《原著》あたらしい眼科34(11):1625.1628,2017c漿液性網膜.離および網膜細動脈瘤を認めたサルコイドーシスの3症例坂井摩耶*1大野新一郎*1江内田寛*1沖波聡*2*1佐賀大学医学部眼科学講座*2倉敷中央病院眼科CSerousRetinalDetachmentandRetinalMacroaneurysminThreeCasesofSarcoidosisMayaSakai1),ShinichirouOono1),HiroshiEnaida1)andSatoshiOkinami2)1)DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,KurashikiCentralHospital目的:漿液性網膜.離および網膜細動脈瘤を認めたサルコイドーシスC3症例の報告.症例:症例C1はC68歳,女性.ぶどう膜炎と漿液性網膜.離を生じ紹介受診.テント状周辺虹彩前癒着(PAS),数珠状硝子体混濁,網膜動静脈炎,網膜細動脈瘤を認め,サルコイドーシスと診断.トリアムシノロンCTenon.下注射(STTA)を施行し,漿液性網膜.離は改善した.症例C2はC63歳,女性.網膜細動脈瘤,漿液性網膜.離が出現し,その後CPAS,数珠状硝子体混濁,網膜動静脈炎を認め紹介受診.サルコイドーシスの診断でCSTTA,プレドニゾロン内服を施行し,漿液性網膜.離は改善した.症例C3はC81歳,女性.右眼瞼下垂の精査で紹介受診.隅角結節,網膜動静脈炎,漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤を認めた.サルコイドーシスの診断で,ステロイド点眼にて改善傾向である.結論:漿液性網膜.離および網膜細動脈瘤を伴うぶどう膜炎をみた場合,サルコイドーシスも鑑別にあげる必要がある.CWeCreportC3CcasesCofCsarcoidosisCwithCserousCretinalCdetachmentCandCretinalCmacroaneurysm.CCaseC1,CaC68-year-oldfemale,wasreferredtousforserousretinaldetachmentwithuveitis.Shehadtent-shapedperipheralanteriorsynechia(PAS)C,vitreousopacities,retinalvasculitisandretinalmacroaneurysm.Serousretinaldetachmentimprovedaftersub-Tenoninjectionoftriamcinoloneacetonide(STTA)C.Case2,a63-year-oldfemale,wasreferredtoCusCforCuveitisCwithCPAS,CvitreousCopacitiesCandCretinalCvasculitis,CinCadditionCtoCretinalCmacroaneurysmCandCserousretinaldetachment.STTAandoralprednisoloneresultedinimprovementoftheserousretinaldetachment.CaseC3,CanC81-year-oldCfemaleCreferredCtoCusCforCinvestigationCofCblepharoptosis,CturnedCoutCtoChaveCuveitisCwithCtrabecularmeshworknodules,retinalvasculitis,serousretinaldetachmentandretinalmacroaneurysm.SkinbiopsydemonstratedCsarcoidosis.CIntraocularCin.ammationCimprovedCwithCbetamethasoneCeyedrops.CUveitisCwithCserousCretinaldetachmentandretinalmacroaneurysmmaybecausedbysarcoidosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(11):1625.1628,C2017〕Keywords:サルコイドーシス,漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤.sarcoidosis,serousretinaldetachment,retinalmacroaneurysm.Cはじめにサルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫病変であり,多臓器に症状を呈する疾患である1).