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写真:Leukoplakiaを伴う結膜扁平上皮癌

2019年1月31日 木曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦416.Leukoplakiaを伴う結膜扁平上皮癌北澤耕司京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①Cleukoplakia②流入血管図1角膜輪部に発生した結膜腫瘍異常角化が強く,whiteplaque(leukoplakia)の沈着を伴っている.図3扁平上皮癌打ち上げ花火様の血管流入を認める.図4腫瘍切除後2Cmmのセーフティマージンをとって切除した.(59)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C590910-1810/19/\100/頁/JCOPY結膜上皮性腫瘍は,組織の深部に達していない上皮内癌(cervicalintraepithelialneoplasia:CIN)と,深部にまで及び基底膜を超えて浸潤している扁平上皮癌(squamouscellcarcinoma:SCC)に分けられる1).結膜異形成(dysplasia)は,結膜上皮細胞が局部的に異常増殖し,細胞の形態や配列が乱れ,極性が不明瞭になるなどの異型像を示すもので,CINに含まれる.CINはSCCの前駆病変で,不透明で表面はツルツルした無茎性の隆起性病変である.一方,SCCはカリフラワー状で表面は凹凸不整の白色の隆起性病変であり,腫瘍部分には打ち上げ花火様といわれる特徴的な血管や腫瘍に流入する不規則な血管がみられる.また,フルオレセイン染色で透過性亢進所見を認めるため,悪性度の判断に有用である.角膜輪部,眼瞼結膜,涙丘など,眼表面いずれの部位からも発生する.角膜輪部に発生した場合は,病変が角膜におよび視力低下を引き起こすこともある.また,涙丘に発生した場合は,涙道から眼表面外に転移する可能性があり注意が必要である.SCCの発生要因にはヒトパピローマウイルス(humanCpapillomavirus:HPV)16型とC18型の関与が指摘されている.また,ヒト免疫不全ウイルス(humanCimmunode.ciencyvirus:HIV)感染や肝移植既往があるとC12倍からC20倍の発症リスクになることが報告されている2).本症例(図1,2)は,41歳,男性で,1年前から結膜腫瘍を認めており,腫瘍が増大してきたため当院に紹介された患者である.典型的な打ち上げ花火様の血管は認めてないが(図3),本症例のように異常角化が強い場合はCwhiteplaque(leukoplakia)の沈着を伴うことがあり,特徴的な所見として覚えておく必要がある.治療は完全切除が第一選択で,本症例ではリサミングリーンを用いて腫瘍の範囲を確認し,2Cmmのセーフティマージンをとって腫瘍切除後(図4),術中にマイトマイシンCCを塗布した.後療法として,1%5-フルオロウラシル(FU)点眼やマイトマイシン点眼,インターフェロンCa-2b点眼治療なの有効性が報告されている3,4).本症例は病理検査の結果,異型細胞は基底膜を超えておらず,CINの診断となった.しかし,若年であることから,倫理審査委員会の承認のもと患者の同意を得て,後療法としてC1%C5-FU点眼治療を行い,現在のところ再発なく経過している.文献1)小幡博人,青木由紀,久保田俊介ほか:眼瞼・結膜の良性腫瘍と悪性腫瘍の発生頻度.日眼会誌109:573-579,C20052)DiCGirolamoN:AssociationCofChumanCpapillomaCvirusCwithpterygiaandocular-surfacesquamousneoplasia.Eye(Lond)C26:202-211,C20123)ParrozzaniCR,CFrizzieroCL,CTrainitiCSCetal:Topical1%C5-.uoruracilCasCaCsoleCtreatmentCofCcorneoconjunctivalCocularsurfacesquamousneoplasia:long-termstudy.BrJOphthalmolC101:1094-1099,C20174)JoagCMG,CSiseCA,CMurilloCJCCetal:TopicalC5-.uorouracil1%CasCprimaryCtreatmentCforCocularCsurfaceCsquamousCneoplasia.Ophthalmology123:1442-1448,C2016

眼内悪性リンパ腫・仮面症候群関連

2019年1月31日 木曜日

眼内悪性リンパ腫・仮面症候群関連MasqueradeSyndrome(IntraocularLymphoma)武田篤信*はじめに眼内悪性リンパ腫は,症状と所見などの病像がぶどう膜炎と類似する,いわゆる「仮面症候群」とよばれる代表疾患の一つである.原因不明のぶどう膜炎として診断され,長期間にわたるステロイド全身投与に反応しない場合には眼内悪性リンパ腫を疑う必要がある.眼原発の眼内悪性リンパ腫の診断はむずかしく,症状出現から診断がつくまでの期間が中枢神経系原発あるいは転移性の眼内悪性リンパ腫よりも長いことが報告されている.しかし,近年では,診断技術の進歩や情報の共有により眼内悪性リンパ腫の早期診断も可能になってきている.眼内悪性リンパ腫に対する治療は,眼病変については局所療法でコントロール良好であるが,問題は眼内悪性リンパ腫の約60~90%の症例で数年以内に発症する,生命予後に直結する中枢神経系原発悪性リンパ腫(centralnervoussystemlymphoma.以下,CNSリンパ腫)に対して予防効果がないことである.CNSリンパ腫を伴わない場合でもCNSリンパ腫発症を遅らせ,無増悪生存期間(progressionfreesurvival:PFS)および全生存率(overallsurvival:OS)の向上を図るため,眼局所療法に加え,年齢あるいは全身状態が許せば,CNSリンパ腫の発症予防目的で全身化学療法あるいは全身化学療法後に放射線療法を併用する施設もある.眼内悪性リンパ腫は一般的には眼原発のものと中枢神経系(centralnervoussystem:CNS)からの浸潤が知られており,CNSリンパ腫の一亜型と考えられている.網膜硝子体悪性リンパ腫(vitreoretinallymphoma:VRL)という名称もある.中枢神経系以外の臓器原発,いわゆる転移性のVRLは少なく,約10%と報告されている1).転移性のものは網膜硝子体よりもむしろ脈絡膜に発症することが多いともいわれている.本稿ではVRLを眼内悪性リンパ腫として取り上げる.I疫学眼内悪性リンパ腫の頻度は眼内腫瘍の1%未満とまれな疾患である.しかし,米国では最近15年間で約3倍に増えており2),日本でも大学病院におけるぶどう膜炎の疫学調査において,仮面症候群(眼内悪性リンパ腫)は2002年では原因の1%であったのが,2009年の調査では2.5%と増加傾向にある3).眼内悪性リンパ腫の発症は平均50,60歳代,女性に多いが,近年男性の罹患者数も増えているとの報告がある.人種差はないとされている.II検査と臨床症状1.症状初発の眼症状は目のかすみ,視力低下,飛蚊症が主である.眼外症状として,運動失調,めまい,頭痛,見当識障害などの中枢神経系浸潤による症状が出現することがある.*AtsunobuTakeda:国立病院機構九州医療センター眼科〔別刷請求先〕武田篤信:〒810-8563福岡市中央区地行浜1-8-1国立病院機構九州医療センター眼科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(53)53図1前眼部写真大型の細胞がみられる.図2網膜下浸潤病変黄白色で内部に顆粒状の色素斑を伴う隆起病変がみられる.図3網膜下浸潤病変の光干渉断層計所見色素上皮とCBruch膜の間に充実性のドーム状隆起病変がみられる.図4視神経乳頭浮腫図5眼内灌流液を用いたセルブロック法による細胞診a:HE染色.悪性細胞がみられる().Cb:CD20免疫染色.CD20陽性細胞がみられる().(臨床眼科72:図3,306-310,2018より引用)図7PET.CT傍大動脈にCFDG異常集積(白円内)がみられる.図6頭部MRI拡散強調画像(di.usionweightedimage:DWI)で前頭葉に高信号(赤円内)を呈している.定が鑑別に有用である.②転移性脈絡膜腫瘍眼内悪性リンパ腫ではみられない網膜.離が生じている.また,硝子体混濁はまれである.FAで過蛍光を呈する.③網膜色素上皮症経過観察しながら鑑別する.CIII治療治療として眼局所治療と全身化学療法,放射線療法がある.眼局所治療には局所化学療法または局所放射線療法がある.CNSリンパ腫を伴う場合には眼局所療法と併せてCCNSリンパ腫に準じた全身化学療法あるいは放射線療法を併用することがある.CNSリンパ腫を伴わない場合のCCNSリンパ腫発症予防目的での全身化学療法の最適なレジメンは未だ確立していない.しかし,CNSリンパ腫発症予防目的で全身化学療法単独,あるいは全身化学療法後に放射線療法を併用する施設もある.ただし,いずれの場合でも全身状態や年齢によっては併用できないことがある.C1.局所療法眼病変に対し,局所化学療法または局所放射線療法がある.局所化学療法,局所放射線療法のいずれの治療法もCCNSリンパ腫発症に対する予防効果はない5).Ca.眼局所放射線療法古くは眼局所放射線療法が標準的な治療法であった.眼局所にC30~40Gy照射するが,再発が少なくなく,再発した場合には再照射できないことが問題であった.そのため,現在は局所化学療法を選択することが多い.Cb.局所化学療法局所化学療法には葉酸代謝拮抗薬であるメトトレキサート(methotrexate:MTX)の硝子体注射がおもに用いられている.MTXはデカドロン注射液またはオキシグルタチオン溶液で溶解してC400Cμg/100Cμlに調整したものを用いる.投与方法はC1週間にC2回投与をC4週間,続いて維持療法として週にC1回をC4週間,1カ月にC1回をC9カ月間行う.副作用として,薬剤性角膜上皮障害の頻度が高い.細胞診によりCCD20陽性眼内悪性リンパ腫と診断された症例に対し,CD20の分子標的薬であるリツキシマブ(rituximab)の硝子体注射の有用性も報告されている.C2.全身化学療法CNSリンパ腫に準じた全身化学療法はCMTX大量療法〔high-dose(HD)・MTX〕を基盤とした化学療法+ホリナートカルシウム(ロイコボリンCR)救援療法が行われる6).CNS以外の節外CDLBCLに対して用いられるR-CHOP(リツキシマブ,シクロフォスファミド,ドキソルビジン,ビンクリスチン,プレドニゾロン)療法は脳血液関門(blood-brainbarrier:BBB)を通過できないことからCCNSリンパ腫には効果がない.MTXは大量投与によりCBBBを通過可能であり,抗腫瘍効果を発揮できる.ロイコボリンCR投与は葉酸としてCMTXによる骨髄抑制などの臓器障害を防ぐが,BBBを通過できずCCNS内の腫瘍細胞には限定した救援作用しかしないことを利用している.MTXはC1Cg/mC2以上で中枢神経実質に,3Cg/mC2で脳脊髄液に殺腫瘍効果が期待できる濃度に達するとされ,多くの施設でC3.5Cg/mC2で用いられることが多い.副作用として感染症,間質性肺炎,消化器症状,肝障害,腎障害,骨髄抑制などがあり,なかでも腎障害,白質脳症が問題となる.眼原発眼内悪性リンパ腫に対するCCNSリンパ腫発症予防目的での全身化学療法について近年いくつかの報告がなされており,HD-MTXによる予防的化学療法施行群ではCCNSリンパ腫の発症までの期間を有意に遅らせたという報告がいくつかなされている.また,先行する化学療法を強化し,放射線療法を最小限にする治療法の開発も進められている.眼原発眼内悪性リンパ腫に対するCHD-MTXにリツキシマブなどを併用したCR-MPV(リツキシマブ,HD-MTX,プロカルバジン,ビンクリスチン)療法をC5クール後に低用量全脳照射を併用した治療法の効果についての前向き研究の結果によると,4年間での無増悪生存期間(progressionCfreesurvival:PFS)および全生存率(overallCsurviv-al:OS)の向上が報告されている7).また,HD-MTX(57)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C57-

