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眼科医のための先端医療 178.弱視治療の新たなアプローチ

2015年10月31日 土曜日

監修=坂本泰二◆シリーズ第178回◆眼科医のための先端医療山下英俊弱視治療の新たなアプローチ荒木俊介三木淳司(川崎医科大学眼科学1教室)前原吾朗(神奈川大学人間科学部)はじめに弱視は乳幼児期に生じる視機能障害のおもな原因です.機能弱視のおもな異常責任部位であると考えられている視覚皮質は可塑性を有しており,視覚のcriticalperiodにおいて適切な視性刺激を与えることが弱視の予防および治療に重要となります.ヒトの視覚皮質の可塑性は生後2カ月頃から急速に高まり,2歳頃にピークを迎えたあと,徐々に低下していくとされていることから,弱視の予防・治療はより早期から開始するべきだと考えられてきました.これまでの弱視治療臨床的によくみられる不同視弱視や斜視弱視は単眼性図1眼間抑制の定量に用いる両眼分離呈示刺激の例Signal刺激:すべての刺激が同じ方向に移動する.Noise刺激:各刺激がランダムに移動する.患者はSignal刺激の運動方向(右か左)を弁別する.a:両眼分離視下において,弱視眼/健眼それぞれに同等のコントラスト刺激を呈示したときは,健眼からの弱視眼に対する抑制が生じ,実際に知覚される像は健眼に呈示されたNoise刺激のみとなり,作業課題を遂行することはむずかしい.b:一方で,健眼に呈示する刺激のコントラストを徐々に下げていくことで,健眼に呈示されたNoise刺激と弱視眼に呈示されたSignal刺激が同時に知覚される(患者がSignal刺激の方向判別が可能となる)ポイントが出現する.このポイントが得られる健眼のコントラストレベルを抑制の程度とし,抑制の程度(弱視の程度)に応じた刺激コントラスト下で作業課題を行うことで,弱視眼に高コントラストSignal刺激弱視眼高コントラストNoise刺激健眼抑制知覚像(Noiseのみ)対する抑制を低減させる.aSignalの方向判別不能の弱視で,これらの弱視に対する治療は屈折異常矯正および遮閉法が主流となっており,ランダム化比較臨床試験においてもその有効性が証明されています1).ただし,治療開始時期2)や弱視の程度などによっては治療後も視機能障害が残存します.弱視における眼間抑制と弱視治療の新たなアプローチ(図1)一方で,これまでの治療法では回復が困難で,なおかつcriticalperiodを過ぎていると考えられる弱視に対しても,治療により視機能回復の可能性があることが報告されており3),その手法として眼間抑制に対するアプローチが注目されています.弱視眼では,健眼遮閉下で測定した視力に比べて両眼開放下で測定した視力が大幅に低下することがあり,これは両眼開放下において健眼から弱視眼に対して生じる抑制(眼間抑制)が原因とされています.この健眼から弱視眼への抑制を低減させることが弱視治療の新たなアプローチとなる可能性があります.近年,Hessらのグループは眼間抑制を定量する手法を開発し4),弱視における抑制の役割について検討しています.その結果,弱視の程度と抑制の深さが正の相関関係にあることを示しました5).そして,抑制が弱視眼高コントラストSignal刺激低コントラストNoise刺激弱視眼健眼抑制知覚像(Signal+Noise)bSignalの方向判別可能(67)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514390910-1810/15/\100/頁/JCOPY の視機能障害の原因として原発性に関与している可能性を支持し,眼間抑制を直接のターゲットとしたdichoptic条件下(両眼分離視下)における弱視治療法を提案しました.この治療法は,弱視眼に高コントラスト刺激,健眼に低コントラスト刺激をそれぞれ両眼分離呈示することで,各眼からの入力バランスを統一し,両眼からの視覚情報の統合を可能にしたうえで,ゲームなどの作業課題を施行させることにより眼間抑制を低減させることを目標としています.この手法を用いた成人の弱視を対象とした調査では,14例中13例で視力および立体視の改善がみられたとしています6).また,成人に限らず小児の弱視治療においても,iPadゲームを利用したこの治療法の有効性が報告されており,家庭訓練に対するコンプライアンスは59%で,遮閉法(44~58%)と同等であったとしています7).そして現在,この新たな弱視治療の有効性についてPediatricEyeDiseaseInvestigatorGroupによるランダム化比較臨床試験が行われています.おわりにこれまで治療が困難とされてきた弱視症例においても,新たな治療アプローチの登場により視機能回復の可能性が期待されます.従来の治療法との兼ねあいや治療開始時期について,今後の研究が注目されます.文献1)WallaceDK;PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup,EdwardsAR,CotterSAetal:Arandomizedtrialtoevaluate2hoursofdailypatchingforstrabismicandanisometropicamblyopiainchildren.Ophthalmology113:904912,20062)HolmesJM;PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup,LazarEL,MeliaBMetal:Effectofageonresponsetoamblyopiatreatmentinchildren.ArchOphthalmol129:1451-1457,20113)HessRF,MansouriB,ThompsonB:Anewbinocularapproachtothetreatmentofamblyopiainadultswellbeyondthecriticalperiodofvisualdevelopment.RestorNeurolNeurosci28:793-802,20104)BlackJM,ThompsonB,MaeharaGetal:Acompactclinicalinstrumentforquantifyingsuppression.OptomVisSc88:334-343,20115)LiJ,ThompsonB,LamCSetal:Theroleofsuppressioninamblyopia.InvestOphthalmolVisSci52:4169-4176,20116)HessRF,BabuRJ,ClavagnierSetal:TheiPodbinocularhome-basedtreatmentforamblyopiainadults:efficacyandcompliance.ClinExpOptom97:389-398,20147)BirchEE,LiSL,JostRMetal:BinoculariPadtreatmentforamblyopiainpreschoolchildren.JAAPOS19:6-11,2015■「弱視治療の新たなアプローチ」を読んで■今回は荒木俊介先生,三木淳司先生,前原吾朗先生くの情報を提供しています.そのため,視覚の専門家により新しく開発された弱視治療の紹介です.弱視はである眼科医には眼球の異常のみではなく,さらに高発達過程の小児の視力低下の原因として重大であり,次レベルの脳機能の障害による視覚障害はあると考え小児眼科医療の大きな問題です.難治性の弱視患者のられますが,診断がきわめて困難です.しかし,今回治療に新しい発想での治療法を開発されたことに,心の荒木先生たちの新しい治療法は,両眼からの視覚情から敬意を表します.弱視の異常の責任部位は視覚皮報の統合を促進するという方法論が効果があることを質であること,高次脳機能の障害が弱視になっている示しており,脳機能と視覚の関連を明らかにするアプこと,しかし視覚皮質は可塑性をもっていることを考ローチといえるかもしれません.察しておられます.さらに脳科学的なアプローチによ21世紀は脳科学の時代ともいわれます.われわれり,弱視のメカニズムを「眼間抑制」によることの考眼科医が視覚情報の入口のみでなく,脳機能にまで大察から,健眼と弱視眼に分離した刺激を提示することきく影響する視覚の情報処理の研究に大きな貢献をすで難治性の弱視を治療する方法を考えられ,実際の効る可能性を荒木先生たちの研究は見せてくださいまし果を認めておられます.た.今後の発展,成果が楽しみです.視覚は,いろいろな情報を統合する高次脳機能に多山形大学眼科山下英俊☆☆☆1440あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(68)

眼瞼・結膜:マイボーム腺炎と霰粒腫の類似点

2015年10月31日 土曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人9.マイボーム腺炎と霰粒腫の類似点鈴木智京都市立病院眼科霰粒腫は,マイボーム腺開口部が閉塞し,腺内にうっ滞したマイボーム腺分泌脂(meibum)に対して生じた肉芽反応の結果生じた脂肪肉芽腫(lipogranuloma)である.すなわち,局所に生じた閉塞性マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)に,炎症を伴った状態と考えることができる.●霰粒腫とは霰粒腫(chalazion)は,マイボーム腺における脂肪肉芽腫(lipogranuloma)である.19世紀には,その臨床所見については詳細に記述されていた.霰粒腫とマイボーム腺との関係について最初に述べたのはAddaria(1888年)であり,現在では,霰粒腫が基本的には「マイボーム腺分泌脂(meibum)のうっ滞によって生じる」という概念が広く受け入れられている1).典型的には,霰粒腫に関連したマイボーム腺の開口部は閉塞しており,meibumは分泌されない(図1).すなわち,まず,マイボーム腺開口部の閉塞が生じ,続いて,マイボーム腺の腺房およびその周囲の組織でうっ滞した脂質に対する肉芽反応(granulomatousreaction)が生じるのである2).その浸潤様式には,皮膚側へ浸潤する場合(図2)と結膜側へ浸潤する場合(図1)がある.典型例では,脂肪滴やマクロファージ由来の類上皮細胞,多核巨細胞の浸潤を中心に,リンパ球や形質細胞の浸潤を伴う慢性肉芽腫性炎症の組織像を呈する(図3).脂肪滴は,通常のパラフィン切片では脂質が溶出するため,空胞として観察される.●霰粒腫とMGDの関係MGDは,「さまざまな原因によって,マイボーム腺の機能がびまん性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う」と定義され,霰粒腫のような局所的なマイボーム腺異常はMGDには含まれないが3),霰粒腫を「局所的に生じている炎症性の閉塞性MGD」と捉えることが,マイボーム腺と眼表面(meibomianglandsandocularsurface:MOS)4)を考えるうえで重要である(図4).マイボーム腺に炎症を生じる原因としては,開口部が閉塞している状態で腺内の常在細菌であるPropionibacteriumacnes(嫌気性菌)が関与している可能性が推測される.ab図1典型的な霰粒腫a:霰粒腫の外観.下眼瞼の隆起と軽度の発赤を認める.b:霰粒腫に関連したマイボーム腺の開口部は閉塞している.本症例では結膜側への浸潤を認める.(65)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514370910-1810/15/\100/頁/JCOPY 図2眼瞼皮膚側へ浸潤した霰粒腫脂肪滴リンパ球多核巨細胞形質細胞x20図3霰粒腫の典型的なH&E染色像マイボーム腺機能不全(MGD)閉塞性MGD非炎症性炎症性ドライアイ(蒸発亢進型)MeibomianKeratoconjunctivitisマイボーム腺炎角結膜上皮症(酒.性角結膜炎)(角膜フリクテン)(眼瞼角結膜炎)マイボーム腺炎霰粒腫眼表面疾患低-高-分泌性MGD瘢痕性細菌P.acnes,StaphMeibomianglandsandOcularSurface図4マイボーム腺機能不全におけるマイボーム腺炎と霰粒腫の位置づけ(文献4から改変)文献3)NelsonJD,ShimazakiJ,Benitez-del-CastilloJMetal:1)Duke-ElderWS,MacFaulPA:Diseasesoftheeyelids.InTheinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunc-Systemofophthalmology(ed.byDuke-ElderWS),vol.tion:reportofthedefinitionandclassificationsubcommitXIII:Diseasesoftheoutereye,Part1:Theoculartee.InvestOphthalmolVisSci52:1930-1937,2011adnexa,p000-000,London,HKimpton,19744)SuzukiT,TeramukaiS,KinoshitaS:Meibomianglands2)BronAJ,BenjaminL,SnibsonGR:Meibomianglanddis-andocularsurfaceinflammation.OculSurf13:133-149,ease.Classificationandgradingoflidchanges.Eye(Lond)2015(Pt4):395-411,19911438あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(66)

