‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

眼内レンズ:眼内レンズインジェクターを用いた水晶体残留物除去

2017年10月31日 火曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋371.眼内レンズインジェクターを用いた山川百李子秋元正行大阪赤十字病院眼科水晶体残留物除去水晶体.破.時の残留核片,眼内レンズ摘出時のSoemmering’sringなどを除去する際,従来の方法では切開創の拡大や,多量の粘弾性物質(OVD)を必要とする.眼内レンズインジェクターで自己閉鎖創の開口を確保することで,OVDの使用総量を減らし,切開創を大きく広げず,残留物の接触による侵襲から創部や角膜内皮を保護しつつ容易に取り出すことができた.●はじめに手術手技の発展により,白内障手術は小切開・極小切開などの小さな自己閉鎖切開創から行われるようになった.しかし,破.時の残留核片や眼内レンズ交換時のSoemmering’sringなどの前房内残留物の除去については,鑷子での除去が困難であるため,切開創を拡大し,粘弾性物質(ophthalmicviscosurgicaldevice:OVD)を多量に注入することで眼内圧を上昇させ娩出する方法が主流である.輪匙を使用する場合も,切開創付近で硝子体腔に落ちかけている核の処理は困難であり,切開創を拡大しなければ娩出時に自己閉鎖切開創に摘出物が接触し,創部や角膜内皮への侵襲がある.筆者らは,前房内異物を除去に際して,眼内レンズインジェクターを用いた方法を考案した.眼内レンズインジェクターで切開創の開口を確保することで,前房内異物を容易に眼外へ除去することができた.この方法は,残留核やSoemmering’sringなどの前房内残留物の除去においても応用可能と考えて実施した.●症例1:21歳,男性先天白内障にて経毛様体扁平部水晶体切除術が施行された無水晶体眼.虹彩炎と高眼圧発作を繰り返すようになり,虹彩裏面に残存した水晶体に起因するぶどう膜炎が疑われ手術した.残留水晶体は石灰化が非常に強く,毛様体に癒着しており,硝子体カッターでの切除は困難であった(図1a).眼内レンズインジェクターを3mm強角膜輪部一面切開創部より挿入し,ヘラのように使用して残留片の一部を内腔に収め除去した(図1b).落下した石灰化小片は,硝子体カッターで吸引捕獲して前房まで挙上し,改めて挿入したインジェクターを介して除去した(図1c).●症例2:74歳,女性落屑を有する核硬化III度の白内障.術中,超音波乳化吸引中に後.破損し3/4以上の核片が前房内に残った.角膜ポートより粘弾性物質を充.し,残留核片を中央部にできるだけ移動させた.2.4mm切開創からアルコン図1症例1石灰化したSoemmering.sring除去a:過去の経毛様体扁平部水晶体切除術の手術創近くに膨化・石灰化した残留水晶体を認めた.b:灌流下でインジェクターをヘラのように利用して内腔に収めた.c:硝子体カッターで吸引した核片を前房まで挙上し,インジェクターを介して除去した.(77)あたらしい眼科Vol.34,No.10,201714150910-1810/17/\100/頁/JCOPY図2症例2破.時の残存核処理a:AlconのDカートリッジを挿入,スパーテルで核を破砕しながら粘弾性物質を利用して核を除去した.b:興和のメドショットで核片をすくうように内腔に収めた.のDカートリッジを挿入.スパーテルと双手で核を破砕し,内腔に収めていった(図2a).次に切開創を3.0mmに拡大.開口部が大きい興和のメドショットを使用し,OVDとともに除去した(図2b).●症例3:43歳,男性2回の網膜.離術後の眼内レンズ脱臼症例.眼内レンズを.ごと半切し,3mm切開創から眼内レンズを摘出した.Soemmering’sringは眼内に残った.灌流下にインジェクターを挿入し(図3a),スパーテルで誘引,除去した(図3b).●おわりに眼内レンズインジェクターを挿入して自己閉鎖創の開口を確保することで,灌流下で,あるいはOVDを注入図3症例3Soemmering.sring除去a:眼内レンズ摘出後,灌流下にSoemmering’sringをインジェクター内に収めた.b:摘出したSoemmering’sring.しながら,大きな核片やSoemmering’sringを除去することができた.眼内レンズインジェクターは,多くの施設で比較的容易に手に入る器具であり,その使用方法も簡便である.筆者らは本法をremnantextractionbylensinjectorwithessential.ow(RELIEF)法と名付けた.RELIEF法は,自己閉鎖創を温存したまま,眼内残留物を静的に除去できる有用な手技であると考える.文献1)IshiK,NakanishiM,AkimotoM:Removalofintracamer.almetallicforeignbodybyencapsulationwithanintraocu.larlensinjector.JCataractRefractSurg41:2605-2608,20152)YamakawaM,KusakaM,AkimotoM:Remnantextrac.tionbyusinganintraocularlensinjectorwithessential.ow.EurJOphthalmol27:509-511,2017

コンタクトレンズ:乱視眼のコンタクトレンズ処方の実際

2017年10月31日 火曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方つぎの一歩.症例からみるCL処方.監修/下村嘉一36.乱視眼のコンタクトレンズ処方の実際糸井素純道玄坂糸井眼科医院●はじめに乱視とひとくちにいっても正乱視(直乱視,倒乱視),不正乱視,さらには角膜由来の乱視,水晶体由来の乱視に分けることができ,それぞれコンタクトレンズ(CL)の選択は異なる.また乱視を正確に評価するためには,検査当日,まったくCLを装用していない状態で評価することが望ましい.CL装用はハードコンタクトレンズ(HCL)のみならず,ソフトコンタクトレンズ(SCL)でも顕著な角膜変形(図1,2)を招くことがあり,正確な乱視の評価ができないことがある.本稿では1.00D以上の正乱視眼に対するCL処方について,それぞれのパターン別に解説する.●高度角膜乱視に伴う3D以上の直乱視日本では1日使い捨て乱視用SCLは乱視度-0.75.-2.25D,2週間交換乱視用SCLは乱視度-0.75.-2.75Dのものが流通している.ただし,-2.25D,-2.75Dの乱視度をもつ乱視用SCLは限定されており,たとえ3D未満の直乱視であっても,フィッティングなどの問題で乱視用SCLの処方を断念せざるをえないこともある.また乱視用SCLは球面SCLに比較してレンズ厚が厚く,とくに乱視度が強くなるとその傾向は顕著となる(図3).したがって,低含水性の素材の従来型乱視用SCLは角膜菲薄化,角膜内皮障害などの慢性酸素不足の症状を招きやすいので,常用レンズとしては処方していない.高度角膜乱視に伴う3D以上の直乱視に対するCLの第一選択はHCLとなる.角膜の乱視度が強く,レンズのセンタリングが不安定となるケースでは,乱視用HCL(バイトーリック,あるいは後面トーリック)も選択肢となるが,筆者は球面HCLのレンズ前面に溝(MZ)加工(図4)を施すことによって安定したセンタリングを得ている.HCL特有の異物感で装用が困難な場合は,球面SCLの上にHCLを処方するpiggybacksystemもよい適応となる.●1.00.2.75Dの直乱視HCL,乱視用SCL(1日使い捨て,2週間交換)のよい適応となる.筆者は近視度が強い眼に対しては,眼への酸素供給や装用時間が長くなることも考慮してHCL図1ハードコンタクトレンズ装用者にみられた角膜変形図21日使い捨てハイドロゲルコンタクトレンズ(含水率58%)装用者にみられた角膜変形(75)あたらしい眼科Vol.34,No.10,201714130910-1810/17/\100/頁/JCOPY図32週間交換乱視用ハイドロゲルコンタクトレンズ(含水率66%)の断面図下方が上方に比較してレンズ厚が厚くなっている.図4レンズ前面周辺部の溝加工(MZ加工)図5ソフトコンタクトレンズの長期この加工で上眼瞼によるハードコンタクトレン装用者にみられたバタフライタズ保持がされやすくなり,レンズの安定性が向イプの中等度円錐角膜上する.を,近視度が弱い眼に対しては乱視用SCLを第一選択としている.またoccasionaluse目的の装用者に対しては一日使い捨て乱視用SCLが第一選択となる.HCL特有の異物感の解消には常用することが大原則であり,occasionaluseには適さない.また2週間交換SCLのoccasionaluseでは,レンズケース内での微生物汚染の可能性が高くなる.●高度角膜乱視に伴う3D以上の倒乱視このようなケースで角膜形態異常を伴わない正乱視を経験することはまれである.角膜形状解析を実施すると,バタフライタイプの円錐角膜(図5)やペルーシド角膜辺縁変性であることが多い.CLの選択はHCLとなる.角膜の乱視度が強く,センタリングが不安定となるケースでは,前述したように球面HCLのレンズ前面に溝(MZ)加工(図4)を施す.HCL特有の異物感で装用が困難な場合は,前述したpiggybacksystemもよい適応となる.InstantaneousRadius表示.●1.25.2.75Dの倒乱視水晶体由来の乱視が倒乱視の主体となっているケースで多い.乱視用SCLのよい適応である.球面HCLで矯正しても水晶体由来の乱視は矯正できないため,良好な矯正視力を得ることはまずできない.理論的には前面トーリックのHCLで矯正することが可能であるが,レンズのフィッティングがむずかしく,処方の成功率が低いため,筆者は処方することを控えている.現在,酸素透過性の高いさまざまな1日使い捨て乱視用SCL,2週間交換乱視用SCLが登場しているので,それらを処方している.ただし,倒乱視眼は直乱視眼に比べて角膜乱視が少ないために,乱視用SCLの軸ずれを起こすことが多いので注意が必要である.乱視用SCLを処方する際には,必ずセンタリングとレンズの軸ずれの有無を確認し,必要に応じて軸補正を行う必要がある.ZS986

