日本医療研究開発機構OverviewofJapanAgencyforMedicalResearchandDevelopment:AMED三宅正裕*I日本医療研究開発機構とは日本医療研究開発機構(JapanAgencyforMedicalResearchandDevelopment:AMED)は2015年4月に発足した国立研究開発法人で,わが国の医療研究開発に関する研究費をとりまとめ,研究者・研究機関に配分する組織である.配分にあたっては医療研究開発に関する動向を見定め,国としてどの分野に投資すべきかを内閣府や各省庁と調整するほか,それらの研究費が適切に執行され開発が進捗しているかをマネジメントして必要に応じて介入するなど,医療研究開発の司令塔としての役目をもつ.AMEDの歴史はそもそも,わが国の基礎研究の成果を質の高い臨床研究・治験へと橋渡しすることで革新的な医療技術をいち早く実用化し,国際展開をめざす,そのための司令塔となる組織を創設することが,2013年6月14日に閣議決定された日本再興戦略に明記されたことから始まる.その後,2014年5月23日に健康医療戦略推進法および独立行政法人日本医療研究開発機構法という二つの法律が参議院本会議を通過し,その構想が実現することが決まった.当初は米国国立衛生研究所(NationalInstituteofHealth:NIH)にちなんで「日本版NIH構想」とよばれていたが,実際にはNIHのように研究施設を傘下にもたず,ファンディングする研究も研究開発目的のものに限られているなど,NIHの機能の一部を担っているに過ぎない.2015年4月にAMEDが設立されるまでは各省庁が縦割りにファンディングを行っており,それらに横串を刺して調整することが困難であったため,相乗効果が得にくいばかりか重複を十分に排除することができず,効率の悪い運用となっていた.AMED設立後も,各省庁の政策と直接的に関連するような研究費は引き続き各省庁が所管することとなっているが,その他の研究開発費については,内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部が決定する予算配分の方針に基づいて各省庁が予算を要求し,認められたものについては補助金としてAMEDに交付される.AMEDは文部科学省,厚生労働省,経済産業省,総務省から交付される補助金を一元化し,メリハリをつけて配分する.AMEDの所管は内閣府であり,大きな方針は健康・医療戦略推進本部が開催する健康・医療戦略推進会議の事務局を務める内閣官房健康・医療戦略室と調整を行う.一方で,実務レベルでの配分については,AMEDの各事業課室と各省庁の担当部署ならびにプログラムディレクター(PD),プログラムスーパーバイザー(PS)およびプログラムオフィサー(PO)との調整が中心となる.以上がAMEDの概要である.一般的な認識としては,「医療研究開発に対する公的ファンディングを一手に担う組織」という認識でよい.*MasahiroMiyake:京都大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕三宅正裕:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54第2臨床研究棟8階京都大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(73)1557図1日本医療研究開発機構(AMED)の組織図(AMEDホームページより)研究開発・研究基盤整備、生物資源等の整備、国際展開他)図2各省連携プロジェクト(AMEDホームページより)算が決定する時期がおおむね決まっていることから,スケジュールを押さえておくことで心の準備ができる.また,毎年継続的に募集される課題もあるので,そのような課題については事前準備も可能である.各年度の一次公募は原則として4月から契約して研究を開始できるよう,前年度のうちに公募・採択を終える.わかりやすいように2018年度の研究費で考えると,公募開始の時期は2017年12月末になるのが基本であるが,多くの課題は11月.12月に公募開始となる.この理由は,2017年12月末に2018年度予算案が閣議決定され,概算要求していた予算がどの程度まで削減されるかがほぼ確定するからである(※実際に確定するのは国会通過後).逆にいうと,それ以前に開始された公募は予算額の根拠が不完全であるため,実際には1課題あたりの研究費や採択課題数が公募要領よりも圧縮されることがある.