抗VEGF治療:糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法-認可薬による治療戦略-

2015年10月31日 土曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二21.糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法平野隆雄村田敏規信州大学医学部眼科学教室―認可薬による治療戦略―糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は従来,局所光凝固,ステロイド局所投与などにより治療されてきたが,難治性の症例も見受けられる.わが国では昨年,抗VEGF薬のラニビズマブ,アフリベルセプトがDMEまで適応拡大され,抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)療法はDME治療の第一選択となりつつある.本稿ではDMEに対する抗VEGF療法について概説する.糖尿病黄斑浮腫(DME)は,糖尿病網膜症の全進行過程で発症する可能性があり,就労年齢層における社会的失明の原因として問題となっている.DMEの病態は非常に複雑で,血管透過性亢進・血管閉塞による血流障害・膠質浸透圧低下・後部硝子体膜の牽引などさまざまな要因が関与して起こる.なかでも,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の血管透過性亢進作用がDME発症に果たす役割の大きさは疑う余地がなく,近年の大規模臨床研究における抗VEGF薬の良好な治療効果もこのことを裏付けている1,2).従来,DMEは局所光凝固(毛細血管瘤直接凝固/grid凝固)やステロイド局所投与により治療が行われてきたが,実臨床の場では難治性の症例も散見される.わが国ではDME治療における抗VEGF薬としてベバシズマブ(アバスチンR)が適応外使用ながら用いられていたが,ラニビズマブ(ルセンティスR)・アフリベルセプト(アイリーアR)がそれぞれ平成26年2月,11月にDMEまで適応拡大されたことにより,DME治療における抗VEGF薬の選択肢は広がりつつある.具体的な投与方法として,ルセンティスRはまず0.5mg(0.05ml)を硝子体内投与し,その後は1カ月に1投与前図1ルセンティスR投与症例(65歳,女性)ルセンティスR投与前は中心窩を含むびまん性の糖尿病黄斑浮腫を認めた.投与1週後には浮腫の軽減を認め,1カ月後にも浮腫は抑制されている.中心窩領域網膜厚は投与前460μmから1週後387μm,1カ月後342μmと改善を認める.回視力などを測定し,その結果および患者の状態を考慮し投与する(いわゆる1+PRN投与).投与開始後は,視力が安定するまでは1カ月ごとに投与する方法が推奨されている.図1にルセンティスR投与症例を提示する.アイリーアRは2mg(0.05ml)を1カ月ごとに1回,連続5回導入期として硝子体内投与する.その後は通常2カ月ごとに1回,硝子体内投与する方法(いわゆる5+2q8投与)が推奨されている.図2にアイリーアR投与症例を提示する.なお,全身への影響も考慮し,ルセンティスR,アイリーアRともに投与間隔は1カ月以上あけることとなっている.同じ抗VEGF薬といっても,ラニビズマブがヒト化抗VEGF中和抗体FabフラグメントですべてのVEGF-Aのアイソフォームを阻害するのに対し,アフリベルセプトは組換え糖融合蛋白質でVEGF-Aに加えて胎盤成長因子やVEGF-Bにも結合するといった創薬デザインの違いがある.今後,どの時期にどの抗VEGF薬を選択するかは,それぞれの薬剤特性,患者背景などによって検討が必要となってくると思われる.2015年2月にDiabeticRetinopathyClinicalResearchNetworkからベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリ投与前投与1週後投与1カ月後(63)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514350910-1810/15/\100/頁/JCOPY 投与前投与前投与1週後投与1カ月後ベルセプトの中心窩を含むDMEに対する治療効果と安全性の比較について興味深い報告がなされた3).それによると,3剤ともに1+PRNで硝子体内投与が行われ,1年後,3剤すべてで治療効果を得られたが,治療開始時の視力によって治療効果に差がでる結果となった.治療開始時の視力が69~78文字と比較的良好な視力群では,ベバシズマブが7.5文字,ラニビズマブが8.3文字,アフリベルセプトが8.0文字の視力改善を認め,3剤間で視力の改善に有意差を認めなかったが,治療開始時の視力が69文字より悪い群では,ベバシズマブが11.8文字,ラニビズマブが14.2文字,アフリベルセプトが18.9文字の改善を認め,アフリベルセプトがベバシズマブ,ラニビズマブより有意に視力の改善を認めたと報告している.しかしながら,この報告ではラニビズマブの投与量が0.3mgとわが国で認可されている投与量(0.5mg)よりも少ないことや,投与方法が推奨されている方法と異なること,患者背景にやや差異を認めることなどの問題点があり,今後もさらなる検討が望まれるが,非常に示唆に富む結果となっている.症例でも提示したとおり,ルセンティスR,アイリーアRともに投与直後より迅速なDMEの改善を認めるが,抗VEGF療法はその効果が一時的であるために,頻回の硝子体内注射が必要となることによる眼内炎のリスク増大,経済的・社会的な患者側の負担増大,施行する医師側の負担増大などさまざまな問題が残る.これらの問題を解決すべく,抗VEGF療法における硝子体内注射の回数を減らす試みが最近になって報告されてきている.Lieglらは,ナビゲーションシステムを搭載することでより正確に網膜光凝固を行うことが可能となった網膜光凝固装置NavilasRを用いて,ラニビズマブ硝子体内注射に局所光凝固(毛細血管瘤直接凝固/grid凝固)を併施した.これにより,ラニビズマブ硝子体内注射単独治療と比較して,局所光凝固併用治療では硝子体内注射1436あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015図2アイリーアR投与症例(36歳,男性)アイリーアR投与前は中心窩を含むびまん性の糖尿病黄斑浮腫を認めた.投与1週後には浮腫の軽減を認め,1カ月後にも浮腫は抑制されている.中心窩領域網膜厚は投与前519μmから1週後293μm,1カ月後280μmと改善を認める.の回数が年間で6.9回から3.9回へと少なくなり,しかも同等の治療効果を得ることができたと報告している4).また,Takamuraらは,無灌流領域への網膜光凝固を徹底することにより,ベバシズマブ硝子体内注射の治療効果が延長されることを報告している5).抗VEGF薬の登場によりDME治療は大きな変革期を迎えている.今後,抗VEGF薬の選択肢が広がるなか,どの時期にどの抗VEGF薬を選択するか,それぞれの薬剤特性,患者背景などによって検討が必要となってくると思われる.抗VEGF薬はその良好な治療効果の反面,頻回の硝子体内注射により,患者・医師双方への負担増加や感染・全身合併症のリスク増大などの問題がある.上記のように網膜光凝固をはじめとした従来の治療を併用するなどの工夫を行い,抗VEGF薬硝子体内注射の回数を必要最低限に減らしながらも,その恩恵を最大限享受できるようなプロトコールの確立が待たれる.文献1)Schmidt-ErfurthU,LangGE,HolzFGetal:Three-yearoutcomesofindividualizedranibizumabtreatmentinpatientswithdiabeticmacularedema:theRESTOREextensionstudy.Ophthalmology121:1045-1053,20142)KorobelnikJF,DoDV,Schmidt-ErfurthUetal:Intravitrealafliberceptfordiabeticmacularedema.Ophthalmology121:2247-2254,20143)DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:Aflibercept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema.NEnglJMed372:1193-1203,20154)LieglR,LangerJ,SeidenstickerFetal:Comparativeevaluationofcombinednavigatedlaserphotocoagulationandintravitrealranibizumabinthetreatmentofdiabeticmacularedema.PLoSOne9:e113981,20145)TakamuraY,TomomatsuT,MatsumuraTetal:Theeffectofphotocoagulationinischemicareastopreventrecurrenceofdiabeticmacularedemaafterintravitrealbevacizumabinjection.InvestOphthalmolVisSci55:4741-4746,2014(64)

緑内障:緑内障とロービジョンケア-欧米と比較して-

2015年10月31日 土曜日

●連載184緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也184.緑内障とロービジョンケア加茂純子甲府共立病院眼科―欧米と比較して―視野の相補性や補完性のため,緑内障は自覚症状が出るのが遅い.FunctionalAcuityScoreで読書の,Func-tionalFieldScoreで移動に必要なケアの予測がつく.視野の欠損した部位にあるはずのないものが見えるCharlesBonnet症候群は精神科に行かなくてもよい.輪状暗点のある人では,ある程度までは自動車事故もない.オプトメトリスト(OD)がいない日本では,遮光眼鏡,拡大鏡,拡大読書器,携帯端末,偏心視訓練などは眼科医とORT,地域の眼鏡士が担い,就労継続のサポート,患者の会と心理ケア,位置情報と,どこへ行くか?などはソーシャルワーカー,作業療法士を欧米のように教育し,関与させる必要性を述べた.●はじめに開発途上国ではいまだ白内障が中途失明の首位であるが,日本における失明原因の第一位は緑内障であり,欧米では加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)や糖尿病網膜症(黄斑症)が首位に立つ.英国では視覚障害登録の際にICDコード(国際疾病分類)を用いて,予防できる失明に至る病気の発生率を,国として統計を取っているから信頼できる.視野中心が侵される疾患では,昨日までできた読書,運転,社交に突然困難が生じ,日常生活動作(activitiesofdailyliving:ADL)が下がり,メンタルにも影響が起きるために,欧米では日本より早期にロービジョンケアが進んだ.また退役軍人に手厚いために戦時負傷により両眼失った者,高齢に至ってAMDになった者に対してのリハビリテーションが,制度としても学問としても進んでいる.●視野の判定基準の違い人種的に日本人は緑内障が多いということもあるが,身障者の認定基準,とくに視野基準が求心性に特化され,比較的程度が軽い輪状暗点で比較的普通に生活できる人までも2級を取れる制度から,緑内障は障害が過大評価されているきらいがあることも一因である.●自分では気づきにくい英国では,緑内障でかなり視野障害が進行した人でも,そのインペアメント(機能の障害)に適応した人は視覚障害と認めないことになっている.一方で2親等以内に緑内障があれば,その人は無料でオプトメトリスト(doctorofoptometry:OD)に診断してもらえる.閉塞隅角緑内障の発作,あるいは血管新生緑内障などで数日のうちに視機能低下が起こるのとは違い,広義の開放隅角緑内障は比較的ゆっくりと進行すること,多くの緑内障は視野の相補性(視野欠損が生じても反対の目が情報を補う)や視野の補完性(視野欠損部があっても視中枢が欠損部周囲の情報から欠損部を補完する)のため自覚症状に乏しく,後期に至るまで気づかれにくい.●FunctionalAcuityScore(FAS)視機能については,国際分類であるFunctionalAcuityScore(FAS)を用いると,視力から読書に必要なケアの予測がつく.すなわち小数視力0.3~0.1(logMAR0.6~0.9)は拡大鏡,拡大読書器など用いれば読書速度はほぼ正常,0.1~0.05(logMAR1.0~1.3)は読書補助具を用いて普通よりゆっくり読むか,高倍率拡大鏡を用いる.0.04以下(logMAR1.4~1.7)は補助具を用いてどうにかこうにか読む.部分的に拡大鏡を用いるが,録音されたものを好むようになる.0.02未満(logMAR1.8以上)では視覚による読書はなくなり,音声に頼るようになる.●FunctionalFieldScore(FFS)一方,視野についてはFunctionalFieldScoreでおおよそのorientation&mobilityにつき見当がつく.すなわち片眼を喪失,または視野(GoldmannIII4/e)の半径50~40°では正常であるが,ときに驚くことがあり,多くの見渡し(スキャニング)が必要.上半分の喪失あるいは30~20°ではほぼ正常であるが,見渡しが必要.半盲または下半分の喪失,あるいは10~8°では視覚による動きは遅くなる.常に見渡しが必要になる.杖が補助として必要となるかもしれない.6~4°となると,長い杖(白杖)が物を探すのに必要となる.2°未満では視覚による定位確認は信頼できなくなり,白杖か音,盲導犬,または他の移動手段に頼るようになる.(61)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514330910-1810/15/\100/頁/JCOPY ●CharlesBonnet症候群欠損が大きくなると12~18カ月の間,CharlesBonnet症候群(視野の欠損した部位にあるはずのないものが見える.人,子ども,野生動物,花籠,石垣などの訴えがある)を発症することがある.幻視と間違って精神科に紹介することのないように知っておかなければいけない.●自動車の運転Peliらのアンケートを用いて,筆者もWOC2012アブダビで発表したが,中心視野に暗点が出ると本人も強く自覚し,運転に自信がもてなくなる.緑内障の輪状暗点のある人では,視野の相補や補完があるので,まだ運転できるし,ある程度までは事故もない.海外では数多くの研究があるが,視野欠損が大きくなると事故を起こす率が高くなることを,田辺,国松も述べている.英国の普通免許の欠格事項は,2014年の11月の改訂によると,Estermanテストで周辺視野は水平線上に3連続暗点,水平線と交わる垂直線上に1暗点があること,中心視野は中心半径20°以内に全部か一部4連続暗点,20°以内に3連続暗点+離れた1点,また,同名半盲や同名1/4盲での中心暗点で3連続暗点があるものとなった.職業免許の場合は,中心半径30°以内にいかなる暗点があっても欠格事項となる.●遮光眼鏡,拡大鏡,拡大読書器,偏心視訓練など視野が損なわれたときには,羞明を訴えるようになる.ここで遮光眼鏡が登場する.短波長をカットするもので,黄色,オレンジが主流であったが,最近は紫など目立たないものも出てきた.いよいよ中心視野が欠損すると,拡大鏡,拡大読書器,そして使える人はパソコン画面,最近では携帯端末の拡大機能を用いれば,楽に読めるようになる.中心視野が侵された場合,見やすい網膜位置を用いて偏心視すると見やすくなる場合もある.自然にも片眼ずつ習得するが,誘導するためにプリズムやマイクロペリメータを用いる方法がある.●就労継続復職できるというレポートも多い.近くに相談できる機関がない場合,「タートルの会」に相談するとよい.産業医の分野で村上は,早期から産業医が職場に出向き,環境を整えることで就労継続が可能になることを述べた.このとき前出のFASとFFSにより合成されるFunctionalVisionScore(FVS)が管理者に説明する際に役立つことを述べている.厚労省のウェブサイトで1434あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015も,眼科医や雇用者に向けて視覚障害者の雇用を継続するように呼びかける資料が掲載されている.●患者の会と心理ケアうつ状態になる人も多い.そのようなときに役に立つのが患者のネットワークである.緑内障フレンドネットワークがある.また,気賀沢らは,これらの患者に傾聴を勧めている.治療者は意義や説得をするのではなく,認知療法で患者の歪みを自ら語ることで,効果を奏することを述べている.激しい焦燥感,自殺念慮,顕著な不眠,急激な体重減少があれば,精神科へのコンサルトをすすめる.●位置情報と,どこへ行くか(orientation&mobility)歩行訓練士に適切に指導を受け,自分の中に地図があり,困ったときには助けを受けることができれば,見えなくとも動けるようになる.これには街のユニバーサルデザインも関与する.しかし,地方都市で公共交通が不便となれば,同行援護を使ったほうが便利である.甲府市の場合,2級以上ならば年間100時間は無料でサービスが提供される.日本人の恥の文化が白杖を持ちにくくする.乗り越える.白杖を使うとなると近所だけとなり,近所の手前,自分の眼が見えない,見えにくいことを伏せる人もいる.また,障害を長期にもってしまうと,鬱傾向になって閉じこもり,足腰弱くなり,なお出にくくなる人もいる.これには理学療法士による訪問リハビリを使う方法もある.中年以降,できるだけWHOの推奨する6千歩は体のために歩くことを患者に教育する.中途失明の方でもスポーツをしていることも知識として知らせるのも,一案である.ボランティアの存在も大きい.●おわりに日本にはODがいないので,近所の眼鏡屋さんと協力して眼科医が一翼を担わなくてはいけない.近所の薬局にロービジョンお助けグッズを置くのも一案である.歩行訓練士を1人1施設で雇うのは採算性の問題でむずかしい.すでに雇用されている理学療法士,作業療法士に身体のみならず,視覚障害にも配慮する教育をして,視覚リハビリに参加させていくのも一考である.その眼には,することはなくても,その人に対してできることはある.チームとして勉強し,地域の視覚リハビリ制度を構築していこう.「山梨県視覚障害を考える会」のホームページに筆者らの勉強の軌跡がアーカイブされている.(62)

