特集●今,注目すべき眼感染症とその治療戦略あたらしい眼科33(11):1565?1571,2016知っておくべき内因性カンジダ眼内炎の管理指針ComparisonofEuropean,AmericanandJapaneseGuidelinesforManagementofFungalInfection田中大貴*川上秀昭**望月清文*はじめに内因性カンジダ眼内炎は,酵母様真菌の一つであるカンジダの全身感染症によって血行性に網脈絡膜に伝播し発症する.医療の高度化とともに1980年代半ばから増加してきた疾患で,中心静脈栄養カテーテルの留置既往や,消化管術後,血液悪性腫瘍あるいは臓器移植後などの免疫不全状態などが危険因子の代表である1).原因真菌(血液培養で分離・同定)としてCandidaalbicansがもっとも多く,ついでC.tropicalis,C.glabrata,C.parapsilosis,C.krusei,C.guilliermondii,C.dubliniensis,C.lusitaniaeなどが検出される.近年では,フルコナゾール(Fulconazole:FLCZ)耐性カンジダ属の増加が指摘されている.臨床経過は亜急性または慢性に進行し,通常両眼性で性差はなく新生児を含めあらゆる年齢層で発症し,ほとんどが入院患者である1).初期病変は網脈絡膜にあり,眼底後極部を中心に小円形黄白色滲出斑がみられる.進行すると炎症は硝子体に波及し,やがて硝子体混濁(羽毛状,雪玉状,数珠状,びまん性)が出現し眼底の透見度が低下する.他に網膜出血,Rothspot,軟性白斑あるいは網膜下膿瘍を伴うことがある.ときに網膜血管炎や乳頭炎が生じ,重症例では続発緑内障,併発白内障,網膜前膜あるいは網膜?離へと進展する1).自覚症状として,初期には飛蚊症や軽い目のかすみを自覚し,進行すると視力低下,充血あるいは眼痛などを生じる.しかし,網脈絡膜病変の多くは中心窩近傍を侵さないかぎり無症候であり,また対象となる症例の多くは全身状態が不良のため,眼症状に気づかないか,あるいは訴えることができない場合もある1).近年,担当診療科(あるいは感染症科医)においてガイドライン1~3)に準じた真菌感染症に対する十分な配慮のもと早期に適切な治療が開始されるようになり,加えてカンジダ眼内炎は血管に富みかつ薬剤移行の良好な脈絡膜に病巣が初発するので,進行した眼内炎の頻度は減少した4).しかし,未だカンジダ血症における眼病変の発症頻度は20%前後と高値を示し,失明に至る症例もみられる4~12)(表1).本稿では,日米欧〔それぞれ深在性真菌症のガイドライン作成委員会,米国感染症学会(InfectiousDiseasesSocietyofAmerica:IDSA),欧州臨床微生物学会(EuropeanSocietyofClinicalMicrobiologyandInfectiousDiseases:ESCMID)〕の新規ガイドライン1,3,13)に基づいた内因性カンジダ眼内炎における診断のポイントおよび治療に用いる抗真菌薬の眼科的特徴,ならびに臨床上みられるさまざまな病態に対する治療法について概説する.I病期分類欧米のガイドラインでは,眼病変は,病巣が網膜や脈絡膜に留まる“脈絡網膜炎(chorioretinitis)“と硝子体中に真菌が浸潤した“眼内炎(endophthalmitis)(狭義)”の2つに大きく分類される3,4).真菌血症の患者背景として糖尿病,高血圧症あるいは白血病など全身疾患を有することが多いので,「網膜出血,Rothspotや軟性白斑などは散在するが真菌に特有な隆起した滲出斑がみられない」場合を“Possible”(非特異的眼病変)として,一方では典型的所見(硝子体側に隆起した小円形黄白色滲出斑や羽毛状あるいは雪玉状硝子体混濁など)を有する場合には“Probable”と扱われることがある3,4).なお,わが国では,病期分類として石橋,西村ら,聖路加国際病院の分類が提唱されている14~16).II診断1)大きく確定診断と臨床診断に分けられ,近年では診断の多くは後者でなされている.1.確定診断内因性カンジダ眼内炎の確定診断は,特徴ある眼所見と眼内液(前房水あるいは硝子体液:おもに硝子体手術で採取)を用いた培養,鏡検あるいは病理組織学的検索によるカンジダの証明による.微量検体では蛍光染色液ファンギフローラYRが有用である.PCR(polymerasechainreaction)法による真菌DNAの検出は有効であるが,真菌検出用の専門キットは商品化されていない.診断を目的とした硝子体穿刺吸引はわが国では積極的に行われていない.