写真:特徴的な角膜後面沈着物を認める眼内リンパ腫

2017年10月31日 火曜日

写真セミナー監修/島.潤横井則彦401.特徴的な角膜後面沈着物を認める永田健児京都府立医科大学視覚機能再生外科学講座眼内リンパ腫図2図1のシェーマ図1特徴的な角膜後面沈着物大小不同の角膜後面沈着物を認め,大きなものの辺縁は不整である.図3前部硝子体細胞図4本症例の眼底写真多くの大きな前部硝子体細胞をびまん性に認めた.硝子体混濁を認めるが,網膜には病巣を認めなかった.(73)あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017C14110910-1810/17/\100/頁/JCOPY眼内リンパ腫は高率に中枢神経系病変を合併し,致死的疾患であるため,眼所見から眼内リンパ腫が疑われる場合は早期に硝子体生検を行い,採取した硝子体や灌流液の解析を行う必要がある.リンパ腫では通常,組織を採取して組織診を行うが,眼内リンパ腫では組織診を行うのはむずかしいことが多く,細胞診と種々の補助検査を行って総合的に診断する.細胞診のほかには,サイトカイン解析や遺伝子再構成の検討,フローサイトメトリー解析,セルブロックでの解析などの方法がある.とくに判定の容易さや感度が高いことからサイトカイン解析が広く行われており,インターロイキン(IL)-10の濃度がC100Cgp/ml以上の場合や,IL-6の濃度より高い場合には,眼内リンパ腫の可能性が高いとされている1,2).眼内リンパ腫は仮面症候群と称されるように,ぶどう膜炎との鑑別がむずかしい場合があり,その特徴的所見を把握しておくことが重要である.一般的には硝子体混濁や網膜下浸潤病巣が特徴的で,硝子体混濁の性状はびまん性,オーロラ状あるいはベール状と称される.また,眼内リンパ腫の大半はびまん性大細胞型CB細胞性リンパ腫であり,眼内にみられる腫瘍細胞はぶどう膜炎でおもにみられるCTリンパ球より大きな細胞であることも特徴の一つである.角膜後面沈着物は種々のぶどう膜炎でみられるが,大きさや色調,その配列などから原因疾患の鑑別に役立てられる.たとえば,大きな豚脂様角膜後面沈着物が認められれば,サルコイドーシスやCVogt-小柳-原田病をはじめとする肉芽腫性ぶどう膜炎が考えられ,色素に富んで整然と配列していれば,ヘルペス性虹彩炎を疑うことになる.眼内リンパ腫における角膜後面沈着物の特徴は大小不同で辺縁が不整とされるが,この特徴はあまり認識されていない.筆者は辺縁部が棘状の角膜後面沈着物を伴った眼内リンパ腫の症例を経験した(図1,2).本症例はぶどう膜炎として近医でフォローされていたが,びまん性硝子体混濁を伴い,前部硝子体にみられた細胞は一般的なぶどう膜炎と比較して大きな細胞であった(図3).眼底は強度近視であったが,網膜内や網膜下にはとくに病巣を認めなかった(図4).角膜後面沈着物の性状から眼内リンパ腫を疑い,硝子体生検を行ったところ,IL-10が376.0Cpg/ml,IL-6がC63.2Cpg/mlとCIL-10が高値であり,細胞診ではCclassCVであった.フローサイトメトリー解析でも汎CBリンパ球抗原であるCCD19およびCD20を発現し,免疫グロブリンCk鎖の軽鎖制限を認める細胞群が認められ,B細胞性リンパ腫と診断した.このように眼内リンパ腫の特徴的眼所見を認めた場合は,積極的に手術を行って診断することが重要である.文献1)SugitaS,TakaseH,SugamotoYetal:Diagnosisofintra-ocularClymphomaCbyCpolymeraseCchainCreactionCanalysisCandcytokinepro.lingofthevitreous.uid.JpnJOphthal.molC53:209-214,C20092)KimuraCK,CUsuiCY,CGotoCHCetCal;JapaneseCIntraocularLymphomaCStudyCG:ClinicalCfeaturesCandCdiagnosticCsigni.canceCofCtheCintraocularC.uidCofC217CpatientsCwithCintraocularClymphoma.CJpnCJCOphthalmolC56:383-389,C2012C

