最近の考え方¦あたらしい眼科28(10):1397?1403,2011眼付属器リンパ増殖性疾患の病態PathophysiologyinLymphoproliferativeDiseaseofOcularAdnexa臼井嘉彦*1398あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(30)る.フローサイトメトリーにおいても,B細胞における免疫グロブリン軽鎖(k鎖あるいはl鎖)の偏りを解析することによりB細胞の単クローン性増殖を証明することができる.生検組織の免疫染色でもある程度判定が可能であるが,複数の細胞表面抗原を迅速に定量解析できるフローサイトメトリーがより有用と思われる(図3).リンパ腫細胞はB細胞のマーカーであるCD19やCD20の発現が高い.単クローン性にB細胞が増殖しているとはいえ,組織中には腫瘍細胞のほか,腫瘍の抗原性により反応性T細胞や濾胞樹状細胞など多種の炎症細胞が混在し,解析方法によっては結果が大きく影響を受けるため解釈に注意を要する.最近,腫瘍組織に浸潤する炎症細胞の発現プロファイルが予後指標として有用であると報告1,2)されており,腫瘍周囲に浸潤する炎症細胞の解析も今後重要になっていく可能性がある.微量の腫瘍成分と反応性のリンパ球浸潤を伴っているような症例においても,PCR法により免疫グロブリン遺伝子再構成を検出できるが偽陰性も多い.これは反応性リンパ球が混在して腫瘍細胞の割合が少なくなっているためと考えられる.一方,図4に示すように,フローサイトメトリーでは微量の腫瘍成分の検出が可能である.MALTリンパ腫に特徴的な染色体異常としてトリソミー3の変化とt(11;18)(q21;q21),t(14;18)(q32;q21)およびt(1;14)(p22;q32)転座が報告されているが,眼付属器MALTリンパ腫に関しては一定の見解が得られておらず今後の検討が必要である3).による検索はB細胞においてはIgH遺伝子のJ領域(JH)をプローブとして用いることが多く,比較的多くの検体量を必要とする(図2).遺伝子を増幅し検出するPCR(polymerasechainreaction)法はSouthernblotting法よりも精度は低いものの,少量の検体で調べることができるため結膜悪性リンパ腫の検索に有用であabc図1眼窩MALTリンパ腫a:HE染色,b:抗CD20抗体による免疫染色,c:抗CD3抗体による免疫染色.異型性の少ない小型?中型のリンパ腫細胞がびまん性に増殖している.免疫染色より浸潤するリンパ腫細胞のほとんどがB細胞(CD20陽性細胞)であることがわかる.また,B細胞より数は少ないものの,反応性によるT細胞(CD3陽性細胞)浸潤もみられる.図2サザンブロット法による免疫グロブリン遺伝子H鎖JHの再構成の検索摘出した検体からB細胞の腫瘍性増殖によるバンド(矢印)がみられる.(31)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111399まれではあるが,自己免疫性甲状腺中毒症やSjogren症候群があると報告されている5).Sjogren症候群ではリンパ球が導管内に浸潤し破壊した後,lymphoepitheliallesionを形成し,それがリンパ腫の発生母地になることが推測されている.前述したように,本疾患の多くの症例ではCD20陽性のB細胞が単クローン性に増殖しているため,抗ヒトCD20モノクローナル抗体(rituximab)の局所注射による有用性が相ついで報告されている6,7).MALTリンパ腫は慢性炎症を基盤として発症すると推定されており,難治性の結膜炎では鑑別診断として必ず念頭に置いておく必要がある.また,眼付属器MALTリンパ腫の原因の一つとして感染症が考えられており,ピロリ菌,クラミジア,C型肝炎ウイルスとの関連が報告されている4).しかしながら,これについては否定的な追試報告もあり,わが国における検討が必要と思われる.さらに,MALTリンパ腫は自己免疫性疾患を基盤に発症することも示唆されている.欧米においては眼付属器MALTリンパ腫を発生する背景として,図3MALTリンパ腫におけるフローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析この症例の腫瘍検体は細胞表面抗原解析の結果からCD19とCD20陽性細胞が80%以上を占め,l鎖に隔たりがあることがわかる.1400あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(32)構成を認め,そのため当初はMALTリンパ腫と診断した症例があったと報告している8).したがって,血清IgG4値やフローサイトメトリーを組み合わせて総合的にIgG4関連リンパ増殖性疾患の診断を行うことが重要である.フローサイトメトリーでは,多クローン性のCD19およびCD20陽性B細胞が多く検出されるが,免疫グロブリン軽鎖(k鎖あるいはl鎖)の偏りはみられない.