屈折矯正手術:AMILEの合併症と対策

2015年10月31日 土曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載185大橋裕一坪田一男185.SMILEの合併症と対策中村友昭名古屋アイクリニックSMILEはフェムトセカンドレーザーによって角膜実質を光切断し,小さな切開創のみで屈折矯正を行うことができる最新の手術である.安全かつ安定した効果を得ることができ,レーシックに比べて術後の合併症も少ない.ラーニングカーブはあるが,若干の注意点を守り専用の器具を使用することにより,簡単,確実に手術を行うことができる.●はじめにReLEx(refractivelenticuleextraction)はCarlZeissMeditec社(以下,CZM社)が開発したフェムトセカンドレーザー(以下,FSレーザー)VisuMaxのみでレーシックを行う新技術である.フラップを作製したのち,角膜実質をエキシマレーザーによって蒸散させて切除するのではなく,FSレーザーによって光切断しレンチクルとして摘出することにより屈折矯正を行う.2010年,CZM社はこの技術をさらに発展させ,フラップを作らず,最小2mmの切開創からレンチクルを抜去して屈折矯正を行うSMILE(smallincisionfemtosecondlenticuleextraction)を開発した.SMILEはPRK(photorefractivekeratectomy)やレーシックと同様,手術手技の一般名称であるが,現時点ではCZM社のFSレーザーでのみ行える技術である1).●SMILEの得失について1.利点①FSレーザーのみでレーシックが行える(経済性).②エキシマレーザーに比べて温度・湿度など環境による影響を受けにくく,常に安定した矯正が行える(独自のノモグラム不要).③フラップを作らずに実質切除が行われるため,手術が短時間で終了する.④フラップに起因する合併症が皆無となる.⑤レーシックに比べ角膜の知覚神経が温存できることから,ドライアイになりにくい.⑥角膜のバイオメカニカルな強度が保たれるので,術後屈折が安定しており,強度な近視への対応も期待できる.⑦切除効率のばらつきがなく,狙い通りの三次元的形状で切除できるため,角膜のprolate形状を比較的保つことが可能となり,術後の収差に優位である.(59)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY⑧1μm単位の精度での切削が可能なことより,高精度なcustom矯正への発展が期待できる.2.欠点①視力回復がやや遅い.②現時点ではCZM社のFSレーザーでしか行えない.③追加矯正がややむずかしい.④遠視,老視への対応がない.⑤ウェーブフロントなどcustom照射ができない.⑥サイクロトーションへの対応がない.●SMILEの術式まず最深部であるレンチクル後面を切断する.その後,レンチクル前面を切断し,下方ないし側方に2.0~4.0mmのサイドカットを行う.レンチクルをスパーテルで分離したのち,鑷子にて除去する(図1).●合併症と対策通常はレーシックやReLExで角膜屈折矯正手術を修練したのち,SMILEを行う.ある程度のラーニングカーブがあるものの,最初から比較的安全に手術を行うFs-laser132レンチクル後面作製のための深い切開を行うレンチクル前面の切開を行うサイドカットを行う小さな切開創からレンチクルを取る図1SMILEの術式角膜実質をフェムトセカンドレーザーにより光切断をし,レンチクルとして切除することにより,屈折矯正を行う.あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151431 図2サクションロスレーザー照射終盤に写真右下より吸引固定がはずれ,レーザーが中断した.ことができる.最近では筆者が開発した専用器具を用いることにより,より簡便かつ確実に手術を行うことができるようになった.1.術中合併症a.サクションロス(図2)術中合併症の多くはサクションロスである.VisuMaxは専用のアタッチメントにより角膜周辺部で吸引固定し,レーザー照射時間は20数秒であるが,その間患者はブラックアウトせず,ある程度の固視が可能であるが,中盤から視界が白くなり緑の固視灯を見失うようである.とくに患者が過度に緊張している場合は,サクションがはずれやすい.その率は1~2%である.ただし,ラーニングカーブにより,そのリスクは1%未満になりうる2).手術前から患者をリラックスさせることとレーザー中の声かけは重要であるが,サクションロスを起こした際は,レーザー中盤までであれば,その日は中止する.中盤以降であれば,最初からレーザーをするか,途中から続行することにより,問題なく手術を完遂することができる.b.レンチクル分離不全顕微鏡下で,すでにレーザーにて切断されたレンチクルを専用のスパーテルにて分離するが,その断端を見つけることがむずかしい場合,スパーテルにて仮道を作ってしまい,さらに分離がむずかしくなる場合がある.抵抗がある場合は,速やかに別の断端を見つけるように心がけるようにする.筆者が考案した器具により,より簡便に断端を見つけることが可能になった.c.不完全レンチクル除去レンチクルは最薄部でも少なくとも15μm以上あり比較的強度があるため,除去中にちぎれて残存してしまうことはめったにないが,残存してしまった場合はスポット照明などで確認してしっかり分離することで除去可能である.それが困難な場合はフラップを作製して起こしたあとに,残存したレンチクルを確認して除去する.2.術後合併症SMILE特有の術後合併症はなく,ほぼレーシックの術後管理と同様でよいと思われる.a.層間炎症(diffuselamellarkeratitis:DLK)術後炎症は,レーシックに比較してきわめて少ない印1432あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015角膜周辺部に新たに切開創を作る図3CIRCLEの模式図レンチクルとして切断した周辺に新たに切開創を作り,SMILEのレーシック様のフラップを作切開創製する.CIRCLEのヒンジ象である.術後早期に層間に淡い混濁を認めることがあるが,原因はレーザーによる軽度の組織炎症か,.離時の組織に対する物理的な刺激によるものと考えられる3).最近ではレーザー設定値の適正化と専用器具による手術のスムーズ化により,これもあまり問題にはなっていない.筆者の施設では,ステロイド点眼は2週間で終了している.b.追加矯正術後の戻りが少なく,ほとんど追加矯正する必要がない.筆者はこれまで350眼のSMILEを行ったが,初期設定による低矯正に対し2例の追加を行っただけで,近視への戻りによる追加矯正は行っていない.一般に3~5%の追加率といわれるレーシックと比較し,非常に少ないと思われる.追加矯正が困難なことがSMILEの欠点であるが,PRKの他,最近ではCIRCLEというプログラムで,周辺を切開し,レーシック様のフラップを作製することにより簡便に追加矯正を行うことができるようになった(図3).●おわりにFSレーザーはレーシックに始まり,角膜移植術から白内障手術へと,多くの眼科手術に応用されるようになってきた.レーシックへの応用としてのReLEx,さらに進化したSMILEは,一定の技量をもった術者であれば安全に手術を行うことができる.結果も安定しており術後の合併症もとても少ない.究極の角膜屈折矯正手術として,切開創のほとんどない組織内切除が可能になる日が訪れることは,それほど遠くないことかもしれない.文献1)ShahR,ShahS,SenguptaS:Resultsofsmallincisionlenticuleextraction:all-in-onefemtosecondlaserrefractivesurgery.JCatractRefractSurg37:127-137,20112)WongC,ChanC,TanC:Incidenceandmanagementofsuctionlossinrefractivelenticuleextraction.JCataractRefractSurg40:2002-2010,20143)ZhaoJ,YaoP,LiMetal:Diffuselamellarkeratitisafterfemtosecondlaserrefractivelenticuleextraction.JCRSOnlineCaseReports1:e26-e32,2013(60)

眼内レンズ:経結膜眼内レンズ強膜内固定術

2015年10月31日 土曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋347.経結膜眼内レンズ強膜内固定術山根真横浜市立大学附属市民総合医療センター眼内レンズ強膜内固定術は眼内レンズ固定に縫合を必要としない手術方法である.しかし,一般的には切開した結膜を縫合する必要がある.ダブルニードルテクニックを用いて極小切開手術を行うことで経結膜手術が可能となり,文字通り完全無縫合な手術となる.無水晶体眼に対する眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入法として,近年IOL支持部を縫合することなく強膜内に固定するIOL強膜内固定術が発展している1~3).この術式は,IOL支持部を強膜トンネル内に留置することでIOLを固定するものだが,支持部の引き抜きかたや固定方法が報告によって異なる.多くの場合,25ゲージ(G)硝子体鑷子にてIOL支持部を眼外へ引き出すが,筆者は低侵襲化をめざして,注射針でIOL支持部を引き出す方法を選択している3).また,基本的に結膜を切開後にIOL支持部を強膜トンネルへ固定し,最後に結膜を縫合するのが一般的であるが,経結膜的に強膜トンネルを作製して結膜を切開しないという術式も報告されている4).筆者らも以前報告した術式を改良して,経結膜・眼内レンズ強膜内固定術を行っているので紹介する.手術はTenon.下麻酔か球後麻酔にて行う.25あるいは27ゲージ3ポートシステムで硝子体を切除後,必要に応じて脱臼水晶体やIOLの摘出を行う.続いて大光学径IOLをインジェクターにて虹彩上へ挿入する.この際,後方支持部は眼内へ挿入しない.角膜輪部から2mmの位置に,水平からやや下向きに30G肉薄針を刺入する(図1).角膜サイドポートから挿入した鑷子で,IOL前方支持部を30G針の内腔へ挿入する(図2).続いて180°対側に2本目の30G針を刺入し,IOL後方支持部を鑷子を用いて内腔へと挿入する(図3).2本の30G針とともにIOL支持部を結膜上へ引き出し,IOL支持部の先端を眼科用焼灼器で加工する(図4).IOL支持部先端が30G針ほどの太さになったところで強膜トンネル内まで押し込み,結膜下に支持部先端が出ていないことを確認する(図5).この手術のポイントは,30G針による強膜トンネル作製,30G針内腔へのIOL支持部挿入,IOL支持部先端加工の3点である.30G針の刺入位置と角度はIOLの固定状態に直結するため,対称に行う必要がある.IOL支持部の形状に合わせて水平から5~7°後極側に,角膜輪部に対しては平行から20°程度中心に向けて刺入するのが理想である.30G針へのIOL支持部挿入は,IOL挿入に用いる創口と先行支持部を挿入する針の刺入部位の位置関係が重要で,IOL形状により若干異なるが,90°(3時間)程度離すのがよい(図6).鑷子で眼内レンズ支持部を把持する位置は,先端から2mmほどのところがよい.長く持つとコントロールがむずかしく,短いと注射針内腔へ眼内レンズ支持部を入れられない.IOL先端の加工では,焼灼器は近づけるだけでIOL支持部に触れないことが重要である.直接焼灼器が触れてしまうと,IOL支持部が焼灼器に癒着して破損する可能図130ゲージ肉薄針の刺入通常の30ゲージ針より内腔の広い肉薄針を,眼内レンズ支持部形状に合わせて,結膜上から眼内へ刺入する.図2注射針への眼内レンズ前方支持部挿入鑷子で眼内レンズ支持部を把持して注射針内腔へ挿入する.針の先端を虹彩上にもってくることで作業しやすくなる.(57)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514290910-1810/15/\100/頁/JCOPY 図3注射針への眼内レンズ後方支持部挿入先行支持部を入れた30ゲージ(G)針は結膜上に置き,2本目の30G針で眼内レンズ光学部を押して後方支持部を眼内へ入れる.鑷子で支持部を把持して30G針へ挿入する.図5眼内レンズ支持部の固定鑷子を用いて強膜トンネル内へIOL支持部先端を押し込む.性があるので中止が必要である.本術式は非常にシンプルであり,手術時間の短縮や結膜の温存,小切開による出血や低眼圧の回避といったメリットがある.現在多くのIOL二次挿入法があるが,低侵襲にこだわる術者は,ぜひ本法にチャレンジしていただきたい.文献1)GaborSGB,PavlidisMM:Suturelessintrascleralposteriorchamberintraocularlensfixation.JCataractRefractSurg33:1851-1854,20072)AgarwalA,KumarDA,JacobSetal:Fibrineglue-assistedsuturelessposteriorchamberintraocularlens図4眼内レンズ支持部の加工眼科用焼灼器を近づけて眼内レンズ支持部先端を0.3mm程度の太さに加工する.図6創の位置関係眼内レンズを挿入する強角膜層と30ゲージ(G)針の刺入部位は90°程度離れているとよい.30G針(灰色矢印)と眼内レンズ支持部先端(青矢印)が一直線状になり挿入しやすい.implantationineyeswithdeficientposteriorcapsules.JCataractRefractSurg34:1433-1438,20083)YamaneS,InoueM,ArakawaAetal:Sutureless27-gaugeneedle-guidedintrascleralintraocularlensimplantationwithlamellarscleraldissection.Ophthalmology121:61-66,20144)TotanY,KaradagR:Trocar-assistedsuturelessintrascleralposteriorchamberfoldableintra-ocularlensfixation.Eye(Lond)26:788-891,2012

コンタクトレンズ:老眼

2015年10月31日 土曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方はじめの一歩監修/下村嘉一17.老視●はじめに加齢により調節力が低下したコンタクトレンズ(CL)装用者に対してCLを処方する場合,老視の自覚症状が出現している患者には,近方の見え方を補助するための対応が必要になる.また,老視年齢になって初めてCLを使用することを希望している患者には,最初から老視を考慮に入れた対応が必要になる.いずれの場合にもCLでの老視への対応の方法を知らなければ,遠方視と近方視の両立を考えるとCLの使用を止めさせ,遠近両用眼鏡などで対応する方法を取らざるを得なくなる.しかし本来,日常生活で眼鏡を使用しない生活を希望している患者へは,生活の質を変化させないために,可能な限りCLで対応する方法を選択すべきである.CLでの老視への対応法は,CLと眼鏡を併用する方法,CLの球面度数を中間距離に設定する方法,CLによるモノビジョン法,遠近両用CLを使用する方法の4つが考えられる(表1).本稿ではソフトコンタクトレンズ(SCL)を処方する場合を想定して,この4つの方法によるCL既装用者とCL未経験者に対するSCLでの老視への対応について概説する.●SCLと眼鏡の併用SCLと眼鏡を併用する方法には,遠方視用に球面度数を適正に設定したSCL装用上に近方視用に近用眼鏡を処方する方法と,近方視に不自由がないように球面度数を遠方適正度数よりもプラス側に設定したSCL装用上に遠方視用に遠用眼鏡を処方する方法の2つがある.患者の生活状況に応じて利便性が高いと思われる方法を選択する.どちらの方法も,遠近両用SCLの規格にある球面度数内で屈折を矯正しきれない強度屈折異常や中等度以上表1コンタクトレンズでの老視への対応法1.コンタクトレンズと眼鏡(近用または遠用)の併用2.コンタクトレンズの球面度数を中間距離に設定3.コンタクトレンズによるモノビジョン法(優位眼を遠用,非優位眼を近用に設定)4.遠近両用コンタクトレンズの使用塩谷浩しおや眼科の乱視眼では,見え方の質を維持できるため有用である.しかし,一般的な球面SCLで対応できる患者にとっては,眼鏡の併用は面倒で煩わしく不便であり,とくにSCL既装用者にとっては受け入れたくない方法だと思われる.●SCLの球面度数を中間距離に設定SCLの球面度数を中間距離に設定する方法は,調節力の不足分を補うために球面度数を遠方適正度数よりもプラス側に設定することで,近視では低矯正となり,遠視では過矯正となり,遠方の見え方がやや不良となることと引き換えに,日常生活にあまり不便のない近方の見え方が得られるようにする方法である.鮮明な遠方視や近方視を必要としない生活状況にある場合や,CL装用経験の長い高齢者がCL装用を継続している場合には,慣れに期間を要さず有用な方法である.しかし,遠方,近方とも見え方は不十分であり,初期老視での満足度は低い方法である.●SCLによるモノビジョン法SCLによるモノビジョン法には,モノビジョン法,モディファイド・モノビジョン法,モディファイド・モディファイド・モノビジョン法の3つの方法がある(表2).基本となるモノビジョン法は,両眼に単焦点SCLを使用し,通常は遠方視での優位眼(図1)の球面度数を遠方視用に適正に設定し,非優位眼の球面度数を近方表2モノビジョン法の種類種類優位眼非優位眼モノビジョン法単焦点CL(遠方適正矯正度数)単焦点CL(遠方適正度数+プラス球面度数)モディファイド・モノビジョン法単焦点CL(遠方適正矯正度数)遠近両用CL(遠方適正矯正度数)モディファイド・モディファイド・モノビジョン法遠近両用CL(遠方適正矯正度数)遠近両用CL(遠方適正度数+プラス球面度数)(55)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514270910-1810/15/\100/頁/JCOPY 1428あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(00)視に不自由がないように遠方適正度数よりもプラス側に設定して処方する方法である.モディファイド・モノビジョン法は単焦点SCLと遠近両用SCLを使用し,通常は優位眼に使用する単焦点SCL(トーリックSCLも含む)の球面度数を遠方視用に適正に設定し,非優位眼に遠近両用SCLを適正度数で処方する方法である.モディファイド・モディファイド・モノビジョン法は両眼に遠近両用SCLを使用し,通常は優位眼の球面度数を適正に設定し,非優位眼の球面度数は加入度数不足を補うために,より近方視に適するようにプラス側に設定して処方する方法である.これらのモノビジョン法では両眼視機能の保持のために,非優位眼の球面度数のプラス側への設定を+1.50D以内に抑える必要がある.順応できたCL装用者にとっては有用な方法である.しかし,適応の判断がむずかしく,適応となったとしても両眼視機能のある程度の低下には妥協が必要となる.●遠近両用SCLの使用遠近両用SCLの使用は,調節力の不足分を補うために近方視用に加入度数が設定された遠近両用SCLを両眼に処方する方法である.遠近両用SCLには1日交換SCL,頻回交換SCL,定期交換SCL,従来型SCLがある.現在入手可能な製品は,焦点の構造から二重焦点型と累進屈折力型,光学部のデザインから同心円型と非球面型,中心光学部から中心遠用型と中心近用型に分けられている(表3).遠近両用SCLは製品によって見え方に特徴があるため,適応となった患者の遠方と近方の見え方の重視度に応じて適当と考えられる製品を選択する必要がある.遠近両用SCLだけで対応がむずかしい場合には前述したモノビジョン法を応用する.処方が成功した患者では非常に有用な方法である.しかし,遠近両用SCLの光学的な特性から高加入度数では遠方視が不良になるため,残存する調節力に応じた適正な加入度数と球面度数の設定がむずかしく,処方成功率を上げるには習熟を要する.文献1)塩谷浩:各種バイフォーカルコンタクトレンズの選択.あたらしい眼科18:463-468,2001表3遠近両用コンタクトレンズの分類機能焦点光学部形状中心光学部種類交代視型二重焦点セグメント型※遠用HCL同心円型同時視型二重焦点同心円型遠用SCL近用回折型※近用累進屈折力非球面型遠用HCLSCL近用SCLHCL:ハードコンタクトレンズ,SCL:ソフトコンタクトレンズ.※現在は製品として入手できない.図1遠方視での優位眼の確認法(Hole.in.cardtest:のぞき穴法)a:両手で作った穴(またはカードに開けた穴)から両眼で目標を注視させる.b:遮蔽によって目標が見えなくなった側を優位眼と判定する.ab◎コンタクトレンズは高度管理医療機器です。眼科医による検査・処方をお願いします。特に異常を感じなくても定期検査は必ず受けるようにご指導ください。◎患者さんがコンタクトレンズを使用する前に、必ず添付文書をよく読み、取扱い方法を守り、正しく使用するようにご指導ください。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー〒101-0065東京都千代田区西神田3丁目5番2号販売名:ワンデーアキュビューモイスト/ワンデーアキュビューディファインモイスト承認番号:21600BZY00408000/22300BZX00126000[効能・効果:視力補正、虹彩又は瞳孔の外観(色、模様、形)を変えること]R登録商標cJ&JKK2015*:装用感には個人差があります。シリーズ1日中続く快適な装用感*をめざして。今年、ワンデーアキュビューRモイストRは発売10周年を迎えました。〈遠近両用〉〈近視・遠視用〉〈サークルレンズ〉〈乱視用〉ZS947ab表3遠近両用コンタクトレンズの分類機能焦点光学部形状中心光学部種類交代視型二重焦点セグメント型※遠用HCL同心円型二重焦点同心円型遠用近用SCL同時視型回折型※近用累進屈折力非球面型遠用近用HCLSCLSCL図1遠方視での優位眼の確認法(Hole.in.cardtest:のぞき穴法)a:両手で作った穴(またはカードに開けた穴)から両眼で目標を注視させる.b:遮蔽によって目標が見えなくなった側を優位眼と判定する.視に不自由がないように遠方適正度数よりもプラス側に設定して処方する方法である.モディファイド・モノビジョン法は単焦点SCLと遠近両用SCLを使用し,通常は優位眼に使用する単焦点SCL(トーリックSCLも含む)の球面度数を遠方視用に適正に設定し,非優位眼に遠近両用SCLを適正度数で処方する方法である.モディファイド・モディファイド・モノビジョン法は両眼に遠近両用SCLを使用し,通常は優位眼の球面度数を適正に設定し,非優位眼の球面度数は加入度数不足を補うために,より近方視に適するようにプラス側に設定して処方する方法である.これらのモノビジョン法では両眼視機能の保持のために,非優位眼の球面度数のプラス側への設定を+1.50D以内に抑える必要がある.順応できたCL装用者にとっては有用な方法である.しかし,適応の判断がむずかしく,適応となったとしても両眼視機能のある程度の低下には妥協が必要となる.●遠近両用SCLの使用遠近両用SCLの使用は,調節力の不足分を補うためHCL:ハードコンタクトレンズ,SCL:ソフトコンタクトレンズ.※現在は製品として入手できない.に近方視用に加入度数が設定された遠近両用SCLを両眼に処方する方法である.遠近両用SCLには1日交換SCL,頻回交換SCL,定期交換SCL,従来型SCLがある.現在入手可能な製品は,焦点の構造から二重焦点型と累進屈折力型,光学部のデザインから同心円型と非球面型,中心光学部から中心遠用型と中心近用型に分けられている(表3).遠近両用SCLは製品によって見え方に特徴があるため,適応となった患者の遠方と近方の見え方の重視度に応じて適当と考えられる製品を選択する必要がある.遠近両用SCLだけで対応がむずかしい場合には前述したモノビジョン法を応用する.処方が成功した患者では非常に有用な方法である.しかし,遠近両用SCLの光学的な特性から高加入度数では遠方視が不良になるため,残存する調節力に応じた適正な加入度数と球面度数の設定がむずかしく,処方成功率を上げるには習熟を要する.文献1)塩谷浩:各種バイフォーカルコンタクトレンズの選択.あたらしい眼科18:463-468,20011428◎コンタクトレンズは高度管理医療機器です。眼科医による検査・処方をお願いします。特に異常を感じなくても定期検査は必ず受けるようにご指導ください。◎患者さんがコンタクトレンズを使用する前に、必ず添付文書をよく読み、取扱い方法を守り、正しく使用するようにご指導ください。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー〒101-0065東京都千代田区西神田3丁目5番2号販売名:ワンデーアキュビューモイスト/ワンデーアキュビューディファインモイスト承認番号:21600BZY00408000/22300BZX00126000[効能・効果:視力補正、虹彩又は瞳孔の外観(色、模様、形)を変えること]R登録商標cJ&JKK2015*:装用感には個人差があります。シリーズ1日中続く快適な装用感*をめざして。今年、ワンデーアキュビューRモイストRは発売10周年を迎えました。〈遠近両用〉〈近視・遠視用〉〈サークルレンズ〉〈乱視用〉ZS947

