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涙囊鼻腔吻合術鼻内法施行後に診断された涙囊悪性腫瘍の4例

2017年9月30日 土曜日

《第5回日本涙道・涙液学会原著》あたらしい眼科34(9):1305.1308,2017c涙.鼻腔吻合術鼻内法施行後に診断された涙.悪性腫瘍の4例佐久間雅史*1,2廣瀬浩士*1鶴田奈津子*1田口裕隆*1伊藤和彦*1服部友洋*1久保田敏信*1*1国立病院機構名古屋医療センター眼科*2つしま佐久間眼科CFourCasesofMalignantLacrimalSacTumorDiagnosedafterEndoscopicEndonasalDacryocystorhinostomyMasashiSakuma1,2)C,HiroshiHirose1),NatsukoTsuruta1),HirotakaTaguchi1),KazuhikoIto1),TomohiroHattori1)CToshinobuKubota1)and1)DepartmentofOphthalmology,NationalHospitalOrganization,NagoyaMedicalCenter,2)TsushimaSakumaEyeClinic目的:涙.鼻腔吻合術鼻内法施行後に診断された涙.悪性腫瘍のC4例について報告する.症例:対象はC2008年C4月.2014年C8月に名古屋医療センターを紹介受診し,涙.鼻腔吻合術鼻内法施行後に涙.悪性腫瘍と診断されたC4例で,男性C1例,女性C3例で,年齢はC41.70歳(平均C58歳)だった.診断は,扁平上皮癌がC1例,MALTリンパ腫がC1例,びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫がC2例であった.結論:涙.腫瘍はまれであるが今回のC4症例のように悪性腫瘍例もありうる.鼻涙管閉塞や慢性涙.炎でも,常に涙.腫瘍との鑑別が必要であり,積極的に術前後の画像診断や,DCR施行時や施行後でも生検を行うことが重要であると考えられた.CPurpose:Wereportonfourcasesofmalignantlacrimalsactumordiagnosedafterendoscopicendonasaldac-ryocystorhinostomy.CCases:CWeCreviewedCfourCpatients,ConeCmaleCandCthreeCfemale,CwhoCwereCreferredCtoCandCexaminedatNagoyaMedicalCenterfromApril2008toAugust2016andsubsequentlydiagnosedwithmalignantlacrimalCsacCtumorsCafterCendoscopicCendonasalCdacryocystorhinostomy.CSubjectCagesCrangedCfromC41-70Cyears(mean58yrs).Onecasewasdiagnosedwithsquamouscellcarcinoma,onewithMALTlymphoma,andtwowithdi.uselargeB-celllymphoma.Conclusion:Whilelacirmalsactumorsarerare,malignantcases,suchasthefourinthisstudy,arepossible.Evenincaseofnasalcavityobstructionandchronicin.ammationofthelacrimalsac,itisCnecessaryCtoCdi.erentiateCfromClacrimalCsacCtumors.CItCisCimportantCtoCactivelyCperformCimageCdiagnosisCbeforeCandaftersurgery,andbiopsiesduringandafterdacryocystorhinostomy.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(9):1305.1308,C2017〕Keywords:涙.悪性腫瘍,涙.鼻腔吻合術鼻内法,慢性涙.炎,涙道閉塞.malignantlacrimalsactumor,endo-scopicendonasaldacryocystorhinostomy,chronicin.ammationofthelacrimalsac,obstructionofthenasalcavity.Cはじめに涙.腫瘍は比較的まれな疾患であるが,悪性腫瘍の頻度が高い1,2).しかし,初期症状が,流涙,眼脂,涙.腫脹など,慢性涙.炎と酷似しているため,その鑑別は非常に重要である.また,涙.腫瘍は,罹患率が非常に低いこともあり,初期治療で慢性涙.炎として治療され,見過ごされてしまい,診断が遅れることがある3).涙.鼻腔吻合術には,鼻外法と鼻内法があるが,近年,低侵襲な治療をめざす流れから,鼻内法が広く普及しつつあり,皮膚切開を必要とする鼻外法は減少傾向にある.ただし,狭鼻腔や巨大涙.結石,腫瘍などの場合は,直視下で涙.を操作する必要があるため,鼻外法が適していると考えられる.今回筆者らは,涙.鼻腔吻合術鼻内法(endoscopicCdac-〔別刷請求先〕佐久間雅史:〒496-0071愛知県津島市新開町C1-40-1つしま佐久間眼科Reprintrequests:MasashiSakuma,TsushimaSakumaEyeClinic,1-40-1Shingai,Tsushima,Aichi496-0071,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(93)C1305ryocystorhinostomy:EnDCR)施行後に診断された涙.悪性腫瘍C4例を経験したので報告する.CI対象対象はC2008年C4月.2014年C8月に,名古屋医療センターにてCEnDCR施行後に涙.悪性腫瘍と診断されたC4例で,男性C1例,女性C3例であった.年齢はC41.70歳(平均C58歳)で,扁平上皮癌C1例,悪性リンパ腫C3例であった.〔症例1〕64歳,男性,右側.右側鼻涙管閉塞を主訴に当院を紹介受診した.右側通水検査陰性のため,右側ブジー+涙管チューブ挿入術(directsiliconeCtubeCintubation:DSI)を施行した.涙管チューブ抜去後に,再閉塞し,眼瞼腫脹と結膜浮腫を認めた(図1a,b).右側CEnDCR施行時に,骨の脆弱性と易出血性を認めた症例1図1症例1(64歳,男性,右側)Ca:右側眼瞼腫脹を認める.Cb:右側結膜浮腫を認める.Cc:HE染色にて,小蜂巣状に浸潤する,あるいは,導管内を充満する扁平上皮癌を認める.Cd:初診時CCT画像,水平断.肥厚した右側涙.を認める.Ce:EnDCR後CCT画像,水平断.右側涙.腫瘤の篩骨洞内の軟部組織への連続性を認める.Cf:2年C6カ月後CCT画像,水平断.再発は認めない.Cg:2年C6カ月後CCT画像,冠状断.再発は認めない.ため,術中に生検を施行した.病理組織では扁平上皮癌と診断された(図1c).再度試行したCCTでは,初診時と比較して右涙.部が腫大し,副鼻腔内に連続する内部が均一な腫瘤性病変を認めた(図1d,e).右側拡大涙.腫瘍摘出術と有茎皮弁移植術を施行し,2年C6カ月経過したが,再発は認めていない(図1f,g).〔症例2〕57歳,女性,右側.右側鼻涙管閉塞を主訴に当院を紹介受診した.乳癌の既往があった.右側通水検査陽性だったが,膿の逆流も認めた.右側CEnDCRを施行したが,術後C3週間で涙管チューブが自然抜落した.再挿入するも,再度自然抜落した.また,涙襄部に硬結を認めたため,CTを施行したところ,副鼻腔に浸潤する内部が均一の腫瘤性病変を認め(図2a,b),涙.腫瘍が疑われ,経皮的に生検を行った.病理検査で,びまん性大細胞型CB細胞リンパ腫(di.useClargeCBCcellClymphoma:DLBCL)と診断された(図2c,d).化学療法を施行し,4年10カ月経過したが再発は認めていない(図2e,f).〔症例3〕41歳,女性,左側.左側涙.炎を主訴に当院を紹介受診した.左側通水検査陰症例2図2症例2(57歳,女性,右側)Ca:EnDCR後CCT画像,水平断.副鼻腔に浸潤する内部が均一の腫瘤性病変を認める.Cb:EnDCR後CCT画像,冠状断.副鼻腔に浸潤する内部が均一の腫瘤性病変を認める.Cc:HE染色にて,大型異型核をもつ細胞のびまん性増生を認める.Cd:CD20免疫染色にて,Bcell性を認める.Ce:4年C10カ月後CMRI画像,T2強調水平断.再発は認めない.Cf:4年C10カ月後CMRI画像,T2強調冠状断.再発は認めない.1306あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017(94)症例3図3症例3(41歳,女性,左側)Ca:初診時CCT画像,水平断.均一で腫大した左側涙.を認めた.Cb,c:左側涙.部に限局する硬結を認める.Cd:8年C6カ月後CMRI画像,T2強調水平断.再発は認めない.性で膿の逆流を認めた.CTを施行し,内部が均一で腫大した涙.を認めた(図3a).左側CEnDCRを施行し,左側通水陽性となったが,涙.部の腫脹が改善されないため(図3b,c),左側涙.切除術(生検術)を施行した.病理検査にてMALTリンパ腫と診断された.放射線治療を施行し,8年C6カ月経過したが再発は認めていない(図3d).〔症例4〕70歳,女性,左側.左側涙.炎を主訴に当院を紹介受診した.既往症にCDLBCL(10年前に寛解)があった.左側通水検査陰性で膿の逆流を認め,左側シース誘導内視鏡下穿破法(sheathguidedendoscopicprobing:SEP)+シース誘導内視鏡下穿破法(sheathCguidedCintubation:SGI)を施行した.涙管チューブ抜去後に再閉塞を認め,涙.部に硬結を認めたため(図4a),CTを施行した.CTにて,副鼻腔に連続する内部が均一な腫瘤性病変を認めた(図4b).左側CEnDCR施行時に,粘膜組織の浮腫と骨の脆弱性など明ら症例4図4症例4(70歳,女性,左側)Ca:左側涙.部に内眥靭帯を超えて上方に及ぶ硬結を認める.Cb:中型.大型異型核をもつ細胞のびまん性増生を認める.Cc:CD20免疫染色にて,Bcell性を認める.Cd:EnDCR前CCT画像,水平断:副鼻腔に浸潤する内部が均一の腫瘤性病変を認める.Ce:1年C9カ月後CCT画像,水平断:再発は認めない.かな異常を認めたため,術中に中鼻甲介と涙.の一部を生検した.病理組織よりCDLBCL(再発)と診断された(図4c,d).化学療法を施行し,1年C9カ月経過したが,寛解中である(図4e).CII考按涙.腫瘍は比較的まれではあるが,悪性腫瘍の頻度がC55.60%と非常に高く,その死亡率は,種類やステージにもよるが平均C38%であると報告されている1,2).また,上皮性腫瘍の割合がおよそC70%と多く4),その内訳としては,良性では乳頭腫,悪性では扁平上皮癌や移行上皮癌が多い.また,非上皮性腫瘍では,悪性リンパ腫や悪性黒色腫が多いと報告されている5).涙.腫瘍でもっとも多い症状は,流涙症,再発する涙襄炎,涙.腫脹であり,慢性涙.炎との鑑別が重要である3).本例でも,2例に流涙症,2例に涙.炎,4例で涙.腫脹を認め,全例で初診時より腫瘍を疑うことはできなかった.涙.腫瘍の慢性涙.炎に対し,鑑別すべき症状は,血清流涙と内眥靭帯を超えて上方に及ぶ腫瘤の有無がある.血清流涙に関しては,腫瘍の増殖のために豊富な血管が必要であることから生じるが,今回の症例では,症例C1のCEnDCR時に易出血性を認めたのみで,他の症例には認めなかった.ま(95)あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C1307た,慢性涙.炎では,膿が重力により下方に溜まる傾向にあるが,腫瘍の場合は,内眥靭帯を超えて上方に及ぶ腫瘤を認めることがあるが,今回の症例の場合は,症例C4のC1例しか認めなかった.画像診断では,CTでは腫瘍による骨破壊などの所見を評価し,MRIでは,軟部組織の病変の範囲や内部構造の質的な評価が重要である.慢性涙.炎はCT1強調画像では低信号,T2で高信号を示すのに対し,悪性リンパ腫などの実質性腫瘍はCT1,T2強調画像ともに低信号を示すと報告されている6).涙道内視鏡に関しては,症例C4でCSEP+SGIを施行したが,術中に明らかな異常に気づくことはできなかった.逆に,本症例で共通していた点は,4例とも涙.炎や鼻涙管閉塞を主訴に他院からの紹介例であり,初診時に血清流涙は認めなかったが,EnDCR施行後も涙.腫脹や眼瞼腫脹が改善しないことであった.また,CTで,4例とも腫脹した涙.部が軟部吸収で均一に描出され,3例で副鼻腔への浸潤が疑われた.涙.腫瘍が疑われる場合は,術中,直視下で涙.内部および周囲を全体的に観察することができるので,涙.鼻腔吻合術鼻外法(externalCDCR:ExDCR)が適していると考えられる3).今回の報告例では,術前より腫瘍を診断する情報が確実でなく,生検も念頭に置きながら治療方針を考えていたため,すべて,侵襲の少ない鼻内法により手術を行ったが,当初から腫瘍が強く疑われれば,ExDCRによるアプローチが第一選択と考える.症例C4は,既往歴も含め,術前より腫瘍の疑いがあり,ExDCRによるアプローチも考慮したが,腫瘍の進展が鼻内にも拡大している可能性も否定できず,鼻内組織の生検が可能で,より侵襲の少ないCEnDCRを行うことで診断を確定し,以後の方針を考慮する方法を選択した.結果的に,以前の腫瘍の再発であり,化学療法で寛解が得られたため,本症例では,鼻内法によるアプローチが有効であったと考えている.ただし,鼻内に腫瘍がなく,涙.限局,もしくは涙.周囲に少しでも腫瘍が疑われる場合は,ExDCRに適応があると思われた.画像診断を詳細に行い,よりに情報を収集することが6),手術法を選択するうえでも重要である.CIII結語今回筆者らは,涙.鼻腔吻合術(EnDCR)施行後に診断された涙.悪性腫瘍C4例を経験した.鼻涙管閉塞や慢性涙.炎では,症状が類似していることから,まれではあるが,涙.悪性腫瘍との鑑別が必要であると考えられ,少しでも疑わしい場合は,術前に造影を含めたCT,MRI撮影を施行し方針を決めるとともに,術後でも画像検査の追加や新たな生検を行うべきであると考えられた.また,涙.限局,もしくは涙.周囲の腫瘍にはCExDCRによるアプローチが必要と考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)StefanyszynCMA,CHidayatCAA,CPe’erCJJCetCal:LacrimalCsacCtumor.COphthalCPlastCReconstrCSurgC10:169-184,C19942)JosephCCF:LacrimalCtumors.COphthalmologyC85:1282-1287,C19783)辻英貴:涙道悪性腫瘍.眼科58:423-431,C20164)HeindlCLM,CJunemannCAG,CKruseCFECetCal:TumorsCofCthelacrimaldrainagesystem.OrbitC29:298-306,C20105)有田量一,吉川洋,田邊美香ほか:涙.悪性腫瘍C6例の診断と治療.あたらしい眼科32:1041-1045,C20156)児玉俊夫,野口毅,山西茂喜ほか:涙.部腫瘍性疾患の頻度と画像診断の有用性についての検討.臨眼C66:819-826,C2012***1308あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017(96)

