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長期不明熱を併発した内因性眼内炎の1例

2018年6月30日 土曜日

《第51回日本眼炎症学会原著》あたらしい眼科35(6):811.814,2018c長期不明熱を併発した内因性眼内炎の1例藤井敬子馬詰和比古後藤浩東京医科大学臨床医学系眼科学分野CCaseofEndogenousEndophthalmitiswithLong-termUnidenti.edFeverKeikoFujii,KazuhikoUmazumeandHiroshiGotoCDepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity長期不明熱を併発した内因性眼内炎のC1例を経験したので報告する.症例はC75歳の女性.左眼の視力低下を自覚し,当院を紹介受診となった.初診時,左眼の視力は光覚弁,左眼には毛様充血,結膜浮腫とフィブリンの析出が観察され,6時間後には前房蓄膿も出現した.内因性眼内炎を疑い,同日中に水晶体摘出術と硝子体切除術を行った.術後の病歴聴取より繰り返す発熱,原因不明の両膝関節炎の既往がわかり,齲歯を自分で削っていたことも判明した.さらに心臓超音波検査で大動脈弁に疣贅を認め,硝子体液と血液培養からグラム陽性球菌が検出された.感染性心内膜炎の診断で抗菌薬の投与を開始,術後C45日目に眼内レンズの二次挿入を,50日目に大動脈弁置換術を施行した.初診から3カ月後の矯正視力はC0.6で,全身状態と併せ経過良好である.易感染性につながる基礎疾患がなくても,内因性眼内炎が疑われた際には詳細な病歴聴取が診断の鍵となることがある.CWereportacaseofendogenousendophthalmitiswithlong-termunidenti.edfever.A75-year-oldfemalerec-ognizedblurredvisioninherlefteye.Visualacuitywaslightperceptioninthelefteye;ciliaryinjection,conjuncti-valchemosisand.brinintheanteriorchamberwereobserved.Moreover,hypopyonappeared6hourslater.Thepatientunderwentphacoemulsi.cationandvitrectomyonthatday,withsuspicionofendogenousendophthalmitis.Aftersurgery,welearnedmorepreciselyofherhistoryofrepeatedfever,unidenti.edarthritisanddentalcaries.InCaddition,CechocardiographyCrevealedCvegetationConCherCaorticCvalve.CFurthermore,Cgram-positiveCcoccusCwasCdetectedCinCherCbloodCspecimenCandCvitreousCsample.CSheCwasCtreatedCwithCsystemicCadministrationCofCantibioticsCforadiagnosisofendocarditis.Intraocularlensimplantationandaorticvalvereplacementwereperformed45daysand50dayslater,respectively.Herbest-correctedvisualacuitywasimprovedto0.6withgoodphysicalconditionafter3monthsfromtheinitialexamination.Itissuggestedthatdetailedmedicalhistorycouldleadtothediagnosisofendogenousendophthalmitiseveninnon-immunocompromisedpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(6):811.814,C2018〕Keywords:内因性眼内炎,感染性心内膜炎,問診,齲歯.endogenousendophthalmitis,endocarditis,medicalin-terview,dentalcaries.Cはじめに内因性感染性眼内炎は眼外臓器の感染巣から血行性に細菌や真菌が眼内へ移行し発症する.とくに細菌性眼内炎はいったん発症すると短時間で病態が悪化することが多く,失明率も高いため,早期診断,早期治療が良好な視機能の維持のために必要となる.一般に細菌性眼内炎は肝膿瘍や腎盂腎炎などに続発し,基礎疾患として糖尿病・悪性腫瘍を合併することが多いと報告されているが1),まれながらこれらの基礎疾患のない健常人にも発症することもある2).今回,内因性眼内炎の発症と診断を契機に,長期不明熱の原因が判明したC1例を経験したので報告する.CI症例患者:75歳,女性.主訴:左眼の視力低下.既往歴:特記すべきことはないが,遷延する微熱あり.現病歴:2016年C9月末の昼頃から左眼の飛蚊症を自覚し,その後,視力低下も出現したため,同日夕刻に近医を受診し〔別刷請求先〕藤井敬子:〒160-0023東京都新宿区西新宿C6-7-1東京医科大学臨床医学系眼科学分野Reprintrequests:KeikoFujii,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversity,6-7-1Nishishinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo160-0023,JAPAN図1初診から6時間後の左眼所見a:前房内のフィブリンの析出が増加し,前房蓄膿も出現している.Cb:超音波CBモード検査では硝子体腔に高反射エコーがみられる.C図2術2日後に施行された心エコー検査大動脈弁にC7C×5Cmm大の疣贅(矢印)を認める.た.左眼矯正視力はC0.6まで低下しており,網膜出血が観察されたため,網膜静脈分枝閉塞症の疑いで,翌日,東京医科大学八王子医療センター眼科を紹介受診となった.初診時眼所見と経過:視力は右眼C0.8(0.9C×sph.0.25D(cyl.1.00DCAx95°),左眼光覚弁(矯正不能)で,眼圧は右眼C7CmmHg,左眼C21CmmHgであった.左眼には毛様充血,結膜浮腫,前房内にフィブリンの析出が観察され,眼底は透見不能であった.右眼は軽度白内障を認めるのみで,前眼部,中間透光体,眼底に異常を認めなかった.初診からC6時間後には左眼前房中のフィブリンが増加し,前房蓄膿も出現していることが確認された(図1a).超音波CBモード検査では硝子体腔に高反射エコーを認めた(図1b).眼痛と全身倦怠感も増強し,眼所見と臨床経過から内因性感染性眼内炎を疑った.なお,入院時の全身検査所見は体温C37.2℃,採血では白血球数C4,340/ml(好中球C53%),CRPC3.20Cng/dlと軽度上昇していたが,胸部CX腺,胸腹部Ccomputedtomog-raphy(CT)ではとくに異常はなかった.心電図では左軸偏位と完全左脚ブロックがみられた.内因性感染性眼内炎の診断のもと,紹介同日に白内障手術および硝子体手術を計画した.手術直前に血液培養を施行し,バンコマイシン,セフタジジムを含む灌流液の灌流前に前房水および硝子体液を採取し,培養検査に提出した.手術方法は,瞳孔領を覆っていた前眼部のフィブリンを除去し,水晶体摘出後,硝子体手術に移行した.術中の眼内所見であるが,硝子体腔に高度の混濁を認め,眼底には広範囲にフィブリンが析出し,網膜血管は白鞘化を呈しており,網膜内出血も眼底のすべての象限で確認された.術翌日は角膜浮腫が強く,眼底は透見不能であったが,前房蓄膿はみられず,感染については一定の制御が得られていると判断し,バンコマイシンとセフタジジムの頻回点眼による治療を継続した.術後に改めて病歴を聴取したところ,数年前より原因不明の熱発を認め,さらにC3年前に両膝関節炎に罹患し,他院で精査するも原因は不明であったことが判明した.全身的精査目的に当院の総合診療内科を受診したところ,聴診により心雑音が聴取されたため心臓血管外科で精査となった.後に心臓超音波検査を行ったところ,大動脈弁にC7C×5Cmm大の疣贅を認めた(図2).また,術中に採取した硝子体液と静脈血の双方からグラム陽性球菌であるCAerococcus属が検出され,菌血症と心エコーの所見から感染性心内膜炎の診断に至った.その後,再度病歴を聴取したところ,齲歯を自分自身で削り取っていたことが判明し,未治療の齲歯が原因とされる感染性心内膜炎に続発した内因性眼内炎であったことが推察された.感染性心内膜炎に対しては硝子体手術のC2日後から4週間のアンピシリンとC2週間のゲンタマイシンの点滴加療を開始した.術後の眼所見は前眼部炎症,硝子体混濁も徐々に軽快していったため,術後C16日目よりレボフロキサシンとセフメノキシムに点眼を変更し,術後C45日目に眼内レンズの二次挿図3初診から3カ月後の左眼所見a:前眼部に異常はなく,矯正視力はC0.6まで改善した.Cb:眼底には周辺部にわずかな点状出血を認めるのみである.C入を行った.初診からC3カ月後には左眼視力はC0.6(矯正不能)まで改善し,眼底には周辺部に点状出血をわずかに認めるのみとなり,良好な経過をたどっている(図3a,b).感染性心内膜炎については抗菌薬による治療後,血液培養は陰性となったものの,大動脈弁に疣贅が残存していたため,硝子体手術からC50日目に大動脈弁置換術が行われ,その後は今日に至るまで経過良好である.CII考按内因性眼内炎は体内にある何らかの感染巣から,細菌や真菌が血行性に眼内に転移して生じる.秦野らによれば,悪性腫瘍,感染症,糖尿病,膠原病などの背景因子や,大手術,intravenoushyperalimentation(IVH),ステロイド投与を契機に発症することが多いとされるが1),まれながら健常人にも発症することがある2).そのような場合にはとくに診断に苦慮することが推察され,実際,本疾患は誤診率の高い疾患としても知られている3).細菌性眼内炎の場合,グラム陰性桿菌が起炎菌となることが多く,おもな原発感染巣として尿路,消化器,呼吸器における感染が多いとされる1).また,わが国においては比較的まれではあるが,米国では感染性心内膜炎による眼内炎が40%を占めるといわれている4).感染性心内膜炎は心内膜に疣贅を形成し,塞栓症や心障害など,多彩な臨床症状を呈する全身性・敗血症性疾患である5).起炎菌はグラム陽性球菌によることがC80%以上で,何らかの基礎心疾患を有する症例がC80%を占めるが,まれに心疾患の既往がない例に発症することもあるとされる6).また,歯科治療を契機に発症した例がC30%を占め,そのほか消化管・泌尿生殖器処置後や,中心静脈カテーテル留置などの背景因子をもつことが多いといわれている6).今回の症例では,病歴の聴取と治療開始前の検体採取により,未治療の齲歯が原因で感染性心内膜炎に罹患し,遷延する微熱を経て眼内炎を発症したことが判明した.特記すべき基礎疾患がないにもかかわらず感染性心内膜炎を発症したことと,その感染性心内膜炎が感染巣となって内因性感染性眼内炎を発症した点は,比較的まれな症例であったと思われる.いずれにしても詳細な病歴聴取が診断につながったといえよう.細菌性眼内炎は初診の段階で正しく診断されるのはC50%程度との報告もあり,誤診率の高い疾患である7).発症すると進行が早く,著しく視機能を損なう可能性があるため,視力予後の改善には早期診断に加え,抗菌薬の全身・硝子体投与と硝子体手術が必要とされる7).本症例においても早期発見,診断に加え,抗菌薬の投与,硝子体手術によって視力の回復を得ることができた.明らかな既往歴や眼科受診歴などがなくても,疑わしき眼所見が観察された際には眼内炎の可能性を念頭に入れ,早期の治療介入が必要である.わが国では感染性心内膜炎が感染巣となって発症することは少ないものの,あらゆる可能性を考慮しながら全身的精査を行っていくことが肝要であろう.CIII結論長期不明熱のみられた患者が転移性内因性眼内炎を契機に感染性心内膜炎の診断に至り,治療によって視機能および全身症状の回復が得られたC1例を経験した.特記すべき基礎疾患がなくても,内因性眼内炎の原因検索として詳細な病歴聴取が重要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)秦野寛,井上克洋,的場博子ほか:日本の眼内炎の現状─発症動機と起炎菌.日眼会誌95:369-376,C19912)MatsuoCK,CNakatsukaCK,CYanoCYCetCal:GroupCBCstrepto-coccalCmetastaticCendophthalmitisCinCelderlyCmanCwithoutCpredisposingillness.JpnJOphthalmolC42:304-307,C19983)BinderCMI,CChuaCJ,CKaiserCPKCetCal:EndogenousCendop-thalmitis:An18-yearreviewofculture-positivecasesatatertiarycarecenter.MedicineC82:97-105,C20034)PringleSD,McCartney,MarshallDAetal:Infectiveendo-carditisCcausedCbyCStreptococcusCagalactiae.CIntCJCCardiolC24:179-183,C19895)宮武邦夫,赤石誠,石塚尚子ほか:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン.JCS,20086)NakataniCS,CMitsutakeCK,COharaCTCetCal:RecentCpictureCofCinfectiveCendocarditisCinCJapan.CCircCJC77:1558-1564,C20137)OkadaAA,JohnsonRP,LilesWCetal:Endogenousbac-terialCendohthalmitis.CReportCofCten-yearCretrospectiveCstudy.OphthalmologyC101:832-838,C1994***