写真:レーシック術後に角膜混濁の憎悪を認めた顆粒状角膜ジストロフィ

2015年10月31日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦377.レーシック術後に角膜混濁の増悪を北澤耕司京都府立医科大学視覚機能再生外科学認めた顆粒状角膜ジストロフィバプテスト眼科山崎クリニック図2図1のシェーマ①顆粒状角膜混濁②レーシックフラップ下の微細な混濁図1レーシック術後に顆粒状角膜ジストロフィの増悪を認めた症例(38歳,女性)レーシックフラップの範囲に一致した顆粒状の混濁を認める.右眼.図3図1のスリット写真混濁はフラップ直下に存在する.図4図1の症例の左眼右眼と同様に,フラップ下にびまん性の層間混濁を認める.(53)あたらしい眼科Vol.32,No.10,201514250910-1810/15/\100/頁/JCOPY 症例は38歳,女性.10歳代の頃から軽度の角膜混濁を指摘されており,祖母も同様の混濁を指摘されていた.2010年(33歳時)に近医眼科で両眼のレーシックを施行され経過良好であったが,術後2年ほどから両眼の霧視を自覚し,2014年12月に筆者の勤務するバプテスト眼科山崎クリニックを受診.初診時視力は右眼0.8(1.0×+1.25D:.1.0DAx180°),左眼0.8(1.2×+1.0D:.0.5DAx170°)であり,両眼のレーシックフラップ下に層間混濁を認めた(図1~4).顆粒状角膜ジストロフィII型(アベリノ角膜ジストロフィ)はTGFBI(transforminggrowthfactorbeta-inducedgene)遺伝子の124番塩基の置換(R124H)が原因とされている角膜ジストロフィである1).常染色体優性遺伝の形式をもち,わが国では顆粒状の角膜混濁の多くが本疾患である.角膜上皮下から実質へのヒアリン沈着によって混濁が生じ,それが角膜中央部に及ぶと視力低下を引き起こす.エキシマレーザー治療的角膜切除(phototherapeutickeratectomy:PTK)による混濁除去が視力改善に有効である.その一方で,レーシックを施行すると混濁の著明な悪化を認めることが報告されており,レーシック手術は不適応と考えられている2~4).今回の症例も同様で,顆粒状の角膜混濁をもつ患者にレーシックを行い,術後に角膜混濁の増悪を認めた.混濁はおもにフラップの層間に認めるため,フラップを再度liftupして,フラップ直下と角膜実質ベッドに治療的レーザー角膜切除を行い,混濁を除去する.この時にマイトマイシンCを塗布して混濁の再発を予防することが重要である.しかし,混濁が除去できても,角膜切除によるフラット化のため術後は遠視化する.そのため,本症例では,霧視の自覚症状が強いが,裸眼視力がそれなりに保たれているため,混濁除去は行わずに,現在経過観察中である.顆粒状角膜ジストロフィにレーシックを行うと,フラップ作製による創傷治癒反応によってTGFbの発現が亢進し,数年かけて異常TGFBI蛋白が集積する3,4).また,PTKと異なり,分泌型TGFbがフラップの層間にパックされることによるTGFbの局所濃縮がレーシック術後の増悪に関与しているのかもしれない.再発防止には,レーシック手術前にわずかな角膜混濁も見逃さないようにすること,また混濁を認めた場合は家族歴の問診が重要であると考える.文献1)MunierFL,KorvatskaE,DjemaiAetal:Kerato-epithelinmutationsinfour5q31-linkedcornealdystrophies.NatGenet15:247-251,19972)JunRM,TchahH,KimTIetal:AvellinocornealdystrophyafterLASIK.Ophthalmology111:463-468,20043)AwwadST,DiPascualeMA,HoganRNetal:Avellinocornealdystrophyworseningafterlaserinsitukeratomileusis:furtherclinicopathologicobservationsandproposedpathogenesis.AmJOphthalmol145:656-661,20084)AldaveAJ,SonmezB,ForstotSLetal:AclinicalandhistopathologicexaminationofacceleratedTGFBIpdepositionafterLASIKincombinedgranular-latticecornealdystrophy.AmJOphthalmol143:416-419,20071426