涙小管切断再建術の治療成績

2017年9月30日 土曜日

《第5回日本涙道・涙液学会原著》あたらしい眼科34(9):1301.1304,2017c涙小管切断再建術の治療成績眞野福太郎張國中眞野富也吹田徳洲会病院CCanaliculoplastybyCanalicularIncisionandReconstructionFukutaroMano,Kuo-ChungChangandTomiyaManoCSuitaTokushukaiHospital目的:涙小管閉塞はブジーによる穿破(probing)が困難な症例が多く,治療に苦慮することが多い.涙点近傍に閉塞部位があり,probingにて開放できない涙小管閉塞に対し,遠位涙小管を切断しチューブ挿入および新規涙点形成を行う術式(涙小管切断再建術)を試み,その治療成績を検討した.方法:対象は平成C25年C1月から平成C27年C12月に多根記念眼科病院で施行した涙小管閉塞のうち,閉塞部位が開放できなかったC6例C8側(男性C3例,女性C3例,平均年齢C59.2歳)である.結果:涙小管切断再建術を試みたC8側のうちC7側(87.5%)にチューブ留置が可能であり,自覚症状の改善を認めた.7側のうちティーエスワンCR(TS-1CR)による涙小管閉塞がC3側,涙点閉鎖術後がC1側,先天涙小管欠損がC1側,緑内障点眼治療中がC2側であった.結論:涙点近傍の閉塞部位が開放できない涙小管閉塞に対し,涙小管切断再建術は有用な術式で,結膜涙.鼻腔吻合術(conjunctivodacryocystorhinostomy:CDCR)およびCJonesCtube留置を施行する前に試みるべきである.CWeevaluatedthee.ectivenessandsurgicalresultsofcanaliculoplastybycanalicularincisionandreconstruc-tioninpatientswhohadcanalicularobstructionnearthelacrimalpunctumthatcouldnotbetreatedbyprobing.SixCpatients(3Cmale,C3Cfemale,CmeanCageC59.2Cyears)underwentC8CcanaliculoplastiesCbyCcanalicularCincisionCandCreconstructionatTaneMemorialEyeHospital.Wesuccessfullytreated7sitesandepiphoraimprovedinallsites.Ofthose7sites,3wereinpatientsreceivingTS-1R,1wasinapatientwhohadhadpunctumclosureforseveredryeye,1wasacongenitalcanaliculardefectand2wereinpatientstreatedbyeyedropsforglaucoma.Canaliculo-plastybycanalicularincisionandreconstructionisausefultreatmentandshouldbeperformedbeforeconjunctivo-dacryocystorhinostomywithJonestubeplacement.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(9):1301.1304,C2017〕Keywords:涙小管切断再建術,TS-1CR,結膜涙.鼻腔吻合術,超音波生体顕微鏡.canaliculoplasty,canalicularincisionandreconstruction,TS-1R,conjunctivodacryocystorhinostomy,ultrasoundbiomicroscopy.Cはじめに涙小管閉塞はブジーによる穿破(probing)が困難な症例が多く,治療に苦慮することが多い.これは,涙小管には支持組織がなく,ブジーが容易に粘膜下に迷入しやすいということが理由としてあげられる.涙小管閉塞の治療法は閉塞部位によって異なり,それぞれの治療法をシェーマを用いて解説する1)(図1).Aは総涙小管閉塞,Bは遠位軽度の涙小管閉塞,Cは高度涙小管閉塞,Dは涙点閉鎖,Eは近位軽度の涙小管閉塞である.矢部の分類によると,A・BはCGrade1に,CがCGrade2あるいはCGradeC3に該当する.D・Eは分類がむずかしいが,あえて分類するならCGrade3となる2).A,Bのように涙点よりC8Cmm以上開放している涙小管閉塞では,probingあるいは涙小管CDCRを行って治療することができる.Cの涙点よりC7Cmm以下しか開放していない高度涙小管閉塞ではCprobingをトライするが困難なことが多く,結膜涙.鼻腔吻合術(conjunctivodacryocystorhinosto-my:CDCR)およびCJonesCtube留置が選択されることが多い.Dの涙点のみの閉塞では,27CG鋭針などで閉塞部位を開放する涙点形成術およびチューブ留置で治療が可能であ〔別刷請求先〕眞野福太郎:〒565-0814大阪府吹田市千里丘西C21-1吹田徳洲会病院Reprintrequests:FukutaroMano,M.D.,SuitaTokushukaiHospital,21-1Senriokanishi,Suita,Osaka565-0814,JAPAN0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(89)C1301図1涙小管閉塞の様態a:総涙小管閉塞,Cb:遠位軽度涙小管水平部閉塞,Cc:高度涙小管閉塞,d:涙点閉鎖,e:近位軽度涙小管閉塞.C図2涙小管切断再建術の方法a:閉塞部位より遠位の涙小管を切断する.Cb:切断した涙小管からチューブを留置する.Cc:閉塞部位を逆行性に開放し,涙小管後壁を切除して新規に大きな涙点を形成する.Cる.Eの近位軽度の涙小管閉塞ではCprobingが可能であれば問題ないが,不可能な場合は,CDCRおよびCJonesCtube留置が選択されるのが一般的である.CDCRおよびCJonestube留置は,高度涙小管閉塞に対する標準術式だが,Jonestube留置は位置ずれや脱落などの合併症が多く,その割合はC50.70%と報告がある1,3.5).侵襲の大きい手術の割には,患者の満足が必ずしも得られず,保険適用もないので,手術適応に苦慮することがある.今回涙点近傍の涙小管閉塞に対する新しい治療法として筆者らが行っている涙小管切断再建術について報告する.CI対象および方法対象は平成C25年C1月.平成C27年C12月に多根記念眼科病院で施行した涙小管閉塞患者のうち,涙点近傍に閉塞部位があり,probingにて開放できなかったC6例C8側(男性C3例,女性C3例,平均年齢C59.2歳)である.涙小管切断再建術の方法は,まず閉塞部位より遠位の涙小管を切断し,それ以降の閉塞がなければチューブを留置する.続いて閉塞部位を逆行性に開放し,涙小管後壁を切除して新規に大きな涙点を形成するという方法である(図2).C図3涙小管切断再建術a:涙点から3.4Cmmの場所を深さ2.3Cmmほど切開する.切開すると涙小管が全層にわたって切断できる.Cb:切断した涙小管から内視鏡を用いてチューブを留置している.Cc:曲針を用いて,切断した涙小管の近位端から本来の涙点までの閉塞部位を逆行性に開放している.Vランスでその間の涙小管後壁を切除して大きな涙点を形成する.1302あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017(90)詳細な方法は,まずCVランスで涙点からC3.4Cmmの場所を深さC2.3Cmmほど,皮膚側ではなく結膜側を切開する.切開すると涙小管が全層にわたって切断できる.それ以降の涙小管に疎通性があるかを曲針などを用いた通水検査で調べる.疎通性があれば,切断した涙小管以降にチューブを留置する.チューブ留置は盲目的に行っても問題ないし,内視鏡下に行ってもよい.チューブが留置できたら,曲針などで,切断した涙小管の近位端から本来の涙点までの閉塞部位を逆行性に開放し,Vランスでその間の涙小管後壁を切除して大きな涙点を形成する.最後に切断した部分をC8-0バイクリル糸などで縫合して終了である(図3).高度涙小管閉塞の症例では上下涙小管のうち,より軽症で閉塞部位の短いほうを治療対象とするため,チューブは片側しか留置できない場合が多い.その際は涙点側のチューブの断端と鼻腔側のチューブの断端をC5-0ナイロン糸などで結紮してループを作製し,皮膚にテープなどで固定しておく.皮膚のテープは不潔にならないよう定期的に交換するよう患者に説明しておく.チューブは約C3カ月間留置し,抜去する.術後の前眼部写真を図に示す(図4).涙小管上皮で裏打ちされた大きな涙点が形成されている.治療成績の検討は,術中チューブ留置が可能であり,術後の通水検査で通水が確認でき,自覚症状として流涙が改善しているものを成功とした.CII結果涙小管切断再建術を試みたC8側のうちC7側(87.5%)にチューブ留置が可能であり,チューブ抜去後の自覚症状(流涙)の改善を認め,再閉塞は認めなかった.治療できたC7側の内訳は,TS-1CRによる涙小管閉塞がC3側,ドライアイに対する涙点閉鎖術後がC1側,先天涙小管欠損がC1側,原因不明だが,緑内障点眼治療中がC2側であった.チューブ留置が不可能であったC1側は原因不明であり,遠位の涙小管を切断したが,疎通性が確認できず再建を断念した.CIII考按今回の結果が示すように,涙点近傍に閉塞部位があり,probingにて開放できない涙小管閉塞に対し,涙小管切断再建術はC8側中C7側(87.5%)にチューブ留置が可能であり自覚症状も改善する良好な結果が得られ,侵襲の大きなCDCRおよびCJonesCtube留置を施行する前に試みるべき術式と思われる.佐々木らは以前に同様の術式を涙小管造袋術として報告している1,6).方法は遠位の涙小管を試験的に切開して閉塞がなければチューブ留置を行うものであるが,本法(涙小管切断再建術)は,閉塞部位の涙小管後壁を切除して,新規涙点を形成する点で涙小管造袋術と異なる.新規に大きな涙点形成をする理由は,以前にこの術式でチューブ抜去後に作製した涙点が再閉塞した症例を経験し,新しく作製した涙点が涙小管上皮で裏打ちされていなければならないと考えたからである.また,涙液の排出には,tearmeniscusと涙点との位置関係が重要と考えており,あまりに本来の涙点より遠位に新しい涙点が形成されてしまうと,涙丘が障害となり,涙液の排出に支障をきたす可能性があると考えられる.涙小管を切断する場所は,眼瞼の皮膚側ではなく,結膜側のほうがよく,切断した涙小管を再建する際に縫合しやすくなる.また,切断する場所は症例によって工夫が必要である.ドライアイに対する涙点閉鎖術後に流涙を訴える場合には涙小管垂直部の閉塞が考えられるので,涙点のごく近傍で切断再建が可能である可能性が高い.一方,TS-1CR内服による涙道閉塞部位は涙点および涙小管がそれぞれC60%前後と高頻度であり,ブジーでの開放率はC66%と低く,再閉塞はC28%にみられたとの報告がある7).このように近年問題となっているCTS-1CRによる涙道閉塞は涙点近傍に多く,難治性であるといえる.前述のように涙点からC3.4Cmmの場所C(91)あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C1303a期間も長くなり,患者に大きな負担となってしまう.Prob-ingでのチューブ留置が困難な場合は,涙小管切断再建術による治療ができれば患者の負担も軽減できると思われる.また,TS-1CRによる涙道閉塞の症例では,内服が終了しておれば片側のみにチューブを留置し約C3カ月で抜去すれば良いが,内服が継続される場合,片側のみにチューブを留置すると,長期にわたって断端を皮膚に固定しなければならず,生活に不自由を生じる.TS-1CR内服が継続される場合は原則的に上下涙小管ともにチューブ留置が可能な症例を手術適応とし,チューブの入れ替えを行い経過観察する.内服期間中に,片側のみの再建が必要な場合はCCDCRが良い適応である.涙小管切断再建術の問題としては,涙小管を切断する位置が盲目的操作によることである.術前に正確に閉塞部位がわかれば,切断する部位をあらかじめ決定して手術に臨むことができる.筆者らは超音波生体顕微鏡(ultrasoundCbiomi-croscopy:UBM)を用いて閉塞部位を明らかにする試みを行っている.健常者の涙小管水平部を観察することは可能であったが,今後,患者の同意を得て閉塞部位を同定できるよう検査の精度を高め,本法の成績向上をめざしたいと考えている(図5)8).利益相反:利益相反公表基準に該当なし図5健常者の涙小管水平部所見a:健常者の上涙小管の水平部(UBMにて観察).Cb:健常者の下涙小管の水平部(UBMにて観察).を切開して疎通性があればそのままチューブ留置を行えるが,切断した部分が閉塞している場合は,さらに遠位での涙小管切断を試みる.遠位で切断再建を行った場合は涙丘が涙液の排出の障害となる可能性があり,術後流涙が改善しない場合は涙丘の切除を検討する.また,遠位で切断再建を行った場合は,切除する涙小管が広範囲となるため,涙小管のポンプ機能がうまく働かず,術後の通水検査では良好な結果が得られても,患者の自覚症状として流涙が改善しない場合もある.今回の治療結果ではC7側のうちC3側がCTS-1CRによる涙小管閉塞であったが,いずれも術後の通水検査・自覚症状の改善がみられ,涙小管切断再建術が有用であったと思われる.TS-1CR内服による涙小管閉塞の場合,CDCRおよびJonesCtube留置で流涙が改善するケースも多いが,侵襲が大きく,術後の合併症などのフォローアップが必要で,通院文献1)佐々木次壽:涙小管・涙道閉塞の治療2.涙小管形成術.眼科52:987-996,C20102)矢部比呂夫:涙小管閉塞の分類と術式選択.臨眼C50:1716-1717,C19963)JonesLT:Conjunctivodacryocystorhinostomy.AmJOph-thalmolC59:773-783,C19654)SekharGC,DortzbachRK,GonneringRSetal:ProblemsassociatedCwithCconjunctivodacryocystorhinostomy.CAmJOphthalmolC112:502-506,C19915)RosenCN,CAshkenaziCI,CRosnerCM:PatientCdissatisfactionCafterfunctionallysuccessfulconjunctivodacryocystorhinos-tomyCwithCJonesCtube.CAmCJCOphthalmolC117:636-642,C19946)RumeltCS:BlindCcanalicularCmarsupializationCinCcompleteCpunctalabsenceaspartofasystematicapproachforclas-si.cationCandCtreatmentCofClacrimalCsystemCobstructions.CPlastReconstrSurg112:396-403,C20037)坂井譲,井上康,柏木広哉ほか:TS-1による涙道障害による多施設研究.臨眼66:271-274,C20128)Al-FakyCYH:AnatomicalCutilityCofCultrasoundCbiomicro-scopyCinCtheClacrimalCdrainageCsystem.CBrCJCOphthalmolC95:1446-1450,C2011C***1304あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017(92)

