●連載219監修=岩田和雄山本哲也219.OCTによる乳頭周囲脈絡大久保真司おおくぼ眼科クリニック/金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学網膜萎縮解析宇田川さち子金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学従来,乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)と近視性コーヌスの鑑別は,臨床的に重要にもかかわらず,検眼鏡的には困難とされてきた.しかし,組織学的には鑑別可能とされ,近年,OCTにより臨床的に同定可能となり,CPPAb域とCPPACg域に分類されるようになった.臨床的には,従来のCPPAがCPPACb域に,近視性コーヌスがCPPAg域に対応する.C●乳頭周囲脈絡網膜萎縮と近視性コーヌス乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillaryCatrophy:PPA)は,健常者に比して緑内障眼で高頻度にみられ,その面積も大きいと報告されている1).PPAの面積は,視野指標のCmeanCdeviation(MD)とCcorrectedCpatternstandarddeviation(CPSD)によく相関し,PPAの存在の有無と緑内障の進行が関連し,緑内障の視野障害の進行に従ってCPPAも拡大すると報告されており2),PPAは緑内障性視神経障害に必ずしも特異的な変化ではないとしても,乳頭部のなんらかの脆弱性を示唆する所見と考えられている2,3).従来,検眼鏡的にはCPPAは視神経乳頭に近いCPPACb域とその周辺にあるCPPACa域に分類され,PPACa域は色素のムラとされ,PPACb域はその内側の強膜や脈絡膜血管の透見性が亢進している部位とされてきた.PPACa域はほとんどすべての正常眼においてもみられるが,PPACb域は正常眼ではC15~20%程度にしかみられないとされている.緑内障眼では,CPPAa域もCPPACb域も正常眼に比べて有意に広がりが大きく,加えてCPPACb域の頻度は正常眼に比べて高いとされている.したがってCPPAのなかでも,とくにCPPAb域は病的意義が大きい4).一方,従来CPPAと近視眼における近視性コーヌスの鑑別は検眼鏡的には困難であるとされてきたが,とくにわが国では近視眼が多く,さらに近視が緑内障のリスクファクターのひとつとされており,その鑑別は臨床的に重要である.PPAが加齢性変化および緑内障性変化に伴う変化であるのに対して,近視性コーヌスは眼軸長の延長に伴う変化と考えられてきた.摘出眼による組織学的検討では,緑内障眼のCPPACb域にはCBruch膜が存在するが,高度近視眼にみられる近視性のコーヌスの部位にはCBruch膜が存在せず,両者は組織学的に異なることが報告されている5).しかし,臨床的には組織を見ることはできず,両者の鑑別は困難であった.C(91)●OCTを用いたPPAの分類2012年にCJonasらは,これまでのCPPACb域は,Bruch膜端から乳頭縁までのCPPACg域と,Bruch膜端から網膜色素上皮(retinalCpigmentCepithelium:RPE)端までのCPPACb域に組織学的に分類可能であると報告した6).すなわち,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)で見てCBruch膜が存在しないCPPACg域が,従来の組織学的にCBruch膜が存在しない近視性のコーヌスに対応し,OCTでCBruch膜が存在するCPPACb域が,従来の組織学的にもCBruch膜が存在する緑内障に関連するとされるCPPACb域に対応することになる.臨床的には検眼鏡では鑑別が困難であったので,従来のCPPAb域はCPPACg域とCPPACb域が合わさったものであった.OCTではCBruch膜端やCRPE端が同定可能であるので,OCTを用いれば,組織を採らなくてもCPPACb域とCPPACg域の分類が可能になった(図1).C●PPAg域とPPAb域の解析と近視と緑内障の関係OCTでCPPACg域とCPPACb域が分類可能であることより,それに基づいた研究が報告されている.Kimら7)は,CPPAb域をCOCTにてCBruch膜の有無で分類し,PPACb域(Bruch膜のあるCPPACb域)のある眼は,PPACb域がない眼やCPPACg域(Bruch膜のないCPPACb域)のある眼に比べて網膜神経線維層厚の菲薄化速度が速かったことを報告している.また,ViannaJRら8)は近視緑内障眼と近視コントロール眼でCPPACg域とCPPACb域を比較し,CPPAb域は近視緑内障眼で近視コントロール眼に比べて有意に大きく,PPACg域は近視緑内障眼で近視コントロール眼に比べて有意に小さいが,その分布は両群で大きくオーバーラップすることを報告している.OCTを用いたCPPAの分類により,今後,近視と緑内障の関係が飛躍的に明らかになることが期待される.あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C12470910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1左開放隅角緑内障眼(59歳,女性)屈折:円柱レンズ-2.75D,円柱レンズ-0.25DCAx50°.眼軸長:24.46Cmm.Ca:乳頭写真.眼底写真ではCPPACg域とCPPACb域を識別することは困難と思われる.b:SpectralisCOCT(HeidelbergCEngineering社)の乳頭周囲絡膜網脈萎縮(PPA)解析ソフトによる乳頭解析のCBスキャン画像のC1枚.水色線が臨床的乳頭縁の位置である.赤点はCBruch膜端.青点線は網膜色素上皮端.赤両矢印が,PPACg域(Bruch膜が含まれない),青両矢印はCPPACb域(Bruch膜が含まれる)を示す.OCTにてCPPACg域とCPPACb域の同定が可能である.c:PPA解析結果.PPACg域(赤色の部分)の面積はC1.23CmmC2,PPACb域(紫色の部分)の面積はC3.87CmmC2と表示される.文献aryCangleCclosureCglaucoma.CBrCJCOphthalomolC82:286-289,C19981)JonasCJB,CBuddeCWM,CPanda-JonasCS:OphthalmoscopicC6)JonasCJB,CJonasCSB,CJonasCRACetCal:ParapapillaryCatro-evaluationoftheopticnervehead.SurvOphthalmolC43:Cphy:histologicalCgammaCzoneCandCdeltaCzone.CPlosCOneC293-320,C20097:e47237,C20122)UchidaCH,CUgurluCS,CCaprioliCJ:IncreasingCperipapillaryC7)KimCYW,CLeeCEJ,CKimCTWCetCal:MicrostructureCofCatrophyisassociatedwithprogressiveglaucoma.COphthal-b-zoneCparapapillaryCatrophyCandCrateCofCretinalCnerveCmologyC105:1542-1545,C1998.berlayerthinninginprimaryopen-angleglaucoma.Oph-3)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内thalmologyC121:1341-1349,C2014障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20188)ViannaJR,MalikR,DanthurebandaraVMetal:Betaand4)JonasJB:ClinicalimplicationsofperipapillaryatorophyingammaCperipapillaryCatrophyCinCmyopicCeyesCwithCandCglaucoma.CurrOpinOphthalmolC16:84-88,C2005withoutCglaucoma.CInvestCOphthalmolCVisCSciC57:3103-5)DichtlCA,CJonasCJB,CNaumannCGO:HistomorphometryCofC3111,C2016Ctheopticdiscinhighlymyopiceyeswithabsolutesecond-1248あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018(92)C