強度近視の網膜病変

2017年10月31日 火曜日

強度近視の網膜病変MyopicMacularComplications大杉秀治*はじめに近視の人口はわが国を含む東アジアで多く,年々増加傾向にある.近視が進行し,病的とよばれるまでに至るとさまざまな合併症を生じ視力障害をきたす.多治見スタディにおいては近視性黄斑変性がWHO基準による片眼性失明の原因疾患第一位であったことが報告された1).病的近視に視力障害を引き起こす網膜病変として,近視性黄斑合併症や裂孔原性網膜.離がある.近視性黄斑合併症には近視性網脈絡膜萎縮,近視性脈絡膜新生血管(myopicchoroidalneovascularization;近視性CNV),近視性牽引黄斑症(myopictractionmaculopathy:MTM),黄斑円孔,黄斑円孔網膜.離が含まれ,本稿ではこれら近視性黄斑合併症について概説する.I近視性網脈絡膜萎縮病的近視眼では近視の進行とともに眼軸の延長や後部ぶどう腫の形成が生じ,これに伴い脈絡膜が高度に菲薄化し,脈絡膜の循環が障害される.その結果,びまん性や限局性の萎縮が生じる.びまん性萎縮は病的近視眼に高頻度にみられ,眼底検査にて黄斑部や視神経乳頭周囲に黄白色の色調を呈する(図1).その病態は網膜色素上皮や脈絡膜毛細血管板の微細な萎縮とされ,この状態が原因で高度な視力低下をきたすことは少ない.最近,小児の視神経周囲にびまん性萎縮病変がみられた場合,将来的に病的近視による失明リスクが高いことを示唆する報告があり2),注意が必要である.一方,限局性萎縮は脈絡膜血管の完全閉鎖によって生じ,眼底検査にて境界明瞭な白色病変としてみられる(図2).眼底自発蛍光で同部は低蛍光となり,この部位では網膜色素上皮および視細胞が萎縮しているため絶対暗点となるが,病変の拡大は中心窩から離れる方向に進行する傾向にあり,視力が残されることも多い.しかし,境界部に近視性CNVを生じることがあり注意が必要である.また,Bruch膜の断裂により生じる線状の萎縮(lac.quercrack)も近視性CNVが生じる部位として重要である.II近視性脈絡膜新生血管(近視性CNV)近視性CNVはそのほとんどが網膜色素上皮上に存在(type2CNV)し,病的近視の5.10%にみられ,約30%が両眼性とされる.近視性CNVは眼軸長延長に伴い生じるlacquercrackや脈絡膜循環の障害が関与しているとされる.自然経過により,多くは色素沈着を伴うFuchs斑を経て続発性の網脈絡膜萎縮が生じ,不可逆性の視力障害をきたす.それゆえ,できるだけ早期に診断・治療することが望ましい.1.近視性CNVの診断病的近視眼では網脈絡膜萎縮によるコントラスト低下のため,検眼鏡的検査のみでは微細な病変をとらえることは困難であった.しかし,光干渉断層計(optical*HideharuOhsugi:ツカザキ病院眼科〔別刷請求先〕大杉秀治:〒671-1227兵庫県姫路市網干区和久68-1ツカザキ病院眼科0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(67)1405図1びまん性萎縮の眼底写真図2限局性萎縮の眼底写真後極部に黄白色の萎縮病変がみられる.中心窩周囲に境界明瞭な萎縮病変がみられる.図3近視性脈絡膜新生血管(CNV)a:眼底写真では網膜出血とCCNVの灰白色病変を認める.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影にてCCNVよりの蛍光漏出を認める.Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影初期ではCCNV周囲にCdarkCrimがみられる.Cd:IA後期ではCCNVが過蛍光として,またCBruch膜の断裂(lacquerCcrack)が線状の低蛍光として描出されている.Ce:OCTにて網膜下にCCNVと滲出物が貯留しているのが確認できる.Cf:抗CVEGF治療後のCOCT.網膜色素上皮によるCCNVの囲い込みが完成し滲出を認めない.図4近視性脈絡膜新生血管CNVの蛍光造影と光干渉断層血管撮影(OCTA)a:眼底写真では網膜出血とCCNVの灰白色病変を認める.Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影にてCCNVからの蛍光漏出を認める.Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影初期でCCNVがはっきりと描出されている.Cd:bの白枠の範囲に相当するCOCTAでCCNVが描出されている.Ce,f:OCTにて網膜下にCCNVと滲出物が貯留しているのが確認できる.図5Bruch膜の断裂により生じた単純出血の蛍光造影と光干渉断層血管撮影(OCTA)a:眼底写真では網膜出血を認める.b,c:bのフルオレセイン蛍光眼底造影およびCcのインドシアニングリーン蛍光眼底造影にて蛍光漏出を認めない.Cd:bの白枠の範囲に相当するCOCTAで脈絡膜新生血管(CNV)が描出されない.Ce,f:OCTにて網膜下に比較的均一な貯留物(出血)がみられるがCCNVを認めない.図6近視性牽引黄斑症の進行a:近視性網膜分離を認める.Cb:分離症は進行すると網膜の外層に欠損を生じて黄斑部.離となる.Cc:中心窩の神経網膜が欠損することで円孔を生じ,黄斑円孔網膜.離となる.C図7網膜分離と黄斑円孔網膜.離の硝子体手術による改善a:近視性網膜分離症例のOCT.分離が悪化し矯正視力が低下しはじめたため,硝子体手術施行.矯正視力(0.8).b:aの術後C1年のCOCT.分離が軽快している.矯正視力(1.0).c:黄斑円孔網膜.離症例のCOCT.矯正視力(0.2).硝子体手術施行.d:cの術後C6カ月のOCT..離の治癒と円孔の閉鎖が得られ矯正視力も(0.8)まで改善した.-

近視と緑内障

2017年10月31日 火曜日

近視と緑内障MyopiaandGlaucomaType山下高明*はじめに2000からC2001年に行われた緑内障の疫学調査である多治見スタディでは,近視の頻度も報告されており,C-0.5D未満の近視の割合は,70代で男性C13.5%,女性18.6%に対して,40代では男性C70.3%,女性C67.8%と急激に増加している(図1)1).原稿を書いているC2017年C7月は多治見スタディからC17年ほど経過しているので,当時のC70代は今のC87.96歳であり,当時のC40代は今のC57.66歳ということになる.つまり現在C90歳前後の世代では,日本人は近視の少ない民族であり,現在C60歳前後の世代までの間で近視が急増した結果,世界でも有数の近視の多い民族となったのである.本稿では,この近視の急増が緑内障診療に与える影響について,各種緑内障の有病率の変化という観点から解説する.CI閉塞隅角緑内障の減少閉塞隅角緑内障のリスクファクターは高齢,遠視,女性である2).遠視は近視と比較して眼軸長が短く,女性は男性と比較して眼球が小さいため,遠視眼の女性は元々,前眼部の組織が狭いスペースにひしめいている.このような眼では,加齢により水晶体が厚くなったり,Zinn小帯が脆弱になったりすることで,水晶体前面が前方に張り出し,瞳孔部での房水通過の抵抗が大きくなりやすく,瞳孔ブロックを起こしやすいと考えられている(図2a).多治見スタディでは,遠視(>0.5D)の割合は,70代(現在C90歳前後)で男性C56.5%,女性C63.8%に対して,40代(現在C60歳前後)では男性C2.1%,女性C2.9%と急激に減少している(図1)1).そのため,閉塞隅角緑内障は減少傾向にあり,最近では急性閉塞隅角緑内障による緑内障発作をほとんど診察したことのない若い眼科医が増えてきている.もちろん,レーザー虹彩切開術の普及も緑内障発作減少の一因となっているであろう.一方で日本人の寿命は年々伸びており,高齢者が増加することで,上述した水晶体の加齢変化が大きくなることで,遠視が強くなくても緑内障発作を起こす可能性が出てくる.加えて,高齢者で白内障手術を行っていない眼では,水晶体膨化による核性近視が進行して近視化する1).そのため,高齢者では近視であっても閉塞隅角緑内障を発症する可能性があり,vanCHerick法・隅角検査・前眼部画像検査による閉塞隅角の検出が重要である.CII色素散布症候群,色素緑内障の増加色素散布症候群および色素緑内障のリスクファクターは近視と人種(アジア人と比較して欧米人で多い)で,他のタイプの緑内障と比較して若年者で発症する.欧米人の平均年齢C40歳でスクリーニングした研究では,色素散布(緑内障かどうかは問わない)を認めた眼はC2.5%以上であったと報告されている3).遠視眼の多かった昔の日本人では色素緑内障はまれであった.色素緑内障のリスクファクターは近視であり,近視の増加で現在の*TakehiroYamashita:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学〔別刷請求先〕山下高明:〒890-8520鹿児島市桜ヶ丘C8-35-1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(61)C1399100806040200男性の年代別屈折女性の年代別屈折100806040200遠視正視軽度近視強度近視遠視正視軽度近視強度近視図1多治見スタディにおける男女の年代別屈折値の割合40.4950.5960.6970.7980+40.4950.5960.6970.7980+日本人ではC60代からC40代(現在のC80歳前後からC60歳前後)にかけて,近視が急増し,遠視が急減しているのがわかる(強度近視<C-5.0D<近視<C-0.5D<正視<0.5D<遠視).(文献C1より改変引用)C図2閉塞隅角緑内障(a)と色素緑内障(b)の前眼部シェーマ閉塞隅角緑内障は,角膜が厚く,前房が浅く(遠視),水晶体が厚く硬い(高齢者)眼に発症しやすく,瞳孔ブロック(後房圧>前房圧)によって虹彩が前湾して隅角が閉塞する.色素緑内障は,角膜が薄く,前房が深く(近視),水晶体が柔らかく,調節で厚みが変化しやすい(若年者)眼に発症しやすく,角膜が瞬目により押されて戻る(.)ことで,前房がスポイトのような役割を果たし,後房から前房に大量に房水が移動することで一時的に,前房圧>後房圧となり,逆瞳孔ブロックをきたす.逆瞳孔ブロックで虹彩が後湾し,水晶体・Zinn小帯と接触したり,急速に虹彩が前後に動いたりすることで虹彩色素が散布される.C表1色素散布症候群,色素緑内障の所見(太字は色素散布症候群の古典的三主徴)角膜:CKrukenbergspindle(角膜後面色素沈着),角膜内皮細胞の多形前房:色素顆粒の浮遊,前房深度の増大虹彩:中間部虹彩菲薄化による線状の徹照,まだらな色素沈着,色素脱出,瞳孔不同水晶体:水晶体前.・後.への色素沈着,Zinn小帯への色素沈着隅角:線維柱帯への過度な色素沈着,Schwalbe線への色素沈着,広い隅角,後方へ湾曲した虹彩(湾曲している時としていない時がある)後極部:周辺網膜変性,格子状変性(文献C3より改変引用)図3色素緑内障(22歳,男性)両眼とも高度の緑内障性視神経萎縮,隅角色素沈着を認め,虹彩は後湾,隅角は広く開大し,中間部虹彩に色素脱(C.)が確認できる.本症例では,レーザー虹彩切開術を両眼に施行し,さらなる色素散布を予防した.-