基礎研究コラム 4.ゲノムワイド関連解析から何がわかるか

2017年9月30日 土曜日

ゲノムワイド関連解析から何がわかるかゲノムワイド関連解析とは緑内障や近視など,遺伝因子と環境因子が複合的に作用して発症する疾患を多因子疾患といい,単一遺伝子の変異によって発症するメンデル遺伝病とは遺伝子変異の影響が異なります.多因子疾患では,多くの人によくみられる変異が,一つ一つの影響は小さいものの,積み重なることで疾患を引き起こしやすくします.一塩基多型(singleCnucleotideCpoly-morphism:SNP)の解析においては,特定の疾患をもつ集団ともたない集団の間でCSNPの遺伝子型の比率を比較するのですが,全ゲノムにわたる数十万~数百万個のCSNPの遺伝子型を同時に測定・比較するのが,ゲノムワイド関連解析(genomewideassociationstudy:GWAS)です.眼科領域におけるゲノムワイド関連解析加齢黄斑変性はもっともCGWASが効果的だった疾患の一つです.ARMS2CA69SとCCFHCY402Hという高い効果量を有するCSNPが疾患に関与していたことから,症例群と対照群を合わせてもC150に満たないサンプル数のCGWASでそれらが発見されました1).その後,近視,強度近視,緑内障(開放隅角,閉塞隅角,落屑症候群),眼軸長,角膜厚,前房深度,網膜血管径など種々の疾患・パラメータに対しての関連解析が行われており,1万人~の規模の解析によって,それぞれ複数のCSNPが疾患感受性多型として同定されています.ただ,1万人~の規模の解析によって初めて同定される疾患感受性多型は,オッズ比C1.1~1.2と効果量が低い,もしくは多型をもつ人の割合がきわめて低いという問題があり,臨床現場においてはあまり大きなインパクトをもちません.臨床の先生方がCGWASの結果を解釈する際には,このような点に注意していただくとよいでしょう.ゲノムワイド関連解析から何がわかるかでは,サンプル数を増やしたCGWASで疾患感受性多型を同定することには意味がないのでしょうか?筆者は,次のような点において意味があると考えます.まず第一点は,疾患発症のパスウェイ予測です.質の高いCGWASは繰り返し再現性の確認を行っていますので,発見された一つ一つの遺伝子の効果量は強くなくとも,その遺伝子が関与しているということ自体の蓋然性は非常に高いといえます.したがって,そのような遺伝子群をリストアップしてパスウェイ解析を行うことで,その疾患にどういったパスウェイが関与しているのかについて信頼性の高い知見を得ることができ,疾患三宅正裕京都大学大学院医学研究科眼科学図ゲノムワイド関連解析とは一塩基多型(SNP)の頻度を疾患群と対照群で比較し,有意な差が認められた場合,そのCSNPはその疾患に関連しているといえる.SNP解析の初期には,SNPの遺伝子型を一つ一つ決定していましたが,数十万個~のCSNPの遺伝子型を同時に決定できるCDNAマイクロアレイが普及したことから,数十万個~のCSNPの遺伝子型を疾患群と対照群で同時に比較するゲノムワイド関連解析が多数行われることになった.発症機序の解明の糸口となります2).もう一点は発症予測です.一つ一つの効果は弱くとも,通常の発症予測モデル式に複数の疾患感受性CSNPの遺伝子型を加えることで予測性能の向上が期待され,たとえば,患者さんの背景情報と遺伝子型情報からC10年後の発症率を予測するなどといった使い方が考えられます3).今後の展望今ゲノムは,まさに研究段階から実用段階へと移行途中で,とくにがんゲノムについては今後C1~2年以内には保険適用がなされると思われます.これからは,ゲノム研究も,いかに患者さんにフィードバックできるかが重要になってくるでしょう.文献1)KleinCRJ,CZeissCC,CChewCEYCetCal:ComplementCfactorCHCpolymorphismCinCage-relatedCmacularCdegeneration.CSci-enceC308:385-389,C20052)RamananVK,ShenL,MooreJHetal:PathwayanalysisofCgenomicCdata:concepts,Cmethods,CandCprospectsCforCfuturedevelopment.TrendsGenetC28:323-332,C20123)MiyakeM,YamashiroK,TamuraHetal:Thecontribu-tionCofCgeneticCarchitectureCtoCtheC10-yearCincidenceCofCage-relatedmaculardegenerationinthefelloweye.InvestOphthalmolVisSciC56:5353-5361,C2015(81)Cあたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C12930910-1810/17/\100/頁/JCOPY

二次元から三次元を作り出す脳と眼 16.眼優位コラムの形成と弱視

2017年9月30日 土曜日

雲井弥生連載⑯二次元から三次元を作り出す脳と眼淀川キリスト教病院眼科はじめに眼優位コラムの形成には,生後の正しい視覚刺激が必要である.発達期の斜視は後頭葉第一次視覚野(以下,V1)での両眼反応性細胞の減少を,片眼弱視はそれに加えてコラムの左右差をきたすなど脳の神経構築に異常を残す.早期の治療開始により,これらの変化を正常化できる.眼優位コラムの形成と視覚刺激1)コラムの幅は外側膝状体からの軸索の広がりを反映し,正常では左右ほぼ同じである.直接入力を受けるV1の4層の6,5,3/2層の細胞は単眼反応性だが,情報が進む細胞では両眼の入力が合流するため両眼反応性を示す.V1の細胞の眼優位性は慣習的に7段階に分けて評価される(図1.眼優位ヒストグラム).1は左眼,7は右眼刺激に反応する単眼反応性細胞,2~6は両眼反応性で,数字が増えるほど右眼刺激への反応が強くなる.中央の4は左右に同等に反応する細胞を表す.連載⑭で述べた視差選択性細胞は4に含まれ,コラムの境界に存在する.ではコラム形成の前段階はどのような状態だろうか.生直後のネコの片眼にマーカーを注射し,それが運ばれた後のV1を調べると,4層全体がマーカーでべったりと染まる.これは片眼からの情報(=軸索の範囲)が4層内で水平に広がり,左右眼からの軸索がオーバーラップしていることを示す(図1b).軸索の範囲が徐々に絞られ左右の重なりが残る形で限局化し,コラムが明瞭になる(図1a).生後どのような状況にも適応できるように,はじめは広い範囲に軸索を広げて準備し,送り手(眼)から実際に情報が届くと正しい受け手(4層の神経細胞)を選び出して伝える.そのルートが活発に動く一方で,周辺の不要な軸索は消滅していく.これは刈り込みとよばれ,中枢神経系の成熟過程でしばしばみられる現象である.その過程には2人の送り手(両眼)の情報の競合が関与する.両者から情報が同じように届けば受け手は同じ人数になり,コラムは左右差なく形成される.片方の送り手(右眼)から情報が届かないと,情報が多く届く反対眼(左眼)の受け手に変わり,右眼の受(79)0910-1810/17/\100/頁/JCOPYけ手は減少する(図1d).では両眼とも遮閉した状態で育つとどうなるだろう.正常に比べると傾向は弱いがコラムは形成される.視覚入力によりすべて決定されるわけではなく,あらかじめ遺伝子に設計図が組み込まれていて,生後の視覚環境が正常なら設計図通りに進むが,異常があるとその影響を受ける.斜視の場合コラムは形成されるが,軸索の重なりがなく,両眼反応性の細胞は非常に少ない(図1c).感受性期間(臨界期)2)成熟後に片眼を長期間遮閉しても,弱視もコラムの変化も起こらない.発達の特定の期間に斜視や片眼遮閉が続くと脳の変化をきたす(図1c,d).外的刺激が脳に恒常的な変化を残す期間を感受性期間または臨界期とよぶ.この期間内に遮閉した右眼を開放して左眼を遮閉することにより,狭くなっていた右眼コラムを広げて正常化できることもわかっている(図1d→a).これが弱視における健眼遮閉の治療につながる.正確な感受性期間を調べるべく,時期を変えて「片眼遮閉数カ月→開放して反対眼遮閉数カ月」の実験が繰り返された.コントラスト感度という特殊な視力検査(後述)に回答できるようサルを訓練して,自覚的および他覚的所見の相関についても検討されるようになった.臨床的に多い不同視弱視の病態を調べるために,不完全遮閉についても検討されるようになった.弱視はおもに4種に分けられる(表1)3).不同視弱視の治療経過は比較的良好とされるが,不同視の強いものは弱視も強く両眼視も不良である.なかでも抑制暗点をもつものは視力改善に時間がかかり,立体視改善にも限界がある4).図1dのような変化がV1で起こっていると推測する.ヒトの視力の感受性期間は生後2~4週では低く,その後上昇し1~3歳でもっとも高くなり,以後8~10歳までとされる.最近では10歳以降の治療に反応する症例の報告もある.立体視の感受性期間は視力より短く,生後3~5カ月より4~5歳とされる.基礎的研究では,眼で作られる特殊な物質(Otx2ホメオ蛋白質)がV1に運ばれることが臨界期の開始に重要であることがわかり,研究の発展が待たれる1).あたらしい眼科Vol.34,No.9,20171291a.正常RLRLRa:眼優位ヒストグラムはV1の1層細胞の眼優位性を7段階に分けて2/3層評価したものである.4層で外側V1膝状体からの出力を受ける細胞は4層細胞数単眼反応性である.4層から出力5層1234567を受ける2/3,5,6層の細胞(紫6層部分に存在)は両眼反応性であ外側膝状体LR=LR>LR<LLる.正常では両眼に同等に反応する4番の細胞が多い.視差選択性網膜神経節細胞1と7:単眼反応性細胞(◎)は4番に含まれる.RLRLR2~6:両眼反応性b.生直後4層c.斜視RLRLRb:軸索が大きく広がり重なり合う.コラムはまだはっきりしない.c:コラムは形成されるが,両眼反応性細胞は少ない.細胞数細胞数4層1234567RLRLRd.右眼弱視d:右眼遮閉で入力が減り,右眼コラムは狭く,左眼コラムは広くなる.右眼反応性・両眼反応性の細胞が少ない.4層1234567RLRLRcとd:aへの変化を可能にする外側膝状体からの軸索とコラム眼優位ヒストグラムために,早期治療が必要である.図1眼優位コラムの形成と斜視・弱視表1弱視の種類と実験モデル査より感度が高い.片眼遮閉下に育ったサルでは,この検査での感度低下とともに,他覚的にも眼優位コラムの変化を認める.1日1・2・4時間の開放時間を設けて経過を比較すると,4時間例ではコントラスト感度・コラムとも正常とほぼ同じで,片眼遮閉の影響は小さかったとの報告がある2).弱視の予防や治療を考えるうえで興味深い.文献1)三木淳司編:特集弱視研究の最先端.神経眼科29:377-403,20122)ChinoYM:Developmentalvisualdeprivation.Adler’sphysiologyoftheeye,11thedition(editedbyKaufmanPL,AlmA,LevinALetal),p732-749,Elsevier,20113)鈴木寛子:弱視治療の進め方.あたらしい眼科33:1609-治療経過・予後弱視の種類疾患動物実験モデル不良形態覚遮断先天白内障先天眼瞼下垂眼瞼縫合眼球摘出暗所成育斜視弱視斜視眼筋切断プリズム装用不同視弱視不同視片眼S-10.0D装用遮閉膜良好屈折異常弱視両眼屈折異常両眼S-10.0D装用遮閉膜視機能と弱視治療コントラスト感度検査(次回で詳述)は,弱視治療後1610,20164)矢ヶ崎悌司:弱視と両眼視機能.あたらしい眼科27:1645-1651,2010に矯正視力1.0を得た例でも異常を認めるなど,視力検1292あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017(80)

