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写真:角膜染血症と前眼部光干渉断層像

2018年7月31日 火曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦410.角膜染血症と前眼部光干渉断層像福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①円形の角膜内皮面の混濁②毛様充血C図1角膜染血症の前眼部写真角膜輪部に沿った茶色の円形混濁を角膜深部に認める.最周辺部は透明で,虹彩が確認できる.60CmmHgを超える高眼圧による強い毛様充血を認める.C図3前眼部光干渉断層像a:隅角部.周辺虹彩前癒着を認める.沈着領域は角膜後面約C100Cμm程度が黒く抜け落ち,後方も影となっている(.).Cb:gonioscopicview.角膜最周辺部は混濁がなく,混濁に一致して円形に虹彩が影になっていることがわかる(*).(77)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C9270910-1810/18/\100/頁/JCOPY角膜染血症は,長期間残存する前房出血と眼圧上昇が生じた際の合併症の一つである.外傷性前房内出血の2~11%1,2)に認める.初期には鉄サビのような赤い色調を呈しているが,時間経過により徐々に灰色がかった色調に変化する.角膜混濁は,角膜周辺部から中央部に向かって透明化していくことが多い.経過観察による完全消失もあるが,2~3年という長期間を要することが多く,永続的な角膜混濁を残すこともある.疾患としては,出血性緑内障,中心性網膜静脈閉塞症,眼内腫瘍と関連があるとの報告がある.角膜染血症に至る危険因子としては,大量の前房出血,再出血,角膜内皮機能不全があると報告されている.家兎を用いた角膜染血症動物モデルによると,発症初期に赤色調を呈している角膜染血症は時間経過(晩期)とともに茶色調に変化する.組織学的には,発症初期には角膜後部の細胞外ヘモグロビン粒子の沈着を認め,晩期にはケラトサイト細胞内のヘモジデリンの沈着と細胞内外のヘモグロビン粒子の沈着を認める.ヘモグロビンは初期にはオキシヘモグロビンという形で存在し,晩期にはメトヘモグロビンに変化している.両時期にポルフィリンも沈着している.角膜染血症では均一に角膜内皮細胞変性が起こり,ケラトサイトがヘモグロビン分解に積極的に関与しているようである3).角膜染血症の予防としては,まず前房出血を遅滞なく,十分に洗浄することである.眼圧がC26CmmHg以上でC6日続く前房出血が角膜染血症と関連があるため,6日経過しても前房出血が半分以下まで吸収分解されない際は,積極的な洗浄が必要と提唱されている4).すでに形成された角膜染血症は自然軽快するのを待つしかない.近年,低分子量で鉄のキレート剤であるサラセミアの治療薬デフェリプロンの点眼治療で改善が認められたとの報告があり,今後の治療薬として期待される5).今回,角膜染血症の前眼部写真(図1,2)と前眼部光干渉断層計CCASIA(SS-1000,トーメーコーポレーション)の像を提示した(図3).進達度の高い長波長である1,310Cnmを光源として用いているが,角膜後面付近約100Cμmは黒く抜けていた.おそらく沈着物の何かが光を吸収もしくは散乱したと推察され,角膜より深い部分に関しても影となり,観察が困難であった.これらのメカニズムは未だに不明であるが,ポルフィリン,オキシヘモグロビン,メトヘモグロビンのいずれかが原因であると考えられる.文献1)BrodrickJD:Cornealbloodstainingafterhyphaema.BrJOphthalmolC56:589-593,C19722)ShammasHF,MattaCS:Outcomeoftraumatichyphema.AnnOphthalmolC7:701-706,C19753)GottschJD,MessmerEP,McNairDSetal:Cornealbloodstaining:AnCanimalCmodel.COphthalmologyC93:797-802,C19864)ReadCJ:TraumaticChyphema:surgicalCvsCmedicalCman-agement.AnnOphthalmolC7:659-662,C664-666,C668-670,C19755)ChanT,WhiteA,MeadesKetal:Noveltopicaltherapyforcornealbloodstaining.ClinCExpOphthalmolC45:416-418,C2017C

時の人

2018年7月31日 火曜日

島根大学医学部眼科学教室教授たにとまさき谷戸正樹島根大学医学部は2003年(平成15年)に旧・島根医科大学と旧・島根大学が統合して生まれた新しい学部である.しかし,前身である旧・島根医科大学時代にさかのぼってみてみると,医学部創設は1975年(昭和50年),眼科学講座開講はやや遅れて1979年(昭和54年)であり,すでに40年近い歴史がある.眼科学講座初代教授・瀬戸川朝一先生の時代は,教授以下,医局スタッフ全員が鳥取大学から着任した先生で構成されていた.1998年(平成10年)に第二代教授となった大平明弘先生は長崎大学から着任.そして,本年4月,ついに教室生え抜きの教授が誕生した.第三代教授,谷戸正樹先生である.*谷戸先生は1971年生まれの47歳.1990年に島根県立三刀屋高校を卒業,旧・島根医科大学に入学した.そして,6年次の臨床実習で瀬戸川教授に誘われたことが決め手となって眼科を志望することに.なんでも,教授と差し向かいでお酒を飲みながら,じっくり口説かれたらしい.1996年の卒業後は同大眼科に入局し,臨床の腕を磨くと同時に研究にも打ち込んだ.2003年には島根医科大学にて医学博士の学位を授与されている.また,この間に京都大学大学院の特別研究学生としても研鑽を積んだ.京都時代の生活の面倒を見てくれたのは,宇治にある千原眼科医院の千原悦夫先生で,その影響で緑内障診療を手掛けるようになったという.これがライフワークである眼圧ストレスの研究の出発点となった.2003年には日本学術振興会特別研究員(PD)にも選ばれ,将来を嘱望される研究者として研究に邁進する.大平教授の差配で京都大学ウイルス研究所・淀井淳司教授の研究室に国内留学して取り組んだのは,レドックス制御因子チオレドキシンと光酸化ストレスによる網膜障害の研究である.光ストレスによる網膜変性は,谷戸先生のもう一つの大きな研究テーマである.*谷戸先生のモットーは「理論に裏付けられた実践(臨床)と,実践を行うための理論(研究)の両者を大切にすること」である.臨床医,術者としての谷戸先生の力量は,本年3月まで眼科部長として在職していた松江赤十字病院でも大いに発揮されてきた.日常診療はもとより,低侵襲の術式の考案,専用器具の発明・改良,画像・映像を利用した診断や手術手技の普及,後進の指導など,その活躍は多方面に及ぶ.4月の教授就任以降は,臨床,研究,教育に加え,島根県全体の眼科医療の向上も常に考えていかなければならない立場である.谷戸先生は「島根型眼科総合医」育成構想を練っている.極度に細分化した専門分野の弊害と県内の医師偏在・地域間格差の拡大を克服すべき課題と明確に位置づけ,その解決をはかるために,「少なくとも二つのサブスペシャリティーを有した眼科医の育成」と「医師の適正配置と,医師の多様性を重視した人材育成」を大きな柱とする構想である.鍵となるのは,「多様性の重視」であろう.各人各様の考え方,働き方を生かし,男女,勤務医・開業医に関係なくワーク・ライフ・バランスをとれるようにすることが,これからの眼科医育成には不可欠であるという.医師だけではない.教室員やその他のスタッフ(看護師,視能訓練士,事務員)それぞれが,自分で考え自律的に行動できる組織を作りたい,そのうえで適切な権限の委譲を進めて,自分自身は組織の方向性を示す役割を担いたいと谷戸先生は考えている.谷戸先生は,飲み会・宴会は声がかかれば可能な限り参加することにしているとか.学生時代の瀬戸川教授とのエピソードからもうかがえるように,お酒はけっしてお嫌いではなさそうである.「飲みニケーション」も活用しながら(?),多くの人々を巻き込んで,谷戸構想がいま,動き出した.(75)あたらしい眼科Vol.35,No.7,20189250910-1810/18/\100/頁/JCOPY