本来,網脈絡膜を病態の主座とする本疾患では,発症早期(脈絡網膜炎)における眼内からの検体採取は無効といえる.なお,硝子体中のb-D-グルカン測定で10.0pg/mlをはるかに超える場合には補助診断として有用である.2.臨床診断特有の患者背景を有し,抗菌薬不応性の発熱,白血球増多,CRP(C-reactiveprotein)上昇などの炎症反応を示し,血清中b-D-グルカン上昇あるいは血液培養(中心静脈カテーテル先端含む)から真菌の検出を伴い,典型的な眼所見がみられる場合には,臨床的にカンジダ眼内炎と診断される.一方,まれに眼内炎患者が視力低下のみ(炎症所見の有無を問わず)を主訴に眼科外来を受診することがある.その際,最近の入院歴およびカテーテル装着歴(わが国ではまれだが麻薬静注歴も含む)などを併せた正確な病歴聴取が,細菌性眼内炎との鑑別のため重要となる.なお,血清中b-D-グルカン高値は補助診断として有用であるが,血液透析や血液製剤投与などの場合には偽陽性に注意する.3.診断するにあたり注意を要する病態とその対応a.真菌症疑い例(非特異的眼病変あるいは“Possible”に相当)糖尿病,高血圧症あるいは白血病などの全身疾患を有する者では全身的に真菌感染を示唆する症状があっても,眼底検査では網膜出血,Rothspotあるいは軟性白斑などが散在するのみで,真菌に特有な隆起した滲出斑がみられない場合がある.b.精密眼底検査血液培養やb-D-グルカンなどの血清学的検査から真菌感染の証拠が一度でも得られた場合には,たとえ眼科的な訴えがなくても1週間以内に眼科医による散瞳下での眼底検査が必要である.初回の眼底検査で異常がみられない場合でも,週1回,少なくとも2週後まで眼底検査を行い,発症の有無を確かめるとともに,血清学的検査値の推移も注視しておく.退院前の眼底検査も推奨される.好中球減少患者では好中球数の回復前後で眼底検査を実施すべきである2,13).4.鑑別診断鑑別を要する疾患として,粟粒結核,糖尿病網膜症,トキソプラズマ症,内因性細菌性眼内炎(とくにMRSAやノカルジア)およびサイトメガロウイルス網膜炎などがあげられる.III治療治療は抗真菌薬の全身投与が基本である.各薬剤の排泄経路,眼内移行および薬剤感受性を考慮して選択する1).また,全身投与量および投与期間により眼内移行濃度は異なる.一方,各抗真菌薬のおもな副作用として,ポリエン系抗真菌薬であるアムホテリシンBリポソーム製剤(Liposomalamphotericin:L-AMB)では腎毒性や低カリウム血症などが問題となる.フロロピリミジン系のフルシトシン(Flucytosine,5-FC)は良好な硝子体内移行を有するが,単独では耐性化しやすく,また骨髄抑制が発現することがある.アゾール系薬のFLCZでは腎障害を有する場合,投与量に注意が必要である.同系のイトラコナゾール(Itraconazole:ITCZ)では肝機能障害を生ずることがあり,またボリコナゾール(Voriconazole:VRCZ)では肝障害の他に投与開始早期に視覚障害や羞明などを訴えることがあるので,使用する際には眼内炎による眼症状との鑑別に留意する.キャンディン系薬のミカファンギン(Micafungin:MCFG)やカスポファンギン(Caspofungin:CPFG)は副作用が少なく,C.glabrataには良好な抗真菌活性を示すがC.parapsilosisには活性が低く,また前房水や硝子体内への移行は不良である17).そこで“ESCMID”のガイドラインではキャンディン系薬の使用に関して“推奨度D”とされた3).なお本稿では,全身的副作用の見地から既存のアムホテリシンBデオキシコール酸(AmphotericinB-deoxycholate:d-AMPH)の全身投与を選択薬としていない.日米欧の新たな深在性真菌症のガイドラインではカンジダ眼内炎の治療薬として,薬剤の眼内(硝子体内)移行性あるいは抗真菌力の観点からL-AMB,(F)-FLCZあるいはVRCZを推奨している1,3,13).とくに“ESCMIDのガイドライン”ではd-AMPHよりもエビデンスの少ないL-AMBが優位に位置づけられている3).また,5-FCがL-AMBとの相乗効果の面から併用されることがある3,13).ただし,5-FCの剤形はわが国では錠剤,欧米では注射薬と異なる.抗真菌薬の効果判定には眼底所見の改善度が重要で,3~5日ほど経過観察しても病変が改善しない場合には,菌種の同定および感受性検査の結果も参考に,担当科(感染症科医)と連携しながら第二選択薬を検討する.