硝子体手術のワンポイントアドバイス  172.視力低下をきたす星状硝子体症に対する硝子体手術(初級編)

2017年9月30日 土曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載172172視力低下をきたす星状硝子体症に対する硝子体手術(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに星状硝子体症(asteroidhyalosis:AH)は,1894年にBensonにより報告された硝子体変性疾患の一つであり,硝子体腔内にCasteroidbody(AB)とよばれる星屑を散りばめたような黄白色の粒子状混濁を多数認め,眼底の視認性は低下するが,通常,飛蚊症や視力低下などの自覚症状をきたすことはない.AHを有する眼は硝子体の液化が少なく,後部硝子体未.離眼が多いが,まれに後部硝子体.離(posteriorCvitreousCdetachment:PVD)が生じてCABが前部硝子体に濃縮され,視力低下をきたすことがある.筆者らは,過去にCAHを有する症例が白内障手術を契機に視力低下をきたし,硝子体手術により視力が著明に改善したC1例を報告したことがある1).C●症例提示症例はC81歳,男性.左眼白内障に対し,他院にて白内障手術が施行された.手術は合併症なく終了したが,矯正視力が術前(0.2)から術後(0.02)に低下した.左眼硝子体腔には濃厚なCAHを認め(図1),眼底の視認性はきわめて不良であった.超音波CBモード検査では,硝子体腔前方に凝縮したCABの塊と思われる陰影を認めた(図2).SD-OCTでは明瞭な網膜像が得られなかった.そこで左眼に対して硝子体切除術を施行した.まず,眼内レンズ後方の硝子体とCABを切除した.ABは前部硝子体に濃縮されたような状態となっておりCPVDが完全に生じていた(図3).ついで顕微鏡同軸照明下で強膜を圧迫しながら周辺部の硝子体およびCABを切除して手術を終了した(図4).手術翌日には眼底視認性ならびに患者の自覚は著明に改善し,術C5カ月後には左眼矯正視力はC1.0に改善した.C●視力低下をきたす星状硝子体症AHが視力低下や飛蚊症を生じにくい理由として,ABの硝子体腔全体に対する分布密度が比較的粗であることが指摘されている.ABは有形硝子体中にのみ存在し,通常は,液化硝子体腔には存在しない.本提示例の図1術前の左眼細隙灯顕微鏡所見前部硝子体腔には濃厚なCAHを認める.(文献C1より引用)図2術前の超音波Bモード写真硝子体腔前方に凝縮したCABの塊と思われる陰影を認める.(文献C1より引用)図3術中所見(1)ABは前部硝子体に濃縮されたような状態となっており,PVDが完全に生じていた.(文献C1より引用)図4術中所見(2)周辺部には濃縮されたCABを認める.(文献C1より引用)白内障手術前のCPVDの有無は不明であるが,白内障手術はCPVD誘発因子の一つであるとされている.今回は白内障手術を契機にCPVDが生じ,有形硝子体が硝子体腔前部に移動した結果,ABが前部硝子体に凝縮され,その密度が著しく増加したことにより視力障害が出現したと考えられる.AH眼では眼底視認性が不良である場合でも,フルオレセイン蛍光眼底検査やCOCTで眼底像が明瞭に描出される場合が多い.本症例では,術前にSD-OCTによる明瞭な網膜像が得られなかったが,その理由としては,断層像を得るための光が透過する隙間のないほどCABが硝子体腔前部に凝集してした可能性が考えられ,OCT所見が硝子体手術の適応を決めるうえでの指標になりうる可能性がある.文献1)OchiR,SatoB,MorishitaSetal:Caseofasteroidhyalo-sisCthatCdevelopedCseverelyCreducedCvisionCafterCcataractCsurgery.BMCOphthalmol17:68,C2017(77)Cあたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C12890910-1810/17/\100/頁/JCOPY

