強度近視眼における光干渉断層血管撮影OCTangiography:EyeswithHighMyopia石田友香*大野京子*IOCTAとは光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA)は,同じ場所の断層面をOCTで2回以上撮影し,変化している部分(=赤血球が動いている部分)のみの信号を取り出してソフトウェアで再構成した,血流のある血管を観察する最新のツールである.従来,血流状態は,蛍光眼底造影検査を行わなければ把握することができなかったが,造影剤を使用せず,数十秒で撮影が可能なOCTAは画期的な技術である.また,フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiogra-phy:FA)でも,ごく早期にきれいに撮れた場合には毛細血管レベルまで観察することが可能ではあったが,OCTAを用いると,常に毛細血管レベルまでクリアに観察することができる.さらに,FA検査はおもに網膜血管を,インドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiography:IA)検査はおもに脈絡膜血管を観察するものと認識してきたが,OCTAでは,網膜の浅層,深層,網膜色素上皮付近,脈絡毛細血管板など,層別に見たい部位の血流を観察することができる.その一方,OCTAの弱点としては,蛍光眼底造影検査はwide.eldでの撮影が可能となり,周辺部までクリアに観察することが可能となってきたのに対し,OCTAは大きいサイズのもので9mm×9mmと撮影範囲が狭いことである.その他,トラッキング機能が向上したものの,あまり固視不良すぎる患者ではきれいな画像が得られないこと,白内障が強い,近視が強すぎるなどでOCT断層画像がはっきりと撮れなければ,アンギオグラフィーも判定困難となることがある.SD(spectraldomain)-OCTを使用したものよりは,SS(sweptsource)-OCTを使用したアンギオグラフィーのほうが,白内障や強度近視に特有の硝子体の軽度の濁りによる影響を受けにくい印象がある.強度近視眼の撮影については,機種により撮影可能な屈折範囲がさまざまであり,当院のように強度近視患者の多い施設においては,.30Dなどの屈折がよくあることなので,屈性範囲の広い機種が重宝される.その他に強度近視眼の撮影において特徴的なこととして,OCTがうまく撮影できたとしても,網膜の構造が正常からの逸脱の大きい眼では,機械が自動的に判定してくれる層別構造の判別がきちんと行われず,間違った層を解析してしまう場合がある.とくに強い網脈絡膜萎縮部位や,domeshapedmacularのような変形部位で,機械が間違ったラインで層構造を認識している場合があり,手動で補正が必要となる.手動で補正する際は,OCTのB-scan(断面像)において,血流を示す信号を重ね合わせて,自分の目的としている層にきちんと血流が存在しているか確認が必要(アーチファクトではないことの確認が必要)なので,B-scanの重ね合わせを必ず見る必要がある.近視性脈絡膜新生血管の検出におけるOCTAの有用*TomokaIshida&*KyokoOhno-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕石田友香:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(35)793性はMiyataら1)やQuerquesら2)がすでに報告している.強度近視眼においてOCTAが有用であると思われる状況は,①単純出血と近視性脈絡膜新生血管の判別,②点状脈絡膜内層症(punctateinnerchoroidopathy:PIC)における脈絡膜新生血管の検出がおもなものと思われる.さらに,強度近視眼の脈絡膜新生血管の治癒後の新生血管周囲の網脈絡膜萎縮が最終的な視力予後に大きくかかわる因子であることから,その成り立ちに筆者らは注目しているが,その萎縮性変化もOCTAでは早期にとらえることができる.本稿では,強度近視眼のOCTAの撮り方のコツと,典型的な所見について述べる.II強度近視眼におけるOCTAの撮り方のコツ強度近視に限らないが,顔の高さに無理があると位置がずれやすい.とくにSD-OCTのアンギオグラフィーは,一度フレームアウトしてしまうと,網膜レベルはよくても,それより深い層の層構造の認識に支障をきたす症例が多いため,顎台の高さが無理のないよう準備をすることはコツの一つと思う.また,強度近視眼の患者は,コンタクトレンズ使用者が多いため,ドライアイの人が多い.OCTAの撮影はOCT撮影の割には長い.トラッキングが付いていれば瞬きはしてもよいが,機種によっては,瞬きが入りすぎたり長すぎると,強度近視眼の正常からかけ離れた構造を認識できず層構造がおかしくなることが多い.そのため,筆者はベノキシール点眼をする.事前に説明として,撮影時間が長いので,瞬きは軽く,最小限にしてくださいと話しておくようにしている.また,SD-OCTの場合にはOCTのラインが患者に見えるので,上から(視野の下から)撮影していっているときはよいのに,真ん中から下に(視野では上に)ラインが移動するときに患者がつられて眼球を動かしやすい.トラッキングがあっても,大きく動くとあまりきれいに撮影できないため,ラインにつられないよう説明が必要である.とくに強度近視眼で後極に萎縮が多発しているような場合に,見える部分に急にラインが出てくるとそれを追いかけてしまう患者が多いように思う.また,強度近視眼においては,固視がむずかしい例も多いが,指標を大きくするなどの工夫で大きな萎縮がある人でも撮影が可能な場合も多い.