屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載184大橋裕一坪田一男184.ICLのサイズ選択五十嵐章史北里大学医学部眼科学教室ICLは現在もっとも安全で有効な屈折矯正手術のひとつであるが,そのレンズサイズの決定に際しては種々の前眼部解析装置の特性を理解する必要がある.近年認可されたHoleICLは房水循環が改善されているため,従来レンズと比べ,適正なサイズに対する考え方が異なる可能性がある.●はじめに後房型有水晶体眼内レンズの代表であるICL(ImplantableCollamerLens,STAAR社)は,安全性が高く有効で長期的に屈折も安定している1)ため,世界的に手術件数が増加している屈折矯正手術のひとつである.一方で,合併症として眼圧上昇やトーリックレンズの回転,白内障があげられ,その原因の多くはレンズサイズの不一致によるものとされている.今回はICLのサイズ選択において重要なWTW(whitetowhite)の計測に必要な各計測機器の特徴や,適切なレンズサイズについて解説する.●ICLV4以前の旧モデルにおけるレンズサイズと合併症ICLは現在までに数回のバージョンアップを行っており,より安全性の高いレンズへ改良されてきている.とりわけ2014年に国内で承認されたHoleICL(ICLKS-AquaPORT,STAAR社)は,レンズ中央に0.36mmの貫通孔を有すことで虹彩切除なく健常眼に近い眼内の房水循環が可能となり,飛躍的に合併症が減少した.それに伴い,従来のICL(V4以前のモデル)における適切なレンズサイズとやや概念が異なってきている.そこで,本稿では従来レンズとHoleICLの適切なレンズ選択を分けて解説する.ICLは通常,ICLと水晶体とのスペースをvaultと表現し,細隙灯顕微鏡にて角膜厚と比較してそのvaultを評価する.従来レンズでは0.5~1.5CT(cornealthickness)を適切なvaultとし,0.5CT未満をlowvault,1.5CT以上をhighvaultと表現していた.術後過度にhighvaultとなる例(レンズサイズが大きすぎる例)では,ICLが虹彩を前方へ押し出すため,眼圧上昇2)や調節障害を伴うリスクがあるとされ,逆にlowvault(レンズサイズが小さすぎる例)では,ICLと水晶体のスペースが狭いことから水晶体前面の房水循環不全が生(75)じ,白内障をきたすリスクが高くなるとされていた.Schmidingerらは,水晶体の前.下混濁が生じた例では,生じていない例に比べ有意にvaultが小さかったと報告している3).また,ICLには乱視矯正を行うトーリックICLも存在するが,このレンズは眼内での固定位置が決まっている.Kamiyaらは,トーリックICLは術後3年で8%にレンズ回転のため乱視矯正効果の減弱が生じたと報告している4).レンズの回転の原因として術直後の眼内粘弾性物質の影響や外傷があげられるが,レンズサイズが小さいと当然回転は起こりやすくなる.●各計測機器別のWTW計測値と再現性ICLサイズはSTAAR社より提供される専用のカリキュレーターによって決定され,影響するのは角膜横径のWTWと前房深度である.とくにWTWは重要で,種々の前眼部解析装置を用いた自動測定法やCaliperを用いたマニュアル測定法がある.基本的にはその施設で用いている測定機器を使用することでよいと考えるが,ICLのカリキュレーターは元々OrbscanのWTW値よりレンズサイズを決定するよう作製されているため,種々の機器の測定値の傾向を理解しておかなければならない.図1,2に健常ボランティア10名20眼に対して,検者2名にて各計測器を用いて計測したWYWの平均値,再現性を示す.計測器は前眼部解析装置としてOrbscan-2(Bausch&Lomb社),PentacamHR(Oculus社),TMS-4(Tomey社),IOLMaster700(CarlZeiss社)を,マニュアル計測器としてCaliper(カストロビエホ型カリパー2810,HANDAYA)を使用した.Orbscan-2のWTW値を元に他の機器を比較すると,TMS-4は約0.3mm,IOLmaster700は約0.6mmほど有意に長く計測される傾向にあることがわかった.また,図2より,自動計測となる前眼部解析装置では2人の検者間の再現性は高いのに対し,マニュアル測定となるCaliperでは再現性が低いことがわかった.Caliperあたらしい眼科Vol.32,No.9,201513030910-1810/15/\100/頁/JCOPYはICLに熟練した検者とそうでない検者で大きく測定差があることが反映された結果であるが,元々1mm刻みであり,角膜輪部のグレーゾーンの外側を確実に捉えることができるかが測定値に大きく影響する.しかし,熟練した検者ではOrbscanの測定値と近くなる傾向があり,角膜輪部の老人環などによりグレーゾーンが大きい症例や,自動計測で11.8mmといったレンズサイズ決定に迷う例では,最終的なサイズ確認を行ううえで有効なときがある.