眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人1.結膜組織の解剖と病理を知ろう小幡博人自治医科大学眼科学講座結膜は眼表面を構成する粘膜で,正常では杯細胞(gobletcell)を含む重層立方(円柱)上皮をもつ.翼状片やドライアイなどの病的状態において,この上皮は重層扁平上皮に化生し,杯細胞が消失する.ヘルシーな結膜とは杯細胞を含む常に濡れた粘膜である.●はじめに結膜は眼球と眼瞼を結ぶ薄い粘膜組織である.また,角膜とともに眼表面を構成する.結膜の表面積は角膜の約17倍といわれ1),眼球を守るために広大な結膜が存在しているようにも想像される.●結膜上皮は何上皮?結膜は上皮と粘膜固有層からなる.結膜上皮は3.5層の重層立方ないし円柱上皮である2.5).重層扁平上皮と記載している書物も多いが,それは誤りである.重層扁平上皮とは表層の細胞が扁平になっているものをいうが,結膜の表層の細胞は扁平ではなく立方形である.重層扁平上皮である角膜上皮と比較するとよくわかる(図1).●結膜は杯細胞を含む粘膜結膜上皮内に杯細胞(gobletcell)が散在していることが結膜の特徴である.杯細胞は上皮細胞間に存在し,ab結膜上皮は重層立方上皮角膜上皮は重層扁平上皮ab図1結膜上皮と角膜上皮の違い図2結膜の杯細胞結膜上皮(a)は3.5層の重層立方ないし円柱上皮であるが,杯細胞はPAS染色(a)やAlcianblue染色(b)に陽性であり,角膜上皮(b)は表層の細胞が扁平な5.6層の重層扁平上皮で多種多様な粘液を分泌していることがわかる.ある.結膜上皮は杯細胞(矢印)を含むことも特徴である.(105)あたらしい眼科Vol.32,No.1,20151050910-1810/15/\100/頁/JCOPY106あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(106)粘液(ムチン)を分泌する.このムチンは,涙液の保持,潤滑剤,異物や微生物の除去など眼表面を保護する役割を果たしている.杯細胞は中性ムコ多糖を染めるPAS染色や酸性ムコ多糖を染めるAlcianblue染色に陽性であり,多種多様な粘液を分泌している(図2).●扁平上皮化生とは?化生(metaplasia)とは,分化した細胞が別の系統の分化した細胞に変化することである.気管支を例にとると,正常な気管支上皮は線毛円柱上皮であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(squamousmetaplasia)を生じている(図3).これは,線毛円柱上皮が喫煙という外的刺激から身を守るために重層扁平上皮に化けたということである.●結膜上皮は容易に扁平上皮化生し,杯細胞が消失する結膜上皮も,瞼裂斑や翼状片などの隆起性病変やドライアイなどで容易に扁平上皮化生を起こす.扁平上皮化生を生じた結膜上皮は,杯細胞が消失し,表層の上皮が扁平になっている(図4).結膜疾患の病理標本でみる結膜上皮は重層扁平上皮の形態を示すことが多いが,これは病的な結膜をみているのである.●ヘルシーな結膜とは?杯細胞が消失し,扁平上皮化生した結膜はヘルシーな結膜とは言いがたい.眼表面が常にウエットでヘルシーであるために,涙液と結膜杯細胞の存在は必要不可欠なのである.文献1)WatskyMA,JablonskiMM,EdelhauserHF:Comparisonofconjunctivalandcornealsurfaceareasinrabbitandhuman.CurrEyeRes7:483-48,19882)SnellRS,LempMA:ClinicalAnatomyoftheEye.2nded.BlackwellScience,Malden,19983)小幡博人:結膜の正常構造.大鹿哲郎(編):眼科学.第2版.文光堂,東京,p44-47,2011図4結膜の扁平上皮化生翼状片の標本であるが,表層の上皮は扁平化し,角膜上皮と同様の重層扁平上皮となっている.杯細胞が消失していることに注目.図3気管支の扁平上皮化生正常な気管支上皮は線毛円柱上皮(a)であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(b)を生じており,まったく異なる上皮に化けている.ab106あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(106)粘液(ムチン)を分泌する.このムチンは,涙液の保持,潤滑剤,異物や微生物の除去など眼表面を保護する役割を果たしている.杯細胞は中性ムコ多糖を染めるPAS染色や酸性ムコ多糖を染めるAlcianblue染色に陽性であり,多種多様な粘液を分泌している(図2).●扁平上皮化生とは?化生(metaplasia)とは,分化した細胞が別の系統の分化した細胞に変化することである.気管支を例にとると,正常な気管支上皮は線毛円柱上皮であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(squamousmetaplasia)を生じている(図3).これは,線毛円柱上皮が喫煙という外的刺激から身を守るために重層扁平上皮に化けたということである.●結膜上皮は容易に扁平上皮化生し,杯細胞が消失する結膜上皮も,瞼裂斑や翼状片などの隆起性病変やドライアイなどで容易に扁平上皮化生を起こす.扁平上皮化生を生じた結膜上皮は,杯細胞が消失し,表層の上皮が扁平になっている(図4).結膜疾患の病理標本でみる結膜上皮は重層扁平上皮の形態を示すことが多いが,これは病的な結膜をみているのである.●ヘルシーな結膜とは?杯細胞が消失し,扁平上皮化生した結膜はヘルシーな結膜とは言いがたい.眼表面が常にウエットでヘルシーであるために,涙液と結膜杯細胞の存在は必要不可欠なのである.文献1)WatskyMA,JablonskiMM,EdelhauserHF:Comparisonofconjunctivalandcornealsurfaceareasinrabbitandhuman.CurrEyeRes7:483-48,19882)SnellRS,LempMA:ClinicalAnatomyoftheEye.2nded.BlackwellScience,Malden,19983)小幡博人:結膜の正常構造.大鹿哲郎(編):眼科学.第2版.文光堂,東京,p44-47,2011図4結膜の扁平上皮化生翼状片の標本であるが,表層の上皮は扁平化し,角膜上皮と同様の重層扁平上皮となっている.杯細胞が消失していることに注目.図3気管支の扁平上皮化生正常な気管支上皮は線毛円柱上皮(a)であるが,喫煙者の気管支上皮では扁平上皮化生(b)を生じており,まったく異なる上皮に化けている.ab