基礎研究コラム 13.前房水の病的変化による角膜内皮細胞の減少

2018年6月30日 土曜日

前房水の病的変化による角膜内皮細胞の減少山口剛史なぜ角膜内皮細胞が減るのか?角膜内皮機能不全は,角膜移植後の移植片不全のもっとも多い原因です.角膜内皮細胞が減少することが原因ですが,その減少には個体差があります.これまでさまざまな研究がされましたが,その原因は特定されませんでした.筆者らは「虹彩がぼろぼろ」の症例で角膜内皮細胞の減少が速いことを臨床的に証明しました1).解剖学的に角膜内皮細胞と虹彩の間には「前房水」が存在します.そこで,「前房水の病的変化が角膜内皮細胞密度減少を引き起こす」と仮説を立て,前房水サイトカイン濃度を調べました.すると,興味深いことにさまざまな病態でサイトカイン濃度が上昇し,その上昇パターンが異なることがわかりました(図1)2).つまり一見同じような前房水に見えても,ずいぶん炎症特性が異なるということです.さらに,前房水サイトカイン濃度と虹彩損傷,前房水サイトカインと角膜内皮細胞密度にも強い相関があることがわかりました.角膜内皮細胞の維持相関があってもそれが原因か結果かはわかりません.そこで,角膜移植前の前房水サイトカインと術後の角膜内皮細胞の減少を前向きに調べました.すると術前に特定のサイトカイン濃度が高い症例で,術後の角膜内皮細胞密度が減ることがわかってきました(図2)3).これは,「前房水で角膜移植術後の予後が決まる」ということ,さらに,一部の「水疱性角膜症とは,虹彩損傷を原因とする前房水の病的変化による角膜内皮細胞の変性疾患」であることを示唆します.マルチオミクス関連による病態解明サイトカインは比較的測定しやすく,今後バイオマーカーになる可能性をもっていますが,これが角膜内皮細胞減少の真の病態でない可能性があります.角膜移植後の角膜内皮細胞減少による失明患者を救うためには,どうしたらいいのでしょうか?近年の基礎分野の技術革新は著しく,微量サンプルからの蛋白質や転写因子の網羅的解析が可能になってきました.このオミクス技術を駆使して,真の病態解明を通じて難治性角膜疾患を救うため,膨大な臨床データ解析と平行してトランスレーショナルな研究を地道に進めています.前房水の慢性炎症が角膜内皮細胞減少を引き起こす筆者らの一連の研究から「前房水の慢性炎症が角膜内皮細胞減少につながる」ことが示唆されました.では,研究成果図1疾患による前房水サイトカイン濃度の違い一見同じような前房水に思えても,原疾患によって前房水のサイトカイン上昇パターンが異なる.正常状態角膜内皮減少疾患図2角膜内皮細胞が減少す角膜る病態角膜内皮細胞角膜移植後の角膜内皮細胞の減少と,虹彩損傷・前房水炎症が強く関連する.前房水の慢性炎症虹彩損傷をどうしたら患者に届けられるでしょうか.いくつもの方法が考えられます.ひとつは,前房水の慢性炎症を予防すること,虹彩を損傷するような余計な手術をしないこと,手術をする際は虹彩を傷つけないように気をつけることです.次に,角膜移植前後に前房水の慢性炎症を抑制するためステロイド点眼など積極的に使用すること*.あとは,虹彩損傷が強い患者には,より元気な角膜を斡旋すること*.近い将来,角膜内皮細胞の細胞注入療法が実現するとき,より慢性炎症に強い細胞株を選別できれば,現在の角膜移植では救えない患者を救える明るい未来があると思います.*注:今後,臨床研究で検証する必要があります.文献1)IshiiN,YamaguchiT,YazuHetal:FactorsassociatedwithgraftsurvivalandendothelialcelldensityafterDes-cemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty.Scienti.cReports28:25276,20162)YamaguchiT,HigaK,SuzukiTetal:Elevatedcytokinelevelsintheaqueoushumorofeyeswithbullouskeratop-athyandlowendothelialcelldensity.InvestOphthalmolVisSci57:5954-5962,20163)YazuH,YamaguchiT,AketaNetal:Preoperativeaque-ouscytokinelevelsareassociatedwithendothelialcelllossafterDescemet’sstrippingautomatedendothelialker-atoplasty.InvestOphthalmolVisSci,inpress(93)あたらしい眼科Vol.35,No.6,20188010910-1810/18/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 181.黄斑上膜自然剥離後に発症する黄斑円孔(初級編)

