●連載監修=安川力髙橋寛二41.抗VEGF療法時代における他治療の位置づけDME編:レーザーについて,抗VEGF療法との使い分けや併用療法について稲垣圭司聖路加国際病院眼科糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するレーザー治療は,抗VEGF療法が普及するまでもっともエビデンスの高い治療法であった.現在DME治療の第一選択は抗VEGF療法であるが,治療効果は永続的でなく,治療抵抗例も存在する.本稿では,DMEに対するレーザー治療を中心に,抗VEGF療法との使い分け,併用療法について概説する.糖尿病黄斑浮腫の治療法糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)に対するレーザー光凝固術は,1985年にEarlyTreat-mentDiabeticRetinopathyStudy(ETDRS)1)が報告して以来,抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)療法が登場するまで,唯一エビデンスに基づいた治療だったが,今日ではレーザー治療単独より,抗VEGFと併用または抗VEGF療法単独が成績良好であるという結果が示されている.しかし,抗VEGF療法単独では注射の回数が1年間に8回前後となり,患者の経済的な負担が大きく,医療経済的にも問題になっている2).近年,抗VEGF療法とレーザー治療を併用することにより,注射の回数が減少したという報告があり,抗VEGF療法との併用療法という観点から,レーザー治療が注目されている3).ETDRSの時代のレーザー光凝固術は,熱で網膜を破壊するため,暗点が出現するなど,レーザー治療の負の側面が強調されてきた.しかし近年,眼底に凝固斑を残さない低侵襲レーザーであるマイクロパルス閾値下凝固,PASCALレーザーを用いたエンドポイントマネージメントが登場し,黄斑部に瘢痕を残すことなしに浮腫を引かせる方法として注目されている.大越ら,筆者らは,マイクロパルス閾値下凝固は日本人において視力維持,黄斑浮腫軽減に有効であることを報告した4,5).閾値下レーザー治療の効果については最近メタアナリシスの結果が報告され,従来のレーザー治療と同等の効果があり,かつ黄斑の感度は従来のレーザーより良好であったことが判明した.局所浮腫では閾値下レーザー単独でも治療可能であるが,びまん性浮腫の重症例ではレーザー治療単独では限界がある.そこで筆者らは,抗VEGF治療とレーザー治療を計画的に併用する方法を行っている.抗VEGF療法とレーザー治療の併用療法具体的方法であるが,まず抗VEGF薬を3回連続で投与し,その後浮腫が引いた段階で,閾値下レーザーを併用する.閾値下レーザーは抗VEGF療法前に撮影したフルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangi-ography:FA)の後期相にてびまん性の蛍光漏出を認めるびまん性浮腫を呈すると思われる範囲に密に照射する.局所性の浮腫の場合は,責任病巣である毛細血管瘤に対して眼底にわずかに凝固斑を認める閾値凝固の条件でレーザーを行う.閾値下レーザーの治療効果は即効性がなく,術後3カ月経過したのちに効果を発揮することが多く,抗VEGF療法の治療効果が切れる頃にその治療効果が出現し,1年経過で抗VEGF薬硝子体注射回図1抗VEGF薬初回投与前ステロイドTenon.下注射,毛細血管瘤に対する直接凝固を施行するも,黄斑浮腫の増悪緩解を繰り返していた難治性の糖尿病黄斑浮腫.a:抗VEGF薬の硝子体内注射前の眼底写真.右眼視力0.4(0.6×S.0.25C.1.00Ax70°).b:光干渉断層計所見..胞様黄斑浮腫と漿液性網膜.離を認める.c:フルオレセイン蛍光眼底造影所見.びまん性の蛍光漏出を認める.(79)あたらしい眼科Vol.34,No.6,20178370910-1810/17/\100/頁/JCOPYラニビズマブ硝子体内注射を1カ月おきに3回施行a.初回注射から4カ月照射条件:エンドポイント閾値下凝固エンドポイント50%SPOTサイズ200μm波長577nm時間0.015SecPower300mWShot数304発b.閾値下凝固直後c.閾値下凝固から1年4カ月RV=0.5(1.0p)図2図1の症例の治療経過抗VEGF薬硝子体内注射3回施行後にエンドポイントマネージメントを用いた閾値下凝固併用した(a).閾値下凝固施行後,眼底に凝固斑は認められない(b).併用療法後1年4カ月経過し,黄斑浮腫は再燃なく改善している(c).数の減少に繋がっていると考えている.症例提示患者は64歳女性.DMEでステロイドTenon.下注射,毛細血管瘤に対する直接凝固を施行するも黄斑浮腫の増悪緩解を繰り返し,聖路加病院眼科を紹介された.まず抗VEGF薬の硝子体内注射を1カ月おきに3回連続で投与し,黄斑浮腫が十分に消失したところで最終注射から1カ月以内にエンドポイントマネージメントを用いた閾値下凝固を,硝子体内注射前に行ったFAにてびまん性の蛍光漏出を認めた範囲に施行した(図1,2).抗VEGF薬の硝子体内注射3回に閾値下凝固を併用後,1年4カ月経過した時点で,硝子体内注射の追加施行はせず,黄斑浮腫の再発はなく,矯正視力も併用療法前0.6から1.0まで改善している(図2).当院の基本的治療方針は,中心窩に及ばないDMEはレーザー単独で治療し,浮腫が中心窩に及んだ場合は,視力が良好で浮腫が軽度であればレーザー単独,重症化した場合は抗VEGF薬の硝子体内注射を約3回連続で投与し,その後低侵襲レーザーである閾値下凝固,毛細血管瘤に対する閾値凝固を併用している.まだランダム化試験の結果は得られていないが,パイロット試験の結果では,注射の本数が少なくすんでいる印象である.おわりに抗VEGF療法がDME治療の中心になっている今日838あたらしい眼科Vol.34,No.6,2017でも,レーザー治療は重要なDME治療に位置づけられており,レーザー治療を上手に取り入れることで患者負担を軽減させることが可能と思われる.また,可能であれば,従来の熱凝固ではなく,閾値下レーザーを取り入れることで,より低侵襲に安全で効果的な併用療法を行うことができると思われる.文献1)EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudyresearchgroup:Photocoagulationfordiabeticmacularedema.EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudyreportnum-ber1.ArchOphthalmol103:1796-1806,19852)TheDiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:A.ibercept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema.NEnglJMed372:1193-1203,20153)LieglR,LangerJ,SeidenstickerFetal:Comparativeevaluationofcombinednavigatedlaserphotocoagulationandintravitrealranibizumabinthetreatmentofdiabeticmacularedema.PLoSOne26:e113981,20144)OhkoshiK,YamaguchiT:SubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularedemainJapa-nesepatients.AJO149:133-139,20105)InagakiK,OhkoshoK,OhdeS:Spectral-domainopticalcoherencetomographyimagingofretinalchangesafterconventionalmulticolorlaser,subthresholdmicropulsediodelaser,orpatternscanninglasertherapyinJapanesewithmacularedema.Retina32:1592-1600,2012(80)