マイボーム腺機能不全とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子マイボーム腺機能不全とドライアイMeibomianGlandDysfunctionandDryEye福岡詩麻*有田玲子**Iマイボーム腺とはマイボーム腺は皮脂腺の一種で,眼瞼の瞼板の中に垂直に走る長い導管と多数の腺房からなる.導管の数は,上C25~30本,下C15~20本程である.マイボーム腺開口部は,正常眼では眼瞼縁の睫毛より結膜側に並んでいる.マイボーム腺が分泌する脂(meibum)は,涙液の油層を形成し,涙液の過剰な蒸発の抑制,涙液安定性の促進,涙液の眼表面への伸展の促進などの働きをしている1).CIIマイボーム腺機能不全とはマイボーム腺の機能に異常をきたした状態が,マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)である.MGDワーキンググループによる定義を表1に示す1).マイボーム腺に発生する疾患としては,霰粒腫,内麦粒腫などがあるが,これらは局所的な疾患であるのに対し,MGDはマイボーム腺がびまん性に障害されている.MGDは眼不快感,眼乾燥感などの自覚症状を伴う.マイボーム腺の機能が低下するタイプ(分泌減少型)と亢進するタイプ(分泌増加型)に大きく分類される.分泌減少型CMGDのほうが,分泌増加型よりも症例数が多い.分泌減少型CMGDでは,マイボーム腺からのCmeibumの分泌が低下し,涙の蒸発が亢進し,涙の安定性が低下する.MGDワーキンググループによる分泌減少型表1MGDワーキンググループによるマイボーム腺機能不全の定義1)(文献C1より引用)表2MGDワーキンググループによる分泌減少型マイボーム腺機能不全の診断基準1)(文献C1より引用)MGDの診断基準を表2に示す1).分泌減少型CMGDの診断に必要な項目は,1)自覚症状,2)マイボーム腺開口部周囲異常所見,3)マイボーム腺開口部閉塞所見である.これらC3項目をすべて満たす場合,分泌減少型MGDと診断される.C*ShimaFukuoka:大宮はまだ眼科西口分院,東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能講座眼科学**ReikoArita:伊藤医院〔別刷請求先〕福岡詩麻:〒330-0854埼玉県さいたま市大宮区桜木町C1-169-1大宮はまだ眼科西口分院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(69)C919図1MGD眼の眼瞼縁所見64歳,女性.右眼の上眼瞼縁所見.マイボーム腺開口部の閉塞所見(plugging)と血管拡張(vascularity)が観察される.図2正常眼のマイボグラフィー47歳,男性.左眼.正常眼のマイボグラフィー画像.下眼瞼(Ca),上眼瞼(Cb)には垂直に走る導管と複数の腺房からなるマイボーム腺(写真の白い部分)が観察できる.図3MGD眼のマイボフラフィー74歳,男性.左眼.MGD眼のマイボグラフィー画像.下眼瞼(Ca)のマイボーム腺には脱落(dropout)(写真の黒くぬけた部分)が観察され,上眼瞼(Cb)には短縮したマイボーム腺が観察できる.正常眼に比べて白黒のコントラストが悪い.Cab図4正常眼のインターフェロメトリー法LipiViewRとDR.1a45歳,正常男性.左眼のCLipiViewCR画像(Ca)とCDR-1Caによる涙液光干渉像(Cb).LipiViewCRは上から,前眼部写真,涙液を分離した画像,涙液油層厚のグラフと測定値(AvgICU)が示されている.LipiViewCRで測定した涙液油層厚はC76Cnm,DR-1Caの涙液光干渉像ではきれいな単色干渉縞が観察され,NIBUT8秒と涙液が安定しており,涙液の水と油のバランスが保たれていた.ab図5MGD眼のインターフェロメトリー法LipiViewRとDR.1a29歳,MGDの男性.左眼のCLipiViewCR画像(Ca)とCDR-1Caによる涙液光干渉像(Cb).LipiViewCRで測定した涙液油層厚はC26Cnmと薄く,DR-1Caの涙液光干渉像では干渉縞がみられず(蒸発亢進型ドライアイパターン),NIBUT3秒と短縮しており,涙液安定性が低下していた.–

ドライアイの背景因子 緑内障とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子緑内障とドライアイGlaucomaandDryEye井上賢治*はじめに緑内障とドライアイの関係については不明である.緑内障患者にドライアイの合併が多いか,あるいはドライアイ患者に緑内障の合併が多いかは判明していない.緑内障の治療は眼圧を下げることで,眼圧下降の第一選択は点眼薬治療である1).点眼薬使用中の緑内障患者の眼表面にドライアイの所見をみることが多く,緑内障点眼薬が眼表面に与える影響が懸念される.CI緑内障点眼薬とドライアイの関係日本のドライアイの定義はC2016年に改訂された2).改訂にあたり涙液層破壊時間(tearC.lmCbreak-uptime:BUT)短縮型ドライアイの概念と涙液層の安全性が考慮された.その結果,ドライアイの定義は,眼不快感,視機能異常などの自覚症状とCBUTがC5秒以下の両者を有するとなった.従来のドライアイの確定診断にはフルオレセイン,ローズベンガル,リサミングリーンのいずれかを用いた染色試験で陽性(9点満点でC3点以上)であることが必要だったが,角結膜障害は診断基準に含まれなくなった.緑内障点眼薬使用患者にドライアイの合併が多いのかについて以下に述べる.まず緑内障点眼薬の使用によりさまざまな眼不快感が出現することが報告されている3).緑内障点眼薬で治療中の患者C182名に点眼治療の問題点について聞き取りアンケートを実施した.使用感は,しみるC35名,かすむC34名,充血するC17名,ゴロゴロするC10名,かゆいC2名などだった.対象は一般病院の眼科受診患者で,点眼薬数はC1剤がC60%,2剤が36%,1日の総点眼回数はC1回がC49%,2回がC25%,3回がC18%と相対的に点眼薬数・点眼回数が少ない患者だった.この報告ではCBUT測定は行われていないのでドライアイの合併は不明である.緑内障点眼薬によりさまざまな症状が出現しているが,ドライアイを合併している患者では,さらに顕著に症状が出現すると考えられる.つぎに,1年間以上プロスタグランジン関連点眼薬の単剤投与を行っている正常眼圧緑内障患者と緑内障を有さない対照患者のドライアイ関連因子を比較した報告がある4).ドライアイ関連因子としてCOcularSurfaceDis-easeCIndex(以下COSDIスコア),BUT,Schirmerテスト,角膜上皮障害スコア(Area-Density法)を用いた.OSDIスコアとは眼表面疾患の指標で,0~100の尺度で評価され,高いスコアはより大きな障害を表す(表1).OSDIスコアは正常眼圧緑内障患者(11.39C±5.52)で対照患者(8.96C±5.35)に比べて有意に高値だった.BUTは正常眼圧緑内障患者(4.36C±1.58秒)で対照患者(7.54C±2.98秒)に比べて有意に短縮していた.Schirm-erテストは正常眼圧緑内障患者(6.44C±1.77秒)で対照患者(10.45C±5.51秒)に比べて有意に短縮していた.角膜上皮障害スコアは正常眼圧緑内障患者(0.93C±1.23点)で対照患者(0.40C±0.59点)に比べて有意に高値だった.つまり,これらのすべてのドライアイ関連因子は,*KenjiInoue:井上眼科病院〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(63)C913表1OSDIc(眼表面疾患指標)A.次のいずれかを経験しましたか?先週:常に:4,ほとんど:3,半分2.時々:1,まったくない:01.光を見るとまぶしい2.目がゴロゴロする3.目が痛い4.かすんで見える5.見えにくい回答の小計スコアB.あなたの目の状態は,次のいずれかをしにくかったことがありますか?先週:常に:4,ほとんど:3,半分2,時々:1,まったくない:06.読書(本や新聞など)7.夜間の車の運転8.パソコンや銀行ATMの使用9.テレビを見ること回答の小計スコアC.次のいずれかの状況では,あなたの目に不快感を感じましたか?先週:常に:4,ほとんど:3,半分2,時々:1,まったくない:010.風のあたる場所11.乾燥している場所12.エアコンが効いている場所回答の小計スコアD.A,B,Cの小計を加算(回答したすべての質問のスコアの合計)E.回答総数:回答済み(回答なしの回答は含まない)OSDIスコアの評価OSDIは0~100の尺度で評価され,高いスコアはより大きな障害を表します.指数は,正常な患者とドライアイの患者を区別する際の感度および特異性を示します.OSDIcは,ドライアイ疾患の重症度(正常,軽度~中等度,および重度)および視覚関連機能への影響を測定するための有効かつ信頼性の高いツールです.(Schi.manCRM,CChristiansonCMD,CHaconsenCGCetCal:ReliabilityCandCvalidityCofCtheCOcularCSurfaceDiseaseIndex.ArchOphthalmolC118:615621,2000.Copyrightc1995,Allerganより引用)ドライアイ薬剤性角膜上皮障害図1ドライアイと薬剤性角膜上皮障害の違いフルオレセイン染色はドライアイでは結膜上皮障害が,薬剤性角膜上皮障害では角膜上皮障害が強い.角膜上皮障害はドライアイでは角膜下方から中央部にかけて,薬剤性角膜上皮障害では角膜全体に出現する.防腐剤塩化ベンザルコニウム緑内障点眼薬(先発品)ラタノプロスト,タフルプロスト,ビマトプロスト,イソプロピルウノプロストンチモロール,熱応答ゲル化チモロール,カルテオロール,持続性カルテオロール,ベタキソロールニプラジロール,レボブノロールブナゾシンドルゾラミド,ブリンゾラミドリパスジルラタノプロスト/チモロールタフルプロスト/チモロールドルゾラミド/チモロールブリンゾラミド/チモロール臭化ベンゼトニウムイオン応答ゲル化チモロール塩化ベンザルコニウム+クロロブタノールピバレフリンパラベン+クロロブタノールピロカルピンなし(ホウ酸)トラボプロストブリモニジントラボプロスト/チモロールカルテオロール/ラタノプロスト表3緑内障点眼薬による角膜上皮障害が出現しやすい症例症例対策緑内障点眼薬多剤併用BAC濃度高い点眼薬1日2回Cb遮断点眼薬チモロール配合点眼薬へBAC濃度低い点眼薬,BAC以外の防腐剤使用点眼薬,防腐剤フリー点眼薬へ1日1回Cb遮断点眼薬カルテオロール眼疾患などドライアイコンタクトレンズLASIK既往全身性疾患など糖尿病膠原病BAC:塩化ベンザルコニウム.–

