●連載212監修=岩田和雄山本哲也212.器具を留置しない流出路再建術庄司信行北里大学医学部眼科眼内から行われる流出路再建術のうち,器具を留置しない術式,すなわちトラベクトームやフック,糸などを用いた切開術について簡単に述べる.これらの術式においては,術前の隅角の確認と術中の隅角鏡の操作が重要なポイントである.また,カテーテルを用いたCSchlemm管拡張術であるCabinternocanaloplastyについても少し触れる.C●トラベクトーム手術ハンドピースの先端のフットプレートをCSchlemm管に刺入し,フットプレートの手前にある電極から発生するプラズマで線維柱帯を切開する術式である.フットプレートは絶縁処理がされているので,Schlemm管に開口している集合管は傷つけず,線維柱帯を帯状に切開できることが特徴である(図1,2).海外では切開でなく切除,つまりCtrabeculectomyCabCinternoとよばれることも多い.1.7Cmmの角膜小切開創からハンドピースの先端を前房内に挿入し,対側の線維柱帯を隅角鏡で確認しながらC120°程度切開する.灌流により前房を維持し,切開時に生じる逆流性出血を吸引しながら行うことができる.これまでの報告では,術前の眼圧にかかわらず,術後16~7CmmHg程度で安定し,点眼スコアはC1~2減る程度とされている1,2).なお,これまで落屑緑内障の成績は良好であったが1),4,5年経過すると眼圧が再上昇する症例も多く,線維柱帯というフィルターがなくなることによって,直接CSchlemm管内部や集合管に落屑物質図1トラベクトーム:切開前これから刺入し切開する線維柱帯に,フットプレートを押し当てているところ.(61)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYが沈着し,眼圧が上昇する可能性も否定できない.本術式は,装置本体やハンドピースなどのディスポ部分が高価であることが難点である.C●Kahookdualhook先端部分の両サイドにC2枚の刃を付けたことで,トラベクトーム手術と同様に帯状に幅広く切開することが可能となった(図3).灌流ポートがないため逆流性出血で視認性が悪くなりやすいので,粘弾性物質で十分に前房を形成しておく必要がある.成績はトラベクトームとの比較試験でほぼ同等と報告されている3).Schlemm管への刺入も比較的容易だが,Schlemm管の内腔(幅や奥行き)が狭い症例では,フックが引っかかって切開しにくい場合もある.ディスポーザル製品である.C●谷戸氏abinternoトラベクロトミー・マイクロフック(マイクロフック)フックの先端の形状は図4のようになっていて,Sch-図2トラベクトーム:切開中正面から左に向かって切開したあと,フットプレートの向きをC180°回転させて右側を切開しているところ.切開開放されたCSchlemm管の内壁が白く見えている.あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C221図3Kahookdualbladeによる線維柱帯の切開長靴のような先端部分が観察できる.線維柱帯は幅広く切開できている.Schlemm管の内壁にところどころ逆流性出血がみられるが,おそらく集合管の開口部と思われる.lemm管に刺入して線維柱帯を切開する.ストレートタイプと左右向きのアングルドタイプの計C3種類あり,切開部位に応じて選択することで隅角の半周以上の範囲を切開できる.Tanitoらの報告4)によれば,術前C26CmmHgが術後C15CmmHg前後に下降している.マイクロフックはリユーザブルであり,コストパフォーマンスは高い.C●360°スーチャー・ロトミー眼外から行う方法も知られているが,眼内から行う方法はCGroverら5)によってCgonioscopy-assistedCtranslu-minalCtrabeculotomy(GATT)として紹介された.粘弾性物質で前房を満たして行うが,逆流性出血のために視認性が悪くなったり,眼内の操作がむずかしく,全周通糸できず,何回かに分けて切開していく場合もある.Satoら6)は,19.4CmmHgから術後半年でC13.8CmmHgに下降し,点眼も約C2剤程度減らすことができたと報告している.C●abinternocanaloplasty(ABiC)以前,強膜弁下からカテーテルをCSchlemm管に通し,一周してCSchlemm管の反対の断端から出てきた先端に糸(9-0やC10-0プロリン糸)を結びつけ,引き戻して糸を留置する方法(canaloplasty)が知られていたが,糸の代わりに粘弾性物質を残しておいても,Schlemm管が拡張し,同様の眼圧下降効果が得られると報告されている.この方法を眼内から行うようにしたのがCABiCであり2,7),カテーテル刺入部以外はCSchlemm管を切開せず,Schlemm管と集合管の拡張による流出量の増加をめざした術式であるため,流出路再建術という言葉にもっとも近い術式かも知れない.わが国ではまだ導入されていないが,海外での報告は比較的良好である2,8).他222あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018図4谷戸式abinternoトラベクロトミー・マイクロフックの先端部先端部をCSchlemm管に刺入して,線維柱帯を切開する.(Inami&Co.,Ltdのホームページより)の術式と異なり,カテーテルの挿入部位を変えれば何度も施行できるし,Schlemm管や集合管の拡張が得られるのであれば,他のCminimallyCinvasiveCglaucomaCsur-gery(MIGS)を追加で行ってその効果を高められる可能性もあるだろう.C●器具を留置しない術式の問題点単純に考えれば,広い範囲でCSchlemm管を開放したほうが眼圧はより低く保たれるように思われるが,術後眼圧は線状切開の術式とあまり変わりないように思われる.また,実際には周辺虹彩前癒着(peripheralanteri-orsynechia:PAS)が生じやすく,切開部位が閉じたり閉塞する可能性もある.線状切開か帯状切開か,あるいは拡張だけでよいのか,長期的な観察が必要だろう.文献1)ShojiCN,CKasaharaCM,CIijimaCACetCal:Short-termCevalua-tionCofCtrabectomeCsurgeryCperformedConCJapaneseCpatientswithopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmolC60:C156-165,C20162)FrancisCBA,CAkilCH,CBertCBB:AbCinternoCSchlemmC’sCcanalsurgery.DevOphthalmolC59:127-146,C20163)SeiboldCLK,CSoohooCJR,CAmmarCDACetCal:PreclinicalCinvestigationCofCabCinternoCtrabeculectomyCusingCaCnovelCdual-bladedevice.AmJOphthalmol155:524-529,C20134)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetCal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseCeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmolC95:e354-e360,C20175)GroverDS,GodfreyDG,SmithOetal:Gonioscopy-assist-edCtransluminalCtrabeculotomy,CabCinternoCtrabeculotomy.COphthalmologyC121:855-861,C20146)SatoT,HirataA,MizoguchiT:Outcomesof360°Csuturetrabeculotomywithdeepsclerectomycombinedwithcata-ractCsurgeryCforCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCcoex-istingCcataract.CClinicalCOphthalmologyC8:1301-1310,C20147)KhaimiCMA:Canaloplasty:ACminimallyCinvasiveCandCmaximallyCe.ectiveCglaucomaCtreatment.CJCOphthalmolC2015:485065,C2015(62)