皮膚疾患関連

2019年1月31日 木曜日

皮膚疾患関連OcularDiseasesRelatedtoDermatology内翔平*柳井亮二*はじめに眼瞼・眼球・皮膚表面はいずれもその病変を直接視認することができる臓器である.発生学的にも角結膜や涙腺と皮膚は表皮外胚葉由来で,皮膚疾患と関連する眼疾患も少なくない.眼瞼ヘルペスやアトピー性眼瞼炎などの眼瞼疾患は眼科・皮膚科の境界領域となり,どちらの科でも診療しえるものである.また,広義の全身性自己免疫性疾患の中には,眼合併症とともに皮膚合併症をきたすものがあり,三大ぶどう膜炎であるサルコイドーシス,原田病,Behcet病にも皮膚病変が出現する.本稿では,皮膚疾患に関連し疾患概念および治療法が変化している眼疾患として,アトピー性皮膚疾患および眼部帯状疱疹,さらにノーベル賞受賞で話題となっている悪性黒色腫に対する免疫チェックポイント阻害薬に関連する眼疾患について概説する.Iアトピー性皮膚疾患1.疾患概念と現状の皮膚疾患の治療法アトピー性皮膚炎は,「増悪・寛解を繰り返す,.痒のある湿疹を主病変とする疾患」と定義される1).患者の多くはアトピー素因として,①家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎),もしくは②IgE抗体を産生しやすい体質を有する.IgE抗体は即時型アレルギー反応を担っており,アレルゲンによる感作により特異IgE抗体が形質細胞で産生される.アレルギーの血液検査で測定しているのがこのIgE抗体の量であり,個々のアレルゲンに対するIgE抗体価ならびに,血清総IgE値も重症度の評価の参考になる.アトピー性皮膚疾患の治療は,①薬物療法,②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア,③悪化因子の検索と対策の3点とされている(図1)1).薬物療法は主としてステロイドおよびタクロリムス軟膏で行われ,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidalanti-in.ammatorydrugs:NSAIDs)や抗菌薬の使用は推奨されていない.タクロリムス軟膏は別途公表されている「アトピー性皮膚炎におけるタクロリムス軟膏の使用ガイダンス」に忠実に従うことが必要であり,専門性を有する皮膚科医により使用されることが前提となる.その他,皮膚の保湿,および悪化防止としての食物・ダニなどのアレルゲン,汗などの悪化因子への対策が治療の基本とされている.アトピー性皮膚炎の短期的な重症度や病勢の参考となる検査には,末梢血好酸球数,血清LDH(lactatedehydrogenase)値やTARC(thymusandactivation-regulatedchemokine)値などがある.2.アトピー性皮膚炎に関連する眼疾患ガイドラインには,眼科領域との関連として,アトピー性皮膚疾患の重要な眼合併症として白内障と網膜.離が表記され,その他,眼合併症として眼瞼皮膚炎,角結膜炎,円錐角膜が記載されている.ステロイド外用薬による眼周囲への副作用としては,白内障はリスクを高め*Sho-HeiUchi&*RyojiYanai:山口大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕内翔平:〒755-8505山口県宇部市小串1-1-1山口大学大学院医学系研究科眼科学0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(43)43確実な診断現病歴,既往歴,罹病範囲や重症度の評価(患者および家族の背景も含めて)疾患と治療の目標・ゴールの説明薬物療法・スキンケアに関する具体的な説明,適正治療のための患者教育補助療法<例>・抗ヒスタミン薬の内服・悪化因子の検索と除去・心身医学的アプローチ図1アトピー性皮膚炎の診断治療アルゴリズム薬物療法としてプロアクティブ療法が記載されており,また薬物療法以外にもスキンケアに関する説明や患者教育,アドヒアランスの配慮が重視されている.(文献1より引用)治療アドヒアランスへの配慮表1アトピー性皮膚疾患ガイドラインの眼合併症記載項目CQ3.ステロイド外用薬の眼周囲への使用は眼合併症のリスクを高めるか.推奨文:アトピー性皮膚炎のステロイド外用薬の眼周囲への使用は白内障のリスクは高めないが,緑内障のリスクは高める可能性がある.(白内障)エビデンスレベルB(リスクを高めない)(緑内障)エビデンスレベルC(リスクを高める)解説:アトピー性皮膚炎患者は,白内障,緑内障,網膜.離,結膜炎などの眼合併症が多いことが知られているが,ステロイドによる治療の副作用として問題となるのは白内障と緑内障である.白内障に関しては7件の症例集積研究が報告されており,ステロイド忌避による顔面皮疹の悪化や叩打癖が危険因子と考えられるほか,アトピー性皮膚炎自体による炎症もリスクファクターと考えられている.ステロイド外用薬の眼周囲への使用期間についてはいずれも関係がないと報告されており,白内障のリスクを高めるとはいえないと考えられた.緑内障については1件の症例集積研究があり,弱いランクのステロイドを少量使用する分にはリスクは低いと考えられる.しかしながら,リスクを否定できるだけのエビデンスは乏しく,ステロイド外用治療後の緑内障の症例は多数報告されていることから,緑内障のリスクを高める可能性は十分に考えられる.(文献1より引用)ab図2アトピー性皮膚炎患者の前眼部写真a:18歳,男性.アトピー性皮膚炎の既往あり.前極・後.下白内障を認める.b:30歳,男性.アトピー性皮膚炎の既往あり.円錐角膜とDescemet膜破裂による角膜実質浸潤を認める.この後,眼底は増殖糖尿病網膜症となっている.ピー性皮膚炎の病勢が落ち着いている期間(寛解維持期間)もステロイド外用薬の使用を継続する,プロアクティブ療法がガイドラインに組み込まれている.その指標として,Th2ケモカインである血清TARCが保険収載され,その値を参考にステロイドの力価を低下・維持させていく方法が推奨されている.増悪時にステロイド再開を行うリアクティブ療法よりも,長期寛解維持効果が高く組織破壊が少ないとされている.b.眼科領域における抗炎症点眼のプロアクティブ療法眼科領域でもこれに関連して,近年では眼瞼春季カタルに対する免疫抑制薬(タクロリムス)点眼において,添付文書上の1日2回点眼のみならず,寛解期にも「2日に1回点眼.1週間に1回点眼」など間隔を徐々に空けながら寛解を維持するプロアクティブ療法がしばしば報告されている.なお,タクロリムス点眼については,難治性アレルギー性眼疾患に対する使用においてステロイド点眼併用群と非併用群で治療効果に差がないことが報告され,単剤投与での有用性が示されている3).ぶどう膜炎領域でもアトピー性皮膚疾患同様に,炎症の重症度に応じたステロイドの使用量調整が必要となる.ただし炎症寛解期の局所ステロイド選択と点眼回数については,ぶどう膜炎の性質上個々の症例により多彩であるため眼科医の裁量によるところが多く,長期のプロアクティブ療法がとりづらくなっている.その要因として,①ステロイド点眼薬に白内障,緑内障などの副作用が生じること,②アトピー性皮膚疾患に利用される血清TARC値に相当するような眼内炎症の画期的なマーカーに欠けること,③点眼薬として使用できるステロイドの種類が非常に少ないこと,などがあげられる.治療の実際として,寛解期はリン酸ベタメタゾンからステロイド副作用の少ないフルメトロンへの切り替えで継続する,眼内移行性を考慮しリン酸ベタメタゾン0.1%点眼1日1回点眼を継続する,レーザーフレアセルメーターによる他覚的評価を指標にして回数を決める,などが行われているが,いずれも明確なエビデンスはない.今後のバイオマーカー登場が待たれる.II眼部帯状疱疹1.疾患概念と現状の皮膚疾患の治療法単純ヘルペスウイルス(herpessimplexvirus:HSV),水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zostervirus:VZV)ともに,皮膚科を受診する頻度の高い疾患である.本項ではとくにVZVによる眼部帯状疱疹について述べる.帯状疱疹は脊髄後根神経節,三叉神経節などに潜伏し,年余を経てから再活性されることにより発症する感染症で,片側の神経分節性支配に沿って有痛性の小水疱を生じるのが特徴である.抗ウイルス治療として皮疹発症から72時間以内に抗ウイルス薬(アシクロビル,バラシクロビル,ファムシクロビル)などを1週間投与することが勧められている.治癒後の帯状疱疹後神経痛はqualityoflife(QOL)を著しく低下させるが,急性期の疼痛緩和が帯状疱疹後神経痛への移行を抑制できることにつながるため,疼痛管理も重要である.アセトアミノフェン,NSAIDsなどの薬物療法に始まり,重症例ではオピオイド,プレガバリン,三環系抗うつ薬などの併用や,末梢神経ブロック,交感神経節ブロックなども実施されている.2.眼部帯状疱疹に関連する眼疾患三叉神経第一枝(眼神経)領域の帯状疱疹は眼部帯状疱疹と称される.「鼻尖や鼻背部に帯状疱疹がみられると,高率に眼合併症を生じる」ことが有名で,Hutchin-son徴候とよばれる.Hutchinson徴候がある患者は9割以上に眼合併症を生じる.もっとも高頻度に起きる合併症は角膜炎で,次いで虹彩炎,結膜炎と多い(表2)4).局所療法としては,アシクロビル軟膏の1日5回塗布が基本となる.帯状疱疹の重症度に応じてバルトレックスの内服が適応となるが,帯状疱疹に対しては7日までしか適応がない.a.ヘルペス性眼瞼炎,ヘルペス性角結膜炎HSVでは木の枝のように染まり末端膨大部(terminalbulb)を伴う樹枝状潰瘍が特徴で,VZVでは先端が先細りの偽樹脂状潰瘍がみられる.角膜炎はHSVで多くみられVZVでは比較的まれである.局所治療としてアシクロビル軟膏で治療するが,虹彩炎に対して使用され46あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(46)表2眼部帯状疱疹の眼合併症角膜炎虹彩炎,ぶどう膜炎結膜炎重度の眼痛眼圧上昇強膜炎,上強膜炎角膜瘢痕浸潤眼瞼下垂角膜潰瘍視力低下霧視ヘルペス性白内障複視急性網膜壊死144(76.2%)88(46.6%)67(35.4%)27(14.3%)25(13.2%)20(10.6%)19(10.1%)15(7.9%)9(4.8%)6(3.2%)6(3.2%)6(3.2%)5(2.6%)0(0.0%)(文献C4より改変引用)図3眼部帯状疱疹にARNを合併した症例a:前額中央部から左眉毛内側部・鼻翼部に皮疹を認めた.Cb:大小不同の豚脂様角膜後面沈着物を伴う虹彩毛様体炎がみられた.Cc:著明な硝子体混濁があり,術中所見としては周辺部網膜壊死を認めた.表3急性網膜壊死の診断基準〈診断基準の考え方〉初期眼所見項目,経過項目,検査項目を総合して診断する.初期眼所見項目のC1aとC1bを認めた場合には急性網膜壊死を強く疑い,必要な検査と治療を開始することが望ましい.その後の経過と検査結果に基づいて診断を確定する.急性網膜壊死は免疫健常人に発症する疾患であるが,免疫不全の背景を有する患者においては,以下に限らない多彩な眼所見を呈することに留意する.1.初期眼所見項目C1a.前房細胞または豚脂様角膜後面沈着物がある.C1b.一つまたは複数の網膜黄白色病変(初期は顆粒状・斑状,次第に癒合して境界明瞭となる)が周辺部網膜に存在する.C1c.網膜動脈炎が存在する.C1d.視神経乳頭発赤がある.C1e.炎症による硝子体混濁がある.C1f.眼圧上昇がある.2.経過項目C2a.病巣は急速に円周方向に拡大する.C2b.網膜裂孔,網膜.離を生じる.C2c.網膜血管閉塞を生じる.C2d.視神経萎縮をきたす.C2e.抗ヘルペスウイルス薬に反応する.3.眼内液検査前房水または硝子体液を用いた検査(CPCR法あるいは抗体率算出など)で,HSV-1,HSV-2,VZVのいずれかが陽性.4.分類(C1)確定診断群:眼内液においてウイルスの関与を証明できない.あるいは検査未施行であるが,初期眼所見項目のうちC1aとC1bを含むC4項目と経過項目のうちC2項目を認め,他疾患を除外できるもの.(文献C6より引用)脳炎無菌性髄膜炎下垂体炎甲状腺炎甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症肺炎血小板減少症貧血肝炎副腎不全腎炎血管炎関節痛神経障害ぶどう膜炎口渇粘膜炎発疹白斑心筋炎膵炎自己免疫性糖尿病大腸炎小腸炎表4免疫チェックポイント阻害薬の眼副作用眼窩,附属器重症筋無力症眼窩筋炎感染性眼窩炎症Tolosa-Hunt症候群脳神経麻痺動眼神経麻痺外転神経麻痺顔面神経麻痺眼表面ドライアイ感染性角膜炎強膜炎CGraftrejection視神経網膜視神経炎視神経症ぶどう膜炎前部ぶどう膜炎後部ぶどう膜炎汎ぶどう膜炎網膜血管炎漿液性網膜.離CVogt-Koyanagi-HaradalikediseaseC(文献C11より引用)図4免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(文献C9より承諾を得て引用)図5抗PD.1抗体製剤使用中のぶどう膜炎a:64歳,女性.非小細胞肺癌に対しニボルマブC3カ月間使用後,両眼にジネキアを伴う前部ぶどう膜炎を認めた.Cb:同症例のCOCT画像.漿液性網膜.離を認めた.(文献C12より承諾を得て改変引用)

