《第4回日本視野学会シンポジウム》あたらしい眼科33(9):1336?1338,2016cシンポジウム1:視覚障害者認定基準における視野評価視覚障害認定基準における諸問題(Goldmann視野計による判定を中心に)松本長太近畿大学医学部眼科学教室ProblemsofVisualFieldDisturbanceCriteriaintheActonWelfareofPhysicallyDisabledPersons(FocusingontheGoldmannPerimeterCriteria)ChotaMataumotoDepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicineはじめにわが国の視覚障害者認定における視野等級判定基準は,平成7年4月20日に身体障害者福祉法施行規則の一部が改定されて以来,現在まで20年間運用されている.前回の改定により5級(欠損が2分の1以上),4級(残存視野10°以内,損失率90%未満),3級(残存視野10°以内,損失率90%以上95%未満),2級(残存視野10°以内,損失率95%以上)と,10°以内の求心性視野狭窄を3段階に分類評価することで,視野障害単独で2級までの障害等級認定が可能となった1,2).しかし,実際の臨床現場では,判定基準の解釈の問題なども含め,その運用に関してはいくつかの混乱や問題点が指摘されているのも事実である3?5).ここでは,とくに現行のGoldmann視野計を用いた判定基準の問題点について整理してみたい.I求心性視野狭窄の偏心現行法では,I/4の視標で計測された視野が中心10°以内であった場合に,I/2の視標で視能率を算定し4級,3級,2級の判定を行う.しかし実際の症例では,I/4によるイソプタ面積は中心10°以内であるにもかかわらず,一部のイソプタが10°を超えているために5級判定になる症例が存在する(図1).このような症例は,実際にはI/4によるイソプタ面積そのものは中心10°内面積以内であり,障害の程度はほぼ同等と考えられる.これらの点を踏まえ,イソプタ面積が中心10°と同等あるいはそれ以下であれば,運用上15°までの偏心を認めている都道府県も存在する.II輪状暗点の定義現行法では,輪状暗点が存在する場合は,中心10°外にI/4イソプタが存在しても,輪状暗点の内側のI/4イソプタが10°以内であれば,中心10°内狭窄と考え視能率算定へ進むことが可能である(図2a).しかし,実際には輪状暗点に関してはその明確な定義が記載されていないため,判定者によって混乱が生じている.極端な場合では,輪状暗点が進行して周辺へ暗点が穿破した場合,単純に輪状暗点ではなくI/4の周辺の残余視野があるため5級判定としている場合もある(図2b).このような判定を行うと,従来2級であった症例が,病期の進行で輪状暗点が穿破した段階で5級へ等級が下がることになり非常に不合理な判定となる.少なくとも,中心のI/4イソプタが10°以内で周辺視野と連続性がない場合は,輪状暗点と同等の判定で評価を進めるのが妥当ではないかと考える(図2b,c).さらに,緑内障などでは中心部の残余視野が,周辺部にわずかにつながっている症例もしばしば認め,その判定に苦慮する場合が多い(図2d).これらの症例は,今後自動視野計による静的視野による判定基準を含めて,整合性を確保していく必要があると考える.III中心視野の消失(中心暗点)従来の評価基準では,基本的に中心暗点は視野障害からではなく,視力障害から等級判定を行っている.しかし,たとえば輪状暗点の症例などで,中心残存視野が非常に狭くなった場合,I/4で中心部のイソプタが測定できなくなり,10°を超える大きな中心暗点になる.ところがこの場合でも,わずかに残っている中心部残余視野で視力は保たれていることがある.このような症例の視野進行過程を連続的に見ていけば病期が進行していることは一目瞭然であるが,単に中心暗点ということで視力のみで視覚障害を評価すると,視野による障害が加算されず,逆に等級が低くなってしまうことになる(図3).中心暗点の場合,視力障害と視野障害の重複で等級が上がる症例も存在するが,やはりI/4の中心暗点が中心10°を超えている場合は,視野からも視能率判定を引き続き行うべきであると考える.一方,中心10°以内に存在する傍中心暗点に関しては,現行のGoldmann視野計による評価法ではとらえることができない.これに関しては今後自動視野計を用いた中心10°内の静的視野測定を導入する必要があると考える(図4).IV損失率算定で用いられる正常視野視覚障害者等級判定に用いられている正常視野は,視野の生理的限界を用いている.これは,Goldmann視野計の場合V/4に相当する(図5).しかし一方で,損失率を算定する際に用いている検査視標はI/2である.