ドライアイの背景因子 結膜弛緩症とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子結膜弛緩症とドライアイConjunctivochalasisandDryEye加藤弘明*はじめに結膜弛緩症とは,高齢者に両眼性にみられる球結膜の非浮腫性,皺襞状の変化をさす1)(図1).1998年にMellerらが結膜弛緩症の眼表面における重要性を報告して以降,本疾患は多くの研究者や臨床家の注目を集めるようになり,その病態や治療について,今も多くの議論がなされている1,2).弛緩した結膜がみられる頻度は加齢とともに増加し,60歳以上の眼の,実にC98%でみられるとされ,男性よりも女性に多く,鼻側球結膜よりも耳側球結膜に高度にみられるとの報告がある3).ただし,弛緩した結膜がみられても,多くのケースで症状はなく,治療を必要としない一方で,眼不快感や視機能異常のような症状を訴え,何らかの治療を要するケースも存在することから,症状を伴わない場合を「結膜弛緩」,症状を伴う場合を「結膜弛緩症」とよび分けるべきなのかもしれない.結膜弛緩症はドライアイと関連することが知られており1,2),糸状角膜炎,上輪部角結膜炎,lidwiperepithe-liopathyと同様に「ドライアイ関連疾患」として位置づけられているが,これらの疾患がドライアイの二つのコア・メカニズム(涙液層の安定性低下および瞬目時の摩擦亢進)(図2)4)のうち,瞬目時の摩擦亢進のみに関連するのに対して,結膜弛緩症は涙液層の安定性低下と瞬目時の摩擦亢進の両方に関連してドライアイを増悪させる要因になるとともに,涙液メニスカスを遮断することで,逆に流涙症をきたす原因にもなり5),その点で結膜図1結膜弛緩症(パノラマ写真)下方の涙液メニスカスに沿って,皺襞状になった眼球結膜を認める(Ca).フルオレセイン染色を行うと,弛緩した結膜の程度や,形成された異所性メニスカスをより明確に評価できる(Cb).弛緩症は非常にユニークな疾患であるといえる.本稿では,まず結膜弛緩症の病因と病態生理について説明し,続いて評価と治療について述べる.CI結膜弛緩症の病因結膜弛緩症の病因についての考え方は,大きく炎症説と機械説の二つに分けられる.炎症説では,炎症性サイトカインであるCTNF(tumorCnecrosisCfactor)C-aやCIL(interleukin)C-1bにより,結膜線維芽細胞において膠原線維や弾性線維を分解するCMMP(matrixCmetallopro-teinase)-1,3,9の発現が亢進することで,結膜下や*HiroakiKato:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕加藤弘明:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(57)C907内因性,外因性の各種のリスクファクター眼瞼結膜上皮障害コア・メカニズム①コア・メカニズム②図2ドライアイのコア・メカニズムドライアイでは,上流のさまざまなリスクファクターによって,涙液の不安定性と角結膜上皮障害の間に開瞼維持時の「涙液層の安定性低下」という悪循環(コア・メカニズム①)が,眼瞼結膜上皮障害と眼球表面上皮障害の間に,瞬目時の「摩擦亢進」という悪循環(コア・メカニズム②)が生じている.また,これらの悪循環は炎症を惹起し,悪循環を助長する方向に作用する.(文献C4より引用改変)図3弛緩した結膜による異所性メニスカスの形成図4弛緩した結膜にみられる上皮障害下方涙液メニスカスを占拠した一塊の結膜皺襞の上に,異所性リサミングリーン染色下にて,弛緩した耳側結膜が下眼瞼縁との涙液メニスカスが形成され,隣接する角膜上の涙液層が菲薄接触して上皮障害が生じているのがわかる.化しているのが観察される.図5コルクスクリューサイン結膜に慢性的に,瞬目時に強い摩擦が作用すると,慢性的な結膜充血の原因となる.その際,コルクスクリューサインとよばれる特徴的な血管の蛇行所見が観察される.図6半月ひだと涙丘の耳側変位による流涙半月ひだと涙丘が耳側に変位することにより下涙点がブロックされ,涙液メニスカスが高くなっている(涙道狭窄・閉塞はないため,何度か瞬目させると涙液メニスカス高は低くなる).図7上方結膜の弛緩図8結膜弛緩症に対する結膜切除術(3分割切除術.横井法)後上眼瞼の上から拇指を使って上方結膜を下に向かって押し下げ図C1の症例に対して結膜切除術(3分割切除術-横井法)を施行るようにすると,弛緩した結膜(*)の有無を確認できる.Cした.下方涙液メニスカスは完全再建され,球結膜表面は平坦化している.膜を切除する方法は,リンパ管拡張などの結膜下の異常がある場合にも有効であり,全例で涙液メニスカスの完全再建と球結膜表面の平坦化が可能である(図8).②弛緩した結膜を強膜に縫着する方法や,③弛緩した結膜を熱凝固して短縮させる方法は,手術手技が容易で,手術時間が短く,患者への身体的負担が少ないという長所があるが,術中の結膜のデザインに難点があるとともに,結膜下のリンパ管拡張により結膜に大きな起伏がみられる場合には残余弛緩が生じる可能性がある.おわりに結膜弛緩症は,患者の主訴がなんであれ,スリットランプで患者の眼を診察する際に,最初に観察できる疾患の一つであり,とくに高齢者において,問診から眼表面疾患の存在が疑われる場合には,原因として鑑別すべき疾患にあげられることが多いと推察される.また,結膜弛緩症は,その病態生理がドライアイの二つのコア・メカニズム(涙液層の安定性低下,瞬目時の摩擦亢進)と密接に重なり合っているため,ドライアイを呈する要因になるが,下方涙液メニスカス遮断のメカニズムによって,患者はドライアイ症状と流涙症状の両方を訴えることもあり,非常にトリッキーな疾患といえる.それゆえ,結膜弛緩症が患者の訴える症状にどのように関与しているか評価するのはむずかしいと感じるかもしれない.しかし,トリッキーであるがゆえに,逆に患者の眼表面で起きている病態について深く考えさせられる疾患であるともいえ,読者の先生方には,是非その思考過程を楽しんでいただきたいと筆者は思っている.その際,本稿で述べた内容が,思考の一助になれば幸いである.文献1)MellerCD,CTsengCSC:Conjunctivochalasis:literatureCreviewCandCpossibleCpathophysiology.CSurvCOphthalmolC43:225-232,C19982)MarmalidouCA,CKheirkhahCA,CDanaCR:Conjunctivochala-sis:aCsystemicCreview.CSurvCOphthalmolC63:554-564,C20183)MimuraCT,CYamagamiCS,CUsuiCTCetCal:ChangesCofCcon-junctivochalasiswithageinahospital-basedstudy.CAmCJOphthalmol147:171-177,C20094)横井則彦:ドライアイ治療のフロンティアCTFOT(TearFilmOrientedTherapy)C.MedicalScienceDigestC40:112-115,C20145)YokoiCN,CInatomiCT,CKinoshitaCSCetCal:SurgeryCofCcon-junctiva.DevOphthalmolC41:138-158,C20086)LiCDQ,CMellerCD,CLiuCYCetCal:OverexpressionCofCMMP-1CandCMMP-3CbyCculturedCconjunctivochalasisC.broblasts.CInvestCOphthalmolVisSciC41:404-410,C20007)MellerCD,CLiCDQ,CTsengCSC:RegulationCofCcollagenase,Cstromelysin,CandCgelatinaseCBCinChumanCconjunctivalCandCconjunctivochalasisC.broblastsCbyCinterleukin-1betaCandCtumorCnecrosisCfactor-alpha.CInvestCOphthalmolCVisCSciC41:2922-2929,C20008)AceraCA,CVecinoCE,CDuranCJA:TearCMMP-9ClevelsCasCaCmarkerofocularsurfacein.ammationinconjunctivochala-sis.InvestOphthalmolVisSci54:8285-8291,C20139)YokoiCN,CKomuroCA,CNishiiCMCetCal:ClinicalCImpactCofCconjunctivochalasisConCtheCocularCsurface.CCorneaC24:CS24-S31,C200510)ChhadvaCP,CAlexanderCA,CMcClellanCALCetCal:TheCimpactCofCconjunctivochalasisConCdryCeyeCsymptomsCandCsigns.InvestOphthalmolVisSciC56:2867-2871,C201511)HohH,SchirraF,KieneckerCetal:Lid-parallelconjuncC-tivalCfoldsCareCaCsureCdiagnosticCsignCofCdryCeye.COphthal-mologeC92:802-808,C199512)MimuraT,UsuiT,YamamotoHetal:Conjunctivochala-sisCandCcontactClenses.CAmCJCOphthalmolC148:20-25,C200913)HashemianH,MahbodM,AmoliFAetal:HistopathologyofCconjunctivochalasisCcomparedCtoCnormalCconjunctiva.CJOphthalmicVisResC11:345-349,C201614)WardCSK,CWakamatsuCTH,CDogruCMCetCal:TheCroleCofCoxidativeCstressCandCin.ammationCinCconjunctivochalasis.CInvestOphthalmolVisSci51:1994-2002,C201015)WatanabeA,YokoiN,KinoshitaSetal:Clinicopathologicstudyofconjunctivochalasis.CorneaC23:294-298,C200416)SharmaCA,CTiwariCS,CKhannaCRCetCal:HydrodynamicsCofCmeniscus-inducedthinningofthetear.lm.lacrimalgland,tearC.lm,CandCdryCeyeCsyndromesC2:basicCscienceCandclinicalCrelevanceCseries:AdvCExpCMedCBiolC438:425-431,C199817)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepithe-liopathyCandCdry-eyeCsymptomsCinCcontactClensCwearers.CCLAOJC28:211-216,C200218)KessingCSV:ACnewCdivisionCofCtheCconjunctivaConCtheCbasisofx-rayexamination.ActaOphthalmol45:680-683,C196719)KnopCE,CKnopCN,CZhivovCACetCal:TheClidCwiperCandCmuco-cutaneousCjunctionCanatomyCofCtheChumanCeyelidmargins:anCinCvivoCconfocalCandChistologicalCstudy.CJAnatC218:449-461,C201120)横井則彦:眼表面からみた眼瞼下垂手術の術前・術後対策.あたらしい眼科32:499-506,C201521)KheirkhahCA,CCasasCV,CEsquenaziCSCetCal:NewCsurgical(61)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C911

