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結節性硬化症に難治性の裂孔原性網膜剝離を合併した1例

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1781.1783,2017c結節性硬化症に難治性の裂孔原性網膜.離を合併した1例平井和奈*1青木悠*1佐藤圭悟*2井田洋輔*2伊藤格*2渡部恵*1大黒浩*1*1札幌医科大学眼科学講座*2市立室蘭総合病院眼科CACaseofRefractoryRetinalDetachmentinaPatientwithTuberousSclerosisKazunaHirai1),HarukaAoki1),KeigoSato2),YousukeIda2),KakuIto2),MegumiWatanabe1)andHiroshiOoguro1)1)DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,MuroranCityGeneralHospital目的:今回筆者らは結節性硬化症患者に難治性の裂孔原性網膜.離を合併したC1例を経験したので報告する.症例:18歳,男性.平成C28年C1月より右眼の視力低下を自覚し近医を受診.眼底に結節性硬化症による網膜過誤腫および硝子体出血を伴う網膜.離を認め,札幌医科大学附属病院紹介となった.初診時に周辺部に多発する網膜過誤腫および鼻側上方に裂孔を認め,同年C4月に網膜輪状締結術を施行した.しかし,網膜復位を得ることができず,右眼硝子体手術,六フッ化硫黄ガス(sulferhexa.uoride:SCF6)置換を施行.その後網膜復位を得ることができたが,経過観察中に再.離を認めたため,同年C5月に右眼硝子体手術,シリコーンオイル置換を施行し現在まで再.離なく経過している.結論:本症例では周辺部網膜に多発した網膜過誤腫により硝子体の牽引や網膜収縮が生じ,これらの要因が網膜.離の復位を困難にさせた可能性が示唆された.CPurpose:ToCreportCaCcaseCofCrefractoryCretinalCdetachmentCinCan18-year-oldCmaleCwithCtuberousCsclerosis.CCasereport:Thepatientvisitedanophthalmologicclinicbecauseofvisuallossinhisrighteye.Hamartomaandvitreoushaemorrhagerelatedwithtuberoussclerosiswerefoundintheeye,andhewasreferredtoSapporoMedi-calCUniversityCHospital.CRetinalCdetachmentCwithCmultipleChamartomaCwasCobservedCinCtheCeye.CInitialCsurgeryCemployedtheencirclingprocedure,butretinopexycouldnotbeattained.TheeyewasthenoperatedbyPPVwithgastamponade,andretinopexywasachieveded.Duringfollow-up,retinaldetachmentwasagainfoundintheeye,whichthenunderwentPPV+PEA+IOL+siliconeoiltamponade.Retinopexyhasbeenmaintainedthusfar.Conclu-sion:Retinalmultiplehamartomamaycausevitreoustractionandretinalshrinkage,resultinginrefractoryretinaldetachment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1781.1783,C2017〕Keywords:結節性硬化症,過誤腫,網膜.離.tuberoussclerosis.hamartoma,retinaldetachment.はじめに結節性硬化症は全身の諸臓器に過誤腫や白斑を認め,精神発達障害や行動異常などさまざまな症状を呈する疾患である1).眼合併症として網膜過誤腫および無色素斑を認めることが多い2)が裂孔原性網膜.離を合併した報告例は少ない.今回筆者らは結節性硬化症に合併した網膜.離で治療に難渋した症例を経験したので報告する.CI症例患者:18歳,男性.主訴:右眼の視力低下.既往歴および家族歴:0歳:結節性硬化症,3歳:てんかん発作(1度のみ),9歳,17歳:脳腫瘍で手術.現病歴:平成C28年C1月,右眼視力低下を自覚し近医を受診.網膜.離の精査目的に市立室蘭総合病院紹介となり,右眼眼底に結節性硬化症による網膜過誤腫と硝子体出血を伴う裂孔原性網膜.離が認められ,手術目的にC4月C12日札幌医科大学附属病院(以下,当院)紹介となった.初診時視力右眼C0.02(n.c.),左眼C0.3(1.0C×.2.75D(cyl.1.00DCAx25°),眼圧右眼C10.0CmmHg,左眼C11.0CmmHg,前眼部および中間〔別刷請求先〕平井和奈:〒060-8543札幌市中央区南C1条西C16丁目札幌医科大学眼科学講座Reprintrequests:KazunaHirai,DepartmentofOphthalmology,SapporoMedicalUniversity,S.1,W.16,Chuo-ku,Sapporo,Hokkaido060-8543,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(143)C1781図1入院時右眼眼底所見右眼C1時方向に原因裂孔,11.2時にかけて網膜.離を認め,周辺部に器質化した硝子体出血を伴っていた.図3退院時右眼眼底所見シリコーンオイル下にて再.離なし.透光体に特記すべき異常なし.右眼C1時方向に裂孔を認め,11.2時方向に網膜.離を認め,周辺部に器質化した硝子体出血およびC2,9,11時方向に多発する網膜過誤腫を認めた(図1).硝子体出血減少後の眼底検査や眼底写真では網膜.離は黄斑部までは達していなかったが,硝子体出血のため黄斑部COCTは描出不良だった.CII経過平成C28年C4月C13日に右眼網膜.離に対し全身麻酔下で右眼網膜輪状締結術を施行した.術式は,原因裂孔に対して冷凍凝固を行い,網膜下液の排液はせず,2,4,7,10時に輪部からC13Cmmの位置に強膜トンネルを作製し,厚さC0.6図2術後所見網膜復位を得ることができた.mm,幅C2.5Cmmのシリコーンバンド(#240,MIRA社)で輪状締結を行った.網膜下液は減少したが,裂孔の閉鎖を得ることができずC11.7時方向の網膜.離が残存したため,4月25日全身麻酔下で水晶体温存のC25ゲージ硝子体切除術を施行し,SFC6ガス置換をして終了となった.その後は網膜復位し退院となり,市立室蘭総合病院通院となった(図2).5月C19日に再.離を認めC5月C20日当院に再入院となった.入院時視力右眼手動弁C30Ccm,前眼部および中間透光体に特記すべき異常なし.右眼眼底にC11時方向に原因裂孔を認め,ほぼ全周にわたる網膜.離で黄斑.離を伴っていた.5月23日に全身麻酔下で右眼水晶体再建術,眼内レンズ挿入術,25ゲージ硝子体切除術,シリコーンオイル置換を行った.術中は輪状締結周囲の硝子体皮質の癒着が認められ,鉗子を用いて丁寧に癒着を解除する必要があった.その後は網膜復位を得ることができ,退院時視力右眼(0.2)で現在まで良好な経過をたどっている.現在オイル下での網膜復位を得ることができており,今後シリコーンオイル抜去を行う予定となっている.CIII考按結節性硬化症はCtuberousCsclerosisCcomplex1(TSC1),tuberoussclerosiscomplex2(TSC2)のいずれか一方に生じた遺伝子変化により遺伝子の発現が低下もしくは抑制され,遺伝子にコードされる腫瘍抑制因子の発現が低下することで全身の諸臓器に局所性の形成異常や過誤腫を発生する疾患として知られている2).約C50%に眼病変を合併するといわれており3),眼病変の多くが網膜過誤腫や無色素斑で,網膜.離の症例報告は少ない4).現在,結節性硬化症のさまざまな病1782あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(144)変に関する発生メカニズムが解明されてきているが,まだ具体的なメカニズムが明らかになっていない病態も多い.過去に,結節性硬化症患者が網膜過誤腫により漿液性網膜.離や硝子体出血を引き起こした症例が複数認められているが,これらの症例では自然軽快を認める例も多く,外科的な治療を要する例は少ない5).裂孔原性網膜.離に関しては,網膜過誤腫により硝子体牽引を引き起こした症例が報告されている6,7).本症例は初回手術では若年で周辺側に単一の裂孔があったことから強膜内陥術を施行した.初診時には硝子体出血を認めていたが,.離は黄斑部まで達しておらず視力低下は器質化した硝子体出血の影響が考えられた.また,裂孔の径が小さかったことから,眼球運動障害の出にくいシリコーンバンドのみでの輪状締結術としたが,裂孔の閉鎖を得ることができず,硝子体の牽引が強く輪状締結のみでは網膜下液が引き切らなかったため硝子体切除術を施行した.1回目の硝子体切除術では水晶体温存で行ったが,本症例のような若年者の場合,人工レンズ挿入術を行うことで近見障害を惹起し,術後の視機能が劣化するため,有水晶体眼の状態で硝子体切除術を行った.それにより硝子体牽引は解除し,いったんは復位したが,若年者の完全な硝子体の郭清の困難さに加え,網膜過誤腫による硝子体癒着が影響し,再.離を起こしたものと考えられた.したがって,結節性硬化症に伴う裂孔原性網膜.離は,硝子体牽引や網膜収縮を引き起こし再.離を引き起こす可能性があると考えられた.今回筆者らは結節性硬化症に難渋した裂孔原性網膜.離を合併した症例を経験した.多発する網膜過誤腫は硝子体牽引や網膜収縮を引き起こし治療を困難にさせる可能性があるため手術を行う際は,輪状締結併用硝子体手術や周辺まで徹底した硝子体郭清など慎重に治療方針を検討する必要があると考えられた.文献1)NorthrupH,KruegerDA;InternationalTuberousSclero-sisCComplexCConsensusCGroup:TuberousCsclerosisCcom-plexCdiagnosticCcriteriaCupdate:recommendationsCofCtheC2012CInternationalTuberousCSclerosisCComplexCConsensusConference.PediatrNeurol49:243-254,C20132)金田眞里,吉田雄一,久保田由美子ほか:結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン.日皮会誌C118:1667-1676,C20083)RowleyS,O’CallaghanF,OsborneJ:Ophthalmicmanifes-tationsCofCtuberousCsclerosis:aCpopulationCbasedCstudy.CBrJOphthalmolC85:420-423,C20014)MennelCS,CMeyerCCH,CPeterCSCetCal:CurrentCtreatmentCmodalitiesforexudativeretinalhamartomassecondarytotuberoussclerosis:reviewoftheliterature.ActaOphthalC-molScandC85:127-132,C20075)DuttaJ:Ararecaseofvisuallossduetoserousdetach-mentassociatedwithretinal“mulberry”hamartomainacaseoftuberoussclerosis.JOculBiolDisInforC5:51-53,C20136)GoelCN,CPangteyCB,CBhushanCGCetCal:Spectral-domainCopticalCcoherenceCtomographyCofCastrocyticChamartomasCintuberoussclerosis.IntOphthalmolC32:491-493,C20127)ShieldsCCL,CBenevidesCR,CMaterinCMACetCal:OpticalCcoherencetomographyofretinalastrocytichamartomain15cases.OphthalmologyC113:1553-1557,C2006***(145)あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1783