また,上記の予算に加えて,医療分野の研究開発について,研究の進捗状況や新規に募集する研究の内容などを踏まえた予算配分を各省間をまたいで機動的かつ効率的に行うため,内閣府「科学技術イノベーション創造推進費」(500億円)のうち35%にあたる175億円が調整費として充当される.これまでこの175億円は春と秋の2回に分けて配分されており,おおむね春に150億円,秋に25億円が配分されてきた.2017年度は6月14日に春の調整費が確定して7月.9月頃に二次公募が開始されており,2016年度は11月21日に秋の調整費が確定して12月.1月頃に二次または三次公募が開始されている(※すべての事業に調整費が配分されるわけではないため,必ずしも二次・三次公募があるわけではない).このほか,予期しない時期に公募が行われることもあるため,タイムリーに公募情報を入手するためにはAMEDが配信するメールマガジンに登録しておくことが勧められる.IVAMEDが重視するポイントAMEDは基礎研究から実用化への橋渡しを強くめざす組織(図3)であり,したがって実用化をしっかりと意識した申請書が評価される.AMEDは基礎研究にもファンディングしているが,priorityは原理の解明や学問の探究ではなく,いかに患者に還元できるかという点にある.この「患者への還元」という観点は,単に医学的に役に立つかどうかという点だけでなく,きちんと製薬会社などが製造販売承認を取得してくれるのかという点も含まれるもので,「いくらよいものであっても企業が製品化しない限りは社会に届かない」という実質的な視点である.企業が製品化してくれるかどうかという点をもう少し掘り下げると,いくつかのチェックポイントも浮かび上がってくる.たとえば,知財がしっかりと押さえられるものかどうか,作用機序の新規性が高いかどうか,マーケットは広いか,医薬品医療機器総合機構(PMDA)と適切に協議しているか,薬価がどの程度と想定されるか,その薬価で採算が取れるものか,これらを含めたロードマップが適切に立てられているかなどである.とくにターゲットとなる患者(マーケット)についてはよく考える必要があり,単に〇〇病ということではなく,そのなかでも標準治療が効かなかった患者に使用するものなのか,標準治療に代替しうるものなのかによってマーケットは大きく変わってくる.もちろん,必ずしも研究者がここまで完全に作り上げる必要はないが,パートナーたり得る企業を探す時点でこのような視点は求められるだろう.また,研究開発が主眼となる以上,プロジェクトマネジメントは重要である.しっかりと上記のような観点を把握して研究全体をタイムキープし,必要に応じてプロジェクト自体を諦めるという判断が求められることもある.研究開発とは,かくも厳しいものである.V混同しやすい組織・研究費1.PMDAとの違い同じ4文字の政府系機関ということでAMEDとPMDAを混同してしまう方が多いが,ここまでお読みいただいた方はおわかりのようにその役割はまったく違う.詳細は本稿およびPMADの稿をご覧いただければと思うが,PMDAは製造販売承認(いわゆる薬事承認)の審査を行う専門の独立行政法人で,所管省庁は厚生労働省の医薬食品・生活衛生局である.1560あたらしい眼科Vol.34,No.11,2017(76)医療分野研究開発推進計画に基づくトップダウンの研究医療に関する研究開発の実施■プログラムディレクター(PD)、プログラムオフィサー(PO)等を活用したマネジメント機能●医療分野研究開発推進計画に沿った研究の実施、研究動向の把握・調査●優れた基礎研究の成果を臨床研究・産業化につなげる一貫したマネジメント(個別の研究課題の選定、研究の進捗管理・助言)■PDCAの徹底■ファンディング機能の集約化■適正な研究実施のための監視・管理機能●研究不正(研究費の不正使用、研究における不正行為)防止、倫理・法令・指針遵守のための環境整備、監査機能◆知的財産権取得に向けた研究機関への支援機能●知的財産管理・相談窓口、知的財産権取得戦略の立案支援◆実用化に向けた企業連携・連携支援機能●医薬品医療機器総合機構(PMDA)と連携した有望シーズの出口戦略の策定・助言●企業への情報提供・マッチング臨床研究等の基盤整備■臨床研究中核病院、早期・探索的臨床試験拠点、橋渡し研究支援拠点の強化・体制整備●専門人材(臨床研究コーディネーター(CRC)、データマネージャー(DM)、生物統計家、プロジェクトマネージャー等)の配置支援●EBM※(エビデンス)に基づいた予防医療・サービス手法を開発するためのバイオバンク等の整備(※EBM:evidence-basedmedicine)(AMEDホームページより)図3基礎研究から実用化への橋渡しをする組織