近視による内斜視

2017年10月31日 火曜日

近視による内斜視EsotropiaAssociatedwithMyopia鎌田さや花*稗田牧*はじめにVonGraefeやBielschowskyによると,近視眼に生じる内斜視には二つある.一つは若年者に生じる共同性内斜視で,はじめは遠見での複視で発症し,次第に近見でも複視を生じるもの(これを近視性後天性内斜視と称する),もう一つは強度近視に伴い,徐々に進行するもの(これを強度近視性内斜視と称する)である1).本稿では,近視眼に生じる内斜視のうち,近視性後天性内斜視,強度近視性内斜視について述べ,症例を提示する.近視性後天性内斜視の項では,近見作業過多によると考えられる内斜視について考察する.また,強度近視性内斜視の項では,長眼軸長の強度近視眼に伴う固定内斜視だけではなく,近視の程度が軽くても眼球脱臼と伴う内斜視になる病態についても触れる.I近視性後天性内斜視最近,比較的若年者の近視眼に後天性に発症した共同性内斜視が増加している2.5).このような近視を伴う後天性共同性内斜視は,急性内斜視とは異なる病像を呈する.近視性後天性内斜視は,未矯正や低矯正の近視眼で近見作業が多い場合に生じるという説もあり,スマートフォンの過度な使用に伴う内斜視と同様の病態である可能性がある.典型的な近視性後天性内斜視は,複視を伴って発症する共同性内斜視で眼球運動制限はなく,調節性の要因は少ない.遠見での複視を伴う開散不全で始まり,近見は融像可能であるが,一時的な複視を自覚する間欠性内斜位の時期を経て,近方でも内斜視となり,恒常性に至る.発症年齢は10.30代が中心で,幼少期に斜視や眼疾患の既往はなく,両眼視機能は良好である.急に恒常性の複視を自覚して受診するため急性内斜視として扱われる症例もあるが,よく問診すると,それまでにも一時的に複視になることがあったなど,間欠性内斜位の時期があったと推察される例も少なくない.原因や発症機序は明らかではないが,近見作業の増加や精神的・全身的なストレスを契機に発症したと思われる例もある.鑑別として,後述する強度近視性内斜視や中枢性病変を伴う開散麻痺,外転神経麻痺,輻湊けいれんなどがあげられる.MRIによって,筋円錐からの眼球後部の脱臼を伴う強度近視性内斜視や中枢性病変を除外する.また,外転神経麻痺では外ひきの制限を認め,近見反応が異常に亢進して生じる輻湊けいれんでは縮瞳を伴い,単眼性のひき運動時では外転制限がないが,両眼性のとも向き運動時の外転制限が顕著である6)とされるが,近視性後天性内斜視ではこのような調節過緊張の所見や眼球運動制限は伴わない.近視性後天性内斜視の治療には,屈折矯正のみで改善する例もあり,まず適切な屈折矯正を要する.プリズム眼鏡装用のみで眼位が改善したという報告もあり,眼位の変動がある場合はプリズム眼鏡装用で経過をみるが,半年ほど改善がない場合には手術を行う.手術の他にボツリヌストキシン注射の報告もある.手術は一般的な水*SayakaKamada&*OsamuHieda:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕鎌田さや花:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(55)1393図1近視性後天性内斜視(術前のHESS赤緑チャート)近視性後天性内斜視は共同性内斜視であり,眼球運動障害を認めない.==SRSMRGGlobeLLRIR図2脱臼角上直筋(S),眼球(G),外直筋(L)のそれぞれの面重心を求め,∠SGLが耳上側の眼窩壁に対してなす角度を脱臼角とする.この角度が大きいほど,眼球の筋円錐外への脱臼は大きい.SR:上直筋,IR:下直筋,LR:外直筋,MR:内直筋,Globe:眼球.れている.SESでは,近視眼ではなくてもCLR-SRbandが破綻することによって眼球脱臼を生じる可能性がある.このようにCMRIを用いた眼窩画像解析によって斜視の病態解明研究が多く報告され,SR-LRCbandの菲薄化,外直筋の下方偏位と上直筋の内方偏位,眼球後部の筋円錐外への脱臼という発症機序が明らかになってくるにつれ,強度近視眼ではなくても眼球脱臼を生じる内斜視の病態についても多くのことがわかってきた.今後さらにさまざまな斜視の病態が明らかにされることが期待されている.C2.強度近視性内斜視の手術強度近視性内斜視の治療法として知られる横山らによる上外直筋縫着術10)(本稿では上外直筋連合術とよぶ)は,上直筋と外直筋の筋腹を接着させて,筋円錐外に脱臼した眼球を整復することを目的としており,切腱や強膜通糸が必要なく安全で,病態から考えても理にかなった術式として定着しつつある.斜視角が小さく眼球運動制限がほとんどない場合でも眼球脱臼を伴う内斜視については,常の前後転あるいは内直筋後転を行ってもほとんど改善しないため,上外直筋連合術を施行する.また,強度近視性内斜視は両眼性であることが多く,両眼同時に手術することが望ましい.もし片眼のみに上外直筋連合術を行う場合は,術後に医原性上下斜視を生じるため,十分な説明を要する.とくに比較的視力のよい症例では術後複視を強く訴えることがある.実際の術式と手術施行における注意点を以下に示す22).・全身麻酔下に外直筋と上直筋を露出.・それぞれの筋付着部からC15Cmm後方の筋腹(外直筋筋腹の上縁と上直筋筋腹の耳側縁)に,筋縁から異なる距離でC1本の糸(5-0ポリエステル糸)をC2回ずつ通糸する.・両直筋間に隙間ができないようにしっかりと引き寄せ,結紮する.外直筋と内直筋の筋腹の結合部が眼球を抑え込むことにより,脱臼した眼球後部が筋円錐内に整復される.≪注意点≫・最初からC15Cmmを露出することがむずかしい場合に,いったんC10Cmmの位置に制御糸を置いて筋腹をたぐり寄せてからC15Cmmの位置を出す方法や,まずC12Cmmの位置で通糸し両筋腹を通糸した後に15Cmmの位置にも通糸するという方法もある.とくに上直筋が出しにくいときは開瞼器をはずして操作すると術野を確保しやすい.・通糸では,各直筋筋腹の少なくとも半分は糸をかけずに残して,糸の結紮による虚血やうっ血を防ぐ.・通糸の前に各直筋を十分に周囲組織から分離しておかないと,結紮の際に直筋が縦に裂けたり筋と腱の移行部で断裂したりすることがある.・術野に下斜筋や上斜筋の付着部が存在するため,誤って一緒に通糸することがないよう,それら斜筋の解剖学的な位置も確認しながら行う必要がある・上外直筋連合術で脱臼を解除した後も,ひっぱり試験で内直筋の拘縮が示唆される場合に,連合術単独では効果不十分である可能性がある.強度近視眼では視力不良例や中心固視困難な例も多く,術量定量が不十分になりやすいこと,上外直筋連合術の術後眼位は予測がむずかしいことなどから,上外直筋連合術を単独で行うか内直筋後転を併用するかは施設により意見が分かれる.筆者らは,上外直筋連合術を施行後数カ月は経過をみてから局所麻酔下に内直筋後転を追加施行することとしている.症例:強度近視性内斜視37歳,男性.5年前から内斜視が増えてきたとの主訴で来院.90・の内斜視に対して両眼上外直筋連合術を施行したが,30・の内斜視が残存し,TST:Fly(C-)であったため,右眼内直筋後転と左眼内直筋後転を追加し,最終眼位は遠見正位,近見2・内斜視でCTSTcircle9/9の立体視機能を回復した.《術前検査》CRV=(1.2C×S-9.75D)CLV=(1.2C×S-9.75D)CRT=15,LT=13CmmHgPAT前:遠見右内斜視63・,近見右内斜視63・PAT後:遠見右内斜視90・,近見右内斜視90・1396あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017(58)図3強度近視性内斜視(9方向眼位)耳側左眼右眼図5強度近視性内斜視(術前後のHESS赤緑チャート)上段:術前,下段:3回目の術後.図4強度近視性内斜視上外直筋連合術後CMRI,冠状断,T2強調画像.連続した3スライス:上段,中段,下段の順に,眼球接合部よりから眼球中央へ向かう.上外直筋連合術後,上段中段では上直筋と外直筋の位置が改善し,下段では上直筋と外直筋が接して,眼球の位置が筋円錐内に整復されていることがわかる..