白内障術後眼内炎由来コアグラーゼ陰性ブドウ球菌12株の細菌学的特徴

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1776.1780,2017c白内障術後眼内炎由来コアグラーゼ陰性ブドウ球菌C12株の細菌学的特徴鳥飼智彦*1鈴木崇*1,2宮本仁志*3白石敦*1*1愛媛大学医学部眼科学教室*2いしづち眼科*3愛媛大学病院検査部CBacteriologicalPro.leofCoagulase-negativeStaphylococciIsolatedfromEndophthalmitisTomohikoTorikai1),TakashiSuzuki1,2),HitoshiMiyamoto3)andAtsushiShiraishi1)1)DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversity,GraduateSchoolofMedicine,2)IshizuchiEyeClinic,3)ClinicalLaboratory,EhimeUniversityHospital2003.2014年まで愛媛大学病院で治療を行った白内障術後眼内炎症例の眼内液から分離されたコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)のC12株の細菌学的特徴について調査した.MALDICTOF-MSを用いた菌種同定,DiversiLabsystem(DL)による遺伝子相同性,ディスク拡散法,微量液体希釈法を用いた薬剤感受性,バイオフィルム形成能をプレート法により確認した.分離CCNS株はCS.Cepidermidis(9株),S.Chominis(2株),S.Cwarneri(1株)と同定された.DLによる解析では,2組(1組C2株)においてC95%以上の遺伝子相同性を認めた.すべての分離株はメチシリンとセフタジジムに耐性であり,レボフロキサシンにはC3株が中間耐性,6株が耐性であった.分離株はすべてバンコマイシン,リネゾリド,ミノサイクリンに感受性があった.バイオフィルム形成能をC12株中C7株で認めた.WeCinvestigatedCtheCmicrobiologicalCpro.lesCofC12Ccoagulase-negativeCstaphylococci(CNS)isolatesCtakenCfromCaqueousorvitreoushumorinpatientswithpostoperativeendophthalmitisbetween2003and2014.Toidentifytheisolates,Cmatrix-assistedClaserCdesorptionCionizationCtime-of-.ightCmassCspectrometry(MALDI-TOFCMS)wasCper-formed.CIsolatesCwereCtypedCusingCtheCDiversiLabCtypingCsystem(DL);CdrugCsusceptibilityCtestCwasCcheckedCbyCagardiscandmicrodilutionmethods.Bio.lmformationwascheckedusingmicrotiterplateassay.Theisolateswereidenti.edasS.epidermidis(9strains),S.hominis(2strains)andS.warneri(1strain).DLdemonstratedthattwopairCofCS.CepidermidisCisolatesChadCgeneticCsimilarityCofCmoreCthanC95%.CAllCisolatesCwereCresistantCtoCmethicillinandCceftazidime,CandCwereCsusceptibleCtoCvancomycin,ClinezolidCandCminocycline;3CandC6CisolatesCwereCintermedi-atelyresistantandresistanttolevo.oxacin,respectively.Ofthe12isolates,11hadbio.lm-formingability.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(12):1776.1780,C2017〕Keywords:白内障術後眼内炎,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,遺伝子相同性,薬剤感受性,バイオフィルム形成能.postoperativeendophthalmitis,coagulase-negativestaphylococci,geneticallysimilarity,drugsusceptibility,Cbio.lmformation.Cはじめに白内障術後眼内炎は発症頻度こそ低いものの発症すると,高度の視力低下や失明の可能性もあるため,もっとも重篤な術後合併症であると考えられている.そのため,迅速に診断し,早期に治療を開始することが望ましい.白内障術後眼内炎は,発症時期によって,術後数日.1週間以内に発症する急性(亜急性)眼内炎と術後C1カ月以上後に発症する遅発性眼内炎に分けられる.急性(亜急性)眼内炎は,著明な前房内フィブリン形成,前房蓄膿,硝子体混濁など急性の炎症反応を生じるのに対して,遅発性眼内炎では軽微な前房炎症細胞,角膜後面沈着物,水晶体.混濁を生じることなど比較的軽微な炎症所見を呈することが多い.急性(亜急性)眼内炎の原因菌としてはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negativeCstaphylococci:CNS),黄色ブドウ球菌,腸球菌,〔別刷請求先〕鳥飼智彦:〒791-0204愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室Reprintrequests:TomohikoTorikai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversity,GraduateSchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon,Ehime791-0204,JAPAN1776(138)連鎖球菌などのグラム陽性球菌が,遅発性眼内炎の起因菌としてはCPropiobacteriumCacnesが多いとされ,原因菌によって臨床所見ならび術後から発症までの日数,視力予後は異なることが考えられている.そのため,眼内炎の治療においては正確な原因菌の同定が重要であり,原因菌に対してもっとも抗菌効果が高い抗菌薬を使用して治療することが望ましい.CNSはC31種あるが,ヒトから分離されるCCNSはC14種あり,なかでも検出される頻度が高いのがCS.epidermidisである.CNSの種の同定は,生化学性状を用いて行われるが,一般的には時間やコストもかかるため,種の同定まで行わないことも多い.一方,質量分析によって細菌の蛋白質重量を測定して,細菌を同定する手法が開発され,臨床検査室にも導入されつつある.今回,菌種同定に使用したCMALDI-TOFCMSは,質量測定の対象物にレーザー照射し,この衝撃に対しても対象物を壊すことなく真空管の中を飛行させ,その飛行時間の違いをもって対象物の質量を測定可能とする方法である.培地上のコロニーから数分で菌腫を同定することが可能であり,16SrRNAシークエンスを用いた同定法に限りなく近い精度も得られる.Mellmannらはブドウ糖非発酵菌対して,MALDI-TOFCMSによる菌種同定法と16SrRNAシークエンスを用いた菌種同定法を行い比較検討した結果,78株中C67株(85.9%)で属もしくは種レベルまで同定可能であったと報告した1).CNS臨床株のなかにはバイオフィルムを産生する株が存在する.バイオフィルムを産生すると眼内レンズなどのマテリアルに強固に接着し,抗菌薬や免疫細胞の攻撃から回避することが可能となる.とくにブドウ球菌においては,PIA(polysaccharideCintercellularadhesion)とよばれるCE-1,6-N-アセチルグルコサミン多糖を産生することによって生体内ポリマーに付着してバイオフィルムを形成することが知られている2).そのため,眼内炎において,原因であるCCNSがバイオフィルム形成能を有するかは治療反応にも影響する可能性がある.現在,術後眼内炎の治療としては,抗菌薬投与とともに,前房洗浄,硝子体切除,レンズ抜去などの外科的加療を迅速に行うことが望まれる.使用される抗菌薬としては,グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌まで抗菌スペクトラルをカバーする目的にバンコマイシン,セフタジジムの眼内投与が使用されることが多く,CNSによる術後眼内炎の治療反応性はよいとされる3).しかしながら,CNSのメチシリン耐性を指摘する報告もあり,抗菌薬の選択には検出された眼内炎分離株の薬剤感受性や細菌学特徴を考慮する必要がある3,4).さらに,耐性菌の場合,遺伝子学的に類似した株が拡散することも多く,遺伝子学的類似性を確認することも重要と考えられる.今回筆者らは,白内障術後眼内炎症例から分離されたCNSの細菌学的特徴(菌種同定,遺伝子相同性,薬剤感受性,バイオフィルムの形成能)について調査した.CI対象および方法1.臨床分離株2003.2014年までに愛媛大学病院で治療した白内障術後眼内炎症例の眼内液から分離されたCCNSのC12株を使用した.C2.菌.種.同.定CNSの菌種の同定をCMALDI-TOFCMS(matrixCassistedClaserCdesorption/ionization-timeCofC.ightCmassCspectrome-try)(Bruker社)を用いて質量分析を用いて行った.C3.遺伝子相同性菌株間のゲノム配列の相同性を確認するためCDiversiLabCmicrobialCgenotypingCsystem(以下,DiversiLab,CBioMereiux社)を用いた.菌のCDNAを抽出後,キットを使用しCrepeti-tive-sequenced-basedCpolymeraseCchainCreaction(rep-PCR)増幅を行い,Ajilent2100バイオアナライザーを用いてCDNALabChipによる増幅断片の分離と検出を行った.検出された電気泳動結果はCDiversiLabソフトウェア(version3.4)を用い,Pearson相関係数による系統樹を作成してクラスター分類を行った.C4.薬剤感受性CNSに対するメチシリン耐性の判定にはCPCR法にてmecA遺伝子を検出し,mecA遺伝子保有CCNSをCmethicillinresistantCCNS(MR-CNS),mecA非保有株CCNSをCmethi-cillin-susceptibleCCNS(MS-CNS)と定義した.薬剤感受性の判定には,ディスク拡散法,微量液体希釈法を用いた.オキサシリン(MPIPC),セフォキシチン(CFX)のC2薬剤においてはディスク拡散法を用い,セフタジジム(CAZ),イミペネム(IPM),アルベカシン(ABK),バンコマイシン(VCM),テイコプラニン(TEIC),リネゾリド(LZD),ミノサイクリン(MINO),レボフロキサシン(LVFX),リファンピシン(RFP),サルファメトキサゾール,トリメトプリム合剤(ST)のC10薬剤においては微量液体希釈法を用い,ClinicalCandCLaboratoryCStandardsCInstitute(CLSI)のブレークポイントに準じて,耐性(R),中間耐性(I),感性(S)の三つに分類した.C5.バイオフィルム産生能バイオフィルム産生能の定性をコンゴレッド寒天培地法にて行った.Brainheartinfusionbroth(37Cg/l),スクロース(36Cg/l),Agar(15Cg/l),コンゴレッド色素(0.8Cg/l)の構成でコンゴレッド寒天培地を作製し,作製した培地上に菌株を塗布し,37℃でC24時間培養したのちに,室温で一晩培養した.バイオフィルム陽性の株は,培地上で黒色のコロニーを形成し,バイオフィルム陰性の株は赤色のコロニーを形成することにより,バイオフィルム産生能を定性的に判定した5).バイオフィルム産生能の定量は,マイクロプレート法で行った.まず,細菌株をC0.25%グルコース添加CTripcaseSoyCBroth(TSB)10Cmlに植菌し,37℃にて一晩,揺動培養を行った.この培養液にグルコースを添加したCTSBでC100倍に希釈し,96ウエルマイクロタイタープレートに分注した後に,好気的環境下C37℃で一晩静置培養した.ウエルを蒸留水でC3回洗浄し,0.2%サフラニンで染色したのちに吸光度(570Cnm)の測定を行い,バイオフィルム形成量を定量化した6).Christensenらの報告に従い,カットオフ値をC0.5として,それ以上を陽性と定義した7).CII結果1.菌.種.同.定MALDI-TOF/MSによる質量分析にて菌種同定を行ったところ,12株中C9株(75%)がCS.Cepidermidisであり,ついでCS.hominisが2株,S.warneriがC1株検出された(表1).C2.遺伝子相同性S.Cepidermidisと同定されたC9株を対象にCrep-PCRによる遺伝子相同性解析を実施した結果を図1に示す.遺伝学的系統樹は塩基配列を二つずつ総当たりで比較,スコアリングしたうえで,もっとも近縁な配列から逐次的に配列される.パーセンテージが高ければ高いほど比較した二つの菌株の塩基配列は遺伝子相同性が高いといえる.眼内炎発症時期が異なるにもかかわらず,1組C2株のC2組でC95%以上の遺伝子相同性を示した.また,90%以上の遺伝子相同性を示したものもC1組C5株,1組3株のC2組あった.C3.