●HoleICLにおけるレンズサイズと合併症近年,HoleICLの登場により術後合併症は減少し,術後管理においてもこれまでの考えを変える必要があ(mm)13.0p<0.00112.812.6p=0.0112.312.412.012.211.712.011.711.611.811.611.411.211.0Orbscan-2PentacamHRTMS-4IOLMaster700Caliper図1各計測機器別の平均WTW平均WTW値はOrbscan-2を基準とすると,PentacamHR(p=0.99),Caliper(p=0.97)と有意な差は認められなかったが,TMS-4(p=0.01),IOLmaster700(p<0.001)は有意に長く計測された(Dunnett検定).10.8る.当院では2007~2014年に224眼のHoleICL手術を行ったが,平均最終観察期間341.7日(1~2,160日)の平均vaultは1.1±0.7CT(0.1~4.0CT)であり,そのうち0.5~1.5CTの例は55%(124眼),highvault(>1.5CT)の例は32%(71眼),lowvault(<0.5CT)の例は13%(29眼)であった.約45%のhighvault,lowvaultの例が存在するが,現在までに眼圧上昇や白内障進行によりICLを摘出・交換した例はない.当院では従来レンズのときは術後白内障のリスクを考え,全体的にややhighvaultをめざすことが多かったが,HoleICLにおいては,トーリックICL以外は適正もしくはlowvaultで問題ないと考えている.今後,多施設,長期経過をもとにHoleICLの適正vaultについて再度検討が必要であろう.文献1)IgarashiA,ShimizuK,KamiyaK:Eight-yearfollow-upofposteriorchamberphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopia.AmJOphthalmol157:532539,20142)KhalifaYM,GoldsmithJ,MoshirfarM:Bilateralexplantationofvisianimplantablecollamerlensessecondarytobilateralacuteangleclosureresultingfromanon-pupillaryblockmechanism.JRefractSurg26:991-994,20103)SchmidingerG,LacknerB,PiehSetal:Long-termchangesinposteriorchamberphakicintraocularcollamerlensvaultinginmyopicpatients.Ophthalmology117:1506-1511,20104)KamiyaK,ShimizuK,KobashiHetal:Three-yearfollow-upofposteriorchambertoricphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopicastigmatism.PLoSOne8:e56453,2013Orbscan-2Themeandifferencesbetween0.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8Measurement1-2Measurement1-2Measurement1-22measurementsTheupperandlowerbordersofthe95%limitofagreement-110.51111.51212.513図2各計測機器別のWTW測定再現性AverageofMeasurement1and2PentacamHRWTW値を各計測機器にてそれぞれ2人の検0.810.81TMS-4Measurement1-2Measurement1-2者で測定し,Bland-Altman法を用いて再現0.40.60.2性を評価した.実線は2回計測の差の平均0-0.2-0.4値,点線は95%信頼区間の上限値・下限値-0.6-0.8を示す.点線の幅が狭いほど再現性は良好で-110.51111.51212.51310.51111.51212.513AverageofMeasurement1and2AverageofMesurement1and2あり,マニュアル計測であるCaliperを除く各前眼部解析装置はおおむね再現性が良好で0.810.81あった.-0.6-0.4-0.200.20.40.6IOLMaster700Caliper0.610.51111.51212.5130.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8-0.8-1-110.51111.51212.513AverageofMeasurement1and2AverageofMeasurement1and21304あたらしい眼科Vol.32,No.9,2015(76)