LASIKと再近視化―眼軸長変化の観点から―

2017年10月31日 火曜日

LASIKと再近視化─眼軸長変化の観点から─RegressionandChangeinAxialLengthafterLASIK山村陽*はじめにエキシマレーザーを用いた角膜屈折矯正手術としてlaserCinCsituCkeratomileusis(LASIK)(図1)がC2006年にわが国で認可されてから約C10年が経過した.日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)のワーキンググループによると,2015年に国内で施行された屈折矯正手術のうち約C80%がLASIK,約C10%が後房型有水晶体眼内レンズのCICL(implantablecollamerlens)挿入術であったと報告1)している.QOV(qualityCofCvision)やCQOL(qualityCofClife)を向上させる手術として現在でも主流に施行されているCLASIKだが,ここ数年は消費者庁の注意喚起の影響などによりその取り巻く環境は激変し,有効性や安全性に対する懸念の広まりによって施行件数はピーク時のC1/10程度にまで減少したとされる.LASIKの目的は近視や乱視などの屈折異常を矯正し,良好な裸眼視力を獲得することにあるが,今回,LASIK術後の再近視化(近視進行)とその要因の一つとして考えられる「眼軸長変化」について解説する.CILASIK術後の再近視化(近視進行)一般に近視はC20代以降も進行することが知られており,たとえば,約C-3Dの近視はC10年間でC20代では約C-0.6D,30代では約C-0.4D,40代では約C-0.3D近視化することが報告2)されている.また,20代前半のコンタクトレンズユーザーではC5年間でC-1.0D以上の近視化が約C35%生じたという報告3)もある.図1LASIKフラップ作製後にエキシマレーザーを照射する.C筆者らが以前に行った屈折度数C-7.20±2.35D,年齢C35±8歳の症例(23眼)に対しCLASIKを施行した検討では,術後C6カ月.7年ではC-0.18±0.33Dの近視化が生じ,また屈折度数C-6.31±2.55D,年齢C37.1C±9.1歳の症例(54眼)に対しCLASIKを施行した別の検討では,術後C1.10年ではC-0.26±0.59Dの近視化が生じたとそれぞれ報告した4,5).また,Ali.らは屈折度数C-7.27±1.94D,年齢C33.2C±9.9歳の症例(97眼)に対しCLASIKを施行した検討では,術後C3カ月.10年ではC-1.04±1.73Dの近視化が生じたと報告6)している.強度近視眼に対するCLASIK術後の再近視化は,10年で約C-0.3.C-1.0Dぐらいであると考えられる.*KiyoshiYamamura:バプテスト眼科クリニック〔別刷請求先〕山村陽:〒606京都市左京区北白川上池田町C12バプテスト眼科クリニック0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(49)C1387**2928.52827.52726.52625.52524.524****LASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICLLASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICL図2術前眼軸長眼軸長変化量(mm)眼軸長(mm)LASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICL******2928.5術前眼軸長はC3群間に有意な差があった.**:p<0.01.C28**27.52726.5眼軸長(mm)0.3n.s.**0.250.20.152625.52524.50.1240.05期間(年)図3眼軸長変化術後眼軸長はCLASIK(>C-6D)群では変化がなく,LASIK図4術後5年の眼軸長変化量(≦-6D)群では術後C3年以降は変化がなかったが,ICLLASIK(>.6D)LASIK(≦.6D)ICLICL群はCLASIK群よりも有意に眼軸長が延長していた.群では術後C1年以降毎年延長していた.*:p<0.05,**:**:p<0.01.Cp<0.01.図6両眼開放オートレフラクトメータ図5遠視性軸外屈折水平方向の視野角がC10°間隔になるよう固視指標(C-30°,C近視進行には周辺網膜における遠視性軸外屈折が関与して-20°,C-10°,0°,10°,20°,30°)を眼前C50Ccmの位置に作製設置し,散瞳条件下に指標を順に注視させ屈折度いると考えられている.数(レフ値)を測定した.5等価球面度数:ー5.81±1.67D4)術前術後1カ月3(D数1.3420.81折度0.63屈外1.0.090.25.0.19**軸****相対的0.30度.20度.10度0度10度20度30度.1.0.10.0.25.0.60.0.51.2.1.10.0.84.3視野角(度)n=11図7LASIK術前後における軸外屈折術前の周辺網膜における遠視性軸外屈折は術後C1カ月では近視性軸外屈折に変化し,視野角C-30°,20°,30°では有意な差があった(**:p<0.01).図8近視性軸外屈折近視進行抑制には周辺網膜における近視性軸外屈折が関与していると考えられている.

