●連載監修=安川力髙橋寛二43.網膜静脈閉塞症に対する佐藤新兵井上麻衣子横浜市立大学附属市民総合医療センター眼科レーザー治療と手術網膜静脈閉塞症による視力障害のおもな原因は黄斑浮腫と血管新生および硝子体出血である.本稿では網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に対するレーザー治療および手術治療をそれぞれ概説する.網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)網膜静脈分枝閉塞症(branchretinalveinocclusion:BRVO)による視力障害のおもな原因は黄斑浮腫と硝子体出血である.黄斑浮腫は急性期にみられ,治療抵抗性を示すと,ときとして慢性化する.BRVOに伴う黄斑浮腫に対するレーザー治療として,BranchVeinOccluC-sionCStudyにより格子状光凝固が標準治療として推奨されてきたが1),わが国では一般的には施行されていないのが現状である.周辺部無血管領域への光凝固はBRVO慢性期の硝子体出血のリスクを低減させる効果は認められているものの,黄斑浮腫への治療効果は議論のあるところである2).しかし,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthCfactor:VEGF)療法後に黄斑浮腫が再発する症例に対し,周辺部無血管領域に光凝固を施行することで,以降の黄斑浮腫の再発を予防できた症例にしばしば遭遇する(図1,2).抗CVEGF療法に抵抗性を示す症例に対していたずらに治療を長期化させるよりも,無血管領域への光凝固を検討する余地はある.虚血が強く再発を繰り返す症例や,抗CVEGF薬の頻回投与を望まない症例では,硝子体手術も考慮する.BRVOに伴う黄斑浮腫に対して硝子体手術が奏効する機序として,①後部硝子体や網膜前膜,内境界膜による黄斑部への牽引の解除,②硝子体腔に貯留したCVEGFなどのサイトカインの除去,③酸素分圧が高い房水が硝子体腔を灌流することによる網膜内酸素濃度の上昇,が考えられている.図1網膜静脈分枝閉塞症症例の初診時所見視神経乳頭上耳側から周辺部にかけての斑状出血と,.胞様黄斑浮腫がみられる.図2図1の治療後所見ラニビズマブC3回投与後では上耳側周辺部に広範な無血管領域がみられる.同部位に光凝固施行後はC2年間にわたり黄斑浮腫の再発はみられなかった.(71)あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C11450910-1810/17/\100/頁/JCOPY慢性期において,遷延する硝子体出血や裂孔原性網膜.離を生じた場合には,硝子体手術が必要になる.網膜中心静脈閉塞症(CRVO)網膜中心静脈閉塞症(centralretinalveinocclusion:CRVO)において治療対象となる病態は血管新生と黄斑浮腫である.血管新生に対する治療法としては,虚血が強い症例においては抗CVEGF薬のみでは効果不十分な場合が多く,汎網膜光凝固が施行されることに異論はない.しかし,虚血が軽度である症例においては,開放隅角期であれば虹彩新生血管がみられてから汎網膜光凝固を施行することも検討される.CRVOに伴う黄斑浮腫に対するレーザー治療としては,CentralVeinOcclusionStudyにおいて格子状光凝固の有用性が検討され3),黄斑浮腫を軽減する効果は認められたものの,視力の改善は得られないことが示された.この結果を受け,わが国でも一般的には格子状光凝固は施行されていない.BRVOと同様に,CRVOにおいても虚血が強く再発を繰り返す症例や抗CVEGF薬の頻回投与を望まない症例,また硝子体出血をきたした症例では硝子体手術が検討される.大規模な無作為試験は施行されておらず,エビデンスとしては確立していないものの,非虚血型の症1146あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017図3網膜中心静脈閉塞症に対する網膜血管内治療マイクロニードルを視神経乳頭上から網膜中心静脈に穿刺している.穿刺後はバックラッシュニードルで出血を吸引している.図4図3の症例の網膜血管内治療前後の蛍光造影写真とOCT像術前には高度の虚血と黄斑浮腫がみられるが,術後には改善している.例では視力の改善がみられたとの報告がある.これまで,CRVOの根治治療として網膜中心静脈内の血栓の溶解除去療法が有望視されてきた.近年では先端径C50Cμmというマイクロニードルが開発され,網膜血管内治療が試みられており,一定の治療効果と安全性が報告されている4)(図3,4).現状では高度虚血で治療抵抗性を示す症例を対象としているため,視機能の維持が主目的とならざるを得ないものの,今後の治療技術や診断検査機器の進歩により,網膜血管内治療が難症例克服への切り札となることが期待される.文献1)TheCBranchCVeinCOcclusionCStudyCGroup:ArgonClaserCphotocoagulationformacularedemainbranchveinocclu-sion.AmJOphthalmol98:271-282,C19842)CampochiaroPA,Ha.zG,MirTAetal:Scatterphotoco-agulationCdoesCnotCreduceCmacularCedemaCorCtreatmentburdenCinCpatientsCwithCretinalCveinCocclusion:TheCRELATETrial.OphthalmologyC122:1426-1437,C20153)TheCCentralCVeinCOcclusionCStudyCGroup:EvaluationCofCgridCpatternCphotocoagulationCforCmacularCedemaCinCcen-tralCveinCocclusion:theCCentralCVeinCOcclusionCStudyCGroupMreport.OphthalmologyC102:1425-1433,C19954)KadonosonoCK,CYamaneCS,CArakawaCACetCal:Endovascu-larCcannulationCwithCaCmicroneedleCforCretinalCveinCocclu-sion.JAMAophthalmolC131:783-786,C2013(72)