病的近視に起因する斜視の診断と治療

2015年10月31日 土曜日

特集●病的近視あたらしい眼科32(10):1419.1424,2015特集●病的近視あたらしい眼科32(10):1419.1424,2015病的近視に起因する斜視の診断と治療DiagnosisandTreatmentofStrabismusCausedbyPathologicMyopia横山連*はじめに固定内斜視(convergentstrabismusfixus)は,病的近視(pathologicmyopia)が原因で生じる特殊な斜視である.成人で発症し,圧倒的に女性に多い(90%).一般に眼軸長は最短で27mm,最長では35mmを超える.ただし,眼軸長と眼球運動制限の程度に相関はなく,眼軸が27mm程度でも固定内斜視になることがある.眼球が内下転位に固定され,自発的にせよ受動的にせよ,他のいずれの方向へも動かすことができない状態を固定内斜視とよぶが,これは病的近視に起因する斜視のもっとも進行した形態であり,そこに至るまでには程度の異なる種々の中間段階が存在することを忘れてはならない.中等度の症例では眼球はかろうじて正中まで外転可能であるが,上転と外転方向に明らかな機械的運動制限を示す.もっとも軽症のものは,軽度の機械的外転制限と内斜視を有するだけで,正中を超えて外転可能である.機械的外転制限のない場合は,一見すると共同性内斜視と区別のつきにくいことがある.さらにまた本症は外転障害と内斜視だけではなく,ほとんどの場合,上転障害と下斜視をも合併する.したがって筆者は,病的近視に起因する斜視全般をさす用語として,近視性斜視〔(highly)myopicstrabismus〕という名称を提案している.I発症機序の発見病的近視性斜視については,多くの研究者がその発症機序について推測してきたが,CTやMRIなどの画像診断技術がある程度進歩するまでは,意味のある結論を得ることは困難だった.筆者が文献上とくに重要と考えるのは,外直筋の下方偏位に着目した次の3つの研究である.太田ら1)は,水平断CT像を用いて,外直筋が内直筋より下方の平面に存在することを証明した.HerzauとIoannakis2)は,術中所見から外直筋の走行が斜め下方に向かっていることを発見した.Krzizokら3)は,冠状断MRIによって外直筋の下方偏位を証明した.これらの研究を踏まえて冠状断MRI画像を解析した結果,近視性斜視においては,外直筋が単独で下方偏位しているのではなく,眼球が上直筋と外直筋の間を抜けて筋円錐外に脱臼していることがわかった4).病的近視によって眼軸長が延長すると,筋円錐内に収まりきらない程眼球が大きくなる.眼球の下側には下斜筋があり,鼻上側には上斜筋があるため,眼球はこれらの方向には偏位しにくい.これに対して眼球の耳上側(上直筋と外直筋の間の部分)には外眼筋がなく,眼球が筋間膜に覆われているだけなので,ここから眼球の後半部が筋円錐外に脱臼する.この脱臼の結果,眼球後極が耳上側を向くため,眼球は内下転位をとる.脱臼した眼球は上直筋と外直筋に挟まれ,外直筋は下から,上直筋は鼻側から眼球を支えている.眼球が外転しようとすると上直筋に阻まれ,上転しようとすると外直筋が邪魔になる.これが近視性斜視の発症機序である.*TsuranuYokoyama:大阪市立総合医療センター小児医療センター小児眼科〔別刷請求先〕横山連:〒534-0021大阪府大阪市都島区本通2-13-22大阪市立総合医療センター小児医療センター小児眼科0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(47)1419 1420あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(48)ではプーリーが破壊されているため,大きな偏位が生じ得る.軽度の近視性斜視症例では興味深いことに固定内斜視とは違って,眼球脱臼の程度が眼位によって動的に変化することがある.図4はその1例で,眼位を変えて撮像した冠状断MRIである.上から順に右下向き,正面視,左下向きでの画像である.正面視(図4b)では,外直筋が眼球の中心よりやや下方に偏位しているだけだが,右下向き(図4a)では,左眼が上外直筋の間を抜けて耳上側に筋円錐外に脱臼し,左下向き(図4c)では右眼が同様の状態になっている.したがって斜視角が40Δ以下で眼球運動障害が軽い症例では,少なくともこのMRIで示したように,正面視・右下向き・左下向きの3方向で撮像しないと診断がつきにくく,共同性内斜視と見誤る可能性がある.眼球の筋円錐外への脱臼の程度を定量化するには,何らかの指標が必要である.図5は,上直筋・眼球・外直筋の断面の中心3点を結んだ直線が,耳側眼窩壁に対してなす角(脱臼角,dislocationangle)を測定する方法を示したものである.この角度は,眼球が筋円錐外に脱臼II画像診断の実際筋円錐外への眼球の脱臼をもっとも明確に検出できるのは,冠状断MRIである.ただし水平断MRIも眼球の形状を把握し,眼軸長を大まかに知るのに役立つ.図1は両眼近視性斜視症例の眼位写真である.右眼は典型的な固定内斜視で,内斜視と下斜視が併存しているが,左眼はわずかな外転制限を有する軽度ないし中等度の近視性斜視である.図2は同症例の水平断MRIで,両眼とも眼軸が長く,外直筋筋腹が下方に偏位しているため,内直筋と外直筋が同一スライス内に存在しない.筋腹のもっとも太い部分で比較すると,外直筋は内直筋より2スライス分(約6mm)下方に偏位している.図3は同じ症例の冠状断MRIで,上直筋と外直筋の間から眼球が耳上側に脱臼・偏位していることが明らかである.外直筋と下直筋は脱臼した眼球に押しのけられ,外直筋は下方に,上直筋は鼻側に偏位する.眼球脱臼の程度が強いときは,外直筋が眼球のほぼ真下にまで来ることもある.直筋はプーリーによって眼窩壁に固定されているため,通常は横方向には滑らないが,進行した固定内斜視abc図1両眼近視性斜視症例の眼位写真(症例1)32歳,女性.a:右向き,b:正面視,c:左向き.右眼は固定内斜視で,眼球は内下転位に固定されてほとんど動かない.左眼はわずかに外転制限があるが,正中を超えて外転可能である.ab図2水平断MRI(症例1)a:眼球の断面が最大になるスライスで,内直筋がはっきり描出されている.b:上より2スライス分(6mm)下方のスライスで,外直筋が描出されている.これらの2枚の画像から,この症例では内直筋と外直筋が同一平面になく,外直筋が内直筋より下方に偏位していることがわかる.abc図1両眼近視性斜視症例の眼位写真(症例1)32歳,女性.a:右向き,b:正面視,c:左向き.右眼は固定内斜視で,眼球は内下転位に固定されてほとんど動かない.左眼はわずかに外転制限があるが,正中を超えて外転可能である.ab図2水平断MRI(症例1)a:眼球の断面が最大になるスライスで,内直筋がはっきり描出されている.b:上より2スライス分(6mm)下方のスライスで,外直筋が描出されている.これらの2枚の画像から,この症例では内直筋と外直筋が同一平面になく,外直筋が内直筋より下方に偏位していることがわかる. あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151421(49)abc図4眼位を変えて記録した冠状断MRI(症例2)a:右下向き,b:正面視,c:左下向き.正面視では外直筋が眼球の中心より少し下方に偏位しているだけだが,眼球を内下転させると,眼球は上外直筋の間から筋円錐外に脱臼して耳上側に偏位している.正面視の画像だけを見たのでは,眼球脱臼がはっきりせず,診断を誤る可能性がある.図3冠状断MRI(症例1)眼球と筋円錐の位置関係を示すために,連続した3枚のスライスを並べる.スライス厚は3mmである.上直筋と外直筋の間から眼球の後半部が筋円錐外に脱臼しており,とくに右眼では内下転位に固定された眼球が両直筋の間に挟まれている.図5脱臼角の測定方法SR:上直筋,LR:外直筋,Globe:眼球.上直筋(S),眼球(G),外直筋(L)のそれぞれの面重心を求め,∠SGLが耳上側の眼窩壁に対してなす角度を脱臼角とする.この角度が大きいほど眼球の筋円錐外への脱臼は大きい.脱臼角が180°を超えるとき,眼球断面の半分以上が筋円錐外に出ていることになる.abc図4眼位を変えて記録した冠状断MRI(症例2)a:右下向き,b:正面視,c:左下向き.正面視では外直筋が眼球の中心より少し下方に偏位しているだけだが,眼球を内下転させると,眼球は上外直筋の間から筋円錐外に脱臼して耳上側に偏位している.正面視の画像だけを見たのでは,眼球脱臼がはっきりせず,診断を誤る可能性がある.図3冠状断MRI(症例1)眼球と筋円錐の位置関係を示すために,連続した3枚のスライスを並べる.スライス厚は3mmである.上直筋と外直筋の間から眼球の後半部が筋円錐外に脱臼しており,とくに右眼では内下転位に固定された眼球が両直筋の間に挟まれている.図5脱臼角の測定方法SR:上直筋,LR:外直筋,Globe:眼球.上直筋(S),眼球(G),外直筋(L)のそれぞれの面重心を求め,∠SGLが耳上側の眼窩壁に対してなす角度を脱臼角とする.この角度が大きいほど眼球の筋円錐外への脱臼は大きい.脱臼角が180°を超えるとき,眼球断面の半分以上が筋円錐外に出ていることになる. 1422あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(50)せて,筋円錐外に脱臼した眼球を整復することにある.図7aに示すように,まず上直筋と外直筋のそれぞれの付着部から15mm後方の筋腹に,通常の前後転と同様,筋縁から異なる距離で1本の糸を2回ずつ通糸する.このとき糸を結紮してはならない.結紮すると,筋腹の結合ができなくなるためである.各直筋に通糸する際,筋幅の少なくとも半分は糸をかけずに残す.糸の結紮による筋の虚血やうっ血を避けるためである.しかし,本手術でもっとも重要なポイントは,通糸を行う前に,各直筋を十分に周囲組織から分離することである.分離が不十分だと,糸を結紮したときに筋に無理な力がかかるため,直筋が縦に裂けたり,筋と腱の移行部で断裂したりすることがある.筋と周囲組織との分離が適切に行われていれば,2つの直筋を結合するのに強い力は必要ない.図7bは,糸の結紮が終了した状態を示す.糸を結紮する際には両直筋が完全に接触していることを確認しなければならない.もし直筋間に隙間があって,間に縫合糸が露出していると,長期的には糸が食い込んで強膜を損傷する可能性があるからである.図8は,以上の操作を写真で示している.手術前,眼球は内下転位をとっている(図8a).上直筋(図8b)と外直筋(図8c)をそれぞれ2本の斜視鉤で引き,筋腹に通糸してから糸を結紮すると(図8d)眼球が上外直筋の結合部に押されて,筋円錐内に整復される.糸を締めて行くと眼球は徐々に正面を向き始め,最後に斜視が消失する(図8e).図9は,上外直筋縫着前後のMRI冠状する程度をよく表しているので,疾患の重症度を示す指標として利用することができる.脱臼角は,最大外転角および最大上転角と負の相関があり,外転障害と上転障害が強いほど脱臼角が大きい.図6は,斜視のない病的近視眼と重症度の異なる近視性斜視眼の脱臼角を,MRI上で測定した結果である.対照群(斜視のない病的近視眼)と近視性斜視群の脱臼角を比較すると,対照群の脱臼角は105.2±8.4°なのに対し,斜視群では179.9±30.8°と大きく,両者の平均値の間には有意差がある.また,対照群と斜視群の眼軸長に有意差はない4).III手術治療の基本近視性斜視の治療には,上外直筋縫着術が第一適応となる.本手術の目的は,上直筋と外直筋の筋腹を接着さabc図6脱臼角の比較a:病的近視だが斜視のない正常対照,b:中等度の症例,c:固定斜視.脱臼角は,正常対照眼で115°,中等度の症例で180°,固定斜視眼で247°である.図7上外直筋縫着の模式図LR:外直筋,SR:上直筋,IO:下斜筋付着部.a:上直筋と外直筋の各付着部から15mm後方の筋腹に通糸したところ.b:通糸した糸を結紮したところ.LRSRIOababc図6脱臼角の比較a:病的近視だが斜視のない正常対照,b:中等度の症例,c:固定斜視.脱臼角は,正常対照眼で115°,中等度の症例で180°,固定斜視眼で247°である.図7上外直筋縫着の模式図LR:外直筋,SR:上直筋,IO:下斜筋付着部.a:上直筋と外直筋の各付着部から15mm後方の筋腹に通糸したところ.b:通糸した糸を結紮したところ.LRSRIOab あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151423(51)IV両眼症例の手術両眼性の近視性斜視に対して片眼だけの上外直筋縫着を行っても,斜視は完全には治癒しない.図1の症例は,両眼の上外直筋縫着を1回の手術で同時に行っているので,手術後数週間で図10のように眼位が改善した.しかし,両眼を別々に手術する場合は注意が必要である.両眼の近視性斜視に対して左右眼を別々に手術すると,内斜視の矯正が不十分なだけではなく,片眼手術後に術前にはなかった上下斜視が出現する.これは非手術眼の上転障害が残るためである.両眼手術が完了してはじめて上下斜視が消失し,水平眼位も矯正される.手術を2回に分けて行う場合,事前の説明で,2回目の手術が終了するまでは斜視は完治しないことを患者によく理解しておいてもらう必要がある.とくに片眼手術後に上下斜視による新たな複視が生じる可能性が大きいので,この点を強調する必要がある.V軽症例の手術近視性斜視には,斜視角が40Δ以下で機械的運動制限がほとんどない症例も存在する.軽症例だからといって通常の前後転あるいは内直筋後転を行っても斜視はほ断像である.術後は眼球の脱臼がなくなり,眼球が筋円錐内に戻っていることがわかる.最後の注意点として,上外直筋縫着には,通常の手術では起こらない局所解剖上の問題がある.眼球が内下転して,その後半部が耳上側に偏位しているため,通常は直筋に隠れて見えないはずの下斜筋と上斜筋の付着部と腱が露出している.直筋を周囲組織から分離するときに,誤ってこれらの腱を切除したり,直筋と一緒に斜筋に通糸したりすることがないよう注意が必要である.abcde図8上外直筋縫着の術中写真a:術前眼位,b:上直筋への通糸,c:外直筋への通糸,d:結紮,e:術後眼位.ab図9上外直筋縫着手術前後の冠状断MRIa:術前,b:術後.眼球の脱臼角は,この症例では術前206°が術後109°に改善し,眼球は筋円錐内に整復されている.abcde図8上外直筋縫着の術中写真a:術前眼位,b:上直筋への通糸,c:外直筋への通糸,d:結紮,e:術後眼位.ab図9上外直筋縫着手術前後の冠状断MRIa:術前,b:術後.眼球の脱臼角は,この症例では術前206°が術後109°に改善し,眼球は筋円錐内に整復されている. 1424あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(52)VI内直筋後転のタイミング筆者は上外直筋縫着と同時に内直筋後転を行うことはほとんどない.なぜなら術後に予期しない過矯正を生じて,始末に困る外斜視の進行に悩まされることになりかねないからである.ましてや上外直筋縫着前に7mmを超える大量内直筋後転を行うべきではない.上外直筋縫着直後にひっぱり試験が陽性であっても,術後数週間で眼位と眼球運動は改善されることが多いので,内直筋後転を行うのは少なくとも数カ月待つべきである.また,内直筋後転は,術後の引っ張り試験やMRI所見から,内直筋の拘縮が明らかな症例にのみ行うことが望ましい.万一術後のMRIで眼球脱臼が残存していたら,上外直筋縫着自体の再手術を検討するほうがよい.文献1)太田道孝,岩重博康,林孝雄ほか:固定内斜視の画像学的研究.日眼会誌99:980-985,19952)HerzauV,IoannakisK:ZurPathogenesederEso-undHypotropiebeihoherMyopie.KlinMonatsblAugenheilkd208:33-36,19963)KrzizokTH,KaufmannH,TraupeH:Elucidationofrestrictivemotilityinhighmyopiabymagneticresonanceimaging.ArchOphthalmol115:1019-1027,19974)YamaguchiM,YokoyamaT,ShirakiK:Surgicalproce-dureforcorrectingglobedislocationinhighlymyopicstrabismus.AmJOphthalmol149:341-346,2010とんど改善しない.例えいったん斜視角が減少したとしても,長期的にみると斜視角が再び増大する.したがって例え小斜視角であっても,眼球脱臼があれば上外直筋縫着を施行すべきであり,両眼性症例にはもちろん両眼同時手術を行う.術後に多少外斜視となっても,ほとんどの症例では斜位を保ち,網膜循環障害が軽度で視力がある程度良好に保たれていれば,立体視を獲得する例もある.abc図10術後眼位写真(症例1)a:右向き,b:正面視,c:左向き.図1で示した症例に,両眼上外直筋縫着を行った後の眼位写真である.内直筋後転は行っていない.正面視では数Δの右内斜視が残存しているが,右眼の眼球運動は大きく改善した.左眼の外転障害は,術前と比べてほとんど減少していないが,斜視の矯正には両眼手術が不可欠であったと考えるべきであろう.ab図10術後眼位写真(症例1)a:右向き,b:正面視,c:左向き.図1で示した症例に,両眼上外直筋縫着を行った後の眼位写真である.内直筋後転は行っていない.正面視では数Δの右内斜視が残存しているが,右眼の眼球運動は大きく改善した.左眼の外転障害は,術前と比べてほとんど減少していないが,斜視の矯正には両眼手術が不可欠であったと考えるべきであろう.とんど改善しない.例えいったん斜視角が減少したとしても,長期的にみると斜視角が再び増大する.したがって例え小斜視角であっても,眼球脱臼があれば上外直筋縫着を施行すべきであり,両眼性症例にはもちろん両眼同時手術を行う.術後に多少外斜視となっても,ほとんどの症例では斜位を保ち,網膜循環障害が軽度で視力がある程度良好に保たれていれば,立体視を獲得する例もある.VI内直筋後転のタイミング筆者は上外直筋縫着と同時に内直筋後転を行うことはほとんどない.なぜなら術後に予期しない過矯正を生じて,始末に困る外斜視の進行に悩まされることになりかねないからである.ましてや上外直筋縫着前に7mmを超える大量内直筋後転を行うべきではない.上外直筋縫着直後にひっぱり試験が陽性であっても,術後数週間で眼位と眼球運動は改善されることが多いので,内直筋後転を行うのは少なくとも数カ月待つべきである.また,内直筋後転は,術後の引っ張り試験やMRI所見から,内直筋の拘縮が明らかな症例にのみ行うことが望ましい.万一術後のMRIで眼球脱臼が残存していたら,上外直筋縫着自体の再手術を検討するほうがよい.文献1)太田道孝,岩重博康,林孝雄ほか:固定内斜視の画像学的研究.日眼会誌99:980-985,19952)HerzauV,IoannakisK:ZurPathogenesederEso-undHypotropiebeihoherMyopie.KlinMonatsblAugenheilkd208:33-36,19963)KrzizokTH,KaufmannH,TraupeH:Elucidationofrestrictivemotilityinhighmyopiabymagneticresonanceimaging.ArchOphthalmol115:1019-1027,19974)YamaguchiM,YokoyamaT,ShirakiK:Surgicalprocedureforcorrectingglobedislocationinhighlymyopicstrabismus.AmJOphthalmol149:341-346,20101424あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(52)