ドライアイの背景因子 コンタクトレンズ装用とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子コンタクトレンズ装用とドライアイContactLensWearandDryEye重安千花*山田昌和*はじめに1994年に,わが国において頻回交換型ソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)が承認されて以来,装用者数は増加し,全国におけるコンタクトレンズ(contactClens:CL)装用者はC1,800万人(人口C8人にC1人)といわれている1).CLの装用は眼表面にさまざまな変化をもたらし,涙液層の不安定化を導き,CL関連ドライアイ(CL-relatedCdryCeye:CLRDE)を生じ,眼不快感(CLdiscomfort:CLD),乾燥感や視機能異常などを引き起こす2,3).CLRDEの発症の報告には幅があるが,装用者のC30~50%に生じるとも報告されており4~6),CL装用の中止のおもな原因となっている7).本稿ではドライアイの背景因子としてCCL装用をテーマに,TearFilm&OcularSurfaceSociety(TFOS)の2013年の国際会議で取り上げられたCCLDを含めて紹介する.なお,本稿ではハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)とCSCLのうち,涙液層の不安定化をよりもたらすCSCLについておもに取り上げる.CIコンタクトレンズ装用とドライアイ(定義)1.CL関連ドライアイ:CLRDECLの装用は,ドライアイのリスクをC2~3倍高めると報告されており8~10),国際的なドライアイ疾患研究会(DryCEyeCworkshop:DEWS)のCDEWSCIIの報告書のなかでもドライアイの要因となる因子として取り上げられている11).この中には,通常は潜在化しているドライアイ症状がCLの装用に伴い顕在化する症例があると考えられており12),この症状を以下に述べる“CLD”ととらえると考えやすい.C2.CL装用に伴う眼不快感:CLDCLDはCTFOSの国際会議で以下のように定義されている2).C“ContactClensCdiscomfortCisCaCconditionCcharacter-izedbyepisodicorpersistentadverseocularsensationrelatedtolenswear,eitherwithorwithoutvisualdis-turbance,CresultingCfromCreducedCcompatibilityCbetweenthecontactlensandtheocularenvironment,whichCcanCleadCtoCdecreaseCwearingCtimeCandCdiscon-tinuationofcontactlenswear.”「CLDとは,CLと眼の環境との適合性の低下により生じるレンズ装用に関連した視機能異常の有無を問わない一過性あるいは持続する眼の感覚の異常であり,装用時間の減少あるいはレンズ装用の中止を余儀なくされうるもの」13,14)本定義でのポイントは,眼不快感が「CLの装用時に生じる」ことであり,CL非装用時には症状が消失または軽減することである.また,一日の終わりに症状が悪化することも特徴的といわれている.この点において,もともとドライアイをもつ場合に用いられる“CLCdryeye”や“CL-induceddryeye”とは区別することが推*ChikaShigeyasu&*MasakazuYamada:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕重安千花:〒181-8611東京都三鷹市新川C6-20-2杏林大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(49)C899図1Superiorepithelialarcuatelesions(SEALS)図2Smilemarksuper.cialpunctuatekeratitis(SPK)図3びまん性のsuper.cialpunctuatekeratitis(SPK)図4Lidwiperepitheliopathy(LWE)図5球結膜の染色表1FDA分類含水率低含水(50%未満)高含水(50%以上)非イオン性(イオン性モノマー1mol%未満)Cイオン性(イオン性モノマー1mol%以上)C帯電性GroupICGroupIIGroupIIICGroupIVCの惹起には,眼表面炎症の治療を選択することができると考え,以下に紹介する.なお,SCL装用時は点眼薬の主成分,添加物のいずれもCSCLへ吸着する可能性があることには注意が必要である50).Ca.涙液層の菲薄化CLRDEへの液層の水分を治療対象とすると,人工涙液,ヒアルロン酸ナトリウム点眼,ジクアホソルナトリウム点眼加え,涙点プラグの選択があげられる.SCL装用者における報告では,人工涙液は一時的な涙液貯留量の増加には効果的であることが示され51),ヒアルロン酸ナトリウム点眼は角膜染色や充血の改善が確認されている52).ジクアホソルナトリウム点眼は,涙液貯留量の増加に加え51),BUTの延長効果が確認されている34).なお,涙点プラグは,涙液貯留量の増加をもたらす結果として一定のCCLDの改善効果をもたらす可能性はあるが53),一般的に若年者の多いCCL装用者において涙液産生量は比較的維持されていることが多く16),実際に適応となる症例は少ない.Cb.角結膜上皮の水濡れ性の低下CLRDEへの上皮の膜型ムチンを対象とする治療には,ジクアホソルナトリウム点眼とレバミピド点眼の効果が期待される.SCL装用者において膜型ムチンの指標の増加を,ジクアホソルナトリウム点眼34)およびレバミピド点眼33)の両者において確認しており,BUTの延長効果ならびに涙液の安定化を導き,自覚症状の改善効果をもたらしていると考えている.Cc.眼表面との摩擦による炎症の惹起CLRDEへの眼表面炎症の治療には,レバミピド点眼がよい適応である.SCL装用者においてレバミピド点眼による炎症性サイトカインの測定レベルにおける変化は明らかではないものの33,54),角結膜上皮障害の軽減が確認されており,自覚症状の改善効果が報告されている54,55).おわりにCL装用は,涙液層の菲薄化,角結膜上皮の水濡れ性の低下,眼表面との摩擦による炎症の惹起などのメカニズムにより涙液層の不安定化を導き,CLRDEを生じ,CLD,乾燥感や視機能異常などを引き起こす.ドライアイの重要な背景因子の一つとしてCCLは,装用者数のさらなる増加が今後も見込まれている.本稿がより安全で快適なCCL装用を行ううえで,CLRDEの対策としてSCLの選択および点眼の選択に際し,微力ながらお力添えできれば幸いに思う.文献1)草野良明,高橋和博,柿田哲彦ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成C28年度).日本の眼科88:929-937,C20172)NicholsCKK,CRedfernCRL,CJacobCJTCetCal:TheCTFOSInternationalCWorkshopConCContactCLensCDiscomfort:CreportCofCtheCde.nitionCandCclassi.cationCsubcommittee.CInvestOphthalmolVisSciC54:TFOS14-19,C20133)木下茂,大橋裕一,村上晶ほか:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌118:557-591,C20144)YoungCG,CChalmersCR,CNapierCLCetCal:SoftCcontactClens-relateddrynesswithandwithoutclinicalsigns.OptomVisSciC89:1125-1132,C20125)NicholsCJJ,CSinnottCLT:TearC.lm,CcontactClens,CandCpatient-relatedCfactorsCassociatedCwithCcontactClens-relat-edCdryCeye.CInvestCOphthalmolCVisCSciC47:1319-1328,C20066)RichdaleCK,CSinnottCLT,CSkadahlCECetCal:FrequencyCofCandfactorsassociatedwithcontactlensdissatisfactionandCdiscontinuation.CorneaC26:168-174,C20077)DumbletonK,WoodsCA,JonesLWetal:TheimpactofcontemporaryCcontactClensesConCcontactClensCdiscontinua-tion.EyeContactLensC39:93-99,C20138)山田昌和,水野嘉信,重安千花:ドライアイが日常生活に及ぼす影響インターネットアンケート調査より.診療と新薬49:243-251,C20129)UchinoCM,CNishiwakiCY,CMichikawaCTCetCal:PrevalenceandCriskCfactorsCofCdryCeyeCdiseaseCinCJapan:KoumiCstudy.OphthalmologyC118:2361-2367,C201110)PaulsenAJ,CruickshanksKJ,FischerMEetal:DryeyeinCtheCbeaverCdamCo.springCstudy:prevalence,CriskCfacC-tors,CandChealth-relatedCqualityCofClife.CAmCJCOphthalmolC157:799-806,C201411)WillcoxCMDP,CArguesoCP,CGeorgievCGACetCal:TFOSCDEWSIITearFilmReport.OculSurf15:366-403,C201712)山田昌和:ドライアイとコンタクトレンズ.Ocularsurfaceの診断と治療(小口芳久,坪田一男編),p83-87,メディカル葵出版,199313)横井則彦,渡辺仁,山田昌和ほか:コンタクトレンズ装用における眼不定愁訴のメカニズムとその治療.FrontiersinCDryCEye:涙液から見たオキュラーサーフェスC10:C8-15,C201514)横井則彦:涙液からみたコンタクトレンズ.日コレ誌C57:C222-235,C2015(53)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C90315)MannA,TigheB:Contactlensinteractionswiththetear.lm.ExpEyeResC117:88-98,C201316)CraigJP,WillcoxMD,ArguesoPetal:TheTFOSInter-nationalWorkshoponContactLensDiscomfort:reportoftheCcontactClensCinteractionsCwithCtheCtearC.lmCsubcom-mittee.CInvestCOphthalmolCVisCSciC54:TFOS123-TFOSC156,C201317)EfronN,JonesL,BronAJetal:TheTFOSInternationalWorkshoponContactLensDiscomfort:reportofthecon-tactClensCinteractionsCwithCtheCocularCsurfaceCandCadnexaCsubcommittee.CInvestCOphthalmolCVisCSciC54:TFOS98-TFOS122,C201318)TsubotaCK,CYamadaCM:CornealCepithelialCalterationsCinducedCbyCdisposableCcontactClensCwear.COphthalmologyC99:1193-1196,C199219)MurphyCPJ,CPatelCS,CMarshallCJ:TheCe.ectCofClong-term,Cdailycontactlenswearoncornealsensitivity.CorneaC20:C264-269,C200120)白石敦,山西茂喜,山本康明ほか:ドライアイ症状患者におけるClid-wiperCepitheliopathyの発現頻度.日眼会誌C113:596-600,C200921)DoughtyCMJ:ContactClensCwearCandCtheCdevelopmentCofCsquamousmetaplasiaofthesurfacecellsoftheconjuncti-va.EyeContactLens37:274-281,C201122)DoughtyCMJ:ContactClensCwearCandCtheCgobletCcellsCofCthehumanconjunctiva-Areview.CContLensAnteriorEyeC34:157-163,C201123)GlassonMJ,StapletonF,KeayLetal:Di.erencesinclini-calCparametersCandCtearC.lmCofCtolerantCandCintolerantCcontactlenswearers.InvestOphthalmolVisSciC44:5116-5124,C200324)Lopez-deClaCRosaCA,CMartin-MontanezCV,CLopez-MiguelAetal:Cornealsensitivityandin.ammatorybiomarkersinCcontactClensCdiscomfort.COptomCVisCSciC93:892-900,C201625)重安千花,山田昌和,水野嘉信ほか:ソフトコンタクトレンズ装用者の涙液浸透圧.日コレ誌54:172-177,C201226)GlassonM,StapletonF,WillcoxM:Lipid,lipaseandlipo-calinCdi.erencesCbetweenCtolerantCandCintolerantCcontactClenswearers.CurrEyeResC25:227-235,C200227)YamadaCM,CMochizukiCH,CKawashimaCMCetCal:Phospho-lipidsandtheirdegradingenzymeinthetearsofsoftcon-tactlenswearers.CorneaC25:S68-S72,C200628)ChenCQ,CWangCJ,CTaoCACetCal:Ultrahigh-resolutionCmea-surementCbyCopticalCcoherenceCtomographyCofCdynamicCtear.lmchangesoncontactlenses.InvestCOphthalmolVisSciC51:1988-1993,C201029)NagaharaCY,CKohCS,CMaedaCNCetCal:ProminentCdecreaseCofCtearCmeniscusCheightCwithCcontactClensCwearCandCe.cacyofeyedropinstillation.EyeContactLensC41:318-322,C201530)HoriCY,CArguesoCP,CSpurr-MichaudCSCetCal:MucinsCandCcontactlenswear.Cornea25:176-181,C200631)YasuedaCS,CYamakawaCK,CNakanishiCYCetCal:DecreasedCmucinCconcentrationsCinCtearC.uidsCofCcontactClensCwear-ers.CJPharmBiomedCAnal39:187-195,C200532)PisellaCPJ,CMaletCF,CLejeuneCSCetCal:OcularCsurfaceCchangesCinducedCbyCcontactClensCwear.CCorneaC20:820-825,C200133)ShigeyasuCC,CYamadaCM,CAkuneCYCetCal:TheCe.ectCofCrebamipideCophthalmicCsuspensionConCocularCsurfaceCmucinsCinCsoftCcontactClensCwearers.CContCLensCAnteriorCEye,C201734)ShigeyasuCC,CYamadaCM,CAkuneCYCetCal:DiquafosolCforsoftCcontactClensCdryness:clinicalCevaluationCandCtearCanalysis.OptomVisSci93:973-978,C201635)FukuiCM,CYamadaCM,CAkuneCYCetCal:FluorophotometricCanalysisCofCtheCocularCsurfaceCglycocalyxCinCsoftCcontactClenswearers.CurrEyeCResC41:9-14,C201636)NicholsCJJ,CKing-SmithCPE:ThicknessCofCtheCpre-andCpost-contactClensCtearC.lmCmeasuredCinCvivoCbyCinterfer-ometry.InvestOphthalmolVisSciC44:68-77,C200337)NicholsJJ,MitchellGL,King-SmithPE:ThinningrateoftheCprecornealCandCprelensCtearC.lms.CInvestCOphthalmolCVisSci46:2353-2361,C200538)横井則彦:コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方つぎの一歩症例からみるCCL処方ソフトコンタクトレンズ装用眼の眼乾燥感のメカニズム.あたらしい眼科C33:C1733-1734,C201639)RamamoorthyP,NicholsJJ:Mucinsincontactlenswearanddryeyeconditions.OptomVisSci85:631-642,C200840)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepithe-liopathyCandCdry-eyeCsymptomsCinCcontactClensCwearers.CCLAOJC28:211-216,C200241)ShiraishiCA,CYamaguchiCM,COhashiCY:PrevalenceCofCupper-andlower-lid-wiperepitheliopathyincontactlenswearersandnon-wearers.EyeContactLensC40:220-224,C201442)ThakurA,WillcoxMD:Contactlenswearaltersthepro-ductionCofCcertainCin.ammatoryCmediatorsCinCtears.CExpCEyeRes70:255-259,C200043)YamadaM,MochizukiH,KawaiMetal:DecreasedtearlipocalinCconcentrationCinCpatientsCwithCmeibomianCglandCdysfunction.BrJOphthalmolC89:803-805,C200544)StahlU,WillcoxMD,NaduvilathTetal:In.uenceoftear.lmandcontactlensosmolalityonocularcomfortincon-tactlenswear.OptomVisSci86:857-867,C200945)山田昌和,緋田芳樹,浦山久美子ほか:ハードコンタクトレンズ(HCL)下の涙液交換率の測定.日コレ誌C33:120-124,C199146)PolseCKA:TearC.owCunderChydrogelCcontactClenses.CInvestCOphthalmolVisSciC18:409-413,C197947)SubbaramanCLN,CGlasierCMA,CVarikootyCJCetCal:ProteinCdepositionandclinicalsymptomsindailywearofeta.lconlenses.OptomVisSciC89:1450-1459,C201248)KohS,MaedaN,HamanoTetal:E.ectofinternallubriC-904あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(54)