眼付属器MALTリンパ腫と比較して,免疫染色の結果と同様にCD3やCD4陽性T細胞の割合が多いのも特徴的である(図6).IgG4関連リンパ増殖性疾患の腫瘍内ではヘルパーT細胞(Th)1サイトカインであるIFN(インターフェロン)-gとTh2サイトカイン〔IL(インターロイキン)-4,IL-5,IL-10,IL-13〕のmRNAの発現が高く,CD25陽性調節性T細胞が多く浸潤している.CD25陽性調節性T細胞はIL-10やTGF(transforminggrowthfactor)bを産生し,IL-10を介するB細胞のIgG4産生誘導の可能性や,線維化誘導のサイトカインであるTGFbによる線維化の機序が推測されている9).また,Th2サイトカインは好酸球浸潤やIgE産生に関与しており,IIIgG4関連リンパ増殖性疾患眼付属器に発生するIgG4関連リンパ増殖性疾患の病態は,膵臓,胆管,唾液腺,肺,乳腺および後腹膜などにも発生し,IgG4関連の一連の病態として近年注目されている.結膜に原発するIgG4関連リンパ増殖性疾患の報告はなく,発生しない理由は不明である.眼付属器では涙腺が両側対称性に腫大し,病理組織学的所見としては濾胞形成を伴うリンパ球と形質細胞の浸潤が多くみられ,間質には線維性硬化像が認められる(図5a).好酸球の浸潤も多いことから,木村氏病や好酸球性血管リンパ球増殖症(angiolymphoidhyperplasiawitheosinophilia)との鑑別も重要である.免疫染色ではIgG4陽性形質細胞が多数浸潤していることも特徴的である(図5b).また,血清IgG4値の上昇に加え血清IgEやIgG2値の上昇がみられる.抗CD20抗体陽性細胞(B細胞)が圧倒的に多いが,抗CD3抗体陽性細胞(T細胞)も比較的多くみられる(図5c,d).IgG4関連リンパ増殖性疾患では通常免疫グロブリン遺伝子再構成はみられないが,Satoらは17例中2例で免疫グロブリン遺伝子の再図4腫瘍細胞が検体中にわずかしか存在していないリンパ腫悪性リンパ腫の微小病変を検出するためにはgatingが必要であり,gatingをかけなければ腫瘍細胞を見落としてしまうことがある.本症例では,少数ではあるがB細胞のモノクローナリティがみられる〔gate(1)〕.(33)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111401多く,悪性リンパ腫と適切に鑑別することが臨床的に大切である.鑑別疾患である反応性リンパ組織過形成に副腎皮質ステロイド薬の効果がある他,MALTリンパ腫であっても前述のように炎症細胞の浸潤があるためステロイド治療により一時的に軽快することがあり,診断があいまいな状態でステロイド治療をはじめることは危険な可能性がある.III反応性リンパ組織過形成反応性リンパ組織過形成は,多クローン性のB細胞とT細胞を主体とした増殖により起こる.CheukらはIgG4関連リンパ増殖性疾患の組織像として反応性リンこれは病変部に多数の好酸球浸潤がみられ血清IgE値が上昇するというIgG4関連リンパ増殖性疾患の病態発生を支持するものである.しかし,IgG4関連リンパ増殖性疾患における血清IgG4やIgE値の上昇やIgG4陽性細胞浸潤は病態の結果である可能性もあり,その病態には謎が多く今後のさらなる研究が望まれる.IgG4関連リンパ増殖性疾患を基盤に悪性リンパ腫が発生したという報告8,10)やIgG4陽性細胞自体がリンパ腫となりうる可能性もある8).さらに他臓器病変の併発を念頭に置いた全身管理が必要なこともあるため注意深い経過観察が必要である.IgG4関連リンパ増殖性疾患は副腎皮質ステロイド薬により劇的な改善をみることがabcd図5眼窩IgG4リンパ増殖性疾患a:HE染色.濾胞形成と線維化を伴った密なリンパ球・形質細胞の浸潤がみられる.ところどころ好酸球の浸潤もみられる.b:IgG4免疫染色.IgG4陽性形質細胞の浸潤がびまん性かつ多数みられる.c:抗CD20抗体による免疫染色.CD20陽性細胞(B細胞)もたくさんみられる.d:抗CD3抗体による免疫染色.CD3陽性細胞(T細胞)の浸潤もみられる.1402あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(34)ン遺伝子再構成の検索なしに診断することは不可能である.わが国において反応性リンパ組織過形成症例中の約半数で自己免疫疾患(Sjogren症候群,Basedow病,全身性エリテマトーデス,水疱性類天疱瘡)を併発していたという報告13)があり,反応性リンパ組織過形成の病態に自己免疫的機序が推察され興味深い.IVびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫大型のリンパ腫細胞(その核が組織球の核より大きい,あるいは小型リンパ球の核の2倍以上)がびまん性に増殖し,胚中心あるいは胚中心後細胞の腫瘍である.