眼瞼・結膜:結膜に生じるリンパ増殖性疾患のエッセンス

2017年9月30日 土曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人臼井嘉彦30.結膜に生じるリンパ増殖性疾患の東京医科大学臨床医学系眼科学分野エッセンス結膜に生じるリンパ増殖性疾患のほとんどがCMALT(mucosaassociatedlymphoidtissue)リンパ腫あるいは反応性リンパ組織過形成である.これらは日常診療では診察することが少ない疾患であるが,結膜腫瘍の多くを占め,専門医でなくても臨床的特徴や治療方針を知識として持ち合わせておかなければならない.●はじめに結膜には,リンパ球を主体とした免疫細胞の増殖あるいは浸潤により腫瘤性病変をみることがある.鑑別疾患としては粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯CB細胞リンパ腫(extranodalmarginalzoneB-celllymphomaofmucosa-associatedlymphoidtissue:MALTリンパ腫)と,良性の反応性リンパ組織過形成(reactivelymphoidhyperplasia:RLH)に大別され,結膜リンパ増殖性疾患の大半を占める.結膜における悪性のリンパ増殖性疾患の大半が結膜CMALTリンパ腫で,濾胞性リンパ腫やびまん性大細胞型リンパ腫,マントル細胞リンパ腫などの他の悪性リンパ腫はまれである.もともと結膜悪性腫瘍のなかでも,その大半が悪性リンパ腫のため1),MALTリンパ腫に精通することが日常診療で重要となる.良性のリンパ増殖性疾患に関しては,眼窩リンパ増殖性疾患ではCIgG4関連眼疾患が多いのに比して,結膜ではCRLHが圧倒的に多い.MALTリンパ腫であれRLHであれ,何らかの慢性的な抗原刺激が加わることにより発生すると推定されている2).C●臨床所見と診察におけるエッセンス臨床的に結膜CMALTリンパ腫が高齢者に多いのに対して,結膜CRLHは比較的若い成人に多い.自覚症状がないことが多く,眼瞼・球結膜の充血や流涙,眼瞼腫脹などによりアレルギー性結膜炎,春季カタルや慢性結膜炎などと診断されることも少なくない3).結膜CMALTリンパ腫およびCRLHともに,典型例として球結膜および瞼結膜に表面平滑で淡いピンク色(サーモンピンク)の腫瘍がみられ(図1,2),検眼鏡的図1結膜MALTリンパ腫下方瞼結膜から円蓋部にかけて,表面平滑なサーモンピンク色の結膜下腫瘤がみられる.図2反応性リンパ組織過形成球結膜に結膜CMALTリンパ腫と同様の淡いピンク色の腫瘤がみられる.(75)あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C12870910-1810/17/\100/頁/JCOPY図3結膜MALTリンパ腫の病理組織像および抗CD20抗体による免疫染色a:結膜上皮内および上皮下に小型~中型のリンパ球がびまん性に浸潤している.ヘマトキシリン・エオジン染色.b:MALTリンパ腫のほとんどが抗CCD20抗体陽性細胞,すなわちCBリンパ球である.に鑑別が困難なことも多い.また濾胞様の所見がみられることもある.病理組織学的に,リンパ球が結膜上皮に浸潤した結膜病変と,リンパ球が腫瘤となった結膜下病変が一体になってみえるため,淡いピンク色にみえる.逆にいえば,眼窩CMALTリンパ腫などで結膜下に進展してきたような場合は,結膜上皮にリンパ球が浸潤しておらず,正常な結膜を介して腫瘤性病変がみえるため,淡いピンク色にはならない.結膜CMALTリンパ腫とCRLHはともに片側性あるいは両側性に発生し,発育緩徐である.結膜円蓋部が好発部位で診察もしやすいが,下眼瞼結膜のみならず,上眼瞼結膜にも同時に発生することがあるため,必ず結膜を翻転して診察することが大切である(図1).C●検査と診断におけるエッセンス血液学的検査により得られる情報は限られるため,採血結果は,検眼鏡的所見や他の検査から総合的に判断する.しかし,MALTリンパ腫を含めた悪性リンパ腫では,血清CsIL-2の上昇をみることがあり,sIL-2が高値であった場合,他臓器病変の検索は必要であろう.結膜CMALTとCRLHを鑑別する特徴的な臨床所見はなく,濾胞リンパ腫とCMALTリンパ腫においても検眼鏡的に鑑別することが困難であるため,リンパ増殖性疾患における診断のゴールドスタンダードである病理組織学的検査,IgGJH遺伝子再構成(生検された組織が比較1288あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017的多く採取されたときはサザンブロット法,少ない場合はCPCR法を用いる)の有無,フローサイトメトリーを駆使して,総合的な判断のもとに診断を行う.InCsituhybridization法による染色体転座の検出を調べることも診断の一助となることがある.病理組織学的には,MALTリンパ腫のほとんどがモノクローナルなCBリンパ球の増殖である.これらは小型から中型で軽度の不整型を示す核をもつ胚中心細胞様細胞,あるいは明るい胞体を示す単球様細胞からなる(図3).一方,RLHではポリクローナルなCBリンパ球とCTリンパ球が混在している.C●治療と経過観察におけるエッセンスMALTリンパ腫の治療としては,経過観察,手術による切除,放射線治療および冷凍治療がある.RLHでは上記に放射線治療を除いた治療が主体となる.MALTリンパ腫では結膜に限局している場合,電子線(30CGy)による放射線照射によって治癒に至る症例がほとんどであるが,近年では放射線治療を施行せず,経過観察や手術による可及的な切除,冷凍治療を行う症例も増えてきている.これも発育緩徐で,生命予後が良好なためであろう.しかし,唾液腺,顎下腺,副腎,後腹膜など他臓器に発生することもあり,Gallium-67citrate(67Ga)シンチグラフィやCFDG-PET,全身のCCT検査を行い,注意深い経過観察が必要な場合もある.このように病理組織型が同じ“MALTリンパ腫”であっても臨床経過が異なることは,染色体および遺伝子異常の質および量的な面で差異があるためと考えられ,将来的には症例ごとにゲノム異常を検索し,個別化治療が必要となる時代も来る可能性がある4).文献1)後藤浩:眼部悪性腫瘍の診断と治療.東医大誌C65:350-358,C20072)UsuiCY,CRaoCNA,CTakaseCHCetCal:ComprehensiveCpoly-meraseCchainCreactionCassayCforCdetectionCofCpathogenicCDNACinClymphoproliferativeCdisordersCofCtheCocularCadnexa.SciRepC6:36621,C20163)松尾好恵,石原美香,金田周三ほか:難治性アレルギー性結膜炎と診断されていた両眼瞼結膜CMALTリンパ腫のC1例.あたらしい眼科21:241-244,C20044)TakahashiH,UsuiY,Sato-OtsuboAetal:Genome-wideanalysisCofCocularCadnexalClymphoproliferativeCdisordersCusingChigh-resolutionCsingleCnucleotideCpolymorphismCarray.InvestOphthalmolVisSciC56:4156-4165,C2015C(76)

抗VEGF治療:ラニビズマブ,t-PA,ガスを用いた黄斑下血腫移動術