ドライアイの背景因子 涙道疾患とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子涙道疾患とドライアイAssociationbetweenLacrimalDuctDisorderandDryEye田中寛*はじめに涙道と涙液は切っても切れない関係である.涙腺から産生された涙液は眼表面に広がったあと,眼瞼縁をたどり涙道から排出されることで涙液量が安定するが,いったん涙道閉塞をきたすと排出不全となり,涙液貯留量が過剰になり流涙症をきたす.涙道閉塞は女性の比率が高く,視機能にも影響することが報告されているが,「化粧が落ちる」「人前で常に涙を拭き続けないといけない」など著しくQOLを低下させることもあり,改善すると非常に喜ばれる.涙道疾患とドライアイは基本的には相反する疾患であることから,本稿ではまずは涙道疾患の基本的な知識の整理を,その次に涙道疾患とドライアイとの関連について述べる.I涙道疾患の基礎知識1.涙道の解剖涙道は涙点,涙小管,総涙小管,涙.,鼻涙管からなっており,眼瞼縁に貯留する涙液が瞬目などを介して涙道へ吸い込まれていく(図1a).涙道の発生については諸説あるが,鼻涙管に部分的に空間が生じることでつながり一つの単洞となることが解剖学的見地より示唆されている(図1b)1).組織学的な治験では涙小管,総涙小管の内腔は重層扁平上皮で覆われており,その周囲は弾性線維層が取り囲んでおり,血流は乏しく,内視鏡所見としては白色の管腔として観察される(図2a).涙.,鼻涙管の内腔は多列円柱上皮とゴブレット細胞で構成されており,その周囲を血流の豊富な海綿状組織が取り巻いているため,正常組織であれば内視鏡所見としてはピンク色に観察される.また,上記で述べた発生より,竹の節状の段が内腔に見受けられることがある(図2b).2.涙道閉塞の症状涙道の一部が閉塞すると流涙症をきたすことがある.閉塞部位によって眼瞼縁に貯留する涙液の量,性状,また流涙症状の程度が異なる.涙点,涙小管の閉塞の場合,上下どちらか片側のみの閉塞の場合は症状が軽度であることもあるが,両側とも閉塞している場合は顕著に涙液貯留量が増加し著明な流涙症をきたす.総涙小管はいったん閉塞すると,両涙小管閉塞と同様の機序で,著明な涙液メニスカスの増加をきたす.鼻涙管閉塞についてはバリエーションがあるが,涙.,鼻涙管による涙液の吸収作用があるため,総涙小管以前の閉塞と比較すると眼瞼縁上の涙液量の増加は軽度である場合が多い.また,涙.は血管豊富な組織であり,閉塞により涙.内にdebrisが貯留することも多く,涙.部を圧迫することで涙点からそのdebrisが逆流をきたす慢性涙.炎になることもしばしばである.いったん感染を伴うと急性涙.炎となり,疼痛,涙.部の発赤を伴い,抗菌薬の局所,全身投与が必要となる(図3).*HiroshiTanaka:京都第二赤十字病院眼科〔別刷請求先〕田中寛:〒602-8026京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355-5京都第二赤十字病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(41)891図1涙道の解剖と発生a:涙道の解剖.涙点,涙小管,総涙小管,涙.,鼻涙管からなっている.眼瞼縁に貯留する涙液が瞬目などを介して涙道へ吸い込まれ鼻涙管開口部より鼻内へ排出される.b:涙道の発生について鼻涙管に部分的に空間が生じることでつながり,一つの単洞となることを示した図.(文献1より引用)図2正常な涙道内視鏡所見a:涙小管内腔所見.内腔は重層扁平上皮で覆われており,その周囲は弾性線維層が取り囲んでおり,血流は乏しく,内視鏡所見としては白色の管腔として観察される.b:鼻涙管内腔所見.内腔は多列円柱上皮とゴブレット細胞で構成されており,その周囲を血流の豊富な海綿状組織が取り巻いているため,正常組織であれば内視鏡所見としてはピンク色に観察される.図3急性涙.炎症例左涙.部の著明な発赤と腫脹を認める.抗菌薬の局所,全身投与にて改善を認めるが,根本的な治療には観血的治療が必要となる.ab:閉塞部位:逆流物なし:逆流物あり図4通水検査の代表的な結果a:鼻涙管閉塞例.片側の涙点から涙道洗浄(涙洗)を行うと,もう片側から透明.白色のdebrisとともに逆流が確認される.b:総涙小管閉塞例.片側の涙点から涙洗を行うと,もう片側から透明の逆流が確認される.c:片側の涙小管閉塞例.閉塞側の涙点から涙洗を行うと,交通がなく,開放側から涙洗を行うと通過する.d:両側の涙小管閉塞例.両側の涙点から涙洗が不可である.炎,結膜弛緩やドライアイとの鑑別が重要となる.通水検査についてはスクリーニングとしてはC2段針で行うこともあるが,正確な閉塞部位の診断にはC1段針を用いる.涙小管の内腔は内視鏡検査の際にC18Gのカテーテルの全幅(外径約C1.3Cmm)が入るように思いのほか広く,1段針を用いることでしっかりと水圧をかけることができ,慣れることで狭窄程度,涙.内のCdebrisの排出などの確認が可能となる.通水検査の代表的な結果を図4に示す.C4.涙道閉塞以外の涙道疾患例外的なものとして覚えておきたいのは涙小管炎と腫瘍である.涙小管炎は放線菌の涙道内,おもに涙小管への感染により菌石が貯留し,慢性炎症を起こすことで眼脂や充血をきたす疾患であり,慢性結膜炎と誤診される頻度の多い疾患である.特徴としては涙点の発赤と涙点につながる眼脂を認める.涙道内視鏡所見としては涙小管内腔の拡張,肉芽腫性変化を認めるが,閉塞所見は認めないことが多く,通水検査にても逆流を認めないことが多く,炎症で易出血性となっているため通水検査時に出血を認めることがある.また,涙小管炎のほかにも通水時に出血を認めるときは要注意であり,組織の腫瘍化による易出血性が考えられる.筆者は幸運にもそのような経験はないが,そのような所見が認められた際には鑑別に腫瘍を考慮するべきである.C5.涙道閉塞の治療また,治療としては涙道ブジー,涙管チューブ留置術,涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)がおもにあげられる.涙管ブジーにおいては小児の先天鼻涙管閉塞に対し行うことが多く,高齢者の加齢による後天性涙道閉塞に対しては,わが国ではチューブ留置術がおもに行われている.かつては盲目的にチューブ挿入を行っていたが,近年涙道内視鏡の発達とともに内視鏡併用のチューブ挿入術を行う施設が増加している.利点としては涙道内視鏡に鼻内視鏡を併用することで盲目的操作が一切なくなり,涙道内腔所見が鮮明に得られ,仮道の作製率が減少することや,他の疾患の鑑別が可能なことである.デメリットとしては内視鏡自体が高価であり,また滅菌操作なども留意する必要などがある.しかし,今後はわが国でも治療以外にも検査で保険点数がついたことにより普及が進み,安全な治療と正確な検査ができるのではないかと期待している.DCRについては,いうまでもなく涙道閉塞に対する世界の標準治療であり,経皮的にアプローチする鼻外法と,鼻内視鏡を用いて鼻内よりアプローチする鼻内法が存在するが,両者一長一短である.CIIドライアイと涙道疾患1.涙道閉塞とドライアイの症状流涙症状をきたす疾患は多く,大きく角結膜疾患,眼瞼疾患,涙道疾患に分類される.上記で述べたように,問診,診察,検査にて分類するが疾患がオーバーラップしていることもしばしばある.患者が来院した際に,涙道閉塞とドライアイとが合併している場合,優先して治療するのはどちらであろうか.基本的に両者とも加齢により生じる疾患であり,上記のような場合は通常ドライアイが基礎疾患にあり,そこに涙道閉塞が加わることが多いと考えられる.涙点プラグなどの使用者には経験があると思われるが,涙液減少型のドライアイにおいて上下涙点ともに涙点ブラグを使用すると,よほど重篤でないかぎり,涙液貯留量が過剰になり,流涙症状をきたす.その点を考慮すると涙道の閉塞起点にもよるが,流涙症状の悪化を訴え来院した患者に対しては,術後の涙液減少の可能性も説明したうえで涙道閉塞の治療を勧めることがよいと考えられる.先に述べたように総涙小管閉塞以前の閉塞と鼻涙管閉塞では,涙液貯留量に違いがあるため,所見と症状が異なる.筆者は,片眼にドライアイ,僚眼に総涙小管閉塞を認めた場合,問診,所見などを考慮し,涙道閉塞の治療を優先して治療を行うが,治療後に不満を訴えられる患者はまれである.それはおそらく反射性の流涙と比較し,持続的な流涙症状はより不快感が強いためであると考えられる.しかし,重篤なドライアイ患者,たとえばStevens-Johnson症候群患者の涙点閉鎖合併の涙.炎症例に対しては涙.摘出術なども考慮する.また,鼻涙管閉塞においては,涙.での涙液吸収などにより術前の涙894あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018(44)図5涙点プラグ起因涙小管炎症例76歳,女性.他院で慢性結膜炎として診断しており改善が認められないために紹介受診.涙点の発赤と結膜充血を認め(Ca),涙小管炎と診断し,涙道内視鏡治療を行う.涙点切開し,菌石の圧出を試みるが菌石の排出は認められず,内視鏡下に涙小管内の涙点プラグを認め(Cb),鼻腔へ押し出した.その後,症状は改善した.a.術後通水良好群(n=5)b.術後通水不良群(n=7)0.80.80.70.70.6*:p<0.050.60.50.50.40.40.30.30.20.20.10.100術前チューブ留置中チューブ抜去6カ月後術前チューブ留置中チューブ抜去6カ月後涙液メニスカスの曲率半径(R)図6涙管チューブ挿入中の涙液メニスカスの比較術後C6カ月後の通水検査が良好な群(A群:3例C5側)と逆流が少しでも認められる群(B群:4例C7側)のC2群で比較したところ,術後通水良好群では術後通水不良群と比較し涙管チューブ挿入中のメニスカスが有意に低かった(p<0.05).鼻涙管閉塞については涙管チューブ挿入中の涙液メニスカスが高い症例は再閉塞をきたす率が高かった.0.6内視鏡併用非閉塞眼0.50.4**********0.30.20.10期間**p<0.025,*p<0.05Shirley-Williams法図7涙管チューブ抜去後の涙液メニスカスの比較涙道内視鏡下に涙管チューブ挿入を行い,涙管チューブ抜去後C6カ月まで再閉塞(涙洗にて逆流物を認める)がない症例について術前,術後の涙液量をメニスコメトリーを用いて計測した.その結果,術後のすべての時期において有意に術前よりメニスカスの低下が得られ,また術後の各時点間におけるメニスカスに有意な差を認めず,コントロールとの差も認められなかった.TNF-a:Rebamipide:図8角膜上皮に対するレバミピドの抗炎症効果ヒト角膜上皮細胞にCTNF-aを添加し炎症惹起するとタイトジャンクションであるCZO-1が破壊されるが,レバミピドを添加することでCZO-1が維持された.(文献C8より引用)Rの平均値(mm)術前挿入1カ月挿入2カ月抜去1カ月抜去3カ月抜去6カ月---++-++緑:ZO-1青:核-’-

