次世代シーケンサーとエピゲノム解析次世代シーケンサーとエピゲノム解析の発展神経,皮膚など異なる系譜の細胞ごとに,利用される遺伝子発現の制御領域や染色体領域は異なっており,DNAのメチル化やヒストンの化学修飾による標識,転写因子結合,クロマチン相互作用といったエピゲノムが関与しています.遺伝子発現の制御領域は,転写開始点直近のプロモーター領域のみならず,遺伝子領域から数百kb(キロ塩基対)離れているエンハンサー領域などにも認められ,このような領域はヌクレオソームがはずれたオープンクロマチン領域であることがわかっています.これらの制御領域は,転写因子やコファクターを介して,転写開始点と空間的に近接することにより相互作用を及ぼすと考えられています.当初,これらのエピゲノム解析は免疫染色などの細胞レベルで行われてきましたが,次世代シークエンサーを用いた測定技術の大幅な性能向上により,さまざまな細胞の全ゲノムレベルでの高解像度なエピゲノム解析が可能になりました(図1).ヒストン修飾や転写因子結合領域に関しては,クロマチン免疫沈降(ChIP)に次世代シークエンサーを組み合わせたChIP-seq,オープンクロマチン領域はDNase-seq,FAIRE-seq,ATAC-seq,クロマチン相互作用については4C(circularchromosomeconformationcapture)やHi-C,ChIA-PET法が考えられています.ENCODEprojectやRoadmapepigenomicsprojectらにより,多くの細胞腫におけるエピゲノムデータが報告されており,UCSCgenomebrowser(https://genome.ucsc.edu/)などで参照できるようになっています.眼の領域ではどうでしょうか網膜ではすでに網膜色素上皮細胞において,ENCODEやEpigenomeRoadmapprojectでも詳細な解析が行われています.しかし,角膜においてはほとんど解析が進んでいませんでした.筆者らは,角膜上皮細胞におけるエピゲノム解析を行い,他細胞と比較しました.その結果,角膜細胞に特徴的なオープンクロマチン領域や,ヒストン修飾や転写因子結合,クロマチン相互作用が明らかとなり,角膜上皮細胞の分化維持において,特徴的なエンハンサーに対するkey転写中川卓旭中央病院眼科東京大学大学院医学系研究科眼科学図1次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析により,さまざまな細胞の全ゲノムレベルでのエピゲノムが高解像度で把握可能となった.これまで蓄積された多くのエピゲノムデータはUCSCgenomebrowser(https://genome.ucsc.edu/)などで参照できる.因子の結合と,エンハンサー・プロモーター間のクロマチン相互作用が,角膜における特異的な遺伝子発現の転写制御に重要であることが示唆されました(投稿準備中).今後の展望次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析により,角膜上皮細胞の分化維持のメカニズムを全ゲノムレベルでバイアスなく捉えることができます.これらにより,角膜疾患の病態メカニズムの解明と新規治療法の開発につながることが期待されます.新規治療にはエピゲノムの修飾による薬物治療や,角膜上皮細胞へのダイレクトリプログラミングのような再生医療への応用が考えられます.文献1)ENCODEProjectConsortium:Anintegratedencyclope-diaofDNAelementsinthehumangenome.Nature6:57-74,20122)RoadmapEpigenomicsConsortium,KundajeA,MeulemanWetal:Integrativeanalysisof111referencehumanepigenomes.Nature518:317-330,2015(81)あたらしい眼科Vol.34,No.8,201711550910-1810/17/\100/頁/JCOPY