2017年9月30日 土曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二44.ラニビズマブ,t-PA,ガスを用いた北川順久島田宏之日本大学病院アイセンター黄斑下血腫移動術滲出型加齢黄斑変性によって生じる黄斑下血腫は,放置すると高度の視力障害が永続するため,早急な治療が必要である.治療は硝子体手術や硝子体内ガス注入がある.本稿では,VEGF阻害薬,t-PA,ガスを硝子体内に注射する黄斑下血腫移動術について解説する.はじめに黄斑下血腫に対する治療は,硝子体手術を行う方法と硝子体内ガス注入を行う方法に大別される.過去の両方の治療手技についてC38論文を検討した研究では,血腫の完全移動率,術後の再出血と網膜.離の比率に差は認められていない1).両者ともそれぞれ利点や欠点がある(表1).黄斑下血腫の治療硝子体内ガス注入は,硝子体を切除せず温存し,血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthCfactor:VEGF)阻害薬,組織プラスミノーゲンアクチベータ(tissueCplasminogenCactivator:t-PA),ガスを硝子体内に注射して治療する方法である(表2).使用するガスは八フッ化プロパン(C3F8),六フッ化硫黄(SF6)がある.硝子体内ガス注入の利点は,硝子体を切除しないため,硝子体に注入したCVEGF阻害薬の半減期が短くならず,再発に有利であること,手技が注射のみと容易なため外来処置室でも行え,多くの施設で治療できることなどがある.欠点は,比較的強い白内障,硝子体出血を伴っている例では,これらを同時に治療できないことである2).筆者は,黄斑の上下アーケード血管を大きく上回る広範囲で丈の高い網膜下出血や色素上皮.離を認める症例では,治療選択に苦慮する場合がある.経過観察,硝子体注射のみ,硝子体内ガス注入,硝子体手術があるが,なかでも手術を行う場合には慎重に選択している.黄斑円孔や色素上皮裂孔など手術に伴うリスクや,手術により中心窩の出血をどれほど処理できるかを考えてから行っている.そのような症例では,手術経験がある術者では手術を選択しても良いかもしれない.本術式に至る理由硝子体内ガス注入による過去の後ろ向き研究では,(73)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY表1黄斑下血腫に対する硝子体手術と硝子体内注射の比較硝子体手術硝子体内注射利点網膜下注入,薬剤が直接効果ある白内障・硝子体出血も同時に治療硝子体を温存,再燃に有利低侵襲手技が容易,外来治療可能欠点再燃の際,硝子体注射・薬剤半減期は短縮する硝子体手術設備が必要手技に熟練を要す白内障,硝子体出血は同時に治療できない合併症への対応術後硝子体出血,網膜.離に対しては硝子体手術が必要表2黄斑下血腫治療におけるt.PA,ガス,VEGF阻害薬の役割t-PA血腫を溶かすガス血腫の移動ラニビズマブ病巣の治療(t-PAと併用しても抗CVEGF効果が保たれる)アフリベルセプト再燃に有効t-PAとガスを併用したほうが,VEGF阻害薬とガスの併用より視力予後が良く3),またCVEGF阻害薬とCt-PAとガスの三つを併用したほうが,t-PAとガスを併用した方法より視力予後が良いとされる4).よって,VEGF阻害薬とCt-PAとガスを一度に硝子体内注射をする方法は,黄斑下血腫の移動と病巣への治療を同時に行えるため視力予後が良く,有利と考えられる4).ラニビズマブはCt-PAやCt-PAにより産生されたプラスミンに分割されず,VEGFを抑制して,その効果は保持される.一方,アフリベルセプトはCt-PAにより増加するプラスミンによりCVEGFを抑制する効果が部分的に減少するとされている5).以上からラニビズマブ,t-PA,ガスを一度に硝子体内注入をする治療法を行い,前向き研究で効果,安全性を検討した.対象は典型加齢黄斑変性(age-relatedCmacularあたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C1285ab図1症例a:ポリープ状脈絡膜血管症.術前CETDRS58文字.9乳頭径の網膜下出血と色素上皮.離を認めた.Cb:術後C3カ月.ETDRS70文字.網膜下出血は消失していた.degeneration:AMD)とポリープ状脈絡膜血管症(pol-ypoidalCchoroidalCvasculopathy:PCV)によって黄斑下血腫を生じた連続症例20例20眼(AMD:1眼,PCV:19眼).方法は,球後麻酔下でCt-PA(アクチバシンR:25Cμg/0.05Cml;4万単位)0.05Cml,ラニビズマブ(ルセンティスCR2.3mg/0.23ml)0.05mlを注入後,前房穿刺を行い,ガス(100%CC3F8)0.3Cmlを硝子体内注射し,48時間の腹臥位を行った.主要評価項目は術後C6カ月での矯正視力(ETDRS),副次評価項目は血腫の移動の有無,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomo-graphy:OCT)で測定した中心窩網膜厚(centralCreti-nalthickness:CRT),中心窩網膜色素上皮.離厚(cen-tralretinalpigmentepithelialdetachmentthickness:CRPEDT),術後合併症,術後C6カ月における再燃,t-PAの安全性を検討した.結果は,平均CETDRSは術前C52文字,術後C6カ月で65文字であり,有意に改善した(p=0.0040).血腫の完全移動はC85%(20眼中C17眼)で得られた.OCTで測定した平均CCRTは,術前C599μm,術後C6カ月C207μmとなり,有意に減少し(p<0.0001),CRPEDTは術前C188Cμm,術後C6カ月C88Cμmとなり,有意に減少した(p=0.0140).術後C3カ月までの術後合併症はC3眼で硝子体出血,1眼で裂孔原性網膜.離を生じた.それらに対しては硝子体手術あるいは網膜復位術を行い完治した.合併症を生じたC4眼を術後C6カ月でみると,ETDRSはC51文字からC67文字へ有意に改善した(p=0.0058).再燃はC50%(20眼中C10眼)にみられたが,アフリベルセプトの硝子体内注射を適宜行い,視力維持が得られた.再発症例の病型はC19眼でCPCVであったため,再燃にはアフリベルセプトが有用と考える.ラニビズマブ,t-PA,ガスの硝子体内注入後,眼内炎や全身の血栓症など重篤な合併症やCt-PA関連の網膜毒性による網膜萎縮などはみられなかった.1286あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017おわりにt-PAを用いることで血腫を溶解し,ガスの浮力による血腫の移動をより容易にし,またラニビズマブを同時に注射することによりCCNVの退縮が得られたと考える.また,術後に裂孔原性網膜.離や硝子体出血を生じても,適切に対応すれば,すでに血腫を中心窩から移動させ,中心窩の機能を確保できているため,矯正視力を維持し改善することができた.ラニビズマブ,t-PA,ガスの硝子体内注入による黄斑下血腫移動術は矯正視力が改善する有用な治療法である.視力を維持するためには術後合併症に対する適切な処置と病変の再燃に対する適宜アフリベルセプトの硝子体内注射が必要である.文献1)vanCZeeburgCEJ,CCeredaCMG,CAmarakoonCSCetCal:Pro-spective,randomizedinterventionstudycomparingretinalpigmentepithelium-choroidgraftsurgeryandanti-VEGFtherapyCinCpatientsCwithCexudativeCage-relatedCmacularCdegeneration.OphthalmologicaC233:134-145,C20152)KitagawaCY,CShimadaCH,CMoriCRCetCal:IntravitrealCtissueCplasminogenCactivator,Cranibizumab,CandCgasCinjectionCforCsubmacularhemorrhageinpolypoidalchoroidalvasculopa-thy.OphthalmologyC123:1278-1286,C20163)MayerWJ,HakimI,HaritoglouCetal:E.cacyandsafe-tyCofCrecombinantCtissueCplasminogenCactivatorCandCgasCversusCbevacizumabCandCgasCforCsubretinalChaemorrhage.CActaOphthalmol91:274-278,C20134)Gutho.R,Gutho.T,MeigenTetal:IntravitreousinjecC-tionofbevacizumab,tissueplasminogenactivator,andgasinthetreatmentofsubmacularhemorrhageinage-relatedCmaculardegeneration.RetinaC31:36-40,C20115)KlettnerA,GroteluschenS,TreumerFetal:Compatibili-tyCofCrecombinantCtissueCplasminogenCactivator(rtPA)CandCa.iberceptCorCranibizumabCcoappliedCforCneovascularCage-relatedmaculardegenerationwithsubmacularhaem-orrhage.BrJOphthalmolC99:864-869,C2015(74)C