2018年6月30日 土曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載181181黄斑上膜自然.離後に発症する黄斑円孔(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに黄斑上膜(epiretinalmembrane:ERM)は後部硝子体.離(posteriorvitreousdetachment:PVD)の進行とともに自然.離することがある.ERMの自然.離後にERMが再発したとする報告は過去に散見される1)が,黄斑円孔(macularhole:MH)が発症することもある.筆者らは過去に同様の症例を経験し報告したことがある2).●症例68歳,男性.右眼のERMが自然.離し(図1,2),矯正視力は1.0に改善した.しかし,1年後にMHをきたした(図3).硝子体手術(parsplanavitrectomy:PPV)の術中所見としてMHの鼻側に薄いERMの再発を認め(図4),このERMによる接線方向の牽引でMHが生じたと推測した.ERMおよびMH周囲の内境界膜を.離し,液空気置換を施行した.術後MHは閉鎖し,矯正視力は0.1から0.5に改善した(図5).●本症例の発症機序一般にPVDの進行に伴いERMが自然.離した後は,黄斑部への硝子体牽引が解除されていると考えられる.しかし,その後もERMが再発することから,黄斑部に細胞増殖をきたす足場が残存している可能性が考えられる.このようなERM自然.離後の増殖性変化が網膜の接線方向の牽引を引き起し,MHが発症する可能性は十分に考えられる.近年,PPV後晩期にMHが生じたとする報告3,4)も散見され,その多くが術後に形成されたERMによる網膜の接線方向の牽引が原因と推測している.以上のことから,ERMが自然.離した後も,OCTによる経過観察が必要と考えられる.文献1)森山侑子,南政宏,中泉敦子ほか:黄斑上膜自然.離後に黄斑上膜再発をきたした3症例.眼科手術24:489-493,(91)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1ERM自然.離前の眼底写真ERM()を認める.後部硝子体は未.離でありWeissringは認めない.(文献3より引用)図2ERM自然.離後の眼底写真PVDに伴うERMの自然.離を認める().(文献3より引用)図3MH発症時のOCT写真ERM自然.離1年後にMHが生じた.(文献3より引用)図4硝子体手術中の所見MHの鼻側に薄いERMの再発を認めた.(文献3より引用)図5硝子体手術後のOCTMHは閉鎖している.(文献3より引用)20112)家久耒啓吾,森下清太,鈴木浩之ほか:黄斑上膜自然.離後に発症した黄斑円孔の1例.眼科手術31:113-117,20183)FabianID,MoisseievE,MoisseievJetal:Macularholeaftervitrectomyforprimaryrhegmatogenousretinaldetachment.Retina32:511-519,20124)LeeSH,ParkKH,KimJHetal:Secondarymacularholeformationaftervitrectomy.Retina30:1072-1077,2010あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018799

眼瞼・結膜:コンタクトレンズとドライアイ

2018年6月30日 土曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人39.コンタクトレンズとドライアイ東原尚代ひがしはら内科眼科クリニック,京都府立医科大学眼科渡辺彰英京都府立医科大学眼科ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用に伴う眼乾燥感には,さまざまな要因が関与する.眼瞼・結膜においては結膜上皮の病理学的変化だけでなく,SCL表面と眼瞼,SCLエッジと球結膜の摩擦や,結膜弛緩症との関連が注目されている.摩擦軽減をめざしたレンズ素材やデザインの選択が眼乾燥感の症状改善に期待できる.●はじめにコンタクトレンズ(CL)を装用すると,結膜上皮の扁平上皮化生やゴブレット細胞数の減少が生じる.近年,ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用時の眼乾燥感は,SCL表面と眼瞼,エッジと球結膜の摩擦や,結膜弛緩症と関連することが注目されている.ここではCSCL装用時の眼乾燥感について,眼瞼と結膜に焦点をあてて概説する.C●SCL装用で生じる摩擦SCLを装用すると,涙液はCSCLの上と下に分断される.インターフェロメトリーを用いてCSCL上と下の涙液厚を計測すると,SCL上の涙液は装用直後から薄くなることが知られている1).その結果,SCL表面とClid-wiper,SCLエッジと球結膜との摩擦が増加して眼乾燥感と影響することが示されている2).一般に球結膜は角膜よりも知覚神経の密度が低いが,Cochet-Bonnet知覚計を用いた検討3)では,眼瞼結膜辺縁部の知覚は角膜に近い閾値を示すことが報告されている点は大変に興味深い.また,SCLの摩擦係数はメーカーによって大きく異なり,SCL自体に親水性をもたせた素材ほど摩擦係数は低く,摩擦係数とC1日終わりの装用感との間には相関関係があることが報告されている4).第三世代のシリコーンハイドロゲルCSCLは高い酸素透過性を有しながら,ハイドロゲル素材に近い柔らかさがある.SCL装用時の眼乾燥感の対策として,摩擦係数が低いCSCL素材を選ぶことがポイントになるだろう.C●コンタクトレンズと結膜弛緩症結膜弛緩症は高齢者に高頻度にみられ,加齢や瞬目による機械的影響を背景に結膜の弾性線維の断裂が発症に(89)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1結膜弛緩症のElasticavanGieson染色所見フラグメント様に変化したコイル状の短い弾性線維所見が特徴である.関与する5,6)(図1).一方,若年でもCCL装用者では結膜弛緩症の頻度が高く7),CL装用者で眼不快感を有する人は無症状の人と比較して結膜弛緩症の重症度が有意に高いと報告されている8).C●結膜・眼瞼から考えるSCL装用時の眼乾燥感対策症例はC31歳,男性.トーリックCSCL(高含水ハイドロゲル素材,ダブルスライブオフ)装用時の眼乾燥感があり,鼻側および耳側の結膜弛緩症とその部位に一致してClid-wiperCepitheliopathy(LWE)を認めた(図2).トーリックCSCLは単焦点CSCLより直径が大きく,レンズ周辺部の厚みがあるため,球結膜への圧迫が生じやすい(図3).この症例では,低含水で摩擦係数の少ないシリコーンハイドロゲル素材(プリズムバラストデザイン)に変更したところ,LWEは軽減し自覚症状も改善した(図4).あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C797図2症例(31歳,男性,トーリックSCL装用)のフルオレセイン染色所見a:耳側の球結膜に結膜弛緩症を認める.b:ダブルスライブオフデザインはC3-9時方向の厚みが強く,球結膜への圧迫所見が生じやすい.結膜弛緩症の部位に一致した上下のCLWEを認めた.図3SCL装用時の球結膜への圧迫所見レンズサイズの大きなトーリックCSCL(とくにダブルスライブオフデザイン)だけでなく,強度近視でもレンズ周辺の厚みが強いために球結膜への圧迫が生じやすい.●おわりにSCL関連の眼乾燥感について眼瞼・結膜から考えてみた.SCL装用でいったん結膜弛緩症が生じると改善はむずかしいが,SCL素材やデザインを見直すことで球結膜および眼瞼結膜への摩擦が軽減され,眼乾燥感の改善が期待できる.それでもなお残る症状には,ドライアイ点眼を考慮するとよい.文献1)NicholsCJJ,CKing-SmithCPE:ThicknessCofCtheCore-andCpost-contactClensCtearC.lmCmeasuredCinCvivoCbyCinterfer-ometry.IOVSC44:68-77,C20032)横井則彦:涙液からみたコンタクトレンズ.日コレ誌C57:C222-235,C2015798あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018図4トーリックSCLデザイン見直し後のフルオレセイン染色(図2と同一症例)低含水のシリコーンハイドロゲル素材で,かつ,6時方向に厚みのあるプリズムバラストデザインに変更したところ,LWE所見は改善した.C3)Navascues-ComagoCM,CMaldonado-CodinaCC,CMorganPB:Mechanicalsensitivityofthehumanconjunctiva.Cor-nea33:855-859,C20144)ColesCCML,CBrennanCNA:Coe.cientCofCfrictionCandCsoftCcontactClensCcomfort.COptomCVisCSciC2012:e-abstractC1256035)渡辺彰英,横井則彦,木下茂ほか:結膜弛緩症における弛緩部結膜の病理組織学的検討.あたらしい眼科C17:585-587,C20006)WatanabeA,YokoiN,KinoshitaSetal:Clinicopathologicstudyofconjunctivochalasis.CorneaC23:294-298,C20047)MimuraT,UsuiT,YamamotoHetal:Conjunctivochala-sisCandCcontactClenses.CAmCJCOphthalmolC148:20-25,C20098)PultCH,CPurslowCC,CBerryCMCetCal:ClinicalCtestsCforCsuc-cessfulCcontactClensCwear:relationshipCandCpredictiveCpotential.OptomVisSci85:E924-929,C2008(90)C