強直性脊椎炎関連

2019年1月31日 木曜日

強直性脊椎炎関連AnkylosingSpondylitisandRelatedDiseases楠原仙太郎*はじめに急性前部ぶどう膜炎は日常診療で時々遭遇する疾患であるが,その診療にあたっては目の前にある眼炎症をコントロールすると同時に,その背景にある全身疾患に留意する必要がある.強直性脊椎炎(ankylosingspondyli-tis)は脊椎・仙腸関節に生じる背部痛を伴う慢性炎症性疾患であり,約30%に急性前部ぶどう膜炎を認めるとされている.強直性脊椎炎の進行期では不可逆的な脊椎強直によって日常的な動作が著しく困難となることから,早期治療が重要であることは広く認識されている.しかしながら,現行の強直性脊椎炎診断基準によると,症状の出現から診断に至るまでに7~8年を要するという問題があった.このことから,早期治療介入を考慮した分類基準が作成され,現在では強直性脊椎炎を脊椎関節炎(spondyloarthritis)という広い疾患概念のなかでとらえることが一般的となっている.脊椎関節炎は多彩な関節外症状を合併することが知られているが,そのなかでも急性前部ぶどう膜炎の頻度は高く,強直性脊椎炎を含む脊椎関節炎の早期発見における眼科医の役割は大きいと考えられる.I脊椎関節炎としての強直性脊椎炎1.疾患概念脊椎関節炎の疾患概念は,Wrightによって1979年にリウマトイド因子陰性の脊椎関節症として提唱された1).脊椎関節炎患者ではHLA-B27陽性率が高く,経過中に,体軸関節炎(脊椎炎および仙腸関節炎),末梢関節炎,腱付着部炎,指趾炎,急性前部ぶどう膜炎,乾癬,炎症性腸疾患を伴うことが多いという共通の特徴をもつ.脊椎関節炎は,そのおもな罹患部位が体軸関節か末梢関節かによって有効な薬剤が異なることから,体軸性脊椎関節炎と末梢性脊椎関節炎に分類されるようになった(図1)2).強直性脊椎炎は体軸性脊椎関節炎に分類される疾患であり,フランスにおける大規模調査では脊椎関節炎の71%を占めると報告されている3).AxialSpAPeripheralSpA図1脊椎関節炎の分類AxialSpA:体軸性脊椎関節炎,PeripheralSpA:末梢性脊椎関節炎,AS:強直性脊椎炎,PsA:乾癬性関節炎,ReA:反応性関節炎,IBD-SpA:炎症性腸疾患関連関節炎,Undi.erentiatedPeripheralSpA:分類不能末梢性脊椎関節炎.(文献2より改変引用)*SentaroKusuhara:神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野〔別刷請求先〕楠原仙太郎:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(35)35表1強直性脊椎炎診断のための改訂ニューヨーク診断基準(Modi.edNewYorkCriteria,1984年)(文献4より改変引用)45歳未満発症の3カ月以上続く背部痛を有する患者において*仙腸関節炎の画像所見MRIにおける脊椎関節炎による仙腸関節炎を強く示唆する活動性炎症所見,または改訂ニューヨーク基準におけるX線診断基準を満たす.**脊椎関節炎の特徴1)炎症性背部痛,2)関節炎,3)付着部炎(踵),4)ぶどう膜炎,5)指趾炎,6)乾癬,7)クローン病/潰瘍性大腸炎,8)NSAIDsへの良好な反応,9)脊椎関節炎の家族歴,10)HLA-B27陽性,11)CRP上昇図2体軸性脊椎関節炎の分類基準(文献2より改変引用)関節炎or付着部炎or指趾炎の存在に加えて図3末梢性脊椎関節炎の分類基準(文献C2より改変引用)図4強直性脊椎炎患者の眼病変(急性前部ぶどう膜炎)前眼部炎症は落ちついたが虹彩後癒着が生じ散瞳不良である.る18).大動脈弁では弁の付着部である弁基部に変化が強いことがわかっている.Cf.肺病変高解像度CCTを用いた検討ではC61%になんらかの肺病変がみつかっている.とくに非特異的間質性肺病変については病初期の呼吸器症状のない患者においても検出されることから注意が必要である19).Cg.腎病変強直性脊椎炎患者C210例の後ろ向き研究ではC13.3%になんらかの腎障害が合併しており,蛋白尿と腎機能障害の頻度が高かったと報告されている20).C2.診断基準・重症度基準「改訂ニューヨーク診断基準」(表1)が用いられているが,ASASによる体軸性脊椎関節炎の分類基準を早期治療に取り入れる流れがある.わが国では以下のいずれかを満たす場合を重症例とし,医療費助成の対象としている.1)BASDAIスコアがC4以上,かつCCRPが1.5Cmg/dl以上,2)BASMIスコアがC5以上,3)脊椎CX線上,連続するC2椎間以上に強直(bamboospine)が認められる,4)薬物治療が無効の高度な破壊や変形を伴う末梢関節炎がある,5)局所治療抵抗性・反復性もしくは視力障害を伴う急性前部ぶどう膜炎がある(難病情報センター,http://www.nanbyou.or.jp/entry/4848).ASASは強直性脊椎炎の疾患活動性の指標として「0.121C×背部痛の程度+0.058×朝のこわばり持続時間+0.110×患者全般評価+0.073×末梢関節の疼痛・腫脹の程度+0.579×Ln(CRP+1)」の計算式から算出されるCAnkylosingCSpondylitisCDiseaseCActivityCScore(ASDAS)をC2011年に提唱した.ASDASのカットオフ値によって当初は,inactiveCdisease,CmoderateCdis-easeCactivity,ChighCdiseaseCactivity,CveryChighCactivityと分類されていたが21).近年の治療法の変化により,2018年にCinactivedisease,lowCdiseaseCactivity,Chighdiseaseactivity,veryhighactivityへと命名法が変更されている22).また,骨格障害の評価の指標として椎体CX線写真における変化をスコア化したCmodi.edCStokeCAnkylosingSpondylitisSpinalScore(mSASSS)が用いられている23).3.治療2009年にCASASがCMRI所見を組み入れた体軸性脊椎関節炎の分類基準を作成したことは,強直性脊椎炎の早期病変としてのCX線陰性体軸性脊椎関節炎の治療をめざしたものであったが,両者は同一の疾患であるかどうかは議論が続いている15).一方,生物学的製剤を中心とする治療法はこれらを区別せずに進歩してきたことから,2016年にCASASと欧州リウマチ学会議(EuropeanLeagueCagainstCRheumaticDiseases:EULAR)は体軸性脊椎関節炎全体をターゲットとして,そのマネジメントに関するレコメンデーションをアップデートすることとなった.そのアルゴリズムは図5に示すとおりで疾患マネジメントを三つのフェーズに分けて治療法を選択する方式になっている24).フェーズCIでは,生活指導(定期的な運動と禁煙)と理学療法に加え症状に応じてNSAIDsの投与が薦められる.フェーズCIIでは,末梢症状が優位な症例ではステロイド局所注射およびスルファサラジン投与,純粋な体軸関節炎であればCTNF阻害薬の適応となる.フェーズCIIIでは,他のCTNF阻害薬やIL-17阻害薬への切り替えが推奨される.また,レコメンデーションでは,持続寛解時の生物学的製剤の減量,腰椎・股関節手術の適応,treat-to-target(T2T)についても言及されている.T2Tの概念は関節リウマチで広く認識されているが,治療法の進歩により体軸性脊椎関節炎においてもCT2Tが意識されるようになってきた25).関節リウマチと異なり,疾患全体として共通の治療ターゲットは明確にされていないが,ASDASを用いて脊椎関節炎の活動性を評価しながら個別に治療ターゲットを設定するアルゴリズムが提唱されている.骨化に関しては,TNF阻害薬が強直性脊椎炎患者における骨化の進行を抑制できないことが懸念されていた時期があったが,10年の治療経過では機能的な進行はなかったことが報告されている26).CIII眼科医の役割強直性脊椎炎を含む脊椎関節炎の診療における眼科医の役割は,急性前部ぶどう膜炎の適切な治療と脊椎関節炎の早期診断への貢献である.ぶどう膜炎の治療については前述のとおり眼局所ステロイド投与が中心であり,(39)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C39治療継続治療継続図5脊椎関節炎の治療(ASAS.EULAR2016recommendations)ASDAS:AnkylosingSpondylitisDiseaseActivityScore,BASDAI:BathAnkylosingSpondylitisDiseaseActivityIndex,bDMARD:biologicalCdisease-modifyingCantirheumaticdrug.*BASDAIもしくはCASDASのいずれかで評価.(文献C24より改変引用)脊椎関節炎の患者向け資料を提供リウマチ医に紹介脊椎関節炎の患者向け資料を提供図6DUETアルゴリズム(文献C28より改変引用)vey.ArthritisCareRes(Hoboken)C64:919-924,C20124)vanderLindenS,ValkenburgHA,CatsA:EvaluationofdiagnosticCcriteriaCforCankylosingCspondylitis.CACproposalCformodi.cationoftheNewYorkcriteria.ArthritisRheumC27:361-368,C19845)CalinCA,CPortaCJ,CFriesCJF,CSchurmanDJ:ClinicalChistoryCasCaCscreeningCtestCforCankylosingCspondylitis.CJAMAC237:2613-2614,C19776)AmorCB,CDougadosCM,CMijiyawaM:CriteriaCofCtheCclassi.cationCofCspondylarthropathies.CRevCRhumCMalCOsteoarticC57:85-89,C19907)DougadosM,vanderLindenS,JuhlinRetal:TheEuroC-peanCSpondylarthropathyCStudyCGroupCpreliminaryCcrite-riaCforCtheCclassi.cationCofCspondylarthropathy.CArthritisCRheumC34:1218-1227,C19918)DashtiCN,CMahmoudiCM,CAslaniCSCetal:HLA-B*27Csub-typesCandCtheirCimplicationsCinCtheCpathogenesisCofCanky-losingspondylitis.GeneC670:15-21,C20189)神田眞輔.三浪三千男.斉藤輝信ほか:血清反応陰性関節炎患者の日本CAS研究会第C2回アンケート調査報告.日関節病会誌18:167-176,C199910)TaylorW,GladmanD,HelliwellPetal:Classi.cationcri-teriaCforCpsoriaticarthritis:developmentCofCnewCcriteriaCfromCaClargeCinternationalCstudy.CArthritisCRheumC54:C2665-2673,C200611)CoatesCLC,CKavanaughCA,CMeaseCPJCetal:GroupCforCresearchCandCassessmentCofCpsoriasisCandCpsoriaticCarthri-tis2015treatmentrecommendationsforpsoriaticarthritis.ArthritisRheumatolC68:1060-1071,C201612)OlivieriCI,CCantiniCF,CCastiglioneCFCetal:ItalianCexpertCpanelConCtheCmanagementCofCpatientsCwithCcoexistingCspondyloarthritisandin.ammatoryCbowelCdisease.Autoim-munRevC13:822-830,C201413)ReinhardtA,YevsaT,WorbsTetal:Interleukin-23-de-pendentgamma/deltaTcellsproduceinterleukin-17andaccumulateCinCtheCenthesis,CaorticCvalve,CandCciliaryCbodyCinmice.ArthritisRheumatolC68:2476-2486,C201614)RobinsonY,SandenB,OlerudC:IncreasedoccurrenceofspinalCfracturesCrelatedCtoankylosingCspondylitis:aCpro-spectiveC22-yearCcohortCstudyCinC17,764CpatientsCfromCaCnationalregistryinSweden.PatientSafCSurgC7:2,C201315)KiltzCU,CBaraliakosCX,CKarakostasCPCetal:DoCpatientsCwithCnon-radiographicCaxialCspondylarthritisCdi.erCfromCpatientsCwithCankylosingCspondylitis?CArthritisCCareCRes(Hoboken)C64:1415-1422,C201216)StolwijkCC,CvanCTubergenCA,CCastillo-OrtizCJDCetal:CPrevalenceCofCextra-articularCmanifestationsCinCpatientsCwithankylosingCspondylitis:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.AnnRheumDisC74:65-73,C201517)vanCPraetCL,CVanCdenCBoschCFE,CJacquesCPCetal:Micro-scopicgutin.ammationinaxialspondyloarthritis:amul-42あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019tiparametricCpredictiveCmodel.CAnnCRheumCDisC72:414-417,C201318)RoldanCA:ValvularCandCcoronaryCheartCdiseaseCinCsys-temicin.ammatorydiseases:SystemicDisordersinheartdisease.HeartC94:1089-1101,C200819)ElMaghraouiA,DehhaouiM:Prevalenceandcharacter-isticsCofClungCinvolvementConChighCresolutionCcomputedCtomographyCinCpatientsCwithankylosingCspondylitis:aCsystematicreview.PulmMedC2012:965956,C201220)BenCTaaritCC,CAjlaniCH,CBenCMoussaCFCetal:RenalCinvolvementCinankylosingCspondylitis:concerningC210Ccases.RevCMedInterneC26:966-969,C200521)MachadoP,LandeweR,LieEetal:AnkylosingSpondyli-tisDiseaseActivityScore(ASDAS):de.ningcut-o.val-uesCforCdiseaseCactivityCstatesCandCimprovementCscores.CAnnRheumDisC70:47-53,C201122)MachadoCPM,CLandeweCR,CHeijdeDV:AssessmentCofSpondyloArthritisinternationalSociety(ASAS):Ankylos-ingCSpondylitisCDiseaseCActivityScore(ASDAS):2018CupdateCofCtheCnomenclatureCforCdiseaseCactivityCstates.CAnnRheumDisC77:1539-1540,C201823)CreemersMC,FranssenMJ,van’tHofMAetal:Assess-mentCofCoutcomeCinankylosingCspondylitis:anCextendedCradiographicCscoringCsystem.CAnnCRheumCDisC64:127-129,C200524)vanCderCHeijdeCD,CRamiroCS,CLandeweCRCetal:2016CupdateCofCtheCASAS-EULARCmanagementCrecommenda-tionsforaxialspondyloarthritis.AnnRheumDisC76:978-991,C201725)SmolenCJS,CScholsCM,CBraunCJCetal:TreatingCaxialCspon-dyloarthritisCandCperipheralCspondyloarthritis,CespeciallyCpsoriaticarthritis,totarget:2017updateofrecommenda-tionsbyaninternationaltaskforce.AnnRheumDisC77:C3-17,C201826)PoddubnyyD,FedorovaA,ListingJetal:Physicalfunc-tionandspinalmobilityremainstabledespiteradiographicCspinalCprogressionCinCpatientsCwithCankylosingCspondylitisCtreatedCwithCTNF-alphaCinhibitorsCforCupCtoC10Cyears.CJRheumatolC43:2142-2148,C201627)PoddubnyyCD,CvanCTubergenCA,CLandeweCRCetal:CAssessmentCofCSpondyloArthritisCinternationalCSociety(ASAS):DevelopmentofanASAS-endorsedrecommen-dationfortheearlyreferralofpatientswithasuspicionofaxialCspondyloarthritis.CAnnCRheumCDisC74:1483-1487,C201528)HaroonCM,CO’RourkeCM,CRamasamyCPCetal:ACnovelCevi-dence-baseddetectionofundiagnosedspondyloarthritisinpatientsCpresentingCwithCacuteCanterioruveitis:theDUET(DublinCUveitisCEvaluationTool)C.CAnnCRheumCDisC74:1990-1995,C2015(42)