緑内障:網膜神経節細胞保護と軸索再生

2017年9月30日 土曜日

●連載207監修=岩田和雄山本哲也207.網膜神経節細胞保護と軸索再生野呂隆彦東京慈恵会医科大学眼科学教室東京都医学総合研究所視覚病態プロジェクトC緑内障治療においては,既存の眼圧下降療法に加えて,神経保護作用を有する治療法の確立が望まれている.Spermidineは強い抗酸化作用をもつポリアミンの一種で,内因性フリーラジカル・スカベンジャーとして作用する.そこで,視神経挫滅モデルマウスにおいてCspermidine投与の影響を調べたので紹介する.C●緑内障における神経保護治療緑内障や視神経変性においては,網膜神経節細胞(retinalCganglionCcell:RGC)の保護が重要なポイントである.とくに緑内障においては,眼圧降下が得られても病期が進行する症例が治療上の課題となっており,既存の眼圧下降治療に加えて,新たに神経保護治療の確立が期待されている.しかし,新薬の開発には莫大な資金や長い歳月が必要となることから,緑内障のような慢性疾患では日頃の食事によって進行予防ができれば理想的である.視神経挫滅(opticnerveinjury:ONI)モデルは眼圧が上昇せずにCRGC死を誘発することから,正常眼圧緑内障や外傷性視神経症のモデルとして活用されている.本モデルでは,緑内障の基本病態である視神経軸索の変性を挫滅で模倣し,軸索流のうっ滞を起こしてアポトーシス経路を起動させることにより,細胞死が誘導される0day14dayspermidinecontrolと考えられている.そこで筆者らは,ONIモデルマウスにCspermidineを飲み水に混ぜて毎日経口的に投与し,RGCの保護効果を調べる実験を行った1).C●Spermidineの網膜,視神経に対する作用Spermidineはポリアミンの一種で,通常はおもに脳や網膜内のグリア細胞に蓄積されている.内因性フリーラジカル・スカベンジャーとして作用し,強い抗酸化作用をもつが2),加齢とともに減少することが知られている.また,その抗酸化作用により酵母やハエ,ミミズなどの下等動物では寿命を延ばす効果が報告されており,近年では心血管系への保護効果で注目を集めている3).郭らは多発性硬化症モデルマウスにおいてCspermidineのCRGC保護効果を確認している4).筆者らの検討では,spermidine投与によりCONI後のCRGC死を抑制可能であることがわかった(図1).C●ASK1.p38pathwayと酸化ストレスヒトでは,房水中の酸化ストレスと緑内障との関連が示唆されている5).ASK1-p38Cpathwayは酸化ストレabONIONInormalcontrolspermidinenormalcontrolspermidinephospho-ASK1phospho-p38totalASK1totalp38phospho/total(fold)ASK1p388***6**420normalcontrolspermidinenormalcontrolspermidineONIONI図2SpermidineによるASK1.p38pathwayの活性化抑制効果a:視神経挫滅(ONI)後の網膜におけるCASK1-p38Cpathwayの活性に及ぼすCspermidineの効果.Cb:aにおけるCphospho-ASK1およびCphospho-p38発現量の定量的解析.*p<0.05,**p<0.01.(文献C1より改変)(71)あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C12830910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1Spermidineが視神経挫滅(ONI)後の網膜視神経節細胞(RGC)数と網膜内層厚に与える効果ONI後C14日における網膜切片のCHE染色.Spermidine投与群ではCRGC数と網膜内層厚の減少が有意に抑制された.GCL:ganglioncelllayer(神経節細胞層).(文献C1より改変)C図3網膜ミクログリアにおけるiNOSの発現iba1(緑)とCiNOS(赤)の二重染色像.二重染色された細胞()はCiNOSを産生する活性化ミクログリアを示す.ONI後には活性化ミクログリアが大きく増加したが(中段),spermidine投与群では細胞数が抑制されていた(下段).GCL:ganglioncellspermidinecontrol軸索再生layer(神経節細胞層),INL:innerCnuclearClayer(内顆粒層),ONL:outerCnuclearClayer(外顆粒層).スケールバーは100Cμmを示す.(文献C1より改変)スや小胞体ストレスのような種々のストレス応答として活性化され,Alzheimer病や多発性硬化症などのアポトーシスに関与している.Spermidineの投与は,ONIによるCASK1-p38Cpathwayの活性化を,おもにCRGCにおいて抑制することがわかった(図2).C●ミクログリアにおける効果ミクログリアは障害によって活性化し,神経細胞死を誘導するCTNF-a,反応性酸化種,酸化窒素,プロテアーゼなどの細胞毒性物質を産生する.これらのプロセスは緑内障やCAlzheimer病を含むさまざまな神経変性疾患に関与するとされている.ONI後にはCMCP-1やRANTESなどのミクログリアの遊走に必要なケモカインの産生が網膜で上昇するが,これらはCspermidine投与によって抑制された.また,ONI後に観察される誘発性CiNOSを発現するミクログリアの細胞数もCspermiC-dineによって大きく抑制されており,併せて神経保護効果につながったと考えられる(図3).C●食生活からのspermidine摂取と神経軸索再生Spermidine投与におけるCRGCの再生軸索数を,ONI後に眼球内に投与した色素であるCCTBの陽性線維数を指標として,ONI後C14日目にCinCvivoで検討した.その結果,再生軸索数は有意に増加したが,長さに関しての再生効果は限定的であった(図4).Spermidineは多くの食品に含まれる天然成分であり,大豆(とくに納豆),茶葉,マッシュルームなどに高レ1284あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017図4Spermidineによる視神経軸索再生効果の検討視神経挫滅(ONI)後C14日における視神経軸索の切片(長軸方向).Spermidine投与群では挫滅部位(*)から伸びたCCTB陽性の再生線維()が観察された.(文献C1より改変)Cベルで含まれることが知られている.よって,食品を意識的に選択することによってCspermidineの血中濃度を上げ,有益な効果を享受することができるかもしれない.しかし,高濃度のCspermidineは逆に神経障害的に働くとの報告もあることから,緑内障などの治療候補とする場合は,適切な血中濃度の検討など,投与量の評価が今後の課題である.ONIモデル研究により,spermidineはCRGC保護効果を発揮するだけでなく,軸索再生効果を有することがわかった.文献1)NoroCT,CNamekataCK,CKimuraCACetCal:SpermidineCpro-motesretinalganglioncellsurvivalandopticnerveregen-erationCinCadultCmiceCfollowingCopticCnerveCinjury.CCellCDeathandDiseaseC6:e1720,C20152)LaubeCG,CVehCRW:Astrocytes,CnotCneurons,CshowCmostCprominentstainingforspermidine/spermine-likeimmuno-reactivityinadultratbrain.GliaC19:171-179,C19973)EisenbergCT,CAbdellatifCM,CSchroederCSCetCal:Cardiopro-tectionCandClifespanCextensionCbyCtheCnaturalCpolyamineCspermidine.NatMedC22:1428-1438,C20164)GuoCX,CHaradaCC,CNamekataCKCetCal:SpermidineCallevi-atesseverityofmurineexperimentalautoimmuneenceph-alomyelitis.CInvestCOphthalmolCVisCSciC52:2696-2703,C20115)GoyalCA,CSrivastavaCA,CSihotaCRCetCal:EvaluationCofCoxi-dativestressmarkersinaqueoushumorofprimaryopenangleCglaucomaCandCprimaryCangleCclosureCglaucomaCpatients.CurrEyeRes39:823-829,C2014C(72)

