新しい治療と検査シリーズ233.オクトパス600の有用性プレゼンテーション:津崎さつき池田陽子御池眼科池田クリニックコメント:松本長太近畿大学医学部眼科学教室.バックグラウンド2014年に発売されたHaag-Streit社の自動視野計オクトパス600(図1a)にはさまざまな特徴がある.視標提示用にTFT(thin.lmtransistor)モニター,光源にはLED(lightemittingdiode)を使用し,明室でも検査可能である.また,比較的小さなスペースで機器が設置できることもよい点である.本体内部に+3.25Dの老眼矯正用のレンズを搭載していることにより,年齢による補正や近見矯正は不要である.視標には従来のW/W(white/white)のほかに,パルサーとよばれるまったく新しい視標が搭載されている.新しい器機のため,まだ他の機種の検査との比較がわずかしかなく1,2),ハンフリーフィールドアナライザー(HFA)30-2SITA-stan-dardとの比較報告はない.また,緑内障の視野検査では,視野欠損が高度であれば,軽度であるより検査時間が長くなる.検査時間が長aくなれば,被験者の集中力の低下,就眠誘発を起こし,ときに不正確な応答を行ってしまう可能性がある.患者のなかには視野検査自体に嫌悪感を抱き,検査を拒否してしまう場合もある.パルサー視標を用いた静的視野測定は,被験者の視野検査中の理解認識度を高めることで,その嫌悪感を少しでも緩和し,楽にストレスなく視野検査が行える可能性がある..新しい検査法の原理パルサー視野測定とは,10Hzで反相点滅するコントラストの調整されたリング視標を呈示することで,コントラスト感度とフリッカー感度の両方を組み合わせた早期緑内障の検出に適した方法である.提示される視標は特徴的で反転する輪状であり,水面に落ちた雨粒が広がるような視標(図1b)となっている.これは早期緑内障の検出を目的に開発されたものであり,通常の視野検査では検出できない機能異常を検出することを期待されてb図1オクトパス600と視標の写真a:オクトパス600はコンパクトで設置しやすく,ドームがないので,被験者に与える圧迫感が少ない.b:視標は白黒で,大小の雨粒が水面に広がるような波紋状の動きがあり,被験者に見やすい視標となっている.(69)あたらしい眼科Vol.34,No.4,2017529オクトパス600パルサー視野HFA30-2SITA-standard視野図2オクトパス600とHFA30.2の視野検査の結果の比較(71歳,男性,落屑緑内障)HFA30-2のSITA-standard視野検査では暗点が多く,信頼性のある視野が測定できていないが,オクトパス600パルサー視野検査では信頼性が高く測定でき,実際の視野により近い視野が測定できていると考えられる.オクトパス600パルサー視野Humphrey視野に変換図3オクトパス600の視野をHumphrey視野に変換(46歳,女性,正常眼圧緑内障)この症例のオクトパス600パルサー視野をHumphrey視野に変換した.グレースケールもパターン偏差も,おおよそオクトパス600と同様の結果が得られている.いる.さらに,特徴のあるパルサー視標の提示は,被験者の視野検査中の理解度を高めると推測される..使用方法と症例提示オクトパス600はHFA30-2とは違って大きなドームがないため,圧迫感がない.標準装備として顎台が付いていない設計で,額をつけて中を望遠鏡のようにのぞいて検査を行う.図2はHFA30-2SITA-standardとオクトパス600パルサーの両方の視野を別日に行った結果であるが,HFA30-2ではうまく測定できず,オクトパス600ではうまく測定できている.また,オクトパス600は,HFAユーザーがオクトパス600の検査結果を理解しやすくするために,「HFAプリントアウト」といわれるHumphrey表示形式での印刷も可能となっている(図3).オクトパス600とハンフリーの機器の比較は表1に示した..本機器の良い点オクトパス600の良い点は,何よりもまず検査時間が短いことである.