この損失率算定の際に1/2の結果をV/4視標の正常値で割ることの意味合いについては,損失率,視能率という用語も含め多くの議論がなされてきた.視野障害を2級,3級,4級に等級分類する場合,単純に視野角度の合計値を用いたほうが,内容は同等であるが,より明確ではないかとの意見もある.V5級判定で用いられる正常視野5級は,両眼による視野の2分の1以上が欠けているものとされている.この際の正常視野も損失率算定で用いたものと同じ生理的限界であるV/4視標による正常値が用いられている.一方,現行の運用では,周辺視野の測定にはI/4を用いることになっているため,高齢者になると正常であっても,I/4視標による両眼の視野の面積が生理的限界の50%以下になってしまうことがある.とくに70歳以上の健常者では面積を厳格に比較すると約60%が5級相当となることも指摘されている5).5級判定においては,I/4視標の結果のみならず,V/4なども含めた視野図を添付し,視野に明確な病的視野欠損が存在することを確認すべきであると考える.VI都道府県による異なる運用実態求心性視野狭窄の偏位,輪状暗点のところでも触れたが,現在の視覚障害認定は,都道府県レベルで判定され運用されるため,解釈の違いで同じ症例が違う等級に判定されてしまう場合が少なからず存在する.今後の判定基準の見直しにあたっては,誰が判定しても基本的に同じ等級になるように,できるだけ明確な判定基準,ならびにその具体的な運用マニュアルを整備する必要がある.さらに,現在一部の地域で行われている判定者に対する定期的な講習も有用であるあると考える.自動視野計による判定基準の導入も判定者による差をなくすために有用と考える.おわりに現在の身体障害者福祉法の視覚障害認定における諸問題についてGoldmann視野計を用いた判定方法の問題点を中心に述べてきた.今回は触れていないが,自動視野計による明確な判定基準の導入も今後の大きな課題となっている.今後は,これら現行法の運用で明らかになっている諸問題をより客観的に把握し,とくに同程度の障害を有するも現行法では認定基準の網目からこぼれ落ちている症例を確実に網羅し,さらに既存の認定者にも不利益のない,わが国の現状に即した改定案を,諸外国の動向も踏まえ,各分野の協力のもと整備していく必要があると考える.文献1)厚生省社会局厚生課編:身体障害者認定基準-解釈と運用改訂版,p32-76,中央法規出版,19902)身体障害者認定基準及び認定要領解釈と運用.新訂第二版,p105-150,中央法規出版,20103)日本学術会議臨床医学委員会:提言身体障害者との共生社会の構築を目指して:視覚・聴覚・運動器障害認定に関する諸問題.p10-12,20084)松本長太:身体障害認定基準における量的視野検査の基本的な考え方.日本の眼科84:1576-1582,20135)松本長太,萱澤朋泰,奥山幸子ほか:視覚障害者等級判定における視野障害による5級判定の問題点.日眼会誌118:958-962,2014図1求心性視野狭窄の偏心a:視能率算定へ進む症例.b:I/4のイソプタ面積は10°以内だが,一部わずかに偏位しているため5級にとどまる症例.〔別刷請求先〕松本長太:〒589-8511大阪狭山市大野東377-2近畿大学医学部眼科学教室Reprintrequests:ChotaMatsumoto,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KindaiUniversityFacultyofMedicine,377-2Ohnohigashi,Osakasayama-shi859-8511,JAPAN1336(94あ)たらしい眼科Vol.32,No.9,20150910-1810/16/\100/頁/JCOPY図2輪状暗点の定義a:輪状暗点があると中心残余視野に対し視能率算定が行われる.b:輪状暗点が穿破した場合,I/4で周辺に残余視野があるため5級と判定されてしまう場合がある.c:完全な輪状暗点ではないが,I/4による中心10°内の視野が周辺視野と連続性がないため,輪状暗点と同等に考えて視能率算定が行われてもよい.d:中心視野と,周辺視野にわずかに連続性があるため5級にとどまる.図3中心暗点病期の進行により輪状暗点内側の残余視野(a)がさらに狭くなりI/4で測定できなくなった場合(b).しかし現行では,中心暗点を評価しないため,わずかに残った中心部の残余視野により視力低下が進まなかったので,結果として等級が下がることになった.図4傍中心暗点現行のGoldmann視野計による手法では,傍中心暗点は評価できずa,bとも同じ等級となる.(95)あたらしい眼科Vol.32,No.9,20151337図5視覚障害認定で用いられる正常視野生理的限界を示し,Goldmann視野計ではV/4相当である.1338あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(96)