炎症性腸疾患関連ぶどう膜炎

2019年1月31日 木曜日

炎症性腸疾患関連ぶどう膜炎UveitisinIn.ammatoryBowelDisease金子優*はじめに炎症性腸疾患(in.ammatoryboweldisease:IBD)とは,慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患を総称し,一般に潰瘍性大腸炎(ulcerativecolitis:UC),クローン病(Crohndisease:CD)のC2疾患をさす.UCは大腸粘膜を直腸側から連続性に冒し,しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異的炎症である.一方,CDは非連続性に分布する全層性肉芽腫性炎症や瘻孔を特徴とする原因不明の慢性炎症性疾患であり,口腔から肛門まで消化管のどの部位にも病変を生じうるが,小腸・大腸(とくに回盲部),肛門周囲に好発する.いずれの疾患も表1,2に示す診断基準に基づき診断する1).ぶどう膜炎は腸管外合併症の一つで,一般的には特徴的所見を伴わない非肉芽腫性ぶどう膜炎であるため,十分な問診を行い,下痢,下血,腹痛などの消化器症状の有無を確認する必要がある.CI病因いまだに病因は不明であるが,現在では遺伝的因子と環境因子細菌などの微生物感染,腸内細菌叢の変化,食餌性抗原などが複雑に絡み合って,なんらかの抗原が消化管の免疫担当細胞を介して腸管局所での過剰な免疫応答を引き起こし,発症と炎症の持続に関与していると考えられている2).II疫学日本におけるCIBD患者は年々増加し,2013年度末の医療受給者証および登録者証交付件数から,UCではC16万人以上(人口C10万人あたりC100人程度),CDでは約4万人(人口C10万人あたりC27人程度)と類推される.UD,CDともに比較的若年に発症し,10歳代後半~30歳代前半に好発することが知られているが,高齢発症のIBDは決してまれではなく,IBDは生命予後が比較的良好で経過が長いため,高齢者人口増加に伴い有病者は高齢層へと移行している.海外の報告では,IBD患者のC0.3~13.0%(UC患者の1.6~5.4%,CD患者のC3.5~6.8%)にぶどう膜炎がみられるとされ3),わが国での全国疫学調査(2009年)ではぶどう膜炎患者全体のC0.7%であった4).CIII臨床所見一般的に両眼性の非肉芽腫性前部ぶどう膜炎であることが多い.再発性であり,急性期に前房蓄膿をきたし,線維素析出が強いことが特徴である.頻度は少ないものの,後眼部病変として黄斑浮腫,網膜血管炎,漿液性網膜.離などがみられたとの報告もある5).一般に症状は炎症性腸疾患発症後に現れるが,眼症状が先行する場合もある.*YutakaKaneko:山形大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕金子優:〒990-9585山形県山形市飯田西C2-2-2山形大学医学部眼科学講座C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(31)C31表1潰瘍性大腸炎の診断基準「De.nite」を対象とする.次のCa)の他,b)のうちのC1項目およびCc)を満たし,下記の疾患が除外できれば,De.niteとなる.a)臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便あるいはその既往がある.b)①内視鏡検査:ⅰ)粘膜はびまん性に侵され,血管透見像は消失し,粗造または細顆粒状を呈する.さらに,もろくて易出血性(接触出血)を伴い,粘血膿性の分泌物が付着しているか,ⅱ)多発性のびらん,潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める.②注腸CX線検査:ⅰ)粗造または細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化,ⅱ)多発性のびらん,潰瘍,ⅲ)偽ポリポーシスを認める.その他,ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・短縮が認められる.c)生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤,陰窩膿瘍,高度な杯細胞減少が認められる.いずれも非特異的所見であるので,総合的に判断する.寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐),萎縮が残存する.上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる.b)c)の検査が不十分あるいは施行できなくとも,切除手術または剖検により,肉眼的および組織学的に本症に特徴的な所見を認める場合は,下記の疾患が除外できれば,De.niteとする.除外すべき疾患は,細菌性赤痢,アメーバ性大腸炎,サルモネラ腸炎,カンピロバクタ腸炎,大腸結核,クラミジア腸炎などの感染性腸炎が主体で,その他にCCrohn病,放射線照射性大腸炎,薬剤性大腸炎,リンパ濾胞増殖症,虚血性大腸炎,腸型CBehcetなどがある.〈注C1〉まれに血便に気づいていない場合や,血便に気づいてすぐに来院する(病悩期間が短い)場合もあるので注意を要する.〈注C2〉所見が軽度で診断が確実でないものは「Possible(疑診)」として取り扱い,後日再燃時などに明確な所見が得られたときに本症と「De.nite」する.〈注3〉IndeterminatecolitisCrohn病と潰瘍性大腸炎の両疾患の臨床的,病理学的特徴を合わせ持つ,鑑別困難例.経過観察により,いずれかの疾患のより特徴的な所見が出現する場合がある.<重症度分類>中等症以上を対象とする.潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類重症中等症軽症①排便回数6回以上4回以下②顕血便(+++)(+)~(-)③発熱37.5℃以上重症と軽症の37.5℃以上の発熱がない④頻脈90/分以上中間90/分以上の頻脈なし⑤貧血Hb10Cg/dl下Hb10Cg/dl以下の貧血なし⑥赤沈30Cmm/h以上正常顕血便の判定(-)血便なし(+)排便の半数以下でわずかに血液が付着(++)ほとんどの排便時に明らかな血液の混入(+++)大部分が血液重症度軽症:上記のC6項目をすべて満たすもの中等症:上記の軽症,重症の中間にあたるもの重症:①および②の他に,全身症状である③または④のいずれかを満たし,かつC6項目のうちC4項目を満たすもの劇症:重症のなかでもとくに症状が激しく重篤なものをいう.発症の経過により急性電撃型と再燃劇症型に分けられる.劇症の診断基準は(1)重症基準を満たしている.(2)15回/日以上の血性下痢が続いている.(3)38.5℃以上の持続する高熱である.(4)10,000/mmC3以上の白血球増多がある.(5)強い腹痛がある.表2クローン病の診断基準De.nite(確診例)・Probable(疑診例)を対象とする.(1)主要所見A.縦走潰瘍<注1>B.敷石像C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫<注2>(2)副所見a.消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタ<注3>b.特徴的な肛門病変<注4>c.特徴的な胃・十二指腸病変<注5>診断のカテゴリーDe.nite(確診例):[1]主要所見のCAまたはCBを有するもの.<注6>[2]主要所見のCCと副所見のCaまたはCbを有するもの.[3]副所見のa,b,cすべてを有するもの.Probable(疑診例):[1]主要所見のCCと副所見のCcを有するもの.[2]主要所見CAまたはCBを有するが潰瘍性大腸炎や腸型CBehcet病,単純性潰瘍,虚血性腸病変と鑑別できないもの.[3]主要所見のCcのみを有するもの.<注7>[4]副所見のいずれかC2つまたはC1つのみを有するもの.<注1>小腸の場合は,腸間膜付着側に好発する.<注C2>連続切片作成により診断率が向上する.消化管に精通した病理医の判定が望ましい.<注3>典型的には縦列するが,縦列しない場合もある.また,3カ月以上恒存することが必要である.また,腸結核,腸型CBehcet病,単純性潰瘍,NSAIDs潰瘍,感染性腸炎の除外が必要である.<注4>裂肛,cavitatingulcer,痔瘻,肛門周囲膿瘍,浮腫状皮垂など.Crohn病肛門病変肉眼所見アトラスを参照し,Crohn病に精通した肛門病専門医による診断が望ましい.<注C5>竹の節状外観,ノッチ様陥凹など.Crohn病に精通した専門医の診断が望ましい.<注C6>縦走潰瘍のみの場合,虚血性腸病変や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である.敷石像のみの場合,虚血性腸病変を除外することが必要である.<注C7>腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外することが必要である.<重症度分類>Crohn病IOIBDスコア1項目C1点とし,2点以上を医療費助成の対象とする.(1)腹痛(2)1日C6回以上の下痢あるいは粘血便(3)肛門部病変(4)瘻孔(5)その他の合併症(ぶどう膜炎,虹彩炎,口内炎,関節炎,皮膚症状(結節性紅斑,壊疽性膿皮症),深部静脈血栓症など)(6)腹部腫瘤(7)体重減少(8)38℃以上の発熱(9)腹部圧痛(10)ヘモグロビンC10Cg/dl以下====図1症例1の前眼部写真(1)図2症例1の前眼部写真(2)微細な角膜後面沈着物を認める.高度の虹彩後癒着と水晶体前面に線維素析出を認める.図3黄斑浮腫のOCT像(別症例)48歳,女性.潰瘍性大腸炎で内科通院中に左眼にぶどう膜炎発症.黄斑浮腫を認めたため,内科と相談のうえ,ステロイド全身投与を行った.