薬剤感受性菌種ごとの薬剤感受性を表2に示す.9株(75%)がCmecA遺伝子を保有しており,全体のC75%がCMR-CNSであった.Cbラクタム系薬剤では,ペニシリン系のCMPIPCがC9株(75%),セフェム系のCCFXがC7株(58%),CAZはすべての株において耐性を認め,とくに術後眼内炎で広く用いられているCCAZで高い耐性を認めた.また,カルバペネム系であるIPMはすべての株で感性であった.Cbラクタム系薬剤以外の薬剤では,術後眼内炎治療で用いられるCVCMのほか,アミノグリコシド系のCABK,オキサゾリゾノン系のCLZD,テトラサイクリン系のCMINO,RNAポリメラーゼ阻害薬のCRFP,サルファ剤の合剤であるCSTはすべての株において感性であった.グリコペプチド系のCTEICはC5株(42%)で耐性であ表1菌種同定菌種株数割合(%)CS.epidemidis9株75%CS.hominis2株17%CS.warneri1株8%合計割合(%)図1白内障術後眼内炎より分離されたS.epidermidis9株の遺伝子相同性95%以上の相同性を認めた場合,遺伝子の類似性が高いと考えられる.表2菌種ごとの薬剤感受性菌名CMecACMPIPCCCFXCCAZCIPMCABKCVCMCTEICCLZDCMINOCLVFXCRFPCSTCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCSCRCSCSCSCSCSCSCICSCSCS.epidermidisC.SCSCRCSCSCSCRCSCSCSCSCSCS.epidermidis+RCSCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCRCSCSCS.hominis+RCRCRCSCSCSCSCSCSCRCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCRCSCSCS.hominisC.SCSCRCSCSCSCSCSCSCSCSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCICSCSCS.epidermidis+RCRCRCSCSCSCRCSCSCICSCSCS.warneriC.SCSCRCSCSCSCSCSCSCSCSCS※CLSIのブレークポイントに準じて,R:耐性,I:中間,S:感性.MecA:mecA遺伝子,MPIPC:oxacillin,CCFX:cefoxitin,CCAZ:ceftazidime,CIPM:imipenem,CABK:arbekacin,CVCM:vancomycin,TEIC:teicoplanin,LZD:linezolid,MINO:minocycline,LVFX:levo.oxacin,ST:sulfamethoxazole-trimethoprim.バイオフィルム形成量(OD570nm)1.210.80.60.40.201362784926136567189029891,1031,1041,1411,167CNS12株図2CNS分離株のバイオフィルム産生能分離されたCCNS株のバイオフィルム産生の定量を示す.カットオフ値をC0.5と定義した.0.5以上はC7株認められた.Cったが,術前,術後抗菌点眼で広く用いられているCLVFXはC9株(75%)において耐性もしくは中間耐性であり高い耐性率を認めた.C4.バイオフィルム産生能コンゴレッド寒天培地法による定性的検討では,12株中11株が黒色コロニーを認め,バイオフィルム産生能を認めた.さらに,マイクロプレート法を用いた定量的検討では,吸光度C570Cnmの平均値はC0.5989C±0.0547であった.バイオフィルム産生量C0.5をカットオフ値として産生能を検討すると,0.5以上を示したものがC12株中C7株であり,吸光度の平均値はC0.7096C±0.0727であった(図2).CIII考按わが国における白内障術後細菌性眼内炎の原因菌としてCNSがもっとも多く,日本眼科手術学会眼内炎スタディグループの報告によると約半数近くを占めるとされる4).当院においてもC2004.2013年のC10年間で眼内炎症例からC15株細菌が分離されたうちC12株(80%)がCCNSであった.術後眼内炎から同定されたCCNSの内訳に関して,既報でCS.Cepi-dermidisが約C8割を占めている3).今回,筆者らが行った検討でもCS.CepidermidisがC9株(75%)と同様に多く検出されたが,数は少ないながらも,S.Cepidermidis以外の株(S.hominis2株,S.warneri1株)が検出された.術後眼内炎の原因菌の由来に関しては,①患者の結膜.常在細菌叢,②手術器具や術者の手指,③手術室の浮遊細菌などおもに三つの可能性が考えられる.Speakerらは術後眼内炎原因菌と僚眼や鼻腔から分離した常在菌の遺伝子を比較検討し,17例中C14例(82%)で遺伝子相同性があったとし,結膜.常在細菌叢が術後眼内炎のプロフィールをよく反映していることを報告しており8),患者の結膜.常在細菌が術中もしくは術後に眼内に感染したと推測される.丸山らは,白内障術前患者における結膜.常在菌叢を調査し,CNSが1,012検体中C398検体(39.3%)とCCorynebacteriumについで高い検出率を示した9).さらに,白内障術前の結膜.分離株に関する星らの検討では,CNS366株のうちCMR-CNSは136株(37%)であり,抗菌薬点眼として使用頻度が高いLVFX耐性はC366株中C92株(25%)であった.また,MR-CNSではCMS-CNSと比較してフルオロキノロン耐性化率が有意に高かった10).すなわち,白内障術前患者の結膜.においてCCNSの保菌率は高く,メチシリン耐性やCLVFX耐性をもった薬剤耐性株も半数近くに認められると考えられる.今回の検討では前述のように白内障術後眼内炎の原因菌としてCS.Cepidermidisを中心としたCCNSが多く検出され,MR-CNSはC9株(75%),LVFX耐性はC9株(75%)と既報の白内障術前結膜.から分離した株に関する検討と比較しても,薬剤耐性株の割合を多く認めた.さらに,発症時期が菌株によって大きく異なるにもかかわらず,遺伝子相同性の高い株を多く認めた.遺伝子相同性が高くなる原因の一つに,薬剤耐性獲得が考えられる.ブドウ球菌はCgryA,parCとよばれるキノロン耐性決定領(quinolone-resistance-determin-ing-region:QRDR)を段階的に変異させることによってキノロン耐性を獲得することや,ブドウ球菌カセット染色体(StaphylococcalCcassetteCchromosomeCmec:SCCmec)とよばれる外来性のCDNA断片を挿入することでメチシリン耐性を獲得することが知られている.そのため,抗菌薬点眼使用によって多様な遺伝型をもった結膜.常在菌叢における耐性菌選択圧が増大し,薬剤耐性遺伝子を高確率に含む分子疫学的に近縁な株が術後眼内炎起炎菌株から多く認められた理由の一つであると考える.すなわち,抗菌点眼薬から回避した耐性CCNSが眼内炎を生じた可能性が高い.Suzukiらは健常者の顔面皮膚と結膜.よりCS.epidermidisのみを分離培養し,それぞれについてバイオフィルム形成能をCicaA遺伝子の検出率およびコンゴレッド寒天培地法,マイクロプレート法にて比較したところ,結膜.より分離培養された株のバイオフィルム産生能が有意に高かったと報告した11).その理由として,涙液中にはライソゾームやラクトフェリンなどの抗微生物ペプチドが豊富に存在しており,結膜.常在菌がバイオフィルム産生を行うことでその防御システムから逃れているのではないかと推測している11).今回の検討でもバイオフィルム産生株が多く認められた.バイオフィルム産生能を有する結膜常在CCNSが,バイオフィルム形成することで抗菌薬や消毒薬から回避し,術後眼内炎を発症したと考えられる.現在,白内障術後急性眼内炎が疑われた場合の早期治療として抗菌薬の硝子体注射があり,薬剤耐性菌を含むグラム陽性球菌に効果のあるバンコマイシンとグラム陰性菌にスペクトラムをもつセフタジジムとを組み合わせて投与することが多い.今回,術後眼内炎の原因菌として頻度の高いCCNSに対してバンコマイシンはすべて感受性があり,セフタジジムはすべての株で耐性があった.CNS原因の眼内炎症例に対して,バンコマイシンは治療効果をもつも,セフタジジムの治療効果はそれほど高くない可能性があると考えられた.一方,カルバペネム系のイミペネムはすべての株に感受性があった.術後眼内炎から分離培養されたCCNSに関する検討で,イミペネムは半数程度の株に効果があったとする報告12)もあり,さらなる検討は必要ではあるが,イミペネムはCCNSに対してある一定の効果はあると考えられる.イミペネムはセフタジジム同様グラム陰性菌にもスペクトラムをもつことが知られており,感染性眼内炎治療において有用である可能性が高いと考えられた.しかしながら,眼内投与における網膜毒性においては検討を重ねる必要がある.今回の検討で白内障術後眼内炎から分離されたCCNSにおいては薬剤耐性化が進んでおり,またバイオフィルム産生能も高いことがわかった.細菌学的特徴をさらに検討し,有効な予防法,治療法を構築する必要があると考えられた.文献1)MellmannA,CloudJ,MaierTetal:Evaluationofmatrix-assistedClaserCdesorptionCionization-time-of-.ightCmassCspectrometryCinCcomparisonCtoC16SCrRNACgeneCsequenc-ingCforCspeciesCidenti.cationCofCnonfermentingCbacteria.CJClinMicrobiolC46:1946-1954,C20082)RohdeH,FrankenbergerS,ZahringerUetal:Structure,functionCandCcontributionCofCpolysaccharideCintercellularadhesin(PIA)toCStaphylococcusCepidermidisCbio.lmCfor-mationCandCpathogenesisCofCbiomaterial-associatedCinfec-tions.EurJCellBiolC89:103-111,C20103)EndopthalmitisCVitrectomyCStudyCGroup:ResultsCofCtheCEndophthalmitisViterctomyStudy.ArandomizedtrialofimmedeateCvitrectomyCandCofCintravitreousCantibioticsCforCthetreatmentofpostoperativebacterialendophthalmitis.ArchOphthalmolC113:1479-1496,C19954)日本眼科手術学会眼内炎スタディグループ:白内障に関連する術後眼内炎全国症例調査.眼科手術19:73-79,C20065)ArciolaCR,CampocciaD,GamberiniSetal:DetectionofslimeCproductionCbyCmeansCofCanCoptimizedCCongoCredCagarplatetestbasedonacolourimetricscaleinStaphylo-coccusepidelmidisclinicalisolatesgenotypedforicalocus.BiomaterialsC23:4233-4239,C20026)PedersenCK:MethodCforCstudyingCmicrobialCbio.lmsCinC.owing-watersystems.ApplEnvironMicrobialC43:6-13,C19827)ChristensenCGD,CSimpsonCWA,CYoungerCJJCetCal:Adher-enceCofCcoagulase-negativeCstaphylococciCtoCplasticCtissuecultureplates:aquantitativemodelfortheadherenceofstaphylococciCtoCmedicalCdevices.CJCClinCMiclobiolC22:C996-1006,C19858)SpeakerCMG,CMilchCFA,CShahCMKCetCal:RoleCofCexternalCbacterialC.oraCinCtheCpathogenesisCofCacuteCpostoperativeCendophthalmitis.OphthalmologyC98:639-649,C19919)丸山勝彦,藤田聡,熊倉重人ほか:手術前の外来患者における結膜.内常在菌.あたらしい眼科C18:646-650,C200110)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科C27:512-517,C201011)SuzukiT,UnoT,OhashiYetal:PrevalenceofStaphyloC-coccusCepidermidisCstrainsCwithCbio.lm-formingCabilityCinCisolatesCfromCconjunctivaCandCfacialCskin.CAmCJCOphthal-molC140:844-850,C200512)ChiquetC,MaurinM,AltayracJetal:CorrelationbetweenclinicalCdataCandCantibioticCresistanceCinCcoagulase-nega-tiveStaphylococcusspeciesisolatedfrom68patientswithacuteCpost-cataractCendophthalmitis.CClinCMicrobiolCInfectC21:592.Ce1-8,C2015