眼所見として汎ぶどう膜炎を認めるが,漿液性網膜.離や網膜細動脈瘤を合併するのはまれである2,3).今回,筆者らは,漿液性網膜.離および網膜細動脈瘤を同時に認めたサルコイドーシスのC3例を経験したので報告する.CI症例〔症例1〕68歳,女性.主訴:両眼霧視.既往歴:高血圧,上室性期外収縮.現病歴:2010年C3月に両眼ぶどう膜炎と診断され,ベタメタゾン点眼で加療されていたが,2013年C2月に左眼漿液〔別刷請求先〕坂井摩耶:〒849-8501佐賀市鍋島C5-1-1佐賀大学医学部眼科学講座Reprintrequests:MayaSakai,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SagaUniversityFacultyofMedicine,5-1-1,Nabeshima,Saga849-8501,JAPAN図1症例1の初診時所見上:左眼眼底写真,フルオレセイン蛍光眼底造影:網膜細動脈瘤(.)を認めた.下:OCT.黄斑部に漿液性網膜.離(.)を認めた.性網膜.離を認めたため,同年C3月に佐賀大学医学部附属病院(以下,当院)紹介となった.初診時眼所見:視力は右眼C0.7(矯正不能),左眼C0.3(矯正不能).眼圧は右眼C15CmmHg,左眼C16CmmHg.前眼部は両眼毛様充血,微細角膜後面沈着物,前房内Ccell(+),フレア(+),隅角に周辺虹彩前癒着(peripheralCanteriorCsyn-echia:PAS)を認めた.隅角は狭隅角であった.眼底は両眼数珠状硝子体混濁,網膜動静脈炎,網膜細動脈瘤,周辺部の網脈絡膜滲出物,左眼黄斑部に漿液性網膜.離を認めた(図1).フルオレセイン蛍光眼底造影では早期相で網膜細動脈瘤からの漏出と脈絡膜の充盈遅延を認めた.全身検査所見:ツベルクリン反応陰性,胸部単純CX線検査および胸部CCTで肺門リンパ節腫脹(BHL),気管支鏡肺生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.経過:サルコイドーシスと診断し,両眼にベタメタゾン点眼を継続しながら,まず左眼にトリアムシノロンCTenon.下注射(sub-tenonCinjectionCofCtriamcinoloneCacetonide:STTA)20Cmgを施行したところ,2カ月後には漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤は消失した.2013年C6月に眼圧が右眼22CmmHg,左眼C26CmmHgと上昇したため,ドルゾラミド点眼,ブナゾシン点眼を追加した.ぶどう膜炎は鎮静化していたため,狭隅角による影響も考え,2013年C9月に左眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術,2013年C12月に右眼超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した.術後に両眼とも前部ぶどう膜炎,網膜静脈炎が再燃したため,両眼にCSTTA20mgを施行し,プレドニゾロン(以下,PSL)内服をC20Cmgより開始した.PSLを漸減しながら経過観察し,ぶどう膜炎が沈静化したため,2014年C5月にCPSL内服を中止したところ,2015年C7月に今度は右眼漿液性網膜.離を生じた.右眼にCSTTA20Cmgを施行し,2015年C9図2症例2の初診時所見上:左眼眼底写真とフルオレセイン蛍光眼底造影.網膜細動脈瘤(.)と耳下側に網脈絡膜滲出物(→)を認めた.下:OCT.黄斑部と耳下側周辺部に漿液性網膜.離(.)を認めた.月には漿液性網膜.離は消失したが,ステロイドによる眼圧上昇をきたし,ビマトプロスト点眼,ブリンゾラミド/チモロール点眼,ブリモニジン点眼,リパスジル点眼で眼圧コントロールが不可能となったために右眼線維柱帯切開術を施行した.