ただし,その効果は絶対的ではなく,病巣が硝子体内へ播種した症例では硝子体手術を要する.また,欧米のガイドラインでは硝子体手術とともにAMPH-B(d-AMPHもしくはL-AMB)あるいはVRCZの硝子体内投与が推奨されている3,13).なお,中心静脈栄養や静脈留置カテーテル施行例では,可能であれば抜去を検討すべきである.1.経験的治療眼内炎が疑われるが確定できない症例において,担当科ですでに経験的治療が行われている場合には,眼科では眼底所見を診ながら連携して治療にあたる.なお,外来患者(II?2.臨床診断の項参照)では標的治療と同様な薬剤選択(次項2-a-①)で治療にあたる.2.標的治療(表2,3)眼科初診より以前に担当科においてすでに標的治療が行われている場合,系統の異なる抗真菌薬への変更を推奨する.とくにキャンディン系薬が使用されていた場合には他剤への変更を推奨する.前房内に炎症がみられる場合にはステロイド点眼薬による消炎と散瞳薬の点眼による瞳孔管理を行う.続発緑内障に対しては抗緑内障点眼薬を併用する.抗真菌薬の点眼は要さない.なお,眼内病変が中心窩あるいはその近傍に及ぶおそれがある場合13),あるいは数乳頭径の網膜下膿瘍を伴っている場合には,硝子体内投与の併用を検討する.a.原因カンジダ種は不明:原則未治療①特徴的な眼所見を認め,血液培養から酵母が分離された場合,監視培養(喀痰,ドレーン,創,尿,便など)で複数部位(3カ所以上)からの複数回真菌検出あるいはb-D-グルカン陽性など真菌感染の証拠が得られている場合:第一選択薬としてアゾール系抗真菌薬である(F-)FLCZを推奨する.病変が改善しない場合には,第二選択を検討する.第二選択薬としてはVRCZあるいはL-AMBなどが推奨される.ただし,眼病変が網脈絡膜に留まり,腎障害など全身状態が不良なため全身投与による副作用発現が危惧される症例では,キャンディン系が選択されることがある.一方,眼内病変が拡大する場合には,L-AMB+5-FC,VRCZ+CPFGあるいはVRCZ+MCFGなどの2剤投与を考慮する.b.原因カンジダ種が判明①未治療(最近アゾール系薬の使用歴がない)のカンジダ属(C.glabrataおよびC.kruseiを除く)(新規IDSAガイドラインにおけるアゾール感受性に相当)13):第一選択薬として(F-)FLCZを投与する.改善しない場合には,VRCZ,L-AMB,ITCZ,MCFGあるいはCPFGなどを選択する(2-a-①と同様な選択基準).②最近アゾール系薬の使用歴があるカンジダ属(新規IDSAガイドラインにおけるアゾール耐性に相当)13):第一選択薬としてL-AMBを推奨する.治療開始後改善しない場合には,第二選択薬としてVRCZ単剤あるいはL-AMB+5-FC,VRCZ+CPFGもしくはVRCZ+MCFGなどの2剤投与を考慮する.③C.glabrata:第一選択薬としてL-AMBを投与する.治療開始後改善せず,かつ眼病変が網脈絡膜に留まっている場合には,MCFGあるいはCPFGなどを選択する.④C.krusei:第一選択薬としてVRCZあるいはL-AMBを投与する.治療開始後改善せず,かつ眼病変が網脈絡膜に留まっている場合には,③と同様にキャンディン系薬(MCFGあるいはCPFG)を選択する.3.重症例への対処(抗真菌薬全身投与併用)a.硝子体手術病巣の除去,薬剤の眼内移行の向上および検体の採取を目的とする.下記のような所見がみられる場合には硝子体手術を要する.その際,抗真菌薬を眼内灌流液に添加あるいは手術終了時に硝子体内投与することがある.①適切な抗真菌薬の全身投与にもかかわらず眼内炎が悪化・遷延するとき(投与後48~72時間)②網膜前膜が中心窩近くにあり瘢痕収縮で網膜?離や黄斑円孔を生じる危険性があるとき③視神経乳頭から増殖血管膜が生じたとき④乳頭炎と網膜血管炎を合併し抗真菌薬に抵抗するとき⑤中心窩に大きな病巣(1/2乳頭径以上)があり抗真菌薬が著効しないとき⑥初診時すでに高度の硝子体混濁あるいは網膜?離があるときただし,患者の全身状態を考慮し手術適応を決定する.また,手術は精神的苦痛ならびに経済的負担を強いることになるので,患者および家族の意向も重要である.なお,真菌性眼内炎では通常両眼に病巣がみられる.そこで,片眼だけでも視力回復をめざして早期に硝子体手術を行うことがある.早期とは真菌性眼内炎(中等度~高度の硝子体炎)診断後1週間以内とされる.また,早期硝子体手術が網膜?離の発症頻度を減少させる18).b.抗真菌薬の硝子体内投与(表4)全身状態不良あるいは手術拒否などによる硝子体手術不可例,硝子体手術後の再発例および抗真菌薬の全身投与のみでは効果が不十分な例で検討する.