白内障眼内レンズ手術後超早期の屈折変動に関する検討

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1771.1775,2017c白内障眼内レンズ手術後超早期の屈折変動に関する検討大内雅之大内眼科CChangeinRefractiveStatusinVeryEarlyPostoperativeDaysinCataractSurgeryMasayukiOuchiCOuchiEyeClinic目的:白内障眼内レンズ(IOL)手術の術後超早期の屈折変化を調べ,翌日のみ遠視化傾向となる割合,その因子を検討した.方法:白内障CIOL手術を受けたC200眼を,0.25Cdiopter(D)より大きな差を有意として,術翌日がC2日目よりも遠視寄りだった症例(A群),翌日がC2日目より近視寄りだった症例(B群),2日間の変動がC±0.25D以内の症例(C群)に分け,術翌日.2日目の,眼圧,前房深度,角膜屈折力,角膜中央厚の変動を測定計算した.結果:組み入れされたC189眼の内訳は,A群C66眼,B群C38眼,C群C85眼であった.前房深度の変動はC3群間に差はなかった.角膜屈折力の変動はC3群に差があり,A群はCB群に比べ有意に大きく(p=0.02),A群では,角膜屈折力の変動と角膜中央厚の変動に有意な負の相関がみられた(p=0.01)が,術後C2日目以降は屈折変化がみられなかった.結論:白内障IOL手術の約C35%の症例で,術翌日は最終屈折より遠視寄りになり,それは,一時的な角膜厚の増加に伴う角膜屈折力の減少が因子となっている可能性が示唆された.CPurpose:Tostudytheincidenceofearlypostoperativerefractivechangeineyeswithhyperopicshiftonly,at1dayCpostCcataractCsurgery.CMethods:200CeyesCthatCunderwentCintraocularClens(IOL)implantationCwereCdividedinto3groupsbasedontheamountofdiopter(D)changeinrefractivestatusbetweendays1and2postoperative-ly:GroupCA:eyesCwith>0.25DChyperopicCchangeCinCsphericalCequivalent(SE)atCdayC1CasCcomparedCtoCdayC2postoperatively;GroupB:eyeswith>0.25Dmyopicchangeinsphericalequivalent(SE)atday1ascomparedtodayC2Cpostoperatively;GroupCC:eyesCwithinC0.25DCofCrefractiveCchangeCbetweenCdayC1CandCdayC2.CChangeCinanteriorchamberdepth(ACD),cornealpower(K),intraocularpressure(IOP)andcornealthicknessbetweendays1CandC2CpostoperativelyCwereCevaluated.CResults:OfCtheC200CoperatedCeyes,CthereCwereC66CeyesCinCGroupCA,C38eyesinGroupBand85eyesinGroupC;11eyeswereexcludedduetonotmeetingtheinclusioncriteria.EveninGroupAeyes,norefractivechangewasobservedat1week,1monthand6monthspostoperatively.Althoughnodi.erenceCinCACDCchangeCwasCfoundCbetweenCtheCgroups,Csigni.cantCdi.erenceCwasCseenCinCchangeCofCK,CwhichwasCsigni.cantlyClargerCinCGroupCACthanCinCGroupCB(p=0.02)C.CMoreover,Csigni.cantCnegativeCcorrelationCwasfoundCbetweenCchangeCofCKCandCchangeCofCcornealCthicknessCinCGroupCA(p=0.01)C.CConclusions:Ofthe189includedeyes,35%showedhyperopicchangeonlyatday1postoperativelyduetotheKvaluedecreasecausedbythetemporaryincreaseofcornealthickness.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1771.1775,C2017〕Keywords:眼内レンズ,術後屈折,遠視化,前房深度,角膜屈折力,角膜厚.intraocularlens,post-operativere-fraction,hyperopicchange,anteriorchamberdepth,cornealpower,cornealthickness.Cはじめにが開発されており,それらの多くは,眼軸長(axiallength:近年の白内障手術においては,小切開手術と光学式眼軸長AL)に加えて,角膜屈折力(K値)や前房深度(anterior測定器の登場で,術後球面度数の精度は向上してきた1).さchamberdepth:ACD)が重要な計算因子として用いられてらに,より正確な術後屈折を求めて,さまざまな度数計算式いる2,3).〔別刷請求先〕大内雅之:〒601-8453京都市南区唐橋羅城門町C47-1大内眼科Reprintrequests:MasayukiOuchi,M.D.,Ph.D.,OuchiEyeClinic,47-1Karahashi-Rajomon-cho,Minami-ku,Kyoto601-8453,CJAPAN術後屈折誤差の因子として,以前はCALがもっとも大きいとされていたが4),光学式眼軸長測定器の登場以後はその比重は小さくなり,術後の眼内レンズ(IOL)深度(e.ectivelensposition:ELP)の予測精度が最大の因子であり5),つぎに,とくに屈折矯正手術既往眼や角膜形状異常眼などで,K値が重要因子と考えられている6).一方,術式の進歩に加えてプレミアムCIOLの普及に伴い,早期の屈折安定が求められているが,白内障CIOL手術では,術翌日の超早期のみ,屈折値が最終値よりも遠視寄りになる症例をしばしば経験する.しかし,この術後超早期の屈折変化について論じた報告はない.本論文では,IOL手術後超早期の屈折変化を調べ,さらに,術翌日に遠視寄りの屈折を示す症例については,その因子を検討した.CI対象および方法本研究は,当院倫理委員会の審理を経て行われた前向き研究で,すべての組み入れ症例から,本研究への組み入れに対し文書による同意を得た.対象は,同一術者同一手技で水晶体摘出,同一CIOLの挿入を行った連続C134例C200眼で,組み入れ基準は,眼軸長がC22.0Cmm以上C28.0Cmm未満,術前角膜屈折力C42.0ジオプトリー(D)以上46.0D以下,水晶体核硬度Cemery分類CIII以下,円錐角膜などの角膜形状異常がない,水晶体以外に混濁を有さない,黄斑浮腫を有さない,術前に光学的眼軸長測定器CIOLマスター(CarlCZeissCMeditec社)による眼軸長測定が可能,術中合併症がなく,IOLが.内固定されている,術後に細隙灯顕微鏡で確認できるCDescemet膜皺襞,角膜浮腫,創口閉鎖不全がないことを条件とした.術式は,2.2CmmBENT透明角膜切開から,連続円形前.切開,ハイドロダイセクションの後,0.9mmミニフレアABSチップ,0.9Cmmウルトラスリーブを装着した超音波白内障手術装置CCENTURION(いずれもCAlcon社)を用いて水晶体を摘出し,同創からCDカートリッジを装.した電動IOL挿入機CAutoSertを用いてCSN60WF(いずれもCAlcon社)を挿入した.術翌日,術後C2日目に,他覚的屈折(等価球面値),角膜屈折力,ACD,角膜中央厚,眼圧を,術後C1週,1カ月,6カ月には,他覚的屈折と角膜屈折力をそれぞれ測定した.他覚的屈折検査は,オートレフラクトメーターCARK560A(NIDEK社),眼圧は非接触式眼圧計CNT4000(NIDEK社)で,ACDは光学式眼軸長測定装置CIOLマスターC700(CarlZeissCMeditec社),角膜中央厚は超音波眼軸長測定装置AL-2000(TOMEY社)で測定した.角膜厚の測定に関しては,健常角膜では,光学的測定器機の再現性が高いとされるが7,8),術後などのわずかな浮腫や混濁があると,超音波パキメーターよりも過小評価される9,10)ことから,今回は,絶対値よりも,経時的変化の評価を重視し,超音波測定機器を用いた.これらの値より,以下の検討を行った.C1.グループ分けまず術翌日,2日目の他覚的屈折における等価球面値(それぞれCSE1,SE2とする)を求め,以下の群に分類した.・A群:SE2-SE1<C.0.25D;術翌日がC2日目よりも遠視寄りだったもの・B群:SE2-SE1>0.25D;術翌日がC2日目よりも近視寄りだったもの(ただし,2日間の差がC0.25D以内のものは,ボーダー群として,以下のCC群に分類する)・C群:C.0.25≦SE2-SE1≦0.25;術翌日とC2日目との差がC±0.25D以内のものC2.群.間.比.較術翌日とC2日目の眼圧の差(眼圧変動),ACDの差(ACD変動),K値の差(K値変動)を群間比較した.C3.相関の検討ACDの変動とCK値の変動について,それぞれの要因を検討するため,ACD変動と眼圧変動の相関,K値変動と術後角膜厚変化の相関を調べた.統計学的解析は,眼圧変動,ACD変動,K値変動は,Bartlett検定にてC3群が等分散であれば一元配置分散分析法でC3群間比較を行い,有意差があった場合は,多重比較検定(Tukey-Kramer法)を行った.分散が等しくなければ,Kruskal-Wallis検定にてC3群間比較を行った.ACD変動と眼圧変動,K値変動と角膜中央厚の各相関はCSpearman順位相関係数検定で行った.統計学的有意水準は5%とした.CII結果200眼中,細隙灯顕微鏡で確認できる術翌日のCDescemet膜皺襞,角膜浮腫,データ取得不完全からC11眼は除外された.組み入れ症例C189眼中,翌日が遠視寄りだったCA群は66眼,近視寄りだったCB群はC38眼,術翌日とC2日目の差が0.25D未満の境界例:C群がC85眼であった.A群の他覚屈折の経時的変化を図1に示す.術後C2日目以降は近視寄りになり,6カ月まで変化はなく,遠視寄りだったのは翌日だけであることが確認できる.眼圧変動(2日目の値C.翌日の値)は,A群CB群CC群の順に,.2.60±3.83,C.2.98±4.81,C.4.52±5.36(mmHg)ですべて翌日が高く,3群間に差はなかった(p=0.28).ACD変動(2日目の値C.翌日の値)は,A群B群C群の順に,C.0.05±0.83,C.0.02±1.05,0.08C±0.97(mm)で,3群間に差はなかった(p=0.90)(図2).さらに,A群C66眼のうちC30眼は,術翌日が遠視寄りであったにもかかわらず,ACDは翌日のほうが浅かった.また,ACD変動はC.1.59.0.30.10.080.20.060.1前房深度の変化(mm)A群B群C群等価球面屈折値(D)0-0.1-0.21日2日1週1カ月6カ月0.040.020-0.02-0.3-0.4図1A群の等価球面値の経時変化他覚屈折値は,術翌日のみ遠視寄りを呈し,2日目以降は変化がみられない.*0.25-0.04-0.06図2術翌日から2日目までの前房深度の変化(2日目の値.翌日の値)3群間に有意な差はみられない.p=0.90(一元配置分散分析法).C44.5術後K値の変化(D)4443.54342.50.2K値の変化(D)0.150.10.054241.5-0.051日2日1週1カ月6カ月-0.1図4A群の角膜屈折力の経時変化図3術翌日から2日目までの角膜屈折力の変動(2A群では術翌日のみ角膜の平坦化が起っていることが日目の値.翌日の値)示唆される.これはC2日目には改善され,それ以降は変K値の変動は,3群間で有意な差がみられた(p=0.02化がみられない.C:一元配置分散分析法).A群はC2日間でのCK値の変動がもっとも大きく,多重比較にてCB群との間に有意差がみられた(*p=0.02:Tukey-Kramer法).角膜中央厚の変化(μm)150100500-50y=-11.441x+0.3426(p=0.01)角膜屈折力の変化(D)-100-2.5-2-1.5-1-0.500.511.522.5図5A群の術翌日から2日目の角膜中央厚の変化と角膜屈折力の変化の相関両者の間には有意な負の相関がみられた(p=0.01:Spearman順位相関係数検定).D:CDioptryC1.36Cmmに分布しており,眼圧の変動と相関はなかった(p=0.51).図3は,A群CB群CC群のCK値変動である.各群順に,0.20C±0.43,C.0.08±0.50,0.04C±0.47(D)で,A群,C群では,術翌日のほうがCK値が小さく,2日間での変動はCA群がもっとも大きかった.3群のCK値変動には有意差があり(p=0.02),多重比較ではA群とB群に有意差を認めた(p=0.02).このことより,A群では術翌日にもっとも角膜の平坦化が起っていることが示唆された.A群における術後CK値の経時変化をみると,術後C2日目以降は最終観察期間まで変化がなく,角膜が平坦化していたのは術翌日だけであることが示された(図4).このCK値変動の因子を検討するために,A群におけるCK値変動と角膜中央厚変化の関係を調べたのが図5である.2日目-翌日におけるCK値変動と角膜中央厚変化の間には,有意な負の相関がみられた(p=0.01).CIII考察白内障眼内レンズ手術後,約C35%の症例で術翌日は屈折が最終安定位よりも遠視化しており,この傾向はC2日目にはなくなり,以後安定した.術翌日遠視寄りだった症例:A群は,その他の症例と比べて,術後C2日間でのCK値変動が有意に大きく,このCK値変動は角膜中央厚の変化と有意に相関した.術翌日の遠視化傾向は,角膜屈折力の変化がおもな要因で,その理由は,術翌日は角膜厚増加により角膜の平坦化が起こっていることが示唆された.一方,ACD変動はC3群の間に差はなく,術後超早期の屈折変化の要因ではなかった.また,眼圧の変動は群間に差はなく,ACD変動とも相関がなかった.つまり,術後超早期の眼圧がCACDに影響し,屈折が変動する,というメカニズムは示唆されなかった.IOL手術後の屈折変化については,過去にもさまざまな報告がある.Behrouzらは,3ピースCIOLは術後前方移動して前房角度,前房容積も浅くなり,術後C1週からC3カ月にかけて約C0.3D近視化したと報告しているが11),Iwaseらは術後C1週からC6カ月にかけて,IOLは前方移動するも屈折は変わらなかったとしている12).一方,シリコーンCIOL挿入眼では,術後C48週の間に,平均C0.53D近視化し,近視化のうちC60%(0.33D)はCIOLの前方移動量で説明できるが,残りの近視化分は原因不明とした報告がある13).これらの報告はすべてC3ピースCIOLでの報告であるが,シングルピースCIOL14),とくに今回使用したCSN60WFは,術後のCELP変化がC3ピースCIOLよりも有意に少ないことが報告されている15).さらに,シングルピースCIOLにおいて,術後C1カ月からC1年の間の屈折変化は,平均C0.25Dの遠視化であったが,IOLの後方偏位は平均0.03mmで,この変化はC0.05Dの屈折変化にしか相当せず,それに対し,角膜曲率の変化は0.17Dであり,術後の屈折変化と相関していたとする報告がある16).しかし,これらの報告は,いずれも術後数週間から数カ月の中長期的な変化を検討したもので,比較的短期の検討では,deJuanらが術翌日から1週間目の間に平均で1.01D近視化したと報告している17)ほか,Koepplらが,3ピースレンズ挿入眼では,術後C1週間でCACDがやや浅くなることを報告している18).しかし,術翌日からC2日目にかけての超早期の屈折変化とその関連因子を調べたものは,本報告が初めてである.一般に,術後視機能は屈折安定期のデータで評価されるが,術後早期の屈折安定が,患者満足度を上げるとする報告もあるとおり19),術者が患者と対面する臨床現場では,翌日の屈折状態は重要である.このようなCIOL手術後の屈折変化の要因については,ACDの変化11),ELPの変化12),角膜屈折力の変化などが予想されるが,すべての症例で,術後超早期に屈折変化をきたすわけではない.Klijnらは,長期の観察であるが,59眼の検討のなかで近視化したものがC19.32%,遠視化したものが28.48%で,術後屈折変化は,個々の症例で異なる特徴を有する可能性があるとしている16).そこで本研究では,まず,術後C2日間での屈折変動変動によってC3グループに分けて,ACD変動とCK値変動の両方に着目した.その結果,術翌日に遠視化傾向がみられた症例では,みられない症例と比べて,K値の変化が大きかったことが示された一方,ACD変動は関与していなかった.さらに本研究では,K値変動の理由として角膜中央厚の変化が示唆されたが,同じく術翌日は,角膜中央厚がC17.3%増加していたとするCdeJuanらの報告17)とも合致する.本論文の限界として,オートレフラクトメータでの球面度数,円柱度数はいずれもC0.25D刻みであるため,各眼の等価球面値はC0.125D刻みの精度である点である.また,角膜曲率の自然な動揺が,術後16,20)あるいは非手術眼21)でもみられるとする報告もあり,さらに詳細な検討が望まれる.以上より,白内障CIOL手術症例の約C35%で術翌日は最終屈折より遠視寄りになり,それは角膜厚の増加に伴う一時的なCK値の減少が因子となっている可能性が示唆された.IOL術後の,より早期の屈折安定に向けて,今後も検討を重ねてゆきたい.文献1)FindlO,DrexlerW,MenapaceRetal:Improvedpredic-tionCofCintraocularClensCpowerCusingCpartialCcoherenceCinterferometry.JCataractRefractSurgC27:861-867,C20012)Retzla.CJA,CSandersCDR,CKra.CMC:DevelopmentCofCtheCSRK/Tintraocularlensimplantpowercalculationformula.CJCataractRefractSurgC16:333-340,C19903)HaigisCW:TheCHaigisCFormula.CIn:IntaocularCLensCPowerCCalculationsCeditedCbyCShammasCHJ.Cp41-57,CSLACK,NJ,20034)OlsenCT:SourcesCofCerrorCinCintraocularClensCpowerCcal-culation.JCataractRefractSurgC18:125-129,C19925)OlsenCT:PredictionCofCtheCe.ectiveCpostoperative(intra-ocularClens)anteriorCchamberCdepth.CJCCataractCRefractCSurgeC32:419-424,C20066)StakheevAA,BalashevichLJ:Cornealpowerdetermina-tionafterpreviouscornealrefractivesurgeryforintraocu-larlenscalculation.CorneaC22:214-220,C20037)MartinCR,CdeCJuanCV,CRodriguezCGCetCal:ContactClens-inducedCcornealCperipheralCswelling:OrbscanCrepeatabili-ty.OptomVisSciC86:340-349,C20098)ChristensenCA,CNarva´ezCJ,CZimmermanCG.CComparisonCofCcentralCcornealCthicknessCmeasurementsCbyCultrasoundCpachymetry,CKonanCnoncontactCopticalCpachymetry,CandCOrbscanpachymetry.CorneaC27:862-865,C20089)Altan-YayciogluCR,CPelitCA,CAkovaCYA:ComparisonCofCultrasonicCpachymetryCwithCOrbscanCinCcornealChaze.CGraefesArchClinExpOphthalmolC245:1759-1763,C200710)FakhryMA,ArtolaA,BeldaJIetal:Comparisonofcor-nealpachymetryusingultrasoundandOrbscanII.JCata-ractRefractSurg28:248-252,C200211)BehrouzCMJ,CKheirkhahCA,CHashemianCHCetCal:AnteriorsegmentCparameters:comparisonCofC1-pieceCandC3-pieceCacrylicfoldableintraocularlenses.JCataractRefractSurgC36:1650-1655,C201012)IwaseCT,CSugiyamaCK:InvestigationCofCtheCstabilityCofCone-pieceCacrylicCintraocularClensesCinCcataractCsurgeryCandCinCcombinedCvitrectomyCsurgery.CBrCJCOphthalmolC90:1519-1523,C200613)IwaseCT,CTanakaCN,CSugiyamaCK:PostoperativeCrefracC-tionchangesinphacoemulsi.cationcataractsurgerywithimplantationCofCdi.erentCtypesCofCintraocularClens.CEurJOphthalmolC18:371-376,C200814)WirtitschMG,FindlO,MenapaceRetal:E.ectofhapticdesignonchangeinaxiallenspositionaftercataractsur-gery.JCataractRefractSurgC30:45-51,C200415)E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久留米大学における若年者の緑内障に対する線維柱帯切開術の成績