ベーチェット病

2019年1月31日 木曜日

ベーチェット病Behcet’sDisease橋田徳康*はじめにBehcet病は,口腔粘膜の有痛性アフタ潰瘍・皮膚症状・ぶどう膜炎・陰部潰瘍を四主症状とする炎症性疾患で,病変は副症状(神経系・血管・腸管・副睾丸炎・関節炎)を含めて多臓器に及ぶ全身性疾患である.「難病の患者に対する医療等に関する法律第5条第1項に規定する指定難病」の一つであり,難治性の疾患である.わが国においては,歴史的に「Behcet病に関する調査研究班」が重要な役割を果たし,疫学調査や診断ガイドライン策定を行ってきた.ただ近年の眼炎症疾患に対する免疫抑制薬や生物学的製剤の導入により,Behcet病の治療戦略が大きく変化してきている.本稿では,疾患概念の再確認と新たな治療戦略について概説する.I疫学Behcet病発症者は,シルクロードに沿った地域(トルコなど地中海沿岸地域から中東・中国を経てわが国に至る)に偏在している.その頻度は,2009年に日本眼炎症学会が調査したわが国の大学病院におけるぶどう膜炎の原因疾患の調査においては,3.9%(第6位)と,疾患頻度の上位を占める重要な眼炎症疾患である1).Behcet病患者の約70%にぶどう膜炎がみられ,若年男性に重症例が多い.患者数は近年減少傾向にあり,環境要因の影響の変化が考えられている.遺伝的素因の関与も証明されており,健常群よりも患者群で有意にヒト白血球抗原(humanleukocyteantigen:HLA)であるHLA-B*51の保有率が高い(50~70%)ことが報告されている2).HLAのタイピングでは他にHLA-A26との相関が高く3),オッズ比(信頼区間)が2.50(95%CI1.73~3.62)であり4),HLA-A26陽性患者でぶどう膜炎が重症化するという報告もなされている.また,Mizukiら5)とRemmersら6)が2010年にBehcet病患者のゲノムワイド関連解析(GenomeWideAssociationStudy:GWAS)を報告し,IL-10およびIL-23R/IL-12RB2の二つの遺伝子領域の一塩基多型(singlenucleotidepoly-morphism:SNP)が疾患感受性遺伝子であることがわかっている.以上のようにBehcet病は,HLA領域・IL-10およびIL-23R/IL-12RB2遺伝子などの内的要因,環境因子などの外的要因が共働して発症する多因子疾患と考えられている.II診断・臨床所見診断は厚生労働省特定疾患ベーチェット病調査研究班により作成された「ベーチェット病の臨床診断基準」に基づいて行われる(表1).基本的に臨床症状に基づいて診断されるが,詳細は成書を参照いただき,本稿では概略を述べるにとどめる.まず眼科医として留意すべきことは,Behcet病は全身性多臓器性疾患であることである.主症状である口腔粘膜のアフタ性潰瘍・外陰部潰瘍・皮膚症状・眼症状を検出し,完全型・不完全型・疑いなどと診断しながら,関係診療科と連携と取りつつ,副症状である関節炎・副睾丸炎・消化器病変・血管病*NoriyasuHashida:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室〔別刷請求先〕橋田徳康:〒565-0871大阪府吹田市山田丘2-2,E7大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(23)23表1ベーチェット病の臨床診断基準1主要項目(1)主症状C①口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍C②皮膚症状(a)結節性紅斑,(b)皮下の血栓性静脈炎,(c)毛.炎様皮疹,(d)座瘡様皮疹参考所見:皮膚の被刺激性亢進C③眼症状(a)虹彩毛様体炎,(b)網膜ぶどう膜炎(網脈絡膜炎)(c)以下の所見があれば(a)(b)に準じる(a)(b)を経過したと思われる虹彩後癒着,水晶体上色素沈着,網脈絡膜萎縮,視神経萎縮,併発白内障,続発緑内障,眼球癆C④外陰部潰瘍(2)副症状C①変形や硬直を伴わない関節炎C②副睾丸炎C③回盲部潰瘍で代表される消化器病変C④血管病変C⑤中等度以上の中枢神経病変(3)病型診断の基準C①完全型経過中にC4主症状が出現したものC②不全型(a)経過中にC3主症状,あるいはC2主症状とC2副症状が出現したもの(b)経過中に定型的眼症状とその他のC1主症状,あるいはC2副症状が出現したもの③疑い主症状の一部が出没するが,不全型の条件を満たさないもの,および定型的な副症状が反復あるいは増悪するものC④特殊病型(a)腸管(型)ベーチェット病:腹痛,潜血反応の有無を確認する(b)血管(型)ベーチェット病:大動脈,小動脈,大小静脈障害の別を確認する(c)神経(型)ベーチェット病:頭痛,麻痺,脳脊髄症型,精神症状などの有無を確認する(厚生労働省,2010年改訂)図1二ボーを形成する前房蓄膿a:前房蓄膿の細隙灯顕微鏡所見.虹彩後癒着も認められる.Cb:ニボーの拡大図.前房蓄膿はおもに好中球により構成される.図2網膜滲出性病変と閉塞性網膜血管炎閉塞性網膜血管炎は一見,網膜静脈分枝閉塞症にも見える場合がある.図3蛍光眼底造影検査所見網膜血管からのシダ状蛍光漏出が黄斑部(Ca)および周辺網膜(Cb)に認められる.周辺網膜には静脈血管炎を認める.図4.胞様黄斑浮腫所見a:蛍光眼底造影所見.視神経乳頭の過蛍光と黄斑浮腫に特徴的な黄斑部の過蛍光所見.Cb:網膜光干渉断層計による.胞様黄斑浮腫所見.図5強い硝子体混濁の出現眼発作時や十分な消炎ができない場合には硝子体混濁がみられる.図6黄斑部発作黄斑部に滲出性病変を生じた場合には視力予後が不良であるので,とくに気をつける必要がある.図7硝子体出血所見図8終末期の網脈絡膜変性病巣カンドラインとして推奨すると報告されている22).2018年にCEULAR(EuropeanCLeagueCAgainstCRheu-matism)が報告したCBehcet病管理におけるCrecommen-dationによれば,後眼部に症状がある場合はCADAを含めた免疫抑制薬の適応となり,さらに急性期の視機能に影響を及ぼすぶどう膜炎には,高用量ステロイド,IFX,IFN-a,IVTAで治療すべきであると報告されている23).このように,多くの臨床試験の結果が報告されてきている中,Kaburagiが提唱しているようにCBehcet病治療は,局所投与・全身投与の必要性を見きわめ適切な時期に適切な量で,適切な組み合わせの薬物を使用しながら戦略的に治療を行う必要がある24).選択肢には,生物学的製剤が入ってくることが多くなるが,この薬物が万能ではないことを認識しつつ,生物学的製剤導入後も発作が再発する症例に対しては,生物学的製剤の切り替えを検討するとともにCCYAやステロイドの内服の併用も選択肢として考えるというような柔軟な対応が必要である.さらに結核やウイルス性肝炎などの感染症を増悪させる可能性が高いので,入念なスクリーニング検査と導入後もこまやかな身体観察が必要であることを認識する必要がある.おわりにBehcet病らしき病気は紀元前C5世紀には,古代ギリシャの医聖ヒポクラテスが報告し,Behcet病自体は,1937年にトルコのCBehcet教授が報告した歴史的にはとても古い病気である.免疫学の進歩により病態解明が進み,生物学的製剤などの新薬の登場により治療戦略が大きく変化するなど,古くて新しい疾患であり,今後は眼病変だけでなく,腸管型・皮膚型・皮膚粘膜病変など多くの関連診療科が協力してそれぞれの診断・治療ガイドラインが作成されていく予定である.近い将来,患者のサブグループ化と個別化医療に向けて多くのエビデンスが創出され,Behcet病がより適切に診断・治療・消炎管理できる疾患になっていくことが予想される.文献1)OhguroN,SonodaKH,TakeuchiMetal:The2009pro-spectiveCmulti-centerCepidemiologicCsurveyCofCuveitisCinCJapan.JpnJOphthalmolC56:432-435,C20122)OhnoCS,COhguchiCM,CHiroseCSCetal:CloseCassociationCofCHLA-Bw51withBehcet’sdisease.ArchOphthalmol100:C1455-1458,C19823)MeguroA,InokoH,OtaMetal:GeneticsofBehcetdis-easeCinsideCandCoutsideCtheCMHC.CAnnCRheumCDisC69:C747-754,C20104)PinetonCdeCChambrunCM,CWechslerCB,CGeriCGCetal:NewCinsightsintothepathogenesisofBehcet’sdisease.Autoim-munRevC11:687-698,C20125)MizukiN,MeguroA,OtaMetal:Genome-wideassocia-tionstudiesidentifyIL23R-IL12RB2andIL10asBehcet’sdiseasesusceptibilityloci.NatGenet42:703-706,C20106)RemmersCEF,CCosanCF,CKirinoCYCetal:Genome-wideCassociationCstudyCidenti.esCvariantsCinCtheCMHCCclassCI,CIL10,CandCIL23R-IL12RB2CregionsCassociatedCwithCBehcet’sCdisease.NatGenet42:698-702,C20107)大野重明,蕪城俊克,北市伸儀ほか;ベーチェット病眼病変診療ガイドライン作成委員会:ベーチェット病(Behcet病)眼病変診療ガイドライン.日眼会誌C116:394-426,C20128)OhnoS:E.cacy,safety,andpharmacokineticsofmultipleadministrationCofCin.iximabCinCBehcet’sCdiseaseCwithCrefractoryuveoretinitis.JRheumatol31:1362-1368,C20049)YamadaCY,CSugitaCS,CTanakaCHCetal:ComparisonCofCin.iximabCversusCciclosporinCduringCtheCinitialC6-monthCtreatmentperiodinBehcetdisease.BrJOphthalmolC94:C284-288,C201010)OkadaCAA,CGotoCH,COhnoCSCetal:MulticenterCstudyCofCin.iximabCforCrefractoryCuveoretinitisCinCBehcetCdisease.CArchCOphthalmol130:592-598,C201211)MarkomichelakisN,DelichaE,MasselosSetal:Asinglein.iximabCinfusionCvsCcorticosteroidsCforCacuteCpanuveitisCattacksinBehcet’sdisease:acomparative4-weekstudy.Rheumatology50:593-597,C201112)NiccoliL,NanniniC,BenucciMetal:Long-terme.cacyofin.iximabinrefractoryposterioruveitisofBehcet’sdis-ease:aC24-monthCfollow-upCstudy.CRheumatologyC46:C1161-1164,C200713)AccorintiCM,CPirragliaCMP,CParoliCMPCetal:In.iximabCtreatmentCforCocularCandCextraocularCmanifestationsCofCBehcet’sdisease.JpnJOphthalmol51:191-196,C200714)Ja.eCGJ,CDickCAD,CBrezinCAPCetal:AdalimumabCinCpatientsCwithCactiveCnoninfectiousCuveitis.CNEnglJMedC375:932-943,C201615)NguyenCQD,CMerrillCPT,CJa.eCGJCetal:AdalimumabCforCpreventionCofCuveiticC.areCinCpatientsCwithCinactiveCnon-infectiousCuveitisCcontrolledCbycorticosteroids(VISUALII):aCmulticentre,Cdouble-masked,Crandomised,Cplacebo-controlledphase3trial.Lancet388:1183-1192,C201616)BawazeerCA,CRa.aCLH,CNizamuddinCSHCetal:ClinicalCexperienceCwithCadalimumabCinCtheCtreatmentCofCocularCBehcetCdisease.COculCImmunolCIn.ammC18:226-232,28あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(28)’C’C’–