また,強度近視眼では,後部ぶどう腫がある人が多く,後極のカーブが異常に急な場合もある.4.5mmや6mmでもフレームアウトしてしまったり,血流を読むラインの設定が端から端まで,一様に正確な位置を示すのがむずかしい場合が多い.そのうえ,近視性脈絡膜新生血管は小型な場合も多く,強度近視眼では,4.5mmや6mmでは新生血管を見落とすことがあるため,筆者はかならず4.5mmでスクリーニングし,3mmで確認している.強度近視眼の患者を撮影すると,初診の脈絡膜新生血管がまだ小さいうちはほぼ全員撮影可能である.治療後まもなくの瘢痕化している眼もわりとよく撮影可能であるが,大きな萎縮が出現してくると,撮影可能な人は機種にもよるが平均的には10人に1人くらいと思われる.撮影がきれいにできても,そのまま自動的に機械の作成してくれたOCTAのenface画像をうのみにしないほうがよい.OCTAは各層別にenface画像を作成してくれるが,層を機械が判定し,ラインをひいているため,網膜も脈絡膜も薄い強度近視眼では,層の判定が今一つで,新生血管がアーチファクトの中に埋もれてしまっている場合がある.よって,B-scanに血流を重ねた画像を必ず上から下まで動かして見ていき,新生血管らしき異常構造の中に血流が入っていることを確認する必要がある.アーチファクトの例を図1に示す.図1ではBruch膜レベルでのenface画像で,3カ所の血流部位があるようにみえるが,1カ所のみが真の脈絡膜新生血管であり,残りの2カ所はアーチファクトである.Bruch膜レベルのenface画像において,強度近視眼によくある強膜の凹凸部位(たとえばdomeshapedmacu-lar)や,網膜分離などによって網膜の構造のラインが追いにくい部分で,白いもやもやした構造物として現れるので,実際の血流の有無をB-scanにアンギオグラフィーを重ねたもので確認する必要がある.また,enface画像では新生血管は曲線で引いたような血管ラインがみえるので,ある程度判別が可能であるが,アーチファクトのように見えても,よく見ると瘢痕化した新生血管で内部に細い血流が多発している場合もある.そのような例は,大抵,網膜色素上皮が不整となっていて,まったくの正常ではない.そして,その網膜色素上皮の軽度の794あたらしい眼科Vol.34,No.6,2017(36)図1近視性脈絡膜新生血管のOCTAのアーチファクト例(70歳,女性.眼軸31.6mm)a:カラー眼底写真.瘢痕期の近視性脈絡膜新生血管にて出血などはみられず,脈絡膜新生血管は判別しにくい.b:OCT像.瘢痕化した脈絡膜新生血管がみられる().c:FA早期.脈絡膜新生血管の組織染が見られる().d~i:OCTAのBruch膜レベルでのenface画像,dとgでは脈絡膜新生血管部位にB-scanを合わせている.dのOCTAでは網目状の血流成分を示しており,gのB-scanでは脈絡膜新生血管の内部に赤で血流成分が示されている.eとfでは,OCTAのenface画像において,その下方にある白く描出されている部分は網目状にはみえない.hとiで示したそれぞれのB-scanにおいては,該当部位に脈絡膜新生血管の形状はなく,異常な血流信号もないことからアーチファクトと判断できる.図2活動期脈絡膜新生血管(68歳,女性.眼軸30.9mm)a:カラー眼底写真では出血がみられる.b:FA早期では脈絡膜新生血管の過蛍光がみられ,出血部位がブロックされている.c:FA後期では脈絡膜新生血管の漏出が確認できる.d:IA所見では特記事項なし.e:OCTでは脈絡膜新生血管とその周囲の網膜下液がみられる.f:bのFAの黄色い四角に一致するOCTA像.網目状の脈絡膜新生血管がみられる.g:fの脈絡膜新生血管のB-scanでは,脈絡膜新生血管内部に赤で血流成分が示されている.図3瘢痕期脈絡膜新生血管(57歳,男性.眼軸26.82mm)a:カラー眼底写真では瘢痕化した脈絡膜新生血管が黄白色病変としてみられる.b:OCTでは上皮化した脈絡膜新生血管が観察される.周囲に滲出はない.c:OCTAではいびつな形状の網目状の血管成分が観察される.d:cのB-scanでは脈絡膜新生血管内部に血流成分が示される.e:脈絡膜レベルでのOCTAでは脈絡膜新生血管周囲の毛細血管板は正常に保たれている.f:eのB-scan.図4瘢痕期から萎縮期への移行期(57歳,男性.眼軸28.9mm)a:カラー眼底写真では出血などなく,脈絡膜新生血管が瘢痕化しているのがわかる.鼻側に軽度の萎縮が広がりはじめている.b:OCTでは脈絡膜新生血管周囲に滲出はなく,周囲の網膜色素上皮がやや萎縮している.c:OCTA像.網目状の脈絡膜新生血管がみられる.e:B-scanでは,脈絡膜新生血管内部に赤で血流が示されている.d:OCTA像.脈絡膜レベルでは脈絡膜新生血管から離れた部分は毛細血管板がみられるが,脈絡膜新生血管の鼻側では毛細血管が脱落し,その下の脈絡膜血管がみられる.f:dのB-scanを示した.緑が脈絡膜レベルの血流成分.図5萎縮期(72歳,女性.眼軸28.2mm)a:カラー眼底写真では黄斑部に円形の網脈絡膜萎縮がみられる.b:眼底自発蛍光では,萎縮部位は低自発蛍光である.c:FAでは萎縮部位は低蛍光となり,その内部に過蛍光の脈絡膜新生血管成分がみられる.d:OCTでは萎縮部位に網膜外層の萎縮,網膜色素上皮の脱落,脈絡膜の萎縮がみられる.また,脈絡膜新生血管が塊状でみられる.e,f:OCTAとそのB-scanでは脈絡膜新生血管部位に血流がみられる.g,h:脈絡膜レベルでのOCTAとそのB-scanでは萎縮部位は脈絡膜の毛細血管が消失し,わずかに残存した脈絡膜血管が観察される.