高次収差と近視進行

2017年10月31日 火曜日

バイオレットライトと近視進行抑制VioletLightandSuppressionofMyopiaProgression鳥居秀成*はじめに世界の近視人口は増加の一途をたどっており,C-0.50D以下を近視,C-5.00D以下を強度近視と定義した場合,全世界の近視人口はC2050年には全世界人口のC49.8%のC47億C5800万人,失明リスクのある強度近視の人口はC9.8%のC9億C3800万人になると報告1)されている.日本国内でも,文部科学省平成C28年度学校保健統計調査結果によると,裸眼視力C1.0未満の割合が小学校・中学校・高校において昭和C54年以来過去最高を記録した.裸眼視力C1.0未満の原因疾患のすべてが近視というわけではないが,近視児童の増加が反映された結果であると思われる.この近視人口の世界的な急増は約C60年前からの変化であり2),人類の長い歴史から考えると,遺伝因子よりも環境因子の変化が主因であると考えられる.近視と関連する環境因子のうち,屋外活動が近視進行を抑制することがこれまで多くの疫学研究・介入研究から指摘されており3.11),近年,屋外活動の効果が注目されている.その屋外活動を構成する因子には,ビタミンCD12.14)・光環境15,16)などの因子が考えられており,そのうち何が効いているのか,またそのメカニズムはわかっていなかった.また,屋外活動というと身体活動量や運動量も想起されるが,運動量と近視には明確な関係性がない可能性が指摘されてきており7,17),さらに最近の研究により,ビタミンCDよりも光環境自体が重要である可能性が示唆されてきている18,19).以上より,近視進行を抑制する屋外活動を構成する因子のうち,屋外の光環境が注目されている.CIバイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである(図1).JISCZC8120:2001は可視光下限をC360.nmと定義している.実際に人間はバイオレットライトの色を認識することは可能である(図2).CIIバイオレットライトと近視進行抑制近視の屈折矯正手術の一つである有水晶体眼内レンズ挿入術後の近視の戻りを調べる臨床研究を行っていたところ,筆者らはある一つのことに気がついた.成人を対象としたC5年間の後向き研究であるが,2種類の有水晶体眼内レンズ(ARTISANとCARTIFLEX,共にCOphtecBV社製)間で術前術後の眼軸長伸長程度に有意差を認めた20).そのレンズの違いは高次収差など21)いくつかあるが,眼軸長伸長の差はレンズがC360.400Cnmのバイオレットライトを透過させるか否かに依存している可能性に着目し,動物実験・臨床研究・環境調査を行い,バイオレットライトが近視進行を抑制する可能性を研究した22).C1.動物実験1978年にCWallmanら23)がヒヨコにゴーグルを装着することで近視になることを報告して以来,近視の動物実験ではヒヨコを用いることが一般的24.34)になっている.*HidemasaTorii:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕鳥居秀成:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(33)C1371図1バイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである.JISCZ8120:2001は可視光の短波長限界をC360.400Cnmと定義している.バイオレットライトは可視光に属する.太陽光にバイオレットライトが含まれている.図2可視光バイオレットライトの色左はカメラレンズのみで撮影した写真.中央はC400Cnm以下の波長をカットするレンズを通して撮影した写真(赤矢頭がレンズの縁),右はC400Cnm以上の波長をカットするフィルターを通して撮影した写真.右の写真がバイオレットライトのみでみた風景である.(文献C22より引用)abVL1009080706050403020100波長(nm)図3バイオレットライトとヒヨコ実験適過率(%)250300350400450500550600650700750800近視誘導には,バイオレットライトを透過する(Ca)ことを確認した凹レンズ効果をもつクリアレンズ(b)を使用し,片眼装用を行った.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)C43abEGR1の相対発現量*****3.0屈折値の変化(Diopter).5.10.15.2000.0VL.VL+VL.VL+ControlCoveredVL.VL+VL.VL+ControlCovered眼軸長の変化(mm)2.522.01.511.00.5VL.VL+VL.VL+ControlCovered図4ヒヨコ実験近視モデルにおけるバイオレットライトの近視進行抑制効果a:縦軸はC1週間の近視進行程度.Cb:縦軸はC1週間の眼軸長伸長程度を示す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,近視進行程度・眼軸長伸長程度が有意に抑制されていることがわかる.(文献C22より引用)図5近視進行抑制遺伝子EGR1の発現とバイオレットライト縦軸はヒヨコ網膜・脈絡膜組織におけるCEGR1CmRNA相対発現量を表す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,EGR1の発現が有意に上昇していることがわかる.(文献C22より引用)ab100808070適過率(%)10090適過率(%)60605040403020201000350400450500550600650350400450500550600650波長(nm)波長(nm)図6今回の臨床研究で用いたコンタクトレンズの波長透過特性バイオレットライトの透過率がC80%以上のコンタクトレンズ(Ca)を装用している群と,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズ(Cb)を装用している群にわけ,眼軸長伸長量を比較した.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)表1コンタクトレンズ装用開始時データ症例数人種年齢(歳)C他覚屈折値(ジオプター)C眼軸長(mm)C経過観察期間(日)C31例31眼日本人14.7±1.3(13.18)C-2.59±1.71(-1.00.C-6.38)C25.63±0.70(24.22.26.88)C892±374(372.1645)C116例C116眼C─15.1±1.4(13.18)C-2.47±1.72(-1.00.C-9.38)C25.76±0.99(C23.40.C28.10)C872±361(C380.C1814)C0.1050.7210.5510.833バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群をCVL+群,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群をCVLC-群とし,両群間のコンタクトレンズ装用開始時のデータを比較した.年齢や屈折値,眼軸長,経過観察期間においてC2群間に有意差を認めず,ほぼ同じ背景の学生である.(文献C22より引用)C*眼軸長の変化量(mm/年)0.300.250.200.150.100.050.00VL.VL+図7図6の異なるバイオレットライト透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群(VCL+群,1C16例C116眼)の眼軸長伸長量はC0.14.mm/年,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群(CVLC-群,C31例31眼)の眼軸長伸長量はC0.19Cmm/年であり,CVL+群のほうが,有意に眼軸長伸長量が少なかった.(文献C22より引用)C2.001.80VL6:0010:0014:008:0012:0016:001.6018:001.401.201.000.800.600.400.200.00300350400450500550600650700750800波長(nm)図8屋外環境におけるバイオレットライト分光放射照度(W/m2/nm)真夏の東京における光環境を6.18時まで計測した.18時の日没に近い時間以外は,どの時間帯もバイオレットライトCVLが一定量存在することがわかる.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)1.60VLオフィス内車内1.40病院内1.201.000.800.600.400.200.00図9屋内環境におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)真夏の東京における日中の光環境を室内(オフィス内,車内,病院内)で計測した.最近のガラスは,400Cnm以下の光をカットするものが多く,バイオレットライト(VL)までカットされていることがわかる.そのため屋内環境ではCVLがほとんどない.(文献C22より引用)C0.200.180.160.140.120.100.080.060.040.020.00図10窓がない室内におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)窓がないため蛍光灯のみの波形であることがわかり,そのため時間による差を認めない.窓がない屋内環境ではどの時間帯でもバイオレットライト(VL)がほとんどない.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)TUNEL/DAPI角膜網膜ControlVL(365nm)UVB(305nm)図11ヒヨコ角膜・網膜におけるTUNEL染色陽性細胞の有無バイオレットライト(VL)による角膜・網膜障害の評価のため,アポトーシスによる細胞死の有無をCTUNEL染色を用いて評価した.昼行性動物であるヒヨコの実験系を用い,バイオレットライト(400C.W/cmC2)を1日12時間・7日間連続の照射を行った.その結果,UVB照射により角膜に認められたようなCTUNEL染色陽性細胞(赤色部分)は,バイオレットライト照射では認めず,アポトーシスによる細胞死を認めなかった.(文献C22より引用)