アクアポリン4抗体関連視神経疾患

2019年1月31日 木曜日

アクアポリン4抗体関連視神経疾患OpticNerveDiseaseRelatedtoAquaporin4Antibody木村亜紀子*はじめに視神経炎は予後良好な疾患として考えられてきたが1,2),神経眼科を専門とする医師は,古くから特発性視神経炎の中に一部,きわめて重篤な視力障害を残すもの,両眼性に急速に進行するものなど,予後不良な視神経炎が存在することを認識していた.それらは,今となっては抗アクアポリン(aquaporin:AQP)4抗体陽性視神経炎であったと考えられる.中尾ら3)はきわめて予後不良であった症例の血清を再検査し,抗CAQP4抗体陽性を確認している.現在では,抗CAQP4抗体陽性視神経炎は時期を逸することなく,早期に適切な治療を開始することで視力が守れる症例が多いことも確認されている4~6).ただし,治療時期を逸した症例に関しては,片眼の高度な視力障害にとどまらず,両眼性が多いことも忘れてはならない3,7).そのため,2014年には日本神経眼科学会が主導となり『抗CAQP4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン』が日本眼科学会誌に掲載された(表1)8).本稿では,抗CAQP4抗体陽性視神経炎とその関連疾患における診断と治療について解説する.CI視神経炎の歴史かつて,視神経炎と脊髄炎をほぼ同時期に発症する疾患を米国ではCDevic病(視神経脊髄炎,neuromyelitisoptica:NMO)9),視神経炎と脊髄炎を時間差をもって発症する疾患を,わが国では視神経脊髄炎型多発性硬化症(optic-spinalCformCofCmultiplesclerosis:OSMS)とよばれていた10,11).すなわち,Devic病と多発性硬化症(multiplesclerosis:MS)は経過の異なる疾患であるが,わが国ではCMSに属するものと考えられていたわけである.しかし,2004年,米国メイヨークリニックと東北大学の共同研究により,NMOとCOSMSには共通の自己抗体(NMO-IgG)が存在することが報告され12),翌年にはそのターゲットがアストロサイトの足突起に高密度に発現する水チャンネル蛋白であるCAQP4であることが判明した13).以降,OSMSという概念,分類は用いられなくなり,NMOとして統一された.ところが,NMOの中に,抗CAQP4抗体が陽性でありながら,視神経炎のみ,あるいは脊髄炎のみを呈する症例が多く存在することが確認され,NMOCspectrumCdisorder(NMOSD)の概念が提唱された14).すなわち,視神経炎で抗CAQP4抗体が陽性であればCNMOSDと診断できるということになる.NMO,NMOSDの診断基準をそれぞれ表2,3に示した.CII視神経炎の考え方急性視神経炎の治療トライアルの結果は,多施設共同研究の大規模スタディとして,米国CONTT(OpticNeu-ritisCTreatmentTrial)では1993年に1),わが国JONTT(JapaneseCOpticCNeuritisCTreatmentTrial)ではC1999年に報告された2).結果は両者でほぼ同様で,1年後の視力はステロイドパルス群と無治療群で有意差はなく,約C7割でC1.0以上,約C9割でC0.5以上であるとい*AkikoKimura:兵庫医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕木村亜紀子:〒663-8501兵庫県西宮市武庫川町C1-1兵庫医科大学眼科学講座C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(17)C17表1抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎診療ガイドラインにお表2NMO診断基準ける診断基準表3NMOSD診断基準(文献C8より引用)図1Swinging.ashlighttest光源を左右眼,交互に素早くC2秒くらい照らし,対光反射をみる.右視神経炎では,光を当てると散瞳し,左眼に光源を移すと右眼は縮瞳する.右眼に光源を移すと散瞳する=「左から右でCRAPD陽性」と表現する.図2眼窩MRISTIR法.冠状断左視神経が高信号に描出されている().左右で比較する.初発の場合は,造影検査を行わなくても左視神経炎と診断できる.図3眼窩MRI.冠状断,STIR法と造影T1強調画像の違いa:STIR法.右視神経は視神経周囲に高信号領域を認める.視神経実質は染まっていない().左視神経実質は淡く高信号を呈している().Cb:造影CT1強調画像.左視神経が強い増強効果を受けている().右視神経には増強効果はなく(),現在,炎症があるのは左視神経と判断する.IV抗AQP4抗体陽性視神経炎の治療(図5)視神経炎と診断がついたら,抗CAQP4抗体の結果を待たずステロイドパルス療法C1クール目を開始する.約1週間で結果が返ってくることから,抗CAQP4抗体が陰性でステロイドパルス治療が著効していれば,漸減し,終了する.抗CAQP4抗体が陽性で,ステロイドパルス療法に反応している場合はCCFFの値に注意し,30CHz以下であればパルス治療をC3回までは追加する.しかし,その後はCCFFの値に注意しながらプレドニンを漸減する.維持量をC15Cmgし,必要があれば免疫抑制薬を併用する.プレドニンの減量をはかる.抗CAQP4抗体が陽性で,ステロイドパルス療法に抵抗性の場合は,2回目のパルス療法は行わず血液浄化療法に移行する.血液浄化療法には,単純血漿交換,二重濾過膜血漿交換,免疫吸着療法のC3種類がある.大まかに,単純血漿交換は自身の血漿成分をすべて凍結血漿と入れ替え,二重濾過膜血漿交換は血漿成分の中の小分子物質量以外の中・大分子物質量を入れ替える.実際はアルブミンなどが相当量失われるため,凍結血漿での補充が必要である(単純血漿交換のC1/3~1/4).免疫吸着療法は血漿成分の中の大分子物質量のみを吸着カラムで取り除き自身の血漿が戻ってくる(凍結血漿は用いない).単純血漿交換は治療効果は高いが,患者の全身にかかる負担も大きい.どの血液浄化療法を選択するかは患者の視力の重症度(片眼性か両眼性か)なども考慮し,神経内科あるいは透析内科と相談,協力のうえ施行する.ステロイドはオフにすることなく維持量とし,早期から免疫抑制薬を開始することが推奨されている20).抗CAQP4抗体陽性視神経炎では,MSで用いられるインターフェロンCbの投与は無効,もしくは増悪させることが知られている16).中尾らは,血液浄化療法に代わり,免疫グロブリン大量静注療法(intravenousimmunoglobulin:IVIG)の有効性を報告し21),現在,難治性視神経症に対するCIVIG療法の治験が終了している.IVIG療法は血液浄化療法と異なり,点滴で施行可能で,全身合併症も重篤なものはきわめてまれなことから,眼科で施行可能であり,時期を逸することなく治療に踏み切れるため承認が待たれる治療法である.おわりにAQP4抗体がアストロサイトを標的とするのに対し,オリゴデンドロサイトを標的とするCMOG(myelinColi-godendrocyteCglycoprotein)抗体の役割が注目されている.抗CAQP4抗体が陰性であるにもかかわらず,激痛を伴い再発を繰り返す難治性視神経炎があることがわかってきた.その一つが抗CMOG抗体陽性視神経炎であり,ステロイド治療に良好な反応を示す一方,再発しやすく,再発を繰り返すことで長期的に重篤な視力障害を残す危険性があり,抗CAQP4抗体陽性視神経炎と同様に脳幹病変や脊髄病変を伴うことがあるC22,23).ステロイド漸減に伴い再発を認める抗CAQP4抗体陰性視神経炎では,とくに抗CMOG抗体陽性視神経炎を疑う必要がある.文献1)BeckRW,ClearyPA:Opticneuritistreatmenttrial.One-yearCfollow-upCresults.CArchCOphthalmolC111:773-775,C19932)WakakuraCM,CMinei-HigaCR,COonoCSCetal:BaselineCfea-turesofidiopathicopticneuritisasdeterminedbyamulti-centertreatmenttrialinJapan.OpticNeuritisTreatmentTrialMulticenterCooperativeResearchGroup(ONMRG).CJpnJOphthalmolC43:127-132,C19993)中尾雄三:視神経炎の新しい考え方“抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎”.臨眼63:1843-1848,C20094)松田隆作,毛塚剛司,松永芳径ほか:血漿交換療法により視力が改善した視神経脊髄炎の一例.眼臨紀C3:771-775,C20105)高郁嘉,後関利明,市邉義章ほか:二重膜濾過血漿交換が著効した抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎のC1例.神経眼科28:419-424,C20116)石川均:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎.日眼会誌C118:63-71,C20147)遠藤高生,不二門尚,森本壮ほか:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎の臨床調査.日眼会誌C118:751-758,C20148)三村治,不二門尚,植木智志ほか;抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン作成委員会:抗アクアポリンC4抗体陽性視神経炎診療ガイドライン.日眼会誌C118:446-460,C20149)藤原一男,宮澤イザベル,中島一郎ほか:Neuromyelitisoptica(Devic病)原典と今日的意義.神経内科C56:306-(21)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C21-

IgG4関連眼疾患

2019年1月31日 木曜日

IgG4関連眼疾患IgG4-RelatedOphthalmicDisease後藤浩*はじめに血清中の免疫グロブロリン(immunogloblinG:IgG)にはCIgG1からCIgG4の四つのサブクラスが存在するが,そのうちの一つであるCIgG4は,全CIgG量のC4%程度を占めるに過ぎない.このCIgG4を産生する形質細胞ならびにリンパ球が全身のさまざまな臓器に浸潤し(図1),腫瘤の形成や組織の肥厚をきたす原因不明の疾患がIgG4関連疾患である.時に強い線維化をきたし,さまざまな臓器に機能障害をきたす可能性もある疾患である.全身病としてのCIgG4関連疾患の概念自体は比較的最近になって知られるようになったが,以前から消化器内科領域では自己免疫性膵炎として,眼科領域ではCMiku-licz病1)として臨床診断されてきた疾患が,実はCIgG4関連疾患であることが主にわが国からの報告によって明らかにされてきた2,3).その後,膵臓や涙腺,唾液腺以外にも肝胆道系,肺,腎,前立腺,甲状腺など,さまざまな臓器に同様の腫瘤や腫大,肥厚性病変を示す症例の存在が明らかにされ,2012年にはこれらの病態を整理すべく,“IgG4関連疾患の包括診断基準”がわが国から報告された4).IgG4関連疾患はC2015年に指定難病の一つに加えられており,眼症状を契機に診断に至ることも多い本疾患については眼科医も理解を深めておく必要がある.IIgG4関連眼疾患にみられる症状IgG4関連眼疾患の典型例では,両側涙腺の腫大によって左右ほぼ対称性に上眼瞼の腫脹がみられる(図2,3).腫脹の程度はさまざまで,上眼瞼の皮下に硬結が触知されることもある.これらの症状に加え,両側唾液腺の対称性腫大を伴う症例は従来からCMikuliczによる報告1)以来,Mikulicz病と呼ばれてきたが,その後,症例の蓄積とともにCIgG4関連疾患における眼症状は涙腺の腫大のみならず,眼組織の至る所に腫瘤,腫大,肥厚性病変を生じることが明らかとなり5),これらを総称してIgG4関連眼疾患と称するようになっていった6,7).眼瞼の腫脹が緩徐に進行した場合,本人はその変化に対する自覚が乏しく,他人から「目つきが変わった」「顔貌が変わった」などと指摘され,初めて病識を持つこともある.涙腺や眼窩内の腫瘤の形成は眼球突出を生じることがあり,相対的に睫毛内反の状態になって角膜上皮障害を引き起こす可能性がある.外眼筋の肥厚は眼球運動障害による複視を,視神経周囲の腫瘤性病変は視力低下や視野障害の原因となる.涙腺の病変はドライアイの原因となり得るが,Sjogren症候群のように正常涙腺組織を著しく破壊することはまれなため,重篤になることは少ない.また,まれではあるが結膜や涙.・鼻涙管などの腫瘤性病変8)や,強膜に肥厚性病変を形成することもある9).*HiroshiGoto:東京医科大学臨床医学系眼科学分野〔別刷請求先〕後藤浩:〒160-0023東京都新宿区西新宿C6-7-1東京医科大学臨床医学系眼科学分野C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(11)C11図1IgG4関連眼疾患の病理組織像腫大下涙腺の生検組織.Ca:リンパ球と形質細胞の浸潤(ヘマトキシリン-エオジン染色).Cb:同一組織内の線維化の強い部分(ヘマトキシリン-エオジン染色).Cc:IgG陽性細胞(免疫組織化学染色).Cd:IgG4陽性細胞(免疫組織化学染色).図2両側上眼瞼の腫脹左右対称性に腫脹することが多い.図3両側上眼瞼の腫脹上方から観察すると腫脹の有無や程度の評価が容易となる.表1IgG4関連眼疾患の診断基準鑑別疾患:Sjogren症候群,リンパ腫,サルコイドーシス,多発血管炎性肉芽腫症,甲状腺眼症,特発性眼窩炎症,細菌・真菌感染による涙腺炎や眼窩蜂巣炎.注意:MALTリンパ腫はCIgG4陽性細胞を多く含むことがあり,慎重な鑑別が必要.図4両側涙腺の腫大図5外眼筋の肥厚左右対称性の涙腺の著しい腫大(MRIT1強調画像).両側の外直筋が肥厚している(MRIT1強調画像).図6三叉神経の腫大両側の眼窩上神経と涙腺の腫大(MRIT1強調画像).図7眼窩内の限局性腫瘤筋円錐内の境界明瞭な孤立性の腫瘤(MRIT2強調画像).図8眼窩内の腫瘤眼窩内を埋め尽くすびまん性の腫瘤(X線CT).図9眼瞼皮下の腫瘤両側眼瞼皮下に腫瘤がみられるが,涙腺および眼窩内に病変はない(MRIT2強調画像).14あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(14)’C-