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1765.1770,2017c久留米大学における若年者の緑内障に対する線維柱帯切開術の成績照屋健一*1山川良治*2*1出田眼科病院*2久留米大学医学部眼科学講座CResultsofTrabeculotomyforTreatmentofGlaucomainYoungPatientsatKurumeUniversityHospitalKenichiTeruya1)andRyojiYamakawa2)1)IdetaEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine20歳未満に発症した若年者の緑内障における線維柱帯切開術について検討した.初回手術に線維柱帯切開術を施行し,術後C6カ月以上経過観察できたC24例C39眼を対象とした.発症がC3歳未満の早発型発達緑内障C5例C9眼をCI群,3歳以降の遅発型発達緑内障C11例C18眼をCII群,隅角以外の眼異常を伴う緑内障とステロイド緑内障を合わせたC8例12眼をCIII群とした.各群の術前平均眼圧は,I群がC28.9C±11.2CmmHg,II群がC33.0C±10.1CmmHg,III群がC31.6C±7.4mmHgで,平均経過観察期間は,I群がC8.8C±1.6年,II群がC3.1C±1.8年,III群がC4.1C±2.6年であった.初回手術の成功率は,I群はC100%,II群はC72.2%,III群はC91.7%,全体ではC84.6%であった.39眼中C6眼(15.4%)に追加手術を施行した.若年者の緑内障において,線維柱帯切開術は有効と確認された.CWeCreviewedCtheCsurgicalCoutcomeCofCtrabeculotomyCforCglaucomaCinCyoungCpatientsCatCKurumeCUniversityCHospital.Subjectscomprised39eyesof24patientswithmorethan6months’follow-up,whohadundergonetra-beculotomyCasCtheCprimaryCsurgery.CWeCclassi.edCtheCpatientsCintoC3Cgroups:GroupCI,CdevelopmentalCglaucoma,included9eyesof5patientswithonsetwithin3yearsofage;GroupII,developmentalglaucoma,included18eyesof11patientswithonsetafter3yearsofage;GroupIII,glaucomaassociatedwithotherocularanomaliesandste-roidCglaucoma,CincludedC12CeyesCofC8Cpatients.CTheCaverageCintraocularCpressure(IOP)beforeC.rstCtrabeculotomyCwas28.9±11.2CmmHginGroupI,33.0±10.1CmmHginGroupIIand31.6±7.4CmmHginGroupIII.ThesuccessrateforCinitialCtrabeculotomyCwasC100%CinCGroupCI,C72.2%CinCGroupCII,C91.7%CinCGroupCIIICandC84.6%CinCtotal.CSixCeyes(15.4%)underwentadditionalsurgeries.Trabeculotomyiscom.rmedasusefulforglaucomainyoungpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1765.1770,C2017〕Keywords:若年者,発達緑内障,線維柱帯切開術,眼圧,手術成績.youngpatients,developmentalglaucoma,trabeculotomy,intraocularpressure,surgicale.ect.Cはじめに若年者の緑内障は,発達緑内障と続発緑内障がおもなものと考えられる.発達緑内障は隅角のみの形成異常による発達緑内障と隅角以外の先天異常を伴う発達緑内障に大別される.発達緑内障は先天的な隅角の発育異常により生じる房水流出障害が病因ゆえ,原則として外科的治療が主体になる1).また,小児の緑内障では各種検査が成人同様には行えないなどの側面から診断が遅れる場合も少なくない.さらに,角膜混濁や隅角発生異常,他の眼異常を伴うなど,手術の難度を高くする要素が多い.本疾患は早期の診断と早期手術が重要で,その成否が患児の将来を左右することはいうまでもない.若年者の緑内障の手術療法としては,濾過手術やCtubeshunt手術は術後管理がむずかしく,第一選択の術式として,術後管理が容易な線維柱帯切開術が行われている.今回,筆者らは久留米大学病院眼科(以下,当科)におけ〔別刷請求先〕照屋健一:〒860-0027熊本市中央区西唐人町C39出田眼科病院Reprintrequests:KenichiTeruya,M.D.,IdetaEyeHospital,39Nishitoujin-Machi,Chuo-ku,KumamotoCity860-0027,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(127)C1765る若年者の緑内障の初回手術としての線維柱帯切開術の成績を検討したので報告する.CI対象および方法対象は,20歳未満で発症した緑内障で,1999年C2月.2009年C12月に当科で初回手術として線維柱帯切開術を施行し,6カ月以上経過観察できたC24例C39眼(男性C15例C23眼,女性C9例C16眼)である.初診時平均年齢は,11.0C±8.2歳(1.9カ月.22.5歳)であった.病型の分類は,隅角のみの異常にとどまる発達緑内障のうち,Gorinの分類2)により,3歳未満発症の早発型をCI群,3歳以降発症の遅発型をCII群,隅角以外の眼異常を伴う発達緑内障と続発緑内障をCIII群とした.I群5例9眼,II群11例18眼,III群8例12眼であった.III群の内訳は,Sturge-Weber症候群C2例C2眼,Axen-feld-Rieger症候群C1例C1眼,無虹彩症C2例C4眼,ステロイド緑内障C3例C5眼であった.なお,II群のC3例C5眼は,初診時C20歳を超えていたが,問診や前医からの診療情報から発症はC20歳未満と推測され,さらに隅角所見が全C5眼とも高位付着を認めたため,遅発型発達緑内障と診断した.手術時の平均年齢は,I群でC0.8C±0.9(0.2.3.3)歳,II群でC19.8C±3.9(13.2.26.1)歳,III群でC10.4C±7.5(0.3.20.4)歳であった.術前の平均眼圧は,I群はC28.9C±11.2mmHg,II群はC33.0±10.1CmmHg,III群はC31.6C±7.4CmmHg,術後平均経過観察期間は,I群でC8.8C±1.6年,II群でC3.1C±1.8年,III群でC4.1±2.6年であった(表1).I群で受診の契機になったのはC5例中C4例が片眼の角膜混濁で,そのうちC2眼はCDescemet膜断裂(Haabs線)を認め,反対眼も含めてC9眼すべて角膜径は月齢の基準と比較して拡大していた(表2).他に角膜径の測定を行ったのは,II群の2眼,III群のCSturge-Weber症候群のC2眼であった.II群の2眼はC11.5Cmmで正常であったが,III群のC2眼は,それぞれC12.5CmmとC14Cmmで拡大を認めた.初回手術は熟練した同一術者により,全例に線維柱帯切開術を施行した.初回手術が奏効せず,反対眼は初回から線維柱帯切除術を行ったC1眼と術前すでに視機能がなく,初回から毛様体冷凍凝固術を行ったC1眼,そして初回の緑内障手術を他施設で行っていたC1眼は除外した.また,初回線維柱帯切開術の部位は,I群C9眼すべてとCII群のC1眼,III群のC3眼に対して上方から,他のC26眼は下方から行った.表1対象I群II群III群(n=9眼)(n=18眼)(n=12眼)手術時年齢(歳)C0.8±0.9C19.8±3.9C10.4±7.5術前眼圧(mmHg)C28.9±11.2C33.0±10.1C31.6±7.4術後経過観察期間(年)C8.8±1.6C3.1±1.8C4.1±2.61766あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017眼圧は,覚醒状態で測定できる場合は覚醒下にCGoldmann圧平式眼圧計にて測定し,覚醒状態での測定が無理な場合は,全身麻酔またはトリクロホスナトリウム(トリクロリール)と抱水クロラール(エスクレ)投与下で,入眠下にTono-penXLおよびCPerkins眼圧計にて測定した.両測定機器の眼圧値に大きな差がないことを確認し,また差があった場合は,角膜浮腫や角膜径の拡大の有無や視神経乳頭陥凹拡大の程度なども考慮して,おもにCPerkins眼圧計の測定値を採用した.眼圧の評価は,緑内障点眼薬の併用も含めて,覚醒時でC21CmmHg以下,入眠時でC15CmmHg以下を成功とし,2診察日以上連続してその基準値を上回ったとき,または,追加手術をした場合,その時点で不成功とした.手術の適応は,眼圧のほか,視神経乳頭陥凹の拡大の有無,角膜径の拡大の有無,可能な症例では視野の程度などを加味して決定した.初回手術の成功率,術前所見と初回線維柱帯切開術の手術成績,合併症,手術回数,最終成績について,後ろ向きに検討した.CII結果初回手術の成功率は,I群はC100%(9眼中C9眼),II群は72.2%(18眼中C13眼),III群はC91.7%(12眼中C11眼),全体では,84.6%であった(表3).I群のC9眼すべて,初回手術のみで,緑内障点眼薬なしで眼圧コントロールできた.II群では術後C6カ月でC3眼が追加手術となり,2眼は術後C3年で追加手術となった.III群は,生後C3カ月発症のCSturge-Weber症候群のC1眼が,初回手術のC6年後に追加手術となった.その結果,全C39眼の初回手術成績の累積生存率をKaplan-Meier法により生存分析したところ,初回手術後C6カ月累積生存率はC92.2%,3年後はC84.1%,6年後はC75.7%,10年累積生存率はC75.7%であった(図1).術前所見と初回線維柱帯切開術の手術成績について検討した(表4).発症が生後C3カ月未満の早期発症例はC5眼(I群1例C2眼とCIII群CSturge-Weber症候群のC1眼,無虹彩症のC1例C2眼)であったが,成功率はC5眼中C4眼(80%)で,3カ表2I群の術前プロフィール症例発症(月)症状角膜径(mm)Haabs線C1C6角膜混濁C13.0(+)C.無(僚眼)C12.5(.)C2C4角膜混濁C14.5(+)C3C6角膜混濁C13.5(.)C.無(僚眼)C13.5(.)C4C2睫毛内反C13.0(.)C2睫毛内反C12.5(.)C5C6角膜混濁C13.0(.)C.無(僚眼)C12.0(.)表3初回手術成功率(成功眼/眼数)100I群II群III群合計8075.7%(n=9眼)(n=18眼)(n=12眼)(n=39眼)100%72.2%91.7%84.6%60(9/9)(13/18)(11/12)(33/39)4020表4術前所見と初回手術成績0024681012成功数/眼数p値生存期間(年)累積生存率(%)発症3カ月未満C発症3カ月以上C4/529/34C0.588図1全症例の初回線維柱帯切開術の生存率眼圧C30CmmHg以上C眼圧C30CmmHg未満C0.47820/2313/16CFisher’sexactprobabilitytest.表6手術回数手術回数I群II群III群(n=9眼)(n=18眼)(n=12眼)表5初回線維柱帯切開術の合併症1回9C13112回C.31I群II群III群3回C.1C.(n=9眼)(n=18眼)(n=12眼)4回C.1C.Descemet膜.離C..1(8.3%)平均(群別)C1.0C1.4C1.1低眼圧C.2(11.1%)C.一過性高眼圧C.3(16.7%)C.合計(群別)0(0.0%)5(27.8%)1(8.3%)表7最終手術成績I群(n=9眼)II群(n=18眼)III群(n=12眼)手術回数(平均)術前眼圧(mmHg)C最終眼圧(mmHg)C最終成功眼数(成功率)1(1C.0)28.9±11.2Cp=0.03113.2±4.1C9(1C00%)1.4(1C.4)33.0±10.1Cp<C0.000117.6±3.3C15(C83.3%)1.2(1C.1)31.6±7.4p<C0.000114.3±2.112(1C00%)Paired-tCtest(p値<0.05)C月以降群のC34眼中C29眼(85.3%)に対して有意差はなかった.術前眼圧をC30CmmHgで分けてみて検討したが,統計学的有意差はなかった.角膜径に関しては,平均年齢が高いCII群とCIII群では,測定した眼数が各々C2眼ずつと少なく,統計学的に論じることは困難だが,角膜径がC12.5Cmm以上の10眼中C9眼(90%)が初回手術で眼圧コントロールされた.12.5mm以上群で追加手術が必要になったC1眼は角膜径12.5Cmmの早期発症例のCSturge-Weber症候群であった.初回線維柱帯切開術の合併症を表5に示す.II群のC2眼(11.1%)で脈絡膜.離を伴う低眼圧とC3眼(16.7%)に一過性眼圧上昇を認め,III群のC1眼(8.3%)にCDescemet膜.離を認めた.低眼圧をきたしたC2眼は術後C2週までに,眼圧上昇のC3眼はC2カ月までに正常化した.Descemet膜.離のC1眼は視機能に影響することなく経過した.手術回数を表6に示す.