パ濾胞過形成を示すものがあると報告11)しており,このような症例をHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色による病理組織学的検索で反応性リンパ過形成症例と鑑別することは困難である.IgG4関連リンパ増殖性疾患との鑑別は,免疫グロブリン遺伝子再構成やフローサイトメトリーによる検索では困難で,血清IgG4値や病理組織検索(IgG4陽性形質細胞浸潤の有無)により鑑別を行う.MALTリンパ腫の発生は反応性リンパ過形成を基盤とすることもあるため12),病理組織学的およびフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の検索や免疫グロブリ図6眼窩IgG4リンパ増殖性疾患におけるフローサイトメトリーによる細胞表面抗原解析モノクローナルなB細胞集団は検出できず,k鎖およびl鎖陽性細胞の両者が混在している.あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111403びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫は成人の悪性リンパ腫では最も頻度の高い非Hodgkinリンパ腫であるが,眼付属器リンパ増殖性疾患ではまれである.遺伝子発現プロファイリングにより非常にheterogenousで不均一な疾患群であることが明らかにされており,そのため,B細胞マーカーであるCD19,CD20,CD22およびCD79aの発現がみられないことがあることに注意を要する.また,化学療法にrituximabを併用した治療経過中,CD20が腫瘍細胞表面に発現されなくなることもあるため,rituximab投与前にCD20が発現していることを確認する必要がある.おわりに代表的な眼付属器リンパ増殖性疾患の病態と診断に発症機序を踏まえてこれまでの報告を中心に概説した.眼付属器リンパ増殖性疾患における病態を把握することは,診断や治療を行ううえで非常に重要である.リンパ増殖性疾患の分子基盤が明らかになれば原因療法が可能になると考えられるので,検体の免疫学的形質や免疫グロブリン遺伝子再構成を検索することの臨床的な意義は非常に大きいと思われる.文献1)LenzG,WrightG,DaveSSetal:Stromalgenesignaturesinlarge-B-celllymphomas.NEnglJMed359:2313-2323,20082)DaveSS,WrightG,TanBetal:Predictionofsurvivalinfollicularlymphomabasedonmolecularfeaturesoftumor-infiltratingimmunecells.NEnglJMed351:2159-2169,20043)FrancoR,CamachoFI,CaleoAetal:Nuclearbcl10expressioncharacterizesagroupofocularadnexaMALTlymphomaswithshorterfailure-freesurvival.ModPathol19:1055-1067,20064)VermaV,ShenD,SievingPCetal:Theroleofinfectiousagentsintheetiologyofocularadnexalneoplasia.SurvOphthalmol53:312-331,20085)DecaudinD,deCremouxP,Vicent-SalomonAetal:Ocularadnexallymphoma:areviewofclinicopathologicfeaturesandtreatmentoptions.Blood108:1451-1460,20066)FerreriAJ,GoviS,ColucciAetal:Intralesionalrituximab:anewtherapeuticapproachforpatientswithconjunctivallymphomas.Ophthalmology118:24-28,20117)LaurentiL,DePaduaL,BattendieriRetal:IntralesionaladministrationofrituximabfortreatmentofCD20positiveorbitallymphoma:Safetyandefficacyevaluation.LeukRes,inpress8)SatoY,OhshimaK,IchimuraKetal:OcularadnexalIgG4-relateddiseasehasuniformclinicopathology.PatholInt58:465-470,20089)ZenY,FujiiT,HaradaKetal:Th2andregulatoryimmunereactionsareincreasedinimmunoglobinG4-relatedsclerosingpancreatitisandcholangitis.Hepatology45:1538-1546,200710)CheukW,YuenHK,ChanACetal:OcularadnexallymphomaassociatedwithIgG4+chronicsclerosingdacryoadenitis:apreviouslyunderscribedcomplicationofIgG4-relatedsclerosingdisease.AmJSurgPathol32:1159-1167,200811)CheukW,YuenHK,ChuSYetal:LymphadenopathyofIgG4-relatedsclerosingdisease.AmJSurgPathol32:671-681,200812)JakobiecFA:Ocularadnexallymphoidtumors:progressinneedofclarification.AmJOphthalmol145:718-720,200713)KubotaT,MoritaniS:HighincidenceofautoimmunediseaseinJapanesepatientswithocularadnexalreactivelymphoidhyperplasia.AmJOphthalmol144:148-149,2007(35)

視神経膠腫に対する化学療法の現状

2011年10月31日 月曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPYはない.3.神経線維腫症1型(neurofibromatosis1:NF1)との関連視神経膠腫の25?60%はNF1患者に発症する.一方NF1患者にスクリーニングとしてMRI(磁気共鳴画像)検査を施行すると15?20%で視神経膠腫を認める.このうち症状を発症するのは1?5%のみである.複数の腫瘍が認められる患者はNF1である可能性が高く,視交叉に腫瘍を認める場合にはNF1患者ではない可能性が高い.4.自然経過視神経膠腫の自然経過はNF1合併の有無,腫瘍の部位,発症時年齢により決まる.NF1患者の視神経膠腫は,NF1でない患者の腫瘍に比較し予後が良い.NF1合併視神経膠腫のうち3分の2は,進行しないまま経過する.視神経膠腫は,図1のように眼球後部から視放線までの視路のどの領域にも発生する.部位では,視交叉の腫瘍は,視床下部まで進展し,モンロー(Monro)孔を閉塞し閉塞性水頭症を起こすなど,侵襲的な経過をたどる傾向がある.年齢では,5歳以下に発症するものはより侵襲的で予後が悪い傾向が強い.II病理学多くがLGGであり,ほとんどが毛様性星細胞腫(pilo-はじめに視神経膠腫(opticglioma)は,小児期低年齢に頻度の高い視神経路(opticpathway)に発症する腫瘍である.初発症状として,眼振,斜視,視力低下,視野異常,眼球突出などの眼科学的症状を初発症状として発症する場合も多い.これらの症状が出現した後,眼科学的診断によって早期に診断に至る場合もある.病理学的には低悪性度の神経膠腫(low-gradeglioma:LGG)であり,全摘出が可能であれば生命予後は良好である.しかし,摘出による障害が重大となる場合が多く,qualityoflife(QOL)を考慮して他の治療が必要となる.QOL重視の観点から,視機能や他の機能の温存のため放射線治療,化学療法が用いられ,近年その成果が集積され,本疾患の診断方法,治療適応,治療方法が大きく変化している.本論は,子供たちの視機能の守り手である読者諸氏に,これらの変化と治療の進歩を伝えることを目的とする.I疫学1.頻度視神経膠腫は,小児脳脊髄腫瘍の4?6%,成人腫瘍の2%を占める.小児期の全神経膠腫の20?30%を占める1).2.発症年齢と性差年齢では,10歳までの発症が最も多い.発症に性差(21)1389*TakaakiYanagisawa:埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター脳脊髄腫瘍科小児脳脊髄腫瘍部門〔別刷請求先〕柳澤隆昭:〒350-1298埼玉県日高市山根1397-1埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター脳脊髄腫瘍科小児脳脊髄腫瘍部門特集●眼の腫瘍¦最近の考え方¦あたらしい眼科28(10):1389?1396,2011視神経膠腫に対する化学療法の現状OpticGlioma:SurvivalandFunctionalOutcomes柳澤隆昭*1390あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(22)ことがあり,そのリスクは他のLGGの20倍くらいとされる.III症状と徴候初発症状と徴候は,腫瘍の局在と,発症時の年齢により影響を受ける.1.片側視神経に限局している腫瘍眼球突出と片側の視機能低下で発症するのが典型的である.2.視交叉にある腫瘍小学生以上の年齢の患者では視機能低下の訴えで診断に至るが,乳幼児や幼若な患者では視機能の低下を同定cyticastrocytoma:PA)である.