現在はC0.1%フルオロメトロン点眼のみでぶどう膜炎および漿液性網膜.離は沈静化し,眼圧も下降している.〔症例2〕63歳,女性.主訴:左眼視力低下.既往歴:脂質異常症,大動脈石灰化.現病歴:2015年C8月に近医で左眼漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤を指摘された.そのC4日後に初めて汎ぶどう膜炎と診断され,当院紹介となった.初診時眼所見:視力は右眼C1.2(矯正不能),左眼C0.2(矯正不能).眼圧は右眼C13CmmHg,左眼C13CmmHg.前眼部は左眼微細角膜後面沈着物,前房内Ccell(2+),フレア(+),隅角にCPAS,隅角結節を認めた.眼底は左眼に数珠状硝子体混濁,網膜動静脈炎,網膜細動脈瘤,黄斑部に漿液性網膜.離,耳下側周辺部に滲出性病変を認めた(図2).フルオレセイン蛍光眼底造影では,網膜細動脈瘤および滲出性病変からの漏出および脈絡膜の充盈遅延を認めた.全身検査所見:ツベルクリン反応陰性,胸部単純CX線検査および胸部CCTでCBHLを認めた.経過:気管支鏡肺生検では肉芽腫は指摘できなかったものの,気管支肺胞洗浄でCCD4/CD8比がC6.23と高値であり,サルコイドーシスと臨床診断した.左眼ベタメタゾン点眼を開始し,2015年C9月にCSTTA20Cmgを施行したものの,ぶどう膜炎の改善に乏しかったため,2015年C11月よりCPSL30mg内服を開始した.治療を開始してC5カ月後には漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤はともに消退し,網膜動静脈炎も鎮静化したものの,黄斑上膜の出現を認めている.〔症例3〕81歳,女性.主訴:右眼瞼下垂.既往歴:脳血管CParkinson症候群,高血圧.現病歴:2015年C10月に右眼瞼下垂を自覚した.近医で精査を受けるも原因不明であったため,同年C11月に当院紹介となった.初診時眼所見:視力は右眼C0.4(0.6C×.1.00D),左眼C0.15(0.2×+1.00D).眼圧は右眼C12mmHg,左眼C13mmHg.眼位,眼球運動,対光反応は異常なく,右眼瞼下垂を認めた.前眼部は両眼に前房内Ccell(2+),フレア(+),隅角にPAS,隅角結節を認めた.眼底は両眼に数珠状硝子体混濁,網膜動静脈炎,黄斑部に漿液性網膜.離を認め,右眼には網膜細動脈瘤,周辺部の網脈絡膜滲出物を認めた(図3).フルオレセイン蛍光眼底造影では網膜細動脈瘤,周辺部の網脈絡膜滲出物からの漏出を認めた.全身検査所見:ツベルクリン反応陰性,胸部単純CX線検査および胸部CCTでCBHL,皮膚生検で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた.経過:神経サルコイドーシスによる右眼瞼下垂と判断し,両眼にベタメタゾン点眼を開始した.ぶどう膜炎の診断は今回が初めてであった.点眼のみで眼瞼下垂は改善し,硝子体混濁,網膜動静脈炎および漿液性網膜.離,網膜細動脈瘤は消退傾向にある.CII考按一般的にサルコイドーシスは非乾酪壊死性の肉芽腫性病変を全身に生じる原因不明の慢性炎症である.眼所見として肉芽腫性ぶどう膜炎が生じ,前部ぶどう膜炎,角膜後面沈着物,隅角・虹彩結節,PAS,数珠状硝子体混濁,網脈絡膜滲出物,網膜静脈周囲炎が特徴的な所見である4).今回の症例は通常の所見とは異なり,網膜細動脈瘤と漿液性網膜.離を伴っていた.症例C1とC3は組織診断群,症例C2は臨床診断群の基準からサルコイドーシスと診断した.網膜細動脈瘤は一般的にC60歳以上の高血圧や動脈硬化性疾患を有する女性に好発するが5),サルコイドーシスへの合併頻度はC2.3.8.8%と少ない6).Yokoiらはサルコイドーシスに合併する網膜細動脈瘤は両眼性,多発性が多く,7例中6例は発症からC3年以上経過した慢性期に合併していたが,1例ではぶどう膜炎の初発時から認めたと報告している6).また,Yamanakaらは網膜細動脈瘤を認めたぶどう膜炎C14例中C5例(35.7%)が周辺部の網脈絡膜滲出物を伴うサルコイドーシスであったとしている7).筆者らの症例はすべて片眼性で,症例C3以外は単発性の病変であった.また,すべて急性期のサルコイドーシスに合併し,症例C1とC3では周辺部の網脈絡膜滲出物を伴っていた.