屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載181大橋裕一坪田一男181.多焦点眼内レンズ挿入眼でのwavefront.guided中村邦彦たなし中村眼科クリニックLASIKによる屈折誤差矯正回折型多焦点眼内レンズ挿入眼での屈折誤差矯正において,wavefront-guidedLASIKの有用性が期待されている.新しい波面収差解析装置iDesignを使用したwavefront-guidedLASIKによる屈折誤差矯正では,con-ventionalLASIKより高次収差増加が抑制される.●多焦点IOL挿入眼でのtouchupの意義多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)挿入眼において,大きな屈折誤差は遠方,近方とも裸眼視力を低下させ,多焦点IOLの性能を半減させる結果となる.この屈折誤差は眼鏡装用にて矯正可能だが,多焦点IOLの挿入を希望する患者では,裸眼での生活を強く期待することが少なくない.IOLマスターをはじめとする光学式眼軸測定が普及してIOL度数選択の精度は高くなり,屈折誤差の主体は乱視が占めるようになった.トーリックIOLであれば乱視にも対処できるが,多焦点IOLではまだ一部のモデルにしかない.このため,多焦点IOL挿入後の術後屈折誤差に対してlaserinsitukeratomileusis(LASIK)による屈折誤差矯正(touchup)が行われているが,精度も高く,球面度数と乱視両方の屈折誤差を矯正できる.また,現在の多焦点IOLは,単焦点IOLに比べてレンズパワーの作製範囲が狭く,高度近視の症例などで,最小のレンズパワーを選択しても残余近視が生じる場合があるが,このような場合でもtouchupは有効である.多焦点IOLには屈折型と回折型があるが,屈折型は裸眼視力が角膜乱視の影響を比較的受けにくい傾向がある.適切なレンズパワーがないときは別として,多くは回折型挿入眼がtouchupの適応となる.●Wavefront.guidedLASIKによるtouchupの意義回折型多焦点IOL挿入眼では,以前のモデルのときより改善しているが,単焦点IOLと比較してコントラスト感度の低下が生じることが知られている.また,LASIK施行眼では角膜収差が増加することが知られて(71)いる1,2).多くの場合,IOL挿入後のLASIKによる屈折誤差矯正はわずかな矯正量にとどまるので,LASIKによる角膜収差の増加はそれほど大きくはないと思われる.しかし,回折型多焦点IOL挿入眼で軽度のコントラスト感度の低下が生じているところに,LASIKを加えることにより,角膜収差を増加させ,コントラスト感度をさらに低下させることが懸念される.実際にはconventionalLASIKでもtouchupにおける矯正量はわずかで,患者がLASIK後にコントラスト感度の低下を訴えるようなことはない.しかし,この点でwavefront-guidedLASIKによる屈折誤差矯正は角膜の高次収差の増加を避けることに寄与できる可能性があり,信頼できるデータが得られれば施行したほうがよいと思われる3).ConventionalLASIKでは自覚的屈折誤差をもとに矯正量を設定して照射することで問題はないが,wavefront-guidedLASIKではまず波面収差解析装置で座位にて測定解析を行う.屈折型多焦点IOLでは波面収差解析装置での値は信頼性がないが,回折型多焦点IOLでは測定が可能であれば有効である.回折型では光学部の回折構造により入射光が2つに振り分けられるが,通常,波面収差解析装置では遠方視を反映した眼内からの出射光をもとにHartmann-Shackイメージを作製する.念のため,測定された結果を自覚の屈折誤差と近似しているかを確認してから使用するのがよい.次に解析結果をエキシマレーザー装置に入力して照射を行う.Touchupでは矯正量はわずかであるが,乱視が矯正の主体であるので虹彩紋理認証(irisregistration:IR)による廻旋補正は有効性が高く,wavefront-guidedLASIKの効果を十分に得るためにも,可能であれば積極的に使用するのがよい4).新しい波面収差解析装置Abbott社製iDesignRアドあたらしい眼科Vol.32,No.6,20158350910-1810/15/\100/頁/JCOPY等価球面度数絶対値円柱度数絶対値(D)0.550.17※0.710.25※(D)後前1.460.30※0.30※1.41後前2.02.01.01.00前後前後0(※Wilcoxon検定p<0.05)■Wevefront-guidedLASIKConventionalLASIK図1回折型多焦点IOL挿入眼でのTouchup前後での屈折の変化LASIK後に等価球面度数,円柱度数とも絶対値は減少している.Wavefront-guidedLASIKconventionalLASIKとconventionalLASIK間に差はない.(μm)0.120.090.080.120.220.150.100.080.080.50.40.30.20.10Rootmeansquare※※(Tukey多重比較検定p=0.0013)Conventional-LASIK■Wavescan■iDesign図3全眼球高次収差比較3次,4次では差はないが全高次収差でiDesignがconventionalLASIKより良好である.バンストウェイブスキャン(iDesign)は最大波面収差解析箇所数1,275となっており,前機種のウェイブスキャンウェイブフロントRシステム(WaveScan)が240箇所であったのと比較すると,約5倍に増加している.また,虹彩紋理,輪部認識機能の向上が図られており,IR下でのwavefront-guidedLASIK可能率の増加が期待される.●Wavefront.guidedLASIKによるtouchupの成績回折型多焦点IOL挿入眼でのwavefront-guidedLASIKによるtouchup前後での屈折誤差の変化をみると,LASIK後に等価球面度数,円柱度数とも絶対値は減少した(図1).Wavefront-guidedLASIK後に裸眼視力は遠方,近方とも改善した(図2).WavefrontguidedLASIKとconventionalLASIKの比較では,屈836あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015裸眼遠方視力裸眼近方視力1.01.00.10.1(※Wilcoxon検定p<0.05)■Wevefront-guidedLASIKConventionalLASIK図2回折型多焦点IOL挿入眼でのtouchup前後での裸眼視力の変化LASIK後に遠方,近方とも裸眼視力は改善している.Wavefront-guidedLASIKconventionalLASIKとconventionalLASIK間に差はない.折,視力には差はなく,コントラスト感度も両者とも全周波数において正常範囲内で差はなかった.しかし,高次収差については,WavescanではconventionalLASIKと差がなかったが,iDesignでは全高次収差でconventionalLASIKより良好であった(図3).Wavefront-guidedLASIKのtouchupにおける有用性は,これまであまり明確ではなかったが,新しい波面収差解析装置iDesign使用によるwavefront-guidedLASIKでは,波面収差解析機能向上と合わせてIR率向上が高次収差増加抑制に寄与でき,積極的な使用が薦められる.文献1)YamaneN,MiyataK,Samejimaetal:Ocularhigher-orderaberrationsandcontrastsensitivityafterconventionallaserinsitukeratomileusis.InvestOphthalmolVisSci45:3986-3990,20042)OshikaT,TokunagaT,SamejimaTetal:Influenceofpupildiameterontherelationbetweenocularhigher-orderaberrationandcontrastsensitivityafterlaserinsitukeratomileusis.InvestOphthalmolVisSci47:1334-1338,20063)JendritzaBB,KnorzMC,MortonSetal:WavefrontguidedLASIKissafeandeffectiveindiffractivemultifocalIOLstocorrectresidualrefractiveerror,buthigherorderaberrationsdidnotimprove.JRefractSurg24:274-279,20084)KhalifaM,El-KatebM,ShaheenMS:Irisregistrationinwavefront-guidedLASIKtocorrectmixedastigmatism.JCataractRefractSurg35:433-437,2009(72)1.000.49※1.010.58※0.590.38※0.640.48※前後前後前後前後