可能であれば感受性結果に基づき薬剤を選択する.4.治療効果の判定ならびに治療終了時期抗真菌薬の効果判定には眼所見の改善度が有用である.抗真菌薬の投与期間は4~6週間以上(IDSA)13),2~12週(ESCMID)3)あるいは3~12週(わが国)1)程度であるが,網脈絡膜病巣が瘢痕治癒するまで継続する.全身状態の改善のみ(血液培養あるいはb-D-グルカン陰性化)で治療を中止してはいけない.経静脈投与が長期にわたる場合には,正常な腸管機能を有する患者で経口投与が可能であれば経口薬への変更(step-down)を考慮する.また,抗真菌薬の投与終了後に,眼内炎の再燃がみられることもあるので,投薬中止後少なくとも6週(可能であれば12週)まで眼底検査を行い経過観察する1).脈絡網膜炎の消炎後に脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)が続発することがあるので,黄斑部近傍に瘢痕病巣を有する症例ではとくに注意を要する.治療法としてCNV抜去,光線力学的療法あるいは抗血管内皮増殖因子硝子体内投与などがある1).IV予後早期に適切な抗真菌薬投与を開始された症例では視力予後は良好である.一方,初診時視力0.1以下あるいは眼内炎発症後1カ月以上経過した症例や黄斑部障害例,あるいは硝子体手術に至った進行例では視力予後は不良である19,20).Sallamらはカンジダ眼内炎の視力予後を左右する因子として,眼科初診時の低視力(0.01以下)と耳側網膜血管アーケード内の網脈絡膜病巣を指摘している18).また,カンジダ眼内炎を伴う症例の生命予後は眼病変を伴わない症例に比し不良とされ,カンジダ眼内炎症例における14週死亡率は50%という報告もある9).生命予後という視点からもカンジダ血症(カンジダ眼内炎を含めた)の早期診断ならびに治療の開始が重要といえる.文献1)深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014,協和企画,20142)PappasPG,KauffmanCA,AndesDetal;InfectiousDiseasesSocietyofAmerica:Clinicalpracticeguidelinesforthemanagementofcandidiasis:2009updatebytheInfectiousDiseasesSocietyofAmerica.ClinInfectDis48:503-535,20093)CornelyOA,BassettiM,CalandraTetal;ESCMIDFungalInfectionStudyGroup:ESCMID*guidelineforthediagnosisandmanagementofCandidadiseases2012:non-neutropenicadultpatients.ClinMicrobiolInfect18Suppl7:19-37,20124)DonahueSP,GrevenCM,ZuravleffJJetal:Intraocularcandidiasisinpatientswithcandidemia.Clinicalimplicationsderivedfromaprospectivemulticenterstudy.Ophthalmology101:1302-1309,19945)SchererWJ,LeeK:Implicationofearlysystemictherapyontheincidenceofendogenousfungalendophthalmitis.Ophthalmology104:1593-1598,19976)KrishnaR,AmuhD,LowderCYetal:Shouldallpatientswithcandidemiahaveanophthalmicexaminationtoruleoutocularcandidiasis?Eye14:30-34,20007)Rodriguez-AdrianLJ,KingRT,Tamayo-DeratLGetal:Retinallesionsascluestodisseminatedbacterialandcandidalinfections:frequency,naturalhistory,andetiology.Medicine(Baltimore)82:187-202,20038)OudeLashofAM,RothovaA,SobelJDetal:Ocularmanifestationsofcandidemia.ClinInfectDis53:262-268,20119)NagaoM,SaitoT,DoiSetal:Clinicalcharacteristicsandriskfactorsofocularcandidiasis.DiagnMicrobiolInfectDis73:149-152,201210)GhodasraDH,EftekhariK,ShahARetal:Outcomes,impactonmanagement,andcostsoffungaleyediseaseconsultsinatertiarycaresetting.Ophthalmology121:2334-2339,201411)AdamMK,VahediS,NicholsMMetal:Inpatientophthalmologyconsultationforfungemia:prevalenceofocularinvolvementandnecessityoffunduscopicscreening.AmJOphthalmol160:1078-1083.e2,201512)PaulusYM,ChengS,KarthPAetal:Prospectivetrialofendogenousfungalendophthalmitisandchorioretinitisrates,clinicalcourse,andoutcomesinpatientswithfungemia.Retina36:1357-1363,201613)PappasPG,KauffmanCA,AndesDRetal:Clinicalpracticeguidelineforthemanagementofcandidiasis:2016UpdatebytheInfectiousDiseasesSocietyofAmerica.ClinInfectDis62:e1-e50,201614)石橋康久:内因性真菌性眼内炎の病期分類の提案.臨眼47:845-849,199315)西村哲哉,岸本直子,宇山昌延:真菌性眼内炎の経過と硝子体手術の適応.臨眼47:641-645,199316)草野良明,大越貴志子,佐久間敦之ほか:真菌性眼内炎の起因菌におけるフルコナゾール耐性Candida属の増加.臨眼54:836-840,200017)MochizukiK,SawadaA,SuemoriSetal:IntraocularpinetrationofIntravenousmicafunginininflamedhumaneyes.AntimicrobAgentsChemother57:4027-4030,201318)SallamA,TaylorSRJ,KhanAetal:FactorsdeterminingvisualoutcomeinendogenousCandidaendophthalmitis.Retina32:1129-1134,201219)TakebayashiH,MizotaA,TanakaM:Relationbetweenstageofendogenousfungalendophthalmitisandprognosis.GraefesArchClinExpOphthalmol244:816-820,200620)TanakaH,IshidaK,YamadaWetal:Studyofocularcandidiasisduringnine-yearperiod.JInfectChemother22:149-156,2016*HirokiTanaka&*KiyofumiMochizuki:岐阜大学医学部附属病院眼科**HideakiKawakami:岐阜市民病院眼科〔別刷請求先〕望月清文:〒501-1194岐阜市柳戸1-1岐阜大学医学部附属病院眼科0910-1810/16/\100/頁/JCOPY表1カンジダ血症患者における眼病変発症頻度4~9)報告者DonahueKrishnaRodriguez-AdrianOudaLashofNagao報告年19942000200320112012患者数:例数11831180370204眼病変:例数(%)34(29%)8(26%)27(15%)60(16%)54(26.5%)病型(%)眼内炎(狭義)0011.64.9脈絡網膜炎(広義)29261414.621.6①Probable②Possible9(20)26─3(11)9.25.411.89.8脈絡網膜炎(広義):Probable+Possible.Probable=脈絡網膜炎(狭義):典型的眼病変を有する.Possible:網膜出血・Rothspotや軟性白斑などは散在するが典型的な眼所見がみられない.