抗VEGF治療:滲出型加齢黄斑変性における個別化治療・私のこだわり

2018年6月30日 土曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二53.滲出型加齢黄斑変性における佐々木真理子国家公務員共済組合連合会立川病院眼科個別化治療・私のこだわりVEGF阻害療法の登場により,滲出型加齢黄斑変性の視力予後は大きく改善した.しかし,治療はしばしば長期にわたるため,再燃を防ぎ,再燃時には速やかに治療し鎮静化を得る維持期の治療が重要である.理想的には,個々の症例の再発間隔に応じた“個別化治療”が望ましく,より良い治療レジメンが模索されている.C長期の視力維持には,可能なかぎり再燃を防ぎ,再燃現在までの治療レジメンの流れと問題点時に速やかに治療し鎮静化を得る維持期の治療が重要で滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegenera-ある.この点,投与回数が多いことは有利だが,血管内皮tion:AMD)に対するラニビズマブの毎月投与により,増殖因子(vascularendotherialgrowthfactor:VEGF)ETDRS視力がC6~10文字改善し,2年間視力を維持し阻害薬投与は全身および局所合併症や治療費を含めた患うることが,MARINA,ANCHOR試験で示された.者負担などの問題があり,必要最小限の投与が望ましその後,PrONTO試験ではラニビズマブC3回投与(導い.このため,理想的には個々の症例の再発間隔に応じ入期)後に毎月経過観察を行い,再発時に投与するCproて治療を行う個別化治療が望まれる.PRN法は再発間renata(PRN)法が試みられ,投与回数が少なく視力成隔に応じ治療する個別化治療だが,厳密に行われないと績が毎月投与と同等なため広く行われた.しかし,実臨過少治療による視力低下を避けられない.そこで,再燃床に近い形のCPRN法で行われたCSEVEN-UP試験では,前の投与と個別化治療の両立をめざし,投与時に滲出が治療開始からC7.3年で治療開始時よりCETDRS視力でなければ次回までの投与間隔を延長し,再燃があれば短8.6文字悪化し,厳密に行われないCPRN法では長期間縮するCtreatandextend(TAE)法が考案された.の視力維持が困難なことが明らかとなった.一方,TAE法は,投与間隔を個々の再発間隔に近づけるこVIEW試験でのアフリベルセプトの連続C3回投与後のC2とができ,治療回数,受診回数は毎月投与より少なく,カ月毎投与によるC1年後の視力は,ラニビズマブの毎月視力改善維持効果は毎月投与と同等とされる.しかし,投与と同等であった.SUSTAIN試験では,ラニビズマブのC3回連続投与後,図1再発頻度の低い症例・ポリープ状脈絡膜血管症3回の連続投与後,視力は(0.03)から(1.0)に改善.以後C4年間再発していない.Ca:治療前眼底写真,Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影,Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影,Cd:OCT,Ce:OCT(3回連続投与後),f:OCT(4年後).(87)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7950910-1810/18/\100/頁/JCOPY図2再発頻度の高い症例・1型脈絡膜新生血管TAE法でC8週間隔の治療では網膜下液は消失するが,10週に延長すると再発を繰り返す.8週での固定投与とした.Ca:治療前眼底写真,Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影,Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影,d:OCT,e:OCT(8週間隔),f:OCT(10週間隔).PRN法でC1年目に追加投与を要しなかった症例はC20.5%,1~2回要したものはC33.2%で,これらC53.7%では改善した視力は維持されており,1年目に最低C4回以上の追加投与を要するCTAE法では,最低C50%以上の症例で過剰投与の可能性がある.より良い治療レジメンをめざしてこれらの点を克服するため,さまざまな治療レジメンが提案された.Observeandplan法,最初の再発時からCTAE法を開始する関西医大法1),安川らのCPRNの反応で治療方針を修正する方法2)は,いずれも連続投与後の再発間隔により,以後の治療を個々の疾患活動性に合わせ行う方法で,再発間隔が長い症例への過剰投与を抑え,本来の再発間隔に近い治療を早期に実現できる.さらに病態から最適な治療法を推測するために,Ashraf3)らは文献的考察から,3回投与後の滲出性変化の状態と,滲出の状態,色素上皮.離,後部硝子体.離などの形態学的特徴を組み合わせ,TAE法の投与間隔延長速度を調整するレジメンを提唱した.筆者らも形態学的特徴や連続投与後の反応,後述の色素上皮下病変の変化から再発頻度を推察し,連続投与終了後に患者個別にレジメンの選択肢を提示している.再発が頻繁でないと予想されれば,初期に再発間隔を確認後,PRN法もしくはその間隔からのCTAE法とする(図1).頻繁な再発や治療への抵抗が予想されれば,活動性が十分低下するまで連続投与しCTAE法とする.再発頻度が高い場合は,治療間隔の延長は急がず,延長時の増悪を避けるため,固定投与を選択する(図2).視力予後796あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018をもっとも重視するが,患者の背景(唯一眼,通院,年齢,経済,全身状態,QOL)も勘案し,患者と納得のいく治療法を選択するよう努めている.今後は脈絡膜病態についても加味する必要があるだろう.おわりに再発間隔に応じた個別化治療を行うため,レジメンの改良とともに,活動性を反映し,再発を予測するバイオマーカーの探索も行われている.最近では,光干渉断層計(OCT)angiographyと疾患活動性の関連が検討されているが,筆者らも,導入期終了後早期の色素上皮下面積・体積を定量し,その増大がC6カ月以内の再発に関連することを報告している4).文献1)OhnakaCM,CNagaiCY,CShoCKCetCal:ACmodi.edCtreat-and-extendregimenofa.iberceptfortreatment-naivepatientsCwithneovascularage-relatedmaculardegeneration.Grae-fesArchClinExpOphthalmol255:657-664,C20172)YasukawaT:Response-basedindividualizedmedicineforneovascularage-relatedmaculardegeneration.ExpertRevOphthalmolC10:105-112,C20153)AshrafCM,CSoukaCA,CAdelmanCRA:Age-relatedCmaculardegeneration:usingCmorphologicalCpredictorsCtoCmodifycurrenttreatmentprotocols.ActaOphthalmol2017[Epubaheadofprint]4)SasakiCM,CKatoCY,CFujinamiCKCetCal:AdvancedCquantita-tiveanalysisofthesub-retinalpigmentepithelialspaceinrecurrentCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CPLoSOneC12:e0186955,C2017(88)C