屈折矯正手術:フェムトセカンドレーザー白内障手術における角膜切開

2017年9月30日 土曜日

監修=木下茂●連載208大橋裕一坪田一男208.フェムトセカンドレーザー白内障手術に柴琢也東京慈恵会医科大学眼科学講座おける角膜切開フェムトセカンドレーザーを用いて白内障手術を行うことにより,用手的には作製不可能な角膜切開,角膜弧状切開を正確かつ高い再現性をもって作製することが可能である.●はじめに蒸散させる.照射を連続的に走査して行うことによって,照射部位を切断する(光切断:photodisruption).フェムトセカンド(femtosecond:FS)レーザーを用FLACSは,FSレーザーの光切断作用を用いて手術をいた白内障手術(femtosecondClaser.assistedCcataract行う方法である.FSレーザーを用いて前.切開,水晶surgery:FLACS)は,2009年に臨床報告1)が行われて体破砕,角膜減張切開,角膜切開を行うが,手術時の解以来,世界的に普及しはじめており,わが国でも導入す剖情報は前眼部光干渉断層計(opticalCcoherenceる施設が増えてきている.本稿ではCFLACSの角膜切開tomography:OCT)を用いて取得する.そのためマについて解説する.Cニュアルでは作製不可な切開を行うことが可能である.●フェムトセカンドレーザーとはFSレーザーとは,フェムト秒(1000兆分のC1秒)単位の赤外線レーザー光を連続照射することで照射部位を図1角膜切開の設定画面レーザーの出力とCXYZ軸方向の照射間隔,外部切開線および後部切開線の角度,切開幅,位置などを設定する.図2角膜切開の形状従来の用手的に作製する切開と同様の切開(上)や,FSレーザーを用いないと作製不可能な切開(下)も作製可能である.(69)あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C12810910-1810/17/\100/頁/JCOPY中心線図3角膜弧状切開AKやCLRIと異なり,角膜実質内のみを切開(赤実線)することが可能である.●角膜切開主創口およびサイドポートをCFSレーザーを用いて作製する.レーザーの出力とCXYZ軸方向の照射間隔,外部切開線および後部切開線の角度,切開幅,位置などを設定する(図1).レーザー照射部位に関して安全マージンが設定されており,虹彩や水晶体との距離が一定以上近い部位にはレーザー照射されない.OCTとレーザーを用いることにより,従来と同様の切開(図2上)から,用手的には実現不可能な切開(図2下)まで作製することが可能である.ただし,OCT,レーザーともに組織侵達度に限界があり,虹彩後面や毛様体の観察および治療は不可能である.したがって,角膜と水晶体以外ではOCTによる計測やレーザー照射を行うことができないため,強角膜切開を行うことはできない.また,角膜切開を行う際には,上方角膜は透明性が低下することより切開部位の適応になりにくい.FSレーザー装置による手術過程が終了したら,通常の白内障手術と同様に手術顕微鏡下にて手術操作を行う.スパーテルやフックなどを用いて,角膜切開創の切断面を.離する.外部切開線の.離がむずかしいことがあるが,スリット照明を用いると視認性が向上して操作が容易になる.C●角膜弧状切開(arcuateincision:AI)角膜乱視の矯正を目的として行うが,用手的なCastig-maticCkeratotomy(AK)2)やClimbalCrelaxingCincision(LRI)3)と異なり,角膜実質内のみを切開することが可1282あたらしい眼科Vol.34,No.9,2017C図4角膜弧状切開の設定画面レーザーの出力とCXYZ軸方向の照射間隔,切開範囲の角膜前後面からのそれぞれの距離,角度,光学域,弧の長さなどを設定する.能である(図3).そのため矯正効果の予測精度と効果持続性の向上が期待できる.レーザーの出力とCXYZ軸方向の照射間隔,切開範囲の角膜前後面からのそれぞれの距離,角度,光学域,弧の長さなどを設定する(図4).C●おわりに従来の白内障手術に比べてCFSレーザーを用いると,手術の再現性,正確性を向上させることが可能になる.さらに,マニュアルでは絶対に作製不可能な切開を行うことが可能になる.まだ第一世代の機種であるが,今後のさらなる発展が期待できる.文献1)NagyZ,TakacsA,FilkornTetal:Initialclinicalevalua-tionCofCanCintraocularCfemtosecondClaserCinCcataractCsur-gery.JRefractSurgC25:1053-1060,C20092)BinderPS:Astigmatickeratotomyprocedures.CorneaC3:C229-230,C19843)HannaCKD,CJouveCFE,CWaringCGOC3CrdetCal:ComputerCsimulationCofCarcuateCandCradialCincisionsCinvolvingCtheCcorneosclerallimbus.Eye3:227-239,C1989(70)

眼内レンズ:眼内レンズ切断剪刀

2017年9月30日 土曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋370.眼内レンズ切断剪刀下分章裕しもわけ眼科フォーダブル眼内レンズ(IOL)を眼内で安全に切断できるよう工夫された眼内レンズ切断剪刀(ASICO社,Duckworth&Kent社)を紹介する.眼内の操作を安全にできるように眼内レンズ切断剪刀の刃先がティアードロップ状になっている.IOLを前房内で切断する際,創口より粘弾性物質が流出し後.が挙上しても破.しにくく,有用である.●IOL2分割よりも3分割がよい理由白内障手術時にインジェクタートラブルなどで,フォーダブル眼内レンズ(intraocularlens:IOL)が破損しIOLを摘出しないといけない場合がある.また,白内障術後にもIOL屈折誤差,偏位などでIOLを交換する場合もある.小切開創からIOLを取り出す場合は2分割して摘出するのが一般的であったが,この場合,眼内での操作が困難で角膜内皮障害をきたしやすく,また図1IOL2分割法2分割法は切断距離が長く,中央のもっとも厚い部分を切らないといけない.若干創口を広げる必要があった.2分割がむずかしくなる原因はIOLの一番分厚い部分を切り,またIOLの直径部分のもっとも長い部位を切る必要があるからである(図1).また,剪刀の先端は切れにくい.2分割の場合は剪刀先端部を使うことになり,さらにむずかしくなる.対策としては分割数を3分割に増やすのがよい.3分割ならIOL中央の分厚い部分を切らずにすみ,切断する長さも短くなり眼内操作が簡便となる(図2).Shi-mowake式眼内剪刀(ASICO社,Duckworth&Kent社)は刃先が細く,前房内での操作がやりやすくなっている.また,先端がティアードロップ状になっているので,創口より粘弾性物質が流出し後.が挙上しても,破.しにくいようにデザインされている(図3).眼内への挿入もスムーズに行うことができる.眼内では虹彩面に平行に刃先が開閉し,浅前房でも操作しやすく,角膜内面や後.を傷つけにくい.●IOL3分割の手順Shimowake式眼内剪刀を用いたIOL3分割の手順は次のとおりである(図4).図2IOL3分割法3分割法は切断距離が短く,薄い部分を切る.図3Shimowake式眼内剪刀(ASICO社,Duck-worth&Kent社)とその先端形状(67)あたらしい眼科Vol.34,No.9,201712790910-1810/17/\100/頁/JCOPY図4IOL3分割法の手順①IOLの手前のハプティックスを創口から引き出す.②左側の1/3を切断する.③断片を摘出する.④残りのIOL.⑤IOLを180°回転させ,残りのハプティクスを創口から出す.⑥残りの光学部が台形になるように切断する.⑦両端を切り落とした中央部の光学部.⑧取り出しやすいように回転させ,残りのIOLを摘出する.①前房に粘弾性物質を満たし,眼内のIOLを前房へ引き出す.②IOLの手前のハプティックスを創口から引き出だし,ハプティックスを鑷子で牽引してIOLを固定する.③固定されたIOLの左側の1/3を剪刀で切断し,摘出する.④残りのIOLを眼内で180°回転させ,残りのハプティクスに対しても同様の操作を行う.できれば,取り出だしやすいように中央部の残りの光学部は台形に切断する.⑤取り出しやすいよう眼内で回転させ,残りの中央部を摘出する.●おわりにIOLの固定は眼外へ出ているハプティクスを引っ張ることによって確実にでき,また切る距離が短いので剪刀の根元で確実にIOLを切断することができる.3分割法は2分割法に比べ手順が多くなるが,各ステップが容易であるのがメリットである.IOLのハプティックスが破損している場合は,サイドポートから入るIOL把持鑷子でIOLを固定することにより,IOL切断は容易にできる.また,この剪刀は超音波水晶体乳化吸引術時に核が皿状に残って困った場合にも応用可能である.粘弾性物質を前房に入れ,皿状の核を前房内へ脱臼させ,核片を剪刀にて細かく切断し処理する.ほかにも通常の虹彩剪刀・前.剪刀と同様に使用することができ,汎用性があり有用である.文献1)江口秀一郎:眼内レンズ交換1.IOL&RS25:183-189,20112)郡司久人,新井香太,伊藤義徳ほか:小切開から摘出可能な新しい眼内レンズ切断法.眼科手術23:603-607,20103)溝手秀秋:2.5mm創口からの簡便な眼内レンズ摘出方法.あたらしい眼科33:1157-1157,2016