●連載監修=安川力髙橋寛二50.OCTアンギオグラフィー所見と片岡恵子名古屋大学大学院医学系研究科眼科学感覚器障害制御学教室抗VEGF療法光干渉断層計(OCT)の技術を発展させたCOCTアンギオグラフィーの登場により,造影剤を使用することなく非侵襲的に脈絡膜新生血管(CNV)をとらえることが可能となってきた.本稿ではCOCTアンギオグラフィーを用いた加齢黄斑変性におけるCCNVの描出方法と,抗CVEGF療法に対するCCNVの反応について紹介する.OCTアンギオグラフィーとは光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomography:OCT)アンギオグフフィーは,血球の動きにより生じるOCT画像の微細な変化をとらえることで血管像を描出する.OCTの技術を用いているため,血管の三次元的な情報を含有しており,網膜および一部脈絡膜の任意の層の血管像を解析することが可能である.現在使用されているCOCTアンギオグラフィーの多くは自動層別解析機能が搭載されており,網膜色素上皮(retinalCpigmentCepithelium:RPE)などの高反射な構造物を指標に自動で各層を認識している2).しかし,RPEの断裂や出血・滲出物などによるCRPEラインの不明瞭化,RPE下病変による隆起などがほぼ必発である加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegeneration:AMD)のような黄斑疾患においては,自動層別解析では病変をとらえきれない可能性があり,注意が必要である.脈絡膜新生血管(choroidalCneovascularization:CNV)を確実に描出するためには,手動で層別解析の境界線を設定し,病変を含むように網膜外層からCBruch膜までの解析を行う方法がある.この方法を用いたCNV検出率は高い特異度(約C91%)を示すが,感度は約C50%に停まるとの報告がある3).しかし,ここ数年におけるCOCTアンギオグフィー技術の進歩はめざましく,機種によってはこの報告より感度が高くなってきている可能性はある.COCTアンギオグラフィーでみるAMDAMDの一例を図1に示す.従来の造影検査で描出されたCCNVがCOCTアンギオグラフィーでも同程度に描出されている.血管内皮増殖因子(vascularendotherialgrowthfactor:VEGF)阻害薬投与後C1カ月では,OCT(77)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYaFAICGAbcde図1VEGF阻害薬にて脈絡膜新生血管(CNV)が著減し,著明に縮小した一例a:初診時のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICGA)の早期像.Cb~e:初診時(Cb,d)およびCVEGF阻害薬投与C1カ月(Cc,e)の光干渉断層計(OCT)およびCOCTアンギオグラフィー画像.で示すCCNVがCVEGF阻害薬投与後,著明に減少縮小している.C上の明らかな滲出物の減少とCOCTアンギオフラフィー上でのCCNVの縮小がみられる.一方,OCTアンギオグラフィーの最大の欠点として,血管漏出をとらえることができないことがあげられる4).そのため,OCTアンギオグラフィーのみでCCNVあたらしい眼科Vol.35,No.3,2018C359aFAICGAabbcde図2VEGF阻害薬投与前後でCNVに大きな変化を生じなかった一例a:初診時のCFAおよびCICGAの早期像.Cb~e:初診時(Cb,d)およびCVEGF阻害薬投与C1カ月(Cc,e)のCOCTおよびOCTアンギオグラフィー画像.Cの活動性を評価することは困難である.図2の症例では,VEGF阻害薬投与後C1カ月でCOCT上にて網膜浮腫が消失したことが確認できるが,OCTアンギオグラフィーのCCNV像は治療前後でごくわずかに減少したものの,CNVは依然残存しており,OCTアンギオグラフィーの画像だけでは疾患の活動性は判断できないことがわかる.また,図3の症例はCOCTアンギオグラフィーにて異常血管網とポリープ状病巣が描出されたものの,1年以上にわたり滲出性変化の増強がなく,活動性がないと判断し,抗CVEGF療法を行わなかったポリープ状脈絡膜血管症の一例である.この症例においても,OCTアンギオグラフィーによるポリープ状病巣の描出と疾患活動性は相関していないと考えられる.したがって,CNVの活動性の評価は,従来の画像検査や疾患の経過等と合わせて多角的に判断する必要がある.360あたらしい眼科Vol.35,No.3,2018cFAICGAd図3活動性変化を示さなかったポリープ状脈絡膜血管症の一例a:カラー眼底写真にて橙赤色病変()がみられる.Cb:OCTアンギオグラフィー画像.Cc:FAおよびCICGAの早期像.Cd:OCT像.中心窩下にわずかに漿液性網膜.離がみられる.Ca~cのは同一のポリープ状病巣を示す.おわりにOCTアンギオグラフィーの画像システムは日々進歩しており,今後の技術の発展に期待したい.文献1)KimDY,FinglerJ,ZawadzkiRJetal:OpticalimagingoftheCchorioretinalCvasculatureCinCtheClivingChumanCeye.CProcNatlAcadSciU.S.A.C110:14354-14359,C20132)GaoSS,JiaY,ZhangMetal:Opticalcoherencetomogra-phyangiography.InvestOphthalmolVisSciC57:20163)DeCarloTE,FilhoMA,ChinATetal:Spectral-domainopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCofCchoroidalCneovascularization.OphthalmologyC122:1228-1238,C20154)SpaideCRF,CFujimotoCJG,CWaheedCNK:ImageCartifactsCinCopticalCcoherenceCtomographyCangiography.CRetinaC35:C2163-2180,C2015(78)C