緑内障:器具を留置する流出路再建術

2018年6月30日 土曜日

●連載216監修=岩田和雄山本哲也216.器具を留置する流出路再建術庄司信行北里大学医学部眼科緑内障の分野でもインプラントは広まりつつあり,2012年に認可されたC3種のチューブシャントに続き,2017年には,これらとは使用目的の異なる第C4のインプラント,iStent(Glaukos社,米国)が使用できるようになった.低侵襲緑内障手術(MIGS)の主流ともいえる「器具を留置する流出路再建術」について述べる.C●術式の淘汰最近は米国食品医薬品局(FoodandDrugAdminis-tration:FDA)の審査が厳しくなり,米国での緑内障関連学会よりもヨーロッパでの緑内障関連学会のほうが,新しい技術,製品に触れる機会が増えた.筆者は2012年にグラスゴウで開催された第C6回国際緑内障手術会議(6thCICGS)に参加したが,そのときにはこれまで見たこともないインプラントや術式が紹介されていた.それらのなかから,安全性が高く,操作性も良好で洗練された術式が導入されてきているように思われる.C●Schlemm管に留置するデバイス・iStentトラベキュラーマイクロバイパスステントシステム(iStent)1,2)米国ではC2012年C6月に,わが国ではC2016年C12月に認可を受けたチタン製の眼内ステントで,長さC1.0Cmm,高さC0.33Cmm,シュノーケルの長さC0.25Cmm,内径C120μmのヘパリンでコーティングされている.L字型をしており(図1),長い部分をCSchlemm管に挿入し,留置する.短いシュノーケルが前房側に露出し,その開口部図1iStentの外観L字型の長い部分(ハーフパイプ)をCSchlemm管に挿入する.前房内に露出した短い部分(シュノーケル)から房水がCSchlemm管に流入する.(Glaukos社提供)(85)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYから房水がステント内を通り,Schlemm管に流入するようになっている.専用のインサーターとセットで右眼用と左眼用がある.図2は左眼に対してCiStentの挿入を行う直前の写真である.現在,日本眼科学会の指導の下で行われているCiStent講習会を受講し,その後,模擬眼へのインプラントなどのハンズオンや,手術症例の立ち会いを経て使用することができるようになる.適応に関しては,白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準3)に則って選択されなければならない.海外では複数個の挿入も検討されている2)が,わが国では,水晶体再建術時にC1個だけと定められている.挿入後のCiStentの位置は隅角鏡により確認できるが,当院では前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)に搭載されているCblebrastermodeのCEn-face画像でも位置を確認することができた(図3).位置の経時的な観察に応用できるのではないだろうか.なお,iStentはすでに第二世代(iStentCinject,図4)が開発されていて,こちらは最初からC2個の挿入用に作図2iStent挿入左眼用のCiStentを挿入するところ.Schlemm管に挿入後,インサーターからリリースし,Schlemm管内にCiStentを留置する.あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C793図3iStentの前眼部OCTによるEnface画像前眼部COCT(CASIA2)に搭載されたCblebrastermodeのCEn-face画像.赤丸で囲まれた部分にCiStentが観察される.られている.・HydrusMicrostent(Hydrus)2,4)Sca.ord-likeimplant,つまり足場のような構造をし,少し弯曲した筒状のインプラントである.ニッケルとチタンの合金で全長がC8Cmmもあり,時間でいえばC3時間分の長さである.それだけCSchlemm管を拡張しても,眼圧下降効果は他のデバイスとほぼ同等のようである4).発売元のCIvantis社(米国)から,2017年C4月に進行例や単独手術(つまり白内障と併用しない)の臨床試験を開始する許可がCFDAから得られたとアナウンスされた.Schlemm管の弯曲に対してうまく収まるのか,とくに,眼圧が下がって眼球が多少歪みやすくなった状況で,ステントの先が線維柱帯や強膜を傷つけ,位置が移動することはないのか,などの懸念はある.その点,ポリイミド製の軟らかいCStegmannCCanalCExpander(OPHTHALMOS社,スイス)5)は,ファイルノートのバインダーのような形状をしており,全長C9mmでHydrusより少し長いものの,Schlemm管内に留置後の安定性はよいのではないだろうか?ヨーロッパでは2012年にCCEマークを取得している.ただし,ホームページ上の手術ビデオでは,眼外からのCcanaloplastyに続けて挿入する方法が紹介されている.C●脈絡膜下腔への流出をうながすインプラント毛様体解離後の低眼圧にヒントを得て開発された方法で,以前はCGoldCMicro-Shunt(SOLX社,米国)1)が注目を集めていたようだが,やはり最近はより小型で挿入も容易なステント類に取って代わられたようである.Cy794あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018図4iStentinjectiStentの第二世代にあたるCiStentinjectインサーターには,最初からC2個のCiStentCinjectが装着されている.(Glaukos社提供)PassCMicro-Stent(TranscendCMedical社,米国)1,2,6),iStentSupra(Glaukos社)1,2)が注目されている.C●まとめわが国でC2010年にCTrabectome手術の認可がおりてから,徐々にCMIGSに対する関心が高まり,器具を留置する術式としてCiStentがその先陣を切った.今後,さまざまな術式(デバイス)が控えているが,本当に眼圧下降術が必要なのかどうか,適応は慎重に判断してほしい.と同時に,隅角や房水流出の主経路に関する理解とともに,これらの領域のさらなる研究の進歩を期待したい.文献1)庄司信行:緑内障の新手術C2:MIGSとこれに関連した新しい術式.あたらしい眼科32:813-820,C20152)LaviaCC,CDallortoCL,CMauleCMCetCal:Minimally-invasiveglaucomaCsurgeries(MIGS)forCopenCangleCglaucoma:ACsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CPLoSCOneC12:Ce018314,C20173)白内障手術併用眼内ドレーン会議:白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準.日眼会誌120:494-497,C20164)FeaAM,RekasM,AuL:EvaluationofaSchlemmcanalsca.oldCmicrostentCcombinedCwithCphacoemulsi.cationCinroutineCclinicalCpractice:Two-yearCmulticenterCstudy.CJCataractRefractSurgC43:886-891,C20175)GrieshaberCMC,CGrieshaberCHR,CStegmannCR:ACnewCexpanderCforCSchlemmCcanalCsurgeryCinCprimaryCopen-angleCglaucoma-interimCclinicalCresults.CJCGlaucomaC25:C657-662,C20166)VoldCS,CAhmedCII,CCravenCERCetCal;CyPassCStudyGroup:Two-yearCCOMPASSCtrialCresults:SupraciliaryCmicrostentingCwithCphacoemulsi.cationCinCpatientsCwithCopen-angleCglaucomaCandCcataracts.COphthalmologyC123:C2103-2112,C2016(86)