全症例眼数C39眼のうちC6眼(15.4%)に対して追加手術を行った.6眼の内訳は,II群C4例C5眼,III群のCSturge-Weber症候群のC1例C1眼であった.ステロイド緑内障は初回手術で全症例で眼圧コントロールできた.II群のC2眼は初回手術のC3年後に線維柱帯切開術をC1回追加し,眼圧コントロールできたが,1例C2眼は,1眼にC4回(初回手術のC6カ月後に線維柱帯切開術C1回,その後,線維柱帯切除術C1回,濾過胞再建術をC1回),1眼はC2回(初回手術のC6カ月後に線維柱帯切除術C1回)の手術を行った.他のCII群のC1眼は,3回(初回手術のC6カ月後に線維柱帯切除術C1回,その後濾過胞再建術をC1回)の手術を行った.III群のCSturge-Weber症候群のC1眼は,初回手術のC6年後に線維柱切開術をC1回追加し,その後C2年最終経過観察時点まで眼圧コントロールできた.最終手術成績の結果を表7に示す.I群は,最終平均眼圧C13.2±4.1mmHg,II群で術後C17.6C±3.3mmHg,III群で術後C14.3C±2.1CmmHgとC3群とも術前に比較して,有意に低下した.全症例C39眼中C21眼(53.8%)が緑内障点眼薬なしで眼圧コントロールが可能となった.I群のC9眼全例,III群は無虹彩症のC2例C4眼を除くC8眼は緑内障点眼薬なしで眼圧コントロールが得られた.I群は初回手術のみでC100%,II群とCIII群は追加手術も含めて,最終成功率はそれぞれCII群がC83.3%,III群がC100%,全体でC92.3%であった.CIII考按若年者の緑内障の分類はさまざまな分類2,3)があり,既報4.11)での分類もばらついているが,3歳未満で発症する場合,眼圧上昇により眼球拡大をきたしやすい側面があり,今回筆者らも隅角発生異常のみの発達緑内障に関しては,I群とCII群をC3歳で区切って,治療成績・予後をまとめた.覚醒時の眼圧測定が困難な症例に対しては,入眠時の眼圧を参考にした.全身麻酔下での眼圧に影響を与える因子としては,麻酔薬,麻酔深度,前投薬,麻酔方法があげられるが,これらの要因がどの程度,眼圧に影響を与えているかを正確に判定することは困難と考えられている12).臨床的には,条件を一定にして測定し,結果を比較するという方法がとられている.全身麻酔下の眼圧は既報12,13)によれば,5.7mmHg低めに出るとされ,そのため,入眠時眼圧の基準を15CmmHgを上限とした既報が多いと考えられる.今回の検討では,トリクロホスナトリウムの入眠下でのCPerkins眼圧計での測定を基準にしてC15CmmHgを上限値とした.若年者の緑内障の手術は,一般的に線維柱帯切開術か隅角切開術が選択されることが多く,当科では,初回手術は全例線維柱切開術を施行している.発達緑内障に対する線維柱帯切開術と隅角切開術の成績はCAndersoCn4)によれば,いずれも熟練した術者が行えば,同等の成績が得られるとしている.若年者の線維柱帯切開術において,Schlemm管の位置や形状は症例によってさまざまで,とくに乳児の強膜は成人と違って柔らかく,Schlemm管の同定が困難なことがある.Schlemm管を探すため,わずかな強膜層を残して毛様体が透見できるように強膜弁を作製するのがこつと考えている.Schlemm管あるいはそれらしいものが見つかれば,トラベクロトームを挿入するときにスムーズに入ること,そして可能であればCPosner診断/手術用ゴニオプリズムで挿入されているか確認する.トラベクロトームを回転するときはある程度抵抗があって,かつ前房にスムーズに出てきて,bloodre.uxがあると成功と考えている.Schlemm管らしきものがなく,トラベクロトームが挿入できない,挿入してもすぐ前房に穿孔する症例は,線維柱帯切除術に切り替えざるをえないと考えているが,今回の症例ではなかった.3歳未満発症の早発型発達緑内障の線維柱帯切開術の初回手術成績は,永田らはC75%5),藤田らがC79%6)と報告している.今回筆者らのCI群ではC9眼という少数例ではあるが,全例角膜径がC12Cmm以上に延長していたにもかかわらず,平均経過観察期間C8.8(6.6.11.8)年という長期間において,初回の線維柱帯切開術で,最終的に緑内障点眼薬なしで全症例眼圧コントロールできた.既報7.11,14,15)では,生後2.3カ月未満の早期発症例は難治で予後不良とするものが多い.筆者らの検討では,早期発症のC5眼中C4眼(80%)が初回手術でコントロールできた.早期発症のCI群のC1例C2眼はC10年,無虹彩のC1例C2眼はC3年,最終経過まで初回手術でコントロールできた.早期発症のCSturge-Weber症候群のC1眼は追加手術を要したが,初回手術のC6年後に線維柱帯切開術をC1回追加することで長期のコントロールが得られた.既報9,14)では,2.3カ月未満の早期発症例は,初回線維柱帯切開術が奏効しても,10.15年で再度眼圧上昇をきたす症例が散見され,今後も慎重な経過観察が必要と考えている.その一方で,Akimotoら7)の大規模症例での検討では,2カ月.2歳未満の最終手術成績はC96.3%と非常に高い奏効率を示している.永田ら14)は,このグループの早期診断と治療の成否こそがもっとも決定的に患児の将来の大きな意味をもつとしている.3歳未満の発症例では,高眼圧への曝露期間が長くなると,角膜径拡大に伴いCSchlemm管が伸展し,手術時にCSchlemm管の同定が困難になり,成人例より難度が高くなるとされる14,15).それゆえ,本疾患においては,線維柱帯切開術に熟練した術者が手術を行うべきと考えている.また,確実に線維柱帯切開術を遂行すればかなり長期間にわたって眼圧コントロールが得られることをふまえて,筆者らは,初回の線維柱帯切開術において確実に手術を遂行させることを優先して,年齢によって術野条件のよい上方からのアプローチを行った.角膜径がC14.5Cmmと極端に拡大していたCI群の症例C2や,生後C2カ月発症の早期発症のCI群症例C4など,Schlemm管を同定することがかなり困難な症例が含まれていた.しかし,Schlemm管と同定あるいは考えられた部位にトラベクロトームを挿入・回転することで,初回手術で長期の眼圧コントロールが得られた.追加手術が必要になったC6眼のうち,初回手術後C3年以上(II群のC2眼がC3年,III群CSturge-Weber症候群C1眼がC6年)コントロールできたC3眼は,線維柱帯切開術をC1回追加することで長期にわたる眼圧コントロールが可能であったが,他のC3眼(すべてCII群)はすべて初回手術が奏効せず,半年で追加手術に至り,最終的に線維柱帯切除術まで至った.若年者の線維柱帯切除術は既報16,17)でもCTenon.が厚いことや術後に瘢痕形成しやすいなどの問題が指摘されているように,今回のC3眼はいずれも濾過胞の縮小傾向がみられ,コントロール困難であった.Akimotoら7)の検討でも,2歳以降発症群の最終眼圧コントロール率はC76.4%と,2カ月.2歳発症群のC96.3%に比べて,やや劣る結果となっているが,その理由は検討されていない.これは,Sha.erら18)の原発先天緑内障への隅角切開術においても,2歳までの発症例の成功率がC94%に対して,2歳以降発症例がC38%と極端に不良な結果になっており,2歳以降の発症例のなかに,線維柱帯切開術や隅角切開術に抵抗性を示す症例が存在することを示唆している.今回の筆者らの検討でのCII群も,最終手術成績がC18眼中C15眼(83.3%)と既報と比較しても良好な結果であったが,追加手術になったC5眼中C3眼は最終的にコントロールが困難であった.これに対する考察として,3歳以上の症例は,角膜混濁や角膜径拡大に伴う流涙などの症状をきたしにくく,自覚症状に乏しい面があり,受診に至るまでに長期間経過し,Schlemm管の二次的な変化をきたしていた可能性が考えられた.既報5,14)では,初回の線維柱帯切開術が奏効しない症例でも追加の同手術を行うことで眼圧コントロールが得られる症例が存在するとしているが,今回の筆者らの検討では,初回手術で全例確実に線維柱帯切開術を施行したにもかかわらず,術後眼圧下降が得られなかったC3眼のうちC1眼は,追加で線維柱帯切開術を施行したが奏効しなかった.これらの症例に対する追加術式については今後も検討を要すると考えられた.III群に関しては,さまざまな病態が関与するため,既報でも成績がばらついており,また,ステロイド緑内障を含んでいることから一概に評価することは困難だが,隅角以外の異常を伴う発達緑内障は,隅角のみの異常にとどまる症例に比べて,成績が劣るとされている8,19).筆者らのCIII群のうち,成績のよいステロイド緑内障を除いても,隅角以外の眼異常を合併したC7眼中追加手術を行ったのがC1眼のみで,既報に比べてもきわめて良好な結果であった.追加手術になったSturge-Weber症候群のC1眼は,初回手術がC6年奏効した.本疾患は,眼圧上昇の機序にCSchlemm管,線維柱帯のみでなく,上強膜静脈圧の上昇まで関与するといわれているが,眼圧上昇の機転の主座がどの病巣にあるかを術前から予測することは困難で,また濾過手術での脈絡膜出血やCuveale.usionなどのリスクや術後管理などを考慮すると,やはり初回手術は線維柱帯切開術が望ましいと考えられた.ステロイド緑内障に関しては,治療の原則はステロイドの中止となるが,全身疾患に対する治療の必要性からステロイドの長期投与を余儀なくされ,中止が困難なケースも少なくない.それらのケースで点眼治療が奏効しない場合,外科的治療が必要となる.既報20,21)での若年発症のステロイド緑内障に対する線維柱帯切開術の成績は,いずれも良好な成績となっており,今回のステロイド緑内障C5眼も初回手術で全例コントロールが得られた.今回の検討から,若年者の緑内障のうち,隅角のみの異常にとどまる発達緑内障に関しては,線維柱帯切開術は原因治療であり,奏効した場合は長期の眼圧コントロールが得られることが示された.また,隅角以外の形成異常を伴う発達緑内障とステロイド緑内障に関しても,重篤な合併症が少ないことや術後管理が容易な点からも,若年者において,線維柱帯切開術が第一選択の有効な術式であることが確認できた.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第C3版.日眼会誌116:3-46,C20122)GorinG:Developmentalglaucoma.AmJOphthalmol58:C572-580,C19643)HoskinsCHDCJr,CSha.erCRN,CHetheringtonCJ:AnatomicalCclassi.cationCofCtheCdevelopmentalCglaucoma.CArchCOph-thalmol102:1331-1336,C19844)AndersonCDR:TrabeculotomyCcomparedCtoCgoniotomyCforCglaucomaCinCchildren.COphthalmologyC90:805-806,C19835)永田誠:乳児期先天緑内障の診断と治療.眼臨C85:568-573,C19916)藤田久仁彦,山岸和矢,三木弘彦ほか:先天緑内障の手術成績.眼臨86:1402-1407,C19927)AkimotoM,TaniharaH,NegiAetal:SurgicalresultsoftrabeculotomyCabCexternoCforCdevelopmentalCglaucoma.CArchOphthalmol112:1540-1544,C19948)太田亜希子,中枝智子,船木繁雄ほか:原発先天緑内障に対する線維柱帯切開術の手術成績.眼紀C51:1031-1034,C20009)IkedaH,IshigookaH,MutoTetal:Long-termoutcomeoftrabeculotomyforthetreatmentofdevelopmentalglau-coma.ArchOphthalmol122:1122-1128,C200410)小坂晃一,大竹雄一郎,谷野富彦ほか:先天緑内障の長期手術成績.あたらしい眼科19:925-927,C200211)原田洋介,望月英毅,高松倫也ほか:発達緑内障における線維柱帯切開術の手術成績.眼科手術23:469-472,C201012)坪田一男,平形明人,益田律子ほか:小児の全身麻酔下眼圧の正常範囲について.眼科26:1515-1519,C198413)奥山美智子,佐藤憲夫,佐藤浩章ほか:全身麻酔下における眼圧の変動.臨眼60:733-735,C200614)永田誠:発達緑内障臨床の問題点.あたらしい眼科C23:C505-508,C200615)根木昭:小児緑内障の診断と治療.あたらしい眼科C27:C1387-1401,C201016)野村耕治:小児期緑内障とトラベクレクトミー.眼臨97:C120-125,C200317)SidotiCPA,CBelmonteCSJ,CLiebmannCJMCetCal:Trabeculec-tomyCwithCmitomycin-CCinCtheCtreatmentCofCpediatricCglaucoma.Ophthalmology107:422-429,C200018)Sha.erRN:Prognosisofgoniotomyinprimaryglaucoma(trabeculodysgenesis)C.CTransCAmCOphthalmolCSocC80:C321-325,C1982C19)大島崇:血管腫を伴う先天緑内障の治療経験.眼臨C81:C1992142-145,C198721)河野友里,徳田直人,宗正泰成ほか:若年発症緑内障に対20)竹内麗子,桑山泰明,志賀早苗ほか:ステロイド緑内障にする線維柱帯切開術の成績.眼科手術28:619-623,C2015対するトラベクロトミー.あたらしい眼科C9:1181-1183,***