病的近視の緑内障

2015年10月31日 土曜日

特集●病的近視あたらしい眼科32(10):1409~1418,2015特集●病的近視あたらしい眼科32(10):1409~1418,2015病的近視の緑内障TheClinicalFeatureofOpen-AngleGlaucomawithPathologicMyopia新田耕治*I近視性視神経症でも視野障害出現の可能性あり近視眼では,若年期の眼軸長の延長に伴い視神経の乳頭の傾斜が生じ,さらに40歳ごろには後部ぶどう腫とよばれる眼球後部の一部分のみ拡張する変化が出現する.Curtinは後部ぶどう腫を10タイプに分類し,基本型であるI~Vと混合型のVI~Xがある1)(「後部ぶどう腫と網膜脈絡膜萎縮」の項,p.1391,図4参照).Hsiangらは,日本人では後極部を中心に後部ぶどう腫が出現するが,乳頭より鼻側には後部ぶどう腫が出現しないタイプIIがもっとも多く,さらに,50歳以降の症例ではtypeIXの後部ぶどう腫のタイプがもっとも多いことを報告した2).さらに,Ohno-Matsuiは,3DMRIで撮影した眼球の外観と眼底所見と組み合わせて,Curtin分類のtypeIをwide,macularstaphyloma,typeIIをnarrow,macularstaphyloma,typeIIIをperipapillarystaphyloma,typeIVをnasalstaphyloma,typeVをinferiorstaphylomaと後部ぶどう腫の形態を新たに分類した(図1).最近では,病的近視眼では黄斑部のみ前方へ突出したdome-shapedmaculaといわれる特殊な眼球後部形状や,intrachoroidalcavitation(ICC)という脈絡膜内のcavityが乳頭下方や黄斑部にみられることが報告されるようになり,強膜内のコラーゲン線維や弾性線維の変化によってさまざまな後部ぶどう腫の形態が存在する可能性があることがわかってきたので,この新分類ではCurtin分類のtypeVI~XはすべてtypeIに含めている.その結果,病的近視眼の50.5%で後部ぶどう腫が存在し,その74%がwide,macularstaphylomaで,14%がnarrow,macularstaphylomaであった3).眼球形態が変化することにより,さまざまな黄斑疾患や周辺部網膜病変が生じる.このような病態を病的近視とよび,病的近視の眼底所見には,後部ぶどう腫以外にBruch膜lacquercrack(ひび割れ),黄斑部出血,近視性牽引黄斑症,近視性網脈絡膜萎縮(chorioretinalatrophy:CRA),近視性コーヌス,格子状変性などがある.それぞれの特徴は成書にゆずるが,近視眼では,篩状板支持組織の脆弱化や視神経周囲の構造的変化による力学的不均衡が生じ,視神経乳頭の形態にも重大な影響を与えると考えられている.この形態変化によって,上述の病的近視眼の眼底所見を生じていなくても視野障害を生じることがある4).正常眼を対象にした筆者らの解析において,Humphrey視野の測定部位別に網膜感度と眼軸長の相関を調べると,全52部位のうち眼軸長が延長するにつれて網膜感度が有意に低下する部位をshortwave-lengthautomaticperimetryで25部位,standardautomaticperimetryで13部位に認めた5).非緑内障病的近視眼を10年以上観察すると,13.2%で視野異常が出現し,6割以上で視野障害が進行し,視野障害の進行に有意に関与する因子は唯一視神経乳頭耳側に出現したscleralcurvatureであったとの報告があ*KojiNitta:福井県済生会病院眼科〔別刷請求先〕新田耕治:〒918-8235福井県福井市和田中町舟橋7-1福井県済生会病院眼科0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(37)1409 TypeIwide,macularstaphylomaTypeIInarrow,macularstaphylomaTypeIIIperipapillarystaphylomaTypeIVnasalstaphylomaTypeVinferiorstaphyloma図13DMRIにより撮影された眼球外観と眼底所見を組み合わせた後部ぶどう腫の新分類TypeIはwide,macularタイプの後部ぶどう腫でもっとも高頻度.TypeIIはnarrow,macularタイプ,TypeIIIはperipapillaryタイプ,TypeIVはnasalタイプ,TypeVはinferiorタイプの後部ぶどう腫.(文献3から引用) 長眼軸長正常眼データーベース図2眼底に病的近視所見を合併している病的近視眼緑内障視神経乳頭はやや蒼白でHumphrey視野にて上方弓状感度低下および下方のMariotte盲点拡大,さらに下方の耳側固視点近傍を回避した視野障害を認めた. 正常眼データーベース長眼軸長正常眼データーベース図3非緑内障病的近視症例屈折は等価球面度数で右眼軸長は26.88mm.正常眼データベースで解析した黄斑部網膜内層解析では,黄斑上方に弓状に神経節細胞複合体(ganglioncellcomplex:GCC)の菲薄化領域を認め,緑内障性変化と紛らわしいが,長眼軸長正常眼データベースを活用して再解析すると,GCCの菲薄化領域を認めなかった. あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151413(41)障(primaryopen-angleglaucoma:POAG)眼における近視による影響を明確に解析するために,近視群を等価球面度数≦.6Dあるいは眼軸長≧26.0mmとし,非近視群を等価球面度数≧.1Dとし,この2群について検討した.対象として選択されたのは近視群が107例107眼,非近視群が120例120眼であった.初診時年齢は近視群が52.2±9.5歳で非近視群(62.4±10.2歳)視力が0.3以下に低下する症例は近視型乳頭で有意に高率とされている9).これは,長期的に近視を伴う緑内障症例を経過観察していくと,比較的早期から中心視野が障害される場合があることと関連している可能性がある.通常の緑内障の自然経過は,ブエルム領域や鼻側階段から視野障害が出現し,それらが拡大融合し,徐々に中心部にまで視野障害が及んでいくことが多い.そのような障害パターンでは中心視野にまで視野異常が及ぶには発症からかなりの時間が経過してからのことが多い.一方,強度近視眼緑内障は,Bruch膜lacquercracks(ひび割れ)・黄斑部出血・近視性牽引黄斑症・CRAなどの後極部病的近視病変を合併していない場合でも,その40%以上に初期から乳頭黄斑線維束欠損を認め,非近視眼緑内障と比較して有意に高率であるとの報告がある10).また,強度近視眼緑内障では篩状板部分欠損を高率に認め,篩状板部分欠損は,楕円率,傾斜率などの乳頭の形態を示すパラメータと関連し,その形成には,篩状板における眼軸の伸長に伴う視神経乳頭の水平方向へのストレスが関与しているとの報告や,篩状板部分欠損を認める症例に乳頭黄斑神経線維束欠損を呈する症例が多いとの報告がある11,12).これらのことが強度近視眼緑内障で早期から固視点近傍の中心視野障害に陥りやすい理由の一つであると考えられる.とくに強度近視眼緑内障は中心5°以内の下耳側に視野障害が多いと報告されており,強度近視眼緑内障の特徴の一つであると考えられる13).OCTなどで確認される構造的変化は,視野検査で判明する機能的変化に先がけて観察されることが多いので,乳頭黄斑線維束欠損を認める近視眼緑内障では,固視点近傍の視野が障害されやすいと考えて,機能的障害(視力障害や視野障害)が出現する前に管理を強化すべきである.また,中心視野障害の進行はqualityofvisionの低下に直結するので,初期から固視点近傍に暗点が出現する症例では,Humphrey視野で中心30-2でのみ経過観察するのではなく,中心10-2と30-2を交互に測定するようにすべきである.そうすれば中心視野障害の進行に迅速に対処できると思われる.V近視眼緑内障の長期臨床像筆者らは正常眼圧緑内障を含む広義原発開放隅角緑内豹紋状眼底にてNFLDの有無が不明ab図4近視眼緑内障の網膜神経線維層欠損カラー眼底写真にて乳頭出血を確認できるが,近視性豹紋状眼底のため網膜神経線維層欠損(NFLD)の存在や境界は明瞭に確認できない.青成分のみ(無赤緑色)抽出変換した白黒眼底写真では,2本の楔状NFLDを明瞭に確認できる(矢印).豹紋状眼底にてNFLDの有無が不明ab図4近視眼緑内障の網膜神経線維層欠損カラー眼底写真にて乳頭出血を確認できるが,近視性豹紋状眼底のため網膜神経線維層欠損(NFLD)の存在や境界は明瞭に確認できない.青成分のみ(無赤緑色)抽出変換した白黒眼底写真では,2本の楔状NFLDを明瞭に確認できる(矢印). 1414あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(42)図5乳頭黄斑神経線維束に沿って網膜神経線維層欠損が出現しやすい強度近視眼緑内障両眼の強度近視眼緑内障症例,屈折は等価球面度数で右眼は.7.25D.下方黄斑近傍の網膜神経線維層欠損(NFLD)は黄斑側に拡大し,乳頭黄斑神経線維束に沿って出現したNFLDと融合した.そのため,Humphrey視野10-2では,右眼は固視点近傍に早期から感度低下を認め,しかも4年間に増悪していることがわかる.2012.8.82015.7.302010.8.252014.9.242011.11.92013.5.232008.8.20厚みマップ(ILM-IPL/INL)厚みマップ(ILM-IPL/INL)図5乳頭黄斑神経線維束に沿って網膜神経線維層欠損が出現しやすい強度近視眼緑内障両眼の強度近視眼緑内障症例,屈折は等価球面度数で右眼は.7.25D.下方黄斑近傍の網膜神経線維層欠損(NFLD)は黄斑側に拡大し,乳頭黄斑神経線維束に沿って出現したNFLDと融合した.そのため,Humphrey視野10-2では,右眼は固視点近傍に早期から感度低下を認め,しかも4年間に増悪していることがわかる.2012.8.82015.7.302010.8.252014.9.242011.11.92013.5.232008.8.20厚みマップ(ILM-IPL/INL)厚みマップ(ILM-IPL/INL) あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151415(43)と比較して,近視群の初診時年齢は有意に若かった(p<0.0001).平均観察期間はそれぞれ10.6年,11.6年であった.屈折は非近視群が0.29±0.87D,近視群が.7.48±2.55Dで近視群は有意に近視であり(p<0.0001),眼軸長は非近視群が23.28±0.90mm,近視群が26.73±1.21mmで近視群は有意に長かった(p<0.0001).ベースライン眼圧は近視群が17.4±5.0mmHg,非近視群が16.6±5.6mmHgで有意差は認めなかった.観察期間中の平均眼圧は近視群が13.7±2.6mmHg,非近視群が12.8±2.3mmHgで非近視群は観察期間中の平均眼圧が有意に低値であったにもかかわらず(p=0.0058),眼圧の日々変動が非近視群では7.49±3.12mmHgと近視群(6.21±1.83mmHg)と比較して有意に変動が大きかった.視野進行速度を表すMDslopeは非近視群が.0.35±0.52dB/yearで,近視群(.0.18±0.29dB/year)と比較して有意に早かった(p=0.0021).Kaplan-Meier生命表解析を使用して累積視野進行確率を近視群と非近視群で比較したところ,非近視群(10年視野進行率:49.1±5.2%)で近視群(10年視野進行率:26.6±4.9%)と比べて視野障害の悪化を有意に高率に認めた(Log-rankp=0.0128).また,DHの出現回数は,非近視群が1.32±2.28回で,近視群(0.77±1.71回)と比較して有意に高頻度であった(p=0.0426).Kaplan-Meier生命表解析を用いてDHの累積出現確率を近視群と非近視群で比較したところ,非近視群(10年DH出現率:44.7±4.8%)では近視群(10年DH出現率:30.6±4.9%)と比べて有意にDHの出現を高率に認めた(Log-rankp=0.0453).これらの筆者らの検討から,近視眼緑内障を10年以上観察した場合にはDHの出現頻度が低く,視野障害の悪化率が低率である可能性が示唆された.VI近視性コーヌスと視神経乳頭周囲網脈絡膜萎縮の違い近視眼では視神経乳頭周囲網脈絡膜萎縮(parapapila-ryatrophy:PPA),いわゆる近視性コーヌスがとくに顕著であり,乳頭の傾斜の進行とともに,その面積は拡大することが知られている.