屈折矯正手術:Epi-onクロスリンキング

2018年6月30日 土曜日

監修=木下茂●連載217大橋裕一坪田一男217.Epi.onクロスリンキング愛新覚羅維アイクリニック大井町東京大学医学部眼科学教室角膜クロスリンキング(CXL)はC2003年にドイツのCWollensak,Seilerらにより開発された治療法で,長波長紫外線(UVA)に対するリボフラビン感受性を利用し,角膜実質コラーゲン線維の架橋を強め,剛性を高める方法である.現在まで世界中でC20万眼以上施術されており,円錐角膜,LASIK後角膜拡張症,ペルーシド角膜辺縁変性などの進行性角膜拡張疾患の進行を抑制するための治療法として有効性と安全性が確立されてきた.近年,合併症がさらに少ないCEpi-on法も開発され,新たな可能性が期待されている.●角膜クロスリンキング(cornealcrosslinking:CXL)の原理370Cnmの長波長紫外線(ultravioletCA:UVA)で励起された光感受性物質であるリボフラビン(ribo.avin)が酸素分子との反応により,活性酸素の一種である一重項酸素を産生する.その結果,角膜実質コラーゲン線維の架橋(crosslink)結合が増加し,角膜全体の強度が高まる(図1).C●標準法の術式Wollensakらが提案したドレスデン法(DresdenCproto-col)は標準法として広く使われている1).手順は図2aに示す.リボフランビンを実質内に浸透させるために,バリア機能の強い角膜上皮を.離する必要があることと,UVAによる角膜内皮障害を予防するために最薄部角膜厚がC400Cμm以上であることが重要なポイントになる.C●Epi.on法の術式標準法の短所として角膜上皮掻爬に伴う疼痛,易感染図2標準法とEpi.on法の比較Epi-on法では角膜上皮を.離する代わりに,強化リボフラビンを用い,リボフラビンを実質内に浸透させる.また,最薄部角膜厚がC380Cμm以上あれば施術可能であり,術後治療用ソフトコンタクトの装用が不要である.a標準法・点眼麻酔・角膜上皮.離性などの合併症があげられ,これを改善させるためにLeccisottiらがC2010年にCEpi-on法(epithelium-onCXL:Epi-onCCXL,transepithelialCCXL:TE-CXL)を開発した.それに対して上皮を.ぐ従来法はCEpi-o.法とよばれるようになった.・等張性0.1%リボフラビン点眼30分・角膜厚測定.400μm以上の場合等張性0.1%リボフラビン点眼.400μm未満の場合低張性0.1%リボフラビン点眼を400μm以上になるまで継続・紫外線照射装置にて370nmのUVAを3mW/cm2の照射強度で30分間照射・治療用コンタクトレンズ装着(83)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7910910-1810/18/\100/頁/JCOPY筆者の施設で行っているCEpi-on法のフローチャートを図2bに示す(紫外線照射時は高速法も併用している).Epi-on法では角膜上皮を.離する代わりに,角膜上皮のバリアを破壊し,薬剤の浸透性を上げるケミカルエンハンサーを添加した強化リボフラビンを用い,リボフラビンを実質内に浸透させる.代表的な強化リボフラビン製剤としてCParaCel(Avedro,CUSA)やCRICROLINTE(SOOFT,CItaly)があげられる.筆者は通常,強化リボフラビンをC4分間点眼後,ピュアのリボフラビンを6分間点眼する.また,角膜上皮厚を含めうるため,UVA照射前の最薄部角膜厚はC380Cμm以上あれば施術が可能である.Epi-on法では角膜上皮.離を行わないため,リボフラビンの浸透性がCEpi-o.法よりやや低いが,術後治療用ソフトコンタクトの装用が不要で,低力価ステロイド点眼の短期間使用のみで管理できる.筆者は通常,フルオロメトロンC0.1%とレボフロキサシンC1.5%点眼をC1日C4回,1~2週間使用する.また,適応はC380μm以上(メーカー推奨ではC330Cμmまで可能)と拡大できるため,Epi-o.法で角膜厚がたりない進行症例も適応になる場合がある.さらに,角膜上皮.離に伴う合併症が認められず,術後疼痛も少ないため,視力が良好な初期症例や小児への応用も期待できる.近年,角膜実質へのリボフラビンの浸透性をさらに上げるためにイオン導入法(iontophoresis-assistedCCXL)も開発された.リボフラビンは水溶性の小分子で生理的PH下では陰性に荷電しており,角膜表面に陰性電極,他の部位に陽性電極を置き,弱い電流をかけることによって,リボフラビン分子を角膜実質深層へ浸透させる方法である(図3).C●Epi.on法の適応最薄部角膜厚がC380Cμm以上である必要がある.ただ792あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018し,未満の場合は手術時に低張リボフラビンあるいは蒸留水点眼で角膜を膨潤させ,術中測定にてC380Cμm以上に達する場合は適格とする.C●Epi.on法の治療成績Epi-on法は術後回復が早く,合併症もほとんど認められないが,臨床成績は報告によってさまざまである.Epi-onとCEpi-o.を比較したC3年間の無作為比較化試験(randomizedCclinicalCtrial:RCT)では術後C1年では両群間で有意差があるものの,ともに有意な改善,術後C3年ではCEpi-o.群は進行なし,Epi-on群は角膜最大屈折力の進行を認めた2).一方,別のC2年間のCRCTでは両群間で有意差があるものの,ともに術前より有意な改善を認めた3).筆者らはCEpi-on法で治療したC30眼の成績を報告した4).術後合併症はなく,術後C1年の時点で疾患の進行が抑制されたうえに,角膜最大屈折力,角膜平均屈折力,矯正視力の有意な改善も認め,既報の標準法の治療成績に匹敵するものであった.イオン導入法に関して,術後C1年では標準法とほぼ同等な効果が得られた報告がある5).まだ歴史の浅いCEpi-on法の長期成績について,さらなる検証が必要と考えられる.C●おわりにCXLの登場により円錐角膜をはじめとする進行性角膜拡張疾患の治療概念に大きなパラダイムシフトが生まれた.Epi-on法は標準法と比べて効果がやや弱いが,術後合併症および疼痛が少なく,適応もC380Cμm以上と広いため,視力が良好な初期症例,角膜厚が薄い進行症例,小児などへの応用も期待されている.文献1)WollensakG,SpoerlE,SeilerT:Ribo.avin/ultraviolet-a-inducedcollagencrosslinkingforthetreatmentofkerato-conus.AmJOphthalmol135:620-627,C20032)AlCFayezCMF,CAlfayezCS,CAlfayezCY:TransepithelialCver-susCepithelium-o.CcornealCcollagenCcross-linkingCforCpro-gressiveCkeratoconus:ACprospectiveCrandomizedCcon-trolledtrial.CorneaC10:S53-56,C20153)RushCSW,CRushCRB:Epithelium-o.CversusCtransepithelialCcornealcollagencrosslinkingforprogressivecornealecta-sia:aCrandomisedCandCcontrolledCtrial.CBrCJCOphthalmolC101:503-508,C20174)AixinjueluoCW,CUsuiCT,CMiyaiCTCetCal:AcceleratedCtran-sepithelialCcornealCcrosslinkingCforCprogressiveCkeratoco-nus:aCprospectiveCstudyCofC12Cmonths.CBrCJCOphthalmolC101:1244-1249,C20175)VinciguerraP,RomanoV,RosettaPetal:TransepithelialiontophoresisCversusCstandardCcornealCcollagenCcross-link-ing:1-yearCresultsCofCaCprospectiveCclinicalCstudy.CJRefractSurgC32:672-678,C2016(84)