角膜ケロイド症例の免疫組織学的検討

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1761.1764,2017c角膜ケロイド症例の免疫組織学的検討沼幸作*1北澤耕司*2,3外園千恵*1木下茂*3*1京都府立医科大学視覚機能再生外科学*2バプテスト眼科クリニック*3京都府立医科大学感覚器未来医療学CImmunohistologicalExaminationofaCasewithCornealKeloidKohsakuNuma1),KojiKitazawa2,3)C,ChieSotozono1)andShigeruKinoshita3)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)BaptistEyeInstitute,3)DepartmentofFrontierMedicalTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine目的:角膜ケロイドのケロイド組織を免疫組織学的に検討したC1症例を報告する.症例および経過:症例はC73歳,男性で,過去に複数回の眼科手術歴があり,徐々に視力低下が進行しバプテスト眼科クリニックを紹介受診.角膜ケロイドと水疱性角膜症を認めたため,角膜ケロイド除去および全層角膜移植術を施行した.術後C9カ月の経過において裸眼視力C0.1(矯正不能)で,ケロイドの再発は認めず,角膜移植片は透明性を維持している.手術時に除去したケロイド組織を免疫組織学的に検討したところ,角膜上皮層にケラチンC3,ケラチンC12,ケラチンC4,ケラチンC13が陽性であったが,ケラチンC1,ケラチンC10は陰性であった.結論:二次性に発症したと考えられる角膜ケロイドに対して全層角膜移植を行い,術後C9カ月の経過期間中には,ケロイドの再発を認めず,移植片は透明性を維持していた.切除した角膜ケロイド組織は,角膜上皮および結膜上皮の両方の生物学的特徴を有していた.Herewereportapatientwhounderwentpenetratingkeratoplasty(PK)forcornealkeloid.A73-yearoldmalewasreferredtotheBaptistEyeInstitute,Kyoto,Japan.Hehadundergonethreeintraocularsurgeriesandhadcor-nealkeloidandbullouskeratopathy.WeperformedcornealkeloidremovalandPK.Afterthesurgery,best-correct-edCvisualCacuityCimprovedCtoC20/200CandChasCmaintainedCwellCwithoutCrejectionCepisode.CTheCresectedCcornealCkeloidtissueshowedbiologicalcharacteristicsofbothcornealepitheliumandconjunctiva.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1761.1764,C2017〕Keywords:角膜ケロイド,水疱性角膜症,全層角膜移植術,ケラチン.cornealkeloid,bullouskeratopathy,pene-tratingkeratoplasty,keratin.Cはじめに角膜ケロイドは,角膜外傷や手術後に異常な創傷治癒過程をたどることで,角膜に結節状の白色腫瘤を形成する比較的まれな疾患である.病理組織学的には角膜上皮の過形成,角膜基底層とCBowman膜の破綻,同時に角膜実質層の不規則なコラーゲンの蓄積を起こす1,2).一方で,角膜ケロイドを免疫組織学的に検討した報告はこれまでになく,その病態もいまだに不明な部分が多い.今回筆者らは,眼外傷と長期にわたる水疱性角膜症によって発生したと思われる角膜ケロイドの症例に対して,手術時に切除したケロイド組織を免疫組織学的に検討したので報告する.CI症例および経過73歳,男性で,既往疾患に糖尿病および高血圧があった.40歳(1980年)時,右眼外傷でC3度の手術歴があり人工水晶体眼となった.その後,角膜内皮機能不全により水疱性角膜症を発症し近医で経過観察されていた.しかし,角膜混濁を伴う隆起性病変を発症し,さらなる視力低下をきたしたため,2015年C10月にバプテスト眼科クリニックへ紹介受診となった.初診時の右眼視力はC10cm指数弁(矯正不能),眼圧は32CmmHgであり,角膜中央部には表面の滑らかな白色結節を認め,中央部には血管侵入を伴っていた(図1).前眼部OCT(CASIA;トーメイ)では境界明瞭な高輝度領域を認〔別刷請求先〕北澤耕司:〒C606-8287京都市左京区北白川上池田町C12バプテスト眼科クリニックReprintrequests:KojiKitazawa,M.D.,Ph.D.,BaptistEyeInstitute,12Kamiikeda-cho,Kitashirakawa,Sakyo-ku,Kyoto606-8287,CJAPAN図1手術前水疱性角膜症およびC11時方向より血管侵入を伴う白色隆起性病変を認めた.図3手術中所見ケロイド組織と考えられる部位の.離後,残存角膜は比較的透見性が高かった.め,白色結節部位に一致すると考えられた(図2).角膜内皮細胞数は測定不能であった.受診時に高眼圧を認めたため,ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩点眼による眼圧コントロールが開始となった.2016年C7月に眼圧C15CmmHgと手術加療が可能であると考えられる状態となったため,全層角膜移植術を施行した.術中に角膜の透見性を確保する目的で,肥厚した角膜上皮層と実質浅層を含む組織片を.離した(図3).縫着糸を通糸した後に,7.5Cmm径でホスト角膜を打ち抜いた.後房内に下方偏位した眼内レンズを認めたためこれを除去し,新しい眼内レンズを縫着した.7.75Cmm径の角膜移植片を連続縫合し手術は終了した.術後は眼圧C30mmHgと高眼圧を示したが,ラタノプロスト・チモロール図2手術前前眼部COCTで角膜表層に境界明瞭な高輝度領域を認めた.図4術後9カ月角膜移植片は透明性を維持していた.マレイン酸塩とブリモニジン酒石酸塩点眼,アセタゾラミド内服でC20CmmHg前後を維持することができた.術後C9カ月の経過時点では,裸眼視力C0.1(矯正不能),眼圧C18CmmHg,角膜内皮細胞数はC2,339Ccells/mmC2であり,角膜移植片は透明性を維持していた(図4).今回,手術開始の際に切除した白色隆起組織と打ち抜いたホスト角膜をそれぞれ半割し,ヘマトキシリン・エオジン染色にて病理組織学的所見を観察した.角膜実質層の表層部では新生血管の増生と不規則なコラーゲンの増生を認めた.角膜上皮の過形成やCBowman膜の破綻,および杯細胞は観察されなかった(図5).角膜実質中間層より深部の角膜組織には明らかな異常は認められなかった(図6).つぎに,残った組織片から凍結切片を作製し,以下のように免疫染色を行い,ケラチンの発現を観察した.アセトンにてC4℃でC10分間固定し洗浄した後,0.15%CTriton/PBSを用いて室温でC10分間の透過処理を行い,その後ブロックキングを行った.一次抗体としてケラチンC3抗体(PROGEN;AE-5,Cmouse),図5手術時に切除したケロイド組織の病理組織像〔Hematoxylin.図6手術時に打ち抜いたホスト角膜の病理組織像〔Hematoxylin.Eosin(HE)染色〕Eosin(HE)染色〕角膜実質浅層に増生された血管(▲)および,不整なコラーゲン角膜実質中間層,実質深層,Descemet膜および角膜内皮層の各増殖の層(*)を認めた.スケールバー:200Cμm.層に明らかな異常は認めなかった.スケールバー:200Cμm.図7手術時に切除したケロイド組織の免疫染色像角膜上皮層においてケラチン(K)3は上皮層の表層C2.3細胞層で陽性,K12は上皮全層で陽性であった.K4は上皮最表層のみで陽性,K13は上皮層の表層C2.3細胞層で弱陽性であった.K1,K10は陰性であった.スケールバー:200Cμm.CケラチンC12抗体(SantaCruz;N-16,goat),ケラチンC4抗体(Novocastra;6B10,Cmouse),ケラチンC13抗体(Novo-castra;KS-1A3,Cmouse),ケラチンC1抗体(LeicaCBiosys-tem;34CbB4,Cmouse),ケラチンC10抗体(Novocastra;LHP1,mouse)を2%CBSAで希釈し,オーバーナイト4℃で反応させた後に,それぞれに対応した二次抗体をC2%CBSAに希釈し室温でC1時間反応させた.PropidiumCiodide(PI)を反応させ封入し,蛍光顕微鏡(AX70CTRFCR;Olympus)で観察した.なお,すべての反応は湿潤箱内で行った.その結果,採取した角膜ケロイドの表層組織では,角膜上皮全層においてケラチンC12が陽性であった.また,上皮表層のC2.3細胞層においてケラチンC3とケラチンC13を,上皮最表層においてケラチンC4が陽性となった.ケラチンC1とケラチンC10は陰性であった(図7).CII考按本症例は,角膜に境界明瞭で表面は滑らかな白色結節病変,および病変に一致して新生血管を認めた.前眼部COCTにおいて高輝度に描出された角膜上皮と実質浅層と考えられる角膜肥厚は,検眼鏡的に認めた白色結節病変と一致していると考えられた.角膜ケロイドについてのこれまでの報告によると臨床所見は,角膜に表面が滑らかで単独の白色またはやや黄色がかった結節病変が生じ,時間経過とともに徐々に拡大傾向を示す.病変に一致して新生血管を伴うこともある1,2).今回の症例の臨床所見は既報の角膜ケロイドの特徴と比較しても矛盾しない所見であり,年齢や外傷歴からも角膜ケロイドと診断した.しかし,一般に角膜ケロイドの臨床所見は多岐にわたり,角膜デルモイド,Salzmann角膜変性症,角膜浮腫を伴う発達緑内障,Peters奇形などが鑑別疾患となる1,3)が,いずれの疾患も前眼部COCTで境界が明瞭にかつ均一な高輝度の領域で描出される疾患ではない.角膜ケロイド診断には前眼部COCTによる評価が有用であった.角膜ケロイドの多くは角膜外傷,角膜疾患,眼手術後に二次的に発症するとされているが,とくにそのような外的因子の関与がなくても発症するという報告もある1.5).本症例は外傷歴と,3度にわたる眼科手術歴と長年の水疱性角膜症から慢性的に角膜上皮のトラブルを繰り返したことにより,二次的に角膜ケロイドを発症したと考えられた.病理学的所見は,既報では,角膜上皮の過形成,基底層とCBowman膜の破綻,角膜実質層ではCalpha-smoothmuscleactin(Ca-SMA)陽性筋線維芽細胞の増生や硝子様コラーゲン線維を認めると報告されている1,2).今回の症例では,角膜上皮の過形成や基底層とCBowman膜の破綻は明らかに認めることはなかったが,角膜実質表層での不規則なコラーゲン増生を認めた.その部位はとくに実質層浅層であり,同部位には血管増生も認めることから,角膜実質浅層がケロイド形成の首座になっている可能性が考えられた.免疫組織学的検討では,正常な角膜上皮に発現するケラチンC3とケラチンC126,7)以外にも,結膜上皮に発現するケラチンC4とケラチンC13の発現8,9)がみられた.さらに,角膜上皮が明らかな過形成を起こしてはいないと思われる部位でも結膜ケラチンの発現が認められた.ケラチンC4とケラチンC13を発現し結膜上皮としての性質を示しながら,病理組織像では杯細胞を認めないことから,角膜上皮が何らかの原因で本来発現することのないケラチンC4とケラチンC13を発現する状態となっていると考えられ,正常角膜上皮のコア転写因子ネットワーク10)が破綻している可能性が示唆された.このようにケロイドが本来存在するケラチンと異なったケラチンを発現することは,皮膚ケロイドにおいても認められる.皮膚ケロイドの形成過程において,創傷治癒という病的病態では,ケラチンC5とケラチンC14を発現する表皮基底細胞がCCa2+やビタミンCDC3で分化してケラチンC1とケラチンC10を発現するようになる11).以上の結果から角膜ケロイドの病態を考察すると,角膜実質層において創傷治癒過程に慢性的な炎症が存在し,それが原因となり実質浅層における異常コラーゲン増生を引き起こすことで,Bowman膜などの角膜の正常構造が破壊へと進行していく可能性が考えられた.さらに,正常基底膜構造が崩れ角膜上皮細胞の環境が変化することで,結果として正常角膜上皮には発現しないケラチンの発現をきたすのではないかと推測された.その際に発現するケラチンは,正常なコア転写因子ネットワークがどれくらい保存されているかに依存すると考えられた.そのため,本症例の角膜ケロイドでは性質の近い粘膜上皮型であるケラチンC4とケラチンC13が,皮膚ケロイドの場合には表皮の角化型であるケラチンC1とケラチンC10が発現すると推察した.今後これらの関係を明らかにしていくことが角膜ケロイドの病態解明につながると考えられるため,さらに症例を蓄積していく必要性がある.今回筆者らは二次性に角膜ケロイドを発症した症例に対して手術で切除したケロイド組織を免疫組織学的に検討した.ケロイド組織は正常の角膜上皮形態を残しつつも,結膜上皮の生物学的特徴も有していることが確認された.文献1)VanathiCM,CPandaCA,CKaiCSCetCal:CornealCkeloid.COculCSurfC6:186-197,C20082)BakhtiariCP,CAgarwalCDR,CFernandezCAACetCal:Cornealkeloid:reportCofCnaturalChistoryCandCoutcomeCofCsurgicalCmanagementintwocases.Cornea32:1621-1624,C20133)JungCJJ,CWojnoCTH,CGrossniklausCHE:GiantCcornealkeloid:caseCreportCandCreviewCofCtheCliterature.CCorneaC29:1455-1458,C20104)GuptaCJ,CGantyalaCSP,CKashyapCSCetCal:Diagnosis,Cman-agement,CandChistopathologicalCcharacteristicsCofCcornealkeloid:aCcaseCseriesCandCliteratureCreview.CAsiaCPacCJOphthalmol(Phila)C5:354-359,C20165)LeeCHK,CChoiCHJ,CKimCMKCetCal:CornealCkeloid:fourCcaseCreportsCofCclinicopathologicalCfeaturesCandCsurgicalCoutcome.BMCOphthalmolC16:198,C20166)CooperCD,CSchemerCA,CSunCTT:Classi.cationCofChumanCepitheliaandtheirneoplasmsusingmonoclonalantibodiestoCkeratins:strategies,Capplications,CandClimitations.CLabCInvestC52:243-256,C19857)LiuCCY,CZhuCG,CConverseCRCetCal:CharacterizationCandCchromosomalClocalizationCofCtheCcornea-speci.cCmurineCkeratinCgeneCKrt1.12.CJCBiolCChemC269:24627-24636,C19948)KrenzerCKL,CFreddoCTF:CytokeratinCexpressionCinCnorC-malChumanCbulbarCconjunctivaCobtainedCbyCimpressionCcytology.InvestOphthalmolVisSciC38:142-152,C19979)Ramirez-MirandaCA,CNakatsuCMN,CZarei-GhanavatiCSCetal:KeratinC13CisCaCmoreCspeci.cCmarkerCofCconjunctivalCepitheliumthankeratin19.MolVisC17:1652-1661,C201110)KitazawaK,HikichiT,NakamuraTetal:OVOL2main-tainsCtheCtranscriptionalCprogramCofChumanCcornealCepi-theliumCbyCsuppressingCepithelial-to-mesenchymalCtransi-tion.CellRepC15:1359-1368,C201611)岸本三郎:皮膚創傷治癒そのメカニズムと治療.日本皮膚科学会雑誌113:1087-1093,C2003***

ニュープロダクツ

2017年12月31日 日曜日

●株式会社KYCenterVue広角眼底LED共焦点スキャナー<EidonAf>EidonはSLOの利点と真のカラーイメージングの忠実さを組み合わせ,LED光源を使用した網膜イメージングの,新しいパフォーマンスを確立した最初のシステムです.SLOシステムは,より深い層からの後方散乱光の影響を制限し,高画質を提供する共焦点撮像原理を利用することで,従来の眼底カメラよりも高品質で高解像な画像取得に優れています.撮影モードは,トゥルーカラー画像,レッドフリー画像,IR画像と黄斑部色素に吸収されにくい波.域での自発蛍光画像が取得できます.(希望小売価格¥7,950,000)<問い合わせ先>株式会社KYCenterVue〒113-0033東京都文京区本郷3-35-4不二光学ビル5FTEL03-6801-8023https://www.kyctv.co.jp広角眼底撮影(オートモード163°,マニュアル214°)フルオートマチック(オートアライメント撮影眼自動検知)(オートフォーカス高精度なピント合わせ)(オートモザイク高度な計算による自動照合)イタリアCenterVue社製製造販売元㈱キーラー・アンド・ワイナー販売元㈱KYCenterVue(113)あたらしい眼科Vol.34,No.12,20171751

基礎研究コラム 7.低酸素応答-どうして新生血管は発生するのか

2017年12月31日 日曜日

低酸素応答──どうして新生血管は発生するのか栗原俊英低酸素応答とは地球上のほとんどの生物は,酸素をからだの隅々の細胞まで供給するために,「低酸素応答」というしくみを得ました.細胞は低酸素に陥ると,低酸素応答を利用して酸素を運搬する赤血球を増やし(造血),赤血球が通る血管を増やし(血管新生),ミトコンドリアを使わない嫌気的代謝へエネルギー代謝を切り替えます(代謝転換).1992年,JohnsCHopkins大学のCSemenza博士は,細胞が低酸素状態下で造血因子エリスロポエチンを増やすのに必要な分子を発見し,低酸素誘導因子(hypoxia-inducibleCfactorC1:HIF-1)と名づけました.後にCHIFはエリスロポエチンだけでなく,VEGF(vas-cularendothelialgrowthfactor)など血管新生や代謝転換にかかわる数百もの遺伝子を制御する低酸素応答のマスターレギュレーターであることがわかりました.眼の領域ではどうでしょうか日常眼科臨床において,低酸素応答による生理的・病的血管新生にしばしば遭遇することがあります.低出生体重児の眼底では,無血管の網膜周辺部へ伸びていく生理的血管新生の過程を観察することができます.コンタクトレンズの不適切な装用による角膜新生血管や糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症に続発する網膜新生血管は代表的な病的血管新生です.また,vonCHippel-Lindau病の原因遺伝子蛋白CVHLは,HIFを負に制御しており,本疾患でみられる網膜血管腫は,HIFが分解できなくなることで標的遺伝子のCVEGFが過剰発現し発症することがわかっています.筆者らは,Cre-loxPシステム(図1)という技術を用いて網膜の特定の細胞でのみ低酸素応答にかかわる遺伝子を欠損させ,HIFやその関連因子の生理的・病的役割を解析してきました.その結果,HIFを介した低酸素応答は,網膜の生理的・病的血管新生に関与するだけでなく,胎生期の硝子体血管の生理的な退縮1)や,加齢黄斑変性における脈絡膜新生血管2)および視細胞,網膜色素上皮細胞の変性3)にかかわっていることが明らかになりました(図2).今後の展望完成した健常な網膜では十分な酸素供給によりCHIFは分解され,蛋白質としては存在しません.一方,虚血性変化による低酸素だけでなく,炎症,過度な光刺激,加齢などで網膜におけるCHIF発現は亢進し,病的な血管新生や異常な代謝転換による細胞萎縮・細胞死を引き起こします.現在筆者(111)C0910-1810/17/\100/頁/JCOPY慶應義塾大学医学部眼科学教室標的遺伝子loxPマウス組織特異的Creマウス組織特異的コンディショナルノックアウトマウス図1Cre.loxPシステム標的遺伝子をCloxP配列で挟んだマウスと組織特異的プロモーター下流でCCreリコンビナーゼを発現するマウスを交配することで,任意の組織のみで標的遺伝子を欠損させたマウスを作製することができる.bコントロール色素上皮特異的VhlKOa図2組織特異的Vhlノックアウトマウスの表現型HIFを負に制御するCVHLを欠損させるとCHIFが分解できなくなり,異常な低酸素応答状態を観察できる.アストロサイト特異的CVhlノックアウト(KO)マウスでは,生理的な硝子体血管退縮が損なわれ,第一次硝子体過形成遺残類似の表現型(.)を示す(Ca).一方,網膜色素上皮特異的CVhlCKOマウスでは,視細胞・色素上皮細胞の萎縮や脈絡膜毛細血管板(*)の異常な拡張が観察できる(Cb).(文献1,3より許可を得て改変引用)Cらは,さまざまな眼疾患に対して安全で効果的なCHIFを標的とした治療法の開発に取り組んでいます.文献1)KuriharaCT,CWestenskowCPD,CKrohneCTUCetCal:Astro-cyteCpVHLCandCHIF-aisoformsCareCrequiredCforCembry-onic-to-adultCvascularCtransitionCinCtheCeye.CJCCellCBiolC195:689-701,C20112)KuriharaCT,CWestenskowCPD,CBravoCSCetCal:TargetedCdeletionofVegfainadultmiceinducesvisionloss.JClinInvest122:4213-4217,C20123)KuriharaCT,CWestenskowCPD,CGantnerCMLCetCal:Hypox-ia-inducedCmetabolicCstressCinCretinalCpigmentCepithelialCcellsCisCsu.cientCtoCinduceCphotoreceptorCdegeneration.Elife2016Mar15;5.pii:e14319あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017C1749アストロサイト特異的VhlKO