筆者らの施設で3カ月以内にHFA30-2とオクトパス600を使用した17例の結果では,平均の片眼の測定時間はHFA30-2SITA-standard視野がおよそ片眼8分に対し,オクトパス600パルサー視野は4分で,およそ半分の時間であった.HFAに慣530あたらしい眼科Vol.34,No.4,2017(70)表1オクトパス600(パルサー)とHumphrey視野計の仕様の違いオクトパス600(パルサー)HFA(SITA-Standard)視標呈示【方式】TFT画面呈示【方式】投影式【時間】500ms(@10HzFlicker)【時間】200ms視標色白色白色視標サイズ50.43°(ゴールドマンIII)実際の視標実際の視標は白丸背景輝度32cd/m2(100Asb)10cd/m2(31,5Asb)固視監視CMOS赤外線カメラHeijl-Krakau法・アイモニター・ゲイズトラック測定範囲中心視野30°中心視野30°矯正レンズ付属レンズあり(-8.00~+4.00dpt)検眼レンズをはめるレンズホルダーのみ設置ダイナミックレンジ0~35src(周波数とコントラストの融合)0~40dB(光の明暗)プログラムG2p,32p30-2,10-2ストラテジーTOPSITA-standard測定点59点30-2=76点,24-2=54点,10-2=68点測定時間(当院調べ)4分8分れている患者には驚くべき短さで,患者は楽に検査できたとコメントされることが多い.検査時間が短いために集中力が続き,視標も大きいために間違わずに測定しやすいものと考えられる.また,視標が光ではなく波紋状,輪状の大きな視標でとても見やすいと感じる患者が多い.76.5%の患者がHFA30-2よりオクトパス600の視標が見やすかったとした.オクトパス600は固視不良時は測定しないために固視不良がないことに加え,偽陰性,偽陽性もHFA30-2で行った場合の半分以下であり,信頼性の高い結果を得られやすいと考えられた.60%の患者がオクトパス600をより好むとした.次回測定時はHFAではなくオクトパス600にしてほしいと強く希望を伝える患者も少なからず存在する.顎台がないことに関しては63.7%の患者がなくてもいいかどちらでもいいと答えたので,とくに検査に支障はないものと考える.高齢になるにつれ,静的視野検査がうまく測定できなくなる患者が増加し,信頼性の指標についても悪化することが多い.そのなかでオクトパス600パルサー視野は,患者にとっても眼科医にとっても役立つ良い視野測定機器となると考える.文献1)GobelK,ErbC:SensitivitatundSpezi.tatderFlimmer-perimetriemitdemPulsar.Ophthalmologe110:141-145,20132)高橋夏実,佐藤司,松村一弘ほか:OCTPUS600視野計10-2とHumphrey視野計10-2の比較.あたらしい眼科26:27-31,2016.本稿に対するコメント.オクトパス600は,オクトパスシリーズのもっと面を用いる大きなメリットは,さまざまなパターンのも新しい視野計であり,オクトパスとしては初めて液視覚刺激を自由に作ることができる点であり,オクト晶画面を用いた視標刺激方法を採用している.液晶画パス600では時間変調感度と空間コントラスト感度(71)あたらしい眼科Vol.34,No.4,2017531.本稿に対するコメント.を組み合わせたパルサーとよばれる検査視標を採用している.Preperimetricglaucomaにおける異常検出感度は,従来の機能選択的視野検査に比べ決して高いわけではないが,検査視標の視認性がよく,練習効果の少ない安定した測定結果を得ることができる.検査時間は,各測定点に1回しか視標を提示しないten-dencyorientedperimetry(TOP)を採用しており,本論文でも示されるように非常に短くなっている.ただし,TOPはアルゴリズム上,局所の感度低下をとらえる際に暗点が浅く検出される傾向があるので,パルサーの結果を評価するうえでも理解しておく必要がある.液晶画面は従来の投影型視標に比べ高輝度を確保できないため,一般的な視野測定では,一部検査視標を大きくすることで代償している.また,液晶画面は機械的駆動部が存在しないため,従来機器に比べシンプルで耐久性の高い構造となっている.☆☆☆532あたらしい眼科Vol.34,No.4,2017(72)