眼内レンズ:バックフローハイドロダイセクション

2018年6月30日 土曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋379.バックフローハイドロダイセクション廣田篤広田眼科カニューラを用いたハイドロダイセクション(従来のハイドロ)は,白内障手術を安全で確実に行うために,非常に重要な手技である.しかし従来のハイドロは,手動でシリンジを押すことにより灌流圧を発生させる旧態依然の方法で,それに関連した合併症の報告も多い.より安全で確実に水流.皮質,層間分離を行うバックフローハイドロダイセクションを報告する.●従来のハイドロダイセクション(以下,ハイドロ)従来のハイドロは,効率よく水流.皮質,層間分離を行うために,1992年にCFineが報告した手技である1).しかし,閉鎖空間で灌流圧を手動で発生させるため,前房圧が予想以上に高くなり2),灌流液が後方にトラップされてCcapsularCblockCsyndrome(CBS)を生じたり3),前部硝子体膜(anteriorChyaloidCmembraneCtear:AHMT)を破って前房の細菌などが後方に入り,眼内炎の原因となること4)が報告されている.また従来のハイドロでは,虹彩下に灌流水が迷入して創口から虹彩脱出が起こることがあり,術後の瞳孔不整や虹彩萎縮を引き起こすことがある.とくに術中虹彩緊張低下症候群(intraoperativeC.oppyCirisCsyndrome:IFIS)や浅前房の症例では,虹彩が脱出しやすく,水流.皮質,層間分離が不十分であったり,縮瞳が生じたり,さらなる虹彩脱出が起こり,手術自体がむずかしくなる.C●灌流ハイドロダイセクションとSleevedハイドロダイセクション従来のハイドロの欠点を補うために,いくつかの方法が考案された.2014年にCMasudaらは従来のハイドロを行わないhydrodissection-freeCphacoemulsi.cationCsurgery(灌流ハイドロ)を報告した.Divide&Conquer法で核を2分割した後に,スリーブからの灌流で水晶体後部から水流.皮質分離を行う方法で,眼圧の上昇がなく,従来のハイドロに関連した合併症を回避できる5)としている.2016年に禰津は,IAやCUSで使用するシリコンスリーブをハイドロカニューラに被せて,水流.皮質,層間分離を行うCSleevedハイドロを報告した.IAやCUS時のようにスリーブで創口を塞ぐことができ,虹彩が創(81)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1バックフローハイドロダイセクションの接続方法と手術写真上:洗浄用のコネクター(.)で白内障手術装置の灌流チューブを従来のCIAハンドピースの吸引側につなぐ.従来の灌流側は開放したままとする.中:通常の接続(左)ではスリーブ先端から灌流液が排出されるが,コネクターを使った接続(右)では従来の吸引口から灌流液(.)が勢いよく排出される.下:IAハンドピースのチップ先端の吸引口を前.切開縁の内側にあて,下方から水晶体赤道部方向に灌流を行って,水流.皮質,層間分離を行う.青色の矢印まで水流分離が進んでいる.口から出にくくなり,さらにスリーブの内腔を通って眼内の余分な灌流液や粘弾性物質が排出されて自己閉鎖機序が起こらず,眼圧の上昇や従来のハイドロに関連したあたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C789側面から見たシェーマ前面から見たシェーマ図2バックフローハイドロダイセクションの灌流のシェーマAIハンドピースの先端(従来の吸引口)からの灌流()で水流.皮質,層間分離が生じ,余分な灌流液はスリーブの側面(従来の灌流口)から排出される().合併症がなくなる6)としている.C●バックフローハイドロダイセクション筆者は,より簡便で確実な水流.皮質,層間分離法として,バックフローハイドロを考案した.IAハンドピースの後方の吸引側に,本来洗浄のときに用いるコネクター(いわゆるメス・メス)を用いて灌流チューブを接続する.IAハンドピースの従来の灌流側はフリーにして何もつながない(図1).連続円形前.切開後に,このCIAハンドピースのチップ先端の本来の吸引口を前.切開縁の内側に当てて,下方~水晶体赤道部方向に向けて灌流を行い,水流.皮質,層間分離を行う.このとき,スリーブの内腔を通って眼内の余分な灌流液や粘弾性物質はCIAハンドピース後方から排出される(図2).灌流圧は重力落下ではC100Ccm,空気加圧システムを用いる場合はC60~80CmmHg+重力落下C30Ccmで行った.バックフローハイドロには以下のような利点が考えられる.①洗浄用のコネクター以外に特別な準備は必要なく,手術の流れを変えることがない.②フットスイッチで灌流をコントロールできるため,手元が安定する.③十分な灌流であるにもかかわらずスリーブの内腔を通して余分な灌流液が排出されるため,眼内圧が上昇せず,従来のハイドロに関連した合併症は生じない.吸引口と排液するスリーブ先端の開口部の大きさを比べると,バックフローハイドロ中に眼内圧は上昇しないと考えられるが,実際に術中に前房が急に深くなったり,眼圧上昇による痛みを訴える症例はなかった.④スリーブが存在するために,創口からの虹彩脱出の危険性がない.⑤前房中の粘弾性物質を残すことができる.C●まとめバックフローハイドロは,従来のハイドロやその他の方法に比べ簡便であること,十分な灌流で確実にハイドロができること,眼内圧が上がらず安全であることなどから,有用な水流.皮質,層間分離法と考えられる.ハイドロが困難な角膜混濁の症例や小瞳孔の症例,IFISや浅前房など虹彩が脱出しやすい症例などにも有効で,手術初級者からベテランまで幅広い術者に推奨する.文献1)FineCIH:CorticalCcleavingChydrodissection.CJCCataractCRefractSurgC18:508-512,C19922)KhngCC,CPackerCM,CFineCIH:IntraocularCpressureCduringCphacoemulsi.cation.CJCCataractCRefractCSurgC32:301-308,C20063)MiyakeCK,COtaCI,CIchihashiCSCetCal:NewCclassi.cationCofCthecapsularblocksyndrome.JCataractRefractSurgC24:1230-1234,19984)KawasakiCS,CTasakaCY,CSuzukiCTCetCal:In.uenceCofCele-vatedintraocularpressureontheposteriorchamber-ante-riorhyaloidmembranebarrierduringcataractoperations.ArchOphthalmolC129:757-757,C20115)MasudaY,TsuneokaH:Hydrodissection-freephacoemul-si.cationsurgery:mechanicalcorticalcleavingdissection.JCataractRefrectSurgC40:1327-1331,C20146)禰津直久:Sleevedハイドロダイセクション.あたらしい眼科33:61-62,C2016

