遺伝情報から探る形質間の関係多因子疾患のゲノム解析遺伝的な要因と環境的な要因が相互に発症に影響する病気は多因子疾患とよばれ,その遺伝要因を検索する方法として,ゲノムワイド関連解析(genome-wideassociationstudy:GWAS)が感受性座位を特定するために用いられます.近年のゲノム解析では,GWASで得られた情報を活用し,対象となった形質に関するさまざまな情報を抽出することが可能です.本コラムでは,ゲノム情報による形質間の関係性を探る手法について紹介します.ポリジェニックモデルゲノム解析では,数千を超える無数の遺伝的変異が病気にかかわることが示唆されており,ポリジェニックモデルとよばれています.著者らが報告した日本人の17万人規模の肥満のGWAS1)の結果を例に根拠を説明します.本研究では,bodymassindex(BMI)にかかわる85の感受性領域を同定しましたが,これらは個人間のBMIの違いの2.7%を説明できる程度の影響しか認められませんでした.一方,GWASで対象としたすべての遺伝情報を用いれば,約30%のBMIの違いについて説明可能なことがわかりました.つまり,17万人規模の解析でも遺伝要因の一部しか同定できていないのです.また,それぞれの染色体がBMIの違いをどれくらい説明可能か検証し,“染色体長”との間に正の相関を認めました.これは,長い染色体ほどBMIに対する影響が大きいということであり,BMIに影響する遺伝的変異はゲノム上に満遍なく存在していることが示唆されます.遺伝学的相関:形質で共通した遺伝要因ポリジェニックモデルに基づいて,どれくらいの遺伝要因が二つの形質で共通しているかを定量化する方法が開発され図1共通する遺伝要因ポリジェニックモデルでは,ゲノム上に疾患の原因となる遺伝的変異(☆印)が無数に存在することを想定している.ここで,疾患の発症にかかわる遺伝的変異はある疾患にだけかかわるものもあれば,複数の疾患にかかわるものも存在するはずである.遺伝統計学的手法により,GWAS統計量を用いて二つの形質に共通して影響する遺伝要因を定量的に評価することが可能となっている.秋山雅人九州大学大学院医学研究院眼科学分野ています2).詳細な統計学的な説明は割愛しますが,本手法では,個人レベルの遺伝情報を用いなくてもGWAS統計量情報だけで解析が可能です.共通した遺伝的成分の相関は,一般的な相関係数のように,-1から1までの値で示されます.つまり,正の値をとれば共通したリスクとなる遺伝要因が存在することを意味し,負の値になるときは,片方のリスクとなる遺伝要因がもう一方の形質に対し保護的な影響をもつことを意味します.最近報告した日本人の原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)のGWAS3)では,POAGとの関係が観察研究によって示唆されていた七つの形質との遺伝学的相関を,理化学研究所で実施したGWAS結果を用いて検証しました.この結果,POAGは虚血性脳卒中,心筋梗塞,2型糖尿病と遺伝要因が共通していることを明らかにしました.近年,さまざまな形質のGWAS統計量情報が入手可能であり,“病気とその危険因子”や“病気と病気”の関係性について,遺伝学的な検討を行うことにより理解がさらに深まっていくことが期待されます.文献1)AkiyamaM,OkadaY,KanaiMetal:Genome-wideasso-ciationstudyidenti.es112newlociforbodymassindexintheJapanesepopulation.NatGenet49:1458-1467,20172)FinucaneHK,Bulik-SullivanB,GusevAetal:Partition-ingheritabilitybyfunctionalannotationusinggenome-wideassociationsummarystatistics.NatGenet47:1228-1235,20153)ShigaY,AkiyamaM,NishiguchiKMetal:Genome-wideassociationstudyidenti.essevennovelsusceptibilitylociforprimaryopen-angleglaucoma.HumMolGenet27:1486-1496,2018疾患1疾患2(95)あたらしい眼科Vol.36,No.4,20195170910-1810/19/\100/頁/JCOPY