二次元から三次元を作り出す脳と眼 19.視覚の進化と両眼視

2017年12月31日 日曜日

連載⑲二次元から三次元を作り出す脳と眼雲井弥生淀川キリスト教病院眼科はじめに草食動物は周囲の危険を察知するため,眼は顔の横につき,単眼ずつ広い視野をカバーする.その分,両眼の視野の重なりは狭い.霊長類では樹上での移動,肉食動物では狩りのために,両眼の視野の重なる部分で距離をつかむようになった.視野の重なりは拡大し,眼は顔の前に移動して脳の構造にも変化が起きた.ヒトでは二足歩行により手を使えるようになったことが脳のさらなる変化につながった.視覚の進化――視蓋と上丘生物にとって最優先の課題は生命の存続である.敵から逃げ食料を確保する.そのため周囲の環境に身体を適応させていくなかで,視覚も進化をとげた.両生類や爬虫類などの下等な動物にとって視覚の中枢は視蓋である(図1a).その視覚はわたしたちの視覚とは大きく異なり原始的である.カエルでは視野に動く物が入ってきたとき,大まかな形と動きによって逃避か捕食か行動が決定される1).動かない物は認識できない.本物の虫でなくても小さな横長の長方形が横に動くと身体をそちらに向け捕食行動を起こす.縦長の長方形やその縦方向の動きには,警戒か逃避行動をとる.頭をもたげたヘビに似ているからである.哺乳類では視覚の最終中枢は大脳へ移る.新天地の大脳で視覚野が拡大する一方,視蓋に相当する上丘は縮小した(図1b,c).しかし,視蓋の特徴を引き継ぎ,原始的な反射に関与し動きを見るのを得意とする.上丘の深層には体性感覚や聴覚の入力があり,これらの感覚と視覚が統合される.ネコやげっ歯類では視野に動く物が入ってくると反射的に眼・頭・身体をそちらに向ける.眼球の動きが発達しているヒトでは,視野内の動きに対して衝動性眼球運動(saccade)で眼を向け固視する.これらの行動には上丘が関与する.鳥類の視覚の最終中枢は視蓋だが,タカやハヤブサなど猛禽類では,ヒトと同程度の小さな視差の検出ができるなど高度な視覚や立体視をもつ.ヒトとは異なり視蓋を発達させた成果である.両眼視野の重なりと視交叉の変化草食動物は周囲の危険を察知するため,眼は顔の横につき,単眼ずつ広い視野をカバーし,両眼の視野の重なりは狭い.ウサギでは単眼ずつの視野は170°,両眼の視野の重なりは前方10°と後方9°である(後ろが見えるのかと驚くが,後方から迫る敵との距離を測るため,後ろ上方は両眼視できるようだ).肉食動物では広い視野をもつよりも,獲物と自分の距離をつかむほうが有利になる.両眼の視野の重なる部分では単眼視の部分より距離をつかみやすい.両眼は前方を向き視野の重なりが増える(図2).霊長類の祖先はネズミのような小さな夜行性の動物だった.樹上で暮らしていたため,樹から樹へうまく飛び移り,木の実や虫を採ることが広い視野をもつより有利であった.肉食動物とは別の理由で両眼視を発達させてa.カエルb.ウサギc.ヒト小脳中脳間脳中脳間脳図1視覚の進化―視蓋と上丘視覚の中枢は両生類,爬虫類,鳥類では中脳の視蓋であるが,哺乳類では大脳に移る.哺乳類の大脳は拡大し,視蓋に相当する上丘は縮小する.a,b:脳外観,c:脳矢状断.(109)あたらしい眼科Vol.34,No.12,201717470910-1810/17/\100/頁/JCOPYウサギウマネコヒト↑前方後方↓両眼視野10°+9°65°120°120°交叉線維:非交叉線維9:18:26:455:45図2両眼視野の重なりと視交叉の変化以内では耳側にあっても交叉するもの,鼻側にあっても交叉せず同側に進むものがあり,互いに重複している.これを鼻側耳側重複(naso-temporaloverlap)とよぶ.サルの視索にマーカーを注射し,網膜に逆行性に運ばれたマーカーの観察により証明された.したがって中心窩2°以内の情報は左右の第一次視覚野V1で共有される.手の発達と精密立体視4)樹上生活で発達した両眼視は,物を握るのに適した形になった手の能力と相まって,さらに精密な立体視へと注)視覚前野は以前に後頭連合野とよばれたが,視覚情報のみに関係するため近年前者が使われる.図3連合野による異種感覚の統合いく2).枝をたぐり寄せて確実につかむために手の形も変わる.横並びの5本の指は,親指がほかの4本の指と向かい合う形に変化した.両眼視野の重なりと視交叉における非交叉・交叉線維の割合は相関する(図2)3).完全交叉では,左右の眼の情報を照合するには脳の左右を連絡する交連線維(脳梁)が必要である.同側に進む線維(非交叉線維)が増えると脳梁なしに脳の同じ側で左右眼の情報を照合したり,融合したりが可能となる.両眼に反応する細胞や視差選択性細胞が出現したと考えられる.非交叉線維の割合が増えるほど両眼視野の重なりが増える.交叉線維と非交叉線維との割合はウサギで9:1,ウマで8:2,ネコで6:4,ヒトで55:45である.非交叉線維の増加は外側膝状体の層構造(ネコでは4層,霊長類で6層)の出現,第一次視覚野V1での眼優位コラムの出現につながった.両眼視のために,脳はその構造を長い時間かけて再構築していった.げっ歯類では非交叉線維は1割程度で,外側膝状体の層構造も眼優位コラムも認めない.注:ヒトや霊長類での半交叉は中心窩を通る垂直線を境に交叉・非交叉が分かれるが,実は中心窩を含む2°1748あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017発展する.後に霊長類の祖先が樹上から降りて地上で暮らし始めたこと,二足歩行を始め前肢(両手)が自由になったこと,中心窩の発達で視力を向上したことから脳の構造はさらに変化した.大脳皮質,なかでも連合野とよばれる部分がヒトでは拡大していった.連合野(asso-ciationarea)とは,運動野と一次感覚野以外の大脳皮質の部分である.前頭・頭頂・側頭連合野に分けられ,異種類の感覚間の相互作用や統合に携わる(図3).頭頂連合野では視覚(空間知覚,形態覚),聴覚,体性感覚などが統合される.空間視の最終ステージである後頭頂葉(postparietalcortex)(連載⑫)は頭頂連合野に属する.異種感覚の統合は上丘でも行われるが,こちらではさらに高い精度で感覚統合が行われる.文献1)鈴木光太郎:形をとらえる.動物は世界をどう見るか.p109-134,新曜社,19952)NHKエンタープライズ21:大陸大分裂目に秘められた物語.NHKスペシャル地球大進化46億年・人類への旅,第5集,DVD,NHKソフトウェア,20053)Duke-ElderS:Theeyeinevolution.In:Systemofoph-thalmology(editedbyDuke-ElderS),vol.5,Mosby,StLouis,19634)入來篤史:知性の起源─未来を創る手と脳のしくみ.脳研究の最前線上(理化学研究所脳科学総合研究センター編),ブルーバックス,p132-181,講談社,2007(110)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 175.MIVS後に生じる強膜創血管新生の処理法(中級編)

2017年12月31日 日曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載175175MIVS後に生じる強膜創血管新生の処理法(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●MIVSと強膜創血管新生強膜創血管新生については本シリーズ(15)ですでに述べているが,今回はmicro-incisionvitrectomysur-gery(MIVS)施行例の強膜創血管新生について述べる.強膜創血管新生は強膜創周囲の残存硝子体を基盤として線維血管増殖膜を形成するもので,増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の晩期硝子体出血の原因として頻度が高い.MIVSの普及により強膜創自体が小さくなり,その発症頻度や重症度は低下しているが,網膜症の活動性が高い症例では今でもみられる.●MIVS後に生じる強膜創血管新生の処理法強膜創血管新生は周辺部残存硝子体と連続しており,術後の残存硝子体の収縮によって新生血管膜から破綻性出血が生じる.よって,新生血管周囲の硝子体を十分に切除しておくことが重要であるが,MIVSではトロカールが邪魔になって処理しづらいことがある.その場合には,トロカールをいったん抜去し,顕微鏡同軸照明下で確実に強膜創血管新生の処理を行う.図は右眼の下鼻側のトロカールを抜去して,同部位の強膜創血管新生を処理した後(図1),灌流ポートを下鼻側につけ替えて(図2a),下耳側のトロカールを抜去し(図2b),同部位の強膜創血管新生の処理(図2c,d)を行っている症例である.また,再手術の際トロカールを新たに設置する部位は,前回の手術時の創よりも多少ずらしたほうが強膜創血管新生の状態が確認しやすい.新たに作製した強膜創に再度新生血管が発育するリスクはあるが,十分な硝子体切除と眼内光凝固で発症を極力予防する.MIVSでは通常4カ所にトロカールを設置するので,4カ所とも強膜創血管新生が生じている可能性があり,念入りに確認を行う.図1右眼の下鼻側の強膜創血管新生の処理トロカールを抜去したうえで,顕微鏡同軸照明下で強膜創血管新生周囲の硝子体を分離切除し(a),強膜創血管新生自体も切除する(b).図2右眼の下耳側の強膜創血管新生の処理灌流ポートを下鼻側につけ替えて(a),下耳側のトロカールを抜去(b)した後,同様の処理を行う(c).最後に強膜創血管新生の芯の部分を眼内ジアテルミーで凝固する(d).文献1)SawaH,IkedaT,MatsumotoYetal:Neovascularizationfromscleralwoundascauseofvitreousrebleedingaftervitrectomyforproliferativediabeticretinopathy.JpnJOphthalmol44:154-160,2000(107)あたらしい眼科Vol.34,No.12,201717450910-1810/17/\100/頁/JCOPY

眼瞼・結膜:基底細胞癌の臨床

2017年12月31日 日曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人33.基底細胞癌の臨床林暢紹須崎くろしお病院眼科眼瞼原発の悪性腫瘍の代表として基底細胞癌がある.基底細胞癌の一番の好発部位は眼瞼を含めた顔部であることから,われわれ眼科医も必ず遭遇する悪性腫瘍であり,その臨床像を知っていることは責務である.眼瞼部腫瘍を診たら疑うことと,多くの症例の臨床写真に触れることが重要である.●はじめに基底細胞癌(basalcellcarcinoma:BCC)は,皮膚悪性腫瘍のなかで最多の腫瘍であり,日本においては眼瞼悪性腫瘍のなかで脂腺癌と並び1位,2位を占める頻度の高い腫瘍である.われわれ眼科医が必ず遭遇する悪性腫瘍といっても過言ではないので,BCCに関して最低限の知識をもつことは責務である.BCCには局所侵襲性は高いが転移はきわめてまれという細胞生物学特徴があり,生命予後の良好さからか,基底細胞腫(basalcellepithelioma:BCE)という名称も用いられる.しかし,病理組織学的に核異型が強く,浸潤性に増殖し,進行速度も速い症例も数多くあるので,筆者は基底細胞癌の名称が望ましいと考えている.●診断と病理BCCは多彩な臨床像を呈するが,典型例では,黒褐色~茶褐色の色素を有した腫瘤性病変(色素性BCC)を呈し,ときにびらんや潰瘍を伴うことがある.色素沈着は均一から不均一まであり,ときにまったく色素沈着を伴わない症例(無色素性BCC)もある.また,上記はBCCの代表といえる結節潰瘍型の特徴であるが,そのほか,隆起や浸潤のほとんどない表在型や,瘢痕様で浸潤の強い強皮症型,さらに広基性または有茎性のPinkus型がある.その他多数の亜分類もあるが,この4亜型まで押さえれば十分と考える(図1,2).腫瘍細胞は,胎生期の毛芽細胞に類似の異型細胞で,定型例では,充実性胞巣を形成し,腫瘍胞巣辺縁では核の柵状配列(これがいわゆるperipheralpalisading)が特徴的である.腫瘍間質はムチンに富むが,ときに線維化に陥っている.腫瘍胞巣と間質との間に裂隙形成を示す傾向がある.また,わが国の例では,メラニン色素を腫瘍胞巣内および真皮内に豊富に認めることが多い(図3).(105)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1内眼角部に生じた結節型の基底細胞癌●鑑別診断BCCと鑑別診断にあげられる眼瞼腫瘍として,良性腫瘍としては母斑と脂漏性角化症がある.母斑とは臨床経過や病変内の潰瘍の有無に加え,色素の色調の違いが鑑別点となり,脂漏性角化症は病変の表面の角化の状態(表面がザラザラ,凸凹といった過角化などの所見)が鑑別点となるが,ときに色素沈着がBCCと酷似し鑑別に苦慮することもある.●治療原則は手術での完全摘出・切除である.腫瘍辺縁から安全域として2~3mm以上離して切除する.また,術中迅速診断を利用して,腫瘍の深部を含め,切除断端に腫瘍細胞がないことを確認することも重要である.●ダーモスコピー眼科領域ではなじみがないかもしれないが,皮膚科領域では,皮膚の腫瘍やホクロなどの色素病変を診るときに,ダーモスコープとよばれる特殊な拡大鏡にゼリーをあたらしい眼科Vol.34,No.12,20171743図2左下眼瞼に生じた表在型の基底細胞癌図3眼瞼基底細胞癌の病理組織像(ヘマトキシリン・エオジン染色)a:弱拡大病理組織像(×20).表皮に連続する形で,真皮内に腫瘍細胞の増殖を認める.b:(×100)腫瘍胞巣の辺縁では,腫瘍細胞のpalisading(peripheralpalisading)を認める.つけ,詳細に観察する検査がある.色素性BCCに対してMenzieの診断基準がある.日本人の色素性BCCは90%以上なので,日本人のBCCを診断するのに有用であり,われわれ眼科医も知っておくと有用であるので,参考までに以下に診断基準を列挙する1).1.Negativefeature:pigmentnetworkがみられない2.Positivefeatures(以下の6所見のうち少なくとも一つが認められる)①ulceration②largeblue-grayovoidnests③multipleblue-grayglobules④mapleleaf-likeareas⑤spoke-wheelareas⑥arborizingvessels●おわりに基底細胞癌は多種多様な臨床状を呈するが,眼瞼部の腫瘍を診たらまずは疑うことが重要である.多くの症例を経験することも重要であるが,一人で経験できる症例数には限界があるので,成書などで基底細胞癌の臨床写真に目を通しておくことも重要である2).なお,病理組織像に関して,高知大学医学部病理学講座倉林睦准教授のご協力に感謝します.文献1)斎田俊明:ダーモスコピーの診かた・考えかた.医学書院,20072)林暢紹:基底細胞癌.知っておきたい眼腫瘍診療(大島浩一,後藤浩編),眼科臨床エキスパート,p229-232,医学書院,20151744あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(106)