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ装用とQOV

2018年6月30日 土曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一44.コンタクトレンズ装用とQOV高静花大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座●はじめに屈折異常の矯正手段であるコンタクトレンズ(CL)に求められるものとして,安全性,利便性,視機能があげられる.このなかでも,安全性,利便性については,開発当初に比べかなりの進歩が認められるが,視機能については,大部分のCCL装用者で良好な矯正視力が得られているということもあり,その次として考えられることが多かった.CLは眼表面上で動く光学デバイスであり,装用時の視機能にはさまざまな因子が影響する.従来,CL装用時の見え方の評価は視力検査のほか,自覚症状に基づいて行われるものが多かったが,各種視機能検査の発展により,従来の視力検査では検出できない微妙な視機能評価や他覚的評価が可能になった.評価項目として,従来の視力のほかにコントラスト感度,波面センサーによる高次収差,角膜トポグラファーによる角膜不正乱視,前方散乱,実用視力などがあげられる.以下にレンズの水濡れ性・素材とソフトコンタクトレンズ(SCL)装用時の視機能評価法を紹介する.C●CL装用とQOVSCL装用者のC50~80%以上が,装用時の乾燥感や見えにくさなどのドライアイ症状を訴えることが国内外よ瞬目(sec)1234従来型レンズ保湿型レンズり報告されている.レンズの水濡れ性低下は乾燥感症状をもたらし,また眼光学的特性の低下にもつながり,それは「見えにくい」という症状をもたらす.各レンズメーカーの努力があって,水濡れ性を向上させたレンズが登場した.保湿成分を添加したレンズ,シリコーンハイドロゲルレンズである.図1に,従来型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRモイストCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.波面センサーを用いて高次収差連続測定したところ,従来型レンズ装用時には瞬目後,時間が経過とともに見え方が悪化しているのに対し,保湿成分添加型レンズ装用時には瞬目後の見え方が安定している.また,図2にハイドロゲルレンズ「2ウィークアキュビューR」(素材:eta.lconA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,シリコーンハイドロゲルレンズ「アキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.ハイドロゲルレンズ装瞬目56789図1従来型のハイドロゲルレンズ(従来型レンズ)装用時と保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ(保湿型レンズ)装用時の高次収差および網膜像の変化(文献C1から引用)(79)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7870910-1810/18/\100/頁/JCOPY瞬目(sec)1234ハイドロゲルレンズシリコーンハイドロゲルレンズ用時には瞬目直後からシミュレーションの網膜像がぼけているのに対し,シリコーンハイドロゲルレンズ装用時には見え方が安定しているのがわかる.このように,レンズの保湿成分,素材は視機能に影響する1).さらに,架橋剤の増加や製造方法の最適化によりレンズの水濡れ性の改善を図った毎日交換型シリコーンハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)について,従来のC2週間交換型の同素材レンズ「アキュビューCRオアシスR」との比較をコントラスト感度の測定により行ったところ,毎日交換型のほうが有意に高かった.また,両者のコントラスト感度の差は,屈折度数でC1段階程度(0.25D)の改善を示したことから,レンズの配合比率や製造方法の最適化は自覚的な見え方の質の改善として認知されることが示唆される.そのほか,カラーCCL装用時の視機能をクリアCCL装用時と比較した研究2)によれば,暗所時ではカラーCCL装用時の高次収差が有意に高いこと,またカラーCCLのフィッティングが悪いと明所時でも高次収差が有意に高くなることが報告されている.また,SCLの球面収差補正効果を,球面レンズと非球面レンズにおいて度数別に調べた研究3)によれば,球面レンズ装用時には+1.0D瞬目よりプラス寄りで「正」,+1.0Dよりマイナス寄りで「負」の球面収差補正量を示したのに対し,非球面レンズ装用時にはレンズ度数で大きく変わらなかった.このことから,球面レンズではレンズ度数により球面収差補正効果が変化し,とくに遠視や強度近視で顕著になるが,非球面レンズではレンズ度数で大きく変わらないといえる.C●おわりにこのように,CL装用時に影響を及ぼす多様な因子について,各種視機能検査を用いてさまざまな評価がなされている.今後,装用者の眼の健康を守り,ライフスタイルに合わせて良好な視機能が得られるCCLを処方していくうえで,各種CCLの視機能評価は重要と考えられる.文献1)KohCS,CHigashiuraCR,CMaedaCN:OverviewCofCobjectiveCmethodsforassessingdynamicchangesinopticalquality.EyeContactLensC42:333-338,C20162)TakabayashiCN,CHiraokaCT,CKiuchiCTCetCal:In.uenceCofCdecorativeClensesConChigher-orderCwavefrontCaberrations.CJpnJOphthalmolC57:335-340,C20133)KohCS,CMaedaCN,CHamadaCTCetCal:E.cacyCofCsphericalCaberrationCcorrectionCbasedConCcontactClensCpower.CContLensAnteriorEye37:273-277,C2014CPAS106

写真:画像鮮明化ソフトによる涙液層破壊パターンへの応用

2018年6月30日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦409.画像鮮明化ソフトによる涙液層福岡秀記横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科破壊パターンへの応用視覚機能再生外科学dimplebreakspotbreakareabreak図1画像鮮明化ソフトウェア処理前の画像dimplebreakspotbreakareabreak図2ドライアイ患者のフルオレセイン染色画像(画像鮮明化ソフトウェア処理後)多数の涙液層破壊像を認める.画像鮮明化ソフトウェア処理後の画像では,角膜全面の涙液層破壊像のほか,結膜の皺襞や角膜輪部と瞼裂斑部の点状表層角膜症が明確になった.C眼裂斑部のSPK涙液破壊像SPK結膜皺襞涙液破壊像角膜全面のSPK図3図2のシェーマ点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)C(77)あたらしい眼科Vol.35,No.6,20187850910-1810/18/\100/頁/JCOPY016年にドライアイの定義および診断基準の改定が発表された1,2).その改定には,涙液層破壊時間(break-uptime:BUT)短縮型ドライアイに代表されるように,涙液層の安定性の低下こそがドライアイの本質であるという考え方がベースにある.涙液層の安定性の評価にはフルオレセインのCbreak-uptimeの測定が重要である.改定には含まれていないものの,涙液層の破壊パターンの評価からドライアイのサブタイプを診断する眼表面の層別診断(tear.lmori-entedCdiagnosis:TFOD)と層別治療(tearC.lmCorient-edtreatment:TFOT)の重要性が提唱されている.涙液層の液層には,ゴブレット細胞から分泌されるMUC5ACを主体とする分泌型ムチンが水分を保持する形で混じり,涙液層の安定性向上にかかわり,角結膜上皮細胞表面の膜型ムチンは眼表面の水濡れ性維持にかかわり,なんらかの原因によりバランスが崩れたときに涙液破壊が生じるとされる.この涙液層の破壊パターンは,通常広く臨床で用いられているフルオレセイン染色による観察が主である.フルオレセイン染色には最大吸収波長がC494Cnm(青色),励起蛍光波長がC521Cnm(緑色)のフルオレセインナトリウムを用いる.ドライアイにおいては,バリア機能の低下した角膜上皮の障害部位や角結膜の点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK)が検出できるほか,涙液層の液層の厚みやその動態観察が可能である.角結膜上皮の障害部位や涙液層の破壊パターンの観察には,強い青色波長の光の照射が必要となる3).それに加え,涙液層の破壊パターンは開瞼後のフルオレセインで染色された液層の動態のなかで鑑別されるものであり,熟練した技術が必要である.今回,画像鮮明化ソフトウェア「softDEF」(ロジックアンドシステムズ)によるドライアイ患者の眼表面の上皮障害や涙液層破壊パターン鮮明化技術の可能性を示した(図1~3).画像鮮明化処理ソフトウェアとは,デジタルの画像からオリジナリティを保持した状態で画像にソフト独自の処理を行うことで,画像全体を人間の眼に見えやすいように強調する技術である.具体的には,霧や煙の除去のほか,監視カメラの不得意とする暗所映像,逆光や半逆光映像の鮮明化など,さまざまな領域で応用され,他の領域への転用も期待される技術である.ドライアイの涙液層破壊パターンは大きく五つに分類できる.角膜上皮の水濡れ性低下によると考えられる開瞼直後にみられる類円形のCspotCbreak,水濡れ性低下により角膜上方への涙液の移動途中でみられるCdimplebreak,高度の涙液減少によると考えられる開瞼直後より涙液層の形成が得られないCareaCbreak,軽症から中等症の涙液減少によると考えられる角膜下方にみられる線状の涙液層破壊であるClinebreak,涙液の水分の蒸発亢進によると考えられ開瞼後に涙液層が完全に形成されてからその破壊がみられるCrandombreakである4).画像鮮明化ソフトウェアにより涙液層の破壊部位が明瞭に区別されるため,ドライアイ症例の涙液層破壊パターンの分類にこの処理は有用であると筆者らは考えている.文献1)島﨑潤,横井則彦,渡辺仁ほか:日本のドライアイの定義と診断基準の改定(2016年版).あたらしい眼科C34:C3-8,C20162)TsubotaK,YokoiN,ShimazakiJetal:NewperspectivesonCdryCeyeCde.nitionCandCdiagnosis:ACconsensusCreportCbytheAsiaDryEyeSociety.OculSurfC15:65-76,C20173)BadaroE,NovaisEA,PenhaFMetal:Vitaldyesinoph-thalmology:ACchemicalCperspective.CCurrCEyeCResC39:C649-658,C20144)YokoiCN,CGeorgievCGA,CKatoCHCetCal:Classi.cationCof.uoresceinbreakuppatterns:Anovelmethodofdi.eren-tialCdiagnosisCforCdryCeye.CAmCJCOphthalmolC180:72-85,C2017C