糖尿病網膜症と全身疾患

2019年1月31日 木曜日

糖尿病網膜症と全身疾患LinksbetweenDiabeticRetinopathyandSystemicFactors佐伯忠賜朗*北野滋彦*はじめに糖尿病網膜症は異常高血糖を起点として血管透過性亢進,細小血管障害による虚血,反応性増殖性変化などを経時的にきたして生じる.おもに大血管障害の背景として知られている高血圧症や脂質異常症なども,高血糖を伴わなくても血管障害をきたしうる疾患であり,糖尿病網膜症のリスクファクターとする報告がある.そのほかに貧血や妊娠で糖尿病網膜症が修飾されることや,腎機能低下やそれに伴う全身の溢水傾向が糖尿病黄斑浮腫の増悪・遷延傾向に影響することが知られている.厚生労働省による国民健康・栄養調査によれば日本国内では推計糖尿病患者数がC740万人(2002年),950万人(2012年),1,000万人(2016年)と増加傾向にあるが,全糖尿病患者に対する糖尿病網膜症有病率は久山町研究によれば対糖尿病患者/対全体:16.9%/2.6%(1998年),15.0%/2.4%(2007年),10.3%/1.5%(2012年)と減少しており1,2),国外でもCWisconsinCEpidemiologicStudyofDiabeticRetinopathy(WESDR)などを含めた35研究(1980~2008),22,896例に対するメタ解析において,2000年以前の研究結果とC2001年以降の研究結果を比較すると,後者で有意に糖尿病網膜症の有病率が低かったとする報告3)などがある.これらからは日本や米国では糖尿病患者における糖尿病網膜症有病率が減少傾向にあることがうかがえ,糖尿病治療や合併症治療の進歩を反映している可能性がある.本稿では糖尿病網膜症に影響しうる全身因子および治療法について,過去の報告を踏まえて記載する.CI血糖1.過去の研究成果糖尿病網膜症に強く影響する全身因子として,当然ながら血糖値があげられる.WESDRによる報告4)では,1980~1982年の時点でのCHbA1c値の高低によって,その後C1984~1986年およびC1990~1992年のCfollowup時における糖尿病網膜症の増悪率や増殖糖尿病網膜症発症率が有意に異なることを報告している.具体的には試験開始時点のCHbA1c値が全体の高いほうからC25%に属した群と,低いほうからC25%に属した群とで比較し,30歳以下で糖尿病を発見された若年群においてはCEarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)によるC13等級の網膜症病期分類5)で評価した場合に網膜症増悪の相対危険度がC2.9,そのC95%信頼区間がC2.3~3.5,30歳を超えて糖尿病を発見された非若年群でインスリン療法を行っている群においては相対危険度がC2.1,95%信頼区間がC1.6~2.8,同じくインスリン療法を行っていない群においては相対危険度がC4.3,95%信頼区間が3.0~6.2,増殖糖尿病網膜症に至る相対危険度が若年群においてC7.1,95%信頼区間がC4.6~11.1,非若年群における相対危険度がC13.1,95%信頼区間がC4.8~39.5で,いずれもCHbA1c値が高いほうが有意に(p<0.005)リスクが高かったと報告され,1型C2型ともに,そして若年発症(発見)か否かにかかわらず糖尿病網膜症に対す*TadashiroSaeki&*ShigehikoKitano:東京女子医科大学糖尿病センター眼科〔別刷請求先〕佐伯忠賜朗:〒162-0054東京都新宿区河田町C8-1東京女子医科大学糖尿病センター眼科C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(3)C3図1血糖コントロールと糖尿病網膜症発症および増悪の経時変化1型C2型を問わず,血糖コントロールの良好な群が有意に累積網膜症発症・増悪率が少なかった.Ca,b:1型に対するCDCCTの報告(文献C6より改変引用).Cc,d:2型糖尿病に対するCJDCSの報告(文献C9より改変引用).膜症の発症や増悪をきたしにくいことが,高いレベルのエビデンスで示されていると考えることができる(図1).2013年に熊本宣言によって改訂された血糖コントロールの新基準では,HbA1c(NGSP以下同)値のC6.0%未満を「副作用なく達成可能な場合の理想的な治療目標」とし,7.0%未満を「糖尿病合併症抑制のために推奨される治療目標」,さらにC8.0%未満を「すべての患者が達成すべき治療目標」と設定しており10),糖尿病網膜症の観点からも大まかな血糖治療目標として有用と思われる.C2.糖尿病治療薬の影響前述のように血糖コントロールが良好なほうが糖尿病網膜症の発症や増悪をきたしにくいことは明らかであるが,糖尿病治療薬の中には本来の作用である血糖下降作用とは別の作用として,糖尿病網膜症の進行抑制効果が示唆されているものがある.最近では血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴン分泌抑制をおもな作用とする経口血糖降下薬であるCdipeptidylCpeptidase-4(DPP-4)阻害薬に関して,メトホルミンないしスルホニル尿素薬投与群に比してCDPP-4阻害薬投与群では,ETDRS網膜症病期分類を用いた進行有無判定において有意に網膜症の進行が少なかったとする報告11)がある.また,ビグアナイド薬であるメトホルミンに関してはCUKPDS,3412)において,2型糖尿病患者に対して他の治療法に比べて糖尿病関連死亡率をC42%(95%信頼区間C9~63,p=0.017),全死因死亡率をC36%(95%信頼区間C9~55,Cp=0.011)減らすなど,血糖下降効果そのものによる以上の合併症リスク軽減効果が示されているが,マウスレベルではCinvitro,invivoともに網膜血管に対して抗血管新生および抗炎症作用をもち,糖尿病網膜症に対しても血糖降下を介さない機序による抑制効果が報告13)されている.まだ不明な点も多いが,これらのような知見がもととなって,将来的に内服薬としての糖尿病網膜症治療薬が創薬される可能性も否定できない.II高血圧症1.過去の研究成果UKPDS,C6914)によれば,高血圧症を有するC2型糖尿病患者において,平均血圧C144/82CmmHgの厳格治療群758例のほうが平均血圧C154/87CmmHgの非厳格治療群390例よりも,4.5年およびC7.5年間の観察期間でETDRS糖尿病網膜症病期分類におけるC2段階以上の増悪をきたした率が有意に低かったと報告されている(相対危険度C0.75,p=0.02およびC0.66,p<0.001)(表1).一方,ActiontoControlCardiovascularRiskinDia-betes(ACCORD)studyのサブ解析であるCACCORDCEyeCstudy15)(集中治療群で収縮期血圧の中央値がC117mmHg,標準治療群で同C133CmmHg)においては,4年間の追跡で糖尿病網膜症の増悪(ETDRS糖尿病網膜症病期分類5)におけるC3段階以上の増悪,ないし網膜光凝固または硝子体手術を要する増殖性糖尿病網膜症の発症)率に有意差を認めなかったと報告されている(調整オッズ比C1.23,95%信頼区間,0.84~1.79,p=0.29).CACCORDCEyeCstudy15)で有意差を検出できなかった要因として,一つには,UKPDS,6914)よりも低い血圧のC2群を対照としていることが考えられ,もう一つには網膜症増悪の判定により高い閾値(ETDRS糖尿病網膜症病期分類5)2段階以上に対してC3段階以上)を用いていることが考えられる.後者の要因に関しては実際,CUKPDS,C6914)においてもC3段階以上で増悪有無を判定した場合の血圧厳格治療群と非厳格治療群の網膜症増悪相対危険度は観察期間C4.5年でC0.75,p=0.06,同じく7.5年でC0.61,p<0.001と報告され,群間有意差が検出されにくい傾向がうかがわれる.C2.高血圧治療薬の影響アンジオテンシン受容体拮抗薬のカンデサルタンを用いてC1型糖尿病の糖尿病網膜症発症予防効果(DIRECT-Prevent1)および増悪抑制効果(DIRECT-Protect1)を16),また同じく軽症ないし中等度の網膜症を有するC2型糖尿病に対する網膜症増悪抑制効果(DIRECT-Pro-tect2)17)をプラセボと比較検討した報告がある.Pre-ventC116)では網膜症なしからの発症変化も含めて(5)あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C5表1高血圧治療と糖尿病網膜症判定所見無作為割付7.5年後の対象症例数判定所見を認めた症例数相対危険度99%信頼区間p値血圧厳格治療群非厳格治療群血圧厳格治療群(率)非厳格治療群(率)5カ所以上の毛細血管瘤348例172例102例(C29.3%)77例(C44.8%)C0.660.48~C0.90<C0.001硬性白斑340例169例48例(C14.1%)45例(C26.6%)C0.530.33~C0.85<C0.0011カ所以上の軟性白斑340例169例59例(C17.4%)55例(C32.5%)C0.530.35~C0.81<C0.001ETDRS基準で2段階以上悪化300例152例102例(C34.0%)78例(C51.3%)C0.660.50~C0.89C0.001UKPDSによれば,厳格な血圧治療を併施した群が,非厳格な群よりも糖尿病網膜症増悪リスクが相対的に低かった.(文献C14,図C1~4より抜粋引用)====表2脂質異常治療(フェノフィブラート薬)と糖尿病網膜症全症例黄斑症あり増殖網膜症網膜症歴なし網膜症歴あり偽薬群の網膜光凝固施行症例数(率)238例(C4.9%)167例(C3.4%)108例(C2.2%)125例(C2.6%)113例(C2.3%)実薬群の網膜光凝固施行症例数(率)164例(C3.4%)115例(C2.3%)75例(1C.5%)77例(1C.6%)87例(1C.8%)ハザード比C0.69C0.69C0.7C0.61C0.77フェノフィブラート薬による相対リスク減少率%(95%信頼区間)31(16~44)31(13~46)30(7~48)39(18~54)23(C.1~42)フェノフィブラート薬による絶対リスク減少率%(95%信頼区間)1.5(C0.7~C2.3)1.1(C0.4~C1.7)0.7(C0.1~C1.2)1.0(n/a)0.53(n/a)p値C0.0002C0.002C0.015C0.0008C0.06脂質異常治療にフェノフィブラートを用いることで,網膜光凝固治療を要するリスクが軽減された.(文献C21,図C2,3より改変引用)====表3妊娠と糖尿病網膜症非妊娠症例妊娠症例オッズ比95%信頼区間p値全体網膜症増悪症例(率)全体網膜症増悪症例(率)短期の影響(妊娠前C6~C12カ月との比較)強化インスリン療法群2,950例5,605例693例(23%)124例1,742例(31%)73例39例(31%)C1.6237例(51%)C2.541.01~C2.591.59~C4.03<C0.05<C0.001従来インスリン療法群長期の影響(6C.5年後Cstudy終了時)強化インスリン療法群249例246例28例(1C.2%)94例74例(3C0.1%)84例9例(9C.6%)C0.8422例(C26.2%)C0.820.38~C1.840.47~C1.44>C0.05>C0.05従来インスリン療法群妊娠によって血糖コントロールが悪化しなくとも短期の網膜症増悪を認めたが,長期予後は妊娠有無で差がなかった.(文献C27,表C3,7より改変引用)===lenceofretinopathyinaJapanesepopulation:theHisaya-maStudy.DiabetologiaC47:1411-1415,C20042)MukaiCN,CYasudaCM,CNinomiyaCTCetal:ThresholdsCofCvariousCglycemicCmeasuresCforCdiagnosingCdiabetesCbasedConprevalenceofretinopathyincommunity-dwellingJapa-nesesubjects:theCHisayamaCStudy.CCardiovascCDiabetolC13:45,C20143)YauJW,RogersSL,KawasakiRetal:GlobalprevalenceandCmajorCriskCfactorsCofCdiabeticCretinopathy.CDiabetesCCareC35:556-564,C20124)KleinCR,CKleinCBE,CMossCSECetal:RelationshipCofChyper-glycemiaCtoCtheClong-termCincidenceCandCprogressionCofCdiabeticCretinopathy.CArchCInternCMedC154:2169-2178,C19945)FundusCphotographicCriskCfactorsCforCprogressionCofCdia-beticretinopathy.ETDRSreportnumber12.EarlyTreat-mentCDiabeticCRetinopathyCStudyCResearchCGroup.COph-thalmologyC98:823-833,C19916)Thee.ectofintensivediabetestreatmentontheprogres-sionCofCdiabeticCretinopathyCinCinsulin-dependentCdiabetesCmellitus.CTheCDiabetesCControlCandCComplicationsCTrial.CArchOphthalmolC113:36-51,C19957)KohnerCEM,CAldingtonCSJ,CStrattonCIMCetal;UnitedCKingdomCProspectiveCDiabetesCStudy,30:diabeticCreti-nopathyCatCdiagnosisCofCnon-insulin-dependentCdiabetesCmellitusCandCassociatedCriskCfactors.CArchCOphthalmolC116:297-303,C19988)StrattonCIM,CKohnerCEM,CAldingtonCSJCetal;UKPDS50:riskfactorsforincidenceandprogressionofretinopa-thyinTypeIIdiabetesover6yearsfromdiagnosis.Dia-betologiaC44:156-163,C20019)KawasakiR,TanakaS,YamamotoTetal:IncidenceandprogressionCofCdiabeticCretinopathyCinCJapaneseCadultswithtype2diabetes:8yearfollow-upstudyoftheJapanDiabetesComplicationsCStudy(JDCS)C.CDiabetologiaC54:C2288-2294,C201110)日本糖尿病学会:糖尿病治療ガイド2018-2019.p.29,文光堂,201811)ChungCYR,CParkCSW,CKimCJWCetal:ProtectiveCe.ectsCofCdipeptidylpeptidase-4inhibitorsonprogressionofdiabet-icCretinopathyCinCpatientsCwithCtypeC2Cdiabetes.CRetinaC36:2357-2363,C201612)E.ectCofCintensiveCblood-glucoseCcontrolCwithCmetforminConcomplicationsinoverweightpatientswithtype2diabe-tes(UKPDSC34)C.CUKCProspectiveCDiabetesStudy(UKPDS)CGroup.LancetC352:854-865,C199813)HanCJ,CLiCY,CLiuCXCetal:MetforminCsuppressesCretinalCangiogenesisCandCin.ammationCinCvitroCandCinCvivo.PLoSCOneC13:e0193031,C201814)MatthewsCDR,CStrattonCIM,CAldingtonCSJCetal:RisksCofCprogressionofretinopathyandvisionlossrelatedtotightbloodCpressureCcontrolCinCtypeC2Cdiabetesmellitus:(9)UKPDS69.ArchOphthalmolC122:1631-1640,C200415)ChewCEY,CAmbrosiusCWT,CDavisCMDCetal:E.ectsCofCmedicalCtherapiesConCretinopathyCprogressionCinCtypeC2Cdiabetes.NEnglJMedC363:233-244,C201016)ChaturvediN,PortaM,KleinRetal:E.ectofcandesar-tanConCprevention(DIRECT-Prevent1)andCprogression(DIRECT-Protect1)ofCretinopathyCinCtypeC1diabetes:Crandomised,Cplacebo-controlledCtrials.CLancetC372:1394-1402,C200817)SjolieCAK,CKleinCR,CPortaCMCetal:E.ectCofCcandesartanConCprogressionCandCregressionCofCretinopathyCinCtypeC2diabetes(DIRECT-Protect2):arandomisedplacebo-con-trolledtrial.LancetC372:1385-1393,C200818)DavisMD,FisherMR,GangnonREetal:Riskfactorsforhigh-riskCproliferativeCdiabeticCretinopathyCandCsevereCvisualloss:EarlyCTreatmentCDiabeticCRetinopathyCStudyCReport#18.InvestOphthalmolVisSciC39:233-252,C199819)ChewCEY,CKleinCML,CFerrisCFLC3rdCetal:AssociationCofCelevatedCserumClipidClevelsCwithCretinalChardCexudateCinCdiabeticCretinopathy.CEarlyCTreatmentCDiabeticCRetinopa-thyStudy(ETDRS)ReportC22.CArchCOphthalmolC114:C1079-1084,C199620)KeechCA,CSimesCRJ,CBarterCPCetal:E.ectsCofClong-termCfeno.bratetherapyoncardiovasculareventsin9795peo-pleCwithCtypeC2Cdiabetesmellitus(theCFIELDstudy):Crandomisedcontrolledtrial.LancetC366:1849-1861,C200521)KeechCAC,CMitchellCP,CSummanenCPACetal:E.ectCofCfeno.brateConCtheCneedCforClaserCtreatmentCforCdiabeticretinopathy(FIELDstudy):arandomisedcontrolledtrial.LancetC370:1687-1697,C200722)NielsenCSF,CNordestgaardBG:StatinCuseCbeforeCdiabetesCdiagnosisandriskofmicrovasculardisease:anationwidenestedCmatchedCstudy.CLancetCDiabetesCEndocrinolC2:C894-900,C201423)KatsuraCY,COkanoCT,CMatsunoCKCetal:ErythropoietinCisChighlyelevatedinvitreous.uidofpatientswithprolifera-tiveCdiabeticCretinopathy.CDiabetesCCareC28:2252-2254,C200524)WatanabeD,SuzumaK,MatsuiSetal:Erythropoietinasaretinalangiogenicfactorinproliferativediabeticretinop-athy.NEnglJCMedC353:782-792,C200525)ZhangCJ,CWuCY,CJinCYCetal:IntravitrealCinjectionCofCerythropoietinprotectsbothretinalvascularandneuronalcellsinearlydiabetes.InvestOphthalmolVisSciC49:732-742,C200826)KleinCBE,CMossCSE,CKleinR:E.ectCofCpregnancyConCpro-gressionofdiabeticretinopathy.DiabetesCareC13:34-40,C199027)E.ectofpregnancyonmicrovascularcomplicationsinthediabetesCcontrolCandCcomplicationsCtrial.CTheCDiabetesCControlandComplicationsTrialResearchGroup.DiabetesCareC23:1084-1091,C2000あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019C9

