硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載170170強膜バックリング手術習得のコツ(その5)バックルの設置法(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめにバックルを設置する際には,裂孔と硝子体牽引の関係についてよく理解しておく必要がある.以下,代表的な2種類の裂孔について解説する.●弁状裂孔弁状裂孔は通常,急性後部硝子体.離の進行により形成され,約半数の症例は網膜格子状変性巣の辺縁に沿って形成されるが,単一の弁状裂孔も約半数の症例でみられる.弁状裂孔では裂孔蓋に硝子体ゲルが付着しており,網膜自体に働く牽引力は裂孔の周辺側がもっとも強い.よってバックル設置の際には,この部位を確実にバックル上にのせる必要がある1).円周方向のバックル設置の場合,しばしば弁状裂孔全体をバックル上にのせようという意識が強くなり,バックルを奥に設置しすぎて,周辺側の牽引の相殺が甘くなり,周辺側から再.離をきたすケースが多い(図1)2).裂孔が大きい症例では,後極側のバックル効果が多少甘くなっても,ガスタンポナーデで十分に閉鎖が得られる.子午線方向のバックルはフッシュマウスになりにくい利点があるが,円周方向に位置がずれると裂孔の辺縁から再.離をきたしやすく(図2),輪状締結を併用しないと,バックルが押し出されやすい.●網膜格子状変性巣に起因する裂孔網膜格子状変性巣では,変性巣の全周に網膜硝子体癒着が存在している2).網膜格子状変性巣に起因する裂孔は,変性巣内に生じる萎縮性円孔と,変性巣の辺縁に生じる弁状裂孔に大別される.経強膜冷凍凝固を施行する際には,裂孔周囲だけでなく,変性巣全体にも過剰凝固にならない程度に適度な凝固を行う.網膜格子状変性巣全体をバックルの上にのせる必要があるため,通常は円周方向にバックルを設置する(図3).(97)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1弁状裂孔に対する円周方向のバックルバックルを深部に設置しすぎると,周辺側の牽引の相殺が甘くなり,周辺側から再.離をきたしやすい.図2弁状裂孔に対する子午線方向のバックル円周方向に位置がずれると,裂孔の辺縁から再.離をきたしやすい.図3網膜格子状変性巣に起因する裂孔に対するバックル網膜格子状変性巣全体をバックルの上にのせる必要がある.●バックル材料バックルは裂孔の大きさによって適宜選択する.筆者はおもに#501シリコーンスポンジあるいは#506シリコーンスポンジを使用することが多い.前者のほうが一回り小さいため,マットレス縫合を確実に行えば,術後にバックル自体が押し出されて結膜下に隆起を作ることは少ない.シリコーンタイアは,増殖性硝子体網膜症や周辺部の深さの異なる多発裂孔などの症例に有用である.文献1)眼科Surgeonsの会編:網膜.離の手術.確実な復位をめざして.医学書院,19862)池田恒彦:強膜バックリング術の原理と術式理論に基づくバックル材料と術式の決定.眼科グラフィック2:60-65,2013あたらしい眼科Vol.34,No.7,20171013