ドライアイの背景因子 眼瞼痙攣とドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子眼瞼痙攣とドライアイBlepharospasmandDryEye細谷友雅*はじめにドライアイの治療を行っても自覚症状が改善しない症例をたまに経験するが,なかに眼瞼痙攣患者が隠れていることがある.「どこの病院にいってもよくならない」と訴える患者ではとくに注意が必要である.しかし,なぜドライアイと診断されてしまうのであろうか.これは眼瞼痙攣にドライアイが合併することが多いからである.2006年版ドライアイ診断基準に当てはめると眼瞼痙攣患者のC25%がドライアイと確定診断され,39%が疑いと判定される1).また,ドライアイと診断され,種々のドライアイ治療に抵抗する患者のC57%が眼瞼痙攣であったとの報告もある2).本稿では眼瞼痙攣の見抜き方と,付随するドライアイの特徴について述べる.CI眼瞼痙攣とは眼瞼痙攣は眼部局所ジストニアであり,開瞼が困難になる疾患である.眼瞼周囲の筋,主として眼輪筋の間欠性あるいは持続性の過度の収縮により不随意な閉瞼が生じる疾患で,他の神経学的,眼科学的異常が原因となっていないもの,と定義される.このうち攣縮が他の顔面筋や舌,咽頭,頸部筋にまで及ぶものをCMeige症候群とよぶ3).痙攣という名前がついているために「眼瞼がぴくぴくする」という症状を眼瞼痙攣と思っている患者もいるが,これは眼瞼ミオキミアであることが多く,別疾患である.また,左右どちらかの顔面半分だけに痙攣が生じるのは片側顔面痙攣であり,こちらも別疾患である.患者に説明するときには,「頭の中の瞬きの指令塔がおかしくなって,まぶたがいうことを聞かなくなる病気」と説明するとわかってもらいやすい.まだ病因は特定されていないが,大脳基底核の障害により生じるとする説が有力である.また,視床の過活動や,脳幹での瞬目反射抑制機構の障害なども報告されており,多岐にわたる伝達異常が存在するものと考えられている.Parkinson病とも関連がある.また,自律神経失調症,うつ病での通院,加療歴があるものがC2~3割存在し,神経因性疼痛との関連も示唆されているのはドライアイと類似している.中高年の女性に多いが,若年者でみられることもあり,その場合は向精神薬による薬剤性がほとんどである.CII眼瞼痙攣の診断以下の自覚症状,他覚所見から臨床的,総合的に診断する.診断のポイントを表1に示す.C1.自覚症状(表2)羞明感,開瞼困難を訴えることが多い.具体的な訴えの例として「まぶしい」「目を開けているのがつらい」「目が自然に閉じてしまう」「目を閉じていたほうが楽」などがある.乾燥感を訴えることも多く,目の不快感,異物感,流涙を訴えることもあり,ドライアイの自覚症状とよく似ている.運転時や会話中に症状が悪化する者もみられる.歩行中急に目が開いていられなくなり物に*YukaHosotani:兵庫医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕細谷友雅:〒663-8501兵庫県西宮市武庫川町C1-1兵庫医科大学眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(35)C885表1眼瞼痙攣診断のポイント表2眼瞼痙攣の症状1.角膜,涙液の所見に比べて自覚症状が強い2.瞬目テスト陽性3.視診(顔の皺,瞬目増多,眉の位置など)図1眼瞼痙攣患者の顔貌眉間および鼻根部に深い皺を認め,眉毛が下降している.9080706050403020100図2眼瞼痙攣患者の自覚症状VASスコア最も高かったのは眼の開けづらさ,ついで眼の疲れ,重たさ,羞明であった.疲れる重いまぶしいかすむかゆい眼脂涙がでる赤い痛いゴロゴロする開けづらい乾く表3DEQS眼症状表4DEQS生活への影響異物感C1.61C2.00開瞼がつらいC3.35C3.29乾燥感C2.35C2.35かすむC1.48C1.58痛みC1.97C2.16眩しいC2.87C2.74疲れC3.16C3.10読書時不調C2.23C2.19重たさC2.87C3.00テレビ鑑賞時不調C2.77C2.71充血C1.06C1.10集中力低下C2.90C2.90仕事・家事に支障C3.03C3.13外出を控えるC2.13C2.32気分が晴れないC3.00C3.00C706050403020100ab**9080706050403020100治療前治療後治療前治療後*:p=0.0018*:p=0.0001図3ボツリヌス治療の効果治療により有意にスコアの改善がみられる.a:自覚症状CVASスコア.Cb:DEQS生活への影響サブスケール.■用語解説■VisualAnalogueScale(VAS):紙にC100Cmmの線を引き,その左をまったく気にならない状態,その右をこれまで想像できる最高に不調の状態としたときに,現在感じる症状がどこにあるか,線を引いて示す方法.対象者に線を引かせた後,測定者が定規を用いて,左から何ミリメートルの所に線を引いたのかを数値として記録する.DryEye.RelatedQualityofLifeScore(DEQS):日本で開発された,ドライアイに特化した簡便なCQOL質問票.メンタル面も含め,多面的なCQOLが評価可能.ドライアイの症状,日常生活への影響に関する15項目からなり,総合的なCQOL障害度はサマリースコア(0~100)として算出される.また,症状のみ,日常生活への影響のみのサブスケールも算出することができる.C