バイオレットライトと近視進行抑制

2017年10月31日 火曜日

バイオレットライトと近視進行抑制VioletLightandSuppressionofMyopiaProgression鳥居秀成*はじめに世界の近視人口は増加の一途をたどっており,C-0.50D以下を近視,C-5.00D以下を強度近視と定義した場合,全世界の近視人口はC2050年には全世界人口のC49.8%のC47億C5800万人,失明リスクのある強度近視の人口はC9.8%のC9億C3800万人になると報告1)されている.日本国内でも,文部科学省平成C28年度学校保健統計調査結果によると,裸眼視力C1.0未満の割合が小学校・中学校・高校において昭和C54年以来過去最高を記録した.裸眼視力C1.0未満の原因疾患のすべてが近視というわけではないが,近視児童の増加が反映された結果であると思われる.この近視人口の世界的な急増は約C60年前からの変化であり2),人類の長い歴史から考えると,遺伝因子よりも環境因子の変化が主因であると考えられる.近視と関連する環境因子のうち,屋外活動が近視進行を抑制することがこれまで多くの疫学研究・介入研究から指摘されており3.11),近年,屋外活動の効果が注目されている.その屋外活動を構成する因子には,ビタミンCD12.14)・光環境15,16)などの因子が考えられており,そのうち何が効いているのか,またそのメカニズムはわかっていなかった.また,屋外活動というと身体活動量や運動量も想起されるが,運動量と近視には明確な関係性がない可能性が指摘されてきており7,17),さらに最近の研究により,ビタミンCDよりも光環境自体が重要である可能性が示唆されてきている18,19).以上より,近視進行を抑制する屋外活動を構成する因子のうち,屋外の光環境が注目されている.CIバイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである(図1).JISCZC8120:2001は可視光下限をC360.nmと定義している.実際に人間はバイオレットライトの色を認識することは可能である(図2).CIIバイオレットライトと近視進行抑制近視の屈折矯正手術の一つである有水晶体眼内レンズ挿入術後の近視の戻りを調べる臨床研究を行っていたところ,筆者らはある一つのことに気がついた.成人を対象としたC5年間の後向き研究であるが,2種類の有水晶体眼内レンズ(ARTISANとCARTIFLEX,共にCOphtecBV社製)間で術前術後の眼軸長伸長程度に有意差を認めた20).そのレンズの違いは高次収差など21)いくつかあるが,眼軸長伸長の差はレンズがC360.400Cnmのバイオレットライトを透過させるか否かに依存している可能性に着目し,動物実験・臨床研究・環境調査を行い,バイオレットライトが近視進行を抑制する可能性を研究した22).C1.動物実験1978年にCWallmanら23)がヒヨコにゴーグルを装着することで近視になることを報告して以来,近視の動物実験ではヒヨコを用いることが一般的24.34)になっている.*HidemasaTorii:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕鳥居秀成:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(33)C1371図1バイオレットライトとは?波長C360.400Cnmの光がバイオレットライトである.JISCZ8120:2001は可視光の短波長限界をC360.400Cnmと定義している.バイオレットライトは可視光に属する.太陽光にバイオレットライトが含まれている.図2可視光バイオレットライトの色左はカメラレンズのみで撮影した写真.中央はC400Cnm以下の波長をカットするレンズを通して撮影した写真(赤矢頭がレンズの縁),右はC400Cnm以上の波長をカットするフィルターを通して撮影した写真.右の写真がバイオレットライトのみでみた風景である.(文献C22より引用)abVL1009080706050403020100波長(nm)図3バイオレットライトとヒヨコ実験適過率(%)250300350400450500550600650700750800近視誘導には,バイオレットライトを透過する(Ca)ことを確認した凹レンズ効果をもつクリアレンズ(b)を使用し,片眼装用を行った.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)C43abEGR1の相対発現量*****3.0屈折値の変化(Diopter).5.10.15.2000.0VL.VL+VL.VL+ControlCoveredVL.VL+VL.VL+ControlCovered眼軸長の変化(mm)2.522.01.511.00.5VL.VL+VL.VL+ControlCovered図4ヒヨコ実験近視モデルにおけるバイオレットライトの近視進行抑制効果a:縦軸はC1週間の近視進行程度.Cb:縦軸はC1週間の眼軸長伸長程度を示す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,近視進行程度・眼軸長伸長程度が有意に抑制されていることがわかる.(文献C22より引用)図5近視進行抑制遺伝子EGR1の発現とバイオレットライト縦軸はヒヨコ網膜・脈絡膜組織におけるCEGR1CmRNA相対発現量を表す.レンズ装用をしていないコントロール眼(control),凹レンズ装用を行った遮蔽眼(Covered)ともに,バイオレットライト(VL)に暴露されたヒヨコ(VL+)は,暴露されていないヒヨコ(VLC-)に比べ,EGR1の発現が有意に上昇していることがわかる.(文献C22より引用)ab100808070適過率(%)10090適過率(%)60605040403020201000350400450500550600650350400450500550600650波長(nm)波長(nm)図6今回の臨床研究で用いたコンタクトレンズの波長透過特性バイオレットライトの透過率がC80%以上のコンタクトレンズ(Ca)を装用している群と,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズ(Cb)を装用している群にわけ,眼軸長伸長量を比較した.VL:バイオレットライト.(文献C22より引用)表1コンタクトレンズ装用開始時データ症例数人種年齢(歳)C他覚屈折値(ジオプター)C眼軸長(mm)C経過観察期間(日)C31例31眼日本人14.7±1.3(13.18)C-2.59±1.71(-1.00.C-6.38)C25.63±0.70(24.22.26.88)C892±374(372.1645)C116例C116眼C─15.1±1.4(13.18)C-2.47±1.72(-1.00.C-9.38)C25.76±0.99(C23.40.C28.10)C872±361(C380.C1814)C0.1050.7210.5510.833バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群をCVL+群,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群をCVLC-群とし,両群間のコンタクトレンズ装用開始時のデータを比較した.年齢や屈折値,眼軸長,経過観察期間においてC2群間に有意差を認めず,ほぼ同じ背景の学生である.(文献C22より引用)C*眼軸長の変化量(mm/年)0.300.250.200.150.100.050.00VL.VL+図7図6の異なるバイオレットライト透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較バイオレットライトをC80%以上透過するコンタクトレンズを装用している群(VCL+群,1C16例C116眼)の眼軸長伸長量はC0.14.mm/年,バイオレットライトの透過率がC80%未満のコンタクトレンズを装用している群(CVLC-群,C31例31眼)の眼軸長伸長量はC0.19Cmm/年であり,CVL+群のほうが,有意に眼軸長伸長量が少なかった.(文献C22より引用)C2.001.80VL6:0010:0014:008:0012:0016:001.6018:001.401.201.000.800.600.400.200.00300350400450500550600650700750800波長(nm)図8屋外環境におけるバイオレットライト分光放射照度(W/m2/nm)真夏の東京における光環境を6.18時まで計測した.18時の日没に近い時間以外は,どの時間帯もバイオレットライトCVLが一定量存在することがわかる.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)1.60VLオフィス内車内1.40病院内1.201.000.800.600.400.200.00図9屋内環境におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)真夏の東京における日中の光環境を室内(オフィス内,車内,病院内)で計測した.最近のガラスは,400Cnm以下の光をカットするものが多く,バイオレットライト(VL)までカットされていることがわかる.そのため屋内環境ではCVLがほとんどない.(文献C22より引用)C0.200.180.160.140.120.100.080.060.040.020.00図10窓がない室内におけるバイオレットライト300350400450500550600650700750800波長(nm)窓がないため蛍光灯のみの波形であることがわかり,そのため時間による差を認めない.窓がない屋内環境ではどの時間帯でもバイオレットライト(VL)がほとんどない.(文献C22より引用)分光放射照度(W/m2/nm)TUNEL/DAPI角膜網膜ControlVL(365nm)UVB(305nm)図11ヒヨコ角膜・網膜におけるTUNEL染色陽性細胞の有無バイオレットライト(VL)による角膜・網膜障害の評価のため,アポトーシスによる細胞死の有無をCTUNEL染色を用いて評価した.昼行性動物であるヒヨコの実験系を用い,バイオレットライト(400C.W/cmC2)を1日12時間・7日間連続の照射を行った.その結果,UVB照射により角膜に認められたようなCTUNEL染色陽性細胞(赤色部分)は,バイオレットライト照射では認めず,アポトーシスによる細胞死を認めなかった.(文献C22より引用)