原線維性星細胞腫(fibrillaryastrocytoma)など他のLGGも認めるが頻度が少なく,組織型による予後の違いは明らかにされていない.近年,毛様類粘液性星細胞腫(pilomyxoidastrocytoma)といった亜群が特定され,乳幼児に多く重篤な症状で発症することが知られているが,一般的に言われてきたように,予後がPAに比較して悪いのかどうかは明らかにはなっていない.組織学的にもNF1患者とNF1でない患者の腫瘍には差がある.NF1のない患者では,腫瘍は視神経に限局しており,髄膜には及ばないが,NF1患者では,腫瘍細胞がクモ膜下腔に侵入し,反応性に線維芽細胞が増殖し髄膜細胞の過形成を起こしていることが多い.視交叉から視床下部にある腫瘍は,髄液播種を起こすADBECF図1視神経膠腫のMRI所見A:右視神経に限局した腫瘍(T1強調ガドリニウム造影水平断像).B:左視神経に限局した腫瘍(T1強調ガドリニウム造影矢状断像).C:両側視神経に限局した腫瘍(T2強調水平断像).D:視交叉から視床下部に及ぶ腫瘍(T1強調ガドリニウム造影水平断像).E:視交叉から視床下部に及ぶ腫瘍(T1強調ガドリニウム造影矢状断像).F:視放線の腫瘍性病変(T1FLAIR水平断像).(23)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111391群(diencephalicsyndrome)とよばれる.腫瘍が巨大になると,下向性知覚運動路や脳神経3?6の障害により,局所神経障害を示す.IV診断CT(コンピュータ断層撮影),MRIにより腫瘍の存在が描出されれば診断に至る.CTは,腫瘍の存在は特定できる(図2-A,B)が,周囲組織との関係,腫瘍の広がりを判定するのは困難であり,造影MRIが望ましい(図2-C?F).本疾患を疑う場合,これを放射線科医師に伝え,視神経との関連を描出できる撮像を行うことが望ましい(図2-E,F).本疾患では,しばしば?胞性病変を合併する(図3-A?E).?胞の拡大が症状を悪化させる場合もあり注意が必要である.本疾患は,病理学的にするのが困難で,深刻な低下をきたすまで気付かれない場合が多い.一側の眼球を覆うと,内斜視,眼振を認めたり,固視が不安定となり診断可能な場合がある.3.視交叉から視床下部に及ぶ腫瘍腫瘍が増大しモンロー孔を塞ぎ閉塞性水頭症をきたし,腫瘍のmasseffectが加わり頭蓋内圧亢進をきたし頭痛・嘔吐などの症状を認める.年長の患者では,内分泌障害をきたし,成長障害や思春期早発,体重増加,過食症が認められる.乳幼児では,疾患に特徴的な所見を示さないことが多く,他疾患にも認める成長障害や巨頭症などの症状を示すことが多い.乳幼児患者で,視床下部腫瘍のため,著しいるい痩を認め,皮下脂肪がほとんど認められない状態になっていることがあり,間脳症候ADBECF図2視神経膠腫:同一患者のCT,MRI所見A:CT単純像.視交叉に腫瘍性病変を認める.B:CT単純像.水頭症を併発している.C:MRIT1強調ガドリニウム造影水平断像.視交叉に腫瘍を認めるが,視神経との関連は明白ではない.D:MRIT1強調ガドリニウム造影矢状断像.視神経との関連は明白ではない.E,F:MRIT1強調ガドリニウム造影像.視神経膠腫の可能性を考え,このような断面で画像を描出することにより,視神経と腫瘍の関係が明白になり診断を確定することができる.1392あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(24)しば行われ,視路の明らかな病変が認められれば,生検の必要なく診断が可能である.症状のない時期の腫瘍の治療を,すでに症状が出現している患者の治療から得られた情報をもとに考えてよいかどうかは問題である.NF1合併患者の視神経膠腫は,NF1を合併しない患者の腫瘍に比較しより緩慢な経過をたどることを示している報告が多い.NF1患者のスクリーニングMRIで症状がないか軽微な視神経膠腫を検出した場合,ただちに治療をする必要はない.後に腫瘍が増大し,治療が必要な症状を示すものはどの報告でも10?20%にすぎないからである.MRIにおいて,腫瘍の造影性が増強する場合,腫瘍活性を判断するよい指標と考えられ,実際の腫瘍の増大や,臨床症状の出現に先立って認められることが多い.腫瘍のその後の経過を個々の例で予知することは困難良性ながら,髄液播種する場合がある(図3-F?H).播種を起こしても症状がない場合もある.診断時には,頭部MRIの他に,脊髄造影MRI検査を施行し,脊髄播種の有無を確認しておくことが必要である.V治療の適応視神経膠腫では,治療の適応の判断が重要である.CT・MRIの出現する前の時代には,診断時にはすでに視機能低下,視床下部機能障害,頭蓋内圧亢進症状などの症状が出現しており,診断時から治療が明らかに必要であった.画像診断技術が発達し,多くの腫瘍が無症状か症状が軽微な時期に検出されるようになり,治療適応が問題とされるようになった.