ドライアイの背景因子 術後のドライアイ

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの背景因子術後のドライアイPostoperativeDryEye井上康はじめに近年,白内障手術は小切開化に伴い,低侵襲化が図られ,術後早期から良好な視力が得られるようになった.さらにトーリック眼内レンズ,多焦点眼内レンズなどの導入により屈折矯正手術としての完成度も高まってきている.一方で,手術の対象となる症例はおもに高齢者であり,術前から異物感,乾燥感や霧視などのドライアイ様症状を訴えることが多く,手術により視力が改善したあとにこれらの症状を訴えるようになることもしばしば経験する.白内障手術により視力が改善したことでかえってこれらの症状が顕性化するとも考えられる.また,手術中の強制開瞼,眼内灌流液の滴下,顕微鏡光,局所麻酔および消毒液などによる角結膜,涙液層への障害は,角膜知覚低下,眼表面のムチン,ゴブレット細胞の減少を通して角結膜上皮障害,涙液層破壊時間(tear.lmbreak-uptime:BUT)の短縮を引き起こすことが報告されている1,2).白内障手術を契機として発症する術後ドライアイにも配慮することが必要であると考えられる.ドライアイは視機能障害を伴う疾患であることがすでに明らかになっている3).白内障手術においてさらに高い患者満足度を得るためには,術前にドライアイの診断を適確に行うこと,ドライアイと診断された場合には周術期のドライアイ治療を効率的に行うことが求められている.本稿のタイトルは術後のドライアイであるが,今回は代表的な眼科手術である白内障手術に限って,術前におけるドライアイの有病率,術後ドライアイの発症率,周術期の治療などについて自験例を中心に結果を提示する.I白内障周術期におけるドライアイ2015年1月6日~2015年4月21日に,当院にて白内障手術術前検査を施行した連続153例272眼(平均年齢74.7歳±7.8)のうち,2006年版ドライアイ診断基準に基づき,ドライアイもしくはドライアイ疑いと診断された症例は108例173眼(63.6%)であった.また,術前非ドライアイ症例66例98眼のうち40例58眼(59.2%,全体の21.3%)は術後4週後においてドライアイもしくはドライアイ疑いと診断された.いわゆる術後ドライアイである.これらの結果を図1に示す.術前ドライアイ有病率を2006年版ドライアイ診断基準に沿って検討した結果では,Miyakeらが69.7%(平均年齢71.9歳±7.5)4),Yuらが51.5%(平均年齢71.8歳±10.1)と報告しており5),ほぼ同様の結果であった.術前非ドライアイ症例のうち術後4週においてドライアイもしくはドラアイアイ疑いと診断された症例はMiyakeらの報告では全体の9.5%,Yuらの報告では10.1%とされており,自験例に比べると少ない結果となっている.周術期のドライアイは白内障術前からあるドライアイと手術侵襲により発症する術後ドライアイに分けられる.白内障手術対象症例の術前におけるドライアイの有病率は予想以上に高く約60%程度に上ると考えられる.*YasushiInoue:井上眼科〔別刷請求先〕井上康:〒706-0011岡山県玉野市宇野1-14-31井上眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(29)879n=272n=98図1術前におけるドライアイの評価の結果(a).術前非ドライアイ症例に対する術後4週でのドライアイ評価の結果(b)図3冬季と夏季の比較術前非ドライアイ症例の術後C4週でのドライアイ評価の結果.冬季(n=98,75.4±7.0歳)夏季(n=40,73.7±8.4歳)男性n=116女性n=156図2術前時における性別のドライアイ評価の結果5秒未満73.9%5秒以上26.1%あり86.0%なし5mm以下3点以上20.0%3点未満80.0%10.0%6mm以上90.0%14.0%BUT自覚症状Schirmer角結膜testⅠ法フルオレセインスコア図4術前におけるBUT,自覚症状,SchirmertestI法,角結膜フルオレセイン染色スコアsecBUT角結膜フルオレセイン染色スコア86563422100-1-2-2PREPOST1M投与後1MPREPOST1M投与後1MATDQSATDQSジクアホソルナトリウム点眼群(DQS)n=20人工涙液点眼群(AT)n=22図5人工涙液点眼群(AT)とジクアホソルナトリウム群(DQS)における術前,術後1カ月,投与後1カ月のBUT,角結膜フルオレセイン染色スコアの変化**p<0.01,*p<0.05(Welch検定),††p<0.01,†p<0.05(Kruskal-Wallis多重比較Sche.e).CRMSDQSRMSAT(μm)(μm)0.350.350.300.300.250.250.200.200.150.150.100.100.050.050.000.00Beforecataract4weeksafterAfterDQS(sec)Beforecataract4weeksafterAfterAT(sec)surgerysurgeryinstillationsurgerysurgeryinstillationジクアホソルナトリウム点眼群(DQS)n=20人工涙液点眼群(AT)n=22図6術前,術後1カ月,投与後1カ月における角膜全高次収差の10秒間連続測定の結果246810246810246810246810246810246810aμmn=4060.30.20.10Pre1W2W4W8W12WTotalComalikeSphericallikebCornealTotalAverageμm*0.70.60.50.40.30.20.10図7術前非ドライアイ症例406眼の術前,術後1週,術後2週,術後4週,術後8週,術後12週における角膜全高次収差の10秒間連続測定の結果(a).角膜全高次収差の平均値の経時変化(b)**p<0.01,*p<0.05(Friedman検定,多重比較Sche.e).Pre1W2W4W8W12WBUT角結膜フルオレセイン染色スコア††††N.S.54342102-1-20-3-4W-2W0W2W4W6W8W-4W-2W0W2W4W6W8WATREBAATREBA人工涙液点眼群(AT)n=30レバミピド点眼群(REBA)n=30図8人工涙液点眼群(AT)とレバミピド点眼群(REBA)におけるBUTと角結膜フルオレセイン染色スコアの経時変化**p<0.01,*p<0.05(対応のあるCt検定),††p<0.01,†p<0.05(Kruskal-Wallis多重比較Steel).C0.350.30.25RMS(μm)0.20.150.10.050-4W-2W0W2W4W6W8WATREBA人工涙液点眼群(AT)n=30レバミピド点眼群(REBA)n=30図9人工涙液点眼群(AT)とレバミピド点眼群(REBA)における角膜全高次収差の10秒間連続測定の結果-