通常,網膜細動脈瘤は高血圧などによる慢性的な血管壁の透過性亢進,内皮障害が生じて形成されるが,非常に強い炎症が生じた際には短期間に血管壁が障害され動脈瘤が生じると考えられる.また,サルコイドーシスに合併する網膜細動脈瘤には心疾患の有無も関連しているとの報告もあり8),もともと血管の脆弱性が関与しているとも考えられる.今回の症例はすべて動脈硬化性疾患図3症例3の初診時所見上:右眼眼底写真.網膜細動脈瘤(.)を認めた.中,下:OCT.両眼の黄斑部に漿液性網膜.離(.)を認めた.表1各症例のまとめ症例年齢(歳)性別高血圧心疾患網膜細動脈瘤の合併眼(数)漿液性網膜.離の合併眼C1C68女性++(心室期外収縮)左眼(1)両眼C2C63女性C.+(大動脈石灰化)左眼(1)左眼C3C81女性+.右眼(2)両眼や心疾患を伴うC60歳以上の女性であり,網膜細動脈瘤を好発しやすい特徴を備えているが,ステロイド加療によって消失していることから,炎症が関連した病態と推測される.網膜細動脈瘤は自然消退するものも報告されており7),今回のようにレーザー光凝固は施行せずに経過観察でよいと考える.さらに,今回の症例では漿液性網膜.離も合併していた.活動期のサルコイドーシスに漿液性網膜.離を合併した過去の報告では,ステロイドの関与や脈絡膜肉芽腫に伴うものがあるが9,10),今回の症例はすべてステロイドの全身投与歴はなく,光干渉断層計では脈絡膜肉芽腫は認めていない.また,網膜細動脈瘤との連続も明らかではなかった.フルオレセイン蛍光眼底造影検査で漏出のあった部位へ網膜レーザー光凝固術を施行して漿液性網膜.離の改善を得た症例もあるが3),今回の症例では漏出部位は認めなかった.フルオレセイン蛍光眼底造影検査では症例C1,2において脈絡膜の充盈遅延があり,活動性のぶどう膜炎によって脈絡膜循環障害,網膜色素上皮の障害を生じて漿液性網膜.離を生じたと考えられる.網膜細動脈瘤,漿液性網膜.離を合併するぶどう膜炎をみた場合にサルコイドーシスの可能性も考慮する必要があり,今後の症例の蓄積でさらに病態の理解を深める必要がある.文献1)石原麻美:サルコイドーシス.眼科臨床エキスパート所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩編).p127-133,医学書院,20132)大谷壮志,後藤浩,坂井潤一ほか:網膜細動脈瘤を合併したサルコイドーシスのC4例.臨眼C57:989-992,C20033)清武良子,沖波聡,石川慎一郎ほか:漿液性網膜.離を認めたサルコイドーシスのC2症例.眼科C54:1071-1076,C20124)望月學:サルコイドーシスに伴うぶどう膜炎の診断と治療.日サ会誌C24:11-19,C20045)RabbMF,GaglianoDA,TeskeMP:Retinalarterialmac-roaneurysms.SurvOphthalmolC33:73-96,C19886)YokoiK,OshitaM,GotoH:Retinalmacroaneurysmasso-ciatedwithocularsarcoidosis.JpnJOphthalmolC54:392-395,C20107)YamanakaE,OhguroA,KubotaAetal:Featuresofreti-nalarterialmacroaneurysmsinpatientswithuveitis.BrJOphthalmolC88:884-886,C20048)RothovaCA,CLardenoyeCC:ArterialCmacroaneurysmsCinCperipheralCmultifocalCchorioretinitisCassociatedCwithCsar-coidosis.OphthalmologyC105:1393-1397,C19989)WattsCPO,CMantryCS,CAustinCM:SerousCretinalCdetach-mentCatCtheCmaculaCinCsarcoidosis.CAmCJCOphthalmolC129:262-264,C200010)ModiCYS,CEpsteinCA,CBhaleeyaCS:MultimodalCimagingCofCsarcoidCchoroidalCgranulomas.CJCOphthalCIn.ammCInfectC3:58-61,C2013***