序説:全身疾患と眼:新しい疾患概念による眼科診療の新展開

2019年1月31日 木曜日

全身疾患と眼:新しい疾患概念による眼科診療の新展開EyeDiseaseRelatedtoSystemicDisorder:NewTreatmentConsensusArisingfromRecentDiseaseCriteria園田康平*山下英俊**全身疾患と関連のある眼科疾患の診療では,全身状態を把握し,全身因子を含めて対処することがきわめて重要である.近年の医学の進歩により疾患概念や治療戦略が大きく変化している疾患をまとめたうえで,診療ガイドラインも踏まえながら眼科医として知っておくべき事を整理しておく必要があると考え,今回の特集を企画した.本特集では,とくに日常診療において遭遇する可能性の高い疾患への対処について最新の知識を提供することを念頭に組み立てを行った.糖尿病網膜症は,失明に直結する増殖網膜症のマネージメントがよくなり格段に視力予後が改善した.OCTの普及により早期に黄斑浮腫が診断され,抗VEGF治療により多くのケースで良好な視機能が温存できるようになった.一方,抗VEGF治療に抵抗する症例が存在することも明らかになり,その同定と個別化医療が次のテーマとなっている.最新の網膜症と全身因子関連の知見を,東京女子医科大学糖尿病センターの佐伯忠賜朗先生,北野滋彦先生に解説いただいた.IgG4関連疾患は,IgG4陽性形質細胞の浸潤によりさまざまな臓器に不調を起こす疾患である.わが国から包括的診断基準が報告され,近年眼病変に対する診断基準も整備された.この分野の第一人者である東京医科大学の後藤浩先生に鑑別診断や治療方針を含めて解説いただいた.アクアポリン4抗体関連視神経疾患は臨床像が明らかになり,抗体検査が一般化されたことで広く認識されるようになった.特発性視神経炎の10%に本抗体が陽性で,高率に視神経脊髄炎に進展することから,その病態治療をきちんと理解しておくことが求められる.兵庫医科大学の木村亜紀子先生にまとめていただいた.ベーチェット病は未だ原因不明の難病であるが,好中球が異常に活性化される「自己炎症疾患」であることは間違いない.近年自己炎症疾患に対して概念が整理され,リンパ球が優位である「自己免疫疾患」と区別して考えられるようになってきた.抗TNF治療が劇的な予後改善をもたらしており,その早期診断と治療導入時期について適切な知識が求められる.大阪大学の橋田徳康先生にわかりやすく解説していただいた.炎症性腸疾患,強直性脊椎炎,皮膚炎症疾患では,しばしば急性前部ぶどう膜炎を合併する.急性前部ぶどう膜炎は近年の統計ではぶどう膜炎原因疾患の上位にくることが多く,診断と治療の多様性を理解しておく必要がある.山形大学の金子優先生,神戸大学の楠原仙太郎先生,山口大学の内翔*KoheiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野**HidetoshiYamashita:山形大学医学部眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(1)1平先生,柳井亮二先生に各疾患の特性とぶどう膜炎の特徴を踏まえた治療について,解説していただいた.悪性リンパ腫はさまざまな病型を呈するが,転移性のリンパ腫もあれば眼原発の場合もあり,全身科と密接に連携をとりながら治療を進める必要がある.なかでも仮面症候群の代表である眼内悪性リンパ腫は,近年早期発見・早期積極治療が行われるようになり著しく視力予後・生命予後が改善した.高齢者の原因不明ぶどう膜炎に対する対応も併せて,九州医療センターの武田篤信先生に解説していただいた.今回の特集によって,全身因子が密に眼疾患の診断と治療に関連する疾患の診療における眼科の役割を明らかにし,めまぐるしく変化する(内科,皮膚科,整形外科など)関連診療科との診療連携について,必要な知識をわかりやすくまとめることができたと思う.連携診療科からの紹介状・返書のやりとりにも,本企画を役立てていただければ幸いである.眼は生体現象を直接観察できる唯一の臓器であり,眼科的所見が全身病診断のきっかけになることも多い.「眼は全身の窓」であり,眼科診療は患者の全身治療にも繋がっていることを,眼科医自身肝に銘じて診療に当たる必要がある.2あたらしい眼科Vol.36,No.1,2019(2)