ドライアイの評価 ResearchKit®を用いて作成したiPhone アプリケーション「ドライアイリズム」による ドライアイの啓発と新しい大規模臨床研究

2018年7月31日 火曜日

ドライアイの評価ResearchKitRを用いて作成したiPhoneアプリケーション「ドライアイリズム」によるドライアイの啓発と新しい大規模臨床研究NewLarge-ScaleDryEyeResearchbyiPhone“DryEyeRhythm”ApplicationUsingResearchKitR猪俣武範*Iドライアイ啓発の必要性ドライアイは,わが国では約2,000万人,世界では10億人以上が罹患すると推測されるもっとも多い眼疾患である1,2).ドライアイは高齢化社会,VDT(visualdisplayterminals)作業の増加,ストレス社会,環境の悪化などから今後も増加すると考えられている2,3).ドライアイに罹患すると,眼精疲労,眼痛,頭痛,自覚視力の低下,肩こりなどによる生活の質(qualityoflife:QOL)や視覚の質(qualityofvision:QOV)の低下や,仕事や学業などの生産性が低下することが問題となっている4,5).これらに対して,普段からの症状の変動について可能な限り正確な情報を集めることができれば,症状が出る前に予防することや,回復を早めたりすることができるはずである.しかしながら,多くの人が診断に至っておらず,未だ症状に苦しんでいる.このようなアンメットニーズを解決するため,筆者らは,Appleが公開した「ResearchKitR」というアプリケーション専用のフレームワークを使用し,世界初の「ドライアイや眼精疲労といった症状と生活習慣の関連性を明らかにする」ためのアプリケーション「ドライアイリズム」を2016年11月2日にリリースした(図1).IIResearchKitRとは1.ResearchKitRとはResearchKitRは,Appleが2015年3月10にAppleWatchRとともにリリースした研究者向けのオープンフレームワークである.このキットを使ったアプリケーションでは,同意項目や問診などのテンプレートを自由に組み合わせることが可能なほか,iPhoneに内蔵されている加速度センサーやジャイロスコープ,GPS(glob-alpositioningsystem)といったセンサー類の情報やHealthKitRと連携し,健康データを取得することができる.さらにAppleは収集データにアクセスができない仕様になっているため匿名性が保たれる(図2).これまでにわが国では,ResearchKitRを用いたアプリは15個リリースされている(図3,2018年3月16日調べ).ユーザーがアプリの選択を迷わないようにするために,わが国では1疾患につき1アプリケーションしかAppleによって許可されないため,同一疾患に対するアプリは存在しない.順天堂大学はこれまでに6個のアプリをリリースし,そのうち2個のアプリケーション(ドライアイリズムと花粉症アプリケーション:アレルサーチ)を眼科からリリースした.*TakenoriInomata:順天堂大学医学部眼科学教室,戦略的手術室改善マネジメント講座〔別刷請求先〕猪俣武範:〒113-8421東京都文京区本郷3-1-3順天堂大学医学部眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(21)871図1「ドライアイリズム」リリース同意項目・問診等のHealthKitと連携しAppleは収集データにテンプレート健康データを自動収集アクセス不能図2ResearchKitRの機能図3わが国でのResearchKitRを用いたアプリケーション表1ResearchKitRの5つの利点ドライアイ指数まばたき測定実用視力OSDI質問紙票最大開瞼時間→Tear.lmbreakupと相関自覚症状ドライアイ新診断基準図4ドライアイリズムの機能*角膜カンファランスC2018発表(順天堂大学・猪俣武範ら,ドライアイの簡易検査としての最大開瞼時間)C3.プライバシーと安全性ICTを用いた臨床研究では,プライバシーと安全性について関心が集まるところである.まず本研究で収集した情報にはCAppleは一切アクセスしない.また,研究実施に係るデータを取扱う際は,被験者の個人情報は年齢および性別以外は回収しないため,個人を特定できる情報は扱わない.また,回収した情報は個人と関係被験者コードを付して管理し,被験者の秘密保護に十分配慮している.研究で得られた研究協力者の個人的な情報および測定データは,すべてCID化が施され匿名化したうえで厳重なセキュリティーが施されたクラウドサーバー上で厳重に管理している.ID化が施された研究データは,個人の特定ができないことはもちろんであるが,学術会議などで公表する際にも,統計処理が施され,個人情報や団体名,企業名などを伴う形で公表されないことをアプリケーション上に明示し,これらの情報の保護に細心の注意を払っている.CIVドライアイリズムプロジェクトから明らかになったこと1.アプリケーションのダウンロード数ドライアイリズムはC2015年C11月.2016年C10月に18,225ダウンロードされ,これまでのわが国におけるCReserachKitRを用いたアプリケーションで最大のダウンロード数を記録した(図5).本研究では被験者であるユーザーに楽しみながら研究に参加してもらうため,問診による調査だけでなく,iPhoneのインカメラ機能を用いたC30秒間のまばたきを我慢してもらう「まばたき我慢(MBI)」の計測や,算出されたドライアイ指数をSNSでシェアできる機能を搭載した.その結果,多くの被験者にアプリケーションをダウンロードしてもらうことにつながったと考える.ダウンロードの内訳をみてみると,男性C38%,女性62%,年齢の平均はC30.8歳であった.ドライアイは女性に多い疾患のため2,8),通常の診療では男性のデータはなかなか集まらないが,本アプリケーションではたくさんの男性のデータも集めることができた.そのほかには,47都道府県すべてから被験者データを収集することができているため,ドライアイの啓発という意味では全地域に行うことができた.本データをもとに,地域別のドライアイの検討も可能である.C2.ドライアイリズムで収集した情報ドライアイリズムでは,身長・体重・年齢・性別や既往歴,コンタクトレンズ装用の有無,点眼の有無,眼科手術の有無,喫煙,花粉症の有無などの患者基本情報と,生活習慣調査として,VASスケール(visualanalogscale)を用いたストレスレベル,頭痛,目の痒みや睡眠時間,VDT作業時間,水分摂取量,便の回数などを収集した.さらにCCES-D(theCcenterCforCepidemiologicstudiesCdepressionCscale)を用いたうつ病に関する問診を実施した.ドライアイリズムでは,医学研究としての質を担保し,過去のデータと比較するために,これまで使われている代表的な質問紙票であるCOSDIやCCES-D9,10)を採用した.そうすることで,手法自体の信頼性を証明する必要がなくなるからである.しかし,質問紙票とアプリケーションでは結果に差が出る可能性があるが,その結果の信頼性は比較されていないため,今後の検討する必要性がある.本研究では選択バイアスを考慮して内部比較を検討している.たとえば,「ドライアイの自覚症状と生活習慣の関連」を調査することが可能である.OSDIはこれまでの研究から,そのスコアによってCnormal(0-12),mild(13-22),moderate(23-32),severe(33-100)に分類されている6).このスコアを使うことで,ドライアイの自覚症状が重症化している人の生活習慣と,それ以外の人の生活習慣を比較することで,ドライアイの自覚症状の重症化に関連する生活習慣を明らかにすることができる.また,ResearchKitCRを用いた研究では得られた結果をすぐにアプリケーションを通じてCFeedbackすることが可能であるため,研究結果はすぐにドライアイの啓発として使用可能である.(25)あたらしい眼科Vol.35,No.7,2018C87518,50018,00016,41716,00018,00014,00017,50012,00018,22510,00017,0008,00016,5006,00016,4174,00016,0002,00034323511810585117190131140166173515,500Nov.Dec.Jan.Feb.Mar.Apr.May.Jun.Jul.Aug.Sep.Oct.Nov.2016201620172017201720172017201720172017201720172017ダウンロード数(月別/右軸)ダウンロード数(合計/左軸)図5ダウンロード数の推移-