これらの腫瘍の自然歴は必ずしも明らかではない.NF1患者ではスクリーニングとしてMRI検査がしばABDEGHCF図3視神経膠腫の合併病変のMRI像1)腫瘍に?胞性病変を認める例のMRI像:T1強調ガドリニウム造影水平断像(A,B),T2強調画像水平断像(C,D),T1強調ガドリニウム造影像冠状断像(E).2)多発性頭蓋内播種:T1強調ガドリニウム造影矢状断(F).3)延髄近傍への多発性播種:T1強調ガドリニウム造影矢状断像(G).4)脊髄多発播種:T1強調ガドリニウム造影矢状断像(H).(25)あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111393み生検が検討される傾向にある.腫瘍生検は,内視鏡や定位生検など侵襲の少ない方法が用いられ,これらが困難な場合のみ開頭手術が行われる傾向にある.初期治療としての化学療法,放射線治療の有効性が明らかになり,腫瘍の減量手術(debulkingsurgery)は,初期治療として用いられることは少なくなり,化学療法や放射線治療に不応性で,腫瘍が増大し症状が悪化した場合にのみ行われる傾向にある.腫瘍の減量が可能なら,術後療法を加え,長期にわたる腫瘍の制御が可能となることもある.VII放射線治療放射線治療は,長いこと切除困難な視神経膠腫の治療の主流であった.放射線治療は,腫瘍進行の阻止に効果的であり,診断前の視機能の障害の期間が長くない場合,視機能改善のうえでも効果的である.視神経膠腫を含めLGGの最近の報告の結果を表1に示す.放射線治療は,治療後に重篤な高次機能障害や内分泌機能障害を起こすことが多い.さらに二次癌発症や,モヤモヤ病などの血管障害のリスクが高くなる.特にNF1患者ではそのリスクがいっそう高い.最近の北米のSEER(Surveillance,Epidemiology,andEndResults)研究では,放射線治療を受けた患者の血管障害の相対危険度から,治療を受けたほぼ全患者に血管障害を発症する可能性があることが示唆されている.Shariffによれば,NF1合併患者では放射線治療をうけた18例中9例(50%)が二次癌を発症しているのに対し,放射線治療を受けていない患者の二次癌発症は40例中8例(20%)と低かった2).NF1患者の視神経膠腫では放射線治療は禁忌と考えてよい.このようなリスクを軽減するため,最新の放射線治療であり,腫瘍による視機能低下は回復不可能である場合も多いために,自然経過に確信をもつことができるまでは,定期的に神経眼科学的診察とMRIによる経過観察を行ったほうがよい.こうした方針は,すでに重篤な視機能障害を発症している場合にはあてはまらない.その後急速にさらに視機能が低下する場合が多く,臨床的に診断可能なら,生検の時間も惜しんで緊急に治療を開始したほうがよい.最初の画像診断において,巨大な造影性病変が描出された乳幼児の場合にも,腫瘍は急速に増大し,症状がさらに悪化することが多いため,早急に治療を開始したほうがよい.VI手術視神経膠腫は,発症部位から,重篤な障害なく全摘出することは困難である.腫瘍が増大しないまま静止している場合もあり,一方,放射線治療や化学療法の効果が明らかにされ,手術の適応は大きく変化してきた.歴史的には,片側の視神経に限局する腫瘍は,眼球突出を改善させ,視交叉や対側の神経に腫瘍が進展するのを防ぐため切除されていた.こうした病変を認めるのは多くがNF1患者であり,最新のMRI検査では,対側にも異常を認める場合が多く,切除された場合も,後に頭蓋内病変が出現することがあることが報告され,上記の予防的効果は疑問視されている.今日では,腫瘍の限局が明らかで,眼球突出を認め視機能がすでに失われている場合に適応を限る施設が多い.視交叉に病変が及ぶ腫瘍の場合,組織診断と腫瘍の減量が問題となる.典型的な経過と画像所見を示す場合には,病理診断なしで臨床診断によって治療適応が判断されることが多い.他疾患との鑑別が非常に困難な場合の表1視神経膠腫の放射線治療論文筆頭者論文発行年照射線量(Gy)治療対象患者数無再発生存率(event-orprogression-freesurvival)(%)2年3年5年8年10年Merchant3)2009547885Marcus4)200552.2508265Saran5)200250~551487Grabenbauer6)200045~602569Erkal7)19975030821394あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011(26)1.化学療法の効果(図4)ほとんどの腫瘍で進行や増大が阻止され腫瘍は静止するが,縮小するものは多くはない.いずれの治療法でも,画像上腫瘍がほとんど認められなくなる完全奏効率は数%以下で,ほとんどが治療終了時に腫瘍が残存する.腫瘍縮小が認められる場合も治療開始後に時間が経ってからのことが多い.治療終了後も腫瘍の縮小が続くことがある.2.再発とその治療いずれの化学療法を用いた場合も,治療後半数近くで腫瘍が再増大し,治療が必要となる.