また()内は“非特異的病変”と記載されている報告での頻度.1566あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(28)(29)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161567表2カンジダ眼内炎における抗真菌選択(日米欧ガイドラインの比較)1,3,13)作成元ESCMID深在性真菌症ガイドラインの作成委員会IDSA発表年201220142016抗真菌薬?菌種不明L-AMBまたはL-AMB+5-FC?菌種不明①最近アゾール系抗真菌薬の使用歴なし?第一選択(F-)FLCZ?第二選択L-AMBまたはVRCZ②最近アゾール系抗真菌薬の使用歴あり?第一選択L-AMB?アゾール系抗真菌薬①感受性ありFLCZまたはVRCZ②耐性L-AMBまたはL-AMB+5-FC投与期間2~12週3~12週4~6週ESCMID:EuropeanSocietyofClinicalMicrobiologyandInfectiousDiseases.IDSA:InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.表3カンジダ眼内炎の標的治療(薬剤は原則単独投与,推奨順)カンジダ属抗真菌薬ならびに用法・用量菌種不明最近アゾール系薬の使用歴がない場合(F-)FLCZ400mg/回1日1回静脈内投与(F-FLCZのみloadingdose:800mg1日1回静注を2日間)第二選択VRCZ4mg/kg/回(loadingdose:初日のみ6mg/kg/回)1日2回点滴静注L-AMB2.5~5mg/kg1日1回静注最近アゾール系薬の使用歴がある場合L-AMB2.5~5mg/kg1日1回静注単独投与で効果不十分の場合,下記の2剤投与(loading不要)L-AMB(2.5~5mg/kg1日1回静注)+5-FC(1回25mg/kg1日4回経口投与)VRCZ(4mg/kg/回1日2回点滴静注)+CPFG(50mg1日1回点滴静注)VRCZ(4mg/kg/回1日2回点滴静注)+MCFG150~300mg1日1回点滴静注菌種同定C.glabrataおよびC.krusei以外(F-)FLCZ400mg/回1日1回静脈内投与(F-FLCZのみloadingdose:800mg1日1回静注を2日間)第二選択VRCZ4mg/kg/回(loadingdose:初日のみ6mg/kg/回)1日2回点滴静注L-AMB2.5~5mg/kg1日1回静注※病変が網脈絡膜に限局ITCZ200mg/回1日1回点滴静注(loadingdose:200mg/回1日2回点滴静注を2日間)MCFG150~300mg1日1回点滴静注CPFG50mg/回(loadingdose:初日のみ70mg/回)1日1回点滴静注C.glabrataL-AMB2.5~5mg/kg1日1回静注第二選択(病変が網脈絡膜に限局)MCFG150~300mg1日1回点滴静注CPFG50mg/回(loadingdose:初日のみ70mg/回)1日1回点滴静注C.kruseiVRCZ4mg/kg/回(loadingdose:初日のみ6mg/kg/回)1日2回点滴静注L-AMB2.5~5mg/kg1日1回静注第二選択(病変が網脈絡膜に限局)MCFG150~300mg1日1回点滴静注CPFG50mg/回(loadingdose:初日のみ70mg/回)1日1回点滴静注(文献1を改変)1568あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(30)(31)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161569表4おもな抗真菌薬の硝子体内投与量と眼内灌流液添加量抗真菌薬略号硝子体内投与硝子体手術投与量*(μg/0.1ml)半減期†(時間)ボトルへの添加量(mg/500ml)アムホテリシンBAMPH-B5~10182.5~5アムホテリシンBリポソーム製剤L-AMB5──フルコナゾールFLCZ‡1001.5~4.6910ボリコナゾールVRCZ50~1002.25~2.5─*:乳幼児および強度近視眼では投与量に注意.†:ウサギを用いた結果.‡:ホスフルコナゾール(F-FLCZ)は眼内投与不可.1570あたらしい眼科Vol.33,No.11,2016(32)(33)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161571