近視眼緑内障でも同様に経過中にコーヌスが拡大する症例を認めることがある.自験例を呈示する.初診時年齢40歳,男性,視力:RV=0.06(1.2×.6.5D(cyl.1.5DA20°),LV=0.06(1.2×.5.75D(cyl.2.0DA175°),眼軸長:R=28.22mm,L=27.70mm.ベースライン眼圧:R=17.8mmHg,L=17.8mmHg.Humphrey静的視野のMD:R=.17.72dB,L=.12.78dB.両眼ともに点眼加療を施行し,MDslope:R=.0.16dB/y,L=.0.19dB/yと両眼ともに視野の進行速度は緩徐であるが,右眼の視神経乳頭周囲のコーヌスはとくに下方や鼻側で明らかに拡大している(図6).これは,近視性変化の一つとして眼球の傾斜などの形態が変化することにより視神経周囲構造の力学的不均衡が生じ,視神経乳頭の形態に影響を及ぼしていると考えられる.このような変化が視野障害の進行に関与するかは不明であり,今後のさらなる解析が待たれるところである.PPAに関する報告では,眼底所見などにより近視性コーヌスとPPAとを区別して論じることがあるが,混同されることも多い.Jonasらは,組織学的検討から両者を明確に鑑別できることを提唱した.すなわち,コーヌス部の網膜は網膜神経線維のみが残存し,その他の網膜各層は消失しており,網膜神経線維のすぐ外側に強膜が構成している萎縮であり,これをJonasはg-PPAと定義した.一方,網膜色素上皮以外の網膜各層が残存しているPPAをb-PPAとし,これにより両者は区別できるとしている(図7)14,15).SSADA(splitspectrumamplitudedecorrelationangiography)の原理を用いて眼底内の静止している部分(組織)と動きのある部分(血流)を判別し,網膜血管内の血流の様子を画像化した新しいOCTアンギオグラフィでは,蛍光眼底造影を用いなくても乳頭表面~篩状板における毛細血管網を定性的に評価できるようになったのでPPAの形状を血管密度の定性的に解析できる可能性がある.網膜の深層毛細血管網は内網状層および外網状層に分布しているといわれているので(図8),非緑内障近視眼でg-PPAを有する場合には,網膜神経線維層以外の網膜各層が脱落しているので,OCTアンギオグラフィのとくに脈絡膜モードでは毛細血管密度の低下が推察される.病的近視眼緑内障で確認してみると,図9の症例の眼底写真やOCTにて視神経乳頭周囲の構造を解析すると右眼は 1416あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(44)b-PPA+g-PPAと思われ,OCTアンギオグラフィでは乳頭耳側の毛細血管網は十分に残存しているものの,g-PPAが主体と思われる左眼ではOCTアンギオグラフィにて乳頭耳側の毛細血管密度がかなり疎であることがうかがえる(図9).これがg-PPAが主体のいわゆるコーヌスによる近視性変化に起因するのか,篩状板での毛細血管網の脱落による緑内障性変化に起因するかは症例を重ねて検証していきたい.VII近視性視神経症と緑内障性視神経症のオーバーラップ(MON.GON仮説)近視眼緑内障は,近視特有の傾斜などで生じる構造的変化によりもたらされる視神経障害(近視性視神経症)と眼圧などの応力によって生じる篩状板の脆弱性による視神経障害(緑内障性視神経症)の両者がオーバーラップした病態と考えられ,近視性視神経症はDHの出現頻度は少なく,視神経症の進行速度が遅いのに対し,緑内障性視神経症はDHの出現頻度は多く,視神経症の進行速度が速いと考えられる.近視眼緑内障の発症や進行のメカニズムには,それぞれの占める割合によって視神経図7PPA分類Jonasらは,PPAを網膜各層のうち網膜色素上皮のみが欠落しBruch膜は存在する萎縮をb-PPA,網膜神経線維のみが残存し,その他の網膜各層やBruch膜が欠損して網膜神経線維のすぐ外側に強膜が構成している萎縮をg-PPAと定義した.βPPA.PPA図6コーヌスが拡大した近視眼緑内障右眼の視神経乳頭周囲のコーヌスはとくに下方や鼻側で明らかに拡大している.2005/9/222014/12/112014.7.22005.4.23図7PPA分類Jonasらは,PPAを網膜各層のうち網膜色素上皮のみが欠落しBruch膜は存在する萎縮をb-PPA,網膜神経線維のみが残存し,その他の網膜各層やBruch膜が欠損して網膜神経線維のすぐ外側に強膜が構成している萎縮をg-PPAと定義した.βPPA.PPA図6コーヌスが拡大した近視眼緑内障右眼の視神経乳頭周囲のコーヌスはとくに下方や鼻側で明らかに拡大している.2005/9/222014/12/112014.7.22005.4.23 あたらしい眼科Vol.32,No.10,20151417(45)深層毛細血管網細動脈細静脈神経線維層神経節細胞層内網状層内顆粒層外網状層外顆粒層視細胞層網膜色素上皮層脈絡膜毛細血管板図8網膜における深層毛細血管網網膜10層のうち,深層毛細血管網は内網状層および外網状層に分布しているといわれている.3.00×3.00ScanSize(mm)3.00×3.00ScanSize(mm)Angio/OCT-Choroid/DiscAngio/OCT-Choroid/Disc図9病的近視眼緑内障のOCTアンギオグラフィ54歳,男性.病的近視眼緑内障.等価球面度数は右眼.8.25,左眼.9.25D,眼軸長は右眼26.61mm,左眼27.28mm.眼底写真やOCTにて視神経乳頭周囲の構造を解析すると右眼は網膜神経線維層以外に網膜各層が残存しb+g-PPAと思われ,OCTアンギオグラフィでは乳頭耳側の毛細血管網は十分に残存しているものの,g-PPAが主体と思われる左眼では乳頭耳側の毛細血管密度がかなり疎である.深層毛細血管網細動脈細静脈神経線維層神経節細胞層内網状層内顆粒層外網状層外顆粒層視細胞層網膜色素上皮層脈絡膜毛細血管板図8網膜における深層毛細血管網網膜10層のうち,深層毛細血管網は内網状層および外網状層に分布しているといわれている.3.00×3.00ScanSize(mm)3.00×3.00ScanSize(mm)Angio/OCT-Choroid/DiscAngio/OCT-Choroid/Disc図9病的近視眼緑内障のOCTアンギオグラフィ54歳,男性.病的近視眼緑内障.等価球面度数は右眼.8.25,左眼.9.25D,眼軸長は右眼26.61mm,左眼27.28mm.眼底写真やOCTにて視神経乳頭周囲の構造を解析すると右眼は網膜神経線維層以外に網膜各層が残存しb+g-PPAと思われ,OCTアンギオグラフィでは乳頭耳側の毛細血管網は十分に残存しているものの,g-PPAが主体と思われる左眼では乳頭耳側の毛細血管密度がかなり疎である. GONMON速<視神経症の進行速度>遅緑内障性視神経症近視性視神経症近視眼緑内障緑内障性変化が強い近視性変化が強い眼圧などの応力によって生じる篩状板の脆弱性による視神経障害近視特有の傾斜などで生じる構造的変化による視神経障害βPPA.PPA多い<乳頭出血の頻度>少ない図10近視眼緑内障のMON.GON仮説近視眼緑内障は,近視特有の傾斜などで生じる構造的変化によりもたらされる視神経障害(近視性視神経症)と眼圧などの応力によって生じる篩状板の脆弱性による視神経障害(緑内障性視神経症)の両者がオーバーラップした病態と考えられる.障害の臨床的特徴が異なるのではないかと考えている(近視眼緑内障のMON/GON仮説)(図10).近視眼緑内障は,近視特有の傾斜などで生じる構造的変化によりもたらされる視神経障害(近視性視神経症)と,眼圧などの応力によって生じる篩状板の脆弱性による視神経障害(緑内障性視神経症)の両者がオーバーラップした病態と考えられる.いずれにしても,病的近視眼緑内障を管理するに際しては,単に視神経乳頭の陥凹の程度やNFLDを確認するための眼底写真の活用のみならず,OCTなどの補助的診断,視野障害のパターンなどを総合的に活用した診療が要求されると考える.文献1)CurtinBJ:Theposteriorstaphylomaofpathologicmyopia.TransAmOphthalmolSoc75:67-86,19772)HsiangHW,Ohno-MatsuiK,ShimadaNetal:Clinicalcharacteristicsofposteriorstaphlomaineyeswithpathologicmyopia.AmJOphthalmol146:102-110,20083)Ohno-MatsuiKyoko:Proposedclassificationofposteriorstaphylomasbasedonanalysesofeyeshapebythree-dimensionalmagneticresonanceimagingandwide-fieldfundusimaging.Ophthalmology121:1798-1809,20144)RudnickaAR,EdgarDF:Automatedstaticperimetryinmyopeswithperipapillarycrescents-PartI.OphthalmicPhysiolOpt15:409-412,19955)新田耕治,齋藤友護,杉山和久:乳頭周囲網脈絡膜萎縮の静的視野に及ぼす影響─眼軸長との関係─.日眼会誌110:257-262,20066)Ohno-MatsuiK,ShimadaN,YasuzumiKetal:Longtermdevelopmentofsignificantvisualfielddefectsinhighlymyopiceyes.AmJOphthalmol152:256-265,20117)JonasJB,BerenshteinE,HolbachL:Laminacribrosathicknessandspatialrelationshipsbetweenintraocularspaceandcerebrospinalfluidspaceinhighlymyopiceyes.InvestOphthalmolVisSci45:2660-2665,20048)KangSH,HongSW,ImSKetal:EffectofmyopiaonthethicknessoftheretinalnervefiberlayermeasuredbyCirrusHDopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci51:4075-4083,20109)NakazawaT,FuseN,OmodakaKetal:Differenttypesofopticdiscshapeinpatientswithadvancedopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmol54:291-295,201010)KimuraY,HangaiM,MorookaSetal:Retinalnervefiberlayerdefectsinhighlymyopiceyeswithearlyglaucoma.InvestOphthalmolVisSci53:6472-6478,201211)NakanoN,NukadaM,IkedaHOetal:Retinalnervefiberlayerdefectsinhighlymyopiceyeswithearlyglaucoma.InvestOphthalmolVisSci53:6472-6478,201212)KimuraY,AkagiT,HangaiMetal:Laminacribrosadefectsandopticdiscmorphologyinprimaryopenangleglaucomawithhighmyopis.PLoSOne9:e115313,201413)AraieM,AraiM,KosekiNetal:Influenceofmyopicrefractiononvisualfielddefectsinnormaltensionandprimaryopenangleglaucoma.JpnJOphthalmol39:60-64,199514)JonasJB,JonasSB,JonasRAetal:Parapapillaryatrophy:histologicalgammazoneanddeltazone.PloSOne7:e47237,201215)JonasJB,NguyenXN,GusekGCetal:Parapapillarychorioretinalatrophyinnormalandglaucomaeyes.I.Morphometricdata.InvestOphthalmolVisSci30:908-918,19891418あたらしい眼科Vol.32,No.10,2015(46)