こうした再発時にも,治療毒性の問題がなければ初期治療と同じ化学療法,あるいは異なった化学療法で,再び腫瘍の進行を阻止できる場合が多い.治療後の腫瘍の経過には幅があり,一時的に再増大した後に再び縮小する場合もある.治療の再開の判断には慎重になる必要がある.3.化学療法による視機能の変化化学療法単独による前後の視機能の変化については,最近ようやく報告がみられるようになっている.いずれの報告でも約3分の2で症状が改善するか不変,残り3分の1が悪化している.視機能予後を左右する因子はまだ確定されていない.診断までの障害の持続期間が影響を与えるものと考えられるが,年齢や,視放線の病変の有無を予後因子として同定している報告もある.改善の程度は,必ずしも腫瘍の縮小の程度とは相関しない.縮小をほとんど認めないものでも視機能の改善を認める場技術を用いて照射野を正確に腫瘍に限定し,周囲の正常組織に照射が及ばないようにする定位放射線照射の試みが行われている.最新の前向き研究の報告では,これらの方法により治療効果を保ったまま後遺症を軽減できることが示されているが,乳幼児をはじめ幼若な患者では,高次機能障害を回避できず,二次癌や血管障害の問題も回避することはできず,問題は解決したといえない3).将来的には,化学療法不応性で腫瘍減量術が困難な場合など適応を限って使用される可能性が高いと思われる.VIII化学療法放射線治療による後遺症の問題から化学療法の導入は始まった.初期には,高次機能障害が特に問題となる乳幼児で,放射線治療を遅らせる「時間稼ぎ」として化学療法は行われ,効果が明らかになるにつれ対象年齢を年長に広げる形で,広く初期治療として用いられるようになった.世界的にはさまざまな化学療法が行われ,その結果が報告されている.おもな報告を表2に示す.最も世界的に広く用いられるのは,カルボプラチンとビンクリスチン併用の化学療法である.同様に広く用いられる治療としてチオグアニン,プロカルバジン,CCNU(ロムスチン),ビンクリスチンを併用したTPCV療法がある.これら2つの治療の優劣を検証するランダム化臨床試験COGA9952が北米で行われ,最終報告を待つ段階にある.本疾患での化学療法にはつぎの特徴があり,注意が必要である.表2視神経膠腫の化学療法論文筆頭者論文発行年治療方法(レジメン)治療対象患者数無再発生存率(event-orprogression-freesurvival)(%)2年3年5年8年10年Ater8)2008CBDCA/VCR13735TPCV13748Gnekow9)2004CBDCA/VCR19861Massimino10)2002CDDP/VP163178Prados11)1997TPCV4250Packer12)1997CBDCA/VCR7868CBDCA:カルボプラチン,VCR:ビンクリスチン,TPCV:チオグアニン,プロカルバジン,CCNU(ロムスチン),ビンクリスチン併用,CDDP:シスプラチン,VP16:エトポシド.あたらしい眼科Vol.28,No.10,20111395合がある.4.治療毒性への配慮の必要性本疾患は生命予後の良い疾患であり,化学療法そのものの毒性への配慮が必要である.二次癌誘発(エトポシド,テモゾロミドなど),聴神経毒性や腎毒性(シスプラチン)などの可能性に留意し,これらの薬剤はできるだけ用いないか,secondline以降の化学療法で用いるべきであると考えられる.IX予後とフォローアップの方針本疾患は病理学的に良性の腫瘍であるが,腫瘍の切除が困難なことから,他の切除可能なLGGに比較して予後は悪い.視神経に限局する腫瘍が生命を脅かすことはほとんどないが,視交叉から視床下部に及ぶ腫瘍では腫瘍の進展のために,大きな障害を残すこともあり,生命が脅かされることもまれではない.治療終了後の腫瘍の経過は,個々に多様性があり,終了時の状態からは予想できない場合が多い.他の腫瘍のように診断後5年を超え10年,20年と時間が経ったときに全生存率がどうなっているのかを評価する必要がある.機能予後に関しても5年以上の長期予後を把握する必要がある.おわりにこれまで述べてきたように,視神経膠腫は,病理学的には低悪性度の神経膠腫であり,摘出可能であれば手術のみで生命予後は良好であるが,手術による術後合併症は無視できない場合が多く,機能予後を考慮した場合には他の治療法が初期治療として選択される.放射線治療は,腫瘍制御と症状の改善の双方におい(27)ABDEGHCF図4視神経膠腫患者の化学療法の効果(上段:治療前,下段:治療後)患者1:治療前(A,B)および化学療法終了後(E,F)のMRIT1強調ガドリニウム造影像.偶発的に発見された例で,無治療経過観察中,視機能の低下を認めてただちに治療を開始した.治療後のMRI検査では,造影剤のとり込みは著しく低下しているが,腫瘍は残存している.左眼の視力は治療前0.1から治療後1.2まで回復した.患者2:治療前(C,D)および化学療法終了後(G,H)のMRIT1強調ガドリニウム造影像.