新しい治療と検査シリーズ232.眼科手術用顕微鏡3Dシステムプレゼンテーション:北澤耕司京都府立医科大学視覚機能再生外科学バプテスト眼科クリニックコメント:志村雅彦東京医科大学八王子医療センター眼科バックグラウンド近年,3Dテレビ,3Dプリンター,3D映画など3Dは時代の最先端を示す一つのキーワードとして発展を遂げている.医療の現場においてもその波が押し寄せてきており,われわれは3D-CTや3D-MRI画像によって,より多くの情報を得ることが可能になった.Pubmedで“three-dimensional”で検索すると,1980年の“448件”から2015年には“14,446件”と右肩上がりにヒット数が増加している.眼科の分野でも,OCT画像で網膜や前眼部の3D画像を構築することが,診断や治療法の決定に有用であることはいうまでもない.そしてついに手術顕微鏡システムにも3D技術の時代が訪れようとしている.今回は,眼科手術用顕微鏡3Dシステムを使用する,いわゆるheads-upsurgeryについて解説する.?眼科手術用顕微鏡3Dシステムの原理物体が立体的に見えるのは,左右の眼から対象物を見たとき,角度の差で対象物の見え方が左右でわずかにずれているためである.また,輻湊も立体視において重要な要素で,注視点を網膜の中心になるように眼球の位置を調節することでより立体感が得られる.手術用モニター画面に視差をつけた2つの画像を映し出し,偏光メガネをかけることで3Dを構築すれば,奥行きを感じることができる.フルHD画像になり解像度が格段によくなったこと,処理時間が短くなりdelayがなくなったこと,モニターが大画面になり,より3D効果が向上したことが,眼科手術用顕微鏡への3D導入へとつながった.?使用方法通常の顕微鏡下手術では鏡筒をのぞいて術野を見るが,heads-upsurgeryでは顕微鏡ではなく,偏光メガネをかけてモニター画面を見ながら手術を行う.また,目の高さと画面の高さ,見る角度を合わせないときれいな立体画像を得ることができないため,モニター画面の配置調整が重要である.?本方法の良い点術者だけでなく,スタッフ全員が術者の感覚を体験することができるため,教育ツールとして有用である.また,heads-upで手術を行うことで,らくな姿勢で快適に手術ができるため,疲労が軽減することが予想される.実際,heads-upsurgeryは手術操作ミスが有意に少なくなるという報告もある1).筆者らはライカの顕微鏡にTrueVision社の3D画像システムを組み合わせたものでheads-upsurgeryを行い,筆者を含む複数の術者からのアンケート調査を行ったのでその一部を示す.硝子体手術では手術操作に多少違和感があるものの,もう一度使用したいと考えている術者が多く,おおむね満足していると考えられる.また眼の疲れがあるものの,肩や腰への疲労感は少ないと感じており,長時間の手術になる場合に有用である(図2).一方,白内障手術操作では,肩,眼,腰に疲れを感じる術者がいて,白内障手術のほうが慣れを要することが示唆された(図3).また,デジタル画像であるため,光量を減らしてもゲインを上げることで明るい画像を得ることができたり,色のコントラストを変えたりできるため,網膜への光障害を最小限にする手術が可能となるなど,将来性が高いと思われる.文献1)EckardtC,PauloEB:Heads-upsurgeryforvitreoretinalprocedures:Anexperimentalandclinicalstudy.Retina36:137-147,2016?本方法に対するコメント?技術革新と操作性は時に背反する.キーボード入力がマウスに代わり,さらに画面タッチに変わったように,硝子体手術も直像観察から広角観察,そして3Dモニター観察の時代がやってきた.この3Dモニターシステムのメリットは,患者にとっては観察光量の抑制による光障害防止,術者にとっては手術姿勢に自由度がもたらされたことである.とくに,今回の技術革新によって,観察系が術野から切り離されたことは大きい.今後,操作系すなわち手術器具の操作や反応をセンサー技術によって擬似化することができれば,遠隔手術も夢ではなくなるからである.本システムを経験する執刀医の多くは,従来の手術技術が高いほど,初めは操作性の違いにとまどうことになるだろう.しかし,将来的な方向性を考えると積極的な活用が推奨される.もっとも,人工知能が搭載されてフルオートで硝子体手術を行ってしまうような時代が来てしまったときには,術者の将来は明るいとはいえないのだけれど…….図1Heads?upSurgery顕微鏡には鏡筒がなく,モニター画面で術野を観察しながら手術を行う.(73)あたらしい眼科Vol.33,No.11,201616110910-1810/16/\100/頁/JCOPY図2硝子体手術での使用経験(4名)手術操作に多少違和感があるものの,どの術者もおおむね満足しており,疲労感も少ない.図3白内障手術での使用経験(6名)硝子体手術と異なり,術者間でのばらつきが大きく,白内障手術では慣れが必要である.3名は図2の硝子体術者.(74)(75)あたらしい眼科Vol.33,No.11,20161613