病的近視の診断基準

2017年10月31日 火曜日

病的近視の診断基準De.nitionofPathologicMyopia横井多恵*大野京子*はじめに病的近視は近視の中の特異な病態であり,網膜や視神経の合併病変により矯正視力の低下をきたす.病的近視に伴うさまざまな眼合併症は,おもに東アジア諸国を中心とした世界の失明の主要な原因疾患である1).しかし,その重要性にもかかわらず,病的近視を示す用語や定義は,長らく国際的な統一見解が得られていなかった.用語に関しては,「強度近視」,「変性近視」,「悪性近視」「高度近視」が研究・調査報告で使用されてきた2).しかし,,「強度近視」という用語は,近視が単に強度に至った病態を示すもので,近視に伴う眼合併症から視覚障害に至る疾患概念を正確に反映していない.また,近視に伴う眼合併症が常に網脈絡膜の「変性」というわけではない.さらに「悪性近視」は,悪性の腫瘍性疾患を想起させるものであるし,強い近視を「高度近視」と定義すると,弱い近視は「低度近視」なるが,そのような用語はない.このため近年は,「病的近視」という用語が,もっとも適切な用語として普及するようになった.病的近視の定義に関しては,Duke-ElderやCurtinらによれば,「眼底後極部に変性を起こす,あるいは後部ぶどう腫がある近視」とされていた3).しかし実際には,眼底所見から病的近視を定義した研究・調査は近年まであまりなく,疫学調査や研究報告の多くが病的近視を屈折値に基づき定義してきた.さらに眼軸長測定が容易な時代になると,屈折値および眼軸長の両者を含めて病的近視を定義する報告が多くなった.しかし,屈折値や眼軸長による定義は,単に近視が強度に至った状態を示すものである.強度の近視のすべてが近視に伴うさまざまな眼合併症から視覚障害に至る病的近視とは限らず,屈折値や眼軸長のみのでは病的近視を定義するには不十分である.統一された基準を定めることで,国内外での調査研究間の比較を可能とするために,2015年の病的近視の国際メタ解析スタディ(theMeta-AnalysisforPathologicMyopiastudy:META-PM)では4),病的近視を「びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有する,もしくは後部ぶどう腫を有する」眼であると定義した.しかし,一見このような眼底所見による病的近視の定義は理想的と考えられるが,問題は人種によっては網脈絡膜の萎縮性病変の観察が困難であったり,近視性眼底病変が後部ぶどう腫も含めて,加齢とともに出現することである.少なくともアジア人においては,眼底変化が生じる以前の若年者や小児の病的近視を見過ごす危険がある.このような若年例を適切に鑑別し,近視性眼底病変発症のリスクを管理することは,病的近視による失明防止にとって重要であり,現状の診断基準もまた不十分と考えられる.以上を踏まえたうえで,本稿では今日まで議論されている,病的近視の診断に関する最新の知見をまとめる.*TaeYokoi&*KyokoOhno-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕横井多恵:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(25)1363I病的近視の定義1.病的近視の二つの病期病的近視の病期には,・病的近視に特徴的な眼合併症が生じ,すでに視覚障害に至った状態,・病的近視に特徴的な眼合併症はないが,将来,病的近視よる眼合併症から視覚障害に至るリスクがある状態,の二つの病期がある2,5).強度の近視は,病的近視に特徴的な視覚障害をきたす眼合併症の要因であり,病的近視における眼合併症の代表的な所見には,後部ぶどう腫の形成やさまざまな種類の近視性黄斑症がある.META-PMスタディは,病的近視を「びまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有する,もしくは後部ぶどう腫を有する」眼であると定義したが4),本来は・・の病期にある病的近視を含む基準が理想と考えられる.しかし,現状ではMETA.PMスタディの定義に基づき,眼合併症の有無により病的近視の診断を行うことが妥当と考えられる.以下に後部ぶどう腫とさまざまな種類の近視性黄斑症の定義と診断についての知見をまとめる.2.後部ぶどう腫の定義と診断病的近視の病態の最大の特徴は,眼軸延長による後部ぶどう腫の形成である.これまで後部ぶどう腫は,研究報告においてさまざまに定義されてきた.たとえば,ある報告では近視性黄斑症の一部として評価され,また別の報告では,限局した眼球壁の突出が後極部に観察されない場合でも,近視性黄斑症を認める場合は後部ぶどう腫があるものとして評価されてきた.混乱をさけるため2013年にSpadeは,「周囲の眼球壁の曲率半径よりも明らかに小さい曲率半径を有する後極部眼球壁の突出」を,後部ぶどう腫を示す用語として図1のように定義した6).これによると図1bに示すような,赤道部の眼球壁の伸展によって生じた軸性近視において,後極部眼底曲率半径(r1)に変化を認めない場合は,後部ぶどう腫がない軸性近視と定義される.一方で図1cに示すように,本来の後極部眼底曲率半径(r1)以外に,より小さな曲率半径(r2)を示す眼球壁の突出を認める場合は,後部ぶどう腫がある軸性近視と定義される.また,長らく後部ぶどう腫の分類は,1977年にCurtinが世界で初めて提唱した,双眼倒像鏡を用いたCurtin分類が用いられてきた(図2)7).Curtin分類では後部ぶどう腫は,I~Vの基本タイプと,I~Vの基本タイプの複合型であるVI~Xのタイプに分類される.一方で,Curtin分類から約40年を経た近年の画像解析技術の進歩はめざましく,後部ぶどう腫の形状は新技術を用いてより詳細に評価されるようになった.Ohno-Mat.suiらは,2012年に3D-MRIを用いた病的近視眼の全眼球形状解析を行い,3D-MRIを用いた後部ぶどう腫のシンプルな形態分類を示した8).さらに2014年には,通常のパノラマ写真ではとらえられない最周辺部200°の変化を撮像できるオプトス画像と3D-MRIによる画像解析を組み合わせ,後部ぶどう腫の新しい分類方法を提唱した(図3)9).Ohno-Matsuiらは,近年の画像解析技術によって詳細に観察されるようになったさまざまな形態の後部ぶどう腫をより適切に分類するために,Curtin分類を以下のように修正した.まず後部ぶどう腫を後部ぶどう腫の最外周縁の範囲と位置のみで大まかに分類した.このためCurtin分類において,後部ぶどう腫内での強膜形状の違いで後部ぶどう腫を細分したVI~Xの複合型後部ぶどう腫は,Ohno-Matsuiらの分類においては,すべてCurtin分類I型に含まれる.Ohno-Matsuiらの分類では,Curtin分類のI型が黄斑広域型,II型が黄斑限局型,III型が乳頭周囲型,IV型が鼻側型,V型が下方型,それ以外がその他に分類される.さらに2017年にOhno-Matsuiらは,日常診療でより簡便かつ詳細に後部ぶどう腫の形状解析ができる最大撮影幅16×14mm,深さ5mmの範囲が撮像可能なswept-sourceOCT(SS-OCT)であるプロトタイプ広角OCTを,3D-MRIに変わる手法として,世界で初めて使用し,広角OCTの病的近視診療における有用性を報告した10).広角OCTは簡便に,3D-MRIと同等もしくはそれ以上の精度で後部ぶどう腫の形状を三次元的に解析可能であり(図4),3D-MRIでは見逃される後部ぶどう腫の診断も可能であった(図5).3.近視性黄斑症の定義と診断2014年にOhno-Matsuiらによって報告されたオプト1364あたらしい眼科Vol.34,No.10,2017(26)図1Spadeらによる後部ぶどう腫の診断a:正常の眼球形態.b:赤道部眼球壁が伸展した後部ぶどう腫のない軸性近視.c:後部ぶどう腫のある軸性近視.周囲の眼球壁の曲率半径(r1)よりも小さい曲率半径(r2)を有する後極部眼球壁の突出が後部ぶどう腫である.(文献6より引用)タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・図2Curtinによる後部ぶどう腫の分類Curtin分類では後部ぶどう腫は,I~Vの基本タイプと,I~Vの基本タイプの複合型であるVI~Xのタイプに分類される.(文献7より引用)タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・タイプ・黄斑広域型黄斑限局型乳頭周囲型鼻側型下方型その他図3Ohno.Matsuiらによる後部ぶどう腫の新分類後部ぶどう腫を後部ぶどう腫の最外周縁の範囲と位置で再分類し,理解しやすい名称に変更した.Curtin分類において,VI~Xの複合型後部ぶどう腫はすべて黄斑広域型に分類される.(文献9より引用)図4近視性黄斑症の眼底病変a:びまん性萎縮.b:限局性萎縮.c:Lacquercracksと単純型黄斑部出血.Cd:近視性脈絡膜新性血管退縮後のCFuchs斑と近視性脈絡膜新性血管関連黄斑萎縮.図53D.MRIで黄斑広域型と診断されたが,広角OCTでは黄斑限局型と乳頭周囲型の複合型と診断された症例a:オプトス画像.b:3D-MRIの下方画像.Cc:3D-MRIの後方画像.Cd:水平断の広角OCT.Ce:垂直断の広角OCT.Cf:三次元広角COCTの前方画像.Cg:三次元広角COCTの耳側画像.Ch:三次元広角COCTの下方画像.表1META.PMstudyで提唱された近視性黄斑症の分類と定義カテゴリーC0変化なしカテゴリーC1豹紋状眼底変化のみ中心窩およびアーケード血管内に明瞭な脈絡膜血管が観察できるカテゴリーC2びまん性網脈絡膜萎縮後極部が黄白色調を呈する網脈絡膜萎縮(範囲はさまざま)カテゴリーC3限局性網脈絡膜萎縮境界明瞭な黄色斑状の萎縮巣として発生する網脈絡膜萎縮(C1~数個の脈絡膜小葉大とサイズはさまざま)カテゴリーC4黄斑萎縮退縮した線維血管膜の周囲に経過とともに拡大する境界明瞭な円形の灰白色もしくは白色の網脈絡膜萎縮病変+LcCLacquercracks眼底後極部の黄色線状病変+CNV脈絡膜新生血管活動期脈絡膜新生血管(CNV)は滲出および出血性変化を伴う+FsFuchs斑Fuchs斑とよばれる色素沈着を伴った近視性CCNVの瘢痕病巣C─後部ぶどう腫周囲の眼球壁の曲率半径よりも明らかに小さい曲率半径を有する後極部眼球壁の局所的な突出META-PMstudy:theMeta-AnalysisforPathologicMyopiastudyC図63D.MRIで後部ぶどう腫なしと診断されたが,広角OCTでは黄斑限局型と診断された症例a:オプトス画像.b:3D-MRIの鼻側画像.Cc:3D-MRIの下方画像.Cd:水平断の広角OCT.Ce:垂直断の広角OCT.Cf:三次元広角COCTの前方画像.Cg:三次元広角COCTの前方画像をやや傾斜させた画像.3D-MRIの下方画像で,乳頭耳側のCridgeが観察されるが明らかなぶどう腫は認めない.図7病的近視眼における学童期の乳頭周囲の脈絡膜のOCT視神経乳頭耳側の脈絡膜厚は著明かつ急峻に菲薄化している.-