水頭症を併発して診断に至った例で,右眼は診断時光覚弁,治療によって腫瘍の著しい縮小を認めているが,治療中,治療後も右眼の視機能は回復しなかった.1396あたらしい眼科Vol.28,No.10,2011て,多くの化学療法の効果にまさるが,治療によって起こされる血管障害,高次機能障害,内分泌障害,二次癌の発症は容認しがたい.こうした障害を軽減するために,最新の治療技術を用いた放射線治療の有効性と後遺症が検証されているが,後遺症を完全に回避することは困難で,年齢などその適応が今後検討されると思われる.現行の化学療法は,こうした放射線治療で認められる後遺症がなく腫瘍の制御を達成できることが多いが,その効果は一時的であり,再発する場合も多い.より効果的で晩期障害の可能性の少ない化学療法としてビンブラスチン,ビノレルビンの導入が検討されている.このような放射線治療と化学療法の限界から,現在分子標的薬の導入も検討されている.レナリドミドやベバシズマブのパイロット試験が行われ,有効性が示唆される結果がでている.最近になって毛様性星細胞腫ではしばしばBRAF(V-rafmurineviraloncogenehomologB1)遺伝子の異常が認められることが明らかにされ,治療標的として将来有望であると考えられている.放射線治療や化学療法の問題を克服した新しい治療が将来導入される望みがある.どのような治療も,通常の腫瘍のように5年ではなく,10年,20年あるいはそれ以上の長期間での生命予後と機能予後と後遺症の有無が追跡され,そこから治療法の有効性が評価される必要がある.文献1)PollackIF:Braintumorsinchildren.NEnglJMed331:1500-1507,19942)SharifS,FernerR,BirchJMetal:Secondprimarytumorsinneurofibromatosis-1patientstreatedforopticglioma:substantialrisksafterradiotherapy.JClinOncol24:2570-2575,20063)MerchantTE,KunLE,WuSetal:PhaseIItrialofconformalradiationtherapyforpediatriclow-gradeglioma.JClinOncol27:3598-3604,20094)MarcusKJ,GoumnerovaL,BillettALetal:Stereotacticradiotherapyforlocalizedlow-gradegliomasinchildren:Finalresultsofaprospectivetrial.IntJRadiatOncolBiolPhys61:374-379,20055)SaranFH,BaumertBG,KhooVSetal:Stereotacticallyguidedconformalradiotherapyforprogressivelow-gradegliomasofchildhood.IntJRadiatOncolBiolPhys53:43-51,20026)GrabenbauerGG,SchuchardtU,BuchfelderMetal:Radiationtherapyofoptico-hypothalamicgliomas(OHG):Radiographicresponse,visionandlatetoxicity.RadiotherOncol54:239-245,20007)ErkalHS,SerinM,CakmakA:Managementofopticpathwayandchiasmatic-hypothalamicgliomasinchildrenwithradiationtherapy.RadiotherOncol45:11-15,19978)AterJ,HolmesE,ZhouTetal:ResultsofCOGprotocolA9952:Arandomizedphase3studyoftwochemotherapyregimensforincompletelyresectedlow-gradegliomainyoungchildren.NeuroOncol10:451,2008,abstrLGG189)GnekowAK,KortmannRD,PietschTetal:Lowgradechiasmatic-hypothalamicglioma-carboplatinandvincristinchemotherapyeffectivelydefersradiotherapywithinacomprehensivetreatmentstrategy:Reportfromthemulticentertreatmentstudyforchildrenandadolescentswithalowgradeglioma,HIT-LGG1996,oftheSocietyofPediatricOncologyandHematology(GPOH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